説明

画像形成方法

【課題】 超音波を用いた画像形成において、超音波からの振動で離型剤が脱離しないトナーを用いることにより、定着ローラへの巻付きやオフセットの発生や画像ズレを起こさない画像形成を提供する。
【解決手段】 トナー画像を転写する時に超音波振動を使用する画像形成方法であって、融点が40℃乃至75℃の範囲にある離型剤を含有し、体積基準のメディアン径が3.0〜5.0μmであり、かつ、滑剤を添加されているトナーを用いる画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定範囲の融点を有する離型剤を含有する樹脂粒子を凝集させて形成したオイルレストナーを用い、超音波振動を利用した転写工程を経て転写材上にトナー画像を形成する画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成はいまやデジタル方式が主流となっており、当該技術の動向の一つとしてフルカラーの画像形成技術が挙げられる。トナー画像のカラー化を促進させる技術の1つとして、トナー中に離型剤を多量に含有させたオイルレストナーを用いてフルカラーのトナー画像形成を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
デジタルの画像形成では、1200dpi(1インチあたりのドット数、1インチは2.54cm)レベルの小さなドット画像を顕像化することもあるので、小粒径トナーと呼ばれる数ミクロンオーダーのトナーを用いて画像形成が行われている。
【0004】
ところで、小粒径トナーによる画像形成は、感光体表面に形成されたトナー画像を紙やOHPフィルム等の転写材上に転写する際に転写性が悪くなる傾向を有していた。特に、Y,M,Cのカラートナーを重ね合せてトナー画像を形成するフルカラーの画像形成ではその傾向が顕著に現われ、感光体表面や中間転写体からトナー画像を安定にかつ確実に転写することが行えず、良好なカラーバランスや濃度を有するカラー画像を転写材上に形成することが難しかった。
【0005】
そこで、感光体に物理的な作用を付与してトナー画像を記録媒体上に確実に転写する技術が検討され、その1つの手段として転写材上にトナー画像を転写する時にトナー画像を担持する担持体に超音波を照射して、超音波より発生する振動の作用で担持体表面からトナー画像を転写材上に効率よく転写する技術がある(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に開示された超音波を用いたトナー画像の転写は、定着時に転写材上にオイル塗布を行うトナー用に開発されたものだった。そして、オイルレストナーを用いてこの転写方法で画像形成を試みたが全くうまく行いかなかった。オイルレストナーを用いて超音波転写を行うと、超音波からの振動の作用で離型剤がトナーより脱離し、定着工程で転写材が定着ローラに巻き付いたり、オフセットを発生するという問題がおきた。
【0007】
また、離型剤が脱離したオイルレストナーは、離型剤とともに外添剤も脱離しているため、感光体との付着力が増大し転写率が低下する傾向を有しているので、超音波による振動の影響でトナー画像が乱れ易くなり、フルカラー画像上で個々の単色のトナー画像を正確に重ねることができなかった。
【特許文献1】特開2002−214821号公報(段落0049参照)
【特許文献2】特開2001−100546号公報(段落0022参照)
【特許文献3】特開2001−117381号公報(段落0035等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされ、超音波による転写工程を経る画像形成方法において、トナーから離型剤が脱離しないトナーを用いて画像形成を行うことにより、転写材が定着ローラに巻き付いたり、オフセットを発生させない画像形成方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、超音波からの振動を受けてもトナー画像が乱れることなく、各色のトナー画像が相互に正確に重なり合い、高画質のフルカラー画像を形成することの可能な画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、オイルレストナーに超音波振動を付与した時に、トナー中の離型剤相が振動の影響を優先的かつ選択的に受け易く、超音波による振動の影響が離型剤相に集中するために離型剤相がトナーから脱離すると推測した。
【0011】
この推測に基づいて本発明者は、トナーから離型剤相を脱離させない方法を検討し、以下に記載のオイルレストナーを用いた画像形成では、超音波の影響で離型剤相がトナーから脱離せず、良好な画像形成が行えることを見出した。
【0012】
(請求項1)
像担持体上にトナーを現像する時、または、転写材上にトナー画像を転写する時に超音波振動を使用する画像形成方法において、
該画像形成方法で使用されるトナーは、
融点が40℃乃至75℃の範囲にある離型剤を含有し、
体積基準のメディアン径が3.0〜5.0μmであり、かつ、滑剤を添加されていることを特徴とする画像形成方法。
【0013】
(請求項2)
前記滑剤が、高級脂肪酸の金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【0014】
(請求項3)
前記高級脂肪酸の金属塩の含水分量が0.1乃至2.5質量%であり、遊離脂肪酸量が0.01乃至0.7質量%であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【0015】
(請求項4)
前記トナーは離型剤を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て作製されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0016】
(請求項5)
前記トナーは樹脂粒子と離型剤粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て作製されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、融点が40〜75℃の範囲にある離型剤を含有させた樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させて形成され、その体積基準メディアン径が3.0〜5.0μmであり、滑剤を含む外添剤を有するトナーを用いて画像形成を行うことにより、超音波振動を用いた画像形成工程でトナーが振動を受けても離型剤相の脱離が発生しなくなった。その結果、トナーから離型剤が脱離することによって発生した転写材の定着ローラへの巻き付きやオフセットなどのトラブルが解消し安定した画像形成が行える様になった。
【0018】
また、画像形成時にトナーが振動の影響を受けなったので、画像乱れの問題を解消できる様になった。その結果、各色のトナー画像が正確に重なり合った良好なフルカラーのトナー画像が安定して得られる様になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、像担持体上にトナーを現像する時、または、転写材上にトナー画像を転写する時に超音波振動を使用する画像形成方法に関するもので、当該画像形成に用いられるトナーが、融点が40℃乃至75℃の範囲にある離型剤を含有し、体積基準のメディアン径が3.0〜5.0μmであり、かつ、滑剤を添加されているトナーにより本発明の課題が解消されることを見出した発明である。
【0020】
上記構成のトナーにより、本発明の効果が発現される理由は以下のように推測される。すなわち、本発明では滑剤と離型剤は、いずれも高級脂肪酸系の構造を有しており、類似の構造により両者間で適度な親和力が発生するためと推測される。そして、両者間に親和力が作用することにより、トナーに大きな負荷が加わり離型剤が脱離しそうになっても、滑剤が離型剤の脱離を防いでいるものと推測される。
【0021】
最初に、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーについて説明する。
(離型剤に関する記載)
本発明に係る画像形成方法で使用されるトナーは、融点が40℃乃至75℃の範囲にある離型剤を含有するものである。すなわち、融点の値が40〜75℃の範囲にある離型剤を含有させたトナーを用いることにより、超音波振動を用いた転写工程を有する画像形成装置で、安定した画像形成性能を発現することが確認された。
【0022】
融点が40〜75℃の範囲にある離型剤を含有したトナーを用いることにより、安定した画像形成が行えた理由は以下のように推測される。すなわち、当該離型剤によりトナーを形成する樹脂成分と離型剤成分との界面に強固な接着作用が発現されたものと推測される。その結果、超音波振動による影響がトナーに伝播しても、離型剤がトナーより離脱せず安定した画像形成が行える様になったものと推測される。
【0023】
この様な作用効果を発現する離型剤としては、上記温度範囲に融点を有するベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチリル等の脂肪酸の1価アルコールエステル化合物やセバジン酸ジステアリルが、特に好ましいことが確認されている。
【0024】
また、近年におけるオイルレス定着への要請に対応するために、必要に応じて下記の離型剤を上記離型剤と併用することも可能である。すなわち、定着部材表面に付与されていたシリコーンオイル等の剥離助剤の使用を省略することにより、剥離助剤の定着基材(用紙)への移行による光沢度むらを減少させることができる。また、定着装置そのものの構成を簡素化して定着装置の小型化にも有効である。
【0025】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を示すシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ミリスチン酸ミリスチリル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;ステアリン酸ブチル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等の高級脂肪酸と単価又は多価低級アルコールとのエステルワックス類;ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、テトラステアリン酸トリグリセリド等の高級脂肪酸と多価アルコール多量体とからなるエステルワックス類;ソルビタンモノステアレート等のソルビタン高級脂肪酸エステルワックス類;コレステリルステアレート等のコレステロール高級脂肪酸エステルワックス類などが挙げられる。
【0026】
本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーへの離型剤の添加量は、トナーに対して0.5〜50質量%の範囲が適当である。好ましくは1〜30質量%の範囲、より好ましくは5〜15質量%の範囲が適当である。離型剤の添加量をこの様な範囲とすることで、良好な離型性能を発現させるとともに、超音波振動を用いた転写工程を有する画像形成装置で安定した画像形成性能を発現する。
【0027】
本発明で使用されるトナーは、体積基準メディアン径が3.0〜5.0μmのものが使用され、好ましくは3.5〜4.0μmである。ここで体積基準メディアン径とは、体積基準の粒径分布で50%累積のときの粒径(50%径)を現わすものである。トナーの体積基準メディアン径は、製造工程における凝集剤(塩折剤)濃度や投入のタイミング、あるいは温度により制御可能である。
【0028】
本発明では、超音波振動を使用する転写工程を有する画像形成方法に用いられるトナーの体積基準メディアン径の範囲を3.0.〜5.0μm、好ましくは3.5〜4.5μmとすることにより、前述の課題に加え細線再現性やドット画像を大幅に向上することが確認され、1200dpiレベルのデジタルによる画像形成にも適用可能である。
【0029】
また、トナーの個数平均粒径の具体的な測定手段は、前述のレーザ回折粒子径測定装置SALD−1100(株式会社島津製作所製)が挙げられる。また、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)を用いても測定可能である。本発明では、SALD−1100を用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピュータを接続し測定、算出した。
(滑剤に関する記載)
本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーには、外添剤粒子として滑剤が添加されている。ここでいう滑剤とは、クリーニング部材と感光体等の像担持体との間のすべりを促進し、その摩擦を低減させるために用いられるものである。
【0030】
滑剤成分としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルおよび高級脂肪酸金属塩の群から選択される少なくとも1種が使用される。高級脂肪酸としては、炭素数が概ね16個以上、好ましくは16〜30個の脂肪酸が利用でき、具体的には、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸などが挙げられる。
【0031】
また、高級脂肪酸金属塩は、炭素数が概ね12個以上、好ましくは12〜30個の脂肪酸の亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウムなどの金属塩が利用でき、具体的な化合物としては、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどのラウリン酸金属塩、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸カルシウムなどのミリスチン酸金属塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸金属塩などを挙げることができる。特に、ステアリン酸金属塩は安価なことに加えて、疎水性を有する基と親水性を発現する部位が共存する構造を有するためと推測されるが、クリーニング部材と像担持体との間でのすべりを顕著に促進させている。
【0032】
また、高級脂肪酸金属塩の含水分量を0.1乃至2.5質量%に、遊離脂肪酸量を0.01乃至0.7質量%としておくと、これらの滑剤中の残存水分や遊離脂肪酸成分が具体的にどのように作用しているのかは明らかではないが、良好なクリーニング性能が発現されることが確認されている。
【0033】
また、離型剤の添加量はトナーと離型剤との合計を100質量%としたときに、離型剤を0.3質量%以上10質量%以下とするのが好ましい。
【0034】
次に、本発明で用いられる画像形成装置について説明する。本発明では、像担持体上に形成されたトナー画像を用紙等の転写材上に転写する時、あるいは、像担持体上に形成されたトナー画像を中間転写体に重ね合わせて転写する時、さらには中間転写体上の重ねトナー画像を転写材に転写する時に、トナー画像に超音波振動を付与しながら転写を行ってフルカラーの画像形成を行う。
【0035】
図1は、本発明で好ましく使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、装置を示す概略構成図である。この画像形成装置は、矢印A方向に回転するドラム状の感光体ドラム11を備えており、感光体ドラム11を有するカラー画像形成装置本体1の上部には、原稿4の画像を読み取る画像読取部2が配備されている。この画像読取部2には、プラテンガラス3、光源5、2つの走査ミラー6,7、結像レンズ8、カラー用のCCDセンサ9等が備えられている。
【0036】
また、カラー画像形成装置本体1の内部には、画像形成ユニット30と、中間転写体ユニット31とが配備されている。画像形成ユニット30には、感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11をほぼ一様に帯電する帯電器12と、感光体ドラム11にレーザービームを照射して静電潜像を書き込むレーザービーム走査部13と、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナーを収容する現像器14Y、14M、14C、14Kとが備えられている。
【0037】
中間転写体ユニット31には、駆動ロール17、アイドラーロール18,20、及び二次転写用バックアップロール19によって張架された中間転写体ベルト16が備えられており、中間転写体ベルト16は駆動ロール17によって駆動され、矢印B方向に回転するようになっている。
【0038】
画像形成装置本体1の下部には、転写材である用紙23を収容する給紙カセット21と、この用紙カセット21から用紙23を一枚ずつ取り出して搬送する給送ロール22と、用紙23を中間転写体ベルト16との対向位置にタイミングを合わせて搬送するレジストロール28が配置される。
【0039】
そして、中間転写体ベルト16と転写材とが対向する転写位置に、中間転写体ベルト16の裏面側に超音波発生素子42及びホーン41が配置されている。
【0040】
さらに、用紙上に転写されたトナー像を定着する定着器26と、定着後の用紙が搬出されるトレイ27とが配置されている。
【0041】
本発明に使用される超音波装置について説明する。図4は、本発明で用いられる代表的な超音波装置40の模式図である。図4の超音波装置40は、超音波を発生する超音波発生素子42、発生した超音波を超音波放射面44aに導くホーン41、および超音波発生素子42を駆動する高周波電源45よりなる。なお、本発明に使用される超音波装置はこれに限定されるものではない。
【0042】
図4に示される超音波発生素子42は、強力な超音波を発生するために例えばセラミック系の圧電素子が使用される。超音波発生素子42は、それぞれの長さL1が超音波発生素子42の共振周波数と材料中の音速とで定まる音波長λ1の1/2の整数倍である直管部41a及びホーン部41bよりなるホーン41の直管部41aに有機接着剤で強固に接合される。
【0043】
ホーン部41bは、超音波発生素子42と接合する直管部41aからホーン部41bの先端に向かって断面積が次第に小さく絞られたラッパ状の形状を有している。ホーン41を構成する材料は、SUSが代表的でその他にアルミニウム青銅、りん青銅、チタン合金、ジュラルミン等が挙げられる。
【0044】
ホーン41により、超音波発生素子42の振動振幅を直管部41aの放射端面41cの面積とホーン部41bの先端面41dの面積との面積比に応じて増幅することが可能で、より強力な超音波の放射が可能である。また、超音波発生素子42の振動振幅を小さくすることで、振動応力による疲れ疲労や振動特性の劣化を防止することが可能である。
【0045】
本発明では、ホーン41の放射端面41cの面積に対する先端面41dの面積比を5:1としてあるが、この位の面積比の時にホーン41の振動特性が最も効果的に発現されることが確認されている。
【0046】
さらに、この超音波装置40は、ホーン41の先端に超音波放射板44が取り付けられている。図4では超音波放射板44は直径25mmの円盤状の形状を有している。超音波放射板44の被放射体に対向する面には超音波放射面44aが形成される。
【0047】
この様に、超音波装置40では超音波発生素子42で超音波を発生させ、ホーン41を使用して超音波の振動振幅を増幅し、それを広い面積を有する超音波放射面44aから放射させて、被放射体上の広い領域にわたり強いエネルギ振動を起こすことが可能である。
【0048】
本発明では、この様に構成した超音波装置40を例えば中間転写体ベルト16の幅方向に一列もしくは千鳥状に配列して超音波振動手段を構成した。
【0049】
本発明で用いられる超音波振動における周波数は40kHz〜2MHzが適当であることが確認されている。超音波振動における周波数を高くすると超音波発生素子42の厚みが薄くなり超音波の出力を大きくすることが難しくなるので、上記範囲の周波数が好ましい。また、本発明では、上記範囲の周波数で転写を行う画像形成が、40〜75℃の範囲に融点を有する離型剤を含有した樹脂粒子を凝集させて形成し、個数平均粒径が3.0〜5.0μmの球形に近い形状を有する小径トナーを用いると、特に好ましい画像形成が行えることを確認している。
【0050】
本発明では、転写位置で高い転写率を安定して得るために、ホーン41が接触する中間転写体ベルト16あるいは搬送ベルト47の間に、超音波伝播部材として、例えば図4及び図5に示す様にシート状のジェル部材46を設けることが好ましい。ジェル部材46は、シート状のものの他に、例えば、チューブより出したジェル部材46をホーン41の先端に設けられている超音波放射板44に塗布し、フォーム状(成形体)としたものでもよい。
【0051】
本発明では、転写位置に超音波伝播部材を設けることにより、中間転写体ベルト16に確実に超音波を伝播させて転写位置における転写率を向上させることが可能であるとともに、超音波装置40の先端部と中間転写体ベルト16あるいは搬送ベルト47とが摺擦しない様に装置を構成する部材の保護が可能になる。
【0052】
前述の様に、ジェル部材46は、例えば、100%シリコーンを用い、転写時に超音波伝播部材として作用させる。本発明で最も好ましく使用されるジェル部材46は、シート状シリコーン系ジェルである。シート状シリコーン系ジェルは、ジェルそのものが圧力の影響を殆ど受けずに超音波を対向面44bに効率よく伝播するので好ましい。また、シリコーン系ジェルは、耐熱性や耐薬品性が優れ、しかも経時にともなう変動が殆どないので、長期にわたり安定した超音波の伝播特性を発現することが可能であり、かつ、設置環境を汚染することがないので衛生面及び環境特性からも優れていることが確認されている。
【0053】
具体的なシート状シリコーン系ジェルとしては、例えば、シリコーンゴム層の上にシリコーンジェル層を積層させてなるシリコーンジェルシート(特開平2−196453号公報参照)、ガラスクロス等の網目状補強材にシリコーンゴムを被覆硬化させたシリコーンゴムシートにシリコーンジェルを積層してなるもの(特開平6−155517号公報参照)、及び片面に金属箔を設けてなるシリコーンジェルシート(特開平6−291226号公報参照)等が挙げられるが、本発明ではいずれの形態のシート状シリコーン系ジェルを用いてもよいことが確認されている。
【0054】
図1〜図3に示す画像形成装置では、転写位置において、超音波装置40の超音波放射面44aが、トナー像を間に挟んで中間転写体ベルト16あるいは感光体ベルト11及び転写材23とが平行に対向している。ここで超音波放射面44aと対向する中間転写体ベルト16等の部位を対向面44bとすると、超音波放射面44aと対向面44bとの間の距離L2は、超音波放射面44aから放射される超音波の波長λ2の1/2の整数倍に相当する位置に配置される。この超音波放射面44aと対向面44bとの間の距離L2は、波長λ2の1/2である時に最大の感度が得られるので好ましい。
【0055】
これは、超音波装置40の超音波放射面44aから放射された超音波と対向面44bで反射された超音波の位相が一致して、超音波装置40の超音波放射面44aと対向面44bとの間に超音波の定在波が形成されるためと推測される。
【0056】
この定在波が形成されると定在波振動の“腹”の部位に位置する対向面44bに、単純な超音波の放射による作用力よりも大きな力が作用する。例えば、共振周波数が40kHzの超音波発生素子42を使用した場合、放射される超音波の波長λ2は空気中の音速を共振周波数で割った値であるので、λ2は周囲温度によって多少影響を受けるが約17mmとなる。
【0057】
プラテンガラス3上に載置され、光源5によって照らされた原稿4からの反射光像は、2つの走査ミラー6,7、及び結像レンズ8を介してCCDセンサ9によってRGB(レッド、グリーン、ブルー)の画像信号として読み取られる。読み取られたRGBの画像信号は画像信号処理部10に入力され、ここでYMCK(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像信号に変換されると共に、必要に応じて画像信号処理部10の内部に設けられたメモリに一時記憶される。
【0058】
感光体ドラム11は、帯電器12によって所定の負電位に一様に帯電された後、レーザービーム走査部13によって静電潜像の形成が行われる。レーザービーム走査部13は、画像信号処理部10から順次出力されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像データに応じたレーザービームを像担持体ドラム11上に走査することにより、画像露光を行い、これにより像担持体ドラム11上に静電潜像が形成される。
【0059】
感光体ドラム11上に形成された静電潜像は、現像器14Y、14M、14C、14Kで現像され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナー像が形成される。各色のトナーは負に帯電しており、像担持体ドラム11上のレーザービームが照射された領域に付着する。なお、像担持体ドラム11が1回転する毎に1色分のトナー像が形成され、4回転で4色分のトナー像が形成される。
【0060】
感光体ドラム11が1回転する毎に形成された1色分のトナー像は、その都度、中間転写体ベルト16上に転写され、これを4回繰り返すことにより中間転写体ベルト16上に4色分のトナー画像が重ね合わされる。
【0061】
中間転写体ベルト16上に4色分のトナー像が転写された後、中間転写体ベルト16がさらに回転してその4色分のトナー像が転写材との転写位置に達するのと同期して、給紙カセット21内に収容されている用紙23が給送ロール22によって給送され、レジストロール28によって中間転写体ベルト16と転写材との転写位置に搬送される。
【0062】
中間転写体ベルト16と転写材との転写位置では、超音波発生素子42及びホーン41により中間転写体ベルト16上のトナー画像が転写材上に転写される。
【0063】
図5は、中間転写体ベルト16と転写材23との転写位置を示す模式図である。中間転写体ベルト16と転写材(用紙)23とが対向する転写位置には、用紙23の裏面側に超音波発生素子42及びホーン41が備えられている。図5に示す様に、ホーン41の先端部は矢印の向きに同位相振動(ピストン振動)し、ホーン周辺部では中間転写体ベルト16と用紙23との間に超音波の定在波が形成される。
【0064】
超音波発生素子42の駆動により発生した超音波を転写に効率よく寄与させるためには、発生した超音波振動が用紙23の表面で発現する様に、用紙23を十分な張力で張ることが好ましい。
【0065】
用紙23に張力を印加させるため、転写位置の上流側と下流側にローラ48をそれぞれ対向配置させ、これらのローラ48間に搬送ベルト47を設ける。
【0066】
また、ローラ48及び搬送ベルト47には、図示していないがトナーが付着しない向きへの電圧を印加する電源などを設けてもよい。
【0067】
この様に、中間転写体ベルト16上で重ね合わされたトナー像を転写位置で超音波により用紙23上に転写する。
【0068】
また、トナーRのリバウンドや、自発形成される鏡像力が小さい用紙23を使用した時の画像乱れを防止するために、静電気力あるいは熱を用いてトナー像の保持力を増大する手段を設けてもよい。
【0069】
具体的には、ホーン41に電源61を接続し、トナーRを保持するための電圧を印加するものや、電圧を印加可能な転写保持ロールを用紙23の裏面側に接触させたものが挙げられる。これらにより、用紙23に電荷が付与され、転写されたトナーRは用紙23上に保持される。なお、用紙23のたわみ振動を防止するために、ホーン41を挟んで転写保持ロール62の反対側にテンションロール64を配置してもよい。
【0070】
トナー像が転写された用紙23は、定着器26において熱及び圧力による定着処理を受けた後、トレイ27上に搬出され、一連のカラー画像形成サイクルが終了する。
【0071】
一方、中間転写体ベルト16へのトナー画像の転写を終了した感光体ドラム11は、クリーニング装置32により感光体ドラム11表面の残留物が除去され、次の画像形成サイクルに移行する。また、転写材(用紙23)への転写を終了した中間転写体ベルト16は、クリーニング装置33により中間転写体ベルト16表面の残留物が除去され、次の画像形成サイクルに移行する。
【0072】
この様に、本発明に用いられる画像形成装置では、中間転写体ベルト上のトナー像を転写材(用紙23)に転写する際に超音波の定在波による音響放射力を用いることによりトナーを飛翔させて転写することが可能であり、前述したトナー中における離型剤相の分散状態が特定されたトナーを使用することにより、超音波の影響で離型剤粒子が脱離してトナーが破壊せずに、転写の際にトナー像の乱れが発生することを防止することが可能である。
【0073】
なお、本発明は、前述した様な中間転写体ベルト16上のトナー画像を転写材に転写する他に、感光体ドラム11上に形成したトナー画像を中間転写体ベルト16上に転写する時に超音波振動を使用するものでもよい。図2は、超音波転写により感光体ドラム11上のトナー画像を中間転写体ベルト16上に転写する画像形成装置の一例を表す概略構成図である。なお、図示してはいないが、図2においても中間転写体ベルト16と超音波装置40の間に超音波伝播部材としてジェル部材46を用いることが好ましい。
【0074】
また、図3は、本発明の画像形成方法に使用可能な他のフルカラー画像形成装置の概略構成図である。図3に示す画像形成装置では、感光体11上に形成したフルカラーのトナー画像を転写材上に転写するものである。
【0075】
図3の画像形成装置では、最初にベルト状の感光体11上にイエローの単位画像を形成する。方法は単色の画像形成装置と同様であり、まず、一様帯電器により感光体面を一様に帯電し、その感光体面を像露光器で像様に露光し、イエローのカラートナーにより現像してイエロー画像を形成する。
【0076】
感光体11の回転移動によりこれとタイミングを合わせた画像形成をマゼンタ、シアン、ブラックについても感光体の同一領域に行い、各単位色画像が重ね合わさったフルカラートナー画像が形成される。
【0077】
感光体11が回転移動を続け、前述の対向面44bに相当する超音波装置40の地点に至ると、タイミングを合わせて搬送されてきた転写材23の上にフルカラートナー画像が転写され、フルカラートナー画像を担持した転写材23は、定着器26の方へ搬送されてカラー画像が転写材23上に定着される。また、図3においても対向面44bと超音波装置40の間に超音波伝播部材としてジェル部材46を設けることが好ましい。
【0078】
トナー画像の転写を行った感光体11はさらに回転移動を続けて、ブレードを有するクリーニング装置33により感光体面の転写残トナー、紙粉等を除去された後、再び画像形成に使用される。
【0079】
次に、本発明で使用されるトナーの製造方法について説明する。
【0080】
本発明で使用されるトナーの製造方法としては、樹脂粒子と融点が40〜75℃の範囲にある離型剤粒子とを凝集させる工程を経るものであれば、特に限定されるものではない。具体的な製造方法としては、乳化会合法、懸濁重合法、分散重合法、溶解懸濁法などが挙げられる。以下、乳化会合法によるトナー製造方法の代表的な例である乳化重合凝集法によるトナー製造方法について説明する。
【0081】
本発明に使用されるトナーの好ましい製造方法である乳化重合凝集法は、粒子を凝集させた後、より高温で粒子を融合合一させるため、かかるシェアは小さく、また粒子間で融合合一されるため、前記吸収ピークシフト化物質の適度な相溶性を有効に活用することができるものと推定される。
【0082】
乳化重合凝集法では、少なくとも樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液と、着色剤を分散させてなる着色剤分散液と、離型剤を分散させてなる離型剤分散液と、吸収ピークシフト化物質分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤及び離型剤を凝集させて凝集粒子を形成し、凝集粒子分散液を調製する工程(以下「凝集工程」と称することがある)、及び前記凝集粒子を加熱・融合してトナーを形成する工程(以下「融合工程」と称することがある)を含む。
【0083】
本発明に使用されるトナーの製造方法は、必要に応じて、前記凝集工程に続けて、前記凝集粒子分散液に樹脂微粒子及び/又はその他の成分の微粒子の分散液を添加して前記凝集粒子表面に前記微粒子を付着させる工程(以下「付着工程」と称することがある)を設け、前記付着粒子を加熱融合してトナーを形成する工程(「融合工程」)を経てトナーを得ることが可能である。
【0084】
前記凝集工程においては、分散液中の樹脂粒子、着色剤及び離型剤がヘテロ凝集して凝集粒子を形成する。そのヘテロ凝集において、凝集粒子の安定化、粒度/粒度分布制御を目的として、凝集粒子とは極性が異なるイオン性界面活性剤や、一価以上の電荷を有する化合物、例えば無機金属塩等を添加することが有効である。
【0085】
また、前記融合工程では、凝集粒子中の樹脂及び離型剤が溶融するものの、樹脂粒子と離型剤は互いに相溶性が低いか全くないが、前記吸収ピークシフト物質を介在させることにより、凝集粒子内で融合させることが容易になり、トナーが形成される。
【0086】
前記付着工程を設ける場合は、前記凝集粒子を母体粒子として、その表面に追加された微粒子が均一に付着され、付着粒子が形成される。前記付着粒子はヘテロ凝集等により形成される。前記付着粒子は、融合工程で付着粒子中の樹脂が溶融され融合してトナーが形成される。この方法によれば、付着工程で凝集粒子表面に微粒子が被覆され、融合されたトナー中のコア部分に離型剤が実質的に収容され、トナー表面への離型剤の露出が抑制される利点がある。また、トナー表面を形成する微粒子により、トナーの表面物性を制御することも可能である。
【0087】
本発明に使用されるトナーを乳化重合凝集法を用いて製造する場合、樹脂微粒子を分散した分散液を用いる。その際に用いる樹脂微粒子の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂などが挙げられ、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0088】
これらの樹脂の中でもビニル系樹脂が特に好ましい。ビニル系樹脂の場合、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合やシード重合により樹脂微粒子分散液を容易に調製できる有利がある。前記ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミンなどのビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の原料となるモノマーが挙げられる。これらのビニル系モノマーの中でも、ビニル系樹脂の形成反応の容易性の点でビニル系高分子酸がより好ましく、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸などのカルボキシル基を解離基として有する解離性ビニル系モノマーが、重合度やガラス転移点の制御の点で特に好ましい。
【0089】
なお、前記解離性ビニル系モノマーにおける解離基の濃度は、例えば、「高分子ラテックスの化学」(高分子刊行会)に記載の、トナー等の粒子を表面から溶解して定量する方法で決定することができる。なお、この方法により、粒子表面から内部にかけての樹脂の分子量やガラス転移点も決定することもできる。
【0090】
乳化重合凝集法に用いる樹脂微粒子の平均粒径は、1μm以下、好ましくは0.01〜1μmの範囲が適当である。平均粒径を1μm以下にすることにより、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒度分布をシャープなものにするとともに、遊離粒子の発生を抑制するのでトナーの性能や信頼性を向上させることが確認されている。さらに、樹脂微粒子の平均粒径を前記範囲内とすることで、トナー間の偏在が減少し、トナー中の各成分粒子の分散が良好となり、トナーの性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前記平均粒径は、例えば、コールターカウンター(コールター社製)などを用いて測定することができる。
【0091】
乳化重合凝集法を用いたトナー製造方法では着色剤を分散した分散液を用いる。その際に用いる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR,ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジゴ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料;などが挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0092】
前記着色剤の平均粒径は、1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.01から0.5μmの範囲が適当である。着色剤の平均粒径を1μm以下とすることで、最終的に得られるトナーの粒度分布をシャープなものにするとともに、遊離粒子の発生を防止するので、トナーの性能や信頼性を向上させる。また、平均粒径が前記範囲内にすることで、トナー間の偏在が減少し、トナー中の各成分の粒子の分散性が良好となり、トナーの性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。さらに、平均粒径が0.5μm以下であると、得られるトナーが、発色性、色再現性、OHP透過性等に優れる有利がある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定機などを用いて測定することができる。
【0093】
乳化重合凝集法を用いてトナーを製造する場合、離型剤を分散した分散液を用いる。本発明では前述した性能を有する離型剤が好ましく使用される。前述した離型剤は一般的にはトナーの結着樹脂との相溶性に乏しいものであり、この様に結着樹脂との相溶性に乏しい離型剤を用いることにより、離型剤による結着樹脂の可塑化を防止し、定着時におけるトナーの粘度を維持するので、オフセットの発生防止に効果的である。
【0094】
また、離型剤による結着樹脂の可塑化を発生させないので、表面近傍に存在していた離型剤粒子の一部が樹脂層に安定して保持され、トナー表面近傍での離型剤量減少による離型効果の低減のおそれがない。また、トナー表面に存在する樹脂粒子が離型剤により可塑化されることがないので、トナー表面のガラス転移点が維持されてトナーの流動性が保持される。離型効果は、トナー内に含まれる離型剤の分散単位とトナー表面からの距離とに関係し、一般に離型剤の分散単位が大きいほど、また離型剤のトナー表面からの距離は小さいほどその効果は大きい。
【0095】
本発明に使用されるトナーにおける離型剤の含有量は、トナーに対して0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%が特に好ましい。前記含有量が前述の範囲にあることで、離型効果が十分に発現されるだけではなく、定着時にトナーが定着ロールに付着するいわゆるオフセットが発生しにくい。さらに、凝集時に離型剤が遊離しないので、トナーが脆弱することなく現像機内で長期にわたり攪拌を続けてもトナーは粉砕されず、微粒子を発生させることがない。
【0096】
前記離型剤粒子の平均粒径は、1μm以下が好ましく、0.01〜1μmの範囲がより好ましい。平均粒径を1μm以下とすることにより、最終的に得られるトナーの粒度分布をシャープなものにすることが可能であり、遊離粒子の発生を防止してトナーの性能や信頼性を向上させる。さらに、平均粒径を前記範囲内とすることにより、離型剤のトナー間での偏在を減少させ、トナー中での離型剤の分散性が良好になるので、トナーの性能や信頼性のバラツキを小さくするので有利である。なお、前記平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定機や、遠心式粒度分布測定機等を用いて測定することが可能である。
【0097】
なお、これらのワックス類は、水等の水系媒体中にイオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加してホモジナイザーや圧力吐出型分散機で処理すると、容易に1μm以下の微粒子に調整することができる。
【0098】
本発明に使用されるトナーを製造する際、樹脂微粒子と、着色剤と、離型剤の組み合わせには、離型剤の融点が40〜75℃とする以外には特に制限はなく、目的に応じて適宜自由に選択して用いることができる。
【0099】
本発明に使用されるトナーの製造方法に用いられる、前記その他の成分の平均粒径は、1μm以下が好ましく、0.01〜1μmの範囲がより好ましい。平均粒径を1μm以下とすることにより、最終的に得られるトナーの粒度分布をシャープなものにすることが可能で、遊離粒子の発生を防止するので、トナーの性能や信頼性を向上させる。また、平均粒径を前記範囲内にすることによりトナー間の偏在を減少させ、トナー中における成分の分散性を良好にするので、トナーの性能や信頼性のバラツキを小さくする上で有利である。なお、前記平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定機や、遠心式粒度分布測定機等を用いて測定することが可能である。
【0100】
前記樹脂、着色剤及び離型剤を含有するトナー組成の配合は、着色剤の含有量が50質量%以下、好ましくは2〜40質量%の範囲が適当であり、離型剤の含有量も50質量%以下、好ましくは2〜40質量%の範囲が適当である。また、その他の成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない程度であればよく、一般的には極少量で、具体的には0.01〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%の範囲が適当である。
【0101】
本発明に使用されるトナーの製造方法における、樹脂微粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液、及びその他の成分の分散液における分散媒としては、例えば水系媒体などを使用することができる。水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0102】
前記分散液においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておくことが好ましい。本発明に使用されるトナーの製造方法においては、少なくとも前記樹脂微粒子分散液と前記着色剤分散液を混合して凝集粒子を生成し、これに前記離型剤分散液を添加して前記凝集粒子の表面近傍に前記離型剤粒子を付着させる場合においても、前記樹脂微粒子、前記着色剤粒子及び前記離型剤粒子などの分散粒子の水系媒体中における安定性、ひいては分散液の保存性を向上させる上で界面活性剤の添加は有利である。また凝集工程における前記凝集粒子の安定性の点からも有利である。
【0103】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤がより好ましい。
【0104】
前記分散液に使用される界面活性剤は、その極性が同一であっても問題はないが、前記樹脂粒子分散液と前記着色剤粒子分散液とに含有される界面活性剤の極性と前記離型剤分散液に含有される界面活性剤の極性が異なっている方が、離型剤の遊離を減少させることができ、また、その後の付着工程におけるその他の粒子の遊離を減少できる利点である。
【0105】
一般的にはアニオン系界面活性剤は分散力が強く、樹脂微粒子及び着色剤の分散に優れている。また、離型剤を分散させる界面活性剤はカチオン系界面活性剤の方が有利である。なお、非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用するのが好ましく、界面活性剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類などが挙げられる。
【0107】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類などが挙げられる。
【0108】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類などが挙げられる。
【0109】
界面活性剤の各分散液中への含有量は、トナーの製造を阻害しない程度であれば良く、一般的には少量である。具体的には0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%の範囲が適当である。含有量を0.01〜10質量%の範囲内にすることで、樹脂粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液等の分散性を良好に保持することが可能で、各分散液中で分散物が凝集することがなく、凝集工程では各粒子間の安定性が異なる状態にあっても、特定粒子が遊離する様なことなく確実に凝集を行うことが可能である。また、上記範囲にすることで、粒子の粒度分布をシャープにするとともに、粒子径の制御を容易に行えることが確認されている。
【0110】
樹脂微粒子分散液は、その調製方法について特に制限はなく、その方法は目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の様に調製される。樹脂微粒子分散液における樹脂が、ビニル基を有するエステル類、ビニルニトリル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類等のビニル単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合、ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等で樹脂微粒子を生成し、樹脂微粒子をイオン性界面活性剤に分散させて樹脂微粒子分散液を調製する。
【0111】
樹脂微粒子分散液における樹脂が、ビニル単量体の単独重合体又は共重合体以外の樹脂である場合には、該樹脂が、水への溶解度が比較的低く、油性溶剤に溶解するのであればよく、油性溶剤に溶解した樹脂溶解物をイオン性界面活性剤や高分子電解質とともに水中に添加し、ホモジナイザー等の分散機を用いて微粒子に分散させた後、加熱及び/又は減圧して油性溶剤を蒸散させることによって調製する。
【0112】
着色剤分散液は、着色剤を界面活性剤等の水系媒体に分散させて調製することができる。離型剤分散液は、離型剤をイオン性界面活性剤や高分子酸や、高分子塩基等の高分子電解質と共に水中に分散させ、融点以上に加熱しながら、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて、強い剪断力をかけることにより、離型剤を微粒子化して調製する。その他の成分(粒子)の分散液も、着色剤分散液と同様に界面活性剤等の水系媒体に分散して調製する。
【0113】
分散手段には、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの公知の分散装置が挙げられる。
【0114】
乳化重合凝集法を用いる場合の凝集粒子分散液を調製する工程では、凝集剤として一価以上の電荷を有する化合物を用いることが好ましい。この化合物としては、前記のイオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の水溶性界面活性剤類、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩、酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム等の脂肪族酸や芳香族酸の金属塩、ナトリウムフェノレート等のフェノール類の金属塩、アミノ酸の金属塩、トリエタノールアミン塩酸塩、アニリン塩酸塩等の脂肪族や芳香族アミン類の無機酸塩類等が挙げられる。この中でも無機酸の金属塩が、凝集粒子の安定性、凝集剤の熱的、経時的安定性といったトナーの性能や使用上の利点を有することから好ましい。
【0115】
これらの凝集剤の添加量は、電荷の価数により異なるが、いずれも少量でよく、一価の場合は3質量%以下、二価の場合は1質量%以下、三価以上の場合は0.5質量%以下が好ましい。凝集剤の量は少ない方がよいので、価数の多い化合物の方が好ましい。
【0116】
また、吸収点ピークシフト化物質としては、少なくとも1つ以上の極性基を有し、樹脂微粒子と離型剤に対して相溶性を有するともに、トナーの正接損失(tanδ)の温度に対する吸収ピークのうち、最低温度側の吸収ピークと最高温度側の吸収ピークとの間に吸収ピークを有する化合物を使用することができる。具体的には、エタノール、ブタノール等の低級アルコール類、オクタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、エチレングリコール、プロパントリオール、エリスリトール、テトラプロパントリオール等の多価アルコール類およびそれらの脱水縮合物類、酢酸、酪酸、ステアリン酸、べヘン酸等の低級から高級までの脂肪酸類、サリチル酸等のオキシカルボン酸類、ナフトール等のフェノール類、及びこれらの酸類、アルコール類とのエステル類、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアルキル鉱酸、高級脂肪酸の金属塩類、チオアルコール、チオエーテル、チオアルコール等の含硫黄化合物、その他アルキルアミン等のアミン類、アニリン類、ウレタン類、シリコーン類等が挙げられる。
【0117】
これらは単独で用いても、複数種混合して用いても良い。これらの化合物の正接損失(tanδ)の温度に対するプロットから得られた吸収ピークは、トナーの正接損失(tanδ)の温度に対するプロットから得られた複数の吸収ピークの最低温と最高温の間にあることが好ましい。具体的には、高級アルコール、高級脂肪酸、及びそれらのエステル類、高級脂肪酸金属塩等が好ましく、高級アルコールとしては、ステアリルアルコール、イコサノール、ドコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、ドトリアコンタノール、テトラトリアコンタノール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタンデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、イコサンジオール;高級脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ドコサン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸;エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ドコサン酸モノグリセリド、ドコサン酸ジグリセリド、ドコサン酸トリグリセリド、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル、ドコサン酸ドコサニル、セロチン酸ステアリル、モンタン酸ドコサニル;高級脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、アラギン酸ナトリウム、ドコサン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0118】
前記吸収ピークシフト化物質を用いるときに、トナーの正接損失(tanδ)の温度に対するプロットから得られた複数の吸収ピークの移動温度は多くとも40℃であることが好ましい。40℃を超えると、前記吸収ピークシフト化物質を介して前記樹脂微粒子と前記離型剤とが相溶しやすくなり、トナーのTgが低下するために、保存性の点から好ましくない。
【0119】
吸収ピークシフト化物質のトナーへの添加量は、離型剤量に対して0.1〜100質量%、好ましくは1.0〜50質量%、より好ましくは1.0〜30質量%の範囲が本発明の効果を発現するために必要である。添加量を0.1〜100質量%とすることで、吸収ピークシフト化物質を添加したことによる樹脂微粒子や離型剤への影響はない。
【0120】
本発明に使用されるトナーは、その表面にシリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム等の無機粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子を、乾燥状態で剪断力により添加してもよい。これらの無機粒子や樹脂粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤等の外添剤として機能する。
【0121】
本発明に使用されるトナーに用いられる樹脂の分子量分布、即ちゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、4〜30、好ましくは4〜20、より好ましく5〜15の範囲が適当である。
【0122】
分子量分布(Mw/Mn)を4〜30の範囲とすると、定着画像の透明性や平滑性、混色性が十分に発現され、特にOHPなどのフィルム上にトナー画像を形成する場合は、光が十分に透過されて映し出される画像が鮮明で明るい画像になり、しかも透明性を有し発色性に富んだ投影画像が得られる。また、高温定着時におけるトナーの粘度低下を防止するのでオフセットが発生しない。この様に、分子量分布(Mw/Mn)が、前記数値範囲内にあると、定着画像の透明性、平滑性、混色性が十分である上、高温定着時における静電荷像現像用トナーの粘度低下を防止してオフセットの発生を効果的に制御することが可能である。
【0123】
本発明に使用されるトナーは、帯電性、現像性、転写性、定着性、クリーニング性などの諸特性が優れ、特に画像における平滑性、透明性、混色性、発色性が優れる。また、環境条件に影響を受けず、前記諸特性能を安定に発現し、維持するので信頼性が高い。さらに本発明に使用されるトナーは乳化重合凝集法で製造されるため、混練粉砕法等により製造される場合と異なり、その平均粒径を小さくするとともに、その粒度分布をシャープなものにすることが可能である。
【0124】
本発明に使用されるトナーの帯電量は、10〜40μC/g、好ましくは15〜35μC/gである。トナーの帯電量を10〜40μC/gとすることで、背景部汚れの発生を抑え、良好な濃度を有するトナー画像が得られる。本発明に使用されるトナーの夏場(30℃、85%RH)における帯電量と、冬場(10℃、20%RH)における帯電量との比は、0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.3の範囲が適当であり、この時、トナーは環境からの影響を受けずに安定した帯電量を維持することが可能になるので実用上良好なトナー画像を安定して作成することが可能である。
【0125】
本発明に係る画像形成方法は、上記トナーを用いて画像形成を行うものであるが、上記トナーを単独で用いる一成分系現像剤として使用するものであっても、また、キャリアと組み合わせてなる二成分系現像剤として使用するものであってもよい。前記キャリアには特に制限はなく、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された公知の樹脂被覆キャリア等が使用される。
【実施例】
【0126】
以下に、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0127】
《トナーの製造》
1.製法1によるトナーの作製
(樹脂粒子(1HML)の調製)
(1)核粒子の調製(第一段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けたセパラブルフラスコに下記式に示すアニオン系界面活性剤を7.08gをイオン交換水3010gに溶解させて、界面活性剤溶液(水系媒体)を作製し、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0128】
アニオン系界面活性剤;C1021(OCH2CH22OSO3Na
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、樹脂粒子の分散液を調製した。これを「樹脂粒子分散液(1H)」とする。
(2)中間層の形成(第二段重合)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に離型剤として、ステアリン酸ステアリル(融点58℃)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0129】
一方、上記のアニオン系界面活性剤1.6gをイオン交換水2700gに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に前述の「樹脂粒子分散液(1H)」を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック株式会社製)により、前記ステアリン酸ステアリルの単量体溶液を8時間混合分散させて284nmの分散粒子径を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0130】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240gに溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750gとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、樹脂粒子表面が中間分子量樹脂で被覆された構造の樹脂粒子の分散液を得た。これを「樹脂粒子分散液(1HM)」とする。
【0131】
前記「樹脂粒子分散液(1HM)」を乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、ラテックスに取り囲まれなかったステアリン酸ステアリルを主成分とする粒子(400〜1000nm)が観察された。
(3)外層の形成(第三段重合)
上記の様にして得られた「複合樹脂粒子分散液(1HM)」に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却して樹脂粒子のまわりに中間層と外層とを有する樹脂粒子を得た。これを「樹脂粒子分散液(1HML)」とした。
【0132】
この「樹脂粒子分散液(1HML)」を構成する樹脂粒子は、138,000、80,000及び13,000にピーク分子量(重量)を有し、また、この樹脂粒子の重量平均粒径は122nmであった。
【0133】
また、樹脂粒子分散液(1HML)の製造工程で、離型剤としてステアリン酸ステアリルの代わりにミリスチン酸ミリスチリル(融点40℃)を99.0g使用したもの、ベヘン酸ベヘニル(融点75℃)を97.0g使用したもの、パラフィンワックス(融点90℃)を95.5g使用したもの、ポリエチレンワックス(融点98℃)を93.0g使用したもの、及び、ジステアリルケトン(融点88℃)を95.5g用いて樹脂粒子分散液2HML〜6HMLを作製した。
【0134】
得られた樹脂粒子分散液2HML〜6HMLを構成する樹脂粒子は、いずれも樹脂粒子分散液(1HML)を構成する樹脂粒子と同じピーク分子量、重量平均粒径を有することを確認した。
〈着色粒子の作製〉
前述のアニオン系界面活性剤59.0gをイオン交換水1600gに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)420.0gを徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、「着色剤粒子の分散液」(以下「着色剤分散液1Bk」という。)を調製した。この着色剤分散液における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒径で89nmであった。
【0135】
次に、着色剤分散液1Bkと樹脂粒子分散液(1HML)を用い、以下の手順により樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させた。なお、本実施例では、表1に示す体積基準メディアン径を有する着色粒子をそれぞれ作製しており、これは、後述する熟成工程で会合粒子の粒径を測定して体積基準メディアン径が所定の径になったときに粒子成長を停止させることで粒径を制御した。
【0136】
樹脂粒子(1HML)420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液1Bk166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜10に調整した。
【0137】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000gに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6〜60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った(凝集工程)。その状態で、「コールターカウンター TA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準メディアン径が所定の値になった時点で、塩化ナトリウム40.2gをイオン交換水1000gに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて6時間にわたり加熱攪拌することにより、粒子の融着及び離型剤の相分離を継続させた(熟成工程)。
【0138】
生成した会合粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄を行い、その後、40℃の温風で乾燥して着色粒子を得た。
【0139】
得られた着色粒子は、離型剤としてステアリン酸ステアリルを含有し、体積基準メディアン径が2.3、3.0、4.0、5.0、及び、6.0μmの着色粒子がそれぞれ得られた。また、他の樹脂粒子分散液2HML〜6HMLと着色剤分散液1Bkとから、離型剤としてミリスチン酸ミリスチリル、ベヘン酸ベヘニル、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ジステアリルケトンを含有した着色粒子を得た。
〈滑剤の添加〉
得られた着色粒子に滑剤を所定量添加してトナーを作製した。着色粒子と滑剤の種類及び添加量の組み合わせは表1に示すとおりである。このようにして、離型剤を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て作製されるトナー1Bk〜16Bk、及び、26Bk〜33Bk(表1中ではトナー1〜16、26〜33と表記)を作製した。
【0140】
次に、着色剤分散液1Bkを以下に記載の手順で作製した着色剤分散液1Y、1M、1Cにした他は同様の手順により、イエロートナー1Y〜16Y及び26Y〜33Y、マゼンタトナー1M〜16M及び26M〜33M、シアントナー1C〜16C及び26C〜33Cを作製した。作製された各トナーの物性は1Bk〜16Bk及び26Bk〜33Bkで得られた結果と同じ値となった。
【0141】
着色剤分散液1Yは、前述のアニオン系界面活性剤90gをイオン交換水1600gに攪拌溶解して作製した溶液に、染料(C.I.ソルベントイエロー93)420gを徐々に添加して作製した。
【0142】
着色剤分散液1Mは、前述のアニオン系界面活性剤90gをイオン交換水1600gに攪拌溶解して作製した溶液に、顔料(C.I.ピグメントレッド122)420gを徐々に添加して作製した。
【0143】
さらに、着色剤分散液1Cは、前述のアニオン系界面活性剤90gをイオン交換水1600gを攪拌溶解して作製した溶液に、顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)400gを徐々に添加して作製した。
2.製法2によるトナー作製
(離型剤粒子分散液A)
脱塩水68.33部、ステアリン酸ステアリル(融点58℃)30部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオゲンSC、第一工業製薬製、有効成分66%)1.67部を混合し、高圧剪断をかけ乳化し、ステアリン酸ステアリルを用いた離型剤粒子分散液Aを作製した。LA−500で測定した離型剤粒子の平均粒径は350nmであった。
【0144】
(離型剤粒子分散液B)
離型剤粒子分散液Aで使用したステアリン酸ステアリルの代わりにミリスチン酸ミリスチリル(融点40℃)を32部使用した他は、離型剤粒子分散液Aの時と同様の手順で離型剤粒子分散液Bを作製した。LA−500で測定した離型剤粒子の平均粒径は355nmであった。
【0145】
(離型剤粒子分散液C)
離型剤粒子分散液Aで使用したステアリン酸ステアリルの代わりにベヘン酸ベヘニル(融点75℃)を29部使用した他は、離型剤粒子分散液Aの時と同様の手順で離型剤粒子分散液Cを作製した。LA−500で測定した離型剤粒子の平均粒径は350nmであった。
【0146】
(離型剤粒子分散液D)
離型剤粒子分散液Aで使用したステアリン酸ステアリルの代わりにジステアリルケトン(融点88℃)を30部使用した他は、離型剤粒子分散液Aの時と同様の手順で離型剤粒子分散液Dを作製した。LA−500で測定した離型剤粒子の平均粒径は345nmであった。
【0147】
(離型剤粒子分散液E)
離型剤粒子分散液Aで使用したステアリン酸ステアリルの代わりにパラフィンワックス(融点97℃)を33部使用した他は、離型剤粒子分散液Aの時と同様の手順で離型剤粒子分散液Eを作製した。LA−500で測定した離型剤粒子の平均粒径は365nmであった。
【0148】
(離型剤粒子分散液F)
離型剤粒子分散液Aで使用したステアリン酸ステアリルの代わりにポリエチレンワックス(融点98℃)を28部使用した他は、離型剤粒子分散液Aの時と同様の手順で離型剤粒子分散液Eを作製した。LA−500で測定した離型剤粒子の平均粒径は355nmであった。
【0149】
(重合体一次粒子分散液A)
攪拌装置(フルゾーン翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(容積2リットル、内径120mm)に離型剤粒子分散液A35部、脱塩水397部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して、8%過酸化水素水溶液1.6部、8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。その後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
[モノマー類]
スチレン 79部(237g)
アクリル酸ブチル 21部
アクリル酸 3部
オクタンチオール 0.38部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.9部
[乳化剤水溶液]
15%ネオゲンSC水溶液 1部
脱塩水 25部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 9部
8%アスコルビン酸水溶液 9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液Aを得た。重合体のテトラヒドロフラン不溶分は53質量%、テトラヒドロフラン可溶分の重量平均分子量は139,000、UPAで測定した平均粒子径は201nmであった。
【0150】
(重合体一次粒子分散液B〜F)
重合体一次粒子分散液Aで使用した離型剤粒子分散液Aの代わりに離型剤粒子B〜Fを用いた他は、重合体一次粒子分散液Aの時の同様の手順で重合体一次粒子分散液B〜Fを作製した。作製された各重合体のテトラヒドロフラン不溶分、テトラヒドロフラン可溶分の重量平均分子量、及びUPAで測定した平均粒子径の値は重合体一次粒子分散液Aの時と同じ値となった。
【0151】
(樹脂微粒子分散液A)
攪拌装置(3枚後退翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(容積2リットル、内径120mm)に15%ネオゲンSC水溶液6部、脱塩水372部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して、8%過酸化水素水溶液1.6部、8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。その後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
[モノマー類]
スチレン 88部(308g)
アクリル酸ブチル 12部
アクリル酸 2部
ブロモトリクロロメタン 0.5部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.4部
[乳化剤水溶液]
15%ネオゲンSC水溶液 3部
脱塩水 23部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 9部
8%アスコルビン酸水溶液 9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の樹脂微粒子分散液Aを得た。重合体のテトラヒドロフラン不溶分は10質量%、テトラヒドロフラン可溶分の重量平均分子量は57,000、UPAで測定した平均粒子径は56nmであった。
【0152】
(着色剤微粒子分散液Bk)
カーボンブラック(商品名;リーガル330R キャボット社製)の水分散液(固形分35%)。UPAで測定した平均粒径は150nmであった。
【0153】
(着色剤微粒子分散液Y、M、C)
上記着色剤微粒子分散液Aで使用されたカーボンブラックに代わり、着色剤としてC.I.ピグメントイエロー180を用いて作製した水分散液を着色剤粒子分散液Yとし、着色剤としてC.I.ピグメントレッド122を用いて作製した水分散液を着色剤微粒子分散液Mとした。さらに、着色剤としてピグメントブルー15:3を用いて作製した水分散液を着色剤粒子分散液Cとした。いずれも固形分が35%、UPAで測定した平均粒径は150nmであった。
〔着色粒子の作製〕
重合体一次粒子分散液A 105部(71g:固形分として)
樹脂微粒子分散液A 5部(固形分として)
着色剤微粒子分散液Bk 6.7部(固形分として)
帯電制御剤微粒子分散液A 2部(固形分として)
15%ネオゲンSC水溶液 0.5部(固形分として)
上記の各成分を用いて、以下の手順により着色粒子を製造した。反応器に重合体一次粒子分散液Aと15%ネオゲンSC水溶液を仕込み、均一に混合してから着色剤微粒子分散液Bkを添加し、均一に混合した。得られた混合分散液を攪拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(固形分として0.53部)。その後、攪拌しながら25分かけて50℃に昇温して1時間保持し、さらに35分かけて63℃に昇温して20分保持した。帯電制御剤微粒子分散液A、樹脂微粒子分散液A、硫酸アルミニウム水溶液(固形分として0.07部)の順に添加し、10分かけて65℃に昇温して30分保持した。15%ネオゲンSC水溶液(固形分として3部)を添加してから30分かけて96℃に昇温して5時間保持した。その後冷却し、濾過、水洗し、乾燥することにより着色粒子を作製した。
【0154】
作製された着色粒子に表1に示す各種滑剤を1.0質量%添加して、樹脂粒子と離型剤粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て作製されるトナー17〜25及び34〜38を作製した。
【0155】
製法1及び2で作製されたトナーを表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
《現像剤の調製》
キャリアの製造
〔フェライト芯材の製造〕
MnOを18mol%、MgOを4mol%、Fe23を78mol%を湿式ボールミルで2時間粉砕、混合し乾燥させた後に、900℃で2時間保持することにより仮焼成し、これをボールミルで3時間粉砕しスラリー化した。分散剤およびバインダーを添加し、スプレードライヤーにより造粒、乾燥し、その後1200℃で3時間本焼成を行い、抵抗値4.3×108Ω・cmのフェライト芯材粒子を得た。
〔被覆用樹脂の製造〕
先ず、界面活性剤として炭素数12のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた水溶液媒体中の濃度を0.3質量%とした乳化重合法により、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体を合成し、体積平均一次粒径0.1μm、重量平均分子量(Mw)200,000、数平均分子量(Mn)91,000、Mw/Mn=2.2、軟化点温度(Tsp)230℃およびガラス転移温度(Tg)110℃の樹脂微粒子を得た。なお、前記樹脂微粒子は、乳化状態において、水と共沸し、残存モノマー量を510ppmとした。
【0158】
次に、フェライト芯材粒子100質量部と前記樹脂微粒子2質量部とを攪拌羽根付き高速攪拌混合機に投入し、120℃で30分間攪拌混合して機械的衝撃力の作用を利用して体積平均粒径61μmの樹脂被覆キャリアを得た。
【0159】
現像剤の製造
前述の各トナー1〜38をそれぞれ上記キャリアと混合し、トナー濃度が6質量%の各色の現像剤を調製した。各色の現像剤を表2に示す様に組み合わせて現像剤セット1〜25、比較用現像剤セット26〜38とした。各現像剤セットの構成を表2に示す。
【0160】
【表2】

【0161】
《評価実験》
上記現像剤を用いて、図1に示すフルカラー画像形成装置を用いて画像形成実験を行った。なお、転写工程で感光体及び被転写媒体に付与される超音波は、以下の条件で発生するものを使用した。
【0162】
超音波振動装置の条件
超音波放射面と対向面の距離L2:4.25mm
超音波発生素子の
共振周波数 40kHz
出力電力 5W
また、定着条件は165℃に温度設定した熱ローラを用い、ラインスピードを420mm/secに設定した加熱ローラを用いた定着方式とした。
【0163】
上記条件にて、10万枚の画像形成を行った。画像形成は特に変動が大きくなる低温低湿環境(10℃/20%RH:以下LLと表記する)及び高温高湿環境(30℃/85%RH:以下HHと表記する)にて同様の評価を行った。
【0164】
具体的な評価項目は以下のとおりである。
転写性の評価
<転写効率>
超音波振動お影響による転写効率の変動を評価する尺度として1枚目に形成された画像と10万枚目の画像についての色差を評価した。色差は下記手法で評価を行った。
【0165】
色再現性の具体的な評価方法は、両環境における1枚目の形成画像及び10万枚目の形成画像各々における2次色(レッド、グリーン、ブルー)のソリッド画像部の色を「Macbeth Color−Eye7000」により測定し、CMC(2:1)色差式を用いて色差を測定した。
【0166】
CMC(2:1)色差式で求められた色差が5以下であれば、形成画像の色味の変化が許容できる範囲内にあり、良好な転写効率が維持されると判断される。
<画像乱れ>
画像乱れの評価として、転写時に付与される振動の影響による画像乱れを評価するために、4色のトナーを各ドットで構成させた線画の解像度(細線再現性)を評価した。線画は画像形成装置の現像方向に対して横方向に形成するもので、解像度は「本/mm」で10倍のルーペで線の識別を評価した。
【0167】
上記解像度評価では、線近傍におけるちりの発生状況も合わせて評価し、以下の4ランクに分類して判定した。
【0168】
A;ルーペでもライン周辺のちりが観察されない
B;目視ではわからないが、ルーペではライン周辺のちりが観察される
C;目視でライン周辺のちりが観察される
D;ライン間の判別が困難なほど激しくちりが発生。
定着性の評価
<耐オフセット性>
10万枚目の画像形成を行った後、白紙を印字してオフセットによる白紙への汚れの発生状況とヒートローラー表面のトナー汚れを目視にて評価した。なお、評価に使用する転写紙としては上質紙200g/m2の厚紙を使用し、紙進行方向(熱ローラー周方向)に平行な、幅0.3mm、長さ150mmの線画像を形成した。
【0169】
◎:白紙上の画像オフセット、ヒートローラー上のトナー汚れ共に全く見られない
○:白紙上の画像オフセット発生は確認されないが、ヒートローラー上にトナー汚れが認められる。
【0170】
×:白紙上に画像オフセットが確認される。
【0171】
評価ランクは、◎、○は合格、×は不合格である。
<巻付きジャムの発生>
10万枚目の画像形成を行った後、熱ローラの温度設定を165℃としたままラインスピードの設定を420mm/secから840mm/secに変化させ、ベタ画像の形成を行い巻き付き性を評価した。
【0172】
○:定着分離不良による紙詰まり発生がなく、定着分離爪痕も観察されない
△:定着分離不良による紙詰まり発生はないが、定着分離爪痕が若干認められた(実用上問題なし)
×:定着分離不良による紙詰まり発生(実用上問題有り)。
<感光体フィルミング>
前述の連続50万コピー後の感光体表面を目視観察により、フィルミングの有無を判定した。
<ハーフトーンの均一性>
感光体フィルミング等の転写性変動に伴うハーフトーン画像の均一性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0173】
ランクA:ムラのない均一な画像
ランクB:スジ状の薄いムラが存在するが実用上問題なし
ランクC:スジ状のムラが数本確認されるが実用上問題なし
ランクD:スジ状のはっきりしたムラが5本以上存在することが確認され、実用上問題有り。
【0174】
結果を表3及び表4に示す。
【0175】
【表3】

【0176】
【表4】

【0177】
表3、4から明らかな様に、本発明に係る画像形成方法によれば、良好な転写性能や定着性能、感光体へのフィルミング性能が発現されることが確認された。
【0178】
すなわち、本発明では低温低湿環境下、或いは高温高湿環境下といった苛酷な環境下で、超音波転写工程を有する画像形成を行っても、超音波からの振動の影響でトナーから離型剤が脱離せずに、高画質で美しいフルカラー画像が安定して作成できることが確認された。
【0179】
さらに、図3のフルカラー画像形成装置を用い、このときの転写条件や定着条件、及び、評価項目を前述の評価実験と同じものにして評価を行ったところ、上記表3と表4に示された結果とほぼ同等の結果が得られた。
【0180】
このように、今回行った評価実験より、本発明では、超音波を用いて転写を行う工程を有する画像形成装置で高画質のフルカラー画像を安定して形成できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明で好ましく使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】超音波転写により感光体ドラム上のトナー画像を中間転写体ベルト上に転写する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明に使用可能な他の画像形成装置の概略構成図である。
【図4】本発明に用いられる超音波装置の模式図である。
【図5】中間転写体ベルトと転写材との転写位置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0182】
1 カラー画像形成装置本体
11 感光体(ドラム、ベルト)
16 中間転写体ベルト
23 転写材(用紙)
40 超音波装置
41 ホーン
42 超音波発生素子
46 ジェル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上にトナーを現像する時、または、転写材上にトナー画像を転写する時に超音波振動を使用する画像形成方法において、
該画像形成方法で使用されるトナーは、
融点が40℃乃至75℃の範囲にある離型剤を含有し、
体積基準のメディアン径が3.0〜5.0μmであり、かつ、滑剤を添加されていることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記滑剤が、高級脂肪酸の金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記高級脂肪酸の金属塩の含水分量が0.1乃至2.5質量%であり、遊離脂肪酸量が0.01乃至0.7質量%であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記トナーは離型剤を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て作製されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記トナーは樹脂粒子と離型剤粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て作製されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−267516(P2006−267516A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85093(P2005−85093)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】