説明

画像変換装置および画像変換方法

【課題】 全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を効率的に行う。
【解決手段】 座標C(a,b)と座標S(x,y)との対応関係を示す第1の座標関係式を用いて、全方位ミラー式カメラで撮影したミラー歪曲円形画像Cを、全方位ミラーの代わりに魚眼レンズを用いて撮影した場合に得られるであろうと考えられる仮想のレンズ歪曲円形画像Sに一旦変換する。続いて、座標S(x,y)と座標T(u,v)との対応関係を示す第2の座標関係式を用いて、仮想のレンズ歪曲円形画像Sを、更に平面正則画像Tに変換する。後者の変換プロセスは、魚眼レンズを用いた撮影により得られた実レンズ歪曲円形画像を平面正則画像に変換するプロセスと共通のプロセスになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像変換装置および画像変換方法に関し、特に、全方位カメラを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
全方位カメラは、メカニカルな動作機構なしに、半球状の全方位を示す円形画像を撮影することができる。このため、奇抜な効果を狙った風景写真などを撮影する場合や、監視カメラなどの用途に広く利用されている。
【0003】
一般に、全方位カメラには、魚眼レンズを用いたタイプと全方位ミラーを用いたタイプとの2通りが存在する。魚眼レンズを用いたタイプの場合、屈折を利用して周囲からの入射光が撮像面に導かれる。このため、半球状の全方位に関して死角のない撮影が可能になるが、魚眼レンズは複数のレンズの組み合わせによって構成される要素であるため、構造が複雑になり製造コストが高騰するというデメリットが生じる。これに対して、全方位ミラーを用いたタイプの場合、構造が単純で安価に製造できるメリットが得られるが、反射を利用して周囲からの入射光が撮像面に導かれるため、一部分に死角が生じる問題がある。
【0004】
このように、魚眼レンズを用いたタイプも、全方位ミラーを用いたタイプも、それぞれ一長一短があるため、用途に応じて、両方のタイプが使い分けられている。いずれのタイプにしても、全方位カメラを用いた撮影で得られる画像は、歪曲した円形の画像になるため、芸術写真などの用途にはそのまま利用することが可能かもしれないが、一般的な用途には不向きである。
【0005】
そこで、全方位カメラを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う装置が提案されている。たとえば、下記の特許文献1には、コンピュータを利用して、魚眼レンズを用いて撮影された歪曲円形画像の一部分を平面正則画像にリアルタイムで変換する技術が開示されている。また、下記の非特許文献1には、全方位ミラーを用いて撮影された歪曲円形画像の一部分を平面正則画像に変換する技術が開示されている。このような変換技術を利用すれば、全方位カメラを用いて撮影した歪曲円形画像からなる動画を、平面正則画像からなる動画としてリアルタイムで観察することが可能になり、180°の画角をもった監視システムなどへの応用が期待できる。また、下記の非特許文献2には、全方位ミラーを用いて撮影された歪曲円形画像と魚眼レンズを用いて撮影された歪曲円形画像との相互変換技術が提案されている。
【特許文献1】特許第3051173号公報
【非特許文献1】Christian Toepfer, Tobias Ehlgen: "A Unifying Omnidirectional Camera Model and its Applications," The Seventh Workshop on Omnidirectional Vision, Camera Networks and Non-classical Cameras 2007, pp. 1-5.
【非特許文献2】Xianghua Ying and Zhanyi Hu, "Can We Consider Central Catadioptric Cameras and Fisheye Cameras within a Unified Imaging Model," ECCV 2004, pp. 442-455.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、全方位カメラを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、これを平面正則画像に変換する画像変換装置は既に提案されている。しかしながら、魚眼レンズを用いたタイプに適用するための装置(たとえば、前掲の特許文献1に開示されている装置)と、全方位ミラーを用いたタイプに適用するための装置(たとえば、前掲の非特許文献1に開示されている装置)とは、内部で実行する処理プロセスが全く異なっている。これは、一方が光の屈折を利用した集光カメラであるのに対して、他方が光の反射を利用した集光カメラであるため、原理的に避けられない事項である。
【0007】
その一方で、前述したとおり、これら2通りの全方位カメラには、それぞれ一長一短があるため、実用上は、用途に応じて両方のタイプが使い分けられている。したがって、現状では、魚眼レンズを用いたタイプに利用するための画像変換装置と、全方位ミラーを用いたタイプに利用するための画像変換装置とをそれぞれ別個に設計し、それぞれ別個に提供する必要がある。このため、装置を構成するハードウエアの設計や製造のための労力や費用もそれぞれ別個に必要になり、効率的な設計・製造を阻む要因となっている。また、ユーザ側でも、両タイプの全方位カメラを利用する場合には、各タイプ用の画像変換装置をそれぞれ別個に購入する必要がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を効率的に行うことにある。また、本発明の別な目的は、魚眼レンズ式カメラ用の変換プロセスと共通するプロセスを利用して、全方位ミラー式カメラ用の正則画像変換を行うことが可能な画像変換装置および画像変換方法を提供することにある。更に、本発明のもうひとつの目的は、魚眼レンズ式カメラにも全方位ミラー式カメラにも共用可能な画像変換装置および画像変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の第1の態様は、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換装置において、
二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値aおよびY軸上の座標値bを用いた座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成されたミラー歪曲円形画像を格納する歪曲円形画像格納部と、
二次元UV直交座標系上のU軸上の座標値uおよびV軸上の座標値vを用いた座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像格納部と、
歪曲円形画像格納部に格納されているミラー歪曲円形画像をディスプレイに表示する歪曲円形画像表示部と、
ディスプレイに表示されているミラー歪曲円形画像上における、切出中心点Kの位置および切り出し向きをユーザの指示に基づいて入力する指示入力部と、
座標(u,v)と座標(a,b)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、ミラー歪曲円形画像から切出中心点Kを中心として切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する演算を行い、生成された平面正則画像を平面正則画像格納部に格納する変換演算部と、
を設け、
変換演算部が、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、この仮想レンズ歪曲円形画像を、二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成したときに、ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式と、仮想レンズ歪曲円形画像上の任意位置の座標(x,y)と平面正則画像上の対応位置の座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式と、を用いて、座標(u,v)と座標(a,b)との対応づけを行うようにしたものである。
【0010】
(2) 本発明の第2の態様は、全方位ミラーもしくは魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換装置において、
二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値aおよびY軸上の座標値bを用いた座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像、もしくは二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像を格納する歪曲円形画像格納部と、
二次元UV直交座標系上のU軸上の座標値uおよびV軸上の座標値vを用いた座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像格納部と、
歪曲円形画像格納部に格納されている歪曲円形画像をディスプレイに表示する歪曲円形画像表示部と、
ディスプレイに表示されている歪曲円形画像上における、切出中心点Kの位置および切り出し向きをユーザの指示に基づいて入力する指示入力部と、
歪曲円形画像格納部にミラー歪曲円形画像が格納されている場合には、座標(u,v)と座標(a,b)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、ミラー歪曲円形画像から切出中心点Kを中心として切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する演算を行い、生成された平面正則画像を平面正則画像格納部に格納する第1の処理を行い、歪曲円形画像格納部にレンズ歪曲円形画像が格納されている場合には、座標(u,v)と座標(x,y)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(x,y)で示される位置に配置されたレンズ歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、レンズ歪曲円形画像から切出中心点Kを中心として切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する演算を行い、生成された平面正則画像を平面正則画像格納部に格納する第2の処理を行う変換演算部と、
を設け、
変換演算部が、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、この仮想レンズ歪曲円形画像を、二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成したときに、ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式と、仮想レンズ歪曲円形画像上の任意位置の座標(x,y)と平面正則画像上の対応位置の座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式と、を用いて、座標(u,v)と座標(a,b)との対応づけを行うようにしたものである。
【0011】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る画像変換装置において、
変換演算部が、放物線、楕円、二葉双曲線のいずれかの二次曲線の回転体からなる曲面を反射面とする全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像を平面正則画像に変換する処理を行うようにしたものである。
【0012】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る画像変換装置において、
変換演算部が、全方位ミラーの反射面を構成する回転体曲面の焦点位置に原点Oを有し、回転体曲面の回転軸方向をZ軸とするXYZ三次元直交座標系において、原点Oを中心とする所定半径rの仮想球面を仮定し、仮想球面上の任意の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する入射光線がXY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする正射影方式の魚眼レンズモデルを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定した変換処理を行うようにしたものである。
【0013】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第4の態様に係る画像変換装置において、
変換演算部が、XYZ三次元直交座標系のXY平面上に配置された仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と、仮想撮像面に形成されるであろう仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)と、の関係を示す第1の座標関係式を用いるようにしたものである。
【0014】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第5の態様に係る画像変換装置において、
変換演算部が、全方位ミラーを用いた撮影での実撮像面に形成されるミラー歪曲円形画像と、仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像とが、相似関係にあることを利用して導出された第1の座標関係式を用いるようにしたものである。
【0015】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6の態様に係る画像変換装置において、
変換演算部が、全方位ミラーの反射面を構成する回転体曲面の元になる二次曲線について、離心率をe、焦点と準線との距離をq、焦点とピンホール点との距離をdとし、用いる魚眼レンズモデルの仮想球面の半径をrとしたときに、
a=eqd/(rd+ez(d−q))・x
b=eqd/(rd+ez(d−q))・y
=x+y+z
なる式を、座標(a,b)と座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式として用いるようにしたものである。
【0016】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第4の態様に係る画像変換装置において、
指示入力部が、ユーザの指示に基づいて平面傾斜角φを指定するための情報を切り出し向きを示すパラメータとして入力する機能を有し、
変換演算部が、用いる魚眼レンズモデルの仮想球面の半径をrとしたときに、平面傾斜角φと、切出中心点Kの位置に基づいて定まる方位角αおよび天頂角βを用いて、
x=r(uA+vB+wE)/√(u+v+w
y=r(uC+vD+wF)/√(u+v+w
ここで、
A=cosφcosα−sinφsinαcosβ
B=−sinφcosα−cosφsinαcosβ
C=cosφsinα+sinφcosαcosβ
D=−sinφsinα+cosφcosαcosβ
E=sinβsinα
F=−sinβcosα
w=mr(但し、mは所定の変換倍率)
なる式を、座標(x,y)と座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式として用いるようにしたものである。
【0017】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第8の態様に係る画像変換装置において、
指示入力部が、ミラー歪曲円形画像上における切出中心点Kの位置を、二次元XY直交座標系上の座標(a,b)として入力する機能を有し、
変換演算部が、第1の座標関係式を用いて、座標(a,b)に対応する座標(x,y)を求め、XYZ三次元直交座標系において、座標(x,y)で示されるXY平面上の点K(x,y)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面との交点G(x,y,z)の位置に基づいて方位角αおよび天頂角βを定めるようにしたものである。
【0018】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第8または第9の態様に係る画像変換装置において、
指示入力部が、ユーザの指示に基づいて変換倍率mを入力する機能を有し、
変換演算部が、指示入力部によって入力された変換倍率mを用いた演算を行うようにしたものである。
【0019】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第1〜第10の態様に係る画像変換装置において、
変換演算部が、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を決定する際に、対応する歪曲円形画像上の複数の参照画素の画素値に対する補間演算を行うようにしたものである。
【0020】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る画像変換装置を、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現したものである。
【0021】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る画像変換装置における変換演算部を、電子回路が組み込まれた半導体集積回路により実現したものである。
【0022】
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る画像変換装置と、全方位ミラーもしくは魚眼レンズを用いたカメラと、平面正則画像を画面上に表示するモニタ装置と、を組み合わせることにより全方位監視システムを構成し、
カメラを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像もしくはレンズ歪曲円形画像が歪曲円形画像格納部へと格納され、平面正則画像格納部に得られた平面正則画像がモニタ装置によって表示されるようにしたものである。
【0023】
(15) 本発明の第15の態様は、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換方法において、
二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値aおよびY軸上の座標値bを用いた座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成されたミラー歪曲円形画像を、歪曲円形画像格納部に格納する段階と、
歪曲円形画像格納部に格納されているミラー歪曲円形画像をディスプレイに表示する段階と、
ディスプレイに表示されているミラー歪曲円形画像上における、切出中心点Kの位置および切り出し向きをユーザの指示に基づいて入力する段階と、
座標(u,v)と座標(a,b)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、ミラー歪曲円形画像から切出中心点Kを中心として切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する変換演算を行う段階と、
をコンピュータもしくは電子回路に実行させ、
変換演算を行う際に、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、この仮想レンズ歪曲円形画像を、二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成したときに、ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式と、仮想レンズ歪曲円形画像上の任意位置の座標(x,y)と平面正則画像上の対応位置の座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式と、を用いて、座標(u,v)と座標(a,b)との対応づけを行うようにしたものである。
【0024】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第15の態様に係る画像変換方法において、
放物線、楕円、二葉双曲線のいずれかの二次曲線の回転体からなる曲面を反射面とする全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像を平面正則画像に変換する処理を行い、
回転体曲面の焦点位置に原点Oを有し、回転体曲面の回転軸方向をZ軸とするXYZ三次元直交座標系において、原点Oを中心とする所定半径rの仮想球面を仮定し、仮想球面上の任意の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する入射光線がXY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする正射影方式の魚眼レンズモデルを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定した変換処理を行うようにしたものである。
【0025】
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第16の態様に係る画像変換方法において、
変換演算を行う際に、XYZ三次元直交座標系のXY平面上に配置された仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と、仮想撮像面に形成されるであろう仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)と、の関係を示す第1の座標関係式を用いるようにしたものである。
【0026】
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第17の態様に係る画像変換方法において、
変換演算を行う際に、全方位ミラーを用いた撮影での実撮像面に形成されるミラー歪曲円形画像と、仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像とが、相似関係にあることを利用して導出された第1の座標関係式を用いるようにしたものである。
【0027】
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第18の態様に係る画像変換方法において、
変換演算を行う際に、全方位ミラーの反射面を構成する回転体曲面の元になる二次曲線について、離心率をe、焦点と準線との距離をq、焦点とピンホール点との距離をdとし、用いる魚眼レンズモデルの仮想球面の半径をrとしたときに、
a=eqd/(rd+ez(d−q))・x
b=eqd/(rd+ez(d−q))・y
=x+y+z
なる式を、座標(a,b)と座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式として用いるようにしたものである。
【0028】
(20) 本発明の第20の態様は、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換方法において、
全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、ミラー歪曲円形画像を仮想レンズ歪曲円形画像に変換するための第1の演算式と、仮想レンズ歪曲円形画像を平面正則画像に変換するための第2の演算式と、を併用した変換演算をコンピュータもしくは電子回路が実行することにより、ミラー歪曲円形画像を平面正則画像に変換するようにしたものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の画像変換装置および画像変換方法によれば、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像を平面正則画像に変換する際に、一旦、魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像に変換し、これを更に平面正則画像に変換する処理が行われる。このため、レンズ歪曲円形画像を平面正則画像に変換する部分について、魚眼レンズ式カメラ用のプロセスを利用することができる。すなわち、魚眼レンズ式カメラ用の変換プロセスと共通するプロセスを利用して、全方位ミラー式カメラ用の正則画像変換を行うことが可能になる。かくして、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を効率的に行うことが可能になり、装置を構成するハードウエアの設計や製造のための労力や費用を節約することができる。また、魚眼レンズ式カメラにも全方位ミラー式カメラにも共用可能な画像変換装置および画像変換方法を提供することが可能になり、ユーザの負担も軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0031】
<<< §1.全方位ミラーを用いた全方位カメラの概要 >>>
既に述べたとおり、全方位カメラには、魚眼レンズを用いたタイプと全方位ミラーを用いたタイプとの2通りがある。ここでは、まず、全方位ミラーを用いたタイプの概要を説明する。
【0032】
図1は、全方位ミラーを利用した一般的な全方位カメラの基本構造を示す側断面図である。図には、全方位ミラーを用いたカメラ20を、テーブル50の上に配置した状態が示されている。カメラ20の主たる構成要素は、図示のとおり、土台21、全方位ミラー22,透明カバー23,撮像素子24である。
【0033】
土台21は、カメラ20の各構成要素を支持するとともに、外囲器の一部をなす構成要素である。全方位ミラー22は、二次曲線の回転体からなる反射面を有しており、図に示す外側面が反射面になる。この反射面において十分な鏡面反射が生じれば、全方位ミラー22の本体部分はどのような材質で構成してもかまわない。透明カバー23も、土台21とともに外囲器の一部をなす構成要素であるが、外界からの入射光を取り込むために透明な素材によって構成されている。撮像素子24は、全方位ミラー22で反射した光を集め、外界の像を撮影するデバイスであり、たとえば、CCDカメラなどによって構成される。
【0034】
図示のとおり、ここでは説明の便宜上、回転体からなる全方位ミラー22の回転軸(中心軸)をZ軸とする(後述する座標系に合わせるため、図の下方をZ軸正方向にとっている)。図示の例では、この全方位カメラ20全体が回転体形状をしている。撮像素子24は、その光軸がZ軸に一致する位置に配置されており、撮像面はZ軸に直交する。透明カバー23は、撮像素子24をこのような位置に固定するための支持部材としての機能も果たすことになる。
【0035】
図2は、図1に示す全方位カメラ20による撮影で得られた画像Cを示す平面図である。具体的には、全方位カメラ20を、屋外のテーブル50の上に配置し、周囲の景色を撮影したときに得られる画像の一例を示すものである。このような画像は、撮像素子24(たとえば、CCDカメラ)の撮像面に得られる画像であり、デジタル画像信号として取得されることになる。図1には示されていないが、実際には、撮像素子24で生成されたデジタル画像信号を外部へと取り出すための仕組みが備わっている。
【0036】
図2に示すとおり、この全方位カメラ20で得られる画像Cは、テーブル50より上方の半球状の外界を180°の画角をもって撮影した全方位画像になっている。もっとも、図示する画像Cは、全方位カメラを用いた撮影により得られる画像の一般的なイメージを示すものであり、実際の全方位カメラを用いて得られる正確な画像を示すものではない。図示のとおり、この画像Cは、その中心部分と周囲部分とでは像の縮尺倍率が異なり、円形の歪んだ画像になる。そこで、ここでは、このように全方位カメラによる撮影で得られた画像を「歪曲円形画像」と呼ぶことにする。特に、図1に示すミラー式の全方位カメラ20で撮影された画像を、後述するレンズ式の全方位カメラで撮影された画像と区別するため、本願では、図2に示す画像を「ミラー歪曲円形画像C」と呼ぶことにする。
【0037】
図2に示すミラー歪曲円形画像Cの中心部には、円形の黒い影が写っているが、これは、撮像素子24自身の影である。図1の側断面図を見れば明らかなように、テーブル50より上方の半球状の外界のうち、撮像素子24の真上に位置する部分からの光は、撮像素子24自身によって遮られてしまうため、撮像面には届かない。図2の画像Cの中心部の影は、このような理由により生じた外界の死角領域に対応する。なお、撮像素子24からの撮像信号を有線で外部に取り出すようにした場合、外部への配線の影が画像内に写ることになる。これを避けるには、透明な配線材を用いるか、無線による信号伝達手段を採用すればよい。
【0038】
図3は、図1に示す全方位カメラ20に入射した光のミラーによる反射状態を示す側断面図である。図示のとおり、外界からの光は、透明カバー23を透過して、全方位ミラー22の反射面で反射し、撮像素子24で受光される。撮像素子24には、光学系が内蔵されており、撮像面(CCDカメラの受光面)に外界の歪んだ像が結像されることになる。撮像面に得られる像の歪み具合は、全方位ミラー22の反射面を構成する曲面の性質に左右される。
【0039】
図4は、図2に示すミラー歪曲円形画像Cを二次元XY直交座標系上に配置した状態を示す平面図である。本発明は、歪曲円形画像を平面正則画像に変換する技術に係るものであり、その基本原理は、座標系の幾何学的な変換法則に基づくものである。そこで、ここで述べる実施形態では、撮像素子24によって撮影されたミラー歪曲円形画像Cを、その中心位置に原点Oをもつ二次元XY直交座標系上の画像として取り扱うことにする。また、ここでは、このミラー歪曲円形画像Cの特定の箇所を示すために、X軸上の座標値aおよびY軸上の座標値bを用いた座標(a,b)を用いることにする。たとえば、図4に示す点C(a,b)は、この二次元XY直交座標系における座標(a,b)で示される点である。
【0040】
結局、本発明における変換対象となるミラー歪曲円形画像Cの実体は、このような座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体である。個々の画素には、それぞれ特定の画素値(たとえば、一般的なカラー画像の場合、三原色R,G,Bの各画素値)が対応づけられている。なお、図4では、X軸を右方向、Y軸を下方向にとっているが、これは後述する三次元XYZ直交座標系における各座標軸配置と整合性をもたせるための便宜である。
【0041】
本発明に係る画像変換装置は、図4に示すミラー歪曲円形画像Cの任意の位置の近傍の歪曲画像を平面正則画像に変換する機能を有している。たとえば、ディスプレイの画面上に、図4に示すような画像表示が行われている状態において、ユーザが、この画面上の1点K(a,b)を切出中心点として指定すると、点K(a,b)を中心とする所定の切出領域内の歪曲画像が切り出され、平面正則画像に変換されて表示されることになる。
【0042】
図5は、このようにして表示された平面正則画像T1を示す平面図である。ここでは、図示のとおり、平面正則画像T1が、右方向にU軸、下方向にV軸をとった二次元UV直交座標系上に得られるものとする。このUV直交座標系の原点は、図4における切出中心点K(a,b)に対応する点であり、図示の例の場合、女性の鼻の位置を中心として切り出された歪曲画像が、平面正則画像T1に変換されたことになる。
【0043】
もっとも、このような平面正則画像T1を得るために、ユーザは、パラメータとして、切出中心点K(a,b)とともに、切り出し向きを指定する必要がある。たとえば、図5に示す平面正則画像T1では、女性が倒れた状態の画像になっている。これは、図4に示す画像Cについて、切出中心点K(a,b)を基準として女性の頭頂部方向がU軸方向となるような向きの指定が行われたためである。女性が正立した向きとなる平面正則画像を得るためには、女性の向かって右側方向がU軸方向となるような向きの指定を行えばよい。図6は、このような切り出し向きの指定を行うことにより得られた平面正則画像T2を示す平面図である。
【0044】
図6に示す平面正則画像T2は、図5に示す平面正則画像T1を、切出中心点Kを回転中心として、反時計回りに90°回転させたものである。したがって、切り出し向きは、結局、切出中心点Kを中心とした平面正則画像Tの回転ファクターを示すパラメータということになり、0〜360°の回転角度として与えることが可能である。ユーザは、ディスプレイ画面上に表示された図4に示すような歪曲円形画像Cを見ながら、切出中心点K(a,b)の位置と、切り出し向きとを指定し、「ここを中心として、こんな向きに、画像を切り出して、平面正則画像を得たい」という要望を出せばよい。本発明に係る画像変換装置は、このようなユーザの要望に基づいて画像変換処理を実行し、要望に合致した平面正則画像を提示する機能を有している。
【0045】
実用上は、ユーザに第3のパラメータである「変換倍率m」を指定させるのが好ましい。図5に示す画像T1と図6に示す画像T2とは、実は、互いに異なる変換倍率mを指定することによって得られた画像である。いずれの画像も、横方向寸法(水平方向の画素数)Nu、縦方向寸法(垂直方向の画素数)Nvをもった同一のディスプレイ画面上に表示されているが、女性の像の大きさは、画像T1の方が画像T2よりも拡大されていることがわかる。これは、画像T1を得るための変換が、より大きな変換倍率mの指定の下に行われたためである。一般に、ディスプレイの縦横寸法(画素数)は一定であるから、変換倍率mを調整することにより、得られる平面正則画像Tのトリミング枠を任意に設定することができる。
【0046】
結局、本発明に係る画像変換装置を利用すれば、ユーザが、図4に示すような歪曲円形画像C上において、切出中心点K(a,b)の位置、切り出し向き、変換倍率mという3つのパラメータを指定すると、図5や図6に例示するような平面正則画像T1,T2が得られることになる。
【0047】
このような画像変換処理は、XY座標系上の座標(a,b)とUV座標系上の座標(u,v)とを対応づけることにより行われる。たとえば、図4の画像C上の点C(a,b)は、図5の画像T1上では点T1(u,v)となり、図6の画像T2上では点T2(u,v)となる。したがって、たとえば、図5に示す平面正則画像T1を生成するには、任意の点T1(u,v)に対応する円形歪曲画像C上の点C(a,b)を求め、点T1(u,v)に配置される画素の画素値を、点C(a,b)に配置されている画素の画素値に応じて決めればよい。別言すれば、上記画像変換処理は、座標(a,b)と座標(u,v)との対応づけができれば、一義的に実行可能である。
【0048】
全方位ミラー20の反射面の幾何学的形状が定まれば、座標(a,b)と座標(u,v)とを直接対応づける座標関係式を、幾何学的に求めることができる。したがって、このような座標関係式を用いた座標変換演算を実行すれば、理論上、歪曲円形画像Cに基づいて平面正則画像Tを得ることが可能である。実際、前掲の非特許文献1などでは、そのようなアプローチに基づく画像変換の手法が開示されている。
【0049】
しかしながら、座標(a,b)と座標(u,v)とを直接対応づける座標関係式は、一般に三角関数を含んだ複雑な式になり、演算負担はかなり大きなものになる。たとえば、ソフトウエアによる演算処理で実行したとすると、現在普及している一般的なパソコンレベルのCPUでは、かなりの演算時間が必要になり、動画をリアルタイムで処理することは困難である。一方、ハードウエアによる演算処理で実行すれば、演算時間の短縮を図ることは可能であるが、三角関数演算を含む複雑な演算を実行するための半導体集積回路の構造はかなり複雑になり、製造コストの高騰は避けられない。
【0050】
本発明のユニークな着眼点は、座標(a,b)と座標(u,v)とを直接対応づける代わりに、魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう歪曲円形画像上の座標(x,y)を仲介させ、まず、座標(a,b)と座標(x,y)とを第1の演算式によって対応づけ、更に、座標(x,y)と座標(u,v)とを第2の演算式によって対応づけることにより、結果的に、座標(a,b)と座標(u,v)との対応づけが行われるようにする、という発想にある。
【0051】
<<< §2.魚眼レンズを用いた全方位カメラの場合の変換処理 >>>
本発明の本来の目的は、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像Cの一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を効率的に行うことにあるが、上述したとおり、その変換処理には、概念上、魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想の歪曲円形画像を仲介させる手法が採られる。そこで、ここでは、魚眼レンズを用いた全方位カメラの場合の変換処理の概要を説明する。
【0052】
図7は、正射影方式の魚眼レンズを用いた撮影により歪曲円形画像Sを形成する基本モデルを示す斜視図である。一般に、魚眼レンズは、その投影方式によって複数の種類に分けられるが、この図7に示すモデルは、正射影方式の魚眼レンズについてのものである。
【0053】
図7には、三次元XYZ直交座標系におけるXY平面上に歪曲円形画像Sが形成される例が示されている。ここでは、こうして魚眼レンズを用いた撮影により得られる歪曲円形画像Sを、「レンズ歪曲円形画像S」と呼ぶことにし、§1で説明した「ミラー歪曲円形画像C」と区別する。なお、後述する変換演算式との整合性を確保するために、図示のとおり、Z軸を図の下方にとり、Z軸の負の領域側にドーム状の仮想球面H(半球)を定義した例を示すことにする。
【0054】
XY平面上に形成されるレンズ歪曲円形画像Sは、座標系の原点Oを中心とした半径rの円を構成する画像であり、Z軸の負の領域側における180°の画角をもった領域に存在する像を歪ませて記録したものに相当する。図8は、魚眼レンズを用いた撮影によって得られたレンズ歪曲円形画像Sの一例を示す平面図である。このように、レンズ歪曲円形画像Sには、Z軸の負の領域側に存在するすべての像が記録されることになるが、その中心部分と周囲部分とでは、像の縮尺倍率が異なっており、記録された像の形状は歪んだものになる。なお、図8に示すレンズ歪曲円形画像Sも、魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一般的なイメージを示すものであり、実際の魚眼レンズを用いて得られる正確な画像を示すものではない。
【0055】
図8に示すレンズ歪曲円形画像Sと、図4に示すミラー歪曲円形画像Cとを比べると、いずれも円形の歪んだ画像である点では共通するが、前者が、レンズの屈折作用によって生じた画像であるのに対し、後者は、ミラーの反射作用によって生じた画像であるため、同一の被写体を同一視点から撮影したとしても、両画像の歪み具合はそれぞれ異なったものになる(なお、実際の図面においても、両画像が若干異なるように描かれているが、図面に描かれている相違は、正確な相違を反映したものではない)。また、図8に示すレンズ歪曲円形画像Sの場合、XY平面が撮像面になるため、死角となる領域は存在しない。このため、図4の画像Cの中心に生じていた黒い円形の影は、図8の画像Sには発生しない。
【0056】
このように、レンズ歪曲円形画像Sとミラー歪曲円形画像Cとは、画像としては全く別のものである。但し、両画像間には、それぞれ対応する点が定義できる。たとえば、図4に示す画像C上の点C(a,b)は、図8に示す画像S上の点S(x,y)に対応する。同様に、図4に示す画像C上の切出中心点K(a,b)は、図8に示す画像S上の切出中心点K(x,y)に対応する。したがって、座標(a,b)と座標(x,y)とを対応づける座標関係式を定義することが可能である。具体的な座標関係式については、§4,§5で詳述する。
【0057】
さて、実際の魚眼レンズは、複数の凸レンズや凹レンズを組み合わせた光学系によって構成されるが、その光学的な特性は、図7に示すような仮想球面Hによってモデル化できることが知られている。すなわち、レンズ歪曲円形画像Sの上面に、半径rをもったドーム状の仮想球面H(半球)を配置したモデルを考えれば、正射影方式の魚眼レンズの光学的特性は、仮想球面H上の任意の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する入射光線L1は、Z軸に平行な入射光線L2として、XY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする、と考えてよい。逆言すれば、図8においてレンズ歪曲円形画像S上の点S(x,y)に位置する画素は、図7に示す入射光線L1の延長線上に存在する物体上の1点を示していることになる。
【0058】
もちろん、実際の魚眼レンズで生じている光学的現象は、複数の凸レンズや凹レンズによる屈折により、撮像対象となる物体の特定の点が、XY平面上の特定の点S(x,y)上に結像する現象ということになるが、画像変換処理などを行う上では、図7に示すような仮想球面Hを用いたモデルに置き換えた議論を行っても何ら支障はない。したがって、前掲の特許文献1に開示されている画像変換処理でも、このようなモデルを前提とした手法が示されており、本発明における以下の説明においても、このようなモデルを前提とした説明を行うことにする。
【0059】
ここでは、§1で述べた例と同様に、レンズ歪曲円形画像S上の一部分を切り出して、平面正則画像に変換することを考えてみよう。たとえば、図8に示すレンズ歪曲円形画像Sを見たユーザが、その左下に描かれている女性の画像を、歪みのない正しい画像で観察したいと考えたとしよう。このような場合、既に§1で述べたとおり、ユーザは、切出中心点K(x,y)、切り出し向き、変換倍率mという3つのパラメータを指定すればよい。そうすれば、図9にハッチングを施して示すような切出領域Eが変換対象とすべき領域として切り出され、平面正則画像に変換される。
【0060】
ここでは、切出中心点K(x,y)を中心とした切出領域E内の画像を、平面正則画像に変換するために、次のようなモデルを考える。図10は、このモデルにおいて、レンズ歪曲円形画像Sを含むXY座標系と、平面正則画像Tを含むUV座標系との関係を示す斜視図である。図示のとおり、レンズ歪曲円形画像Sは、三次元XYZ直交座標系のXY平面上に定義されているので、レンズ歪曲円形画像S自身は、二次元XY直交座標系上に定義された画像である。そこで、このレンズ歪曲円形画像S上に定義された切出中心点K(x,y)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点Gを考える。この交点Gは、いわば切出中心点K(x,y)の真上の点であり、その位置座標は(x,y,z)である。
【0061】
次に、この交点G(x,y,z)において、仮想球面Hに接する接平面を定義し、この接平面上に二次元UV直交座標系を定義する。そして、平面正則画像Tを、この二次元UV直交座標系上の画像として求めることにする。図10に示す例の場合、交点G(x,y,z)が原点となるようにUV座標系が定義されている。結局、このモデルにおけるUV座標系の原点は、仮想球面H上のいずれかに設定され、UV座標系を構成するUV平面は、この原点位置における仮想球面Hに対する接平面に一致する。
【0062】
UV座標系の原点となる交点G(x,y,z)の位置は、図示のとおり、方位角αと天頂角βとによって特定することができる。ここで、方位角α(0≦α<360°)は、切出中心点K(x,y)とXY座標系の原点Oとを結ぶ直線とX軸とのなす角であり、天頂角β(0≦β≦90°)は、UV座標系の原点となる点G(x,y,z)とXY座標系の原点Oとを結ぶ直線とZ軸とのなす角である。
【0063】
このように、UV平面は、方位角αと天頂角βとを指定することによって特定することができるが、UV座標系を決定するには、更にもう1つのパラメータを指定する必要がある。このパラメータは、点Gを中心とした接平面上での回転ファクター(U軸の向き)を示すものであり、一般に平面傾斜角と呼ばれている。通常、この平面傾斜角は、「点Gを通り、XY平面に平行で、かつ、直線OGに直交する軸」を基準軸として、当該基準軸とU軸とのなす角φとして定義される(基準軸は、方位角αと天頂角βに依存して変化する)。この平面傾斜角φは、切り出し向きを示すパラメータに他ならない。
【0064】
結局、平面正則画像Tを形成するためのUV座標系の位置および向きは、方位角α,天頂角β,平面傾斜角φという3つの角度からなるパラメータを設定することにより一義的に決定される。この3つの角度は、一般にオイラー角と呼ばれている。
【0065】
図11は、UV座標系上に定義された平面正則画像Tを示す平面図である。ここでは、この平面正則画像T上の任意の点をUV座標系の座標値u,vを用いて、T(u,v)と表すことにする。前述したとおり、ここに示すモデルでは、UV座標系の原点T(0,0)の位置は、点G(x,y,z)に一致する。一方、図12は、XY座標系上に定義されたレンズ歪曲円形画像Sを示す平面図である。ここでは、このレンズ歪曲円形画像S上の任意の点をXY座標系の座標値x,yを用いて、S(x,y)と表すことにする。
【0066】
この§2で説明する魚眼レンズ用の画像変換装置は、図12に示すように、ユーザがレンズ歪曲円形画像S上の1点K(x,y)の位置を切出中心点として指定すると、その近傍の切出領域E内の歪曲した画像を正則画像に変換し、図11に示すUV座標系上に定義された平面正則画像Tとして出力する機能を有している。このような画像変換を行うためには、UV座標系上の1点T(u,v)とXY座標系上の1点S(x,y)との間に1対1の対応関係を定義しておく必要がある。このような対応関係は、実際には、変換演算式として表現することができる。
【0067】
このような変換演算式は、三次元XYZ座標系の空間内に配置されたUV座標系の位置および向きが決定すれば、一義的に定義することが可能である。たとえば、図10に示すような特定のUV座標系が定義されており、その上に何らかの平面正則画像Tが配置されていたとする。この場合、この平面正則画像Tを撮影対象となる物体と考え、図示のモデルに相当する魚眼レンズを用いて、当該物体を撮影すれば、XY平面上にレンズ歪曲円形画像Sが得られることになる。このとき、撮影対象物体となる平面正則画像T上の任意の点T(u,v)のレンズ歪曲円形画像S上での結像位置S(x,y)は、図7で説明した魚眼レンズの光学的な基本特性に基づいて決定できる。すなわち、点T(u,v)からの光線L1が法線方向から入射するような仮想球面H上の点H(x,y,z)を求めれば、結像位置はS(x,y)として与えられることになる。
【0068】
結局、UV座標系の位置および向きが決定すれば、UV座標系上の1点T(u,v)とXY座標系上の1点S(x,y)との間に1対1の対応関係を定義することができ、そのような対応関係は変換演算式として表現することができる。レンズ歪曲円形画像Sの一部を平面正則画像Tに変換する画像変換処理は、この変換演算式を用いた座標変換演算によって行うことができる。たとえば、図11に示す平面正則画像Tにおける任意の1点T(u,v)に位置する画素の画素値は、図12に示すレンズ歪曲円形画像S上の対応点S(x,y)に位置する画素の画素値に基づいて決定すればよい。
【0069】
このように、座標(u,v)と座標(x,y)とを対応づける変換演算式は、三次元XYZ座標系の空間内に配置されたUV座標系の位置および向きが決定すれば、一義的に定義できる公知の式である。たとえば、図13に式(1)〜(9)として示されている変換演算式は、前掲の特許文献1に開示されている式である。この変換演算式は、UV座標系の位置を示すパラメータα,βと、UV座標系の向きを示すパラメータφとを含む式になっている。これら3つのパラメータは、前述したオイラー角、すなわち、方位角α,天頂角β,平面傾斜角φである。
【0070】
具体的には、
x=r(uA+vB+wE)/
√(u+v+w) 式(1)
は、UV座標系上の1点T(u,v)の座標値u,vを用いて、XY座標系上の対応点S(x,y)のx座標値を求めるための式であるが、A,B,Eは、それぞれ、
A=cosφcosα−sinφsinαcosβ 式(3)
B=−sinφcosα−cosφsinαcosβ 式(4)
E=sinβsinα 式(7)
なる数式で求まる値であり、オイラー角α,β,φの三角関数を用いた演算によって決定されることになる。
【0071】
同様に、
y=r(uC+vD+wF)/
√(u+v+w) 式(2)
は、UV座標系上の1点T(u,v)の座標値u,vを用いて、XY座標系上の対応点S(x,y)のy座標値を求めるための式であるが、C,D,Fは、それぞれ、
C=cosφsinα+sinφcosαcosβ 式(5)
D=−sinφsinα+cosφcosαcosβ 式(6)
F=−sinβcosα 式(8)
なる数式で求まる値であり、オイラー角α,β,φの三角関数を用いた演算によって決定されることになる。
【0072】
なお、式(1),(2)におけるwは、
w=mr 式(9)
で与えられる値である。ここで、rは、レンズ歪曲円形画像Sの半径であり、mは変換倍率である。変換倍率mは、座標値u,vのスケーリングと、座標値x,yのスケーリングとの関係を示すものであり、変換倍率mを大きく設定すればするほど、平面正則画像Tには拡大された画像が求められる。実際には、平面正則画像Tの大きさ(たとえば、縦横の画素数)には制限があるため、変換倍率mを大きく設定すればするほど、レンズ歪曲円形画像Sの切出領域Eは小さくなる。
【0073】
図13に示す式において、rの値はレンズ歪曲円形画像Sの半径として既知であり、mの値はユーザによって指定された(もしくは、予め固定された)変換倍率値として既知であるから、ユーザがオイラー角α,β,φを指定することにより、UV座標系の位置および向きを決定してやれば、図13に示す変換演算式において、座標値x,yを算出するための未知数はu,vのみになる。したがって、この変換演算式を用いれば、平面正則画像Tにおける任意の1点T(u,v)に対応するレンズ歪曲円形画像S上の対応点S(x,y)を決定することができる。
【0074】
前掲の特許文献1に開示されている画像変換の方法は、この図13に示す変換演算式を用いて、レンズ歪曲円形画像Sの一部を平面正則画像Tに変換するものである。
【0075】
<<< §3.魚眼レンズ用の画像変換装置の基本構成 >>>
ここでは、図14のブロック図を参照しながら、§2で述べた原理に基づく魚眼レンズ用画像変換装置の基本構成を説明する。図14において、一点鎖線で囲った部分が、魚眼レンズ用の画像変換装置100である。この装置は、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像Sの一部分を切り出して、平面正則画像Tに変換する処理を行う機能を有している。この例では、魚眼レンズを用いたカメラ10によって撮影されたレンズ歪曲円形画像Sが、デジタルデータとして、この画像変換装置100内に取り込まれている。
【0076】
歪曲円形画像格納部110は、このようなレンズ歪曲円形画像Sを格納するための構成要素であり、メモリやハードディスク装置などの記憶装置によって構成される。ここで、レンズ歪曲円形画像Sは、たとえば、図8に例示するように、二次元XY直交座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、XY座標系の原点Oを中心とし半径rをもった円形の画像になる。
【0077】
一方、平面正則画像格納部120は、変換処理後の平面正則画像Tをデジタルデータとして格納するための構成要素であり、やはりメモリやハードディスク装置などの記憶装置によって構成される。ここで、平面正則画像Tは、たとえば、図5や図6に例示するように、二次元UV直交座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される画像になる。この平面正則画像格納部120内の平面正則画像Tを変換された画像のデジタルデータとして出力すれば、ディスプレイの画面上に図5や図6に例示するような平面正則画像を表示させることができる。
【0078】
変換演算部130は、§2で述べた変換演算式を利用して、座標(u,v)と座標(x,y)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を、対応する座標(x,y)で示される位置に配置されたレンズ歪曲円形画像S上の参照画素の画素値に基づいて決定する機能を有し、歪曲円形画像格納部110内に格納されているレンズ歪曲円形画像Sに基づいて、平面正則画像Tを作成する演算を行い、生成された平面正則画像Tを平面正則画像格納部120に格納する。§2で述べたとおり、このような変換演算を行うには、いくつかのパラメータを設定する必要がある。以下の各構成要素は、このパラメータ設定を行うためのものである。
【0079】
歪曲円形画像表示部140は、歪曲円形画像格納部110に格納されているレンズ歪曲円形画像Sをディスプレイに表示する構成要素であり、たとえば、図8に示すような画像がディスプレイの画面上に表示される。
【0080】
指示入力部150は、変換に必要な3つのパラメータを入力するためのユーザの指示を入力する。すなわち、ユーザからの指示入力に基づいて、切出中心点Kの位置を示す座標(x,y)と、切り出し向き(たとえば、平面傾斜角φの値)と、変換倍率mと、が入力される。切出中心点Kの位置は、ディスプレイに表示されているレンズ歪曲円形画像S上の1点を指定するユーザによるマウスクリック操作などによって取り込むことができる。
【0081】
こうして入力された3つのパラメータは、変換演算部130に与えられる。変換演算部130は、まず、切出中心点Kの位置(x,y)に基づいて、点Gの位置座標(x,y,z)を求める処理を行う。ここで、点Gは、図10に示すとおり、三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心とし半径rをもった仮想球面Hを定義したときに、切出中心点Kを通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点として与えられる点である。実際には、点Kの座標値x,yと点Gの座標値x,yとは同一の値であるから、点Gの位置座標(x,y,z)を求める演算処理は、座標値zを求めるための幾何学演算のみである。
【0082】
こうして、点Gの位置座標(x,y,z)が得られれば、やはり幾何学的演算によって、図10に示す方位角α、天頂角βを算出することができるので、ユーザが指定した平面傾斜角φを含めたオイラー角α,β,φが定まる。また、rはレンズ歪曲円形画像Sの半径として既知であり、mはユーザが指定した変換倍率として既知である。よって、変換演算部130は、図13に示す式を利用して、座標(x,y)で示される位置に配置された画素の集合からなるレンズ歪曲円形画像Sを、座標(u,v)で示される位置に配置された画素の集合からなる平面正則画像Tに変換し、これを平面正則画像格納部120に格納することができる。
【0083】
なお、実際に変換演算部130が実施する座標変換演算は、座標(x,y)に基づいて座標(u,v)を求める演算ではなく、逆に、座標(u,v)に基づいて座標(x,y)を求める演算になる。これは、実際には、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を、対応する座標(x,y)で示される位置に配置されたレンズ歪曲円形画像S上の参照画素の画素値に基づいて決定する処理が行われるためである。そのため、図13に示す式(1),(2)は、任意の値u,vに基づいて、これに対応するx,yの値を導出する形式の式になっている。
【0084】
なお、レンズ歪曲円形画像Sは、二次元XY直交座標系上の座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成された画像であり、実際には、所定ピッチで縦横に配列された多数の格子点の位置に、それぞれ固有の画素値を定義したデジタルデータによって構成されている。このため、変換演算部130による演算結果として得られた対応座標(x,y)の位置は、通常、複数の格子点の間の位置になる。たとえば、レンズ歪曲円形画像Sが、ピッチ1で縦横に配列された多数の格子点位置の画素値を定義したデジタルデータによって構成されている場合、いずれの格子点も、その座標値は整数値になる。よって、変換演算部130による演算結果として得られた対応座標xおよびyの値が小数を含む値であると(多くの場合はそうなるであろう)、対応座標(x,y)の位置は、複数の格子点の間の位置になり、対応する画素値を1つに決めることはできない。
【0085】
したがって、実際には、変換演算部130が、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を決定する際には、対応する座標(x,y)で示される位置の近傍に配置されたレンズ歪曲円形画像S上の複数の参照画素の画素値に対する補間演算を行う必要がある。このような補間演算を行う方法としては、たとえば、バイリニア補間法、バイキュービック・スプライン補間法など、様々な方法が公知である。
【0086】
<<< §4.全方位ミラーによる撮影画像に対する画像変換 >>>
本発明による変換対象となる画像は、§1で述べたとおり、全方位ミラー式カメラで撮影されたミラー歪曲円形画像である。それにもかかわらず、§2,§3において、魚眼レンズ式カメラで撮影されたレンズ歪曲円形画像に対する画像変換を説明したのは、本発明では、レンズ歪曲円形画像に対する画像変換の原理をそのまま取り入れる手法を採るためである。
【0087】
本発明における画像変換の基本概念は、図4に示すようなミラー歪曲円形画像Cを、一旦、図8に示すようなレンズ歪曲円形画像Sに変換し、その後で、§2,§3で述べた公知の方法を用いて、当該レンズ歪曲円形画像Sを平面正則画像Tに変換すればよい、という考え方である。レンズ歪曲円形画像Sを平面正則画像Tに変換する手法は、前掲の特許文献1などに開示されている公知の手法として確立しており、実際、図13に示す変換演算式に基づく変換演算を実行する専用の半導体集積回路なども商業ベースで利用され始めている。
【0088】
これに対して、図4に示すようなミラー歪曲円形画像Cを、平面正則画像Tに直接変換する手法は、前掲の非特許文献1などで提案されている。しかしながら、カメラに用いる全方位ミラーの曲面形状に応じて、用いるべき変換演算式もそれぞれ異なり、また、個々の変換演算式には非常に複雑な演算項が含まれるため、実用上、変換演算を実行する専用の半導体集積回路などを商業ベースで提供することは困難である。
【0089】
そこで、本発明では、「ミラー歪曲円形画像C」→「レンズ歪曲円形画像S」→「平面正則画像T」という迂回プロセスを敢えて採用することにより、「レンズ歪曲円形画像S」用の変換装置の資源をそのまま流用できるようにし、結果的に、「ミラー歪曲円形画像C」→「平面正則画像T」という画像変換を効率的に実行できるようにしているのである。なお、上記迂回プロセスは、あくまでも概念上のプロセスであって、実際には、個々の「ミラー歪曲円形画像C」について、「レンズ歪曲円形画像S」を生成するプロセスが行われるわけではない。そのような意味では、上記「レンズ歪曲円形画像S」は、実在の画像ではなく、あくまでも概念上生じる仮想の画像ということになる。
【0090】
すなわち、本発明では、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、ミラー歪曲円形画像を仮想レンズ歪曲円形画像に変換するための第1の演算式と、仮想レンズ歪曲円形画像を平面正則画像に変換するための第2の演算式と、を併用した変換演算をコンピュータに実行させることにより、結果的に、ミラー歪曲円形画像を平面正則画像に変換するプロセスが行われることになる。
【0091】
座標変換のプロセスとして考えると、まず、図4に示すミラー歪曲円形画像C上の点C(a,b)が、図8に示す仮想レンズ歪曲円形画像S上の点S(x,y)に変換され、更に、図5に示す平面正則画像T1上の点T1(u,v)や、図6に示す平面正則画像T2上の点T2(u,v)に変換されることになる。座標変換は(a,b)→(x,y)→(u,v)という形で行われるので、変換処理には、座標(a,b)と座標(x,y)とを対応づける第1の座標関係式と、座標(x,y)と座標(u,v)とを対応づける第2の座標関係式とが用いられることになる。ここで、第2の座標関係式は、図13に示すとおりである。そこで、以下、第1の座標関係式がどのように定義されるかを検討してみる。
【0092】
一般に、全方位ミラーの反射面には、二次曲線の回転体が用いられる。二次曲線には、放物線、楕円、双曲線などの種類があり、これらの回転体を反射面とする全方位ミラーの形状は様々になり、第1の座標関係式も様々なものになる。そこで、この§4では、まず、楕円曲面(楕円をその軸について回転させて得られる回転体)を反射面にもつ楕円曲面ミラーを用いた場合について考えてみよう。
【0093】
図15は、楕円曲面ミラーMによる反射光を撮像面J0上に結像させることによってミラー歪曲円形画像が形成される様子を示す側断面図である。楕円曲面ミラーMは、図1に示す全方位カメラ20における全方位ミラー22の反射面に対応し、撮像面J0は、撮像素子24の受光面に対応する。また、楕円曲面ミラーMの中心軸(回転体の回転軸)は、Z軸に一致するように配置されている。
【0094】
楕円は2つの焦点を有する二次曲線であり、両焦点からの距離の和が一定となる任意の点の集合として定義される。ただ、図15に示すように、楕円の片側の曲線部分のみに注目すれば、その近傍には唯一の焦点Fを定義することができ、図示のとおり、この焦点Fは、長軸上(すなわち、Z軸上)に位置する。そして、楕円の幾何学的な性質により、この楕円曲面ミラーMの外側から焦点Fに向かってきた入射光線は、ミラー表面で反射した後、唯一のピンホール点Pを通ることになる。図15に示されている入射光線L10,L20,L30,L40は、いずれも焦点Fに向かって入射した光線であるため、これらの反射光はいずれもピンホール点Pを通る。
【0095】
ここで、撮像面J0にどのような像が結像されるかを考えてみよう。実際の撮像素子24内には、レンズなどの光学系が内蔵されており、これらの光学系によって撮像面J0に像が結ぶことになるが、ここでは、説明の便宜上、撮像素子24にピンホールカメラが内蔵されていたとしよう。具体的には、図に破線で示すような遮光スクリーンが配置され、その中心にあるピンホール点Pにピンホールが開口されていたと考えればよい。この場合、各入射光線L10,L20,L30,L40は、撮像面J0の各結像点C10,C20,C30,C40に到達し、これら結像点の集合として、撮像面J0上に像が結ぶことになる。
【0096】
もちろん、実際の撮像素子24は、レンズなどの光学系によって、撮像面J0上へ像を結ばせているが、この光学系の焦点距離を調整すれば、結像する撮像面の位置を変えることができる。図16は、図15に示す撮像面J0を図の上下に平行移動させることにより、ミラー歪曲円形画像が相似変化する様子を示す側断面図である。図示のとおり、撮像面J1上の各結像点は、C11,C21,C31,C41となり、撮像面J2上の各結像点は、C12,C22,C32,C42となり、像の大きさが徐々に変わってゆくことがわかる。撮像面をJ3の位置へ設定すると、各結像点は、C13,C23,C33,C43になり、像が裏返しになる。
【0097】
ここでは、撮像面を更に下方へと移動させた場合を考えてみると、撮像面J4上の各結像点は、C14,C24,C34,C44となり、撮像面J5上の各結像点は、C15,C25,C35,C45となり、やはり像の大きさが徐々に変わってゆくことがわかる。もっとも、撮像面J4,J5は、その一部が楕円曲面ミラーMの内部に入り込んでしまっているので、現実的には、このような位置に実際の撮像面(撮像素子の受光面)を配置することはできない。実際、すべての入射光線は、ミラーMの表面で反射してしまうため、ミラーMの内部には光が届くことはなく、ミラーMの内部に撮像面を配置しても像は得られない。このような像を得るためには、反射光が逆方向に向かい、ミラーMの内部に進入する非物理的な現象を考える必要がある。
【0098】
しかしながら、ここで検討している事項は、前述したとおり、座標(a,b)と座標(x,y)との関係であるので、このように現実的にはあり得ない仮想の撮像系を想定しても何ら問題はない。この仮想の撮像系において、たとえば、撮像面J5に得られる像が、実撮像面J0上に得られる像と相似の関係にあることは、図16を見れば容易に理解できよう。ここで、撮像面J5は、楕円曲面ミラーMの焦点Fを通り、その中心軸(Z軸)に直交する平面である。このように、本発明の1つの特徴は、全方位ミラーを用いた撮影での実撮像面J0に形成されるミラー歪曲円形画像と、仮想撮像面J5に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像とが、相似関係にあることを利用する点にある。
【0099】
次に、図17に示すように、楕円曲面ミラーMの焦点Fの位置に原点Oをとり、楕円曲面ミラーMの中心軸方向にZ軸をとったXYZ三次元直交座標系を定義し、ここに仮想球面Hを定義した魚眼レンズモデルを構築する。このモデルは、図7に示す正射影モデルと同じものであり、仮想球面Hは、原点Oを中心とした半径rの球面である。既に述べたとおり、このような魚眼レンズの正射影モデルの場合、仮想球面H上の任意の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する入射光線Lは、Z軸に平行な入射光線として、XY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする。そして、この魚眼レンズを用いた撮影では、XY平面上にレンズ歪曲円形画像Sが形成されることになる。ここで、このレンズ歪曲円形画像Sは、点S(x,y)の位置に配置された画素の集合体によって構成される。
【0100】
一方、このXY平面上に撮像面J5を定義すれば、楕円曲面ミラーMを用いた撮影によって実撮像面J0上に得られる像と相似をなすミラー歪曲円形画像Cが、XY平面上に形成されると考えることができる。ここで、このミラー歪曲円形画像Cは、点C(a,b)の位置に配置された画素の集合体によって構成される。なお、点Pは、上述したピンホール点であり、焦点Fとピンホール点Pとの距離をdとすれば、ピンホール点Pの三次元座標系上での座標値は(0,0,d)になる。また、図示の直線ξは、後述するように、ミラーMを構成する楕円曲線に関する準線と呼ばれる直線であり、X軸に対して距離qだけ離れた平行線になる。
【0101】
このように、図17に示すモデルでは、同一のXYZ三次元直交座標系上に、全方位ミラーを用いた撮像系と魚眼レンズを用いた撮像系とが重複配置されており、同一のXY平面上に、ミラー歪曲円形画像Cとレンズ歪曲円形画像Sとが形成されることになる。しかも、ミラー歪曲円形画像Cの中心点とレンズ歪曲円形画像Sの中心点は、いずれも座標系の原点Oに一致する。したがって、ミラー歪曲円形画像C上の任意の点C(a,b)に対して、レンズ歪曲円形画像S上における対応点S(x,y)を定め、座標(a,b)と座標(x,y)との対応関係を何らかの変換演算式で定義することができれば、当該変換演算式は、本発明を実施する上で必要な第1の座標関係式ということになる。
【0102】
そこで、図17において、座標系の原点Oに向かって外界から届いた入射光線Lの挙動について考えてみよう。まず、全方位ミラーを用いた撮像系における挙動を考えると、入射光線Lは、楕円曲面ミラーMの表面における反射点Qで反射する。ここで、入射光線Lは、原点Oすなわち楕円曲面ミラーMの焦点Fに向かってきた光であるため、反射光は、図示のとおり、ピンホール点Pに向かうことになる。このピンホールに向かう光の光路を進行方向とは逆方向に伸ばし、撮像面J5(すなわち、XY平面)との交点C(a,b)を求めれば、当該点C(a,b)は、入射光線Lの結像点ということになる。
【0103】
次に、魚眼レンズを用いた撮像系における挙動を考えると、入射光線Lは、仮想球面H上の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する光になる。したがって、この入射光線Lは、Z軸に平行な入射光線として、XY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする。したがって、点S(x,y)は、入射光線Lの結像点ということになる。
【0104】
結局、図17において、全方位ミラーを用いた撮像系によって得られる結像点C(a,b)は、魚眼レンズを用いた撮像系によって得られる結像点S(x,y)に対応することになる(いずれもXY平面上の点であり、Z座標値は0である)。ここで、座標値a,xは、いずれもX軸上の座標値であり、座標値b,yは、いずれもY軸上の座標値であるから、aとxとの関係式と、bとyとの関係式が得られれば、座標(a,b)と座標(x,y)との対応関係を定義する第1の座標関係式が定まる。
【0105】
図18は、本発明に係る画像変換方法の基本概念を示す平面図である。上記第1の座標関係式を用いれば、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像C内の1点C(a,b)と、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像S内の1点S(x,y)と、の対応関係が定まる。したがって、ミラー歪曲円形画像Cをレンズ歪曲円形画像Sに変換することができる。一方、図13に示す第2の座標関係式を用いれば、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像S内の1点S(x,y)と、平面正則画像T内の1点T(u,v)との対応関係が定まる。したがって、レンズ歪曲円形画像Sを平面正則画像Tに変換することができる。
【0106】
もっとも、実際には、図18の中段に示すレンズ歪曲円形画像Sを、具体的な画像として生成する必要はない。レンズ歪曲円形画像Sは、座標変換の概念で利用される仮想のものであり、実際の演算としては、ミラー歪曲円形画像Cを平面正則画像Tに直接変換する処理を行うことができる。
【0107】
<<< §5.具体的な座標関係式の導出 >>>
さて、ここでは、具体的に第1の座標関係式を導出してみる。前述したとおり、第1の座標関係式は、座標(a,b)と座標(x,y)との対応関係を定義する式であり、図17において、「aとxとの関係を示す式」および「bとyとの関係を示す式」ということになる。なお、§4では、説明の便宜上、曲面ミラーMが楕円曲面からなるミラーである場合を述べたが、本発明は、放物線、楕円、二葉双曲線のいずれかの二次曲線の回転体からなる曲面を反射面とする全方位ミラーであれば適用可能である。そこで、以下、曲面ミラーMが、放物線、楕円、二葉双曲線のいずれかの回転体からなる曲面をもったミラーである一般的な場合について、その幾何学的解析を行う。
【0108】
そのために、まず、二次曲線の一般的な性質について、簡単に説明しておこう。いま、図19に示すように、1点Fと、この点Fを通らない直線ξを定義する。ここで、任意の点Qについて、点Fからの距離をρとし、直線ξとの距離(点Qから直線ξに下ろした垂線の足をAとしたときの線分AQの長さ)をλとして、離心率e=ρ/λなるものを定めると、一般的な二次曲線γは、この離心率eが一定となる点の集合体として定義される。そして、点Fおよび直線ξは、当該二次曲線γの焦点および準線と呼ばれている。
【0109】
たとえば、図20に示すように、焦点Fおよび準線ξが配置されており、これらに基づいて、図示のような二次曲線γが定義されていたとすると、この二次曲線γ上の点Qについて、焦点Fからの距離をρとし、準線ξとの距離(点Qから準線ξに下ろした垂線の足をAとしたときの線分AQの長さ)をλとすれば、e=ρ/λで定義される離心率eは、二次曲線γ上のいずれの位置にある点Qについても、常に一定になる。
【0110】
図21は、一般的な二次曲線γの離心率eと曲線の種類との関係を示す表である。図示のとおり、離心率eが、0<e<1の範囲内の一定値をとる点の集合体は楕円になり、離心率eが、e=1となる点(すなわち、図20において、ρ=λとなる点)の集合体は放物線になり、離心率eが、e>1の範囲内の一定値をとる点の集合体は双曲線になる。
【0111】
一方、図20に示すピンホール点Pは、前述したとおり、焦点Fに向かってくる任意の入射光線が、二次曲線γで反射して向かう点という特有の性質を有する点であり、二次曲線γの中心軸上の1点になる。ここで、焦点Fとピンホール点Pとの距離dは、二次曲線γが定まると一義的に決定できる。具体的には、個々の二次曲線γについてのdの値は、図21の表に示す式で求めることができる。なお、放物線の場合、d=無限大となっているので、図15に示す入射光線L10,L20,L30,L40は、無限遠に位置するピンホール点Pに向かって反射することになる。これは、反射光がいずれもZ軸に対して平行な光線になることを意味する。もちろん、反射光が平行光線になっても、レンズなどの光学系により、任意の撮像面に結像させることが可能であり、§4で述べた基本原理がそのまま適用できる。
【0112】
このように、放物線、楕円、二葉双曲線のいずれの場合も、離心率e,焦点Fと準線ξとの距離q,焦点Fとピンホール点Pとの距離d(図21の表に示すとおり、距離dは他のパラメータから計算によって求めることができる)の値が定まれば、曲線の形状は一義的に定まることになる。別言すれば、放物線、楕円、二葉双曲線の回転体からなる反射面をもつ全方位ミラーであれば、個々のミラーについて、e,q,dの固有値が決定できることになり、この3つの固有値e,q,dは、全方位ミラーの反射面の形状を定めるパラメータということになる。
【0113】
さて、上述したような二次曲線の一般的性質を踏まえた上で、図17における「aとxとの関係を示す式」および「bとyとの関係を示す式」を求めてみよう。図22は、図17の一部分を拡大し、XZ平面上へ投影した投影図である。すなわち、図22は、上述した三次元空間上でのモデルの各構成要素をXZ平面上に投影した二次元平面上での幾何学モデルに相当し、図示の図形は、いずれも平面上の図形である。
【0114】
たとえば、図22に入射光線Lとして示されている直線は、実際の入射光線LのXZ平面への投影像に相当する。したがって、図示の角度θは、入射光線LとZ軸とのなす三次元空間上での角度ではなく、入射光線LのXZ平面上への投影像とZ軸とのなす平面上での角度である。同様に、図22に示す曲線Hは、XZ二次元座標系上の原点Oを中心とする半径rの円であり、曲線Mは、原点Oを焦点位置とする二次曲線である。§4では、曲線Mが楕円の場合を例にとって説明したが、ここでは、曲線Mが放物線、楕円、二葉双曲線のいずれかの二次曲線である場合に拡張して説明を行うことにする。また、図17に示す点H,Q,S,Cについては、便宜上、図22においても同じ記号の点H,Q,S,Cとして示してあるが、図22上のこれら各点は、いずれもXZ平面上への投影点を示しており、各投影点のY座標値は0である。
【0115】
続いて、図22に示されている反射点Q(XZ平面上への投影点)から、直線ξ(二次曲線Mについての準線),Z軸,X軸に対して、それぞれ垂線を下ろし、その足を、それぞれ点A,点B,点Dとする。ここで、反射点Qの座標を(x′,y′、z′)とすると、線分ODの長さはx′、線分DQの長さはz′になる。また、線分AQの長さをλとし、線分OQの長さをρとし、準線ξとX軸との間隔をqとする。この図22に示す二次曲線M(曲面ミラーMの表面)は、図20に示す二次曲線γに対応するものであり、図22に示す長さλ,ρ,q,dは、それぞれ図20に示す長さλ,ρ,q,dに対応するものである。
【0116】
まず、図22に示す線分OQの長さρについては。図23に記載されているとおり、式の導出が可能である。すなわち、図22より、
q=λ+ρ・cosθ 式(10)
である。そして、二次曲線の性質により、
e=ρ/λ 式(11)
が成り立つ。よって、
ρ=eq/(1+ecosθ) 式(12)
が導出される。ここで、三角形OHSに着目すると、
cosθ=z/r 式(13)
であるから、これを式(12)に代入すれば、
ρ=req/(r+ez) 式(14)
が得られる。
【0117】
続いて、点C(a,b)のX座標値aを求めてみよう。図24に記載されているとおり、三角形BPQと三角形OPCとの相似を利用すれば、
x′/(d−z′)=a/d 式(15)
が成り立つので、
a=dx′/(d−z′) 式(16)。
また、三角形OQDと三角形OHSとの相似を利用すれば、
x′=ρx/r、z′=ρz/r 式(17)
なので、
a=(d(ρx/r))/(d−(ρz/r)) 式(18)
が得られる。最後に、式(18)のρに、式(14)のρを代入すれば、
a=eqd/(rd+ez(d−q))・x 式(19)
が得られる。
【0118】
以上、図22に示すXZ平面への投影図を用いて、aとxとの関係式を求めたが、YZ平面への投影図を用いて同様のことを行えば、bとyとの関係式として、
b=eqd/(rd+ez(d−q))・y 式(20)
が得られる。また、rは、仮想球面Hの半径であり、図17の三次元モデルにおいて、線分OHの長さは半径rに等しいから、
=x+y+z 式(21)
が成り立つ。かくして、図25に示すように、式(19),式(20),式(21)の3本の式が得られる。
【0119】
ここで、rは仮想球面Hの半径として任意の数値を設定することができる。すなわち、rの値は、レンズ歪曲円形画像Sの半径値であるが、あくまでも画像全体のスケーリングに関するファクターであるため、任意の値(たとえば、r=1)に設定して問題はない。そして、e,q,dは、個々のミラーの表面形状(回転体の元になる二次曲線)についての固有値として既知の値になる。一方、zは変数になるが、式(21)を利用すれば変数値zを定めることができる。結局、図25に示す3本の式は、座標(a,b)と座標(x,y)とを対応づける第1の座標関係式ということになる。
【0120】
ところで、図25の関係式は、座標(x,y)に基づいて座標(a,b)を算出するための式であるが、この式をx,yについて解けば、図26に示すように、座標(a,b)に基づいて座標(x,y)を算出するための式が得られる。すなわち、
x=(rd+ez(d−q))/eqd・a 式(22)
y=(rd+ez(d−q))/eqd・b 式(23)
が得られる。ここで、右辺の変数zについては、式(21)に、式(22),式(23)を代入すれば、
((rd+ez(d−q))/eqd)(a+b)+z=r 式(24)
が得られるので、この式(24)を変数zに関する2次方程式として、解の公式を適用して算出することができる。
【0121】
なお、図21の表に示すとおり、放物線の場合、d=無限大になる。したがって、放物曲面ミラーを用いた場合、図25の式(19),式(20)、図26の式(22),式(23),式(24)の分母および分子にそれぞれd=無限大の項が入ることになるが、d=無限大の極限値を求めれば、いずれの式についても有限の値が算出できるので支障はない。
【0122】
図27は、本発明に係る画像変換方法の基本プロセスを示す平面図である。まず、図25に示す第1の座標関係式(式(19)〜式(21))を用いれば、放物線、楕円、二葉双曲線の回転体からなる全方位ミラーMを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像C内の1点C(a,b)と、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像S内の1点S(x,y)と、の対応関係が定まる。したがって、ミラー歪曲円形画像Cをレンズ歪曲円形画像Sに変換することができる。一方、図13に示す第2の座標関係式を用いれば、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像S内の1点S(x,y)と、平面正則画像T内の1点T(u,v)との対応関係が定まる。したがって、レンズ歪曲円形画像Sを平面正則画像Tに変換することができる。
【0123】
もちろん、前述したとおり、実際には、図27の中段に示すレンズ歪曲円形画像Sを生成する必要はなく、図27の下段に示す平面正則画像T上の任意の点T(u,v)の位置に配置される画素の画素値を決定するには、まず、図13に示す第2の座標変換式を利用して、座標(u,v)に対応する座標(x,y)を求め、続いて、図25に示す第1の座標変換式を利用して、座標(x,y)に対応する座標(a,b)を求める。最後に、図27の上段に示すミラー歪曲円形画像C内の点C(a,b)の位置に配置されている画素の画素値を参照すればよい。
【0124】
以上のとおり、放物線、楕円、二葉双曲線のように、ある曲線部分に対して、焦点Fが1つに定まる二次曲線の回転体を反射面とする全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像であれば、本発明を利用して、平面正則画像に変換することが可能である。なお、円も二次曲線の1つであるが、円の場合は焦点が1つの定まらない。このため、円の回転体、すなわち、球面を反射面とするミラーの場合、理論的には、本発明の基本原理をそのまま適用することはできない。
【0125】
球面ミラーの場合でも、任意の1点に焦点を無理やり仮定して、本発明を適用すれば、上述した原理に基づく変換処理は可能である。しかしながら、この場合、正しい平面正則画像を得ることはできない。ただ、実際には、遠方の被写体に関しては、視点位置が多少ずれても、像がおおきく変わることはないので、本発明を球面ミラーに適用すると、遠方の景色に関しては、ある程度の品質をもった平面正則画像を得ることは可能である。したがって、遠方の被写体を観察する用途に限定すれば、実用上は、本発明を球面ミラーや、その他の任意形状のミラーに適用してもかまわない。
【0126】
<<< §6.全方位ミラー用の画像変換装置の基本構成 >>>
ここでは、図28のブロック図を参照しながら、§5で述べた原理に基づく全方位ミラー用画像変換装置の基本構成を説明する。図28において、一点鎖線で囲った部分が、全方位ミラー用の画像変換装置200である。この装置は、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像Cの一部分を切り出して、平面正則画像Tに変換する処理を行う機能を有している。この例では、全方位ミラーを用いたカメラ20によって撮影されたミラー歪曲円形画像Cが、デジタルデータとして、この画像変換装置200内に取り込まれている。
【0127】
歪曲円形画像格納部110は、このようなミラー歪曲円形画像Cを格納するための構成要素であり、メモリやハードディスク装置などの記憶装置によって構成される。ここで、ミラー歪曲円形画像Cは、たとえば、図4に例示するように、二次元XY直交座標系上の座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成された円形の画像になる。
【0128】
一方、平面正則画像格納部120は、変換処理後の平面正則画像Tをデジタルデータとして格納するための構成要素であり、やはりメモリやハードディスク装置などの記憶装置によって構成される。ここで、平面正則画像Tは、たとえば、図5や図6に例示するように、二次元UV直交座標系上の座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される画像になる。この平面正則画像格納部120内の平面正則画像Tを変換画像のデジタルデータとして出力すれば、ディスプレイの画面上に図5や図6に例示するような平面正則画像を表示させることができる。
【0129】
変換演算部230は、§5で述べた2通りの座標関係式を利用して、座標(u,v)と座標(a,b)とを座標(x,y)を仲介して対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定する機能を有し、歪曲円形画像格納部110内に格納されているミラー歪曲円形画像Cに基づいて、平面正則画像Tを作成する演算を行い、生成された平面正則画像Tを平面正則画像格納部120に格納する。既に述べたとおり、このような変換演算を行うには、いくつかのパラメータを設定する必要がある。以下の各構成要素は、このパラメータ設定を行うためのものである。
【0130】
歪曲円形画像表示部140は、歪曲円形画像格納部110に格納されているミラー歪曲円形画像Cをディスプレイに表示する構成要素であり、たとえば、図4に示すような画像がディスプレイの画面上に表示される。
【0131】
指示入力部150は、変換に必要な3つのパラメータを入力するためのユーザの指示を入力する。すなわち、ユーザからの指示入力に基づいて、切出中心点Kの位置を示す座標(a,b)と、切り出し向き(たとえば、平面傾斜角φの値)と、変換倍率mと、が入力される。
【0132】
切出中心点Kの位置は、ディスプレイに表示されているミラー歪曲円形画像C上の1点を指定するユーザによるマウスクリック操作などによって取り込むことができる。平面傾斜角φの値は、0〜360°の数値をキーボードから入力できるような構成にしてもよいし、ディスプレイ画面上のレバーなどを操作して、任意の角度を設定できるようにしてもよい。変換倍率mの値も、同様に、数値をキーボードから入力できるような構成にしてもよいし、ディスプレイ画面上のレバーなどを操作して、任意の倍率を設定できるようにしてもよい。あるいは、トリミング範囲(たとえば、図12に示す切出領域Eの境界位置)を指定することにより、変換倍率mを自動的に設定できるような構成をとってもかまわない。また、変換倍率mを固定して利用する場合には、ユーザに変換倍率mを入力させる処理を省略できる。
【0133】
ユーザは、ディスプレイ画面上に表示された図4に示すようなミラー歪曲円形画像Cを見ながら、切出中心点K(a,b)の位置と、平面傾斜角φの値と、変換倍率mとをパラメータとして指定し、「ここを中心として、こんな向きに、こんな大きさで画像を切り出して、平面正則画像を得たい」という要望を出せばよい。
【0134】
こうして入力された3つのパラメータは、変換演算部230に与えられる。変換演算部230は、まず、切出中心点Kの位置を示す座標(a,b)を、第1の座標関係式を利用して、座標(x,y)に変換する。ユーザによる切出中心点K(a,b)の位置指定は、図4に示すように、ディスプレイに表示されているミラー歪曲円形画像C上における位置指定である。そこで、上記変換により、図8に示すような仮想のレンズ歪曲円形画像S上の切出中心点K(x,y)の位置に変換する。この変換には、図26に示す「(a,b)→(x,y)の変換式」を用いればよい。
【0135】
続いて、変換演算部230は、この切出中心点Kの位置(x,y)に基づいて、点Gの位置座標(x,y,z)を求める処理を行う。ここで、点Gは、図10に示すとおり、三次元XYZ直交座標系において、原点Oを中心とし半径rをもった仮想球面Hを定義したときに、切出中心点Kを通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点として与えられる点である。実際には、点Kの座標値x,yと点Gの座標値x,yとは同一の値であるから、点Gの位置座標(x,y,z)を求める演算処理は、座標値zを求めるための幾何学演算のみである。
【0136】
こうして、点Gの位置座標(x,y,z)が得られれば、やはり幾何学的演算によって、図10に示す方位角α、天頂角βを算出することができるので、ユーザが指定した平面傾斜角φを含めたオイラー角α,β,φが定まる。また、rは前述したように任意の設定値として既知であり、mはユーザが指定した変換倍率として既知である。
【0137】
かくして、変換演算部230は、図25に示す第1の座標変換式と、図13に示す第2の座標変換式とを利用して、座標(a,b)で示される位置に配置された画素の集合からなるミラー歪曲円形画像Cを、座標(u,v)で示される位置に配置された画素の集合からなる平面正則画像Tに変換し、これを平面正則画像格納部120に格納することができる。
【0138】
なお、実際に変換演算部230が実施する座標変換演算は、座標(a,b)に基づいて座標(u,v)を求める演算ではなく、逆に、座標(u,v)に基づいて座標(a,b)を求める演算になる。具体的には、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を求めるために、まず、図13に示す第2の座標関係式(式(1)〜式(9))を用いて、座標(u,v)に対応する座標(x,y)を求める。この時点で演算に必要なオイラー角α,β,φや、rおよびmの値は、上述したとおり既知の値となっている。
【0139】
続いて、図25に示す第1の座標関係式(式(19)〜式(21))を用いて、座標(x,y)に対応する座標(a,b)を求める。この時点で必要な値e,q,dは、前述したとおり、全方位ミラーの形状によって定まる固有値であるから、カメラ20に用いられている全方位ミラーの固有値を、予め変換演算部230内に設定しておけばよい。あるいは、指示入力部150にこれらの固有値を入力する機能を設けておけば、ユーザの指示入力として、固有値e,q,dを設定することも可能である。形状の異なる全方位ミラーを用いた複数台のカメラを、この画像変換装置200にとっかえひっかえ装着して利用するような場合には、新たなカメラを装着するごとに、当該カメラに用いられている全方位ミラーの固有値e,q,dを、その都度、ユーザに入力させて設定させるようにすればよい。
【0140】
こうして、最終的な対応座標(a,b)が求まれば、歪曲円形画像格納部110内に格納されているミラー歪曲円形画像C内の対応座標(a,b)に位置する画素の画素値を参照して、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を決定することができる。
【0141】
なお、ミラー歪曲円形画像Cは、二次元XY直交座標系上の座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成された画像であり、実際には、所定ピッチで縦横に配列された多数の格子点の位置に、それぞれ固有の画素値を定義したデジタルデータによって構成されている。このため、変換演算部130による演算結果として得られた対応座標(a,b)の位置は、通常、複数の格子点の間の位置になる。たとえば、ミラー歪曲円形画像Cが、ピッチ1で縦横に配列された多数の格子点位置の画素値を定義したデジタルデータによって構成されている場合、いずれの格子点も、その座標値は整数値になる。よって、変換演算部130による演算結果として得られた対応座標aおよびbの値が小数を含む値であると(多くの場合はそうなるであろう)、対応座標(a,b)の位置は、複数の格子点の間の位置になり、対応する画素値を1つに決めることはできない。
【0142】
したがって、実際には、変換演算部230が、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を決定する際には、対応する座標(a,b)で示される位置の近傍に配置されたミラー歪曲円形画像C上の複数の参照画素の画素値に対する補間演算を行う必要がある。このような補間演算を行う方法としては、前述したとおり、バイリニア補間法、バイキュービック・スプライン補間法など、様々な方法が公知である。
【0143】
<<< §7.共用画像変換装置の基本構成 >>>
§3では、図14を参照しながら、魚眼レンズ用画像変換装置100の基本構成を説明し、§6では、図28を参照しながら、全方位ミラー用画像変換装置200の基本構成を説明した。ここで、図14に示す装置100の構成と、図28に示す装置200の構成とを比較してみると、極めて類似していることがわかる。実際、同じ符号を付したブロック構成要素、すなわち、歪曲円形画像格納部110,平面正則画像格納部120,歪曲円形画像表示部140,指示入力部150は、両者で共通する構成要素となっている。
【0144】
もちろん、図14に示す装置100では、歪曲円形画像格納部110に、魚眼レンズを用いたカメラ10で撮影されたレンズ歪曲円形画像Sが格納され、図28に示す装置200では、歪曲円形画像格納部110に、全方位ミラーを用いたカメラ20で撮影されたミラー歪曲円形画像Cが格納されることになるが、両画像はデータが異なるだけであり、本質的なハードウエア構成に相違はない。同様に、指示入力部150に与えられる切出中心点Kの座標が、一方は(x,y)であり、他方は(a,b)となっているが、いずれも(X軸上の座標値,Y軸上の座標値)を示す値であり、本質的な違いではない。
【0145】
結局、装置100と装置200との本質的な相違は、前者における変換演算部130が後者では変換演算部230に置き換わっている点のみである。しかも、変換演算部130は、座標(x,y)と座標(u,v)との間の変換処理を行う機能を有しており、変換演算部230は、それに加えて、座標(a,b)と座標(x,y)との間の変換処理を行う機能を更に有している。別言すれば、変換演算部230は、変換演算部130に、座標(a,b)と座標(x,y)との間の変換処理機能を付加することにより構成することができる。
【0146】
これは、変換演算部230が、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像Sを仮定し、この仮想レンズ歪曲円形画像Sを、二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成したときに、ミラー歪曲円形画像C上の任意位置の座標(a,b)と仮想レンズ歪曲円形画像S上の対応位置の座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式と、仮想レンズ歪曲円形画像S上の任意位置の座標(x,y)と平面正則画像T上の対応位置の座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式と、を用いて、座標(u,v)と座標(a,b)との対応づけを行っているためである。
【0147】
このため、本発明に係る全方位ミラー用画像変換装置200は、従来から利用されている魚眼レンズ用画像変換装置100に、若干の処理機能を付加することにより構成することが可能になり、装置を構成するハードウエアの設計や製造のための労力や費用を節約することができる。
【0148】
また、魚眼レンズ式カメラにも全方位ミラー式カメラにも共用可能な画像変換装置を実現することも可能になり、ユーザの負担も軽減できる。図29は、このような共用可能な画像変換装置300の構成を示すブロック図である。この図において、歪曲円形画像格納部110,平面正則画像格納部120,歪曲円形画像表示部140,指示入力部150は、図14に示す装置100や図28に示す装置200と共通の構成要素である。一方、変換演算部330は、その基本機能は、図28に示す装置200における変換演算部230と同様である。
【0149】
ただ、この装置300は、魚眼レンズ式カメラにも全方位ミラー式カメラにも共用可能な装置であるため、図示のとおり、魚眼レンズを用いたカメラ10を接続することもできるし、全方位ミラーを用いたカメラ20を接続することもできる。そして、変換演算部330は、魚眼レンズを用いたカメラ10を接続したときには、図14の変換演算部130の処理機能を実行し、全方位ミラーを用いたカメラ20を接続したときには、図28の変換演算部230の処理機能を実行することになる。
【0150】
より具体的に説明すれば、魚眼レンズを用いたカメラ10を接続して、歪曲円形画像格納部110にレンズ歪曲円形画像Sが格納されている場合には、変換演算部330は、座標(u,v)と座標(x,y)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を、対応する座標(x,y)で示される位置に配置されたレンズ歪曲円形画像S上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、レンズ歪曲円形画像Sから切出中心点Kを中心として所定の切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像Tを生成する演算を行い、生成された平面正則画像Tを平面正則画像格納部120に格納する処理を行うことになる。
【0151】
これに対して、全方位ミラーを用いたカメラ20を接続して、歪曲円形画像格納部110にミラー歪曲円形画像Cが格納されている場合には、座標(u,v)と座標(a,b)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像T上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像C上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、ミラー歪曲円形画像Cから切出中心点Kを中心として所定の切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像Tを生成する演算を行い、生成された平面正則画像Tを平面正則画像格納部120に格納する処理を行うことになる。
【0152】
なお、一般的な市販の全方位カメラについて、それが魚眼レンズ式なのか全方位ミラー式なのかを自動的に確認するための工業規格は、現在のところ存在しないので、変換演算部330は、2通りの処理のいずれを実行すべきかを自分自身で自動的に判断することはできない。したがって、実用上は、指示入力部150に、いずれの方式の全方位カメラについての画像変換を行うかを示すユーザの選択指示を入力する機能を付加しておき、変換演算部330は、この選択指示に基づいて、いずれか一方の処理を実行するようにすればよい。
【0153】
<<< §8.その他の実施形態 >>>
以上、本発明に係る画像変換装置の基本構成を、図28および図29のブロック図を参照しながら説明したが、これらの画像変換装置は、汎用のコンピュータに、専用のプログラムを組み込むことによって構成することが可能である。その場合、歪曲円形画像格納部110や平面正則画像格納部120は、当該コンピュータ用の記憶装置によって構成し、歪曲円形画像表示部140や指示入力部150は、当該コンピュータ用のディスプレイやマウスおよびこれらを制御するハードウエアやソフトウエアによって構成すればよい。また、変換演算部230,330は、専用のプログラムに基づくコンピュータの演算機能によって実現されることになる。
【0154】
もちろん、この画像変換装置は、様々な演算器やレジスタなどを組み合わせた専用のハードウエア論理回路により構成することも可能である。具体的には、少なくとも変換演算部230,330として機能する部分を電子回路によって構成し、当該電子回路を組み込んだ半導体集積回路を設計すればよい。
【0155】
また、図28,図29に示す画像変換装置200,300と、全方位ミラーもしくは魚眼レンズを用いたカメラ10,20と、図示されていないモニタ装置と、を用意し、カメラ10,20を用いた撮影により得られた歪曲円形画像S,Cが歪曲円形画像格納部110へと格納され、平面正則画像格納部120に得られた平面正則画像Tがモニタ装置によって表示されるようにすれば、全方位監視システムを実現することが可能になる。カメラ10,20として、デジタルビデオカメラを用いるようにすれば、リアルタイムで撮影した歪曲円形画像に基づいて、任意の一部分の平面正則画像をリアルタイムでモニタ装置の画面上に得ることが可能である。本発明は、この他、車載カメラ、会議システム、管内検査カメラ装置、ロボット・ナビゲーションなどにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】全方位ミラーを利用した一般的な全方位カメラの基本構造を示す側断面図である。
【図2】図1に示す全方位カメラによる撮影で得られたミラー歪曲円形画像Cを示す平面図である(歪曲円形画像の一般的なイメージを示すものであり、正確な画像を示すものではない)。
【図3】図1に示す全方位カメラに入射した光のミラーによる反射状態を示す側断面図である。
【図4】図2に示すミラー歪曲円形画像Cを二次元XY直交座標系上に配置した状態を示す平面図である。
【図5】図4に示すミラー歪曲円形画像の切出中心点Kの近傍部分を、第1の切り出し向きに従って切り出し、本発明に係る画像変換装置を用いて変換することによって得られた平面正則画像Tの一例を示す平面図である。
【図6】図4に示すミラー歪曲円形画像の切出中心点Kの近傍部分を、第2の切り出し向きに従って切り出し、本発明に係る画像変換装置を用いて変換することによって得られた平面正則画像Tの一例を示す平面図である。
【図7】正射影方式の魚眼レンズを用いた撮影によりレンズ歪曲円形画像Sを形成する基本モデルを示す斜視図である。
【図8】魚眼レンズを用いた撮影によって得られたレンズ歪曲円形画像Sを二次元XY直交座標系上に配置した状態を示す平面図である(歪曲円形画像の一般的なイメージを示すものであり、正確な画像を示すものではない)。
【図9】図8に示すレンズ歪曲円形画像Sの一部分に切出領域Eを定義した例を示す平面図である。
【図10】レンズ歪曲円形画像Sを含むXY座標系と、平面正則画像Tを含むUV座標系との関係を示す斜視図である。
【図11】UV座標系上に定義された平面正則画像Tを示す平面図である。
【図12】XY座標系上に定義されたレンズ歪曲円形画像Sを示す平面図である。
【図13】オイラー角α,β,φをパラメータとして用いた、レンズ歪曲円形画像内の1点S(x,y)と平面正則画像内の1点T(u,v)との関係を示す一般的な座標関係式(本発明にいう第2の座標関係式)を示す図である。
【図14】魚眼レンズを用いた撮影によって得られたレンズ歪曲円形画像Sを平面正則画像Tに変換する一般的な画像変換装置の基本構成を示すブロック図である。
【図15】曲面ミラーMによる反射光を撮像面J0上に結像させることによってミラー歪曲円形画像が形成される様子を示す側断面図である。
【図16】図15に示す撮像面J0を図の上下に平行移動させることにより、ミラー歪曲円形画像が相似変化する様子を示す側断面図である。
【図17】曲面ミラーMの焦点位置に原点Oを有し中心軸方向にZ軸をとったXYZ三次元直交座標系内に、仮想球面Hを定義した魚眼レンズモデルを示す側面図である。
【図18】本発明に係る画像変換方法の基本概念を示す平面図である。
【図19】一般的な二次曲線γの定義方法を説明する第1の平面図である。
【図20】一般的な二次曲線γの定義方法を説明する第2の平面図である。
【図21】一般的な二次曲線γの離心率eと曲線の種類との関係を示す表である。
【図22】図17の一部分を拡大して示すXZ平面上への投影図である。
【図23】一般的な二次曲線の回転体として得られる曲面ミラーを用いた場合の座標値aと座標値xとの関係を導き出す第1のプロセスを示す図である。
【図24】一般的な二次曲線の回転体として得られる曲面ミラーを用いた場合の座標値aと座標値xとの関係を導き出す第2のプロセスを示す図である。
【図25】一般的な二次曲線の回転体として得られる曲面ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像内の1点C(a,b)と、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像内の1点S(x,y)と、の対応関係を示す座標関係式(本発明にいう第1の座標関係式)を示す図である。
【図26】図25に示す座標関係式を、x,yについて解くことにより得られる別な座標関係式を示す図である。
【図27】本発明に係る画像変換方法の基本プロセスを示す平面図である。
【図28】本発明の基本的実施形態に係る画像変換装置の構成を示すブロック図である。
【図29】本発明の別な実施形態に係る画像変換装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0157】
10:魚眼レンズを用いたカメラ
20:全方位ミラーを用いたカメラ
21:土台
22:全方位ミラー
23:透明カバー
24:撮像素子
50:テーブル
100:魚眼レンズ用の画像変換装置
110:歪曲円形画像格納部
120:平面正則画像格納部
130:変換演算部
140:歪曲円形画像表示部
150:指示入力部
200:本発明の基本的実施形態に係る画像変換装置
230:変換演算部
300:本発明の別な実施形態に係る画像変換装置
330:変換演算部
A:垂線の足
a:X軸上の任意の座標値
B:垂線の足
b:Y軸上の任意の座標値
C:ミラー歪曲円形画像
C(a,b):ミラー歪曲円形画像C上の点
C10〜C45:結像点
D:垂線の足
d:焦点Fとピンホール点Pとの距離
E:切出領域
e:離心率
F:二次曲線の焦点
G(x,y,z):切出中心点K(x,y)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面Hとの交点(UV座標系の原点)
H:仮想球面
H(x,y,z):仮想球面H上の入射点
J0〜J5:撮像面
K,K(a,b),K(x,y):切出中心点
L,L1〜L40:入射光線
M:曲面ミラー/曲面ミラーの反射面
m:変換倍率
Nu:ディスプレイの横方向寸法(水平方向の画素数)
Nv:ディスプレイの縦方向寸法(垂直方向の画素数)
n:法線ベクトル
O:三次元XYZ直交座標系の原点
P:ピンホール点
Q,Q(x′,y′,z′):反射点
q:焦点Fと準線ξとの距離
r:仮想球面Hの半径
S:レンズ歪曲円形画像
S(x,y):レンズ歪曲円形画像S上の点
Sc:遮光スクリーン
T,T1,T2:平面正則画像
T(u,v):平面正則画像T上の点
T1(u,v):平面正則画像T1上の点
T2(u,v):平面正則画像T2上の点
U:二次元UV直交座標系の座標軸
V:二次元UV直交座標系の座標軸
w:変数
X:三次元XYZ直交座標系の座標軸
Y:三次元XYZ直交座標系の座標軸
Z:三次元XYZ直交座標系の座標軸
x,y,z,x′,y′,z′:座標値
α:方位角
β:天頂角
γ:二次曲線
θ:XZ平面上での角度
λ:2点QA間の距離
ρ:2点FQ間の距離
φ:平面傾斜角
ξ:準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換装置であって、
二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値aおよびY軸上の座標値bを用いた座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成されたミラー歪曲円形画像を格納する歪曲円形画像格納部と、
二次元UV直交座標系上のU軸上の座標値uおよびV軸上の座標値vを用いた座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像格納部と、
前記歪曲円形画像格納部に格納されているミラー歪曲円形画像をディスプレイに表示する歪曲円形画像表示部と、
前記ディスプレイに表示されているミラー歪曲円形画像上における、切出中心点Kの位置および切り出し向きをユーザの指示に基づいて入力する指示入力部と、
座標(u,v)と座標(a,b)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、前記ミラー歪曲円形画像から前記切出中心点Kを中心として前記切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する演算を行い、生成された平面正則画像を前記平面正則画像格納部に格納する変換演算部と、
を備え、
前記変換演算部が、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、この仮想レンズ歪曲円形画像を、二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成したときに、前記ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と前記仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式と、前記仮想レンズ歪曲円形画像上の任意位置の座標(x,y)と前記平面正則画像上の対応位置の座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式と、を用いて、座標(u,v)と座標(a,b)との対応づけを行うことを特徴とする画像変換装置。
【請求項2】
全方位ミラーもしくは魚眼レンズを用いた撮影により得られた歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換装置であって、
二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値aおよびY軸上の座標値bを用いた座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像、もしくは二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成され、魚眼レンズを用いた撮影により得られたレンズ歪曲円形画像を格納する歪曲円形画像格納部と、
二次元UV直交座標系上のU軸上の座標値uおよびV軸上の座標値vを用いた座標(u,v)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成される平面正則画像を格納する平面正則画像格納部と、
前記歪曲円形画像格納部に格納されている歪曲円形画像をディスプレイに表示する歪曲円形画像表示部と、
前記ディスプレイに表示されている歪曲円形画像上における、切出中心点Kの位置および切り出し向きをユーザの指示に基づいて入力する指示入力部と、
前記歪曲円形画像格納部に前記ミラー歪曲円形画像が格納されている場合には、座標(u,v)と座標(a,b)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、前記ミラー歪曲円形画像から前記切出中心点Kを中心として前記切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する演算を行い、生成された平面正則画像を前記平面正則画像格納部に格納する第1の処理を行い、前記歪曲円形画像格納部に前記レンズ歪曲円形画像が格納されている場合には、座標(u,v)と座標(x,y)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(x,y)で示される位置に配置されたレンズ歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、前記レンズ歪曲円形画像から前記切出中心点Kを中心として前記切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する演算を行い、生成された平面正則画像を前記平面正則画像格納部に格納する第2の処理を行う変換演算部と、
を備え、
前記変換演算部が、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、この仮想レンズ歪曲円形画像を、二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成したときに、前記ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と前記仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式と、前記仮想レンズ歪曲円形画像上の任意位置の座標(x,y)と前記平面正則画像上の対応位置の座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式と、を用いて、座標(u,v)と座標(a,b)との対応づけを行うことを特徴とする画像変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像変換装置において、
変換演算部が、放物線、楕円、二葉双曲線のいずれかの二次曲線の回転体からなる曲面を反射面とする全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像を平面正則画像に変換する処理を行うことを特徴とする画像変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像変換装置において、
変換演算部が、全方位ミラーの反射面を構成する回転体曲面の焦点位置に原点Oを有し、前記回転体曲面の回転軸方向をZ軸とするXYZ三次元直交座標系において、前記原点Oを中心とする所定半径rの仮想球面を仮定し、前記仮想球面上の任意の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する入射光線がXY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする正射影方式の魚眼レンズモデルを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定した変換処理を行うことを特徴とする画像変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像変換装置において、
変換演算部が、XYZ三次元直交座標系のXY平面上に配置された仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と、前記仮想撮像面に形成されるであろう仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)と、の関係を示す第1の座標関係式を用いることを特徴とする画像変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像変換装置において、
変換演算部が、全方位ミラーを用いた撮影での実撮像面に形成されるミラー歪曲円形画像と、仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像とが、相似関係にあることを利用して導出された第1の座標関係式を用いることを特徴とする画像変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像変換装置において、
変換演算部が、全方位ミラーの反射面を構成する回転体曲面の元になる二次曲線について、離心率をe、焦点と準線との距離をq、焦点とピンホール点との距離をdとし、用いる魚眼レンズモデルの仮想球面の半径をrとしたときに、
a=eqd/(rd+ez(d−q))・x
b=eqd/(rd+ez(d−q))・y
=x+y+z
なる式を、座標(a,b)と座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式として用いることを特徴とする画像変換装置。
【請求項8】
請求項4に記載の画像変換装置において、
指示入力部が、ユーザの指示に基づいて平面傾斜角φを指定するための情報を切り出し向きを示すパラメータとして入力する機能を有し、
変換演算部が、用いる魚眼レンズモデルの仮想球面の半径をrとしたときに、前記平面傾斜角φと、切出中心点Kの位置に基づいて定まる方位角αおよび天頂角βを用いて、
x=r(uA+vB+wE)/√(u+v+w
y=r(uC+vD+wF)/√(u+v+w
ここで、
A=cosφcosα−sinφsinαcosβ
B=−sinφcosα−cosφsinαcosβ
C=cosφsinα+sinφcosαcosβ
D=−sinφsinα+cosφcosαcosβ
E=sinβsinα
F=−sinβcosα
w=mr(但し、mは所定の変換倍率)
なる式を、座標(x,y)と座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式として用いることを特徴とする画像変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像変換装置において、
指示入力部が、ミラー歪曲円形画像上における切出中心点Kの位置を、二次元XY直交座標系上の座標(a,b)として入力する機能を有し、
変換演算部が、第1の座標関係式を用いて、前記座標(a,b)に対応する座標(x,y)を求め、XYZ三次元直交座標系において、前記座標(x,y)で示されるXY平面上の点K(x,y)を通りZ軸に平行な直線と仮想球面との交点G(x,y,z)の位置に基づいて方位角αおよび天頂角βを定めることを特徴とする画像変換装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の画像変換装置において、
指示入力部が、ユーザの指示に基づいて変換倍率mを入力する機能を有し、
変換演算部が、前記指示入力部によって入力された変換倍率mを用いた演算を行うことを特徴とする画像変換装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の画像変換装置において、
変換演算部が、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を決定する際に、対応する歪曲円形画像上の複数の参照画素の画素値に対する補間演算を行うことを特徴とする画像変換装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の画像変換装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の画像変換装置の構成要素となる変換演算部として機能する電子回路が組み込まれた半導体集積回路。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の画像変換装置と、全方位ミラーもしくは魚眼レンズを用いたカメラと、平面正則画像を画面上に表示するモニタ装置と、を備え、
前記カメラを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像もしくはレンズ歪曲円形画像が歪曲円形画像格納部へと格納され、平面正則画像格納部に得られた平面正則画像が前記モニタ装置によって表示されるように構成されていることを特徴とする全方位監視システム。
【請求項15】
全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換方法であって、
二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値aおよびY軸上の座標値bを用いた座標(a,b)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成されたミラー歪曲円形画像を、歪曲円形画像格納部に格納する段階と、
前記歪曲円形画像格納部に格納されているミラー歪曲円形画像をディスプレイに表示する段階と、
前記ディスプレイに表示されているミラー歪曲円形画像上における、切出中心点Kの位置および切り出し向きをユーザの指示に基づいて入力する段階と、
座標(u,v)と座標(a,b)とを対応づけ、座標(u,v)で示される位置に配置された平面正則画像上の画素の画素値を、対応する座標(a,b)で示される位置に配置されたミラー歪曲円形画像上の参照画素の画素値に基づいて決定することにより、前記ミラー歪曲円形画像から前記切出中心点Kを中心として前記切り出し向きに応じて切り出された部分画像について、平面正則画像を生成する変換演算を行う段階と、
をコンピュータもしくは電子回路に実行させ、
前記変換演算を行う際に、全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、この仮想レンズ歪曲円形画像を、二次元XY直交座標系上のX軸上の座標値xおよびY軸上の座標値yを用いた座標(x,y)で示される位置に配置された多数の画素の集合体によって構成したときに、前記ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と前記仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式と、前記仮想レンズ歪曲円形画像上の任意位置の座標(x,y)と前記平面正則画像上の対応位置の座標(u,v)との関係を示す第2の座標関係式と、を用いて、座標(u,v)と座標(a,b)との対応づけを行うことを特徴とする画像変換方法。
【請求項16】
請求項15に記載の画像変換方法において、
放物線、楕円、二葉双曲線のいずれかの二次曲線の回転体からなる曲面を反射面とする全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像を平面正則画像に変換する処理を行い、
前記回転体曲面の焦点位置に原点Oを有し、前記回転体曲面の回転軸方向をZ軸とするXYZ三次元直交座標系において、前記原点Oを中心とする所定半径rの仮想球面を仮定し、前記仮想球面上の任意の点H(x,y,z)に対して法線方向から入射する入射光線がXY平面上の点S(x,y)へ向かう振る舞いをする正射影方式の魚眼レンズモデルを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定した変換処理を行うことを特徴とする画像変換方法。
【請求項17】
請求項16に記載の画像変換方法において、
変換演算を行う際に、XYZ三次元直交座標系のXY平面上に配置された仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像上の任意位置の座標(a,b)と、前記仮想撮像面に形成されるであろう仮想レンズ歪曲円形画像上の対応位置の座標(x,y)と、の関係を示す第1の座標関係式を用いることを特徴とする画像変換方法。
【請求項18】
請求項17に記載の画像変換方法において、
変換演算を行う際に、全方位ミラーを用いた撮影での実撮像面に形成されるミラー歪曲円形画像と、仮想撮像面に形成されるであろう仮想ミラー歪曲円形画像とが、相似関係にあることを利用して導出された第1の座標関係式を用いることを特徴とする画像変換方法。
【請求項19】
請求項18に記載の画像変換方法において、
変換演算を行う際に、全方位ミラーの反射面を構成する回転体曲面の元になる二次曲線について、離心率をe、焦点と準線との距離をq、焦点とピンホール点との距離をdとし、用いる魚眼レンズモデルの仮想球面の半径をrとしたときに、
a=eqd/(rd+ez(d−q))・x
b=eqd/(rd+ez(d−q))・y
=x+y+z
なる式を、座標(a,b)と座標(x,y)との関係を示す第1の座標関係式として用いることを特徴とする画像変換方法。
【請求項20】
全方位ミラーを用いた撮影により得られたミラー歪曲円形画像の一部分を切り出して、平面正則画像に変換する処理を行う画像変換方法であって、
全方位ミラーを用いる代わりに魚眼レンズを用いた撮影により得られるであろう仮想レンズ歪曲円形画像を仮定し、前記ミラー歪曲円形画像を前記仮想レンズ歪曲円形画像に変換するための第1の演算式と、前記仮想レンズ歪曲円形画像を前記平面正則画像に変換するための第2の演算式と、を併用した変換演算をコンピュータもしくは電子回路が実行することにより、前記ミラー歪曲円形画像を前記平面正則画像に変換することを特徴とする画像変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−140292(P2010−140292A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316500(P2008−316500)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】