説明

画像処理装置

【課題】画像データの不正使用を防止する画像処理装置を提供する。
【解決手段】この画像処理装置は、画像データに対する入力画像処理あるいは/または出力画像処理を行うときに、前記画像データを所定の暗号化方法で暗号化する暗号化手段を備え、データバスを介して画像データを出力する際に、当該装置に接続した画像読取装置あるいは画像形成装置以外に対しては、前記暗号化手段によって暗号化した画像データを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読込装置、あるいは、画像形成装置に接続される暗号化、復号化機能を備える画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるソート機能を備えたデジタル複合機では、原稿複写の際、読み取った原稿の画像データをハードディスク等に一旦格納し、格納された画像データの中から任意の画像データを繰り返し読み出してソートして出力するようにしている。
この場合、原稿の複写処理を終えても、次の原稿の複写処理がなされて画像データが上書きされるまでの間、その原稿の画像データはハードディスク等に残っている。
【0003】
また、待機時の消費電力を低減させることによって大きな省エネ効果が得られることから、待機中の電力削減と起動時間の短縮を狙って、処理途中のプログラムの状態や作業領域のデータをハードディスク等に保存している。
【0004】
このように、読み取った画像データや処理途中のデータをハードディスク等に保存すると、機密性の高い原稿や他人に知られたくない原稿のセキュリティが保たれない恐れが出てくる。
【0005】
このため、特許文献1のデータ処理装置では、外部のハードディスク等に保存するときに暗号化して保存し、処理中には復号したデータを揮発性メモリに一時的に保存しておき、処理が終わるとこのデータを削除するようにしている。また、電源が遮断されたような場合には、揮発性メモリに記憶されていたデータは自動的に消去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−341745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1では、処理途中で暗号化データを復号し、一旦外部のメモリに書き出すため、この復号化過程で外部バスをモニタすることによって、復号したデータを不正に取得される恐れがある。
また、一旦外部の揮発性メモリ上に保存されたデータは、装置が遮断されるまでは、不正なプログラムで読み出すことは全く不可能というわけではない。
【0008】
本発明は、上述の実情を考慮してなされたものであって、画像データの不正使用に対する保護機能を強化する画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、画像データに対する入力画像処理あるいは/または出力画像処理を行う画像処理装置において、前記画像データを所定の暗号化方法で暗号化する暗号化手段を備え、データバスを介して画像データを出力する際に、当該装置に接続した画像読取装置あるいは画像形成装置以外に対しては、前記暗号化手段によって暗号化した画像データを出力する。
【0010】
さらに、外部記憶装置をデータバスで接続し、画像データに対する入力画像処理あるいは/または出力画像処理を行う画像処理装置において、データバスを介して画像データを外部記憶装置に出力する際に、前記画像データを所定の暗号化方法で暗号化する暗号化手段と、データバスを介して画像データを外部記憶装置から読み込む際に、読み込んだ前記画像データを所定の復号化方法で復号する復号化手段と、を備えている。
【0011】
さらに、当該画像処理装置が有する異なるデータバスを介して外部記憶装置に接続する場合、前記異なるデータバスごとに暗号化手段と復号化手段を設けるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、暗号化された画像データのみを装置外に出力するので、画像データの不正使用に対する保護機能を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像処理装置を適用した画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の画像処理装置のハード構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の画像処理装置の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の画像処理装置を適用した画像形成装置の概略構成図である。同図において、画像形成装置10は、制御部11、操作部12、不揮発性メモリ13、画像処理部(画像処理装置)14、メモリ15、画像読取部16、画像出力部17、HDDコントローラ18、HDD(Hard Disk Drive)19から構成されている。
【0016】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Microprocessing Unit)などで構成され、ローカルバスを介して不揮発性メモリ13にアクセスし、記憶された制御プログラムを実行することによって、当該装置10の各部の機能を制御する。
また、制御部11と画像読取部16および画像出力部17とはシリアル通信を介して接続される。
【0017】
操作部12は、ユーザの操作入力を受付けるための複数の操作キーと、タッチパネルと一体となったLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等で構成され、ユーザが操作キーやタッチパネルを通して行った原稿の読取指示や印刷指示等を制御部11に送信したり、制御部11からの表示情報をLCDに表示する。
【0018】
不揮発性メモリ13は、電源オフ後も記憶しておくべき当該装置10の各種制御プログラム、ユーザデータやシステムデータなどを記憶する。
メモリ15は、画像処理部14の外部に設けられ、外部バスで接続され、画像処理部14で行われる各種の処理の一時記憶として使用する。
HDD19は、大型の記憶装置であり、HDDコントローラ18とPCIバスを介して制御部11と接続し、画像読取部16で読み取った画像データや画像処理部14で処理途中や処理結果の画像データを記憶する。
【0019】
画像読取部16は、画像照射ランプにより原稿を照射し、その反射光をCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)センサで受光することにより、原稿から読み取った画像に対応する画像データを出力する。
画像出力部17は、画像処理部14で処理された画像データをレーザービームで感光体に書き込み、感光体に書き込まれた画像データを電子写真プロセスを使って、転写紙に印刷出力する。
【0020】
画像処理部14は、画像読取部16で読み取った画像データの画像処理と、画像出力部17に出力する画像処理を行う1個の集積回路(IC)であり、メモリ15、画像読取部16、画像出力部17が接続され、PCIバス(Peripheral Components Interconnect bus)を介して制御部11やHDDコントローラ18と接続している。
【0021】
次に、本発明の画像処理部(画像処理装置)14について説明する。
図2は、本実施形態に係る画像処理部(画像処理IC)14のハード構成を示すブロック図である。同図において、画像処理部14は、画像読取部16からの画像入力を処理する入力画像処理部101、その後段にセレクタB102、画像の圧縮を行う圧縮部103、内部バスを介してデータを転送するデータ転送部a104、圧縮部103がメモリ15にアクセスするためのデータ転送部g105、画像出力部17への印刷用画像の画像処理を行う出力画像処理部106、その前段にある画像の伸長を行う伸長部107、セレクタC108、データ転送部b109、伸長部107がメモリ15にアクセスするためのデータ転送部h110、外部メモリであるメモリ15と接続されるメモリコントローラ111、第1暗号化部112、データ転送部c113、第1復号化部114、データ転送部d115、内部バスの使用順序調停するバス権調停器116、外部バスであるPCIバスとのインターフェイスを制御する外部バス制御部117、外部バス制御部117を介して外部からアクセスできる制御レジスタ部118、セレクタA121、その後段にある第2復号化部122、データ転送部f123、データ転送部e120、第2暗号化部119から構成されている。
【0022】
入力画像処理部101は、画像読取部16が出力する画像データに対して、例えば、拡大処理、鏡像処理、誤差拡散、圧縮・伸張などの処理を施す機能を果たす。
入力画像処理部101は、処理途中のデータをメモリ15に一時的に記憶したり、取得するときには、第1暗号化部112によってデータを暗号化してから書き出し、読み取ったデータを第1復号化部114で復号してから取得する。
【0023】
また、入力画像処理部101は、制御部11とデータの送受信を行うときには、PCIバスを介して行う。データを入力画像処理部101からPCIバスに送るときには、第2暗号化部119によって当該データを所定の暗号化方法で暗号化してから送り出す。
また、制御部11からPCIバスを介してデータを受け取るときには、受け取ったデータを第2復号化部122で所定の復号方法で復号してから取得する。
【0024】
出力画像処理部106は、HDD19から画像データを取得して、例えば、多値化処理、合成処理、濃度変換処理、変倍処理、圧縮・伸張などの処理を施し、画像出力部17に出力する機能を果たす。
出力画像処理部106は、メモリ15や不揮発性メモリ13やHDD19へデータを記憶させたり、取得するときには、入力画像処理部101と同様に暗号化・復号化が行われる。
【0025】
これにより、メモリ15に暗号化されないデータが記憶されることがなく、また、PCIバスに暗号化されていないデータが出力されることがなくなるので、画像データの不正な使用を防止することが可能であり、セキュリティが確保される。
【0026】
第1暗号化部112は、入力画像処理部101や出力画像処理部106が出力するデータのAES暗号化(Advanced Encryption Standard)を行い、暗号化データをメモリ15に書き出す。
第1復号化部114は、入力画像処理部101や出力画像処理部106がメモリ15から読み取った暗号化データをAES復号化し、復号化データを渡す。
【0027】
第2暗号化部119は、入力画像処理部101や出力画像処理部106が出力したデータのAES暗号化を行い、PCIバスを介して制御部11へ送る。制御部11は、不揮発性メモリ13やHDD19にこの暗号化データを書き込む。
第2復号化部122は、制御部11を介して、入力画像処理部101や出力画像処理部106が不揮発性メモリ13やHDD19から読み取ったデータをPCIバスを介して受け取ると、当該データをAES復号化して渡す。
尚、上記の暗号化・復号化では、AESを用いているが他の暗号化・復号化方法でも構わない。
【0028】
(画像データの読み込み)
制御部11は、操作部12で指定したユーザの画像読込要求を受けると、PCIバスを介して、画像サイズ、カラー/グレースケール、画像の圧縮の有無などの読み込み条件を画像処理部14内部の制御レジスタ部118に設定し、シリアル通信を介して画像読取部16に画像読込開始を指示する。
【0029】
画像の読み込みが開始されると、画像読取部16が読み取った画像データが入力画像処理部101に入力され、画像処理がなされる。ここで、例えば、画像データの圧縮する場合には、セレクタB102が圧縮部103に画像が入力されるように接続され、圧縮部103がデータ転送部g105を介してメモリ15を作業域としてJPEG圧縮方式で画像の圧縮を行う。
【0030】
圧縮された画像データは、データ転送部a104を介して、データ転送部e120に送られ、第2暗号化部119で暗号化がなされた後、外部バス制御部117によってPCIバスを介して、制御部11に送られ、不揮発性メモリ13に蓄えられる。
画像の読み込みが終了すると、制御部11はHDDコントローラ18を介してHDD19に画像データ1ページ分を保存する。複数ページある場合は、この動作が繰り返される。また、画像圧縮が必要ない場合は、セレクタB102は圧縮部103をバイパスする。
【0031】
以上のように、外部データバス(PCIバス)上に、元画像が出力されることがないので、元画像の不正な使用を防止することが可能である。
また、外部に設けられたメモリ15にデータを記憶する場合でも、元画像が出力されることがないので、元画像の不正な使用を防止することが可能である。
【0032】
(画像データの印刷)
制御部11は、操作部12で指定したユーザの画像印刷要求を受けると、PCIバスを介して、画像サイズ、画像の圧縮の有無、暗号化の有無、用紙サイズや印刷部数などの印刷条件を画像処理部14内部の制御レジスタ部118に設定し、PCIバスを通じて、HDDコントローラ18を介してHDD19に保存してある画像データを不揮発性メモリ13に転送するとともに、シリアル通信を介して画像出力部17に作像の開始を指示する。
【0033】
制御部11は、作像が開始されると、PCIバスを介して、不揮発性メモリ13に転送された画像データを画像処理部14の内部の外部バス制御部117に送る。
画像が暗号化されているので、セレクタA121が第2復号化部122に接続され、復号化された後、データ転送部f123によってデータ転送部b109に送られ、画像圧縮がなされている場合は、セレクタC108が画像データを伸長部107に送る。
伸長部107は、データ転送部h110を介してメモリ15を作業域として使用して伸長する。
【0034】
伸長部107から伸長された画像データが出力画像処理部106に送られ、印刷用の画像処理がなされて画像出力部17で印刷され、複数ページある場合は、上記の動作が繰り返される。また、画像伸長が必要ない場合は、セレクタC108は伸長部107をバイパスし、暗号化されていない場合は、セレクタA121は第2復号化部122をバイパスする。
【0035】
このように、画像処理部14と画像読取部16間、および、画像処理部14と画像出力部17間を除いて、暗号化されない画像データが画像処理部14の外部のメモリ15や、PCIバスに出力できないようにした。
したがって、画像処理部14が1個の集積回路(IC)として前述のように構成されるため、制御部11で実行されるプログラムがどのような振舞いをしても、暗号化されていない画像データをPCIバスからもメモリ15からも取り出すことができない。
【0036】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形、修正が可能であるのは勿論である。
例えば、実施形態の画像処理装置では、画像読取と画像印刷の両方を扱うように構成したが、何れか一方、あるいは画像処理のみを扱うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…画像処理装置、11…制御部、12…操作部、13…不揮発性メモリ、14…画像処理部、15…メモリ、16…画像読取部、17…画像出力部、18…HDDコントローラ、19…HDD、101…入力画像処理部、102…セレクタB、103…圧縮部、104…データ転送部a、105…データ転送部g、106…出力画像処理部、107…伸長部、108…セレクタC、109…データ転送部b、110…データ転送部h、111…メモリコントローラ、112…第1暗号化部、113…データ転送部c、114…第1復号化部、117…外部バス制御部、118…制御レジスタ部、119…第2暗号化部、120…データ転送部e、121…セレクタA、122…第2復号化部、123…データ転送部f。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する入力画像処理あるいは/または出力画像処理を行う画像処理装置において、前記画像データを所定の暗号化方法で暗号化する暗号化手段を備え、データバスを介して画像データを出力する際に、当該装置に接続した画像読取装置あるいは画像形成装置以外に対しては、前記暗号化手段によって暗号化した画像データを出力することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
データバスを介して画像データを外部記憶装置に出力する際に、前記画像データを所定の暗号化方法で暗号化する暗号化手段と、データバスを介して画像データを外部記憶装置から読み込む際に、読み込んだ前記画像データを所定の復号化方法で復号する復号化手段と、を備え、外部に設けられた記憶装置とデータバスで接続した請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
当該画像処理装置が有する異なるデータバスを介して外部記憶装置に接続する場合、前記異なるデータバスごとに暗号化手段と復号化手段を設けることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−114751(P2011−114751A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271112(P2009−271112)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】