説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】多値画像情報から変換された2値画像情報を新たな多値画像情報に変換するときに、色の境界部分の劣化を抑制することが可能な画像処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】本発明の画像処理装置1は、多値画像情報のうち第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、境界に隣接する画素列の色を第1の色と第2の色とを合成した色にする境界色重処理において、合成に利用する色を参照した画素の位置を表す参照情報と、を保持するフラグ保持部47と、多値画像情報から変換された2値画像情報を新たな多値画像情報に変換する第2の変換部49であって、位置情報により特定される画素列の色を、参照情報により特定される画素の色に基づいて決定する第2の変換部49と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2値画像情報用のバッファメモリと多値画像情報を描画する書き込み部とを有し、2値画像情報を必要に応じて多値画像情報に変換する画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−061971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多値画像情報から変換された2値画像情報を新たな多値画像情報に変換するときに、色の境界部分の劣化を抑制することが可能な画像処理装置及びプログラムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を保持する保持部と、前記多値画像情報から変換された、各画素が2以上の色を含み、各色が2階調で表された2値画像情報を、新たな多値画像情報に変換する変換部であって、前記位置情報により特定される画素列に含まれる各画素の色を、前記方向情報により特定される方向の画素の色に基づいて決定する変換部と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記保持部は、前記境界に隣接する画素列とは前記境界の逆側に隣接する画素列の色を表す色情報を更に保持し、前記変換部は、前記2値画像情報の前記位置情報により特定される画素列に、前記逆側に隣接する画素列の色の画素が含まれる場合、前記2値画像情報の多値化に当該画素の色を利用しない、請求項1に記載の画像処理装置である。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を生成する生成部、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の色を、前記第1の色と前記第2の色とを合成した色にする境界色重処理を実行する処理部と、前記多値画像情報を、各画素が2以上の色を含み、各色が2階調で表された2値画像情報に変換する第1の変換部と、前記境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を生成する生成部と、前記位置情報及び前記方向情報を保持する保持部と、前記2値画像情報を新たな多値画像情報に変換する第2の変換部であって、前記位置情報により特定される画素列に含まれる各画素の色を、前記方向情報により特定される方向の画素の色に基づいて決定する第2の変換部と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を保持する保持部と、前記多値画像情報から変換された、各画素が2以上の色を含み、各色が2階調で表された2値画像情報を、新たな多値画像情報に変換する変換部であって、前記位置情報により特定される画素列に含まれる各画素の色を、前記方向情報により特定される方向の画素の色に基づいて決定する変換部と、としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【0010】
また、請求項6に記載の発明は、各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を生成する生成部、としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1,4,5に記載の発明によると、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の、第1の色と第2の色とを合成した色の劣化を抑制することが可能である。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、第1の色の領域及び第2の色の領域に他方の色が混ざることを抑制することが可能である。
【0013】
請求項3,6に記載の発明によると、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の、第1の色と第2の色とを合成した色の劣化を抑制するための情報を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成例を表す図である。
【図2】同実施形態に係る画像処理装置の機能例を表す図である。
【図3】元の多値画像情報の例を表す図である。
【図4】トラッピング処理後の多値画像情報の例を表す図である。
【図5A】フラグ情報の例を表す図である。
【図5B】フラグ情報の例を表す図である。
【図6】多値−2値変換後の2値画像情報の例を表す図である。
【図7】2値−多値変換後の多値画像情報の例を表す図である。
【図8】補正後の多値画像情報の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の画像処理装置及びプログラムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の構成例を表す図である。画像処理装置1は、制御部21、画像処理部22、操作部23、記憶部24、通信部25、表示部26、画像形成部27及び画像読取部28を備えている。
【0017】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えており、CPUがROMや記憶部24に記憶されたプログラムを実行することによって、画像処理装置1の各部を制御する。画像処理部22は、特定の画像処理を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)を備えている。
【0018】
操作部23は、複数のキーを備えており、使用者の操作を受け付けて、その操作に応じた信号を制御部21に出力する。記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性の補助記憶装置であり、各種のプログラムやデータが記憶されている。通信部25は、通信インタフェースを備えており、LAN(Local Area Network)等の通信路を介して他の装置と通信を行う。表示部26は、液晶表示画面および液晶駆動回路を備えており、制御部21から供給される情報に基づいて処理の進行状況や使用者に操作を案内する情報などを表示する。
【0019】
画像形成部27は、像を保持する感光体ドラム、画像情報に基づいて露光を行うことにより感光体ドラム上に静電潜像を形成する露光部、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像部、トナー像を記録用紙へ転写する転写部、及び記録用紙に転写されたトナー像を記録用紙に定着させる定着部を備えている。画像読取部28は、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を備えており、記録用紙に形成されている画像を撮像素子によって読み取り、読み取った画像を表す画像情報を生成する。
【0020】
図2は、画像処理装置1の機能例を表す図である。画像処理装置1は、トラッピング処理部41、フラグ生成部43、第1の変換部45、フラグ保持部47及び第2の変換部49を備えている。また、第2の変換部49は、多値化部49a及び補正部49bを備えている。
【0021】
上記各部は、制御部21に含まれるCPUがROMや記憶部24に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体から提供されてもよいし、インターネット等の通信線を介して提供されてもよい。
【0022】
また、上記各部は、画像処理部22に含まれる回路として構成されてもよい。例えば、1つの望ましい態様では、制御部21がトラッピング処理部41、フラグ生成部43及び第1の変換部45を実現し、画像処理部22がフラグ保持部47及び第2の変換部49を備える。
【0023】
トラッピング処理部41は、入力される多値画像情報にトラッピング処理を施し、トラッピング処理が施された多値画像情報を第1の変換部45に出力する。また、トラッピング処理部41は、トラッピング処理に係る処理情報をフラグ生成部43に出力する。
【0024】
トラッピング処理部41に入力される多値画像情報は、図3の例に示されるように、2次元的に配列する複数の画素を有しており、各画素は2種類以上の色を含んでいる。本例では、各画素は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4種類の色を含んでいる。また、各画素の各色は、3以上の階調(例えば8階調)で表される。
【0025】
また、トラッピング処理部41に入力される多値画像情報は、図3の例に示されるように、互いに色が異なる複数の領域を有しており、トラッピング処理は、こうした複数の領域の境界部分に施される。
【0026】
トラッピング処理とは、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の色を、第1の色と第2の色とを合成した色にする境界色重処理である。例えば、図3の例に示されるように、多値画像情報において、第1の色の領域であって第2の色を含まない領域と、第2の色の領域であって第1の色を含まない領域と、が隣接する場合、画像形成時に版ずれを起こして、2つの領域の間に空白が生じるおそれがある。そこで、版ずれを抑制するため、図4の例に示されるように、2つの領域の境界に隣接する画素列の色が、2つの領域の色を合成したものとされる。なお、これに限られず、第1の色及び第2の色は、複数種類の色が混ざった色であってもよい。各種類の色について、2つの領域の間に予め定められた値以上の階調差があれば、それらの領域の境界部分をトラッピング処理の対象としてもよい。
【0027】
すなわち、トラッピング処理では、境界の幅方向の一方に隣接する画素列に、他方に隣接する領域の色が合成され、境界の幅方向の他方に隣接する画素列に、一方に隣接する領域の色が合成される。境界の幅方向とは、境界の延伸方向と直交する方向である。また、換言すると、トラッピング処理では、隣接する2つの領域の各々が境界の幅方向に拡大されて、色が重ねられる。なお、色が合成される画素列は、境界の両側に隣接する2本の画素列の一方であっても、両方であってもよい。また、色が合成される画素列は、境界に隣接する2画素分以上の幅の画素列であってもよい。
【0028】
図3及び図4の例では、K色の階調が50%(以下、「K色50%」という。)の領域と、M色の階調が50%(以下、「M色50%」という。)の領域との境界の両側に隣接する画素列の色の種類及び階調が、K色50%かつM色50%とされている。なお、色の組み合わせはこの態様に限られない。また、各領域は、CMYKの単色に限られず、これらの混合色であってもよい。
【0029】
具体的には、トラッピング処理部41は、次のようにトラッピング処理を実行する。第1のステップでは、多値画像情報において各色の境界が検出される。ここで言う境界とは、注目する色を含む領域と、その色を含まない領域との境界である。例えば、多値画像情報に対して、3×3画素など、注目画素とそれを囲む周囲画素とを含むウィンドウが走査され、注目画素の階調と各周囲画素の階調とが比較され、階調差が閾値以上の場合に、該当する画素間が境界として判定される。これにより、境界に隣接する画素の位置と、その画素に対して境界が隣接する方向とが得られる。第2のステップでは、互いに異なる色の領域が隣接しているか、すなわち、互いに異なる色の境界が一致しているかが判定される。これにより、所定以上の階調の第1の色の領域と、所定以上の階調の第2の色の領域との境界が処理の対象とされる。第3のステップでは、上述したように、互いに異なる色の領域の境界に隣接する画素列の色を、2つの領域の色を合成したものとする。例えば、画素列に含まれる各画素の色を変更する際、境界を挟んで逆側に隣接する画素の色の種類及び階調が参照される。これに限られず、境界を挟んで2画素以上隣の画素の色の種類及び階調が参照されてもよい。
【0030】
フラグ生成部43は、トラッピング処理部41からトラッピング処理に係る処理情報を受け付け、この処理情報に基づいてフラグ情報を生成する。例えば、処理情報には、上記第1及び第2ステップにおいて判定された境界の情報が含まれている。具体的には、処理情報に、境界に隣接する画素の位置の情報や、画素に対して境界が隣接する方向の情報、境界に隣接する画素の色の情報などが含まれている。
【0031】
フラグ情報は、図5Aの例に示されるように、上記多値画像情報と同じ画素配列を有しており、各画素の位置が多値画像情報の各画素と対応している。フラグ情報では、各画素の値によって境界の情報が表されている。各画素の値は、図5Bの例に示されるように、例えば数ビットの値で記述されている。なお、説明のため、図5Bの表の右端には、各値の意味を記述している。また、図5Bの表には、K色と他色との組み合わせが記述されているが、色の組み合わせはこれらに限られない。
【0032】
フラグ情報には、境界に隣接する画素列に属する各画素の位置を表す位置情報が含まれている。具体的には、各画素の値は、大きく分けると、境界に隣接する画素(図5Aの例では、ハッチングが付された画素)を表す値と、それ以外の画素(図5Aの例では、空白の画素)を表す値と、に分けられる。このため、こうした値によって、境界に隣接する各画素の位置が特定される。図5Bの例では、少なくとも1つのビットが1である場合に、境界に隣接する画素が表され、全てのビットが0である場合に、それ以外の画素が表される。ここで、位置情報により特定される位置は、上記トラッピング処理において、色の合成が行われる、境界に隣接する画素の位置に対応している。
【0033】
また、フラグ情報には、境界に隣接する画素列に属する各画素に対して境界が隣接する方向を表す方向情報が含まれている。図5Aの例では、境界を挟んで左右に並んだ2つの画素列のうち、左側の画素列では右方向に境界が隣接しており、右側の画素列では左方向に境界が隣接している。図5Bの例に示されるように、各画素の値には、上下左右等の方向を表すビットが含まれている。なお、境界に隣接する画素ではない場合、方向を表すビットが全て0とされる。ここで、方向情報により特定される方向は、上記トラッピング処理において、対象となる画素を基準として合成に利用する色を参照する画素の方向に対応している。
【0034】
また、フラグ情報には、境界に隣接する画素列に属する各画素とは境界を挟んで逆側に隣接する画素の色の種類を表す色情報が含まれている。すなわち、図5Aの例では、境界を挟んで左右に並んだ2つの画素列のうち、左側の画素列は右側の画素列の色の種類を表す色情報を持ち、右側の画素列は左側の画素列の色の種類を表す色情報を持つことになる。図5Bの例に示されるように、各画素の値には、YMC等の色を表すビットが含まれている。なお、境界に隣接する画素ではない場合、色の種類を表すビットが全て0とされる。ここで、色情報により特定される色は、上記トラッピング処理において、対象となる画素と境界を挟んで隣接する画素から参照した、合成に利用する色に対応している。
【0035】
第1の変換部45は、トラッピング処理部41からトラッピング処理が施された多値画像情報を受け付け、この多値画像情報を2値画像情報に変換する(いわゆる2値化)。2値化の手法は、特に限定されない。
【0036】
第1の変換部45により変換される2値画像情報は、図6の例に示されるように、上記多値画像情報と同じ画素配列を有しており、各画素は2種類以上の色を含んでいる。本例では、各画素は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4種類の色を含んでいる。また、各画素の各色は、2階調で表されている。
【0037】
また、第1の変換部45により変換される2値画像情報は、図6の例に示されるように、上記多値画像情報に含まれていた複数の領域に対応する、互いに色が異なる複数の領域を有している。各領域では、領域中に占める有色画素の割合、すなわち有色画素の密度によって、領域の色の濃度が表されている。
【0038】
ここで、トラッピング処理が施された多値画像情報では、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の色が、第1の色と第2の色とを合成した色となっているため、この多値画像情報から変換された2値画像情報では、境界に隣接する画素列に含まれる画素の一部が、境界を挟んで逆側の領域の色になっている。
【0039】
具体的には、第1の変換部45は、次のようにして多値画像情報を2値画像情報に変換する。多値画像情報の各領域の色の階調に応じて、2値画像情報の各領域の有色画素の密度が決定される。これにより、図6の例に示されるような2値画像情報が得られる。
【0040】
なお、本実施形態では、トラッピング処理が施された多値画像情報が第1の変換部45に入力されていたが、これに限られず、トラッピング処理が施されていない多値画像情報が第1の変換部45に入力されてもよい。
【0041】
上記フラグ生成部43により生成されたフラグ情報と、上記第1の変換部45により生成された2値画像情報とは、フラグ保持部47及び第2の変換部49のそれぞれに直接出力されてもよいし、記憶部24に一旦格納され、操作部23からの入力等を契機に、フラグ保持部47及び第2の変換部49のそれぞれに読み出されるようにしてもよい。記憶部24に格納される場合、2値画像情報とフラグ情報は互いに対応付けられる。
【0042】
フラグ保持部47は、フラグ生成部43により生成されたフラグ情報を保持しており、このフラグ情報を第2の変換部49に含まれる多値化部49a及び補正部49bに出力する。フラグ情報には、上述したように、位置情報、方向情報及び色情報が含まれている。
【0043】
第2の変換部49に含まれる多値化部49aは、第1の変換部45により生成された2値画像情報を多値画像情報に変換し(いわゆる多値化)、この多値画像情報を補正部49bに出力する。なお、多値化の手法は、特に限定されない。
【0044】
この多値化部49aは、図6の例に示されるように、2値画像情報に含まれる第1の色の領域及び第2の色の領域のうち、一方の領域の境界に隣接する画素列に、他方の領域の色の画素が含まれる場合、多値化に際して当該画素の色を利用しない。ここで、境界に隣接する画素列の位置は、フラグ情報に含まれる位置情報により特定され、他方の領域の色の画素であるか否かは、フラグ情報に含まれる色情報により判断される。すなわち、多値化部49aは、位置情報により特定される画素列に、色情報により特定される色の種類の画素が含まれている場合、多値化に際して当該画素の色を利用しない。
【0045】
多値化に際して当該画素の色を利用しないとは、多値化のための計算を行う際に、当該画素の色の存在を考慮しないことである。例えば、2値画像情報の各領域中の有色画素の密度を求める際に、当該画素は有色画素としてカウントされず、無色画素としてカウントされる。このようにして決定された、2値画像情報の各領域中の有色画素の密度に基づいて、多値画像情報の各領域の色の階調が決定される。これにより、多値画像情報の各領域の全体に、隣接する領域の色が混ざることが抑制される。
【0046】
図6の例では、K色の領域のうち、M色の領域との境界に隣接する画素列にM色の画素が含まれており、K色の領域中の有色画素の密度を求める際に、このM色の画素は無色画素としてカウントされる。他方、M色の領域のうち、K色の領域との境界に隣接する画素列にK色の画素が含まれており、M色の領域中の有色画素の密度を求める際に、このK色の画素は無色画素としてカウントされる。
【0047】
なお、こうした態様に限られず、色情報が、境界に隣接する画素列に属する各画素の色の種類を表すようにして、位置情報により特定される画素列に、色情報により特定される色以外の色の画素が含まれている場合に、多値化に際して当該画素の色を利用しないようにしてもよい。
【0048】
多値化部49aにより変換される多値画像情報は、図7の例に示されるように、上記トラッピング処理部41に入力される多値画像情報と同じ画素構成を有している。この多値画像情報は、上記2値画像情報に含まれていた複数の領域に対応する、互いに色が異なる複数の領域を有している。
【0049】
この多値画像情報では、上記トラッピング処理部41に入力される多値画像情報と同様に、第1の色の領域と第2の色の領域とが隣接している。このように、トラッピング処理が施された多値画像情報を2値画像情報に変換し、その2値画像情報を多値画像情報に変換すると、得られる多値画像情報は、トラッピング処理が施されていない多値画像情報と同様になる。すなわち、得られる多値画像情報では、境界に隣接する画素列の色が、第1の色と第2の色とを合成した色にならない。
【0050】
第2の変換部49に含まれる補正部49bは、図7の例に示されるように、多値化部49aから入力される多値画像情報のうち、境界に隣接する画素列に属する各画素の色を、各画素と境界を挟んで隣接する画素の色に基づいて補正する。ここで、境界に隣接する画素列の位置は、フラグ情報に含まれる位置情報により特定され、各画素と境界を挟んで隣接する画素の方向は、フラグ情報に含まれる方向情報により特定される。すなわち、補正部49bは、位置情報により特定される画素列に属する各画素の色を、方向情報により特定される方向の画素の色に基づいて補正する。
【0051】
具体的には、画素の色の補正は、位置情報により特定される画素列に属する各画素の色の種類及び階調値と、方向情報により特定される方向の画素の色の種類及び階調値と、を合成することによって行われる。なお、方向情報により特定される方向の画素は、対象となる画素に隣接する画素に限られず、2画素以上隣の画素であってもよい。
【0052】
例えば、図7の例に示されるように、境界の左側に隣接する画素列に属する各画素には、方向情報により特定される右方向の画素のM色50%が合成され、境界の右側に隣接する画素列に属する各画素には、方向情報により特定される左方向の画素のK色50%が合成される。これにより、図8の例に示されるように、境界の両側に隣接する画素列は、K色50%かつM色50%とされる。
【0053】
以上のようにして得られる、補正後の多値画像情報は、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列が、第1の色と第2の色とを合成した色となる。すなわち、補正後の多値画像情報は、図4の例に示されるような、上記トラッピング処理が施された多値画像情報と同様になる。
【0054】
なお、上述したように、フラグ生成部43により生成されたフラグ情報と、第1の変換部45により生成された2値画像情報と、を記憶部24に一旦格納する場合、多値画像情報を記憶部24に一旦格納する場合よりも、格納に必要な容量を抑制することが可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0056】
1 画像処理装置、21 制御部、22 画像処理部、23 操作部、24 記憶部、25 通信部、26 表示部、27 画像形成部、28 画像読取部、41 トラッピング処理部、43 フラグ生成部、45 第1の変換部、47 フラグ保持部、49 第2の変換部、49a 多値化部、49b 補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を保持する保持部と、
前記多値画像情報から変換された、各画素が2以上の色を含み、各色が2階調で表された2値画像情報を、新たな多値画像情報に変換する変換部であって、前記位置情報により特定される画素列に含まれる各画素の色を、前記方向情報により特定される方向の画素の色に基づいて決定する変換部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記境界に隣接する画素列とは前記境界の逆側に隣接する画素列の色を表す色情報を更に保持し、
前記変換部は、前記2値画像情報の前記位置情報により特定される画素列に、前記逆側に隣接する画素列の色の画素が含まれる場合、前記2値画像情報の多値化に当該画素の色を利用しない、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を生成する生成部、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の色を、前記第1の色と前記第2の色とを合成した色にする境界色重処理を実行する処理部と、
前記多値画像情報を、各画素が2以上の色を含み、各色が2階調で表された2値画像情報に変換する第1の変換部と、
前記境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を生成する生成部と、
前記位置情報及び前記方向情報を保持する保持部と、
前記2値画像情報を新たな多値画像情報に変換する第2の変換部であって、前記位置情報により特定される画素列に含まれる各画素の色を、前記方向情報により特定される方向の画素の色に基づいて決定する第2の変換部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を保持する保持部と、
前記多値画像情報から変換された、各画素が2以上の色を含み、各色が2階調で表された2値画像情報を、新たな多値画像情報に変換する変換部であって、前記位置情報により特定される画素列に含まれる各画素の色を、前記方向情報により特定される方向の画素の色に基づいて決定する変換部と、
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項6】
各画素が2以上の色を含み、各色が3以上の階調で表された多値画像情報のうち、第1の色の領域と第2の色の領域との境界に隣接する画素列の位置を表す位置情報と、当該画素列に対して前記境界が隣接する方向を表す方向情報と、を生成する生成部、
としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−129685(P2012−129685A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277791(P2010−277791)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】