説明

画像形成システム

【課題】印刷時間の増大を抑え、かつ画質の劣化を最小限に抑える。
【解決手段】画像形成システムは、描画されるオブジェクト毎にRIP時間を算出する算出手段と、描画順が先頭であるオブジェクトの前記算出されたRIP時間が所定の時間を越える場合、当該オブジェクトの他のオブジェクトと重ならない領域に対して、データサイズを削減する処理を行う画像処理手段とを備える。背景が複雑なデータを印刷する場合でも印刷時間の増大を抑え、かつ画質の劣化を最小限に抑えることができる画像形成システムを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置内で印刷制御言語を生成し画像形成装置に印刷制御言語を送信し、印刷制御言語に従って画像を形成する画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、背景が複雑なデータを印刷する場合、背景データのRIP処理に時間がかかるため、高速に印刷出力できないという課題があった。
【0003】
この課題を解決するために、特許文献1には次のような技術が開示されている。まず、描画命令を描画順に処理する際、描画対象のオブジェクトの描画領域を認識し、その領域と重なる領域に上書き描画を行うオブジェクトが、後続の描画命令の中に存在するか否かを判断する。描画領域が重なり、上書き描画を行うオブジェクトと重なる描画領域が存在する場合、当該当該重なる領域に対して、描画対象のオブジェクトを描画しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−133430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では描画順が後ろになるオブジェクトが先頭オブジェクトに重なっていない部分が存在する場合、先頭オブジェクトの当該重なっていない部分のRIP処理を通常通り実施する。そのため、先頭オブジェクトの当該部分のRIP処理に非常に時間がかかる場合、印刷時間が非常に遅い。
【0006】
上記従来例に鑑み、印刷時間の増大を抑え、かつ画質の劣化を最小限に抑えることが可能な画像形成システムの提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成システムは、描画されるオブジェクト毎にRIP時間を算出する算出手段と、描画順が先頭であるオブジェクトの前記算出されたRIP時間が所定の時間を越える場合、当該オブジェクトの他のオブジェクトと重ならない領域に対して、データサイズを削減する処理を行う画像処理手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、背景が複雑なデータを印刷する場合でも印刷時間の増大を抑え、かつ画質の劣化を最小限に抑えることができる画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態における画像形成システムの全体構成を説明する図である。
【図2】一実施形態における画像形成装置のエンジン部を説明する図である。
【図3】一実施形態で使用される画像データの例を示す図である。
【図4】一実施形態における画像形成装置の処理を示すフローチャートである。
【図5】一実施形態における情報処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】一実施形態における画像形成装置の処理のうち、背景がイメージの場合の画像処理を示すフローチャートである。
【図7】一実施形態における画像形成装置の処理のうち、背景がグラフィックの場合の画像処理を示すフローチャートである。
【図8】一実施形態における情報処理装置のドライバの設定画面の例を示す図である。
【図9】一実施形態における画像形成装置の表示器により表示される設定画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図1から9を用いて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0011】
<画像形成システムの全体構成の説明>
図1は本実施形態における画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、情報処理装置1001と、画像形成装置とを備える。
【0012】
画像形成装置は、コントローラと、エンジン部1028と、表示器1029と、スキャナ部1030と、ハードディスクドライブ(HDD)1031とを備える。コントローラは、符号1002〜1027までの構成を備え、画像形成装置を制御する。エンジン部1028については、図2を参照して詳述する。
【0013】
情報処理装置1001は、印刷制御言語で記述されたプリントジョブを画像形成装置へ送信する。情報処理装置1001と画像形成装置とはケーブルでネットワーク接続している。ネットワークとしては一般的にイーサネット(登録商標)があげられる。
【0014】
情報処理装置1001から送られた印刷制御言語は受信バッファ1002に一時蓄えられる。
【0015】
ROM1003には画像形成装置のプログラムが格納されている。ROM1003に格納されているプログラムは、コマンド解析部1004、中間データオブジェクト作成部1005、レンダリングデータ作成部1006、スキャナデータ解析部1007、属性判断部1008、描画順制御部1009を含む。さらにROM1003に格納されているプログラムは、イメージ画像処理部1010、グラフィック画像処理部1011、ネットワーク制御部1012、表示器i/f制御部1013、デバイスi/f制御部1014を含む。
【0016】
コマンド解析部1004は、印刷制御言語を解析してPDLデータを作成する。中間データオブジェクト作成部1005は、PDLデータから中間データオブジェクトを作成する。レンダリングデータ作成部1006は、中間データオブジェクトからレンダリングデータを作成する。スキャナデータ解析部1007は、スキャナデータを解析する。属性判断部1008は、オブジェクトの属性を判断する。描画順制御部1009は、描画順の情報を制御する。イメージ画像処理部1010は、画像処理の中で特にイメージを処理部する。グラフィック画像処理部1011は、画像処理の中で特にグラフィックを処理する。ネットワーク制御部1012は、ネットワーク制御を行う。表示器i/f制御部1013は、表示器とのインタフェースの制御を行う。デバイスi/f制御部1014は、スキャナ部1030とのインタフェースの制御を行う。
【0017】
CPU1015は、ROM1003、RAM1016、及びHDD1031に格納されたプログラムなどのデータに基づいて、画像形成装置が備える各部を制御する。
【0018】
RAM1016は画像形成装置で使用されるRAMである。RAM1016は、メモリ1017〜1024を備える。PDLデータメモリ1017は、コマンド解析部1004によって、印刷制御言語から作成されたPDLデータを格納する。中間データオブジェクトメモリ1018は、中間データオブジェクト作成部1005によって、PDLデータから作成された中間データオブジェクトを格納する。レンダリングデータメモリ1019は、レンダリングデータ作成部1006によって、中間オブジェクトから作成されたレンダリングデータを格納する。スキャナデータ解析メモリ1020は、スキャナデータを解析する時に使用される。属性判断/描画順制御用メモリ1021は、属性判断部1008及び描画順制御部1009で処理する時に使用される。イメージ画像処理用メモリ1022は、イメージ画像処理部1010で処理する時に使用される。グラフィック画像処理用メモリ1023は、グラフィック画像処理部1011で処理する時に使用される。表示用メモリ1024は、表示器1029に表示する時に使用される。
【0019】
符号1025はエンジン部1028にレンダリングデータを転送するエンジン転送部である。符号1026は表示器1029に表示器に表示する情報を転送する表示器i/f部である。符号1027はスキャナ部1030との通信を行うデバイスi/f部である。符号1028はエンジン部である。符号1029は表示器である。符号1030はスキャナ部である。符号1031はHDDである。
【0020】
<画像形成装置のエンジン部の説明>
図2は画像形成装置のエンジン部1028の例を示す図である。エンジン部1028は、図2に示すように、筐体2001を備える。筐体2001には、エンジン部1028を構成するための各機構が内蔵されている。
【0021】
エンジン部1028を構成するための各機構は、光学処理機構、定着処理機構、給紙処理機構、搬送処理機構の4つの機構に大別される。更に光学処理機構は、次のものを主に備える。すなわち、レーザ光の操作によって感光ドラム2002上へ静電潜像を形成する静電潜像形成部、その静電潜像を顕像する潜像形成部、その顕像を中間転写体2003に多重転写し、多重転写されたカラー画像を転写材2004へ更に転写する転写部である。
【0022】
<一般的な画像形成処理の説明>
次に、上述したシステム構成での一般的な画像形成処理について以下に説明する。
情報処理装置1001において、ユーザからの指定により、印刷の実行が指定されると、情報処理装置1001からネットワークケーブルを介して印刷制御言語が送られ、受信バッファ1002に一旦格納される。印刷制御言語は、情報処理装置1001内にインストールされたPDL(ページ記述言語)が作成したデータであり、制御コードと画像データからなる。
【0023】
CPU1005は、印刷制御言語をコマンド解析部1004に記述されたプログラムに従ってコマンド解析し、コマンド解析の結果、作成したPDLデータをPDLデータメモリ1017に格納する。
【0024】
CPU1015は中間データオブジェクト作成部1005に記述されたプログラムに従ってPDLデータから中間データオブジェクトを作成し、作成した中間データオブジェクトを中間データオブジェクトメモリ1018に格納する。
【0025】
CPU1015はレンダリングデータ作成部1006に記述されたプログラムに従って中間データオブジェクトからレンダリングデータを作成し、作成したレンダリングデータをレンダリングデータメモリ1019に格納する。
【0026】
CPU1015はレンダリングデータを、エンジン転送部1025を介してエンジン部1028に送る。そして該レンダリングデータを転写材に印刷し、指定された給紙口より給紙を行い、指定された排紙口より排紙することになる。
【0027】
<本実施例における画像形成装置の処理の説明>
次に、図4を参照して、本実施例における画像形成装置の処理フローを説明する。
情報処理装置1001にインストールしてあるプリンタドライバの画面(図8を参照して後述する。)で各種設定を実施後、印刷の実行を指定される(4001)。
【0028】
CPU1015は、情報処理装置1001からネットワークケーブルを介して送信され、受信バッファ1002に格納されている印刷制御言語を、コマンド解析部1004に記述されたプログラムに従ってコマンド解析し、PDLデータを作成する。CPU1015は、作成したPDLデータをPDLデータメモリ1017に格納する(4002)。PDLデータは情報処理装置1001中で作成された画像データ毎に作成される。
【0029】
CPU1015は、情報処理装置1001にインストールされているプリンタドライバの画面で“背景加工高速モード”が印刷キーの押下に応じて設定されたかどうかを、PDLデータの中に設定された各種設定情報から調べる(4003)。プリンタドライバの画面で“背景加工高速モード”が設定された際の情報処理装置1001による処理は図5で詳述する。
【0030】
“背景加工高速モード”が指定された場合、CPU1015はアプリケーションが画像データの描画順を指定しているかどうかを、PDLデータから調べる(4004)。アプリケーションによっては、画像データを描画順にドライバに送信するものがあり、該情報は印刷制御言語の中の制御コードの一つとして画像形成装置に送信されるので、PDLデータに含まれている。
【0031】
アプリケーションが画像データの描画順を指定している場合、CPU1015はPDLデータからアプリケーションが指定した描画順の情報を取得し、取得した描画順の情報を属性判断/描画順制御用メモリ1021に格納する(4005)。
【0032】
CPU1015はPDLデータから、属性判断部1008に記述されたプログラムに従い、画像データ毎の属性を取得し、取得した画像データ毎の属性を属性判断/描画順制御用メモリ1021に格納する(4006)。情報処理装置1001中で作成された画像データはイメージ、グラフィック、文字等の属性を持っている。この属性の情報は、アプリケーションからドライバに伝えられ、PDLが印刷制御言語の中の画像データの中に挿入して、画像形成装置に送信される。従って、PDLデータの中に属性情報が含まれている。
【0033】
CPU1015は中間データオブジェクト作成部1005に記述されたプログラムに従い、PDLデータ毎に中間データオブジェクトを作成し、中間データオブジェクトメモリ1018に格納する(4007)。中間データオブジェクトはPDLデータ毎に作成される。
【0034】
CPU1015は画像データの描画順の情報を既に取得済みかどうかを調べる(4008)。
【0035】
画像データの描画順の情報をまだ取得していない場合、CPU1015は、中間データオブジェクトから描画順の情報を取得し、該情報を属性判断/描画順制御用メモリ1021に格納する(4009)。当該処理は、レンダリングデータ作成部1005に記述されたプログラムに従って行われる。
【0036】
CPU1015はレンダリングデータ作成部1006に記述されたプログラムに従い、中間データオブジェクト毎のRIP時間を予測する(4010)。すなわち、描画されるオブジェクト毎のRIP時間が算出される。RIP時間は、中間データオブジェクトを構成するオブジェクト数及び描画面積と、中間データオブジェクトのオブジェクトサイズとから算出される。オブジェクト数が多ければ多い程、描画面積が大きければ大きい程、又はオブジェクトサイズが大きければ大きい程、算出されるRIP時間は長くなる。
【0037】
CPU1015は予測した全ての中間データオブジェクト毎のRIP時間を合計する(4011)。
【0038】
CPU1015は該RIP時間の合計が1枚あたりの排紙時間より長いかどうかを判断する(4012)。1枚あたりの排紙時間はエンジン生産性から計算可能である。例えば、画像形成システム1のエンジン生産性が50PPMであれば、1枚あたりの排紙時間は60/50=1.2秒である。
【0039】
該RIP時間の合計が1枚あたりの排紙時間より長い場合、CPU1015は描画順が先頭の中間データオブジェクトのRIP時間が全ての中間データオブジェクトのRIP時間の中で一番長いかどうかを調べる(4013)。
【0040】
すなわち、ステップ4012及び4013では、描画されるオブジェクトのRIP時間が、所定の時間より長いか否かが判断される。当該所定の時間は、画像形成システム1のエンジン生産性及び描画される全てのオブジェクトのRIP時間に応じて定められる。
【0041】
描画順が先頭の中間データオブジェクトのRIP時間が全ての中間データオブジェクトのRIP時間の中で一番長い場合、CPU1015は描画順が先頭の中間データオブジェクトの属性がイメージかどうかを調べる(4014)。
【0042】
描画順が先頭の中間データオブジェクトの属性がイメージである場合、CPU1015は、描画順が先頭の中間データオブジェクトに対して、データサイズを削減することにより、RIP時間を短縮するための画像処理(平坦化処理)を行う(4015)。この処理は、イメージ画像処理部1010に記述されたプログラムに従って行われる。ステップ4015の処理の詳細は図6を参照して後述する。
【0043】
描画順が先頭の中間データオブジェクトの属性がイメージではない場合、CPU1015は描画順が先頭の中間データオブジェクトの属性がグラフィックかどうかを調べる(4016)。
【0044】
描画順が先頭の中間データオブジェクトの属性がグラフィックである場合、CPU1015は、描画順が先頭の中間データオブジェクトに対して、データサイズを削減し、RIP時間を短縮するための画像処理(線数を削減する処理)を行う(4017)。この処理は、グラフィック画像処理部1011に記述されたプログラムに従って行われる。ステップ4017の処理の詳細は図7を参照して後述する。
【0045】
以上のようにステップ4014から4017の処理によれば、データサイズを削減するために、中間データオブジェクトの属性に応じて、異なる画像処理が行われる。
【0046】
CPU1015は、レンダリングデータ作成部1006に記述されたプログラムに従い、描画順に中間データオブジェクトからレンダリングデータを作成し、レンダリングデータメモリ1019に格納する(4018)。
【0047】
CPU1015はレンダリングデータを、エンジン転送部1025を介してエンジン部1028に送る。そして該レンダリングデータを転写材に印刷し、指定された給紙口より給紙された記録用紙に印刷を行い、印刷物を指定された排紙口より排紙することになる(4019)。
【0048】
尚この実施例では、“背景加工高速モード”を情報処理装置1001にインストールしてあるプリンタドライバの画面で設定したが、画像形成装置内の表示器で設定しても同様の効果が得られる(図9で詳述)。加えて情報処理装置1001にインストールしてあるリモートUIで設定しても同様の効果が得られる。
【0049】
またこの実施例では、画像形成を電子写真システムにより実現したが、インクジェットシステム等、電子写真システム以外により実現しても同様の効果が得られる。
【0050】
またこの実施例では、印刷制御言語からレンダリングデータの作成を画像形成装置内で実施したが、情報処理装置1001内で実施しても同様の効果が得られる。
【0051】
またこの実施例では1ページのデータの処理を説明したが、複数ページのデータの処理の場合もステップ4003から4019の処理をページ分繰り返すことによって同様の効果が得られる。
【0052】
<情報処理装置の処理の説明>
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施例における情報処理装置1001のプリンタドライバの画面で“背景加工高速モード”が設定された際の処理を説明する。
【0053】
情報処理装置1001中のCPUは、ドライバ上で“背景加工高速モード”が設定されたかどうかを調べる(5001)。
【0054】
ドライバ上で“背景加工高速モード”が設定された場合、情報処理装置1001中のCPUはアプリケーションが画像データの描画順を指定しているかどうかを調べる(5002)。
【0055】
アプリケーションが画像データの描画順を指定している場合、情報処理装置1001中のCPUはアプリケーションから画像データの描画順情報を取得し(5003)、処理は終了する。
【0056】
<背景がイメージの時の画像処理の説明>
次に、図3(a)及び図6を参照して、画像形成装置のCPU1015による図4のステップ4015の画像処理の詳細を説明する。この処理は、描画順が先頭である中間データオブジェクトの属性がイメージであるときの画像処理である。
【0057】
図3(a)の画像データ3001は、全面高解像度のイメージで構成される自然画や写真などの画像データである。文字データ3002は文字のみで構成される画像データである。画像データ3001を背景に、文字データ3002を前景にした画像データを印刷する。
【0058】
CPU1015は画像データ3001の全体に対して、イメージ画像処理部1010に記述されたプログラムに従って、ローパスフィルターによる平坦化を実施する(6001)。すなわち、描画順が後である他のオブジェクトと重ならない領域を含む、描画順が先頭であるオブジェクトの領域全体に対してデータサイズを削減するための処理を行う。
【0059】
その結果、画素と画素の切れ目を平坦化することにより、ぼかし効果が発生するとともに、サイズも小さくなる。発明者による調査では、一般的なイメージデータに平坦化を実施することにより平均40%サイズが削減されることが判明した。また高調波成分が多い画像程、サイズ削減効果が大きいことも判明した。
【0060】
画像データ3003はローパスフィルターによる平坦化を実施した画像である。画像データ3004は画像データ3003を背景に、文字データ3002を前景にした出力画像である。
【0061】
このように、描画順が先頭である自然画や写真などのイメージデータの全体に対して平坦化処理を行う。ことによって、データサイズを削減することができる。その結果、背景が複雑なデータを印刷する場合でも印刷時間の増大を抑え、かつ、画質の劣化を最小限に抑えるという効果がある。さらに、背景画像をぼかすことで、前面の画像を際立たせるという効果が得られる。
【0062】
<背景がグラフィックの時の画像処理の説明>
次に、図3(b)及び図7を参照して、画像形成装置のCPU1015による図4のステップ4017の処理の詳細を説明する。この処理は、中間データオブジェクトの属性がグラフィックであるときの画像処理である。
【0063】
図3(b)のグラフィックデータ3005はグラフィックで構成される図形などの画像データである。文字データ3006は文字のみで構成される画像データである。グラフィックデータ3005を背景に文字データ3006を前景にした画像データを印刷する。
【0064】
図7(a)に示す処理フローにおいて、まず、CPU1015はグラフィックデータをN×Nに分割する(7001)。本実施例ではグラフィックデータ3005を8×8に分割する(例:7002)。
【0065】
CPU1015は該分割した成分毎にRIP時間を計算する(7003)。RIP時間はレンダリングデータ作成部1006に記述されたプログラムに従い、実施する。
【0066】
CPU1015は該RIP時間が、1枚あたりの排紙時間をN×Nで割った時間より長いかどうかを判断する(7004)。1枚あたりの排紙時間をN×Nで割った時間はエンジン生産性から計算可能である。例えばエンジン生産性が50PPMで、Nが8であれば、60/50/(8×8)=0.01875秒である。
【0067】
該RIP時間が、1枚あたりの排紙時間をN×Nで割った時間より長い場合、グラフィック画像処理部1011に記述されているプログラムに従い、該当する成分に含まれるサブオブジェクトの数(線数)を削減する(7005)。
【0068】
図7(b)から(d)を参照して、オブジェクト数(線数)を削減する方法の例を以下に説明する。
【0069】
1)予め指定したサイズより細い線を削除する。全ての線幅を調べ(7006)、例えば、線幅が1ピクセル以内の線を削除する(7007)。線幅の情報は中間データオブジェクトから取得する。
【0070】
2)予め指定したサイズより短い線を削除する。全ての線の長さを調べ(7008)、例えば、長さが0.5mm以内の線を削除する(7009)。線の長さの情報は中間データオブジェクトから取得する。
【0071】
3)前景データの近傍の線を削除する。前景の中間データオブジェクトの描画位置を中間データオブジェクトメモリ1018から取得し(7010)、そこから例えば1cm以内の距離にある線を削除する(7011)。
【0072】
以上、3つの方法のうち最適な方法を選択する。
【0073】
図7(a)の処理に戻ると、CPU1015は全部の成分を調べたかどうかを判断する(7012)。全部の成分を調べていなければ、再度ステップ7004の処理を実施する。
【0074】
図3(b)の画像データ3007は上記4)の方法で背景のオブジェクト数を削減した画像である。画像データ3008は画像データ3007を背景に、文字データ3006を前景にした出力画像である。
【0075】
以上のように、図形などのグラフィックデータに対してサブオブジェクト数(線数)を削減する処理を行うことによって、データサイズを削減することができる。また、描画順が後である他のオブジェクトと重ならない領域を含む、描画順が先頭であるオブジェクトの領域に対してデータサイズを削減するための処理を行う。さらに、削除しても画像品質に影響を与えにくいサブオブジェクト(すなわち、幅が狭い線、長さが短い線、又は前景オブジェクト付近のオブジェクト)を選択して削除することによって、サブオブジェクトの数を削減する。その結果、背景が複雑なデータを印刷する場合でも印刷時間の増大を抑え、かつ、画質の劣化を最小限に抑えるという効果が得られる。
【0076】
<ドライバ画面の説明>
図8は本実施例において、情報処理装置1001のユーザインタフェースに表示されるドライバ画面の例である。
【0077】
ドライバ画面の印刷品質のタブに“背景を加工して高速に出力する”を設定するアイコン(8001)と、設定範囲を設定するアイコン(8002)を設ける。アイコン8001の設定がチェックされることによって、図4のフローのステップ4004移行の処理に移行する。該設定をチェックする否かの判断材料として、ファイルのプロパティから取得できるファイルサイズ情報、及び情報処理装置1001でファイルを表示する際の時間情報がある。またアイコン8002の設定がチェックされることによってページ毎に“背景を加工して高速に出力”設定に移行する。
【0078】
すなわち、図8に示した画面によれば、ユーザの指示に応じて、データサイズを削減し、処理を高速にするための図4のステップ4015、4017における処理を行うか否かを設定することができる。
【0079】
<画像形成装置内の表示器の説明>
図9は本実施例における画像形成装置内の表示器1029に表示される画面の例である。
表示器1029表示されたプリンタ設定の特殊設定が選択されると、“背景を加工して高速に出力する”設定するアイコン(9001)が設けられた画面が表示される。該設定が選択されることによって、図4のフローのステップ4004移行の処理に移行する。該設定を選択する否かの判断材料として、ファイルのプロパティから取得できるファイルサイズ情報、及び情報処理装置1001でファイルを表示する際の時間情報がある。
【0080】
<その他の実施例>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画されるオブジェクト毎にRIP時間を算出する算出手段と、
描画順が先頭であるオブジェクトの前記算出されたRIP時間が所定の時間を越える場合、当該オブジェクトの他のオブジェクトと重ならない領域に対して、データサイズを削減する処理を行う画像処理手段と
を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記画像処理手段は、データサイズを削減するために、前記オブジェクトの属性に応じて異なる処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
ユーザの指示に応じて前記画像処理手段による処理を行うか否かを設定する手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記オブジェクトの属性がイメージの場合、平坦化処理を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記オブジェクトの属性がグラフィックの場合、前記オブジェクトに含まれるサブオブジェクトの数を削減する処理を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記画像処理手段は、幅、長さ、又は前景オブジェクトからの距離に応じて選択された前記サブオブジェクトを削除することによって、前記サブオブジェクトの数を削減することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記所定の時間は、前記画像形成システムのエンジン生産性及び描画される全てのオブジェクトのRIP時間に応じた時間であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の画像形成システム。
【請求項8】
描画されるオブジェクト毎にRIP時間を算出する算出ステップと、
描画順が先頭であるオブジェクトの前記算出されたRIP時間が所定の時間を越える場合、当該オブジェクトの他のオブジェクトと重ならない領域に対して、データサイズを削減する処理を行う画像処理ステップと
を備えたことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
コンピュータに、
描画されるオブジェクト毎にRIP時間を算出する算出ステップと、
描画順が先頭であるオブジェクトの前記算出されたRIP時間が所定の時間を越える場合、当該オブジェクトの他のオブジェクトと重ならない領域に対して、データサイズを削減する処理を行う画像処理ステップと
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−221288(P2012−221288A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87223(P2011−87223)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】