説明

画像形成システム

【課題】イメージログの保存に要する時間を短縮して情報を迅速に出力することができる画像形成システムを提供する。
【解決手段】画像データをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各データに変換し(ステップS1)、それらデータのうちブラックのデータにユーザIDや日時を加えたものを代替画像とする。代替画像はサーバに転送され(ステップS2)、代替画像のサーバへの転送が完了したことが確認されると、画像の印刷の許可が送信されて印刷が行われる(ステップS3)。画像データにユーザIDや日時を加えたイメージログが作成され(ステップS4)、サーバに転送される(ステップS5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の漏洩を防止するセキュリティシステムを備えた画像形成システムに係り、特に、セキュリティのための処理を迅速に行ってユーザの待ち時間を少なくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等の画像形成装置には、情報の漏洩を防止するためにセキュリティシステムとリンクさせたものがある。たとえば特開2005−166023号公報には、セキュリティ判断に必要なドキュメント情報が取得されず、文書の出所が確認できない場合は、読み取った画像データを出力せずに、ユーザ情報と関連付けてログ管理手段に保存し、ドキュメント情報が得られた場合は、所定のルールに従って、画像データの出力の可否を判断する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−166023号公報(段落0016)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような技術では、ID等のドキュメント情報が得られた場合にはどのような画像も複写等が可能であり、どのような画像が複写されたのかを後で確認することができないという問題があった。そこで、複写や印字が行われる全ての情報をイメージログとしてサーバ等に保存し、保存後に出力を許可するシステムが考えられる。しかしながら、そのようなシステムでは、イメージログをサーバーに転送するための時間により出力が遅れ、ユーザにとって不便であるという問題がある。したがって、本発明は、イメージログの保存に要する時間を短縮して情報を迅速に出力することができる画像形成システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像形成システムは、受けた画像形成ジョブに基づいて画像を印刷する画像形成装置と、画像のイメージログを記憶するサーバとを備え、サーバには、画像の代替画像のデータが転送され、このデータ転送の完了をもって画像形成装置における画像の印刷の許可がなされることを特徴としている。
【0006】
ここで、本発明における代替画像とは、その作成とサーバへの転送に要する時間がイメージログの場合よりも短いものを言い、一般には、イメージログよりも容量の少ないものである。
【0007】
本発明によれば、作成とサーバへの転送に要する時間が短い代替画像をサーバへ転送し、データ転送の完了をもって画像形成装置における画像の印刷の許可がなされるから、画像の印刷までにユーザを長時間待たせることがない。また、画像の印刷の条件として代替画像の転送の完了が求められるから、秘密情報の漏洩防止策として充分である。なお、代替画像の具体例としては下記のものがある。
【0008】
自動によるカラー複写のモードではモノクロデータを生成するのでこれを代替画像とする。モノクロデータは、カラーデータよりも容量が少ないため、サーバへの転送に要する時間が短くて済む。また、カラー画像のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの成分のうちのブラックを代替画像とすることもできる。
【0009】
Exifファイルに添付されるサムネイル画像を代替画像とすることができる。あるいは、画像をスキャンしたときに作成されるJPEGデータを代替画像とすることもできる。
【0010】
コンピュータからプリンターにプリントジョブを送信する際のデータは、コマンド列からなるPDL(ページ記述言語)データであり、PDLデータはビットマップに変換したデータよりも容量が少ない。よって、PDLデータを代替画像とすることができる。
【0011】
プリンターでは同じ画像が繰り返し印刷されることがあり、また、複写機では同じ画像が複数枚複写されることがある。そのような場合には、1枚の元の画像のみの代替画像を転送することが望ましい。また、ファクシミリを受信したときの受信画像は、例えば100dpiで2値画像であるため容量が少ない。したがって、受信画像を代替画像とすることが望ましい。
【0012】
画像の態様によっては、印刷の処理を開始してから印刷が完了するまでに長時間を要する場合がある。そのような場合には、イメージログを作成してサーバへ転送しても代替画像を作成してサーバに転送してもユーザの待ち時間が同じということがある。そこで、イメージログを作成してサーバへの転送が完了するまでに要する第1の時間を予測するとともに、画像を印刷するための処理を開始してから印刷が完了するまでの第2の時間を予測する。そして、第1の時間が第2の時間と同等以下と判断したときに、代替画像ではなくてイメージログをサーバに転送し、この転送の完了をもって画像形成装置における画像の印刷の許可がなされるようにする。
【0013】
イメージログよりも容量が少なくても、画像の態様によっては作成と転送にイメージログよりも時間を要する代替画像もある。そこで、イメージログを作成してサーバへの転送が完了するまでに要する第1の時間を予測するとともに、代替画像を作成してサーバへの転送が完了するまでに要する第3の時間を予測する。そして、第1の時間が第3の時間と同等以下と判断したときに、代替画像ではなくてイメージログをサーバに転送し、この転送の完了をもって画像形成装置における画像の印刷の許可がなされるようにする。
【0014】
画像のイメージログを作成し、イメージログをサーバへ転送して既に転送してある代替画像と差し替えることが望ましい。これにより、実際の画像と同等のものが保存されるので、画像の確認を容易に行うことができる。この場合において、代替画像を削除するか保存しておくかを選択可能であればユーザにとって使い勝手が良い。
【0015】
代替画像がサーバに転送されてから所定時間経過してもイメージログがサーバに転送されない事態が考えられる。たとえば、画像形成装置の電源が途中で切られたような場合である。そのような場合には、イメージログの中に画像形式の異なる代替画像が混在することにより、画像の検索が煩雑となる。そこで、代替画像をイメージログの画像形式に統一することが望ましい。たとえば、非圧縮の代替画像のデータをJPEGに変換することが考えられる。
【0016】
サーバは、イメージログを保存する領域と代替画像を保存する領域とを別々に有することが望ましい。これにより、画像の検索を効率良く行うことができる。なお、本発明は、秘密情報の漏洩を防止することを目的とするものであるから、代替画像とともにユーザIDや日時などを記録することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作成と転送に要する時間が短い代替画像をサーバへ転送し、データ転送の完了をもって画像形成装置における画像の印刷の許可がなされるから、画像の印刷までにユーザを長時間待たせることがない。また、画像の印刷の条件として代替画像の転送の完了が求められるから、秘密情報の漏洩防止策として充分である等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は実施形態の画像形成システムの概略構成を示す制御ブロック図である。本実施形態では、図1に示すように、コピー機1と、プリンタ2と、ファクシミリとコピーおよびプリンタの機能を備えた複合機3と、サーバ4とがネットワーク5により接続されている。図2は複合機3の詳細を示す制御ブロック図である。図2においてスキャナ部30は、画像の複写のために原稿をスキャンする。スキャンされた画像データは、記憶部31に記憶され、画像処理部32は、記憶部31から画像データを読み出してイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各データに変換するとともにイメージログを作成する。
【0019】
代替画像使用判定部33は、代替画像としてのブラックのデータをサーバ4に転送するか、スキャンされた画像データをイメージログとしてサーバに転送するかを判定する。ネットワーク管理部34は、代替画像使用判定部33の判定結果に基づき、代替画像またはイメージログをネットワーク5を介してサーバ4に転送する。画像出力部35は、ネットワーク管理部34の許可を得てスキャンされた画像を印刷する。なお、以上は複合機3の構成であるが、コピー機1とプリンタ2も同等の構成を有する。
【0020】
次に、上記構成の画像形成システムの動作を図3を参照して複合機3を例にとって説明する。原稿をスキャナ部30でスキャンすることでジョブの受付が行われ、スキャンされた画像データは記憶部31に記憶される。画像処理部32は、画像データをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各データに変換し(ステップS1)、それらデータのうちブラックのデータにユーザIDや日時を加えたものを代替画像として記憶部31に出力する。同時に、画像処理部32は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各データを画像出力部35に出力する。画像出力部35は、入力したデータにより印刷の準備を開始する。
【0021】
ネットワーク管理部34は、記憶部31から代替画像を読み出し、そのデータをネットワーク5を介してサーバ4に転送する(ステップS2)。そして、ネットワーク管理部34は、代替画像のサーバ4への転送が完了したことを確認すると、画像出力部35に画像の印刷の許可を送信し、画像出力部35は、その許可を受けてから画像の印刷を開始する(ステップS3)。
【0022】
一方、画像処理部32は、記憶部31から読み出した画像データにユーザIDや日時を加えてイメージログを作成し(ステップS4)、そのイメージログを記憶部31に保存する。ネットワーク管理部34は、記憶部31からイメージログを読み出し、ネットワーク5を介してサーバ4に転送する(ステップS5)。
【0023】
サーバ4では、画像を受け付けるとそれが代替画像か否かを判定し(ステップS10)、その画像が代替画像である場合には保存する(ステップS11)。一方、受け付けた画像がイメージログである場合には、ステップS10での判定結果は「NO」となり、ステップS12へ進んで当該イメージログに対応する代替画像を検索する。そして、代替画像を検索したら、その代替画像をイメージログで差し替える(ステップS13)。この場合において、サーバ4に、イメージログとともに代替画像も保存しておくか否かを選択できる機能を設けておくと便利である。
【0024】
以上は、本実施形態の基本的な処理である。次に、イメージログの作成と転送に要する時間を算出して行う処理を図4を参照して説明する。まず、画像のスキャン等によりジョブを受け付けると、代替画像使用判定部33は、イメージログの作成とサーバ4への転送に要する時間Aを算出する(ステップS20)。次いで、代替画像使用判定部33は、スキャンした画像を画像処理部32で処理して画像出力部35により印刷するに要する時間Bを算出する(ステップS21)。そして、代替画像使用判定部33は、時間Aと時間Bを比較し、時間Aが時間Bよりも短いと判定した場合には(ステップS22、)、画像処理部32は、記憶部31から読み出した画像データにユーザIDや日時を加えてイメージログを作成し(ステップS23)、そのイメージログを記憶部31に保存する。ネットワーク管理部34は、記憶部31からイメージログを読み出し、ネットワーク5を介してサーバ4に転送する(ステップS24)。そして、ネットワーク管理部34は、イメージログのサーバ4への転送が完了したことを確認すると、画像出力部35に画像の印刷の許可を送信し、画像出力部35は、その許可を受けてから画像の印刷を開始する(ステップS
25)
【0025】
以上の処理では、代替画像の作成と転送を行わない。それは、イメージログの作成と転送に要する時間Aが印刷に要する時間Bよりも短いため、代替画像を作成・転送して時間を短縮する意味がないからである。したがって、イメージログの作成と転送に要する時間Aが印刷に要する時間Bよりも長い場合には、ステップS26へ進んで代替画像の作成と転送に要する時間Cを算出する。この時間Cがイメージログの作成とサーバ4への転送に要する時間Aよりも長い場合には(ステップS27)、代替画像を作成する意味が無いので、ステップ23へ進んでイメージログを作成する。
【0026】
一方、代替画像の作成と転送に要する時間Cがイメージログの作成とサーバ4への転送に要する時間Aよりも短い場合には、代替画像を作成し(ステップS28)、代替画像をネットワーク5を介してサーバ4へ転送する(ステップS29)。
【0027】
本実施形態の画像形成システムによれば、作成と転送に要する時間が短い代替画像をサーバ4へ転送し、データ転送の完了をもって複合機3における画像の印刷の許可がなされるから、画像の印刷までにユーザを長時間待たせることがない。また、画像の印刷の条件として代替画像の転送の完了が求められるから、秘密情報の漏洩防止策として充分である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の画像形成システムを示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における複合機を示す制御ブロック図である。
【図3】一実施形態における画像処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】一実施形態における画像処理の田の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 コピー機
2 プリンタ
3 複合機
4 サーバ
5 ネットワーク
30 スキャナ部
31 記憶部
32 画像処理部
33 代替画像使用判定部
34 ネットワーク管理部
35 画像出力部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受けた画像形成ジョブに基づいて画像を印刷する画像形成装置と、前記画像のイメージログを記憶するサーバとを備え、前記サーバには、前記画像の代替画像のデータが転送され、このデータ転送の完了をもって前記画像形成装置における前記画像の印刷の許可がなされることを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記代替画像は、自動カラー複写時のモノクロデータであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記代替画像は、前記画像のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの成分のうちのブラックであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記代替画像は、Exifファイルに添付されるサムネイル画像であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記代替画像は、画像をスキャンしたときに作成されるJPEGデータであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記代替画像は、プリントジョブのPDLデータであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記代替画像は、同じ画像が繰り返し印刷されたり複数枚を複写する場合には1枚からなる元の画像であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記代替画像は、ファクシミリを受信したときの受信画像であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記イメージログを作成して前記サーバへの転送が完了するまでに要する第1の時間を予測するとともに、画像を印刷するための処理を開始してから印刷が完了するまでの第2の時間を予測し、前記第1の時間が前記第2の時間と同等以下と判断したときに、前記代替画像ではなくて前記イメージログを前記サーバに転送し、この転送の完了をもって前記画像形成装置における前記画像の印刷の許可がなされることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記イメージログを作成して前記サーバへの転送が完了するまでに要する第1の時間を予測するとともに、前記代替画像を作成して前記サーバへの転送が完了するまでに要する第3の時間を予測し、前記第1の時間が前記第3の時間と同等以下と判断したときに、前記代替画像ではなくて前記イメージログを前記サーバに転送し、この転送の完了をもって前記画像形成装置における前記画像の印刷の許可がなされることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記画像のイメージログを作成し、該イメージログを前記サーバへ転送して既に転送してある前記代替画像と差し替えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記代替画像を削除するか保存しておくかを選択可能であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記代替画像が前記サーバに転送されてから所定時間経過しても前記イメージログがサーバに転送されない場合に、前記代替画像を前記イメージログの画像形式と統一するように変換を行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記サーバは、前記イメージログを保存する領域と前記代替画像を保存する領域とを別々に有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−47977(P2008−47977A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218929(P2006−218929)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】