説明

画像分散情報生成装置およびその合成装置

【課題】 画像が正常に再生できたことを自動的に判断できず、また合成する部分情報の数によって再生される画像の品質を制御できる画像分散情報生成装置およびその合成装置を提供することにある。
【解決手段】 画像分散情報生成装置は、量子化誤差の改善に同程度寄与する画像情報aのビットプレーンを集め、複数の階層に分割して符号化する階層符号化手段31と、少なくともk個(1≦k≦Nの整数)の部分データから元の符号化データが再生できるように、ある階層の符号データからN個(N≧1の整数)の異なる部分データを、秘密分散共有法を用いかつ上位のビットプレーン程少ない個数の部分データから合成できるようにkの値を階層ごとに変化させて作成する合成可能個数可変部分データ作成手段32(1)〜32(L)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル画像処理の分野に属し、特に、画像コンテンツの損失や、盗難に対するコンテンツレベルでの高いセキュリティを実現できる画像分散情報生成装置およびその合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロードバンドネットワークの整備により、コンテンツビジネスが発展している。価値の高いコンテンツ情報を蓄積する際に、災害や物理的なサーバ故障などによるデータの損失を防ぐため、複製を別の場所に蓄積する手法が取られる。この場合、データが複数存在することにより、サーバのクラック等により情報が漏洩し、コンテンツの価値が低下してしまう危険性が増すことになる。
【0003】
そこで秘密分散共有法という手法を使った情報の分散蓄積方法が提案されている。これは、図8(a)に示すように画像情報を複数の分散情報に分散して蓄積しておき、同図(b)に示すようにそのうち幾つかを合成することにより元の画像情報が得られるというものである。
【0004】
この方式により情報を分散して蓄積しておくことで、図9(a)に示すように分散情報の一部が紛失した場合でもオリジナルの画像情報の再現性が補償でき、同図(b)に示すように分散情報の一部が漏洩したとしてもオリジナルの情報が秘匿されるという、強固なコンテンツレベルでのセキュリティが実現される。
【0005】
ここで、前記秘密分散共有法のうちの最も有名なものである、(k,n)閾値秘密分散法を以下に説明する。この方式は、分散関数と呼ばれる(k−1)次の多項式を用いて秘密情報を分散符号化するもので、分散関数の一般形は秘密情報S、乱数項r(1≦i≦k−1)および素数pにより次のように表現される。

f(x)=S+ax+Λ+ak−1k−1(mod p)・・・(1)
【0006】
分散情報Wは上記の分散関数に任意のi(i<p)を代入し、W=f(i)として算出される。分散関数f(x)は(k−1)次の多項式である事から、k個の分散情報を集めれば分散関数自体を復元でき、したがって秘密情報Sの復元が可能となる。図10に分散関数f(x)と分散情報Wの関係の概念図を示す。一般に、秘密情報Sはk個の分散情報を表わす連立方程式を解く事により復元されるが、閾値秘密分散法では以下のLagrangeの補間公式が用いられる事が多い。
【0007】
【数1】

【0008】
閾値秘密分散法においては、秘密情報Sの復元は可能か不可かの二通りしかない。このような秘密分散法は完全秘密分散法と呼ばれる。
【0009】
なお、本発明に関連する従来技術として、下記の特許文献1,2に記されているものがある。
【特許文献1】特開2002−358013号公報
【特許文献2】特開2002−135247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
課題1: 上記の秘密分散共有法では、kの値を公開しないことにより、より強度の高いシステムの構築が可能である。つまり、第3者はいくつ分散情報を合成すればオリジナルの画像を再生できるかどうかがわからない。しかし、圧縮画像ファイルに対して秘密分散共有法をそのまま適用すると、分散情報はほぼランダムなビット列となり、元のファイルフォーマットは完全に失われる。そのため、オリジナルの画像がJPEGやJPEG 2000などの一般的な画像圧縮フォーマットにより圧縮されていた場合には、合成器側でいくつ以上合成すればよいかの情報がわからない状態でも、合成して出来たデータを、まずはこれらの画像復号器に入力し、正常処理が行えた場合には画像が正常に再生できたと自動的に判断できてしまう。そこで、オリジナルの画像が再生できたことを、画像の復号器やその他のソフトウェアでは自動的に判別できないような手法が望まれる。
【0011】
課題2: また、一般の秘密分散共有法により作成された分散情報では、ある一定の数の分散情報を集めなければオリジナル情報の内容を確認できないため利便性に問題がある。つまり、セキュリティレベルを高めるために大きなkの値を用いた場合などは、管理者でさえ、多数の分散情報を集めなければオリジナル情報を確認することができない。ある一定数の分散情報を集めて、オリジナル情報を完全に再生するまでもなく、どのような情報が含まれるかを確認するために、より少ない数の分散情報でオリジナル情報の概要のみを再生できるようにすることで、利便性が向上するものと考えられる。
【0012】
本発明の目的は、前記した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、画像が正常に再生できたことを自動的に判断できず、また合成する部分情報の数によって再生される画像の品質を制御できる画像分散情報生成装置およびその合成装置を提供することにある。また、画像コンテンツの損失、盗難に対するコンテンツレベルでの高いセキュリティを実現する画像分散情報生成装置およびその合成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した目的を達成するために、本発明は、画像分散情報生成装置において、量子化誤差の改善に同程度寄与する画像情報のビットプレーンを集め、複数の階層に分割して符号化する階層符号化手段と、少なくともk個(1≦k≦Nの整数)の部分データから元の符号化データが再生できるように、ある階層の符号データからN個(N≧1の整数)の異なる部分データを、秘密分散共有法を用いかつ上位のビットプレーン程少ない個数の部分データから合成できるようにkの値を階層ごとに変化させて作成する合成可能個数可変部分データ作成手段と、各階層において作成されたN個の部分データから一つ選び、すべての階層分の部分データを集めて一つの分散情報ファイルとし、各階層のN個の部分データをすべて使ってN個の分散情報ファイルを作成する分散情報ファイル作成手段とを具備した点に第1の特徴がある。
【0014】
また、本発明は画像分散情報ファイルの合成装置において、前記画像分散情報生成装置により作成されたN個の画像分散情報ファイルから各階層の部分データを抽出する部分データ抽出手段と、該抽出部分データから秘密分散共有法を用いて合成し、符号化データを再生する、合成数可変分散情報合成手段と、再生された符号化データを復号する階層復号手段とを具備した点に第2の特徴がある。
【0015】
また、本発明は、画像分散情報生成装置において、どの階層の符号化データがいくつの部分データから合成できるかを示す情報を画像分散情報ファイルに付加する手段を具備した点に第3の特徴がある。
【0016】
さらに、本発明は、画像分散情報ファイルの合成装置において、合成に使用する前記画像分散情報ファイルの個数と画像分散情報ファイルに付加された情報とを抽出し、どの階層の符号化データが合成可能かを特定する手段と、合成可能な階層の部分データのみを、上位ビットプレーンを含む階層から順に抽出する部分データ抽出手段とを具備した点に第4の特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、量子化誤差の改善に同程度寄与するビットプレーンを集めて階層的に制御する画像分散情報生成・合成において、画像圧縮フォーマット内の階層構造を保ったまま、画素(あるいは変換係数)の符号情報だけを秘密分散共有処理することにより、k個以下の分散情報ファイルから合成されたデータでも、オリジナル画像の圧縮フォーマットに準拠させることができる。このため、再生画像の正誤判定は人間の目で見て行わざるを得ず、自動的にオリジナルの画像が再生されたかどうかを判定しにくくすることができるようになる。これにより、悪意ある第3者が、プログラム等により自動的に分散情報画像を収集できたとしても、画像の再生は一つ一つ目視による確認が必要となる。
【0018】
また本発明によれば、完全に画像情報が再生されるのに必要なシェアの個数より少ない個数のシェアを集めるだけで画像の概要が分かるため、利便性が向上する。例えば、秘密分散共有機能をもったシステムの管理者が、画像コンテンツを管理する際などに有効である。
【0019】
また本発明によれば、合成する部分情報ファイルのビットプレーンによって再生される画像の品質を制御できる。すなわち、画像分散情報ファイルを合成する場合、合成するファイルの個数が少ないと上位のビットプレーンのみの画像が再生されて量子化精度の低い画像が得られ、ファイルの個数が増えるごとに下位のビットプレーンを含んだ量子化精度の高い画像(量子化誤差の少ない画像)が再生されるようになる。必要に応じては上位のビットプレーン一部の情報だけから品質の低い画像を再生することを可能とし、利用者が画像の概要を知る手段を階層的に提供できるようになる。
【0020】
また、本発明によれば、画像コンテンツの損失、盗難に対するコンテンツレベルでの高いセキュリティを実現すると共に、階層的な半開示などの高い利便性を提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を図面を参照して詳細に説明する。本発明は、秘密分散共有法と画像の階層符号化技術を用いる。秘密分散共有法の概要は前記した(背景技術の欄で説明した)通りであるので説明を省略し、以下では、階層符号化技術について説明する。
【0022】
階層符号化技術としては、ウェーブレット変換符号化やビットプレーン符号化、あるいはこれらを組み合わせた方式などがある。本発明には、注目領域(ROI:Region Of Interest)を優先的に符号化するROI符号化と秘密分散法を組み合わせる方式も含まれる。
【0023】
階層符号化器は、図1(a)に示すように、階層符号化部1において、画像情報を階層化して符号化する。その後、ファイル作成部2において、復号器側でそれぞれの階層の符号化データpを抽出・復号するために必要な情報qを付加し、一つの符号化ファイルとして出力する。一方、復号器では、同図(b)に示すように、符号化データ抽出部3は前記により付加された情報qにもとづき、各階層の符号化データpを抽出する。その後、復号器4は、該付加情報qを利用して各階層の符号化データpを復号する。
【0024】
階層化としてはさまざまな手法が提案されているが、ここではウェーブレット変換による周波数サブバンド符号化、ビットプレーン符号化およびROI符号化について説明する。周波数分解した変換係数をビットプレーン符号化することにより、上記周波数サブバンド符号化とビットプレーン符号化の2つの符号化は同時に行うことが可能である。
【0025】
(周波数サブバンド符号化)
ウェーブレット変換を施すことにより、図2に示すように周波数を示すサブバンドに分解する。各サブバンド内部はオリジナル画像情報の空間的な位置情報を残している。ここでは、縦方向、横方向それぞれに対して2分割を分割の単位とし、低周波数成分に対して繰り返し分割を行う。図2は繰り返し数2回の結果である。分解の回数の多いサブバンドほど低い周波数成分を含んでいることになるため、分解の回数に応じてサブバンドを階層化し、それぞれの階層を符号化する。低周波数サブバンドの階層のみを伝送・復号することで、低周波数成分のみを含む画像、つまりオリジナル画像情報の概要をあらわす画像が再生できる。
【0026】
(ビットプレーン符号化)
図3に示すように、画像情報の画素あるいはサブバンド内の変換係数を符号化する際に、各画素(係数)をビットの並びと見て、特定の位置のビットのみを空間方向にスキャンしていくことでビット平面として取り出し、ビット平面を階層の単位として符号化する。
【0027】
JPEG 2000などでは、サブバンド内のより小さな矩形領域内において、各ビットプレーンから複数の符号化パスを生成する。そして再生画像の符号化誤差への寄与度がほぼ等しいパスの集まりを各矩形領域より集めてきて一つの階層(レイヤ)としている。ここでは、このようにビットプレーンの概念を用いた符号化方式を広く総称してビットプレーン符号化と呼ぶことにする。
【0028】
ビットプレーン符号化では、再生する階層が増えるに従って、再生画像の量子化誤差が小さくなっていく。
【0029】
(ROI符号化)
特定の領域を優先して符号化するROI符号化も注目部分とそうでない部分とを区分して符号化するため、以降階層符号化に含めて議論する。 JPEG 2000のROI符号化では、注目領域に対応する符号化する前のウェーブレット変換係数をシフトアップしてビットプレーン符号化することにより注目領域を優先的に符号化している。このような種類のROI符号化もここでは階層符号化に含めることとする。
【0030】
次に、前記秘密分散共有法と前記階層符号化技術とを組み合わせた、本発明の分散蓄積装置および合成装置(配信装置)について説明する。
【0031】
まず、秘密分散共有法を用いて画像分散情報を作成し、これを蓄積する分散蓄積装置の一実施形態を説明する。
【0032】
図4は、画像分散情報生成装置の構成を示すブロック図である。該画像分散情報生成装置は、階層符号化部11、部分データ作成部12(1)〜12(L)、分散情報ファイル作成部13(1)〜13(N)、および制御部14からなる。
【0033】
階層符号化部11において、画像情報aを(周波数、量子化精度、特定の意味をもつ画像内の特定領域などの視点から)L階層に階層化し符号化を行う。この階層符号化の詳細は、前記した通りである。該階層符号化部11は、符号化ファイルフォーマットを決定するのに必要な情報を含まない画素や係数の符号データのみを部分データ作成部12(1)〜12(L)に送る。一方、符号化ファイルフォーマットを決定するのに必要な情報は、「復号に必要な付加情報q」として分散情報ファイル作成部13(1)〜13(N)に送られる。該「復号に必要な付加情報q」は、分散情報ファイルを作成するときに、すべての分散情報ファイルで共通に利用される。
【0034】
制御部14は、作成するN個(N≧1)の分散情報に対して、それぞれ異なる一つのID15を与える。部分データ作成部12(1)〜12(L)は、これらのN個のID15のそれぞれを式(1)のxとして用いることにより、ある階層の符号化データからN個の異なる部分データ16を作成する。このとき秘密分散共有法を用いて、少なくともk個(1≦k≦N)の部分データから元の符号データが再生できるようにしておく。ここで、すべての階層に対してkは同一である。
【0035】
分散情報ファイル作成部13(1)〜13(N)は、各階層において作成されたN個の部分データのうちの一つの部分データを、すべての階層から集め、一つの分散情報ファイルを作成する。各階層からN個の部分データが作成されるため、N個の分散情報ファイルが作成される。
【0036】
この時、分散情報ファイル作成部13(1)〜13(N)は、前記ID15の値を「合成に必要な付加情報17」として各分散情報ファイルのヘッダに付加する。符号化ファイルフォーマットが一般的な標準フォーマットの場合には、プライベートな情報が書き込めるヘッダ中の領域に書き込む。
【0037】
上記のようにして作成された分散情報ファイル1〜Nは、図示されていない蓄積装置(画像分散蓄積装置)に格納される。
【0038】
次に、秘密分散共有法を用いた画像分散情報の合成について説明する。図5は、画像分散情報ファイルの合成装置の構成を示すブロック図である。
【0039】
該合成装置は、部分データ抽出部21(1)〜21(n)、符号化データ合成部22(1)〜22(L)および復号部23からなる。
【0040】
図4の画像分散情報生成装置により作成されたN個の画像分散情報ファイルのうち、n個(1≦n≦N)の画像分散情報ファイルから画像を再生する。部分データ抽出部21(1)〜21(n)においては、各分散情報ファイルからL個の階層の部分データと合成に必要な情報(その部分情報ファイルのID)24が抽出される。それぞれの階層に対するn個の部分データは符号化データ合成部22(1)〜22(L)において合成され、それぞれの階層の符号化データが作成される。
【0041】
全階層の符号化データは、まとめて復号部23において復号され、復号画像が生成される。ここでn≧kの場合にのみ、元の符号化データが再生される
【0042】
この実施形態によれば、画像圧縮フォーマット内の階層構造などを保ったまま、画素(あるいは変換係数)の符号情報だけを分散処理することにより、k個以下の分散情報から合成されたデータでも、オリジナル画像の圧縮フォーマットに準拠している。このため、再生画像の正誤判定は人間の目で見て行わざるを得ず、自動的にオリジナルの画像が再生されたかどうかを判定しにくくすることができる。このため、前記課題1を解決することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態である、合成する分散情報ファイルの数に応じて、再生される画像の品質を階層的に制御できる分散情報生成装置と階層的な合成装置とを説明する。
【0044】
図6は、上記の特徴を有する画像分散情報生成装置の構成を示すブロック図である。該画像分散情報生成装置は、階層符号化部31、部分データ作成部32(1)〜32(L)、分散情報ファイル作成部33(1)〜33(N)、制御部34およびk値決定部35からなる。
【0045】
階層符号化部31は、画像情報aを(周波数、量子化精度、特定の意味をもつ画像内の特定領域などの視点から)L階層に階層化し符号化を行い、符号化ファイルフォーマットを決定するのに必要な情報を含まない画素や係数の符号データのみを部分データ作成部32(1)〜32(L)に送る。符号化ファイルフォーマットを決定するのに必要な情報は「復号に必要な付加情報q」として分散情報ファイルを作成するときに、すべての分散情報ファイルで共通に利用する。
【0046】
制御部34は、作成するN個(N≧1)の分散情報に対して、それぞれ異なる一つのID36を与える。
【0047】
k値決定部35は、優先度の高い階層ほど小さなk値を割り当てるように、各階層に1つ、計L個のk値35aが決定される。
【0048】
部分データ作成部32(1)〜32(L)は、N個のIDそれぞれを式(1)のxとして用いることにより、ある階層の符号化データからN個の異なる部分データ37を作成する。このとき、どの階層を処理しているかに応じてk値決定部35で決定されたkの値を用いる。つまり、階層ごとに異なる個数の部分データから符号化データが再生できるようにkの値を階層ごとに変化させて部分データ37が作成される。各階層に対して決定されたkの値、つまり全階層に対するkの値35bは、制御部34を介して分散情報ファイル作成部33(1)〜33(N)に送られ、合成に必要な付加情報38としてすべての分散情報ファイル1〜Nに付加される。
【0049】
分散情報ファイル作成部33(1)〜33(N)は、各階層において作成されたN個の部分データ37のうちの一つの部分データを、すべての階層から集め、一つの分散情報ファイルを作成する。各階層からN個の部分データが作成されるため、N個の分散情報ファイルが作成される。分散情報ファイル作成部33(1)〜33(N)は、また、「合成に必要な付加情報38」としてIDの値を各分散情報ファイルのヘッダに付加する。符号化ファイルフォーマットが一般的な標準フォーマットの場合には、この「合成に必要な付加情報38」はプライベートな情報が書き込めるヘッダ中の領域に書き込むことができる。
【0050】
例えば、k値決定部35において、階層1(最上位階層)にはk=2、階層2にはk=3、階層3より下位の階層にはk=4と設定したとする。そうすると、図5の合成装置において、任意の2個の分散情報ファイルを集めることにより(n=2の場合)、階層1が正しく再生される。また、任意の3個の分散情報ファイルを集めることにより(n=3の場合)、階層1と階層2が正しく再生され、任意の4個の分散情報ファイルを集めることにより(n=4の場合)、すべての階層が正しく再生されることになる。図5の合成処理において正しく再生されなかった下位の階層は、元の階層のデータとは異なる値で復号部23に送られるため、再生画像の雑音成分となる。
【0051】
さらに、「合成に必要な付加情報38」としてIDの値に加え、すべての階層を処理する際に用いたkの値を示すテーブル(k値テーブル)を含めておくことで、後述の図7の合成装置ではこのテーブルを利用し、正しく再生されなかった階層を画像の復号に使わないことができるようになり、雑音成分を含まない上位階層のみから再生された画像を得ることが出来るようになる。
【0052】
図7は、合成する分散情報の数に応じて、雑音成分を含まず再生画質を階層的に制御できる画像分散情報ファイルの合成装置の構成を示すブロック図である。この合成装置は、再生階層決定部41、部分データ抽出部42(1)〜42(n)、符号化データ合成部43(1)〜43(m)、階層選択部44および復号部45からなる。
【0053】
図6の画像分散情報生成装置により作成されたN個の画像分散情報ファイルのうち、n個(1≦n≦N)の画像分散情報ファイルから画像を再生する。部分データ抽出部42(1)〜42(n)より、k値テーブルdを抽出する。k値テーブルdには、各階層を分散処理する際に利用したkの値が記されており、再生階層決定部41において、nの値とk値テーブルdにより上位階層からいくつの階層が再生可能かがわかる。ここでは例としてm個の階層が再生可能であるとする。
【0054】
さらに部分データ抽出部42(1)〜42(n)においては、各分散情報ファイルからL個の階層の部分データと合成に必要な情報(その部分情報ファイルのID)が抽出される。
【0055】
ある階層に対するn個の部分データはその階層に対応する符号データ合成部に集められて合成され、符号化データが作成される。上位m階層より下位の階層の符号化データは正しく再生されていないため、階層選択部44において上位からm階層を残して捨てられる。上位からm階層はまとめて復号部45において復号され復号画像が生成される。このときmの数がLに近いほど、よりオリジナルに近い画像が再生されることとなる。
【0056】
より具体的な実施例として、下記3種類の分散情報生成・合成装置を挙げることができる。
(a)周波数成分を階層的に制御する画像分散情報生成・合成装置
(b)量子化誤差を階層的に制御する画像分散情報生成・合成装置
(c)ROI再生を階層的に制御する画像分散情報生成・合成装置
【0057】
上記(a)〜(c)の分散情報生成・合成装置について、以下に説明する。
(a)周波数成分を階層的に制御する画像分散情報生成・合成装置
図6の、合成する分散情報の数に応じて再生画質を階層的に制御できる画像分散情報生成装置における階層符号化部31において、画像情報をウェーブレット変換などの周波数変換を行ない、その周波数成分に応じて階層化して符号化を行うことにより、合成する分散情報ファイルの数に応じて、再生される周波数成分を制御できる。
合成時に合成する枚数が少ないと低周波数成分のみの画像(画像全体の概要)が得られ、枚数が増えるごとに高周波数成分(詳細部分)を含んだ画像が再生される。
【0058】
(b)量子化誤差を階層的に制御する画像分散情報生成・合成装置
図6の、合成する分散情報の数に応じて再生画質を階層的に制御できる画像分散情報生成装置における階層符号化部31において、ビットプレーン符号化を行ない、再生する階層が増えるに従って、再生画像の量子化誤差が小さくなっていくような階層化を行う。これにより、合成する分散情報ファイルの数に応じて、再生される量子化精度を制御できる。
前記画像分散情報生成装置により生成された画像分散情報ファイルを合成する場合、合成するファイルの個数が少ないと上位のビットプレーンのみの画像が再生されて量子化精度の低い画像が得られ、ファイルの個数が増えるごとに下位のビットプレーンを含んだ量子化精度の高い画像(量子化誤差の少ない画像)が再生される。
【0059】
(c)ROI再生を階層的に制御する画像分散情報生成・合成装置
図6の、合成する分散情報の数に応じて再生画質を階層的に制御できる画像分散情報生成装置における階層符号化部31において、ROI符号化を行ない、注目する特定領域と背景領域が別の階層になるように符号化を行う。これにより、合成する分散情報ファイルの数に応じて、ROI再生を階層的に制御できる。
合成時に合成するファイル数が少ないと注目する特定領域のみが再生され、ファイル数が増えるごとに背景まで含んだ全画像が再生される。
【0060】
(d)単独の画像分散情報だけで情報の半開示が可能な画像分散情報生成
さらに他の実施例として、上記に示した分散情報生成装置に対応した合成装置ではなく、通常の復号装置(図1(b))において復号した場合には、低品質で画像が再生(半開示)されるファイルを作成する画像分散情報生成装置を示す。
前記合成する分散情報の数に応じて、再生画質を階層的に制御できる画像分散情報生成装置において、最も重要度の高い階層(最低周波数成分、最上位ビットプレーンまたは特定画像領域)の符号化データについては秘密分散共有法を用いた分散処理を行わず単に複製を用い、残りの階層に対して秘密分散共有法を用いた分散処理により部分データを作成する。
【0061】
これにより、該分散情報生成装置に対応した合成装置でなく、通常の復号装置においても画像分散情報ファイルを復号できる。復号された画像は、分散処理を行わなかった重要度の高い階層の成分についてはそのまま再生されるが、残りの分散処理された階層の部分データも分散処理されないものと同様に復号されるため、この成分が雑音となって再生画像に付加され、低品質な画像が再生される、または半開示の画像が再生されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の構成の概要を示すブロック図である。
【図2】ウェーブレット変換による周波数サブバンド分解の説明図である。
【図3】ビットプレーンの説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の画像分散情報生成装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態の画像分散情報ファイルの合成装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態の画像分散情報生成装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態の画像分散情報ファイルの合成装置の構成を示すブロック図である。
【図8】秘密分散共有法を用いた従来の分散蓄積方式の概略の説明図である。
【図9】一部の分散情報を損失してもオリジナル画像情報が再生可能であることと、一部の分散情報が第3者に漏洩しても画像情報が再生されないことを説明する図である。
【図10】分散関数f(x)と分散情報Wの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・階層符号化部、2・・・ファイル作成部、3・・・符号化データ抽出部、4・・・復号器、11、31・・・階層符号化部、12(1)〜12(L)、32(1)〜32(L)・・・部分データ作成部、13(1)〜13(N)、33(1)〜33(N)・・・分散情報ファイル作成部、14、34・・・制御部、15、36・・・ID、16、37・・・部分データ、17、38・・・合成に必要な付加情報、21(1)〜21(n)、42(1)〜42(n)・・・部分データ抽出部、22(1)〜22(L)、43(1)〜43(m)・・・符号化データ合成部、23、45・・・復号部、35・・・k値決定部、41・・・再生階層決定部、44・・・階層選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子化誤差の改善に同程度寄与する画像情報のビットプレーンを集め、複数の階層に分割して符号化する階層符号化手段と、
少なくともk個(1≦k≦Nの整数)の部分データから元の符号化データが再生できるように、ある階層の符号データからN個(N≧1の整数)の異なる部分データを、秘密分散共有法を用いかつ上位のビットプレーン程少ない個数の部分データから合成できるようにkの値を階層ごとに変化させて作成する合成可能個数可変部分データ作成手段と、
各階層において作成されたN個の部分データから一つ選び、すべての階層分の部分データを集めて一つの分散情報ファイルとし、各階層のN個の部分データをすべて使ってN個の分散情報ファイルを作成する分散情報ファイル作成手段とを具備することを特徴とする画像分散情報生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像分散情報生成装置により作成されたN個の画像分散情報ファイルから、各階層の部分データを抽出する部分データ抽出手段と、
該抽出部分データから秘密分散共有法を用いて合成し、符号化データを再生する、合成数可変分散情報合成手段と、
再生された符号化データを復号する階層復号手段とを具備することを特徴とする画像分散情報合成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像分散情報生成装置において、
どの階層の符号化データがいくつの部分データから合成できるかを示す情報を画像分散情報ファイルに付加する手段をさらに具備することを特徴とする画像分散情報生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像分散情報生成装置により作成されたN個の画像分散情報ファイルから、合成に使用する画像分散情報ファイルの個数と画像分散情報ファイルに付加された情報とを抽出し、どの階層の符号化データが合成可能かを特定する手段と、
前記N個の画像分散情報ファイルから、合成可能な階層の部分データのみを、上位のビットプレーンを含む階層から順に抽出する部分データ抽出手段と、
該抽出部分データから秘密分散共有法を用いて合成し、符号化データを再生する、合成数可変分散情報合成手段と、
再生された符号化データを復号する階層復号手段とを具備することを特徴とする画像分散情報合成装置。
【請求項5】
請求項1または3に記載の画像分散情報生成装置において、
前記合成可能個数可変部分データ作成手段において、最も重要度の高い階層(最上位ビットプレーン)の符号化データについては秘密分散共有法を用いた分散処理を行わず単に複製を用い、残りの階層に対して秘密分散共有法を用いた分散処理により部分データを作成することを特徴とした画像分散情報生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−10862(P2007−10862A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189723(P2005−189723)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】