説明

画像形成装置、およびプログラム

【課題】通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減する。
【解決手段】稼動状態と省電力状態とが設定され、稼動状態にて通信部31にて受信されたデータ信号を処理する制御部30と、制御部30に省電力状態が設定されている期間に通信部31にて受信された画像形成命令以外のデータ信号を記憶するパケット記憶部315とを備え、パケット記憶部315にデータ信号が記憶されてからの経過時間が予め定めた規定時間を超え、または通信部31での画像形成命令の受信により、省電力状態に設定された制御部30を稼働状態に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク等の通信回線に接続されたプリンタや複写機等の画像形成装置では、通常、例えば通信回線から送られる画像形成命令の受信状況等に応じて、消費電力を低く抑える省電力状態が設定される。しかし、通信回線を介して画像形成命令等が送信されるタイミングを予測することは困難である。そのため、画像形成装置を省電力状態に移行させても、通信回線から画像形成命令等を受け取る通信機能部は稼働状態が維持される。
例えば特許文献1には、ネットワークインターフェース等の制御部としてメインCPUよりも消費電力の小さなサブCPUを設け、省エネモード(省電力状態)ではメインCPUへの通電をオフしてサブCPUのみに通電し、ネットワークインターフェース等からのデータ受信に応じてサブCPUからメインCPUに復帰トリガーを発行する技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−5029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、省電力状態に設定された画像形成装置では、通信機能部が通信回線から信号を受信した場合には、受信した信号が必ず処理する必要があるものか、必ずしも処理の必要がないものかに拘わらず、省電力状態から復帰する。そのため、頻繁に信号が送信される通信環境下では画像形成装置の復帰回数が増加し、省電力状態を設定することによる画像形成装置での消費電力の削減を充分に実現できない場合がある。
本発明は、通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、稼動状態と当該稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて画像形成命令に従って用紙に画像を形成する画像形成手段と、通信回線に接続され、当該通信回線を介して送信される前記画像形成命令を含む各種のデータ信号を受信する受信手段と、前記稼動状態と前記省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて前記受信手段にて受信された前記データ信号を処理する処理手段と、前記処理手段に前記省電力状態が設定されている期間に前記受信手段にて受信された前記画像形成命令以外の前記データ信号を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に前記データ信号が記憶されてからの経過時間が予め定めた規定時間を超えることにより、または前記受信手段での前記画像形成命令の受信により、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に設定する設定手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記設定手段が前記処理手段を前記省電力状態から前記稼動状態に設定した場合に、前記記憶手段に記憶された前記データ信号を当該処理手段に転送する転送制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3に記載の発明は、前記設定手段は、前記受信手段にて前記画像形成命令以外の予め定められたデータ信号を受信した場合にても、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項4に記載の発明は、前記設定手段は、予め定められたポート番号により当該装置が有する特定の機能を指定するデータ信号、または予め定められた外部装置から送信されたデータ信号を前記受信手段にて受信した場合にても、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置である。
請求項5に記載の発明は、前記設定手段は、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に移行させる時間を規定する前記規定時間が変更可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【0007】
請求項6に記載の発明は、コンピュータに、通信回線を介して送信される画像形成命令を含む各種のデータ信号を受信する機能と、受信された前記データ信号を処理する機能と、前記データ信号を処理する処理手段が稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態に設定されている期間に受信された前記画像形成命令以外の前記データ信号を記憶手段に記憶させる機能と、前記記憶手段に前記データ信号が記憶されてからの経過時間が予め定めた規定時間を超えることにより、または前記画像形成命令の受信により、省電力状態に設定された前記処理手段を稼働状態に設定する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
【0008】
請求項7に記載の発明は、省電力状態に設定された前記処理手段が稼働状態に設定された場合に、前記記憶手段に記憶された前記データ信号を当該処理手段に転送する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項6記載のプログラムである。
請求項8に記載の発明は、前記処理手段を稼働状態に設定する前記機能は、前記画像形成命令以外の予め定められたデータ信号を受信した場合にても、当該処理手段を稼働状態に設定することを特徴とする請求項6記載のプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べ、通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減することができる。
本発明の請求項2によれば、画像形成命令以外のデータ信号を一括して処理することができ、本発明を採用しない場合に比べ、処理手段での消費電力を低減することができる。
本発明の請求項3によれば、本発明を採用しない場合に比べ、ユーザが直ちに処理を行いたいデータ信号に関する設定の自由度を高めることができる。
本発明の請求項4によれば、画像形成装置の特定の機能を指定するデータ信号や、特定の外部装置から送信されたデータ信号に関しては直ちに処理を行うことができる。
本発明の請求項5によれば、通信環境に合わせて、データ信号の処理時間と消費電力の低減との双方が両立する設定を構築することができる。
【0010】
本発明の請求項6によれば、本発明を採用しない場合に比べ、通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減することができる。
本発明の請求項7によれば、画像形成命令以外のデータ信号を一括して処理することができ、本発明を採用しない場合に比べ、処理手段での消費電力を低減することができる。
本発明の請求項8によれば、本発明を採用しない場合に比べ、ユーザが直ちに処理を行いたいデータ信号に関する設定の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<画像形成システムの説明>
図1は、本実施の形態の画像形成システム1の構成例を示す図である。図1に例示した画像形成システム1では、例えばユーザ(操作者、作業者)の作業スペース(例えば、デスク)等に設置された外部装置の一例としての端末装置2と、端末装置2にて作成・記憶等された画像形成命令に基づき用紙上に画像を形成する画像形成装置の一例としての画像形成装置3とが、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等といった通信回線の一例としてのネットワーク4を介して双方向に通信可能に接続されている。通信回線としては、電話回線や衛星通信回線(例えば、デジタル衛星放送における空間伝送路)等を含んでもよい。
なお、ネットワーク4上には通常、複数の端末装置2と複数の画像形成装置3とが接続可能であるが、図1では、その一部として、それぞれ1台の端末装置2と1台の画像形成装置3とが接続された構成を示している。
【0012】
<端末装置の説明>
まず、端末装置2について説明する。
ネットワーク4に接続される端末装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、文書や図形、グラフィック、写真等からなる画像データを作成・記憶する。
図2は、本実施の形態の端末装置2の構成を説明するブロック図である。図2に示したように、端末装置2は、端末装置2全体の動作制御や各種の情報処理を行う制御部20、予め定めたアプリケーションソフトに従って画像データを作成する画像データ作成部21、ユーザからの指示入力の受付やユーザへの各種情報の表示を行うユーザインタフェース(UI)部22を備えている。また、端末装置2は、プログラムや各種データ等が記憶される外部記憶部23、ネットワーク4との通信を行い、例えば画像形成命令等のデータ信号を画像形成装置3に送信する通信部24を備えている。さらに、端末装置2は、端末装置2の各構成部に対し電力線27を介して電力を供給する電力供給部25を備えている。
この制御部20、画像データ作成部21、UI部22、外部記憶部23、通信部24、および電力供給部25は、PCI(Peripheral Components Interconnect bus)バス26に接続され、相互に信号や情報の送受信を行う。
【0013】
端末装置2の上記した構成部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、外部記憶部23に、端末装置2の各構成部を制御するためのオペレーティングシステム、オペレーティングシステムと協働して各構成部の特定の機能を実行するアプリケーションソフト、さらには、画像データ作成部21にて作成された画像データや外部記憶部23に記憶された画像データ等に関する画像形成装置3への画像形成命令(印刷命令:以下、「印刷ジョブ」)を生成するプリンタドライバプログラム等が記憶されている。そして、端末装置2の図示しないCPUが、これらのプログラムを外部記憶部23から主記憶装置(例えば、RAM)に読み込み、制御部20、画像データ作成部21、および通信部24等の各構成部の機能を実現する処理を行う。
【0014】
<端末装置での印刷ジョブの生成/送信処理の説明>
端末装置2においてユーザによる印刷指示がUI部22に入力されると、制御部20は、外部記憶部23からプリンタドライバプログラムを読み込み、起動させる。それにより、制御部20はプリンタドライバプログラムに従って、画像データ作成部21にて作成された画像データや外部記憶部23に記憶された画像データ等に関する印刷ジョブの生成処理を実行する。そして、制御部20は、生成した印刷ジョブを通信部24から画像形成装置3に送信する。
なお、「画像形成命令(印刷ジョブ)」とは、画像データに、例えば印刷部数、用紙サイズ、N−up(用紙の1ページ内に電子文書のNページを割り付ける印刷)、余白等の印刷形式を指定する各種属性データが付加された1つのまとまったデータの集合(印刷ジョブデータ)を意味する。
【0015】
<画像形成装置の説明>
次に、画像形成装置3について説明する。
本実施の形態の画像形成装置3は、直近の画像形成処理の終了から予め定められた時間を経過しても印刷ジョブ等を受信しない場合には、消費電力が低減される省電力状態に移行する。そして、画像形成装置3に省電力状態が設定された場合には、ネットワーク4を介して端末装置2から印刷ジョブが送信された際には、画像形成装置3は直ちに省電力状態から動作可能状態(稼働状態)に復帰する。その一方で、画像形成装置3に省電力状態が設定された場合において、ネットワーク4を介して送信されたデータ信号(以下、パケット)が印刷ジョブ以外のパケット(以下、「一般パケット」)であった場合には、画像形成装置3は、一般パケットを記憶しておき、印刷ジョブが送信された時点で、または予め定めた時間を経過した時点で、省電力状態から稼働状態に復帰する。そして、稼働状態に復帰した後に一般パケットをまとめて処理する。ここでの「パケット」とは、送信先アドレス等の制御情報が付加された一まとまりのデータからなる信号(データ信号)をいい、印刷ジョブもネットワーク4をパケットとして送信される。
【0016】
このように、本実施の形態の画像形成装置3では、省電力状態にてネットワーク4を介して送信された一般パケットについては一旦記憶しておく。そして、印刷ジョブが送信された時点で、または予め定めた時間を経過した時点で画像形成装置3を省電力状態から復帰させ、記憶しておいたすべての一般パケットを一括処理する。それにより、印刷ジョブ以外であって画像形成装置3にとって必ずしも処理する必要のないパケット(一般パケット)を受信した場合にも、その後に印刷ジョブが送信されるか、または予め定めた時間を経過するまでは省電力状態が維持されるので、省電力状態からの復帰頻度が減少する。その結果、ネットワーク(通信回線)4に接続された画像形成装置3での消費電力が低減される。
また、本実施の形態の画像形成装置3では、印刷ジョブ以外の一般パケットも受け付けるので、必要に応じて送信元への応答が行われる。
【0017】
一般に、ネットワークに接続された画像形成装置には、省電力状態が設定された場合においても、画像形成装置自身宛の印刷ジョブ以外にもネットワークを介して様々なパケットが送信される。例えば、SNMP(Simple Network Management Protocol)を用いて画像形成装置に通信をしたいか否かの問い合わせメッセージを順番に送り、返答があれば送信権を与えて送信させるポーリングパケットや、PING(Packet INternet Groper)を用いてネットワーク疎通を確認したい画像形成装置から応答が行われるかを確認するためのパケット等が送信される。これらのパケットは、印刷ジョブとは異なり、画像形成装置にとっては必ずしも処理する必要のないものである。
しかし、画像形成装置においては、受信したパケットが印刷ジョブか否かを判断する必要がある。そのため、画像形成装置にとって必ずしも処理する必要のない例えばポーリングパケット等が送られた場合においても、省電力状態が設定された画像形成装置は、パケットを判断するため、パケットを受信する都度、省電力状態から復帰していた。それにより、必ずしも処理する必要のないパケットの送信頻度が高い通信環境下では、省電力状態を設定しても画像形成装置での消費電力の削減量が限定的なものとなっていた。
【0018】
それに対して、本実施の形態の画像形成装置3においては、印刷ジョブ以外の一般パケットを受信した場合には、受信したすべての一般パケットを記憶しておく。そして、その後に印刷ジョブが送信されるか、または予め定めた時間を経過した後に、画像形成装置3を省電力状態から復帰させる。そして、記憶しているすべての一般パケットを一括処理する。それにより、画像形成装置3は、画像形成装置3にとって必ずしも処理する必要のないパケットにより省電力状態から復帰する頻度が減少する。その結果として、省電力状態に移行した後の画像形成装置3の消費電力が低減される。
【0019】
引き続いて、上記した動作を行う本実施の形態の画像形成装置3の構成について述べる。
図3は、本実施の形態の画像形成装置3の構成を説明するブロック図である。図3に示したように、画像形成装置3は、画像形成装置3全体の動作制御や画像処理を含む各種の情報処理を行う制御部30、ネットワーク4との通信を行ってデータ信号や情報を送受信する受信手段の一例としての通信部31を備えている。
【0020】
また、画像形成装置3は、ネットワーク4を介して端末装置2から送信される印刷ジョブに従って用紙上に画像を形成する画像形成手段の一例としての画像出力部32、ユーザからの指示入力の受付やユーザへの各種情報の表示を行うユーザインタフェース(UI)部33を備えている。画像出力部32としては、例えば電子写真方式の画像形成エンジンが用いられる。
加えて、画像形成装置3は、画像形成装置3の各構成部を制御するためのオペレーティングシステム、オペレーティングシステムと協働して各構成部の特定の機能を実行するアプリケーションソフト等の各種のプログラムや、画像形成命令等の各種のデータが記憶される外部記憶部34を備えている。
【0021】
また、画像形成装置3は、商用電源から供給される例えば100Vの交流電力または商用電源からの交流電力を予め定めた直流電圧(例えば、24V,12V,5V,3V)に変換して各構成部に供給する電力供給部35を備えている。電力供給部35には、画像出力部32等への例えば交流電圧100V、直流電圧24V、12V等の駆動系電力を供給する第1電力線351と、制御部30や通信部31等への例えば電圧5Vや3Vの制御系電力を供給する第2電力線352と、通信部31への制御系電力を供給する第3電力線353とが接続されている。
そして、電力供給部35は、制御部30にて設定される画像形成装置3の動作モード(動作状態)に応じて、第1電力線351への駆動系電力の供給や停止を設定し、第2電力線352への制御系電力の供給や停止を設定する。一方、電力供給部35は、第3電力線353への制御系電力は常時供給する。
【0022】
画像形成装置3に配置された上記の制御部30、通信部31、画像出力部32、UI部33、外部記憶部34、および電力供給部35は、PCIバス37に接続され、相互に信号の送受信を行う。
また、画像形成装置3の上記した構成部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、画像形成装置3の図示しないCPUが、オペレーティングシステムやアプリケーションソフト等の各種のプログラムを外部記憶部34から主記憶装置(例えば、RAM)に読み込み、制御部30、通信部31、およびUI部33等の各構成部の機能を実現する処理を行う。
【0023】
<画像形成装置の制御部の機能の説明>
次に、画像形成装置3の制御部30の機能について説明する。
画像形成装置3の制御部30は、まず、ネットワーク4を介して画像形成装置3自身に向けて送信された印刷ジョブ等のデータ信号を処理する機能を有する。すなわち、制御部30は、印刷ジョブ等のデータ信号を処理する処理手段として機能する。例えば、制御部30は、ネットワーク4を介して送信された印刷ジョブに従って印刷ジョブに含まれる画像データに処理(画像処理)を施し、処理済みの画像データを画像出力部32に転送する。
【0024】
また、制御部30は、印刷ジョブの受信状況等に応じて画像形成装置3の動作モード(動作状態)を制御する機能を有する。図4は、本実施の形態の画像形成装置3にて設定される動作モードを説明する図である。図4に示したように、制御部30は、動作モードとして稼動状態の一例としての「画像形成動作モード」および「スタンバイモード」と、省電力状態の一例としての「スリープモード」とを選択的に設定する。
画像形成動作モードは、画像処理済みの画像データが画像出力部32に転送された場合に設定され、画像出力部32にて印刷ジョブに従った用紙上への画像形成動作を実行している動作状態である。また、スタンバイモードは、例えば端末装置2から印刷ジョブを取得した場合やUI部33にてユーザからの指示入力があった場合に設定される。そしてスタンバイモードは、例えば制御部30にて印刷ジョブに含まれる画像データの全部または一部に関する画像処理が終了した際に直ちに画像形成動作モードに移行する動作状態である。さらにまた、スタンバイモードは、画像形成動作の終了後の予め定めた期間においても設定される場合がある。画像形成動作モードやそれに準ずるスタンバイモードでは、電力供給部35から第1電力線351を介して画像形成装置3内の画像形成に関する動作を行う構成部に駆動系電力が供給され、第2電力線352を介して画像形成装置3内の制御・処理に関する動作を行う構成部に制御系電力が供給される。
【0025】
スリープモードは、例えば画像形成動作が終了しスタンバイモードが設定された後の予め定めた時間長の待機時間Tを経過しても再び印刷ジョブの受信やUI部33でのユーザからの指示入力がない場合に設定される動作状態である。スリープモードでは、通信部31だけが動作を継続し、それ以外の制御部30や画像出力部32等の構成部は動作を停止する。すなわち、スリープモードにおいては、電力供給部35から第3電力線353を介した通信部31への制御系電力の供給は継続される。その一方で、電力供給部35から第1電力線351を介した画像形成装置3内の画像形成に関する動作を行う構成部への駆動系電力が停止され、第2電力線352を介した画像形成装置3内の制御・処理に関する動作を行う構成部への制御系電力が停止される。それにより、スリープモードによる画像形成装置3の省電力化が図られる。
【0026】
制御部30は、例えばスタンバイモードが設定された後の待機時間Tを経過しても印刷ジョブの受信等がない場合には、スリープモードへの移行を指示するスリープモード移行信号を生成する。なお、ここでの待機時間Tは“0”も含み、スタンバイモードが設定された直後にスリープモード移行信号を生成してもよい。
一方、スリープモードが設定された状態で印刷ジョブを受信した場合、およびスリープモードが設定された状態で印刷ジョブ以外のパケットを受信し予め定めた時間を経過した場合には、電力供給部35が制御部30に対して第2電力線352から制御系電力の供給を開始する。それにより、制御部30は停止状態から復帰して、スリープモードからの復帰を指示するスリープモード復帰信号を生成する。
【0027】
そして、制御部30は、生成したスリープモード移行信号またはスリープモード復帰信号をPCIバス37を介して電力供給部35に送信する。電力供給部35が制御部30からスリープモード移行信号を取得した場合には、第1電力線351からの駆動系電力の供給を停止し、第2電力線352からの制御系電力の供給を停止する。それにより、通信部31以外の構成部は動作を停止する。
また、電力供給部35が制御部30からスリープモード復帰信号を取得した場合には、第1電力線351からの駆動系電力の供給を開始し、第2電力線352からの制御系電力の供給を開始する。それにより、制御部30や画像出力部32等といった画像形成処理に関連する構成部が動作可能状態(稼動状態)に設定される。
【0028】
<画像形成装置の通信部の説明>
続いて、画像形成装置3の通信部31について説明する。
画像形成装置3の通信部31は、ネットワーク4との間でデータ通信を行う。通信部31は、上記図3に示したように、制御部30とネットワーク4との間のデータ通信を制御する通信制御部311、通信制御部311とPCIバス37との間のデータの送受信を行うPCIインターフェース(PCI_I/F)部312、通信制御部311とネットワーク4との間のデータの送受信を行うネットワークインターフェース(NET_I/F)部313を備えている。
また、通信部31は、NET_I/F部313から受信したパケットが自身宛の印刷ジョブか否かを判定するパケット判定部314、印刷ジョブ以外のパケット(データ信号)を記憶する記憶手段の一例としてのパケット記憶部315を備えている。
【0029】
本実施の形態の画像形成装置3では、通信部31は、画像形成動作モード、スタンバイモード、およびスリープモードの何れの設定時においても、ネットワーク4との間でデータ通信を行う。そして、画像形成装置3にスリープモード(省電力状態)が設定された場合において、通信部31が端末装置2からの印刷ジョブを取得(受信)した場合には、通信部31は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する指示信号を送信する。それにより、電力供給部35は制御部30に対して制御系電力の供給を開始し、制御部30を停止状態から復帰させる。
一方、画像形成装置3にスリープモードが設定された場合において、通信部31がネットワーク4を介して送信された印刷ジョブ以外のパケットを取得した場合には、通信部31は、受信した印刷ジョブ以外の一般パケットをパケット記憶部315に記憶する。そして、通信部31は、最初の一般パケットの取得(受信)から時間計測を開始し、印刷ジョブを取得するまで、または、計測時間が予め定めた時間を経過するまで、ネットワーク4を介して送信される一般パケットをパケット記憶部315に記憶する処理を継続して行う。その後、印刷ジョブを取得するか、または計測時間が予め定めた時間を経過した時点で、通信部31は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する指示信号を送信する。それにより、電力供給部35は制御部30に対して制御系電力の供給を開始し、制御部30を停止状態から復帰させる。
このように、通信部31および電力供給部35は、制御部30を停止状態(省電力状態)から復帰させ、稼動状態に設定する設定手段としても機能する。
【0030】
<画像形成装置でのパケット受信処理の説明>
図5および図6は、本実施の形態の画像形成装置3がパケットに関する受信処理を行う際の処理内容の一例を示すフローチャートである。
まず図5のフローチャートに示したように、本実施の形態の画像形成装置3では、通信部31の通信制御部311は、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する(ステップ101)。NET_I/F部313がネットワーク4からのパケットを取得すると(ステップ101でYes)、通信制御部311は、取得したパケットをパケット判定部314に転送する(ステップ102)。そして、通信制御部311は、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の印刷ジョブであるか否かをパケット判定部314にて判定させる(ステップ103)。
一方、NET_I/F部313にてパケットが取得されない場合には、通信制御部311はそのままネットワーク4からのパケットの監視を継続する(ステップ101でNo)。
【0031】
パケット判定部314での判定の結果、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の印刷ジョブであって(ステップ103でYes)、画像形成装置3にスリープモードが設定されている場合には(ステップ104でYes)、通信制御部311は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する(ステップ105)。具体的には、通信制御部311は、制御部30への制御系電力の供給を指示する指示信号を生成して、PCIバス37を介して電力供給部35に出力する。
それに対応して、電力供給部35は、制御部30に対する制御系電力の供給を開始する(ステップ106)。それにより、制御部30は停止状態から復帰して、画像形成装置3をスタンバイモードに移行させる(ステップ107)。
【0032】
通信制御部311は、画像形成装置3がスタンバイモードに移行した後、取得した画像形成装置3自身宛の印刷ジョブを制御部30に転送する(ステップ108)。
また、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の印刷ジョブであって(ステップ103でYes)、画像形成装置3に画像形成動作モードまたはスタンバイモードがすでに設定されている場合には(ステップ104でNo)、通信制御部311は、取得した画像形成装置3自身宛の印刷ジョブを直ちに制御部30に転送する(ステップ108)。
それにより、制御部30は、印刷ジョブに含まれる画像データに画像処理を施し、画像処理済みの画像データを画像出力部32に転送する。そして、画像出力部32にて画像形成動作が実行される。
ステップ108にて印刷ジョブを制御部30に転送した後には、通信制御部311は、ステップ101に戻り、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する。
【0033】
次に、パケット判定部314での判定の結果、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の印刷ジョブ以外のパケット(一般パケット)であって(ステップ103でNo)、画像形成装置3にスリープモードが設定されている場合には(ステップ109でYes)、通信制御部311は、取得した一般パケットをパケット記憶部315に記憶させる(ステップ110)。さらに、通信制御部311は、タイマー(不図示)を起動させて時間計測を開始する(ステップ111)。
一方、パケット判定部314での判定の結果、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の一般パケットであって(ステップ103でNo)、画像形成装置3に画像形成動作モードまたはスタンバイモードがすでに設定されている場合には(ステップ109でNo)、通信制御部311は、取得した一般パケットを制御部30に転送する(ステップ112)。
それにより、制御部30は、一般パケットを解析し、必要に応じて送信元に応答する。
ステップ112にて一般パケットを制御部30に転送した後には、通信制御部311は、ステップ101に戻り、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する。
【0034】
ステップ111にて通信制御部311が時間計測を開始した後、通信制御部311は、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する(ステップ113)。NET_I/F部313がネットワーク4からのパケットを取得すると(ステップ113でYes)、通信制御部311は、取得したパケットをパケット判定部314に転送する(ステップ114)。
一方、NET_I/F部313にてパケットが取得されない場合には、通信制御部311はそのままネットワーク4からのパケットの監視を継続する(ステップ113でNo)。
【0035】
次に図6のフローチャートに移り、通信制御部311は、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の印刷ジョブであるか否かをパケット判定部314にて判定させる(ステップ115)。
パケット判定部314での判定の結果、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の印刷ジョブである場合には(ステップ115でYes)、画像形成装置3にはスリープモードが設定されているので(上記ステップ109でYes)、通信制御部311は、タイマーでの時間計測を停止させた後(ステップ116)、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する(ステップ117)。
それに対応して、電力供給部35は、制御部30に対する制御系電力の供給を開始する(ステップ118)。それにより、制御部30は停止状態から復帰して、画像形成装置3をスタンバイモードに移行させる(ステップ119)。
【0036】
通信制御部311は、画像形成装置3がスタンバイモードに移行した後、取得した画像形成装置3自身宛の印刷ジョブと、パケット記憶部315に記憶された一般パケットとを制御部30に転送する(ステップ120)。ここでの通信制御部311は、パケット記憶部315に記憶された一般パケットを制御部30に転送する転送制御手段として機能する。
それにより、制御部30は、印刷ジョブに含まれる画像データに画像処理を施し、画像処理済みの画像データを画像出力部32に転送する。そして、画像出力部32にて画像形成動作が実行される。さらに、制御部30は、一般パケットの各々を解析し、必要に応じて一般パケットの送信元への応答を行う。
ステップ120にて印刷ジョブおよび一般パケットを制御部30に転送した後には、通信制御部311は、ステップ101に戻り、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する。
【0037】
パケット判定部314での判定の結果、取得したパケットが画像形成装置3自身宛の一般パケットである場合には(ステップ115でNo)、画像形成装置3にはスリープモードが設定されているので(上記ステップ109でYes)、通信制御部311は、取得した一般パケットをパケット記憶部315に記憶させる(ステップ121)。さらに、通信制御部311は、タイマーでの計測時間が予め定めた規定時間を経過したか否かを判断する(ステップ122)。ここでの「規定時間」としては、数秒から数10秒程度の時間が設定される。
タイマーでの計測時間が予め定めた規定時間を経過している場合(ステップ122でYes)、通信制御部311は、タイマーでの時間計測を停止させた後(ステップ123)、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する(ステップ124)。
それに対応して、電力供給部35は、制御部30に対する制御系電力の供給を開始する(ステップ125)。それにより、制御部30は停止状態から復帰して、画像形成装置3をスタンバイモードに移行させる(ステップ126)。
【0038】
通信制御部311は、画像形成装置3がスタンバイモードに移行した後、パケット記憶部315に記憶された一般パケットを制御部30に転送する(ステップ127)。ここでの通信制御部311は、パケット記憶部315に記憶された一般パケットを制御部30に転送する転送制御手段として機能する。
それにより、制御部30は、一般パケットの各々を解析し、必要に応じて一般パケットの送信元への応答を行う。
ステップ127にて一般パケットを制御部30に転送した後には、通信制御部311は、ステップ101に戻り、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する。
【0039】
また、タイマーでの計測時間が予め定めた規定時間を経過していない場合(ステップ122でNo)、通信制御部311は、通信制御部311は、ステップ113に戻り、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する。
【0040】
なお、本実施の形態では、通信部31にて印刷ジョブを取得した場合においてスリープモードが設定された画像形成装置3を直ちにスタンバイモードに移行させるように構成した。このような画像形成装置3を直ちにスタンバイモードに移行させるパケットとして、印刷ジョブ以外にも特定のパケットを設定してもよい。例えば、予め定められたポート番号により画像形成装置3での特定の機能(プログラム、プロトコル)を指定するパケットや、特定の端末装置2から送信されたパケット等を取得した場合において、スリープモードが設定された画像形成装置3を直ちにスタンバイモードに移行させるように構成してもよい。それにより、このようなパケットは、制御部30にて直ちに処理される。
また、このような画像形成装置3を直ちにスタンバイモードに移行させるパケットを、ユーザがUI部32から選択や変更が可能なように構成してもよい。
【0041】
さらに、一般パケットをパケット記憶部315に記憶させておく時間を、ユーザがUI部32から選択や変更が可能なように構成してもよい。
また、通信部31にて如何なるデータ信号を受信した場合においてもスリープモードが設定された画像形成装置3を直ちにスタンバイモードに移行させるように設定するモードとの切り替えを行えるように構成してもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置3は、省電力状態(スリープモード)の設定期間に印刷ジョブ以外のパケットを受信した場合には、受信した印刷ジョブ以外のすべてのパケットを記憶しておく。そして、印刷ジョブが送信されるか、または予め定めた時間を経過した後に、画像形成装置3を省電力状態から復帰させる。そして、記憶しているすべての一般パケットを一括処理する。それにより、画像形成装置3は、画像形成装置3にとって必ずしも処理する必要のないパケットを受信した場合にも、その後に印刷ジョブが送信されるか、予め定めた時間を経過するまでは省電力状態が維持され、省電力状態からの復帰頻度が減少する。その結果、ネットワーク(通信回線)4に接続された画像形成装置3での消費電力が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態の画像形成システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態の端末装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】本実施の形態の画像形成装置の構成を説明するブロック図である。
【図4】本実施の形態の画像形成装置にて設定される動作モードを説明する図である。
【図5】本実施の形態の画像形成装置がパケットに関する受信処理を行う際の処理内容の一例を示すフローチャートの前半部分である。
【図6】本実施の形態の画像形成装置がパケットに関する受信処理を行う際の処理内容の一例を示すフローチャートの後半部分である。
【符号の説明】
【0044】
1…画像形成システム、2…端末装置、3…画像形成装置、4…ネットワーク、20,30…制御部、21…画像データ作成部、22,33…ユーザインタフェース(UI)部、24,31…通信部、32…画像出力部、35…電力供給部、311…通信制御部、314…パケット判定部、315…パケット記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼動状態と当該稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて画像形成命令に従って用紙に画像を形成する画像形成手段と、
通信回線に接続され、当該通信回線を介して送信される前記画像形成命令を含む各種のデータ信号を受信する受信手段と、
前記稼動状態と前記省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて前記受信手段にて受信された前記データ信号を処理する処理手段と、
前記処理手段に前記省電力状態が設定されている期間に前記受信手段にて受信された前記画像形成命令以外の前記データ信号を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に前記データ信号が記憶されてからの経過時間が予め定めた規定時間を超えることにより、または前記受信手段での前記画像形成命令の受信により、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記設定手段が前記処理手段を前記省電力状態から前記稼動状態に設定した場合に、前記記憶手段に記憶された前記データ信号を当該処理手段に転送する転送制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記受信手段にて前記画像形成命令以外の予め定められたデータ信号を受信した場合にても、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定手段は、予め定められたポート番号により当該装置が有する特定の機能を指定するデータ信号、または予め定められた外部装置から送信されたデータ信号を前記受信手段にて受信した場合にても、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記省電力状態に設定された前記処理手段を前記稼働状態に移行させる時間を規定する前記規定時間が変更可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
コンピュータに、
通信回線を介して送信される画像形成命令を含む各種のデータ信号を受信する機能と、
受信された前記データ信号を処理する機能と、
前記データ信号を処理する処理手段が稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態に設定されている期間に受信された前記画像形成命令以外の前記データ信号を記憶手段に記憶させる機能と、
前記記憶手段に前記データ信号が記憶されてからの経過時間が予め定めた規定時間を超えることにより、または前記画像形成命令の受信により、省電力状態に設定された前記処理手段を稼働状態に設定する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
省電力状態に設定された前記処理手段が稼働状態に設定された場合に、前記記憶手段に記憶された前記データ信号を当該処理手段に転送する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項6記載のプログラム。
【請求項8】
前記処理手段を稼働状態に設定する前記機能は、前記画像形成命令以外の予め定められたデータ信号を受信した場合にても、当該処理手段を稼働状態に設定することを特徴とする請求項6記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−162792(P2010−162792A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7860(P2009−7860)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】