説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】記録媒体全面で光沢むらの発生を低減し、高画質を実現することができる画像処理装置及び画像処理方法等を提供する。
【解決手段】複数の記録素子を備えた記録ヘッドを記録媒体上で走査して画像を形成する画像形成手段用に画像処理を行う際に、画像データを入力し、前記画像データに対して、前記記録ヘッドの主走査毎に、前記記録素子毎の記録量を算出し、この記録量に対し、ハーフトーン処理により走査内パターンを算出する。そして、ハーフトーン処理の際に、前記記録量が所定の閾値より大きい場合に、前記記録媒体上にドットを集中して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットの形成が可能な複数の記録素子を備えた画像形成手段用の画像処理装置及び画像処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ等における情報出力装置として、所望される文字及び画像等の情報を用紙及びやフィルム等シート状の記録媒体に記録を行う記録装置には様々なものがある。その中で、記録媒体に記録剤を付着することで記録媒体上に文字及び画像を形成する記録装置が実用化されている。
【0003】
このような記録装置の一つであるインクジェット記録装置には、記録速度の向上及び高画質化等のために、同一色、同一濃度のインクを吐出可能な複数のインク吐出口(ノズル)を集積配列したノズル群を用いたものがある。
【0004】
これらのノズル群から吐出されるインクとしては、従来、水に溶解しやすい染料を色材として用いた染料インクが広く用いられている。染料インクは水を主成分としており、溶媒中に溶解した色材が記録媒体の繊維質の内部に浸透しやすい。従って、画像の記録後も記録媒体の表面形状が維持されやすいため、記録画像の光沢は記録媒体自体のそれが維持される。例えば、光沢に優れた記録媒体に染料インクを用いて記録すれば、光沢に優れた記録画像を得ることができる。つまり、染料インクを用いたインクジェット記録装置では、記録媒体自体の光沢を向上させることで画像の光沢付与が実現可能である。
【0005】
しかしながら、上述のような染料インクでは、良好な耐光性を得にくい。色材の染料分子が光により分解しやすいため、記録画像の色が褪色する。また、染料インクで記録した印字物の耐水性が低く、水に濡れると繊維質に浸透した染料分子が水に溶解するため、記録画像上に滲みが発生しやすい。
【0006】
このような染料インクに固有の問題を解決する方法として、色材に顔料を用いた顔料インクを用いて記録するインクジェット記録装置がある。顔料インクは、溶剤中に数10ナノメーターから数ミクロンの大きさの粒子として存在するため、分子として存在する染料インクと異なり、記録媒体内部に浸透しにくい。よって、染料インクと比較して耐水性及び耐光性が高い。
【0007】
しかしながら、顔料インクでは記録画像内で、領域により記録画像の濃度及び色によって光沢感が異なるという光沢むらが発生しやすい。光沢むらの原因の1つとして、顔料インクは記録媒体上に堆積し、記録された領域と記録されていない領域とで画像表面の微細形状が異なるという顔料インクの性質が挙げられる。更に、顔料インクと記録媒体との間で反射率が異なることも光沢むらの原因として挙げられる。記録画像の濃度及び色に応じて顔料インクの打ち込み量が異なるため、顔料インクが記録媒体を被覆する面積が異なり、被覆面積の違いが光沢の違いとなるのである。
【0008】
上述のような原因により、光沢むらが発生すると、同一の記録画像内でぎらつく領域及びマットな領域が混在し、画像不良として認識されやすい。
【0009】
また、光沢むらは顔料インクを用いたインクジェット記録装置と同様に、トナーを記録媒体上に定着させて記録する電子写真方式の記録装置でも発生する。
【0010】
光沢むらを解決する方法として、有色顔料インクで被覆されていない記録領域に無色透明インク又は白色インクで記録する方法がある(特許文献1)。
【0011】
また、有色顔料インクで被覆されていない記録領域に無彩色で黒色より淡いインクである淡灰色インクで記録する方法も提案されている(特許文献2)。
【0012】
更に、記録画像表面を熱可塑性樹脂で被覆(ラミネート)することで、記録画像全面で均一な光沢を実現する方法(特許文献1及び3)、及び記録画像表面に微細な凹凸を付与して記録画像全面均一な光沢を実現する方法(特許文献1)もある。
【0013】
他方、インクジェット記録装置では、記録される画像の品位は記録ヘッド単体の性能に依存しやすい。例えば、記録ヘッドの吐出口の形状、に吐出ヒータ及びピエゾ素子等のばらつき等、記録ヘッドの製作工程において生じる僅かな誤差が、吐出されるインクの吐出量及び方向に影響を及ぼす。そして、最終的に、形成される画像に濃度むらが発生し、画質が劣化する原因となることがある。
【0014】
そこで、このような濃度むらの対策として、マルチパス記録方式が知られている(特許文献4)。かかる技術によれば、画像処理及び印字制御を組み合わせることで、白すじ及び濃度むら等による画質の低下を抑えつつ、画像を高速で形成することができる。図21を参照しながら、マルチパス記録方式について説明する。
【0015】
マルチパス記録方式では、図21(a)に示すように、マルチヘッド2201によって3回の主走査を行う。また、図21(b)に示すように、縦方向8画素の半分である4画素を単位とする記録走査領域は2回の記録走査(パス)で完成している。この場合、マルチヘッド2201内の8ノズルは、上側の4ノズル(上側ノズル群)及び下側の4ノズル(下側ノズル群)の2グループに分けられる。そして、1ノズルが1回のスキャンで記録するドットは、画像データをある所定の画像データ配列に従って約半分に間引いたものであり、2回目のスキャン時に残りの約半分のドットを先に形成した画像に埋め込むことにより、4画素単位領域の記録を完成させる。
【0016】
また、マルチパス記録方式を行う際には、決まった配列に従って1スキャン目及び2スキャン目を互いに埋め合わせるようにする。通常、この画像データ配列(間引きマスクパターン)としては、図22に示すように、縦横1画素毎に千鳥格子になるようなものを用いている。従って、単位印字領域(ここでは4画素単位)においては、千鳥格子を印字する1スキャン目、及び逆千鳥格子を印字する2スキャン目によって印字が完成される。図22(a)〜(c)は、夫々、上記のような千鳥格子パターン及び逆千鳥パターンを用いたときに一定領域の記録がどのように完成されていくかを工程順に示している。先ず、1スキャン目では、図22(a)に示すように、下側の4ノズル(下側ノズル群)を用いて千鳥パターンの記録を行う。次いで、2スキャン目では、紙送りを4画素だけ行い、図22(b)に示すように、逆千鳥パターンの記録を行う。その後、3スキャン目において、再び4画素だけ紙送りを行い、図22(c)に示すように、再び千鳥パターンの記録を行う。
【0017】
このようなマルチパス記録方式を実施すれば、図21で示したマルチヘッドと等しいものを使用しても、各吐出口固有の記録領域への影響が半減されるので、形成される画像は図22に示すようなものになり、黒すじ及び白すじがあまり目立たなくなる。従って、濃度むらがかなり緩和される。
【0018】
【特許文献1】特開2002−307755号公報
【特許文献2】特開2005−96194号公報
【特許文献3】特開2001−328168号公報
【特許文献4】特開2002−96455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1のような無色透明インクを用いた方法では、色再現に不要なインクを記録装置に搭載することが必要となるため、記録装置の大型化及び高価格化が問題となる。白色インク及び淡灰色インクを用いる方法も同様である。
【0020】
また、淡灰色インクを用いる特許文献2に記載の方法では、本来はインクが打たれないはずの領域(たとえば、8ビット入力装置で入力信号が(R,G,B)=(255,255,255)の領域)に対して、淡灰色インクが打たれることになる。このため、ハイライトの明度低下が発生して、色再現領域が縮小してしまう。
【0021】
更に、特許文献1及び3のように、記録画像表面にラミネート加工又は微細な凹凸を付与する方法では、通常の記録走査の後、専用の処理工程が必要とされるため、記録装置とは別の装置を備える必要がある。
【0022】
本発明は、記録媒体全面で光沢むらの発生を低減し、高画質を実現することができる画像処理装置及び画像処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0024】
本発明に係る画像処理装置は、複数の記録素子を備えた記録ヘッドを記録媒体上で走査して画像を形成する画像形成手段用に画像処理を行う画像処理装置であって、画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データに対して、前記記録ヘッドの主走査毎に、前記記録素子毎の記録量を算出する走査内記録量算出手段と、前記走査内記録量算出手段により算出された記録量に対し、ハーフトーン処理により走査内パターンを算出するハーフトーン処理手段と、を有し、前記ハーフトーン処理手段は、前記記録量が所定の閾値より大きい場合に、前記記録媒体上にドットを集中して配置することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る画像処理方法は、複数の記録素子を備えた記録ヘッドを記録媒体上で走査して画像を形成する画像形成手段用に画像処理を行う画像処理方法であって、画像データを入力する画像入力ステップと、前記画像データに対して、前記記録ヘッドの主走査毎に、前記記録素子毎の記録量を算出する走査内記録量算出ステップと、前記走査内記録量算出ステップにおいて算出した記録量に対し、ハーフトーン処理により走査内パターンを算出するハーフトーン処理ステップと、を有し、前記ハーフトーン処理ステップは、前記記録量が所定の閾値より大きい場合に、前記記録媒体上にドットを集中して配置するドット配置ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、記録量に応じてドットを集中して配置するので、記録画像の表面形状に起因する光沢の変化を抑制して、記録媒体全面で光沢むらの発生を低減することができる。この結果、高い画質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0028】
この画像処理装置1には、プリンタインタフェース又は回路によって、画像形成手段として機能するプリンタ2が接続される。画像処理装置1は、例えば一般的なパーソナルコンピュータにインストールされた特定のプログラム(プリンタドライバ等)によって実施され得る。その場合、以下に説明する画像処理装置1の各部は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。つまり、画像処理装置1がプリンタ2用に(画像形成手段用に)画像処理を行う。また、別の構成として、例えば、プリンタ2が画像処理装置1を含んでいてもよい。
【0029】
画像処理装置1には、入力画像バッファ102、色分解処理部103、色分解用ルックアップテーブル(LUT)104、走査Duty設定部105、及び走査Duty設定用LUT106が設けられている。更に、走査Dutyバッファ107、ハーフトーン処理部108、制約情報バッファ109、ハーフトーン画像格納バッファ110及び制約情報演算部111も設けられている。
【0030】
このような画像処理装置1は、画像データ入力端子101(画像入力手段)を介して印刷対象の画像データを入力し、入力画像バッファ102がその入力画像データを格納する。色分解処理部103は、入力されたカラー画像をプリンタ2が備えるインク色へ色分解する。この色分解処理に際して、色分解処理部103は色分解用ルックアップテーブル(LUT)104を参照する。走査Duty設定部105は、走査Duty設定用LUT106に基づき、色分解処理部103によって分解された各インク色値を、更に走査毎の各インク色値(記録素子毎の記録量)へ変換する。つまり、走査DUTY設定部105は、走査内記録量算出手段として、記録ヘッド201の主走査毎に記録素子毎のインク色値を算出する。そして、走査Dutyバッファ107がそのデータを格納する。
【0031】
ハーフトーン処理部108は、走査Duty設定部105によって得られた走査毎の各色の多階調(3階調以上)値を、後述の制約情報バッファ109に蓄えられた値に基づいて2値画像データに変換し、走査内パターンを算出する。
【0032】
制約情報バッファ109は、記録される画像上のアドレスに、ドットが形成されやすいか否かを示す情報を蓄えている。なお、制約情報バッファ109は、インク色毎に確保するものとする。
【0033】
ハーフトーン画像格納バッファ110は、ハーフトーン処理部108によって得られた各色の2値画像データを格納する。制約情報演算部111は、ハーフトーン画像格納バッファ110に格納された2値画像データ及び走査Dutyバッファ107に格納された走査毎Dutyデータ値を用いて所定の演算を行い、制約情報バッファ109に格納されている情報を更新する。
【0034】
そして、ハーフトーン画像格納バッファ110に格納された2値画像データは画像データ出力端子112を介してプリンタ2へ出力される。
【0035】
プリンタ2には、記録ヘッド201、移動部203、ヘッド制御部204、搬送部205、インク色及び吐出量選択部206及びハーフトーン画像格納バッファ207が設けられている。
【0036】
記録ヘッド201は熱転写方式、電子写真方式、インクジェット方式等のものを用いることができ、いずれであっても複数の記録素子(インクジェット方式であればノズル)を有する。
【0037】
移動部203は、ヘッド制御部204の制御下で、記録ヘッド201を移動する。搬送部205は、ヘッド制御部204の制御下で、記録媒体202を搬送する。
【0038】
また、ハーフトーン画像格納バッファ207は、画像処理装置1から出力された各色の2値画像データを格納する。インク色及び吐出量選択部206は、ハーフトーン画像格納バッファ207に格納されている各色の2値画像データに基づいて、記録ヘッド201に搭載されるインク色の中から、インク色を選択する。
【0039】
このようなプリンタ2は、記録ヘッド201を記録媒体202に対して相対的に縦横に移動することにより、画像処理装置1にて形成された2値画像データを記録媒体上に形成する。
【0040】
ここで、記録ヘッド201について説明する。図2は、記録ヘッド201の一例の構成を示す図である。本実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色のインクに加え、相対的にインク濃度が低い淡シアン(Lc)及び淡マゼンタ(Lm)を含めた6色のインクが記録ヘッド201に搭載されている。なお、図2においては、説明を簡単にするため用紙搬送方向にノズルが一列に配置されているが、ノズルの数及び配置はこれに限られるものではない。例えば、同一色でも吐出量が異なるノズル列が設けられていてもよく、また、同一吐出量のノズルが複数列あってもよく、ノズルがジグザグに配置されていてもよい。また、図2ではインク色の配置がヘッド移動方向に一列となっているが、用紙搬送方向に一列に配置されていてもよい。
【0041】
次に、上述の機能構成を備えた本実施形態の画像処理装置1の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
先ず、多階調のカラー入力画像データが画像データ入力端子101より入力され、入力画像バッファ102がこの入力画像データを格納する(ステップS201)。なお、入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の3つの色成分から構築されているものとする。
【0043】
次いで、色分解処理部103が、入力画像バッファ102に格納されている多階調のカラー入力画像データに対し、色分解用LUT104を参照しながら、RGBからCMYK及びLcLmのインク色プレーンへの色分解処理を行う(ステップS202)。なお、本実施態では、色分解処理後の各画素データを8ビットとして扱うが、それ以上の階調数で変換してもよい。上述のように、記録ヘッド201は、6種類の各インク色を保有している。このため、RGBのカラー入力画像データを、CMYKLcLm各プレーンの計6プレーンの画像データへ変換するのである。即ち、このようにして6種類の記録態様に対応した6種類のプレーンの画像データが生成される。
【0044】
ここで、ステップS102の色分解処理について図4を参照しながら詳細に説明する。図4は、カラープリンタの色分解処理の内容を示す図である。色分解処理部103は、画像データ(R’,G’,B’)に対し、色分解用LUT104を参照して次の式(1)〜(6)に示す変換を行う。
C=C_LUT_3D(R’,G’,B’) (1)
K=M_LUT_3D(R’,G’,B’) (2)
Y=Y_LUT_3D(R’,G’,B’) (3)
K=K_LUT_3D(R’,G’,B’) (4)
Lc=Lc_LUT_3D(R’,G’,B’) (5)
Lm=Lm_LUT_3D(R’,G’,B’) (6)
【0045】
なお、式(1)〜(6)の右辺に定義される各関数が色分解用LUT104に該当する。色分解用LUT104はレッド、グリーン、ブルーの3入力値から、各インク色への出力値を定めている。本実施形態では、CMYKLcLmの6色を具備する構成であるため、3入力値から6出力値を得る色分解用LUT104が用いられる。
【0046】
このようにして、ステップS102の色分解処理が行われる。
【0047】
ステップS102の後、走査Duty設定部105が、走査番号k及び色分解データ切り出しY座標Ycut(k)を設定する(ステップS103)。なお、走査番号kの初期値は1であり、走査Duty設定部105はループ毎に1だけインクリメントする。なお、色分解データ切り出しY座標Ycut(k)は、走査番号kにおける色分解データ切り出し位置(ノズル上端座標)である。
【0048】
ここで、例として、8個のノズル列を具備し、画像上の同一主走査記録領域に対して4回のスキャンで画像を形成させる4パス印字の場合の、色分解データ切り出し位置Y座標Ycut(k)を設定する方法について説明する。
【0049】
一般的に、4パス印字の場合、図5に示すように、走査番号の初期値k=1では、ノズル501の下端1/4のみを使用して記録媒体502に画像形成を行い、走査番号k=2では走査番号k=1に対しノズル501の長さの1/4分紙送りしてから画像形成を行う。更に、走査番号k=3では走査番号k=2に対しノズル501の長さの1/4分紙送りしてから画像形成を行い、以降同様の紙送り及び画像形成を繰り返し、最終出力画像を形成する。このため、走査番号kが1(初期値)の場合、色分解データ切り出し位置Ycut(1)は−12となる。
【0050】
そして、色分解データ切り出し位置Ycut(k)を一般化すると、ノズル列数をNzzl、パス数をPass、走査番号をkとすると、式(7)で表わされる。
Ycut(k)=−Nzzl+(Nzzl/Pass)×k (7)
【0051】
このようにして、色分解データ切り出し位置Ycut(k)が設定される。
【0052】
ステップS103の後、走査Duty設定部105が、走査Duty設定用LUT106を参照して、色分解処理部103により生成された6種類のプレーンの画像データから、走査毎のデータ値(走査Duty値)を設定する(ステップS104)。このデータ値が記録ヘッド201の記録素子毎の記録量となる。
【0053】
なお、走査Duty設定用LUT106は、4パスの場合、例えば図6に示すような構成となっている。図6は8ノズル、4パスの場合の走査Duty設定用LUT106の構成の例を示す図である。図6中の変曲点P1〜P4が4つのノズル毎に設定され、その各変曲点を線形補間した8ノズル分のDuty分割率が走査Duty設定用LUT106となる。ここで、変曲点P1〜P4の数値は次式(8)を満たしている。
P1+P2+P3+P4=1.0 (8)
【0054】
なお、走査Duty設定用LUT106の設定方法はこのようなものに限定されない。例えば、変曲点をより細かく設定してもよく、また、ノズル毎に直接指定してもよい。
【0055】
そして、走査Duty設定部105は、図7に示すように、走査Duty設定用LUT106と色分解データ(色分解処理部103により生成された6種類のプレーンの画像データ)との積から走査Dutyを設定する。但し、対応するノズルが画像Yアドレスの領域外座標になるときは、走査Dutyを0とする。例えば、走査番号k=1では、図8に示すように、ノズル列上端3/4で画像Yアドレスが負になるため、走査Duty値に0が代入され、ノズル列下端1/4に有意な値が代入される。
【0056】
なお、色分解データ切り出し位置Ycut(k)は走査番号kによって決まるため、走査番号kが1〜7の場合、図9に示すように、走査Duty値が決まる。各走査Duty値は、色分解データ及び走査Duty設定用LUT106の積により定まるため、紙送りしながらこのような積を取得すると、領域1の部分では、走査番号kが1〜4の4回の走査で形成される1ラスタの合計値が色分解データと等しくなる。領域2、3及び4の部分でも同様に、1ラスタの合計値が色分解データと等しくなる。但し、上記走査Duty分解は、Duty分解閾値D_Th3より色分解データの値が小さいときは、4回の走査で画像形成を行うことはせず、1〜3回の走査で画像形成を行う。
【0057】
ここで、走査Duty設定部105における走査Duty設定について、シアンC(X,Y)を例に、詳細を式(9)〜(15)に示す。なお、C(X,Y)はアドレス(X,Y)における走査Dutyを、S_LUT(Y)はアドレスYにおける走査Duty設定用LUTの設定値である。また、D_Thは各走査毎に設定されたDuty分解閾値である。
(イ) C(nx,Ycut(k)+ny)>D_Th3のとき
C_d(nx,ny)=C(nx、Ycut(k)+ny)×S_LUT(ny)
(9)
(ロ) C(nx,Ycut(k)+ny)≦D_Th1のとき
「走査番号k=1,5,….4n+1(nは0以上の整数)」
C_d(nx,ny)=C(nx、Ycut(k)+ny) (10)
「上記以外の走査番号」
C_d(nx,ny)=0 (11)
(ハ) C(nx,Ycut(k)+ny)≦D_Th2のとき
「走査番号k=1,5,…,4n+1(nは0以上の整数)」
「走査番号k=2,6,…,4n+2(nは0以上の整数)」
C_d(nx,ny)=C(nx,Ycut(k)+ny)/2 (12)
「上記以外の走査番号」
C_d(nx,ny)=0 (13)
(ニ) C(nx,Ycut(k)+ny)≦D_Th3のとき
「走査番号k=1,5,…,4n+1(nは0以上の整数)」
「走査番号k=2,6,…,4n+2(nは0以上の整数)」
「走査番号k=3,7,…,4n+3(nは0以上の整数)」
C_d(nx,ny)=C(nx,Ycut(k)+ny)/3 (14)
「上記以外の走査番号」
C_d(nx,ny)=0 (15)
なお、0≦nx<画像Xサイズ、0≦ny<Nzzlである。
【0058】
同様に、Lc(X,Y)、M(X,y)、Lm(X,Y)、Y(X,Y)、K(X,y)に対しても上記式により走査Dutyへ分解する。
【0059】
なお、本仕様例では4パスを例にしたため、(9)〜(15)のように例外のDuty分解を設定したが、例えば8パスでも同様にD_Th1〜D_Th7を設定し、例外のDuty分解を行う。
【0060】
ステップS104の後、走査Duty設定部105によって設定された走査Duty値を走査Dutyバッファ107が格納する(ステップS105)。走査Dutyバッファ107は、例えば図10に示すように、縦方向にノズル数、横方向に画像Xsize分のバンド状のデータ値を色毎に格納する。
【0061】
次いで、ハーフトーン処理部108が、走査Dutyバッファ107及び制約情報バッファ109のデータの合計値を、2レベルの階調値(2値データ)に変換する(ステップS106)。このような変換の方法は特に限定されないが、ハーフトーン処理多値の入力画像データを2値画像(又は2値以上で入力階調数より少ない階調数を有する画像)に変換する方法として、例えばR.Floydらによる誤差拡散法がある。この誤差拡散法は、例えば「"An adaptive algorithm for spatial gray scale", SID International Symposium Digest of Technical Papers, vol4.3, 1975, pp.36-37」に記載されている。本実施形態では、ハーフトーン処理部108がこの誤差拡散法に基づいてハーフトーン処理を行う。
【0062】
また、本実施形態では、制約情報バッファ109は、記録される画像上のアドレスに2値画像が形成されやすいか否かを示す制約情報が走査番号k毎に更新されていく。但し、走査番号k=1の処理開始時は全0の初期値が代入されている。即ち、アドレス(X,Y)における各色の制約情報をC_r(X,Y)、Lc_r(X,Y)、M_r(X,Y)、Lm_r(X,Y)、Y_r(X,Y)、K_r(X,Y)とすると、走査番号k=1のときは以下の式(16)〜(21)のように記述される。
C_r(nx,ny)=0 (16)
Lc_r(nx,ny)=0 (17)
M_r(nx,ny)=0 (18)
Lm_r(nx,ny)=0 (19)
Y_r(nx,ny)=0 (20)
K_r(nx,ny)=0 (21)
なお、0≦nx<画像Xサイズ、0≦ny<Nzzlである。
【0063】
このため、実質的には走査番号k≧2の時に、有意な制約情報が更新されていくことになる。制約情報の値は、その値が小さいほど、その箇所にドットが形成されにくく、逆に値が大きいほどドットが形成されやすい。また、制約情報バッファに更新される値はどのような走査番号であっても、平均値0の値が格納されている。即ち、その箇所にドットが形成されやすい場合は正の値が、その箇所にドットが形成されにくい場合は負の値が格納されている。制約情報の更新法に関しての詳細は後述する。
【0064】
ここで、4パス印字を行う場合のハーフトーン処理部108の動作について詳細に説明する。
【0065】
従来、インクジェット記録方式において、記録媒体上のドット配置は、粒状性等の画質課題の観点から、ドット配置の分散性を高くするようにハーフトーン処理によって決められることが多い。しかしながら、顔料インクを用いたマルチパスインクジェット記録方式では分散性の高いドット配置を用いても、図12に示すように、記録濃度が高い領域で顔料ドット1202が記録媒体1201上に堆積することで、光沢性が低下してしまう。
【0066】
そこで、本実施形態では、特に記録濃度が高い領域では、一走査内でのドットの配置を集中させることで、顔料インクの堆積による記録画像表面の変化を抑制し、記録媒体全体で光沢むらの発生を低減する。そして、同一走査内のドット配置を集中させるために、本実施形態では、ハーフトーン処理部108に入力される記録データが所定の閾値Th1より大きい場合、つまり記録濃度が高い場合、誤差拡散処理のための誤差拡散係数を、例えば図14に示すように設定する。
【0067】
なお、本実施形態において、同一走査内のドットを集中して配置する基準となる記録データの閾値Th1は、例えば記録媒体上の単位面積あたりのドット密度(ドットの打ち込み量)が100%となる記録データで設定することができる。また、記録媒体がドットで隠れる記録濃度で設定することもできる。記録データの濃度が高い場合ほど、一回の走査で打たれるドット数も多くなるので、このように閾値Th1を設定することで、一回の走査内でドットが集中して配置される。このため、効果的に顔料インクの堆積による記録画像表面の変化を抑止でき光沢均一性が向上する。
【0068】
同一走査内でドットを集中して配置すると、あるドットに対して近接ドットが短い間隔で記録媒体上に打たれる。短い時間の間隔でうたれた近接ドット間では、顔料インクはあたかも表面が均一な一つの大きなドットが形成されるように記録媒体上に堆積する。よって図12に示すような記録媒体上で顔料インクの堆積による記録画像表面の変化を低減できる。
【0069】
よって、同一走査内でどの程度ドットを「集中」して配置するかは、顔料インクの特性によって設定することが望ましい。例えば、媒体への浸透速度が速いインクは、インク(顔料)が堆積して表面が荒れやすいので、浸透速度が速いインクほど短時間で近接ドットを配置したほうがよい。つまり、ドットの「集中」の程度を制御する係数をインクの特性により定義することで、効果的に顔料インクの堆積による記録画像表面の変化を抑止できる。
【0070】
また、記録媒体の特性によっても、顔料インクの堆積の状態は変化するため、上記ドットの集中の程度を、記録媒体、顔料インクの特性により定義する方法も挙げられるが、この限りではない。
【0071】
図13において、誤差拡散係数はK1〜K12の12個の係数を持つものとする。例えば、図14のようにK1〜K12を設定すると、記録画像上のドットは集中して配置される。
【0072】
また、記録データが上記の所定の閾値以下の場合は、誤差拡散係数をドット配置の分散性が高くなるように設定してもよい。つまり、ドットを離散的に配置するようにしてもよい。
【0073】
誤差拡散係数により誤差を拡散して累積するためには、図17に示すように、ハーフトーン処理部108における累積誤差ラインバッファを4組確保し、使用する累積誤差ラインバッファを走査番号毎に切り替える。なお、説明簡単化のために、誤差拡散係数は図16に示すK1〜K4の4つの係数を用いることとする。
【0074】
具体的には、「走査番号k=1,5,・・・,4n+1(nは0以上の整数)のとき」に(4n+1)累積誤差ラインバッファ1702を使用し、「走査番号k=2,6,・・・,4n+2のとき」に(4n+2)累積誤差ラインバッファ1703を使用する。また、「走査番号k=3,7,・・・,4n+3のとき」に(4n+3)累積誤差ラインバッファ1704を使用し、「走査番号k=4,8,・・・,4n+4のとき」に(4n+4)累積誤差ラインバッファ1705を使用する。
【0075】
図16に示すように、誤差拡散係数がK1〜K4の4つの係数を持ち、K1=7/16、K2=3/16、K3=5/16、K4=1/16である場合、累積誤差ラインバッファ1702、1703、1704、1705は、夫々図15(a)〜(d)に示す構成となる。
【0076】
累積誤差ラインバッファ1702は、1個の記録領域E1_0と、入力画像の横画素数Wと同数の記憶領域E1_(x)(x=1〜W)とを有する。累積誤差ラインバッファ1703、1704及び1705も同様の記録領域を有する。また、累積誤差ラインバッファ1702、1703、1704及び1705は走査番号k=1、2、3、4の処理開始時のみ、全て初期値0で初期化されているものとする。
【0077】
本実施形態では、1色のハーフトーン処理について、上述の4組の累積誤差ラインバッファが必要となる。このため、6色の処理を行う本実施形態には、合計4×6=24組のラインバッファが設けられている。
【0078】
詳細は後述するが、ハーフトーン処理部108には、図17に示すように、累積誤差加算部1706、閾値選択部1707、量子化部1708、誤差演算部1709及び誤差拡散部1710も含まれている。
【0079】
ここで、4パス印字、走査番号kが1の場合のシアンのハーフトーン処理について、図11及び図17を参照しながら説明する。図11は、ハーフトーン処理の内容を示すフローチャートである。
【0080】
先ず、シアンの記録データC_dをハーフトーン処理部108に入力する(ステップS201)。
【0081】
次いで、累積誤差加算部1706が入力データの横画素位置に対応する誤差E1_(x)を加算する(ステップS202)。即ち、累積誤差加算部1706は、入力された注目画素の記録データをC_dとし、累積誤差加算後のデータをC_d’とすると、次の式(22)で表わされる演算を行う。
C_d’=C_d+E1_(x) (22)
【0082】
その後、閾値選択部1707が閾値Tを選択する(ステップS203)。閾値Tの選択では、例えば次の式(23)で表わされる設定を行う。ここで、「128」という値は、入力が0−255の場合に一般的に使用される値である。
T=128 (23)
【0083】
なお、ドット生成遅延を回避するために、平均量子化誤差が小さくなるように、次の式(24)で表わされるように、入力された注目画素の記録データC_dに応じて細かく設定してもよい。
T=f(C_d) (24)
【0084】
また、次の式(25)で表わされるように、バンド内のアドレス(X,Y)に応じて細かく設定してもよい。
T=f(X,Y) (25)
【0085】
続いて、量子化部1708が、誤差加算後の画素データC_d’と閾値Tとを比較し、次の式(26)〜(29)により2値化結果Out_cを決定する(ステップS204)。
C_d’<Tのとき (26)
Out_c=0 (27)
C_d’≧Tのとき (28)
Out_c=255 (29)
【0086】
次いで、誤差演算部1709が、注目画素の記録データC_dに、誤差加算後の画素データC_d’と出力画素値Out_cとの差分Errを、次の式(30)により算出する(ステップS205)。
Err(x)=C_d’−Out_c (30)
【0087】
その後、誤差拡散部1710が、誤差を注目画素の周辺画素に拡散させる(ステップS206)。即ち、誤差拡散部1710は、累積誤差ラインバッファ1702を用いて、横画素位置xに応じて、次の式(31)で表わされる誤差Err(x)の拡散処理を行う。
Ec1(x+1)←Ec1(x+1)+Err_c(x)×7/16 (x<W)
Ec1(x−1)←Ec1(x−1)+Err_c(x)×3/16 (x>1)
Ec1(x)←Ec1_0+Err_c(x)×5/16 (1<x<W)
Ec1(x)←Ec1_0+Err_c(x)×8/16 (x=1)
Ec1(x)←Ec1_0+Err_c(x)×13/16 (x=W)
Ec1_0←Err_c(x)×1/16 (x<W)
Ec1_0←0 (x=W) (31)
【0088】
このようにして、走査番号k=1のシアン1画素分の2値化処理が行われる。
【0089】
そして、これらのステップS201〜S206の処理を、バンド内の全ての画素について行う(ステップS207)ことにより、同一走査内の記録濃度が高い場合にドットを集中して配置したハーフトーン画像データを生成することができる。
【0090】
なお、走査番号k=2では(4n+2)累積誤差ラインバッファ1703を、走査番号k=3では(4n+3)累積誤差ラインバッファ1704を、走査番号k=4では(4n+4)累積誤差ラインバッファ1705を用いて、ハーフトーン処理を行う。また、走査番号k=5の処理では、走査番号k=1と同じ(4n+1)累積誤差ラインバッファ1702を、初期化しないで(全0を代入しないで)そのまま用いる。これは、走査番号k=1及び走査番号k=5の印字領域が上下に隣接しているため、累積誤差を隣接下の領域へ保存させるためである。もし累積誤差ラインバッファを初期化すると、誤差が隣接の境界部で保存されなくなり、ドットの連続性が保てなくなる。
【0091】
ステップS106の後、ハーフトーン画像格納バッファ110がハーフトーン処理後の2値画像データを格納する(ステップS107)。図18は、走査番号k=1の走査Duty値がハーフトーン処理後に格納された状態を示す図である。記録データの画素位置に対応するNzzl×画像Xsizeの2値画像データが格納される。なお、図18の構成からもわかるように、本実施形態でのハーフトーン処理では、縦ノズル数及び横画像Xサイズの走査DUTYバッファ107データに対し順次2値画像データを生成していく。従って、ハーフトーン画像格納バッファ110にも、縦ノズル数及び横画像Xサイズのバンドデータ分のメモリ空間が設けられている。
【0092】
これらの処理により、走査番号k=1でのハーフトーン処理が終了し、結果として各色分の1回の記録ヘッドの走査により形成される2値画像が、各色分のハーフトーン画像格納バッファ110に格納されることとなる。
【0093】
なお、ハーフトーン処理部における量子化の方法は誤差拡散法に限らず、例えばブルーノイズマスク系若しくはベイヤ系のディザ法又は濃度パターン法を用いてもよい。また、上述したような複数の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
ステップS107の後、ハーフトーン画像格納バッファ110に蓄えられた、縦:Nzzl、横画像:Wのバンドデータが画像データ出力端子112から出力される(ステップS108)。
【0095】
次に、制約情報を演算する(ステップS109)。ここでは説明を簡略化するため、4パス印字、走査番号k=1、ノズル数Nzzl=16におけるシアンの制約情報の演算についての詳細を、図23の制約情報演算ブロック図と図24のフローチャート図を参照しながら説明する。前述のとおり、制約情報とは、現在の走査番号k=1の次の走査番号k=2、でのハーフトーン画像のドット配置を決める上で、ドットが打たれやすいか否かの情報である。なお、現在の走査番号がkのときは、次の走査番号はk+1である。
【0096】
先ず、走査Dutyフィルタ処理部1501は走査Dutyバッファ107内のシアン走査Duty、C_dに対して所定のフィルタF_mにてフィルタ処理を行いC、_dfを算出する(ステップS301)。図25にフィルタ処理されたデータの模式図を示す。
C_df = C_d*F_m (32) *:コンボリューション
【0097】
本実施形態ではF_mの係数は図26のようにフィルタサイズが3×3正方形、係数がほぼ同心円に並ぶ等方的加重平均フィルタとして説明するが、これに限るものではない。例えば、フィルタサイズが5×5、7×7、9×9のような正方形でも、3×5、5×7、5×9のような長方形でもよいし、フィルタ係数が楕円の非等方フィルタであってもよいし、ローパス特性に限らず、バンドパス特性や、ハイパス特性のフィルタであってもよい。
【0098】
次に、ハーフトーンデータフィルタ処理部1502はOut_cに対して所定のローパスフィルタLPF_bにてフィルタ処理を行う(ステップS302)。図27にフィルタ処理されたデータの模式図を示す。
Out_c_LPF=Out_c*LPF_b (33)
【0099】
本実施形態におけるLPF_bの係数も、F_mと同様に、図27のようにフィルタサイズが3×3正方形、係数がほぼ同心円に並ぶ等方的加重平均フィルタとするが、これに限るものではない。但し、LPF_bはローパス特性をもつことが好ましい。また本実施形態では、F_mとLPF_bが同じとしているが、異なる係数であってもよい。
【0100】
次に、走査Dutyデータシフト部1504は、走査Dutyフィルタ処理部1501のデータC_dfを、一回の紙送り量LF=Nzzl/Pass=16/4=4だけ上にシフトする(ステップS303)。図28にシフトされたデータの模式図を示す。シフトした走査DutyデータをC’_dfとすると、以下の式(34)のように算出される。なお、シフトされた後の下端4ノズル分は0を代入する。
C’_df(nx,ny)=C_df(nx,ny+LF)(34)
なお、0≦nx<画像Xサイズ、0≦ny<Nzzlである。また、「ny+LF≧Nzzl」のときは0を代入する。つまり、下端LFノズル分は0を代入する。
【0101】
同様に、ハーフトーンデータシフト部1505も、データOut_c_LPFを紙送り分上にシフトする(ステップS304)。図29にシフトされたデータの模式図を示す。シフトしたデータをOut’_c_LPFとすると以下の式(35)のように算出される。
Out’_c_LPF(nx,ny)=Out_c_LPF(nx,ny+LF)
(35)
なお、0≦nx<画像Xサイズ、0≦ny<Nzzlである。また、「ny+LF≧Nzzl」のときは0を代入する。つまり、下端LFノズル分は0を代入する。
【0102】
更に、更新前制約情報データシフト部1503も、更新前制約情報データC_rを紙送り分上にシフトする(ステップS305)。シフトした走査DutyデータをC’_rとすると以下の式(36)のように算出される。
C’_r(nx,ny)=C_r(nx,ny+LF) (36)
なお、0≦nx<画像Xサイズ、0≦ny<Nzzlである。また、「ny+LF≧Nzzl」のときは0を代入する。つまり、下端LFノズル分は0を代入する。
【0103】
上述のように、次の走査番号の制約情報演算には、相対的に紙送り量LF上方にシフトさせる。さらに、下端LFノズル分は0を代入する。
【0104】
このようにバッファデータを紙送り量LFだけシフトさせる理由は、次の走査番号にて形成されるハーフトーンドット配置が記録媒体上で相対的に紙送り量LFずれて形成されるからである。
【0105】
更に、減算部1506が、走査Dutyデータシフト部1504で算出されたデータから、ハーフトーンデータシフト部1505で算出されたデータを減算(ステップS306)し、重み積算部1507が重み係数h(実数)にて積算する(ステップS307)。
【0106】
次に、加算部1508が、重み積算部1507により演算されたデータと更新前制約情報データシフト部1503によりシフトされたシアン制約情報とを加算し(ステップS308)、これを更新後制約情報C_rとする。この更新後制約情報C_rは、次の走査番号k=2以降(又は現走査番号kなら、次の走査番号はk+1)のハーフトーン処理の制約情報として保存しておく。
C_r←(−Out’_c_LPF+C’_df)×h+C’_r (37)
【0107】
ここで、式(37)について説明する。
式(37)のOut’_c_LPFはハーフトーンデータフィルタ処理部1502によりLPF_bを用いて、走査番号kのハーフトーン画像に対して低周波成分のみを取り出したデータである。式(37)においては、−Out’_c_LPFと減算することで、低周波成分のみを取り出されたデータを負の値にする。この「負の値とする」効果は、次の走査番号k+1以降でドットが打たれにくくなることを意味する。即ち、この処理は、次の走査番号k+1以降で、走査番号k以前に打たれたハーフトーン画像の低周波成分が逆位相となる効果がある。以上でステップS109における制約情報演算が終了する。
【0108】
次に、演算結果を制約情報バッファに更新する(ステップS110)。この制約情報は、次の走査番号以降(現走査番号がkならば次の走査番号はk+1)のドット配置を決定するための情報として保持される。
【0109】
次いで、ハーフトーン画像データを受けたプリンタ2において、ハーフトーン画像格納バッファ207がこの画像データを一旦格納し、インク色及び吐出量選択部206が、この画像データに適合するインク色を選択する。更に、ヘッド制御部204が、印字動作及び変動量検出を開始する(ステップS111)。印字動作では、記録ヘッド201が記録媒体202に対し、左から右に移動しながら一定の駆動間隔で各ノズルを駆動し記録媒体202上に画像を記録する1回の主走査と、該主走査の終了後の主走査に対して垂直な方向の走査である1回の副走査を行う。
【0110】
その後、全ての走査が終了したか、つまり、全画素の処理が終了したかどうかの判定を行う(ステップS112)。そして、終了していれば、一連の画像形成処理が完了し、終了していない場合はステップS103に戻る。
【0111】
このようにして、画像処理装置1に入力された画像データに対して画像処理が行われる。
【0112】
このような本実施形態では、記録媒体202上の同一領域に対して、記録ヘッド201の分割された同一の又は異なる領域を用いて走査を行う際に、同一領域でドットを集中して配置している。このため、記録画像の表面形状に起因する光沢の変化を抑制して、記録媒体202の全面で光沢むらの発生を低減し、記録媒体202の全面で高画質を実現することができる。つまり、本実施形態では、同一走査内のドット配置を決定するハーフトーン処理において、記録濃度がある閾値より大きい場合に、ドットが集中して配置されるように、誤差拡散係数を設定する。そして、同一領域でドットを集中して配置することで、記録画像の表面形状に起因する光沢の変化を抑制して、記録媒体全面で光沢むらの発生を低減し、記録媒体全面で高画質を実現することが可能となるのである。
【0113】
なお、本実施形態のハーフトーン処理では誤差拡散法を用いているが、上述のようにディザ法を用いてもよい。ディザ法を用いて、同一走査内のドットを集中して配置する場合は、例えば、ディザマスクとして、グリーンノイズマスクを利用する。また、ハーフトーン処理として、「Daniel Leo Lau, Green Noise Digital Halftoning, IEEE International Conference on Image Processing ,1998」に記載されているフィードバック系の誤差拡散処理を行ってもよい。フィードバック系誤差拡散処理を実現する回路の例を図19に示す。この回路には、量子化部2001、誤差拡散係数2002及び画素参照マスク2003が設けられている。そして、フィードバック系誤差拡散処理において、画素参照係数h2004を設定することで、ドット配置の周波数特性をグリーンノイズ特性に制御することができる。そして、例えば図20に示すように画素参照係数hを大きくすると、ドットが集中して配置される。
【0114】
なお、上述した実施形態の処理は、各機能を具現化したソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或いは装置に提供しても実現することができる。そして、そのシステム又は装置のコンピュータ(若しくはCPU、MPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによって、前述した実施形態の機能を実現することができる。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク等を用いることができる。また、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることもできる。
【0115】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した各実施の形態の機能が実現されるだけではない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した各実施例の機能が実現される場合も含まれている。
【0116】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書きこまれてもよい。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した各実施の形態の機能が実現される場合も含むものである。
【0117】
つまり、本発明の実施形態は、例えばコンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記の印刷処理用のプログラムも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】記録ヘッド201の一例の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】カラープリンタの色分解処理の内容を示す図である。
【図5】走査番号とノズルとの関係を示す図である。
【図6】4パスの場合の走査Duty設定用LUT106の一例を示す図である。
【図7】走査Duty設定部105の動作を示す図である。
【図8】走査番号k=1の場合の動作を示す図である。
【図9】走査番号kが1〜7の場合の走査Duty値を示す図である。
【図10】走査Dutyバッファ107の例を示す図である。
【図11】ハーフトーン処理の内容を示すフローチャートである。
【図12】光沢性が低下する原因を示す図である。
【図13】誤差拡散係数の例を示す図である。
【図14】記録濃度が高い場合の誤差拡散係数の値を示す図である。
【図15】累積誤差ラインバッファの例を示す図である。
【図16】誤差拡散係数の他の例を示す図である。
【図17】ハーフトーン処理部108の構成を示す図である。
【図18】走査番号k=1の走査Duty値がハーフトーン処理後に格納されたハーフトーン画像格納バッファ110を示す図である。
【図19】フィードバック系誤差拡散処理を実現する回路の例を示す図である。
【図20】画素参照係数hとドットの集中の程度との関係を示す図である。
【図21】マルチパス記録方式の概要を示す図である。
【図22】マルチパス記録方式における画像データ配列を示す図である。
【図23】本発明の実施形態における制約情報演算部の詳細構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の実施形態における制約情報演算処理を示すフローチャートである。
【図25】本発明の実施形態の制約情報演算におけるフィルタ処理後の走査Dutyデータを示す模式図である。
【図26】本発明の実施例の制約情報演算におけるフィルタの具体例を示す図である。
【図27】本発明の実施形態の制約情報演算におけるフィルタ処理後のハーフトーンデータを示す模式図である。
【図28】本発明の実施形態の制約情報演算におけるシフト後の走査Dutyデータを示す模式図である。
【図29】本発明の実施形態の制約情報演算におけるシフト後のハーフトーンデータを示す模式図である。
【符号の説明】
【0119】
1:画像処理装置
2:プリンタ
101:画像データ入力端子
102:入力画像バッファ
103:色分解処理部
104:色分解用LUT
105:走査DUTY設定部
106:走査DUTY設定用LUT
107:走査DUTY設定バッファ
108:ハーフトーン処理部
109:制約情報バッファ
110:ハーフトーン画像格納バッファ
111:制約情報演算部
112:画像データ出力端子
201:記録ヘッド
202:記録媒体
203:移動部
204:ヘッド制御部
205:搬送部
206:インク色及び吐出量選択部
207:ハーフトーン画像格納バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を備えた記録ヘッドを記録媒体上で走査して画像を形成する画像形成手段用に画像処理を行う画像処理装置であって、
画像データを入力する画像入力手段と、
前記画像データに対して、前記記録ヘッドの主走査毎に、前記記録素子毎の記録量を算出する走査内記録量算出手段と、
前記走査内記録量算出手段により算出された記録量に対し、ハーフトーン処理により走査内パターンを算出するハーフトーン処理手段と、
を有し、
前記ハーフトーン処理手段は、前記記録量が所定の閾値より大きい場合に、前記記録媒体上にドットを集中して配置することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ハーフトーン処理手段は、前記ハーフトーン処理において、前記記録量が前記閾値より大きい場合に、前記記録媒体上に配置されるドットの周波数特性をグリーンノイズ特性とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ハーフトーン処理手段は、前記ハーフトーン処理において、前記記録量が前記閾値以下の場合に、前記記録媒体上にドットを離散的に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
複数の記録素子を備えた記録ヘッドを記録媒体上で走査して画像を形成する画像形成手段用に画像処理を行う画像処理方法であって、
画像データを入力する画像入力ステップと、
前記画像データに対して、前記記録ヘッドの主走査毎に、前記記録素子毎の記録量を算出する走査内記録量算出ステップと、
前記走査内記録量算出ステップにおいて算出した記録量に対し、ハーフトーン処理により走査内パターンを算出するハーフトーン処理ステップと、
を有し、
前記ハーフトーン処理ステップは、前記記録量が所定の閾値より大きい場合に、前記記録媒体上にドットを集中して配置するドット配置ステップを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
複数の記録素子を備えた記録ヘッドを記録媒体上で走査して画像を形成する画像形成手段用の画像処理をコンピュータに行わせるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
画像データを入力する画像入力ステップと、
前記画像データに対して、前記記録ヘッドの主走査毎に、前記記録素子毎の記録量を算出する走査内記録量算出ステップと、
前記走査内記録量算出ステップにおいて算出した記録量に対し、ハーフトーン処理により走査内パターンを算出するハーフトーン処理ステップと、
を実行させ、
前記ハーフトーン処理ステップは、前記記録量が所定の閾値より大きい場合に、前記記録媒体上にドットを集中して配置するドット配置ステップを有することを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公開番号】特開2010−120185(P2010−120185A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293602(P2008−293602)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】