説明

画像合成方法、画像合成プログラムおよび画像合成装置

【課題】2次元方向への移動の少ない動体の連続撮影画像を合成する際に動体部分に背景が強く映りこむことを防止する。
【解決手段】複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する一方、フレームの各画素の画素値の変化特性を算出し、その画素値変化特性に基づいて、各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する。そして、動体主要領域の画素とみなされた場合には、基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、背景主要領域の画素とみなされた場合には、基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画や連写画像を重ね合わせて1枚の静止画像を作成する画像合成方法、画像合成プログラムおよび画像合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動画や連写画像を重ね合わせて1枚の静止画像を作成する方法がある。先行文献1および先行文献2では、複数の画像フレーム上の同一位置の画素について、画素値の平均値もしくは中央値から基準画像としての背景画像を生成し、その背景画像に近い画素値の場合はブレンド率を低く設定し、大きく離れた画素値はブレンド率を高く設定し、それぞれのブレンド率を掛け合わされた画素値を加算することで合成画像を生成している。
【0003】
これにより、全フレームを通して出現頻度の高い画像は背景の一部とみなされて低いブレンド率で合成され、一方、出現頻度の低い動体は高いブレンド率で貼り付けられる。
【0004】
しかし、上記従来の方法では、被写体の2次元方向への移動量が少ない画像では、うまく合成できないことがあった。例えば、図11の野球のスウィングのように被写体100が回転動作をしている場合は、被写体100がフレームの大部分で重なっているため、平均値や中央値をとると、本来動体である被写体100が背景画像として認識されてしまう。すると、例えば5枚連写のときに1フレームもしくは2フレームだけ被写体100の位置がずれてその領域に本当の背景画像101が写った場合には、その背景画像101が動体とみなされてしまう。この結果、背景画像101が強くブレンドされるので、被写体100に背景画像101が透けて写りこんでしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録第3411469号
【特許文献2】登録第4415198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、2次元方向への移動の少ない動体の連続撮影画像を合成する際に動体部分に背景が強く映りこむことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複複数の撮像フレームを合成して1枚の画像を生成する画像合成方法において、前記複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する基準画像生成ステップと、前記フレームの各画素の画素値変化特性を算出する画素値変化特性算出ステップと、前記画素値変化特性に基づいて、前記各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する領域判断ステップと、前記動体主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、前記背景主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする画像ブレンドステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数の撮像フレームを合成して1枚の画像を生成する画像合成プログラムにおいて、前記複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する基準画像生成ステップと、前記フレームの各画素の画素値変化特性を算出する画素値変化特性算出ステップと、前記画素値変化特性に基づいて、前記各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する領域判断ステップと、前記動体主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、前記背景主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする画像ブレンドステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明では、複数の撮像フレームを合成して1枚の画像を生成する画像合成装置において、前記複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する基準画像生成手段と、前記フレームの各画素の画素値変化特性を算出する画素値変化特性算出手段と、前記画素値変化特性に基づいて、前記各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する領域判断手段と、前記動体主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、前記背景主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする画像ブレンド手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する一方、フレームの各画素の画素値の変化特性を算出し、その画素値変化特性に基づいて、各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する。そして、動体主要領域の画素とみなされた場合には、基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、背景主要領域の画素とみなされた場合には、基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする。
【0011】
通常、動体がほとんど同じ位置で重なっている画像であっても、動きによって被写体やその衣服の形状に変化があるので、全フレームを通して必ず画素値に変化が見られる。一方、大多数のフレームで動きのない背景が映っている場合には、その部分の画素値の変化は非常に少ない。これらの画素値の変化の特性を捉えることで、従来は背景画像とみなされていた動体画像を正確に判断できる。そして、動体主要領域と判断された画素については、例えば全フレーム中一枚だけに背景画像が写っていたとしても、その背景画像の画素値が動体の画素値と大きく異なれば弱くブレンドされるので、動体部分に背景画像が映り込むことが防止できる。また、万一動体の画素値と大きな差がなければ、動体と同程度の割合でブレンドされるので、違和感は生じない。
【0012】
一方、背景主要領域とみなされた画素の場合は、たとえば全フレーム中一枚だけに動体が写っていたとすると、その動体は強くブレンドされるので、背景の上に動体部分を確実に合成できる。よって、より正確な連写合成写真を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例の画像合成方法の全体の手順を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態におけるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図3】フレーム内を動く被写体を5枚連写した場合の画像合成の一例を示す図である。(実施例1)
【図4】フレーム間差分値計算と領域判別結果の一例を示す図である。(実施例1)
【図5】領域判別精度アップフローチャートである。(実施例1)
【図6】画素の近接の判断を説明する図である。(実施例1)
【図7】ブレンド率算出表を示す図である。(実施例1)
【図8】理想的な連写合成画像の異例を示す図である。(実施例1)
【図9】本発明の第2の実施例の画像合成方法の全体の手順を示すフローチャートである。
【図10】小区分領域の周波数特性の一例を示す図である。(実施例2)
【図11】従来の連写合成画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、画像合成プログラムを有する画像合成装置としてデジタルカメラを例にとり説明する。但し、本発明はデジタルカメラに限定されるものではなく、他の画像合成装置、例えばビデオカメラや携帯電話、さらにパーソナルコンピュータにも適用可能である。
【0015】
図2に、本実施形態におけるデジタルカメラの構成を示す。撮影光学系1は、詳細には撮影レンズ、絞り及びメカシャッタを含む。撮影レンズは、さらにフォーカスレンズ、ズームレンズ及びアイリスを含む。撮影光学系1の各レンズやシャッタは、AE/AF制御部9からの指令に従ってモータやドライバにより駆動される。撮像素子2は、撮影光学系1により結像された被写体画像を電気信号に変換し、R、G、Bの各画像信号として出力する。撮像素子2は、CCDセンサやCMOSセンサから構成され、蓄積電荷がタイミングジェネレータ(TG)からのタイミング信号に応じて順次読み出される。
【0016】
アナログフロントエンド(AFE)3は、アナログ信号処理部であり、アナログ画像信号に対して増幅、ゲイン調整、リセット時の電圧値と信号出力時の電圧値の差分をとることで固定パターン雑音を除去する相関2重サンプリング(CDS)処理を行う。AD変換回路4は、アナログフロントエンド(AFE)3から供給された画像信号をデジタル信号に変換する。
【0017】
コントローラ5は、図示しないCPU、画像メモリ、および不揮発性メモリを含み、不揮発性メモリに格納された撮影プログラムを実行することで、操作部6からの操作信号を受けて撮影動作を行う。また、コントローラ5は、図示しない公知のゲイン補正、ガンマ補正、同時化処理、RGB−YC分離、ノイズ低減処理、エッジ強調処理、JPEG圧縮処理の各ブロックを含み、入力信号に対してゲイン補正やガンマ補正、同時化処理等を実行してY信号とC信号の画像データを生成する。ゲイン補正は、入力されたRAWデータ(RGB画像化前の空間的に不完全なサンプリングデータ)の各チャンネル毎に異なるゲインを補正してグレーバランスを合わせるものである。ガンマ補正は、CCD等の撮像素子の特性をLCD8の入出力特性に合わせるものである。同時化処理は、Bayer配列の単板CCDからRGB3画像を生成するものである。生成された画像データはメモリカード7に格納される。また、圧縮画像データに所定の伸長処理を実行して非圧縮の画像データを生成する。非圧縮の画像データは、撮影済みの画像としてLCD8に表示される。
【0018】
さらに、コントローラ5は、LCD8に表示するプレビュー画像を生成するための回路や被写体画像から顔画像を検出する回路、及びAWB(オートホワイトバランス)回路を有する。さらにまた、コントローラ5には、本実施形態の画像合成プログラム5aが図示しない不揮発性メモリに格納されており、この画像合成プログラム5aに従って、後述する画像合成処理を実行する。なお、コントローラ5は、単一のプロセッサで構成される他、システム全体を制御するMPUと、そのサブプロセッサとして画像データを高速で処理するDIP(デジタルイメージプロセッサ)とから構成されていてもよい。
【0019】
AE/AF制御部9は、CPUを含み、AE(自動露出制御)及びAF(自動焦点制御)に必要な物理量を算出する。具体的には、画像信号から被写体の輝度を検出し、また、被写体までの距離を検出する。被写体の輝度から適正露出が決定され、絞り値、シャッタ速度、ISO感度が決定される。
【実施例1】
【0020】
次に本発明の第1の実施例を説明する。図1は、本発明の第1の実施例の画像合成方法の全体の手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1では、デジタルカメラによってなされた高速連写の画像データを取得する。具体的には、多数枚(例えば10枚)の高速連続撮影を行い、その中から時間的に等間隔に少数枚(例えば5枚)を自動選択してもよいし、あらかじめ合成枚数のみ撮影するようにしてもよい。あるいは、撮影済みの画像データをメモリカード7から読み出してもよい。
【0021】
ステップS2では、合成用の画像フレームから基準画像を作成する。基準画像とは、動体画像を除いたいわゆる背景画像であり、画像合成のベースとなる画像を意味する。基準画像の作成に利用する画像フレームは、合成するすべてのフレームでもよいが、合成枚数が多い場合には任意枚数を選択してもよい。本実施例では、すべてのフレームを用いるものとする。
【0022】
基準画像フレーム上の任意の画素(i,j)における画素値をB(i,j)とすると、B(i,j)は次式(1)によって表される。
【0023】
【数1】

【0024】
ここで、Nは合成対象のフレーム数、L(n,i,j)はn番目のフレーム上の任意の画素(i,j)の画素値である。この画素値には、例えばコントローラ5によってRGB−YC分離された画像信号のY信号成分(輝度信号成分)を用いる。また、Y信号は8ビット、すなわち255階調とする。式(1)により、基準画像B(i,j)は全フレームの輝度値の平均値であることが示される。
【0025】
次に、ステップS3では、連続するフレーム間の各画素値L(n,i,j)の差分値の絶対値ΔL(m,i,j)を次式(2)によって求める。
【0026】
【数2】

【0027】
ここで、mはn+1番目のフレームとn番目のフレームとの差分計算の順番を意味し、m=N−1が最大である。
【0028】
図3はフレーム20内を動く被写体21を5枚連写した場合の画像合成の一例を示す図である。なお、ここでは背景画像の図示は省略してある。図に示すように、被写体21は、図面右側の位置21aから左周りに円弧を描くように移動しているものとする。すなわち、第1のフレーム(n=1)は被写体21が位置21aにいるときの画像、同様に第2のフレーム(n=2)は被写体21が位置21bに、第3のフレーム(n=3)は位置21cに、第4のフレーム(n=4)は位置21dに、さらに第5のフレーム(n=5)は位置21eにいるときの画像である。
【0029】
このような連写画像において、サンプルとして画素P1〜P5の5点について説明する。まず、画素P1についてのフレーム間の差分値ΔL(m,P1)を求める。なお、ここでは、わかりやすくするため座標i,jの代わりに画素の名称P1等を記載する。画素P1は、全5フレームのうち第1のフレームのみに被写体21が写っており、他のフレームではすべて背景画像である。よって、第2フレームと第1フレームの差分値、すなわちm=1の差分値ΔL(1,P1)は、背景画像の画素値(輝度値)と被写体21の画素値(輝度値)との差分の絶対値となる。一方、それ以外のフレーム間の差分値ΔL(2,P1)、ΔL(3,P1)、およびΔL(4,P1)は、背景画像どうしの差分になるのでほとんどゼロである。
【0030】
次に、画素P2では、第1のフレームと第2のフレームにおいて被写体21がそれぞれ位置21a、位置21bに写っている。一方、第3フレーム以降は背景画像のみが写っている。よって、第2フレームと第1フレームの差分値ΔL(1,P2)は、被写体21どうしの差分値となる。このとき、被写体21は、フレーム間のわずかなタイミングではあるが、その向きや位置が変化している。また被写体が人間であれば衣服のシワの変化などが起こる。これにより光の反射が変わるので、僅かながらに画素値にも変化が起こる。よって、差分値ΔL(1,P2)はある程度の大きさの階調値となる。一方、m=2の差分値ΔL(2,P2)は、背景画像と位置21bの被写体21との差分値になり、一般的には大きい値となる。さらにm=3、4の差分値ΔL(3,P2)、ΔL(4,P2)については、背景画像どうしの差分になるのでほぼゼロとなる。
【0031】
画素P3では、第1のフレームから第3のフレームにおいて被写体21がそれぞれ位置21a、位置21b、位置21cに写っている。一方、第4フレーム以降は背景画像のみが写っている。よって、第2フレームと第1フレームの差分値ΔL(1,P3)は、被写体どうしの差分値となる。同様に、第3フレームと第2フレームの差分値ΔL(2,P3)も被写体どうしの差分値になる。そして、第4フレームと第3フレームの差分値ΔL(3,P3)は、位置21cの被写体と背景との差分値、さらに第5フレームと第4フレームの差分値ΔL(4,P3)は、背景どうしの差分値となる。
【0032】
画素P4および画素P5についても同様の処理がなされる。図1のステップS4に戻り、コントローラ5は、これらの計算結果から各画素が、全フレームを通して動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域の画素であるか、あるいは背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域の画素であるかを判別する。
【0033】
図4はフレーム間差分値計算と領域判別結果の一例を示す図である。コントローラ5は、各画素P1〜P5について、フレーム間の差分値の絶対値ΔLが所定値Lx以上となる数をカウントする。この所定値Lxは、理論的には1以上に設定されていればよいが、本実施例では、ノイズや撮影中の微妙な手ぶれ等を考慮して、「3」に設定する。コントローラ5は、差分値ΔLが所定値「3」以上となる数のカウント値が2個以下の画素については背景主要領域、総数m=4の半数を超える3個以上の画素については動体主要領域と判別する。この結果、画素P1およびP2が背景主要領域、画素P3、P4、P5が動体主要領域と判別される。
【0034】
上記説明ではサンプルとして点P1〜P5の5個の画素のみについて判別する例を示したが、フレーム上のすべての画素について同様の処理を行うことは言うまでもない。この結果、図3の例では図中斜線で示した領域が動体主要領域、その他の領域が背景主要領域と判別される。
【0035】
ところで、動体でありながらその輝度値に変化がほとんどない場合には、上記方法では正確に領域を判別できないことがある。例えば、被写体が無地の暗い色の服を着ている場合には、画素によっては連写中ほとんど画素値に変化が生じないことがある。このような画素は、本来は動体主要領域であるにも関わらず背景主要領域と判別される可能性が高くなる。その結果、例えば図1の斜線の動体主要領域のうちいくつかの画素が背景主要領域画素と判断され、同じ種類の領域にもかかわらず正反対のブレンド処理がなされてしまう。このため、斑状の合成画像ができてしまう虞がある。
【0036】
そこで、本実施例では、上記の判別手順を一通り行った後で、図5の領域判別精度アップフローチャートを実行する。まず、ステップS11では、背景主要領域と判断された画素の中から、動体主要領域の代表値と画素値が近似している画素(1次候補画素と呼ぶ)をフレーム毎に抽出する。動体主要領域の代表値は、全フレームの平均値または中央値をとることが好ましい。また、近似の判断としては、代表値と画素値の差分値が数階調程度以下となるかどうかを基準にするのがよい。抽出の具体例としては、例えば図3の画素P3が本来動体主要領域であるにも関わらず背景主要領域と判断されたとすると、画素P3の第1〜第5の各フレームにおける画素値をすべての動体主要領域の代表値と比較する。そして、いずれかのフレームに一つでも近似する動体主要領域が存在すれば、そのフレームの画素を1次候補画素と判断する。
【0037】
次に、1次候補画素と判断された画素のうち、動体主要領域と近接している画素を2次候補画素として抽出する(ステップS12)。この近接の判断を図6に基づいて説明する。例えば動体主要領域画素と判断されている画素Paの横に上記1次候補画素PbおよびPcが図のように隣接しているとすると、画素Paと直接隣り合っている画素Pbは当然2次候補画素と判断される。また、2次候補画素と判断された画素Pbと隣り合っている1次候補画素Pcも2次候補画素と判断する。さらにこの画素Pcと隣り合う1次候補画素が存在すれば、その画素も2次候補画素と判断する。
【0038】
図5に戻り、ステップS13では、2次候補画素の存在する頻度の高い画素(例えば全5フレーム中3フレームに2次候補画素が存在する画素)を新たに動体主要領域の画素として抽出する。これにより、図4の判断だけでは拾いきれなかった動体主要領域画素を確実に抽出することができる。
【0039】
なお、上記説明では、各画素について全フレームで1次候補画素および2次候補画素を求めたが、あらかじめ各画素値の全フレーム平均を求め、その平均値を動体主要領域の代表値と比較し、類似する場合には新たに動体主要領域の画素として抽出するようにしてもよい。
【0040】
図1に戻り、ステップS5では、図4および図5の結果に基づいて以下の画像合成処理を行う。まず、各画素P1〜P5について、式(1)で求めた基準画像B(i,j)とフレーム毎の各画素値L(n,i,j)との差分の絶対値ΔLB(n,i,j)を式(3)により計算する。
【0041】
【数3】

【0042】
次に、図7のブレンド率算出表に基づいて、各画素のフレーム毎のブレンド率を算出する。ここで、動体主要領域の画素のブレンド率をαm、背景主要領域の画素のブレンド率をαbとすると、上記基準画像B(i,j)との差分値ΔLB(n,i,j)が所定値σ以上かσ未満であるかによって、それぞれ具体的な値が決まる。なお、σの値は、実験的に最適な値に決めればよい。好ましくは数10階調程度に設定するのがよい。
【0043】
図中、hは、動体主要領域における条件1(ΔLBが所定値σ未満)を満たす画素の全フレーム中の個数、kは背景主要領域における条件2(ΔLBが所定値σ以上)を満たす画素の全フレーム中の個数である。動体主要領域の各画素のブレンド率αmは、条件1のとき、すなわち動体画像が写っている画素と見なされるときに1/hに、一方条件2のとき、すなわち背景画像が写っている画素とみなされるときにゼロとなる。
【0044】
一方、背景主要領域の各画素のブレンド率αbは、全フレーム中、条件2を満たす画素(動体画像が写っている画素)の個数kがゼロのとき、すなわち全フレームが背景画像のみの場合には、各画素のαbは1/N(Nは全フレーム数)となる。一方、kがゼロでないとき、すなわち全フレーム中に1枚でも動体画像がある場合には、条件1を満たす画素のαbはゼロに、条件2を満たす画素のαbは1/kに設定される。
【0045】
具体例として、図3の背景主要領域である画素P1について見てみる。P1の第1フレームには動体が写っているので基準画像との差分値ΔLB(1,P1)は所定値σ以上となる。よって、P1の第1フレームの画素(以後P11と呼ぶ)に関するブレンド率αbは1/kとなる。ここで、画素P1においては、所定値σ以上の条件を満たすフレームは第1フレームのみなので、k=1、すなわち画素P11のブレンド率αbは1/1=1となる。一方、P1の第2フレーム以降の画素P12(2番目のフレームの画素を意味し、以下同様に記す)、P13、P14、P15はすべて背景画像なので、これらの差分値ΔLB(2,P12)、ΔLB(3,P13)、ΔLB(4,P14)、ΔLB(5,P15)はすべて所定値σ未満となり、ブレンド率αbはすべてゼロとなる。
【0046】
こうして画素P1のすべてのフレームに対するブレンド率が求まると、次式(4)によって各画素の全フレーム分の合成画素値を算出する。
【0047】
【数4】

【0048】
式(4)に基づいて具体的にP1について計算してみる。P1のような背景主要領域では基準画像は背景画像の画素値に近い値なので、P1における条件1に対応するフレーム数は4、条件2に対応するフレーム数は1となる。よって、P1の合成画素値は次式(5)のようになる。
【0049】
【数1】

【0050】
すなわち、画素P1に関しては第1フレームの画素P11の画素値のみが合成される。同様に、今度は動体主要領域画素のP3について計算してみる。P3のような動体主要領域では基準画像は動体の画素値に近い値なので、P3における条件1に対応するフレーム数は3、条件2に対応するフレーム数は2となる。よって、P3の合成画素値は次式(6)のようになる。
【0051】
【数1】

【0052】
以下同様に、フレーム20上のすべての画素について各ブレンド率を求め、前記式(4)によって加算することにより、合成画像が生成できる。
【0053】
以上説明したように、本実施例によれば、フレーム内の画像を動体主要領域と背景主要領域とに区別して、それぞれに応じたブレンド率で画像を合成するようにしたので、野球のスウィングのように動体の重なりが多い連写画像であっても、図8に示すように、背景画像が被写体に写り込むことなく理想的な連写合成画像ができる。
【0054】
なお、上記説明では、各領域の主体となす画像のみにブレンド率を与え、そうでない画像はブレンド率ゼロとしたが、これに限られず、主体でない画像についてもある程度のブレンド率を与えても良い。これにより、なめらかな画像が得られる。
【0055】
また、本実施例では、画素値として各画素の輝度値(Y信号)を用いたが、RGBの各色について演算してもよい。さらに、本実施例では、基準画像を式(1)による平均値で求める例を示したが、中央値を用いてもよい。
【実施例2】
【0056】
次に本発明の第2の実施例について説明する。図9は第2の実施例の画像合成方法の全体の手順を示すフローチャートである。まず、ステップS21では、図1の第1の実施例と同様の方法で画像データを取得する。ステップS22では、合成用の画像フレームから基準画像を作成する。この作成には、第1の実施例と同様にすべてのフレームを用いるものとする。
【0057】
ステップS23では、合成用の画像フレームを一旦すべて合成する(予備合成画像と呼ぶ)。ステップS24では、この予備合成画像を小区分領域、例えば16×16画素毎の領域に分ける。そして、各小区分領域のフーリエ変換を行い、周波数特性を算出する。
【0058】
図10は小区分領域の周波数特性の一例を示す図である。ステップS25では、各小区分領域のピーク周波数faが所定周波数fx以下となる領域を動体主要領域と判断する。この理由は、動体が重なっている領域については、対象フレームを合成すると全体的にぼやけた画像となり、周波数特性が低くなるからである。一方、ピーク周波数faがfxよりも大きい領域を背景主要領域と判断する。これは、背景画像が主な領域については、合成してもエッジがはっきりとしているので、周波数特性は高くなると考えられるからである。
【0059】
ただし、動体主要領域と判断された領域には、青空や無地の壁のように濃淡ない背景画像が含まれている可能性がある。そこで、ステップS26では、動体主要領域と判断されたものから例外の画像を抽出する。具体的には、対象の小区分領域の各画素について、実施例1で述べた式(2)と同じ計算式によって、フレーム間の画素値の差分を計算する。その差分の絶対値が所定値以下(例えば階調3以下)となる個数が全演算数mの半数以上となる場合には、その画素については背景主要領域とみなす。この場合、画素単位で判断してもよいし、背景主要領域画素とみなされた画素が大半を占める小区分についてはその中の画素すべてを背景主要領域画素とみなしてもよい。
【0060】
ステップS27では、このように選別された画素の種類に応じて、実施例1の図1のステップS5と同じ要領で最終合成画像を生成する。これにより、実施例1同様に、理想的な連写合成画像を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
連写された画像のデジタルデータをデジタルカメラやその他の携帯端末装置、さらにはパーソナルコンピュータ上にて合成する方法に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 撮影光学系
2 撮像素子
5 コントローラ
5a 画像合成プログラム
7 メモリカード
8 LCD
21 被写体
P1、P2、P3、P4、P5 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像フレームを合成して1枚の画像を生成する画像合成方法において、
前記複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する基準画像生成ステップと、
前記フレームの各画素の画素値変化特性を算出する画素値変化特性算出ステップと、
前記画素値変化特性に基づいて、前記各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する領域判断ステップと、
前記動体主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、前記背景主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする画像ブレンドステップと、
を有することを特徴とする画像合成方法。
【請求項2】
前記画素値変化特性は、各画素の連続するフレーム間の画素値の差分値データであり、
前記領域判断ステップは、前記差分値の絶対値が所定値以上となる場合の割合に応じてその画素が前記動体主要領域か前記背景主要領域かを判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像合成方法。
【請求項3】
前記領域判断ステップは、前記差分値の絶対値が所定値以上となる場合の割合が半数以上の場合に、その画素が前記動体主要領域と判断する、
ことを特徴とする請求項2記載の画像合成方法。
【請求項4】
前記領域判断ステップは、前記背景主要領域と判断された画素のうち、前記動体主要領域の画素と近接しかつ画素値が近い画素については前記動体主要領域と判断する、
ことを特徴とする請求項2記載の画像合成方法。
【請求項5】
前記画素値変化特性算出ステップは、前記合成対象のフレームのうち所定数以上のフレームを合成して予備合成画像を生成する予備合成画像生成ステップと、前記予備合成画像を小領域に分割し前記小領域毎に周波数特性を算出する周波数特性算出ステップとを有し、
前記領域判断ステップは、前記周波数特性のピーク周波数に応じて、前記各小領域が前記動体主要領域画素か前記背景主要領域かを判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像合成方法。
【請求項6】
前記領域判断ステップでは、前記ピーク周波数が所定周波数以下となる場合に、その小領域を前記動体主要領域と判断する、
ことを特徴とする請求項5記載の画像合成方法。
【請求項7】
前記領域判断ステップは、前記動体主要領域と判断された小領域の各画素について、それぞれ連続するフレーム間の差分値を算出し、前記差分値の絶対値が所定値以下となる割合が高い場合には、その画素を前記背景主要領域と判断する、
ことを特徴とする請求項5記載の画像合成方法。
【請求項8】
複数の撮像フレームを合成して1枚の画像を生成する画像合成プログラムにおいて、
前記複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する基準画像生成ステップと、
前記フレームの各画素の画素値変化特性を算出する画素値変化特性算出ステップと、
前記画素値変化特性に基づいて、前記各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する領域判断ステップと、
前記動体主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、前記背景主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする画像ブレンドステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像合成プログラム。
【請求項9】
複数の撮像フレームを合成して1枚の画像を生成する画像合成装置において、
前記複数のフレームの画像データに基づいて基準画像を生成する基準画像生成手段と、
前記フレームの各画素の画素値変化特性を算出する画素値変化特性算出手段と、
前記画素値変化特性に基づいて、前記各画素が動体画像の存在する頻度の高い動体主要領域か、背景画像の存在する頻度の高い背景主要領域かを判断する領域判断手段と、
前記動体主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を弱くブレンドし、一方、前記背景主要領域の画素とみなされた場合には、前記基準画像の画素値との差分が大きい画素値を強くブレンドする画像ブレンド手段と、
を有することを特徴とする画像合成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−221680(P2011−221680A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88352(P2010−88352)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(592136233)
【Fターム(参考)】