説明

画像処理装置及び方法

【課題】 適切なエッジ強調を自動的に行える画像処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る画像処理装置において、エッジ検出手段は、入力された画像データについて、対象画素におけるエッジの有無を判定する。重み選択手段は、エッジがあると判定された画素について、エッジの位置に対応した重み行列を選択する。強調範囲決定手段は、対象画素とその周辺の画素のデータを、重み選択手段により選択された重み行列を用いて演算し、得られた演算値を所定のしきい値と比較して、対象画素についてのエッジ強調の範囲を決定する。こうして、エッジの種類に応じた重み行列を選択的に用いて自動的に強調半径を決定する。データ強調手段は、強調範囲決定手段により決定された強調範囲内の画素のデータについてデータ強調処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディジタル画像の補正に関する。
【0002】
【従来の技術】ディジタルカメラなどから入力されたディジタル画像に対して、各種の画像補正がなされる。画像補正には、コントラスト強調、エッジ強調などの種々の処理がある。エッジ強調について種々の手法が用いられている。たとえば、特開平5−108823号公報に記載された画像処理では、画素の間にエッジを求めている。また、特開平10−143673号公報に記載された画像処理では、エッジを判定するしきい値を自動的に算出する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般にディジタル画像に対してエッジ強調によりシャープネスを強調する場合、被写体によって、その特徴に応じてエッジの太さ(エッジ強調の範囲)を調整する必要がある。たとえば建築物や人工的な物体が写っている場合は、建築物の輪郭である線は、太くすると縁どったような画像になってしまい、不自然となる。したがって、建築物などでは、線を太くしないようにエッジ強調範囲を狭くして線をより強調することが望ましい。逆に、人物像などにおいては、エッジを細くして強調すると、目などが不自然な感じに強調されてしまい逆効果となることが多い。そのため、人物像などに対しては、エッジの幅を広く取り、なだらかにエッジを強調することが望まれる。すなわち、人物が写っている場合には強調範囲をやや広めて、緩やかにエッジを強調せねばならない。自動的にエッジを強調する手法は今まで数多く提案されているが、強調範囲はマニュアルで決められていた。
【0004】本発明の目的は、適切なエッジ強調を自動的に行える画像処理装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る画像処理装置において、エッジ検出手段は、入力された画像データについて、対象画素におけるエッジの有無を判定する。重み選択手段は、エッジがあると判定された画素について、エッジの位置に対応した重み行列を選択する。強調範囲決定手段は、対象画素とその周辺の画素のデータを、重み選択手段により選択された重み行列を用いて演算し、得られた演算値を所定のしきい値と比較して、対象画素についてのエッジ強調の範囲を決定する。こうして、エッジの種類に応じた重み行列を選択的に用いて自動的に強調半径を決定する。データ強調手段は、強調範囲決定手段により決定された強調範囲内の画素のデータについてデータ強調処理を行う。好ましくは、前記の強調範囲決定手段は、重み行列において重み付けをエッジの内側におく。また、好ましくは、前記のエッジ抽出手段は、エッジの抽出においてエッジを画素の間に求め、前記の強調範囲決定手段は、対象画素の周囲の4方向でのエッジの有無によって重み行列を選択する。また、好ましくは、前記のデータ強調手段は、対象画素の周囲の画素の色相及び彩度の値も考慮してデータを強調する。より好ましくは、前記のデータ強調手段は、対象画素の周囲の画素の対象画素との距離も考慮してデータを強調する。
【0006】本発明に係る画像処理方法は、入力された画像データについて、対象画素におけるエッジの有無を判定し、エッジがあると判定された画素について、エッジの位置に対応した重み行列を選択し、対象画素とその周辺の画素のデータを、選択された重み行列の重みを用いて演算し、得られた演算値を所定のしきい値と比較して、対象画素についてのエッジ強調の範囲を決定し、決定された強調範囲内の画素のデータについてデータ強調処理を行う。好ましくは、前記の強調範囲決定のステップにおいて、重み行列において重み付けをエッジの内側におく。本発明に係るコンピュータ読み取り可能な媒体は、入力された画像データについて、対象画素におけるエッジの有無を判定するステップと、エッジがあると判定された画素について、エッジの位置に対応した重み行列を選択するステップと、対象画素とその周辺の画素のデータを、選択された重み行列の重みを用いて演算し、得られた演算値を所定のしきい値と比較して、対象画素についてのエッジ強調の範囲を決定するステップと、決定された強調範囲内の画素のデータについてデータ強調処理を行うステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図面において、同じ参照記号は同一または同等のものを示す。本発明の実施形態の情報処理装置(以下、システムという)は、中央演算処理装置(以下、CPUという)を備えシステム全体を制御する制御装置1(コンピュータ)を中心として構成される。図1において、矢印はデータの流れを示す。ディスプレイ2は、画像または文字などを表示すると共に、操作のための各種画面の表示等を行う。キーボード3とマウス4は、各種入力、指示操作等を行う。フロッピーディスク5とハードディスク6は、画像データなどを記憶及び保管するデータ保管媒体であり、システムは、フロッピー(登録商標)ディスク5とハードディスク6にそれぞれアクセスするフロッピーディスクドライブとハードディスクドライブを備える。プリンタ7は、画像データなどを用紙に印刷する。スキャナ8は、原稿から画像データを読み取る。CD−ROM9は、多量の各種データを記憶する記憶媒体であり、システムは、CD−ROM9にアクセスするCD−ROMドライブを備える。また、音声出力のためのスピーカー10と音声入力用のマイクロフォン11が接続される。後述の画像処理プログラムは、CD−ROMなどの外部記憶媒体から読み込まれる。
【0008】図2は、制御装置1を中心としたブロック図である。制御装置1は、CPU201を中心として構成され、CPU201に接続されるデータバス220を介して、種々の処理プログラムなどを記憶するROM203、各種データおよびプログラムを記憶するRAM204、画像または文字等の表示をディスプレイ2に行う表示制御回路205、キーボードからの入力を転送制御するキーボード制御回路206、マウス4からの入力を転送制御するマウス制御回路207、フロッピーディスクドライブを制御するフロッピーディスクドライブ制御回路208、ハードディスクドライブを制御するハードディスク制御回路209、プリンタ7への出力を制御するプリンタ制御回路210、スキャナ8を制御するスキャナ制御回路211、CD−ROMドライブを制御するCD−ROMドライブ制御回路212、スピーカー10を制御するスピーカー制御装置213、および、マイクロフォン11を制御するマイクロフォン制御回路214がそれぞれ接続される。また、クロック回路202は、本システムを動作させるために必要な各種クロック信号を供給する。さらに、データバスを介して各種拡張ボードを接続するための拡張スロット215が接続される。
【0009】制御装置1は、ディジタル画像について各種の画像処理を行う。以下では、画像のエッジ強調処理について説明する。図3は、制御部1のエッジ強調処理のフローを示す。まず、RGB画像データを入力する(ステップS10)。次に、RGBデータをHSL色空間に変換する(ステップS11)。次に、処理対象とする注目画素の位置を2次元座標で(i,j)と表わし、その注目画素のデータをL(i,j)とする(ステップS12)。次に、エッジフィルターを用いて対象画素の周囲の画素に対してエッジを検出する(ステップS13)。本実施形態では画素間にエッジを求める。これにより、強調する際にエッジをはさむ両画素の間の差分を大きくとることによって線のみが強調されずに自然にエッジが強調される。また、画素間にエッジを求めることにより対象画素の周囲にあるエッジが4種類に限定でき、その後の重み行列の選択などが簡単になる。
【0010】エッジは重み行列w1を用いて画素データと演算し、演算値θ1を所定の閾値と比較することにより抽出される。エッジが対象画素の上側にある場合は、次の重み行列w1を用い、行列演算値θ1を求める。
【数1】


【数2】


また、エッジが対象画素の下側にある場合は、同じ重み行列w1(式(1))を用い、行列演算値θ1を求める。
【数3】


また、エッジが対象画素の右側にある場合は、次の重み行列w1を用い、行列演算値θ1を求める。
【数4】


【数5】


また、エッジが対象画素の右側にある場合は、同じ重み行列w1(式(4))を用い、行列演算値θ1を求める。
【数6】


【0011】注目画素にエッジが検出されると(ステップS14でYES)、次に、強調半径Rを決定する。まず、強調半径Rを求めるための重み行列w2を選択し(ステップS15)、重み行列w2を用いて画素データから強調半径Rを求める(ステップS16)。エッジの強調半径Rとは、エッジを強調する範囲を表わすパラメータであり、エッジとみなした画素の周辺の何画素まで強調するかを決めるものである。たとえば、図4に示す例では、強調半径は1(画素)であり、斜線部(すなわち対象画素の周囲の8画素)がエッジ強調を行う強調画素を示す。
【0012】具体的には、半径算出関数F(x)を用いて、データL(i,j)と重み行列w2とから次の式(7)から強調半径Rを自動的に算出する。
【数7】


半径算出関数F(x)はたとえば次のような関数である。
b1≦x<b2のとき、F(x)=1 b2≦x<b3のとき、F(x)=2 (8)
・・・ここに、b1、b2、...は定数である。
【0013】エッジ強調の範囲(強調半径)は、エッジの線種(太さ)とエッジ周辺の明度の勾配(グラデーション)から決められるるべきである。エッジの強調半径は、エッジの幅と密接な関係がある。エッジ強調半径が小さいとエッジの幅は細く、エッジ強調半径が大きいとエッジの幅は太い。そこで、対象物によってエッジの太さを調整する必要がある。重み行列w2において重み付けは対象画素に関してエッジの位置の反対側(エッジの内側)においている。そのような重み行列w2を用いてエッジ強調半径を求めるので、求められたエッジ強調半径は、対象画素の周辺にさらにエッジがあるかどうか、したがって、エッジの幅に関連する。対象物が建築物である場合、対象エッジの付近に明度変化の急勾配の点(エッジ)が存在し、また、人物画像とくに顔写真の場合は、エッジ付近の明度の変化はなだらかである。そのような特徴はエッジ強調半径に反映される。
【0014】エッジの種類による重み行列w2の例は以下のとおりである。ここで、a11〜a55は重みを表わす。注目画素とエッジの位置により5*5の重み行列w2の重み付けを変化させる。図5に示すように、エッジが注目画素の左側に検出されたときの重み行列w2は次の通りである。
【数8】


図6に示すように、エッジ(太線部で表す)が注目画素の左側と下側に検出されたときの重み行列w2は次の通りである。
【数9】


図7に示すように、エッジが注目画素の左側、下側及び右側に検出されたときの重み行列w2は次の通りである。
【数10】


図8に示すように、エッジが注目画素の左右に検出されたときの重み行列w2は次の通りである。
【数11】


【0015】次に、強調半径R内の画素(強調画素という)について強調パラメータを用いて強調処理をする。また、エッジ付近の色情報や彩度情報もからめて強調パラメータを求めるので、対象物の特性を反映させることができる。まず、1つの強調画素の画像データの値I(i,j)を求め(ステップS17)、強調パラメータを算出し(ステップS18)、画像データについて強調処理をする(ステップS19)。この強調処理を、強調半径R内の全強調画素について処理が終わるまで(ステップS20でYES)、繰り返す。さらに、上述の処理(ステップS10からS20)を、全画素について処理が終わるまで(ステップS21でYES)、繰り返す。
【0016】強調パラメータは、色情報と強調半径とから次のように算出される。第1強調係数P1が、周囲の色情報や彩度情報(たとえば対象画素と周囲の8画素の画像データについて)から決定される。ここでは、表1のように、4種の色(無彩色、肌色、温色,その他)を判別し、それぞれに第1強調係数P1が決定される。
【0017】
【表1】表1 第1強調係数P1

【0018】また、第2強調係数P2が、強調中心画素からの距離によって決定される。ここでは、表2のように、距離が0,1,2(画素)に対して第2強調係数が算出される。
【表2】表2 第2強調係数P2

【0019】補正後の強調係数I'(i,j)は、補正前の強調係数Io(i,j)から上述の2つの強調係数P1、P2と重み行列w3を用いて次のように算出される。
I'(i,j)=Io(i,j)+W*P1*P2 (13)
ここに
【数12】


w3(i,j)はたとえば以下のように定義される重み行列である。
【数13】


【0020】
【発明の効果】エッジの種類に応じて重み行列を選択的にかけて、自動的に強調半径を決定する。エッジ強調処理において、画像内容(色及び彩度)を解析して自動的に強調半径を算出する。対象物によってはエッジの太さを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 システムの全体構成の図
【図2】 制御装置を中心としたブロック図
【図3】 エッジ強調のフローチャート
【図4】 強調画素の1例を示す図
【図5】 対象画素とエッジの位置を示す図
【図6】 対象画素とエッジの位置を示す図
【図7】 対象画素とエッジの位置を示す図
【図8】 対象画素とエッジの位置を示す図
【符号の説明】
1 制御装置、 2 ディスプレイ、 201 CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力された画像データについて、対象画素におけるエッジの有無を判定するエッジ検出手段と、エッジ検出手段によりエッジがあると判定された画素について、エッジの位置に対応した重み行列を選択する重み選択手段と、対象画素とその周辺の画素のデータを、重み選択手段により選択された重み行列を用いて演算し、得られた演算値を所定のしきい値と比較して、対象画素についてのエッジ強調の範囲を決定する強調範囲決定手段と、強調範囲決定手段により決定された強調範囲内の画素のデータについてデータ強調処理を行うデータ強調手段とからなる画像処理装置。
【請求項2】 前記の強調範囲決定手段は、重み行列において重み付けをエッジの内側におくことを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項3】 前記のエッジ抽出手段は、エッジの抽出においてエッジを画素の間に求め、前記の強調範囲決定手段は、対象画素の周囲の4方向でのエッジの有無によって重み行列を選択することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項4】 前記のデータ強調手段は、対象画素の周囲の画素の色相及び彩度の値も考慮してデータを強調することを特徴とする請求項1に記載さた画像処理装置。
【請求項5】 前記のデータ強調手段は、対象画素の周囲の画素の対象画素との距離も考慮してデータを強調することを特徴とする請求項4に記載された画像処理装置。
【請求項6】 入力された画像データについて、対象画素におけるエッジの有無を判定し、エッジがあると判定された画素について、エッジの位置に対応した重み行列を選択し、対象画素とその周辺の画素のデータを、選択された重み行列を用いて演算し、得られた演算値を所定のしきい値と比較して、対象画素についてのエッジ強調の範囲を決定し、決定された強調範囲内の画素のデータについてデータ強調処理を行う画像処理方法。
【請求項7】 前記の強調範囲決定のステップにおいて、重み行列において重み付けをエッジの内側におくことを特徴とする請求項6に記載された画像処理方法。
【請求項8】 入力された画像データについて、対象画素におけるエッジの有無を判定するステップと、エッジがあると判定された画素について、エッジの位置に対応した重み行列を選択するステップと、対象画素とその周辺の画素のデータを、選択された重み行列を用いて演算し、得られた演算値を所定のしきい値と比較して、対象画素についてのエッジ強調の範囲を決定するステップと、決定された強調範囲内の画素のデータについてデータ強調処理を行うステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な媒体。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−53974(P2001−53974A)
【公開日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−229181
【出願日】平成11年8月13日(1999.8.13)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】