説明

画像印刷装置

【課題】 印刷環境を設定する際に一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できるようにするとともに、ユーザの誤操作を引き起こさないようにすることが可能な画像印刷装置を提供する。
【解決手段】 ユーザが印刷環境を設定する設定画面と、設定された印刷環境をユーザに示す確認画面とを重ね合わせて、タッチパネルに表示する表示手段を設ける。これによって、タッチパネル上に余白が生じることになり、この余白を活用して、印刷環境の項目のボタンの面積を小さくすることなく、一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できる。ただし、このような重ね合わせを行うと、設定画面と確認画面とが見づらくなるという問題が生ずる。そこで、上記二画面のうち、ユーザが所定時間タッチした一の画面の表示態様の変更を行う変更手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルによって印刷環境の設定を行う、プリンタや複写機、複合機等の画像印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタや複写機、複合機等の画像印刷装置が、会社内等のみならず一般家庭においても急速に普及してきている。これらの中には、タッチパネルを備え、このタッチパネルをユーザが操作することによって、用紙サイズや印刷濃度等様々な印刷環境を設定できる画像印刷装置も多数存在する。
【0003】
図5(a)は、このような画像印刷装置のタッチパネルの表示の一例である。印刷環境を設定する設定画面510(基本画面タグに対応)内には、「用紙選択」「コピー濃度」「縮小/拡大」「集約」「原稿の画質」の印刷環境の項目を示すボタンが表示されている。ユーザはこれらのボタンを操作することで、これらの項目について印刷環境を設定する。この図5(a)の例では、用紙は「A4R(A4の縦向き)」であり、コピー濃度は「自動」であり、縮小/拡大は「自動倍率」であり、集約は「なし」、原稿の画質は「文字+写真」であることが設定されている。
【0004】
このようにして設定された印刷環境は、確認画面520(機能リストタグに対応)に表示される。ユーザはこの確認画面520を参照することで、印刷環境が正しく設定されたかどうかを確認し、不具合がある場合には再度設定しなおすことができるので、便宜である。
【0005】
以上のような便宜上の観点から、図5(a)に示したように、設定画面510と確認画面520との二画面を、タッチパネルに同時に表示する画像印刷装置が、例えば下記の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2005−111828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の技術には、以下のような問題点がある。
【0007】
近年の画像印刷装置の機能向上に伴って、ユーザが設定可能な印刷環境の項目は非常に多くなっており、タッチパネル上の限られた表示領域では、全ての項目を一画面で表示することは困難である。むしろ、全ての項目を表示するためには、数画面に該当する表示面積を必要とするのが通常となってきている。
【0008】
このため、例えば図5(b)に示すように、設定画面510内に切替ボタン511,512を設け、この切替ボタン511,512を操作することで、ユーザは、自らが設定したい項目が表示されているページ(例えば図5(c))に設定画面510を切替えて、当該項目を設定することとなる。
【0009】
当然のことながら、切替えるページ数が多い方が、ユーザが印刷環境を設定する手続は煩雑になる。ユーザの手続負担を軽減するためには、一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できるようにしておくのが望ましい。このためには、各項目のボタンの面積を小さくすることも考えられるが、ボタン面積が小さい場合にはユーザがタッチする際に、隣のボタンに触れてしまうなど誤操作を招く可能性が高くなってくる。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、印刷環境を設定する際に一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できるようにするとともに、ユーザの誤操作を引き起こさないようにすることが可能な画像印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を採用している。
【0012】
まず、本発明では、ユーザが印刷環境を設定する設定画面と、設定された印刷環境をユーザに示す確認画面との二画面を、同時に表示するタッチパネルを備える画像印刷装置を前提としている。
【0013】
そして、このような画像印刷装置において、上記設定画面と上記確認画面とを重ね合わせて、上記タッチパネルに表示する表示手段を設ける。これによって、タッチパネル上に余白が生じることになり、この余白を活用して、印刷環境の項目のボタンの面積を小さくすることなく、一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できるようにするのである。ただし、上記のような重ね合わせを行うと、上記設定画面と上記確認画面とが見づらくなるという問題が生ずる。これを解決するために、本発明の画像印刷装置には、上記二画面のうち、ユーザが所定時間タッチした一の画面の表示態様の変更を行う変更手段を設ける。この表示態様の変更としては、表示の点滅、色彩の変更及び濃度の変更を想定しているが、これらを単独で採用してもよいし、組み合わせて採用してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、設定画面と確認画面とを重ね合わせることでタッチパネル上に生じた余白を活用して、一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できるようにすることが可能となる。また、重ね合わせた画面の一方を点滅等させることにより、ユーザが見づらいという問題も解消できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における画像印刷装置100の全体構成を示す概念図である。
【0017】
ユーザが画像印刷装置100を利用して原稿のコピーを行う場合、原稿を例えば原稿台103に載置し、操作部に対して印刷の指示を行う。当該指示があると、以下に示す各部(駆動部)が動作することで、印刷が行われる。
【0018】
画像読取部101において、光源104から照射された光は、原稿台103に置かれた原稿に反射し、ミラー105によって撮像素子108に導かれる。撮像素子108は受光した光を光電変換することで、原稿の画像データが生成される。
【0019】
画像形成部102は、給紙カセット122から給紙される用紙に対して画像形成を行う。この画像形成部102には、感光体ドラム109と、その周囲に配置された帯電器100、露光器111、現像器112及び転写器113等と、その下流側に配置された定着装置118とを有している。感光体ドラム109表面を帯電器110によって帯電し、引き続いて露光器111により画像データに応じて光を照射する。こうすることで、感光体ドラム109上に静電潜像を形成する。そして、現像器112静電潜像にトナーを付着することで、感光体ドラム109上にトナー像が形成される。その後トナー像は転写器113によって用紙に転写される。このようにして、画像印刷装置100における画像形成処理が行われる。
【0020】
また画像形成部102は、印刷を行うときは何れか1つの給紙カセット122から用紙1枚をピックアップローラ115を用いて給紙する。給紙カセット122から引き出された用紙は、搬送ローラ124により用紙搬送路125へ引き出される。その後、用紙はレジストローラ117で感光体ドラム109と転写器113の間に送り込まれる。
【0021】
定着装置118において、加熱ローラ119と加圧ローラ120の間を用紙が通過すると、熱と用紙への押圧力によって可視像が用紙に定着する。画像形成部102は、定着装置118を通過した用紙を排紙トレイ121へ排紙する。
【0022】
図2は、本実施形態における画像印刷装置100の制御関連の概略構成図である。
【0023】
画像印刷装置100は、CPU(Central Processing Unit)201、RAM(Random Access Memory)202、ROM(Read Only Memory)203、HDD(Hard Disk Drive)204及び印刷における各駆動部に対応するドライバ205が内部バス206を介して接続されている。上記CPU201は、例えばRAM202を作業領域として利用し、ROM203やHDD204等に記憶されているプログラムを実行する。そして、当該実行結果に基づいて上記ドライバ205とデータや命令を授受することにより上記図1に示した各駆動部の動作を制御する。
【0024】
次に、本実施形態の画像印刷装置100に用いられる上記駆動部以外の各手段について説明する。上記駆動部以外の後述する各手段(図3参照)についても、上記CPU201がプログラムを実行することで各手段として動作する。
【0025】
図3は、本発明の画像印刷装置100の構成を示す機能ブロック図である。
複写等を行う場合には、まずユーザは上記操作部を構成するタッチパネル11を操作して、上記撮像素子108の一例であるCCD(Charge Coupled Device)等の読取手段17等により、入力手段15(RAM : Random Access Memory(図示しない)の一領域である)に画像データを入力する。具体的には、タッチパネル11に対するユーザのタッチ(押下)を、タッチパネルを構成する検知手段が検知し、当該検知した旨を所定の手段、ここでは読取手段17に送信する。なお、上記読取手段17は、本発明の画像印刷装置100の必須の構成要素ではなく、例えば、この画像印刷装置100とネットワークにより接続されたパーソナルコンピュータ19aや、スキャナ19b、ファクシミリ装置19cから、上記入力手段17に画像データが入力されるように構成してもよい。
【0026】
ユーザは、上記画像データを印刷手段16によって印刷する際に、タッチパネル11を操作することで、検知手段を介して当該タッチされた旨及びその座標などを設定手段14(ROM203に格納されたプログラムである)に通知する。通知を受けた設定手段14は、タッチされた座標やその他タッチ時間に応じて、画像データの印刷環境を設定する。ここで、印刷環境とは、上記背景技術で説明したように、用紙のサイズや、コピー濃度、縮小/拡大印刷の有無、集約印刷の有無、原稿の画質等の、印刷を実行する際にユーザが設定する項目である。
【0027】
さて、従来は、図4(a)に既に示したように、この設定の際に、ユーザが印刷環境を設定する設定画面510と、設定された印刷環境をユーザに示す確認画面520との二画面を、同時にタッチパネル11に表示していた。
【0028】
本発明の画像印刷装置100は、この設定画面510と確認画面520とを、図4(a)に示すように、重ね合わせてタッチパネル11に表示する。
【0029】
即ち、表示手段12(ROM203に格納されたプログラムである)は、上記の印刷環境の項目が列記された設定画面510と、これらの項目の設定結果を示す確認画面520とを重ね合わせてタッチパネル11に表示するのである。この重ね合わせは、図5に示す確認画面520を表示するためのデータのうち、タッチパネル11上の座標を指定する数値について、当該座標の平行移動(数値の定数シフト)を行うことによって実現される。
【0030】
また、当該重ね合わせ時において、確認画面520を介してその下位レイヤに表示される設定画面510の重ね合わされた箇所まで確認(視認)可能に表示される。
【0031】
確認可能に表示するためには、上記表示手段12が、例えば上記確認画面510を透過処理した後に設定画面510上に表示することにより行われる。
これにより、図4(a)に示すように、タッチパネル11上には余白Sが生じる。この余白Sを活用すれば、図4(b)に示すように、上記項目のボタンの面積を小さくすることなく、一画面で従来より多くの印刷環境の項目が表示できるようになる。従って、ユーザが印刷環境を設定する際に、設定画面510を何ページも切替える必要がなくなり、ユーザの手続負担を軽減することができるのである。
【0032】
しかし、一方で、このような重ね合わせを行うと、ユーザにとっては設定画面510、確認画面520の二画面とも見づらくなるという問題が生じる。そこで、本発明の画像印刷装置100には、上記二画面のうち、ユーザが所定時間タッチした一の画面の表示態様の変更を行う変更手段を設けている。
【0033】
例えば、ユーザが確認画面520を所定時間(例えば3秒間)タッチし続けた場合には、変更手段13(ROM203に格納されたプログラムである)は、このタッチ及びタッチの時間を検知してこの確認画面520を点滅させるよう、表示手段12に指示するのである。
【0034】
ここで、このような表示態様の変更は、上記のような表示の点滅には限られず、色彩の変更や濃度、輝度の変更も有効な方法であり、また、これらを組み合わせて実行するようにしてもよい。例えば、ユーザが確認画面520を3秒間タッチし続けた場合には、この確認画面520を赤色に濃く表示して点滅させるように、変更手段13をプログラミングすることもできる。
【0035】
なお、設定画面510と確認画面520との二画面が重なり合っている部分を上記所定時間タッチした場合には、いずれの画面をタッチしたかが不明となる事態が生ずることがある。これを解消するためには、例えば、設定画面510の枠線(図4(a)の二重線)か、確認画面520の枠線(図4(a)の点線)を所定時間タッチした場合に、それぞれ設定画面510、確認画面520の表示態様を変更するように、変更手段13をプログラミングしておくこともできる。
【0036】
またさらに、上記変更手段13は、上記重ね合わせ時に、タッチを検知することなく設定画面510と確認画面520のいずれか一方を例えば所定時間間隔で点滅表示にすることで、上記見づらくなるという問題を解決することもできる。この場合、点滅時であって一方の画面の表示が消えている際にユーザによるタッチパネルへのタッチを検知手段が検知した際には、上記設定手段14は、他方の画面に対する命令として、上記タッチを処理する。これにより、いずれの画面をタッチしたかが不明となる事態を回避することができる。
【0037】
以上のように設定画面510と確認画面520とを重ね合わせて表示することによって、タッチパネル上に生じた余白を活用して一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できるようになるとともに、ユーザが見づらいという問題も解消できるので、印刷環境設定の際の手続負担を軽減することが可能となるのである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る画像印刷装置は、設定画面と確認画面とを重ね合わせることでタッチパネル上に生じた余白を活用して、一画面でなるべく多くの印刷環境の項目を表示できるようにすることが可能となる。これによれば、印刷環境の各項目のボタンの面積を小さくすることも必要ないため、ユーザがタッチする際に、隣のボタンに触れてしまうなど誤操作をすることも防止できる。また、重ね合わせた画面の一方を点滅等させることにより、ユーザが見づらいという問題も解消できる。従って、プリンタや複写機、複合機等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態における画像印刷装置の概略構成図。
【図2】本実施の形態における画像印刷装置の制御関連の概略構成図。
【図3】本実施の形態における画像印刷装置の構成を示す機能ブロック図。
【図4】本実施の形態における画像印刷装置におけるタッチパネルの表示の一例。
【図5】従来の画像印刷装置におけるタッチパネルの表示の一例。
【符号の説明】
【0040】
11 タッチパネル(検知手段)
12 表示手段
13 変更手段
14 設定手段
15 入力手段
16 印刷手段
17 読取手段
19a パーソナルコンピュータ
19b スキャナ
19c ファクシミリ装置
100 画像印刷装置
510 設定画面
520 確認画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷環境の設定を受け付ける設定画面と、当該設定画面にて設定された印刷環境を表示する確認画面との二画面を同時に表示するタッチパネルを備える画像印刷装置において、
上記設定画面と上記確認画面との双方の表示を確認可能に重ね合わせて、上記タッチパネルに表示する表示手段
を備えることを特徴とする、画像印刷装置。
【請求項2】
上記二画面のうち、ユーザが所定時間タッチした一の画面の表示態様の変更を行う変更手段を備える、請求項1に記載の画像形成印刷装置。
【請求項3】
上記表示態様の変更が表示の点滅である、請求項2に記載の画像印刷装置。
【請求項4】
上記表示態様の変更が色彩の変更である、請求項2に記載の画像印刷装置。
【請求項5】
上記表示態様の変更が輝度又は濃度の変更である、請求項2に記載の画像印刷装置。
【請求項6】
上記表示手段は、上記2画面のうち何れか一方を点滅表示させるとともに、
上記点滅表示時において、一方の画面が消えている際に上記タッチパネルへの入力を検知した場合に、他方の画面への入力として上記入力を処理する設定手段を備える請求項1に記載の画像印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−96607(P2008−96607A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277124(P2006−277124)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】