説明

画像形成装置、画像形成プログラム、及び画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】原画像が配置される領域を除く印刷領域は印刷しない、つまり透明で印刷し、被印刷媒体の色を生かすことを可能とする画像形成装置、画像形成プログラム、及び画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【解決手段】画像の色を表現するために使用可能な色の全てについて、印刷対象である原画像データを構成する画素に使用されている回数がカウントされる(S5)。使用回数がゼロの色である不使用色、または、最も使用回数が少ない色が、背景色に設定される(S13またはS11)。印刷可能領域の全体を背景色で塗りつぶした画像データに原画像データが貼り付けられ(S18)、OSを通じてプリンタドライバに出力される(S19)。設定された背景色は、プリンタドライバで透明色として使用するためにHDDの特定の記憶エリアに保存される(S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成プログラム、及び画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関し、詳細には、原画像が配置される領域以外の印刷領域を透明とすることが可能な画像形成装置、画像形成プログラム、及び画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被印刷媒体への印刷を有色(カラー)で行うために、カラーの画素を形成するインク(以下、「色インク」という。)を用いるインクジェット印刷装置が知られている。このインクジェット印刷装置では、インク供給源からインクジェットヘッドの複数の吐出チャンネルに色インクを導き、発熱素子や圧電素子等のアクチュエータを選択的に駆動させることで、吐出チャンネルの先端に設けられたノズルから色インクを吐出させている。そして、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色の三原色に対応する色インクそれぞれの吐出量を、画像を形成する画素それぞれに応じて調整し、カラーの印刷を行っている。また、黒色の画素は、色インクを混合させたり、ブラック(K)のインクを用いたりすることで形成している。
【0003】
一方、上記のCMYを三原色とする色インクでは白色の画素を形成することができないため、通常は、下地の色が白色の被印刷媒体において、白色の画素の部分に対し色インクの吐出を行わないことによって白色を表現する手法が取られる。また、上記の色インクに加えて白(W)のインクを使用可能なプリンタが知られており、このようなプリンタを用いれば、被印刷媒体の下地の色が白色でない場合でも、被印刷媒体上に白色の画素を形成することが可能になる。
【0004】
アプリケーションで作成した画像をプリンタで印刷する場合、プリンタドライバは、アプリケーションから出力された画像のデータ(画像データ)を印刷データに変換し、プリンタに送信する。具体的には、アプリケーションで作成された画像データを構成する個々のオブジェクト(ベクター形式で描かれたベクターオブジェクトやビットマップ形式で描かれたビットマップオブジェクト)が、OSに定められた形式に従ってコマンド化され、アプリケーションからプリンタドライバに対し出力される。プリンタドライバでは、受信した各コマンドをスプールし、順に展開してラスタライズし、印刷可能領域(被印刷媒体に対し印刷を行うことのできる範囲)分の印刷イメージを、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)を三原色とする画素により表現したデータ(ラスタデータ)を作成する。さらに、作成したラスタデータに擬似階調処理を施し、CMYを三原色とする印刷階調により上記各画素を表現することによって、色インクの吐出イメージとしてのデータ(吐出マップデータ)を作成する。これにプリンタ制御用のコマンド等を付加して印刷データを作成し、プリンタに対し送信する。このように作成される印刷データを受信したプリンタでは、印刷データに従って各色の色インクを被印刷媒体上に吐出することで印刷を行う。
【0005】
ここで、アプリケーションで作成される画像の大きさや形状は、必ずしも印刷可能領域と一致するとは限らない。このため、一般的には、印刷可能領域内における画像の配置位置を除く領域(画像の余白部分)は、背景色(通常は白色)として扱われ、具体的に、ラスタデータで背景色の画素に対しては色インクの吐出が行われないように吐出マップデータが作成される。しかし、白インクを用いるプリンタで印刷を行う場合、背景色が白色であるとして扱われると、その画素に対して白インクが吐出される吐出マップデータがプリンタドライバによって作成されてしまうことになる。そこで、アプリケーションで背景色として使用する色(例えばわずかに黒色が混ざった白)と白色とを区別し、その背景色を色インクや白インクの吐出を行わない透明色として予め設定しておくことで、印刷可能領域内における画像の配置位置を除く領域に対し白インク等が吐出されないようにすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
ところで、白インクを用いるプリンタであれば、被印刷媒体の下地の色が白色でない場合に、予め白インクを下地として吐出した上に色インクを重ねて吐出し、画像の印刷を行うことで、下地の色や明度の影響を受けない高品位の画像を印刷することも可能である。これを実現するには、プリンタドライバにおいて通常の印刷データの作成とは別に、印刷可能領域内で画像を配置する位置に白インクを吐出するようにした印刷データを作成する必要がある。そこで、プリンタドライバでは、ラスタデータ作成の際に、印刷可能領域分の印刷イメージの中で、画像の配置位置や大きさを認識し、画像データにマスク処理を行った、オーバーレイ用のラスタデータを作成する(例えば、特許文献2参照。)。そして、作成したオーバーレイ用のラスタデータを基に、マスク部分を白色、その他の部分を透明色として印刷する印刷データを作成し、通常の印刷データに先立ちプリンタに送信して白インクによる印刷を行えばよい。
【特許文献1】特開2003−231300号公報
【特許文献2】特開2000−163238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、白インクの吐出を行う白色の部分と、白インク等の吐出が行われないようにする透明色を、ユーザが自ら指定しなければならないという煩わしさがある。さらに、アプリケーションで作成する画像が印刷可能領域より小さい場合は、わざわざ背景色をつけて印刷可能領域サイズの画像データを作る必要がある。また、アプリケーションによっては、プリンタドライバに出力するオブジェクトとして、画像と背景とが一体となったビットマップオブジェクトを作成し、出力するものがある。このようなオブジェクトを受信したプリンタドライバでは、画像が印刷可能領域内のどの位置に、どの大きさで配置されているか特定できず(つまり画像と背景とを区別できず)、特許文献2のようなオーバーレイ用のラスタデータを作成することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、原画像が配置される領域を除く印刷領域は印刷しない、つまり透明で印刷し、被印刷媒体の色を生かすことを可能とする画像形成装置、画像形成プログラム、及び画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の画像形成装置は、印刷データ作成の基になる画像データを、前記印刷データを作成する印刷データ作成装置に出力する画像形成装置であって、原画像の画像データである原画像データを入力する原画像データ入力手段と、画像を表現するために使用される色である画像表現色のうち、前記原画像データ入力手段によって入力された前記原画像データを構成する画素に使用されていない前記画像表現色である不使用色を特定する不使用色特定手段と、前記不使用色特定手段により前記不使用色が特定された場合に、前記不使用色を、印刷可能領域内の前記原画像が配置される領域以外の領域である背景領域を構成する画素に使用する背景色として設定する第1の背景色設定手段と、前記背景領域を構成する前記画素に前記背景色を使用して、前記印刷領域内に前記原画像を配置した画像の画像データを作成する画像データ作成手段と、前記画像データ作成手段によって作成された前記画像データを前記印刷データ作成装置に出力する画像データ出力手段と、前記背景色を、前記印刷データ作成装置が参照可能な背景色記憶手段に記憶させる背景色保存手段とを備えている。
【0010】
また、請求項2に係る発明の画像形成装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記不使用色特定手段により、前記不使用色が特定されない場合に、前記原画像データを構成する前記画素に使用されている特定の画像表現色で表現された前記画素の前記特定の画像表現色を他の画像表現色へ変更する色変更手段と、前記色変更手段による色の変更によって、前記不使用色となった前記特定の画像表現色を、前記背景色として設定する第2の背景色設定手段とをさらに備え、前記画像データ作成手段は、前記背景領域を構成する前記画素に、前記第2の背景色設定手段によって設定された前記背景色を使用して、前記印刷領域内に前記原画像を配置した画像の画像データを作成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明の画像形成装置は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記色変更手段は、前記特定の画像表現色を構成する色成分の内、いずれか1つの成分の階調値を変更することにより、前記特定の画像表現色を前記他の画像表現色に変更することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明の画像形成装置は、請求項2または3に記載の発明の構成に加え、前記他の画像表現色は、前記特定の画像表現色が位置する画素の隣の画素に使用されている画像表現色であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明の画像形成装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記不使用色特定手段は、前記画像表現色の各々について、前記原画像データを構成する前記画素に使用されている回数である使用回数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によってカウントされた前記使用回数がゼロの前記画像表現色があるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって、前記使用回数がゼロの前記画像表現色があると判断された場合に、前記使用回数がゼロの前記画像表現色を前記不使用色として特定する特定手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に係る発明の画像形成装置は、請求項2乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記不使用色特定手段は、前記画像表現色の各々について、前記原画像データを構成する前記画素に使用されている回数である使用回数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によってカウントされた前記使用回数がゼロの前記画像表現色があるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって、前記使用回数がゼロの前記画像表現色があると判断された場合に、前記使用回数がゼロの前記画像表現色を前記不使用色として特定する特定手段とを備えている。
【0015】
また、請求項7に係る発明の画像形成装置は、請求項6に記載の発明の構成に加え、前記特定の画像表現色は、前記カウント手段によりカウントされた前記使用回数が最も少ない画像表現色であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項8に係る発明の画像形成プログラムは、請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0017】
また、請求項9に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、請求項8に記載の画像形成プログラムを記憶していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明の画像形成装置では、画像を表現するために使用される画像表現色のうち、原画像データを構成する画素に使用されていない不使用色が、印刷可能領域内の原画像が配置される領域以外の領域である背景領域に使用される背景色として設定される。そして、背景領域に背景色を使用して、印刷可能領域内に原画像を配置した画像の画像データが印刷データ作成装置に出力されるとともに、背景色が背景色記憶手段に保存される。これにより、印刷データ作成装置は、出力された画像データおよび背景色記憶手段に記憶された背景色に基づいて、背景領域には印刷を行わないように設定された印刷データを作成することが可能となる。このように、原画像データに基づいて特定される不使用色が、自動的に透明色である背景色に設定されるので、ユーザが、原画像が配置される領域以外の背景領域を特定し、透明色とする色を特に指定しなくても、背景領域を透明とすることができる。特に、白インクを用いたプリンタで印刷する場合には、背景領域が自動的に白インクで印刷されてしまう虞がなく、被印刷媒体の色を生かした印刷が可能になり、より多様なユーザニーズに応えることができる。また、原画像には使用しない透明色を、予め定めておく必要がないため、原画像に使用する色が制限されることがない。
【0019】
請求項2に係る発明の画像形成装置では、不使用色が特定されない場合に、原画像データを構成する画素に使用されている特定の画像表現色を他の画像表現色へ変更する。その結果、不使用色となる特定の画像表現色が、背景色として設定される。したがって、請求項1に係る発明の効果に加え、そのままでは不使用色がない場合でも、不使用色が作り出されて背景色とされるので、自動的に背景領域を透明とすることができる。
【0020】
請求項3に係る発明の画像形成装置では、不使用色が特定されない場合に、特定の画像表現色を構成する色成分の内、いずれか1つの成分の階調値を変更することにより、特定の画像表現色を他の画像表現色へ変更する。したがって、請求項2に記載の発明の効果に加え、ユーザからみて、不自然でない程度の色変更で、不使用色を作り出すことができる。
【0021】
請求項4に係る発明の画像形成装置では、不使用色が特定されない場合に、特定の画像表現色を、その特定の画像表現色が位置する画素の隣の画素の画像表現色に変更する。隣接する画素同士は、近似した色であることが多く、また、画素1個分であれば、同じ色が連続する部分が増えても面積的には大きな差異は生じない。したがって、請求項2または3に記載の発明の効果に加え、ユーザからみて、原画像の色が変わったと認識されない程度の色変更で、不使用色を作り出すことができる。
【0022】
請求項5に係る発明の画像形成装置では、不使用色を特定するにあたり、画像表現色の各々について、すべての画素に使われている使用回数がカウントされ、使用回数がゼロの画像表現色があれば、その画像表現色が不使用色として特定される。したがって、請求項1に記載の発明の効果に加え、簡易な構成により、不使用色を容易に特定することができる。
【0023】
請求項6に係る発明の画像形成装置では、不使用色を特定するにあたり、画像表現色の各々について、すべての画素に使われている使用回数がカウントされ、使用回数がゼロの画像表現色があれば、その画像表現色が不使用色として特定される。したがって、請求項2乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、簡易な構成により、不使用色を容易に特定することができる。
【0024】
請求項7に係る発明の画像形成装置では、使用回数が最も少ない画像表現色の画素を、他の画像表現色に変更する。すなわち、原画像データを構成する画素中、色変更が行われる画素の数は、最小限に抑えられる。したがって、請求項6に記載の発明の効果に加え、ユーザからは、原画像の色が変わったと認識できない程度の色変更で、不使用色を作り出すことができる。
【0025】
また、本発明の請求項8に記載の画像形成プログラムは、請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、画像形成プログラムをコンピュータに実行させることにより、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
【0026】
また、本発明の請求項9に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、請求項8に記載の画像形成プログラムを記憶している。したがって、画像形成プログラムをコンピュータに読み取らせて実行させることにより、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置として、公知の布帛印刷用のインクジェットプリンタ1(図1及び図2参照)に印刷を実行させるための印刷データの基となる画像データを作成する、公知のパーソナルコンピュータ100(図3参照)を例に挙げて説明する。
【0028】
まず、図1を参照して、インクジェットプリンタ1について説明する。図1は、インクジェットプリンタ1の平面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、左右方向を長手方向とする平面板状のベース2を底面に備えており、また、装置全体を覆う箱状の本体カバー3を備えている。ベース2の略中央には、前後方向に延びるレール4が配設されており、このレール4は、取り換え可能な平板状のプラテン5を、ベース2の前後方向(副走査方向)に移動可能に支持している。また、レール4の後端部には、プラテン5をレール4に沿って移動させるためのステッピングモータであるプラテン駆動モータ7が配設されている。プラテン5は、ベース2の前後方向を長手方向とする略長方形状の板状部材であり、例えばTシャツ等の布帛からなる被印刷媒体が、プラテン5の上面に平行に載置される。
【0029】
また、プラテン5の上方で、且つ本体カバー3の内部における奥側(図1における上側)には、4つのインクジェットヘッド11〜14を搭載した第一キャリッジ10を左右方向に案内するための第一ガイドレール16が架設されている。そして、第一ガイドレール16の左端付近には第一キャリッジモータ17が、右端付近にはプーリ(図示外)が設けられており、第一キャリッジモータ17とプーリとの間にキャリッジベルト(図示外)が架設されている。このキャリッジベルトは第一キャリッジ10に固定されており、第一キャリッジモータ17が駆動することによって、キャリッジベルトに固定された第一キャリッジ10が、第一ガイドレール16に沿って左右方向(主走査方向)に移動する。
【0030】
本体カバー3の右端部には、4つのインクカートリッジ31〜34を収容する第一インクカートリッジ収容部30が配設されている。そして、各インクカートリッジ31〜34は、適度な柔軟性を有するインク供給用チューブ36によって、第一キャリッジ10に搭載されたそれぞれのインクジェットヘッド11〜14に連結されている。インクジェットプリンタ1では、第一キャリッジ10のインクジェットヘッド11〜14は全て白(W)インクを吐出するために設けられており、4つのインクカートリッジ31〜34にはその全てに白インクが収容されている。
【0031】
また、プラテン5の上方で、且つ本体カバー3の内部における手前側(図1における下側)には、第二キャリッジ20を左右方向に案内するための第二ガイドレール26が、第一ガイドレール16と平行に架設されている。そして、第二キャリッジ20は4つのインクジェットヘッド21〜24を搭載しており、第一キャリッジ10と同様に、第二キャリッジモータ27とプーリ(図示外)との間に架設されたキャリッジベルト(図示外)によって左右方向(主走査方法)に移動する。
【0032】
本体カバーの左端部には、4つのインクカートリッジ41〜44を収容する第二インクカートリッジ収容部40が配設されている。そして、各インクカートリッジ41〜44は、インク供給用チューブ46によって、第二キャリッジ20に搭載されたそれぞれのインクジェットヘッド21〜24に連結されている。第二キャリッジ20の4つのインクジェットヘッド21〜24は、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インクのそれぞれを吐出するために設けられており、インクカートリッジ41〜44にはシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれが収容されている。
【0033】
第一キャリッジ10及び第二キャリッジ20に搭載されている各インクジェットヘッド11〜14,21〜24には、インクを吐出するための吐出チャンネル(図示外)が例えば128個ずつ設けられている。また、各吐出チャンネルには、各々別個に駆動される圧電アクチュエータ(図示外)が設けられている。さらに、各インクジェットヘッド11〜14,21〜24の底面には、各吐出チャンネルに対応して微細なノズル(図示外)が孔設されており、これらのノズルから下向きにインクの液滴が吐出される。なお、キャリッジ10,20の移動範囲における左右いずれかの端部には、インクジェットヘッド11〜14,21〜24のメンテナンスを行う図示外のキャッピング機構、パージ機構等が設けられている。
【0034】
また、インクジェットプリンタ1の右側手前の位置には、インクジェットプリンタ1の操作を行うための操作パネル50が配設されている。この操作パネル50には、ディスプレイ51、印刷開始ボタン52、印刷中止ボタン53、プラテン送りボタン54、矢印ボタン55、エラーランプ56、データ受信ランプ57等が設けられている。ディスプレイ51は操作画面等の各種画像を表示し、印刷開始ボタン52は印刷を開始させるためのボタンであり、印刷中止ボタン53は印刷動作を中止させるためのボタンである。また、プラテン送りボタン54は、プラテン5への布帛の載置や布帛の取り外しが可能な位置へプラテンを移動させるためのボタンであり、矢印ボタン55は、ユーザがメニューの選択等を行う際に用いられる。また、エラーランプ56は、発光することによりエラーが生じたことを示し、データ受信ランプ57は、印刷データを受信したことを示す。
【0035】
次に、図2を参照して、インクジェットプリンタ1の電気的構成について説明する。図2は、インクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、インクジェットプリンタ1には、インクジェットプリンタ1の制御を司るCPU60が設けられている。そして、このCPU60には、ROM61、RAM62、ヘッド駆動部71、モータ駆動部72、表示制御部76、入力検知部77、及びUSBインタフェース79がバス65を介して接続されている。
【0036】
ROM61には、インクジェットプリンタ1の動作を制御するための制御プログラムや、印刷処理を実行するための印刷実行プログラム等を記憶したプログラム記憶エリアと、プログラムの実行に必要な設定や初期値、データ等の情報を記憶したプログラム関係情報記憶エリアとが設けられている。また、ROM61にはその他各種記憶エリアが設けられている。
【0037】
RAM62には、パーソナルコンピュータ100から受信した印刷データを記憶する受信印刷データ記憶エリア、印刷開始ボタン52の押下により印刷が実行されている印刷データを記憶する印刷中データ記憶エリア、その他各種記憶エリアが設けられている。
【0038】
ヘッド駆動部71は、インクを吐出するインクジェットヘッド11〜14,21〜24に接続されている。そして、各インクジェットヘッド11〜14,21〜24の各吐出チャンネルに設けられた圧電アクチュエータを駆動する。
【0039】
モータ駆動部72は、第一キャリッジ10を動作させる第一キャリッジモータ17と、第二キャリッジ20を動作させる第二キャリッジモータ27と、プラテン5を送り出すタイミングや速度を調整するプラテンローラ(図示外)を動作させるプラテン駆動モータ7とに接続されている。そして、これらのモータを駆動する。
【0040】
表示制御部76は、ディスプレイ51、エラーランプ56、データ受信ランプ57等に接続されており、CPU60からの制御によりこれらの表示処理を行う。また、入力検知部77は、印刷開始ボタン52、印刷中止ボタン53、プラテン送りボタン54、矢印ボタン55等に接続されており、これらの入力の検知を行う。そして、USBインタフェース79によって、インクジェットプリンタ1がパーソナルコンピュータ100を含めた外部機器に接続される。
【0041】
このような構成のもと、本実施の形態のインクジェットプリンタ1は、パーソナルコンピュータ100からプリンタドライバにより作成された印刷データを受信した後、ユーザによって布帛がプラテン5へ載置がされて印刷開始ボタン52が押下されることで、印刷処理を開始する。印刷処理では、まず、白インクを吐出する第一キャリッジ10の移動経路が記録開始位置となるように、プラテン5をプラテン駆動モータ7の駆動によって本体の後方(奥側)へ移動させる。次いで、インクジェットプリンタ1は、第一キャリッジ10を左右方向へ移動させながら、印刷データ(CMYKW)における白(W)のデータに従ってインクジェットヘッド11〜14による白インクの吐出を行うことで、1ラインの記録を行う。そして、プラテン5を1ライン分前方へ移動させて次のラインの記録を行い、これらの動作を繰り返し行うことで白色の印刷を完了させる。次いで、インクジェットプリンタ1は、第二キャリッジ20の移動経路が記録開始位置となるようにプラテン5を前方へ移動させて、第一キャリッジ10と同様の動作を第二キャリッジ20に実行させることで、カラーインク(CMYK)の吐出を行う。そして、カラーの印刷が完了すると、布帛の取り外しが可能となる位置まで前方へプラテン5を移動させて、印刷処理を終了する。なお、白インクを吐出する4つのインクジェットヘッド11〜14は、それぞれ印刷データにおけるWの2階調のデータに基づいて制御される。すなわち、印刷データにおけるWのデータは、白インク用の4つのインクジェットヘッド11〜14で共通に用いられる。
【0042】
次に、図3乃至図5を参照して、パーソナルコンピュータ100について説明する。図3は、パーソナルコンピュータ100の電気的構成を示すブロック図であり、図4は、パーソナルコンピュータ100のRAM112の構成を示す模式図である。また、図5は、パーソナルコンピュータ100のハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)116の構成を示す模式図である。パーソナルコンピュータ100は、例えばUSB等の規格に基づく通信ケーブルによってインクジェットプリンタ1に接続される。そして、パーソナルコンピュータ100では、ユーザが各種アプリケーションを用いて作成した画像データに基づいて印刷データが作成され、この印刷データがインクジェットプリンタ1へ送信されて印刷が行われる。
【0043】
図3に示すように、パーソナルコンピュータ100には、その制御を司るCPU110が設けられている。そして、CPU110には、ROM111、RAM112、CD−ROMドライブ115、HDD116、表示制御部126、入力検知部127、及びUSBインタフェース129がバス114を介して接続されている。
【0044】
ROM111には、CPU110が実行するBIOS等のプログラムが記憶されている。CD−ROMドライブ115には記録媒体であるCD−ROM131が挿入され、このCD−ROM131に記録されているデータがCD−ROMドライブ115によって読み出される。CD−ROM131には、本発明に係る画像データ作成プログラム、印刷データ作成プログラムが組み込まれたプリンタドライバ、および、このプログラムの実行時に使用される設定やテーブル等のデータが記憶されている。そして、CD−ROMドライブ115によって読み出されたプログラムおよびデータは、後述するHDD116(図5参照)に設けられた各種記憶エリアに記憶される。
【0045】
表示制御部126は、操作画面を表示するためのモニタ133に接続され、このモニタ133の表示を制御する。また、入力検知部127は、ユーザが操作の入力を行うためのキーボード135やマウス136に接続され、これらの入力の検知を行う。そして、USBインタフェース129によって、パーソナルコンピュータ100がインクジェットプリンタ1を含めた外部機器に接続され、データの送受信が可能となる。
【0046】
なお、本実施形態でのパーソナルコンピュータ100の構成は一般的な形態であり、パーソナルコンピュータ100とインクジェットプリンタ1の接続は、ネットワーク経由でも可能である。また、CD−ROM131に記録されているデータは、DVD−ROMドライブにより読み出されても良い。
【0047】
RAM112には、図4に示すように、原画像データ記憶エリア1121、色使用回数記憶エリア1122、背景色記憶エリア1123、背景色画像データ記憶エリア1124、原画像貼り付けデータ記憶エリア1125、変換CMKYWデータ記憶エリア1126、印刷データ記憶エリア1127が設けられている。
【0048】
原画像データ記憶エリア1121には、印刷対象となる原画像の画像データである原画像データが一時的に記憶される。色使用回数記憶エリア1122には、sRGB形式の256階調で表現される色の各々について、原画像データを構成する画素に使用されている回数である色使用回数が記憶される。背景色記憶エリア1123には、用紙サイズに対応する印刷可能領域内の、原画像が配置される領域以外の領域(以下、背景領域という)に使用される色(以下、背景色という)が記憶される。背景色画像データ記憶エリア1124には、印刷可能領域全体が背景色で塗りつぶされた画像のデータ(以下、背景色画像データという)が記憶される。原画像貼り付けデータ記憶エリア1125には、背景色画像データ140に原画像データを貼り付けて作成された画像データ(以下、原画像貼り付けデータという)が記憶される。変換CMYKWデータ記憶エリア1126には、sRGB形式の画像貼り付けデータからCMYKW形式に変換されたデータ(以下、変換CMYKWデータという)が記憶される。印刷データ記憶エリア1127には、疑似階調処理を通して256階調で表現される変換CMYKWデータから作成された印刷データが記憶される。なお、印刷データは、CMYKW形式の2階調(インクを吐出させるか否か)で各画素の色を表現するものである。
【0049】
HDDには、図5に示すように、プログラム記憶エリア1161、プログラム関係情報記憶エリア1162、カラー変換テーブル記憶エリア1163、白変換テーブル記憶エリア1164、画像データ記憶エリア1165、背景色記憶エリア1166等の各種記憶エリアが設けられている。
【0050】
プログラム記憶エリア1161には、画像編集用アプリケーション、画像データ作成プログラム、およびプリンタドライバ(印刷データ作成プログラム)を始めとする、パーソナルコンピュータ100で実行される各種の処理のためのプログラムが記憶される。プログラム関係情報記憶エリア1162には、プログラムの実行に必要な設定や初期値、データ等の情報が記憶される。カラー変換テーブル記憶エリア1163には、RGB空間によって表現される原画像データの色情報を、CMYK空間によって表現されるレベルの情報に変換するためのカラー変換テーブルが記憶される。白変換テーブル記憶エリア1164には、原画像データの色情報を白インクレベル(W値)の情報に変換するための白変換テーブルが記憶される。画像データ記憶エリア1165には、複数の原画像データが記憶される。なお、原画像データは、画像編集用アプリケーション等によって作成された画像のデータである。背景色記憶エリア1166には、背景色が記憶される。背景色記憶エリア1166は、本発明の「背景色記憶手段」に相当する。
【0051】
次に、図6乃至図9を参照して、本発明の特徴である画像データ作成処理とそれに関連する印刷データ作成処理について説明する。図6は、パーソナルコンピュータ100で行われる画像データ作成処理のフローチャートであり、図7は、印刷データ作成処理のフローチャートである。図8は、原画像182と印刷可能領域181および背景領域183との関係を説明する説明図である。図9は、原画像貼り付けデータに対応する画像185の説明図である。以下、フローチャートの各ステップについて「S」と略記する。
【0052】
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、前述したように、CMYKの各色インクに加えて白インクを用いて印刷を行うことができる。よって、黒色等の被印刷媒体(例えば、布帛)に対して白色の画素を形成することが可能となると共に、白色の下地を形成した後に、この下地の上にカラーの画素を形成することもできる。これにより、被印刷媒体の色に関わらず、品質の高い画像を印刷することができる。しかし、インクジェットプリンタ1では、例えば図8に示すように、インクジェットプリンタ1の印刷可能領域181内の、原画像182以外の領域である背景領域183は、特に指定をしなければ、自動的に白で印刷が行われてしまう。したがって、実際に白で印刷するのか、もしくは何も印刷しない(透明とする)のかの指定が必要となる。そこで、本実施形態では、プリンタドライバで印刷データを作成する前処理として、図6に示す画像データ作成処理が行われる。
【0053】
ユーザが所望の原画像データを指定して印刷実行を指示することにより、図6に示す画像データ作成処理が開始される。画像データ作成処理は、画像データ作成プログラムに基づいて、CPU110によって実行される。
【0054】
図6に示すように、画像データ作成処理が開始されると、HDD116の画像データ記憶エリア1165から、印刷対象として指定された原画像データが読み出されて、RAM112の原画像データ記憶エリア1121に記憶される(S1)。この原画像データは、例えば、画像編集用アプリケーションによって作成された、図8に示す原画像182の画像データである。本実施形態では、原画像データは、sRGB形式の256階調で各画素の色が表現されているものとする。なお、sRGB形式とは、IEC(国際電気標準会議)が定める色空間の国際規格である。次いで、原画像データが、印刷解像度に合わせて、公知の手法でリサンプリングされる(S2)。リサンプリングの手法としては、例えば、バイキュービック法を採用することができる。
【0055】
次に、sRGB形式の256階調で表現される色の各々について、リサンプリング後の原画像データを構成する画素に使用されている回数がカウントされる(S5)。具体的には、例えば、256階調で表現される色のsRGB値は、R値、G値およびB値の組み合わせであり、約1,677万7千通りになる。これらのsRGB値が順に読み出され、読み出されたsRGB値と一致するsRGB値が使用されている原画像データ中の画素の数が、色使用回数としてカウントされる。カウントされた色使用回数は、sRGB値と対応付けて、色使用回数記憶エリア1122に記憶される。なお、本実施形態では、256階調で表現される色のsRGB値が、「画像表現色」に相当する。
【0056】
S5で、すべてのsRGB値に対応する色使用回数がカウントされた後、色使用回数がゼロ(0)の色があるか否かが判断される(S7)。具体的には、色使用回数記憶エリア1122に、対応する色使用回数がゼロであるsRGB値が記憶されているか否かが判断される。対応する色使用回数がゼロのsRGB値があれば(S7:YES)、そのsRGB値が、原画像には使用されていない色である不使用色として特定される(S12)。続いて、不使用色が、背景領域に使用される背景色として設定され、背景色記憶エリア1123に記憶される(S13)。具体的には、S12で特定された不使用色が1つであればその不使用色が背景色として設定され、複数の不使用色が抽出された場合には、そのうちの1つが任意に選択され、背景色として設定される。例えば、sRGB値が、「R=63、G=63、B=63」に対応する色使用回数がゼロとして色使用回数記憶エリア1122に記憶されていれば(S7:YES)、不使用色である「R=63、G=63、B=63」が、背景色として背景色記憶エリア1123に記憶されることになる(S12、S13)。
【0057】
一方、色使用回数がゼロの色がないと判断された場合(S7:NO)、すべてのsRGB値が、原画像データを構成する画素のいずれかに使用されており、このままでは不使用色はないということである。そこで、不使用色をあえて設けるために、最も色使用回数が少ない色が使用されている画素の色が、他の色に置き換えられる(S9)。具体的には、まず、色使用回数記憶エリア1122に記憶されているsRGB値のうち、対応する色使用回数が最も少ないsRGB値が、変更対象として選択される。なお、最も少ない色使用回数に対応するsRGB値が複数ある場合は、そのうちの1つを任意に選択すればよい。そして、原画像データ記憶エリア1121に記憶されている原画像データを構成する画素が順に注目され、変更対象として選択されたsRGB値が使用されている場合には、その画素のsRGB値は、他のsRGB値によって置き換えられる。他のsRGB値は、例えば、sRGB色空間の中のいずれか1つの成分、すなわち、R値、G値およびB値のうちいずれか1つの階調値を1変更した値とすることができる。例えば、最も色使用回数が少ないsRGB値が、「R=0、G=0、B=0」である場合、R値、G値およびB値のうちいずれか1つのみを1変更し、「R=1、G=0、B=0」、「R=0、G=1、B=0」、または「R=0、G=0、B=1」とすることができる。このようにして、最も色使用回数が少ないsRGB値が使用されている画素のsRGB値が置き換えられることにより、置き換えられた最も色使用回数が少ないsRGB値(前述の例では、「R=0、G=0、B=0」)の色使用回数はゼロとなる。つまり、変更対象とされたsRGB値は不使用色となる。そこで、不使用色となった、S5でカウントされた色使用回数が最も少ない色が、背景色として設定され、背景色記憶エリア1123に記憶される(S11)。このように、最も色使用回数が少ない色の画素を、sRGB色空間の中のいずれか1つの成分の階調値が1違う色に変更した場合、ユーザからは、原画像の色が変わったと認識できない程度の色変更とすることができる。
【0058】
次に、印刷可能領域全体が背景色で塗りつぶされた背景色画像データが作成される(S17)。具体的には、S11またはS13で背景色として設定され、背景色記憶エリア1123に記憶されたsRGB値をすべての画素に使用した、インクジェットプリンタ1の印刷可能領域サイズの画像の画像データが作成される。続いて、背景色画像データに、リサンプリング後の原画像データが貼り付けられることにより、原画像貼り付けデータが作成される(S18)。具体的には、印刷可能領域内の任意の位置に原画像が配置され、印刷可能領域を構成するすべての画素のうち、原画像が配置される領域を構成する画素のsRGB値が、原画像で使用されているsRGB値に置き換えられる。その結果、印刷可能領域内の、原画像が配置された領域以外の領域である背景領域を構成する画素の色が背景色とされ、原画像が配置された領域を構成する画素は、原画像通りの色となる。例えば、背景色として「R=0、G=0、B=0」が設定されている場合、図9に示すように、原画像182以外の印刷可能領域181である背景領域183が黒色で塗りつぶされた画像185に対応する原画貼り付けデータが作成されることとなる。原画像貼り付けデータは、原画像貼り付けデータ記憶エリア1125に記憶される。
【0059】
続いて、S18で作成された原画像貼り付けデータが、OSを通じてプリンタドライバへ出力される(S19)。また、S11またはS13で設定され、背景色記憶エリア1123に記憶された背景色(sRGB値)が、HDD116の背景色記憶エリア1166へ保存された後(S20)、図6の画像データ作成処理は終了する。
【0060】
次に、図7を参照して、印刷データ作成処理について説明する。ユーザが所望の原画像データの印刷実行を指示することにより、プリンタドライバが起動される。そして、プリンタドライバを動作させるプログラム中の印刷データ作成プログラムに基づいて、CPU110によって印刷データ作成処理が開始される。
【0061】
図7に示すように、印刷データ作成処理では、まず、画像データ作成処理(図6参照)のS18で作成された原画像貼り付けデータが、OSを通じて入力され、RAM112の原画像貼り付けデータ記憶エリア1125に記憶される(S21)。次いで、HDD116の背景色記憶エリア1166から背景色(sRGB値)が読み出されて、RAM112の背景色記憶エリア1123に記憶される(S23)。また、HDD116の背景色記憶エリア1166に記憶されていた背景色はクリアされる(S25)。
【0062】
次に、原画像貼り付けデータを構成する複数の画素の内の1つが、順に注目画素とされる(S27)。S23で読み出された背景色(sRGB値)と、注目画素のsRGB値が一致するか否かに基づき、注目画素の色が背景色か否かが判断される(S31)。例えば、図9に示す画像185に対応する原画像貼り付けデータがS21で入力され、背景色として、黒色を示す「R=0、G=0、B=0」がS23で読み出された場合、原画像182を構成する画素には、背景色(黒)は使用されていない。よって、注目画素が原画像を構成する画素であり、その色が背景色でない場合には(S31:NO)、原画像の色に合わせた印刷を行うため、注目画素の色を表現する256階調のsRGB値が、CMYKW形式に基づく256階調のCMYKW値に変換される。CMYKW形式とは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、白(W)の5色を用いる色の表現方法であり、C値、M値、Y値、K値、W値の256階調によって各画素の色が表現されて、各インクの吐出量が決定される。sRGB値からCMYKW値への変換には、公知の手法で作成され、HDD116のカラー変換テーブル記憶エリア1163および白変換テーブル記憶エリア1164にそれぞれ予め記憶されたカラー変換テーブル及び白変換テーブルを用いればよい。より具体的には、sRGB値のデータが、カラー変換テーブルおよび白変換テーブルを用いて、それぞれ、CMYK形式のカラーインクレベルデータおよびW形式の白インクレベルデータに変換される。そして、カラーインクレベルデータのCMYK値と、白インクレベルデータのW値とにより、256階調の変換CMYKWデータが構成される。このような変換によって得られたCMKYW値は、変換CMYKWデータ記憶エリア1126に順に記憶され、変換CMYKWデータを構成する。
【0063】
一方、注目画素の色が背景色であれば(S31:YES)、その注目画素は、背景領域を構成する画素である。そこで、注目画素のC、M、Y、K、Wの全ての階調値をゼロとする、CMYKW値への変換が行われる(S33)。C値、M値、Y値、K値、W値のすべてがゼロということは、いずれの色インクも白インクも吐出されないことを意味する。よって、背景色と同じ色の注目画素、すなわち、背景領域を構成する画素は、色インクでも、白インクでも印刷されない設定となる。
【0064】
そして、原画像貼り付けデータを構成する全ての画素が注目され、CMYKW値への変換処理が行われたか否かが判断される(S35)。全ての画素の処理が完了していなければ(S35:NO)、S27の処理へ戻り、次の画素についての処理が行われる(S27〜S33)。全ての画素について、S27〜S33の処理が完了すると(S35:YES)、背景領域を構成する画素は、C値、M値、Y値、K値、W値のすべてがゼロに変更され、透明と設定された状態となる。このような状態で、変換CMYKWデータ記憶エリア1126に記憶されている変換CMYKWデータに対して、公知の手法による擬似階調処理が行われる(S37)。擬似階調処理の手法として、例えば、誤差拡散法を採用することができる。擬似階調処理により、CMYKW形式の256階調で表現される変換CMYKWデータが、CMYKW形式の2階調で表現される印刷データに変換されて、RAM112の印刷データ記憶エリア1127に記憶される。なお、本実施形態では、印刷データは、2階調によって、インクを吐出するか否かを表すものである。そして、図7に示す印刷データ作成処理は終了する。
【0065】
以上、説明したように、本実施形態のパーソナルコンピュータ100によれば、sRGB形式で表現される色の各々について、印刷対象の原画像データを構成する画素に使用されている回数がカウントされる。その結果、使用回数がゼロである不使用色があれば、不使用色が背景領域の色である背景色として設定される。不使用色がなければ、使用回数が最も少ない色が使用されている画素の色が、R、G、Bのいずれかの階調値が1異なる値に変更され、この色変更によって不使用色となった、使用回数が最も少なかった色が、背景色として設定される。その後、原画像データを、印刷可能領域を背景色で塗りつぶした背景色画像データに貼り付けることにより、原画像貼り付けデータが作成される。そして、原画像貼り付けデータが、変換CMYKWデータに変換される。その結果、背景領域部分は印刷しない、つまり透明として印刷することが可能になる。したがって、ユーザが、原画像が配置される領域以外の背景領域を特定し、背景色を透明色として特に指定しなくても、背景領域に印刷を行わず、透明とすることができる。また、被印刷媒体の色を生かした印刷が可能になり、より多様なユーザニーズに応えることができる。
【0066】
なお、上記の実施形態において、パーソナルコンピュータ100は、本発明の「画像形成装置」および「印刷データ作成装置」に相当する。より具体的には、原画像データを基に、印刷可能領域に対応する原画貼り付けデータを作成し、出力する画像データ作成プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ100が、「画像形成装置」に相当する。また、画像データ作成プログラムで作成された原画像貼り付けデータに基づき印刷データを作成するプリンタドライバがインストールされたパーソナルコンピュータ100が、「印刷データ作成装置」に相当する。
【0067】
また、図6のS1で原画像データを原画像データ記憶エリア1121から読み出すCPU110が、本発明の「原画像データ入力手段」として機能する。また、図6のS5、S7、S12において、使用されていない色を特定するCPU110が「不使用色特定手段」として機能する。図6のS5において、各sRGB値で表現される色について、原画像データを構成する画素に使用されている回数をカウントするCPU110が「カウント手段」として機能し、S7において、使用されていない色の有無を判断するCPU110が「判断手段」として機能し、S12で不使用色を特定するCPU110が「特定手段」として機能する。また、図6のS13において、不使用色を背景色に設定するCPU110が、本発明の「第1の背景色設定手段」として機能する。
【0068】
また、図6のS9において、使用されていない色がない場合に、色使用回数が最も少ない色を、他の色へ変更するCPU110が、本発明の「色変更手段」として機能する。図6のS11において、S9で色変更した結果、不使用色となった色使用回数が最も少なかった色を背景色に設定するCPU110が、本発明の「第2の背景色設定手段」として機能する。また、図6のS17、S18において、背景色画像データを作成し、背景色画像データに原画像データを貼り付けることにより、原画像貼り付けデータを作成するCPU110が、本発明の「画像データ作成手段」として機能する。また、図6のS19において、S17、S18で作成された原画像貼り付けデータをOSを通じてプリンタドライバに出力するCPU110が、「画像データ出力手段」として機能する。図6のS20において、背景色を背景色記憶エリア1166に保存するCPU110が、「背景色保存手段」として機能する。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態では、画像を表現するのに使用されるsRGB値の全てについて、順に、原画像を構成する画素に使用されている回数がカウントされ、使用回数がゼロである色があれば、その色が不使用色として特定され、背景色として設定されている(図6、S5、S7:YES、S12、S13)。しかしながら、不使用色の特定は、上記の例に限らず、他の方法によって行われてもよい。例えば、まず、画像を表現するのに使用される全てのsRGB値から、任意に1つのsRGB値を選択する。そして、原画像を構成する全ての画素について、順に、選択されたsRGB値が使用されているか否かを判定する。選択されたsRGB値が使用されている画素が発見された時点で、そのsRGB値は不使用色ではないと判断できるため、次のsRGB値を選択する。そして、同様にして、原画像を構成する全ての画素について、順に、選択されたsRGB値が使用されているか否かを判定する。その結果、全ての画素で、選択されたsRGB値が使用されていなければ、このsRGB値を不使用色として特定することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、原画像データに基づく不使用色の探索の結果、不使用色が特定されなかった場合には(図6、S5、S7:NO)、使用回数が最も少ない色が使用されている画素の色が他の色に置き換えられることにより、不使用色が作られる。上記実施形態では、使用回数が最も少ない色が、RGB色空間の中のいずれか1つの成分、すなわち、R値、G値およびB値のうち1つの階調値を1変更した値に置き換えられている。しかしながら、置き換え後の他の色は、必ずしも、R値、G値およびB値のうち1つの階調値を1変更した値とする必要はなく、ユーザからみて、原画像の色が変わったと認識されない程度に自然な色であればよい。例えば、R値、G値およびB値のうち、いずれか1つの階調値を10以下の任意の値で変更した階調値とすることができる。または、R値、G値およびB値のうち、いずれか1つのみではなく、複数(例えば、R値およびG値)の階調値を、1ずつ変更してもよい。あるいは、使用回数が最も少ない色が使用されている画素の隣に位置する画素の色に置き換えてもよい。隣接する画素同士は、近似した色であることが多く、また、画素1個分であれば、同じ色が連続する部分が増えても面積的には大きな差異は生じない。したがって、ユーザからみて、原画像の色が変わったと認識されない程度の色変更で、不使用色を作ることができる。
【0071】
また、不使用色が特定されなかった場合に、他の色と置き換えられる色は、必ずしも使用回数が最も少ない色とする必要はない。例えば、色空間の中で、使用される可能性が低いことが経験的に知られている色を、例えばHDD116の所定の記憶エリアに記憶させておけばよい。そして、不使用色が特定されなかった場合に、この色が使用されている画素について、色変更を行うことができる。
【0072】
また、上記実施形態では、sRGB形式の原画像データが、カラー変換テーブル及び白変換テーブルによってCMYKW形式のデータに変換される場合を例示したが、このようなデータ形式は任意に変更可能である。例えば、原画像データはCMYK形式やHSV形式等の他の色空間によって表現されるデータであってもよい。そして、カラー変換テーブル及び白変換テーブルは、原画像データの変換を可能とするようにデータ形式の対応を定義していればよい。また、印刷データのデータ形式も、例えばCMYW形式等の他のデータ形式を採用することができる。さらに、データの階調も256階調に限られない。
【0073】
また、インクジェットプリンタ1の構成も適宜変更が可能である。上記実施形態のインクジェットプリンタ1は、白インクを吐出する第一キャリッジ10、及びカラーインクを吐出する第二キャリッジ20の2つのキャリッジを備え、各キャリッジに4つずつ配設されているインクジェットヘッド11〜14,21〜24からインクを吐出させる。しかし、5つのインクジェットヘッドを有するキャリッジを1つ備えたインクジェットプリンタにも、本発明に係る画像データ作成装置で作成された画像データに基づき、印刷データ作成装置によって作成された印刷データの印刷を実行させることが可能である。また、ブラック(K)のインクを使用しないインクジェットプリンタであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】インクジェットプリンタ1の平面図である。
【図2】インクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】パーソナルコンピュータ100の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】RAM112の構成を示す模式図である。
【図5】HDD116の構成を示す模式図である。
【図6】パーソナルコンピュータ100で行われる画像データ作成処理のフローチャートである。
【図7】パーソナルコンピュータ100で行われる印刷データ作成処理のフローチャートである。
【図8】原画像182と印刷可能領域181および背景領域183との関係を説明する説明図である。
【図9】原画像貼り付けデータに対応する画像185の説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1 インクジェットプリンタ
100 パーソナルコンピュータ
110 CPU
111 ROM
112 RAM
116 HDD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データ作成の基になる画像データを、前記印刷データを作成する印刷データ作成装置に出力する画像形成装置であって、
原画像の画像データである原画像データを入力する原画像データ入力手段と、
画像を表現するために使用される色である画像表現色のうち、前記原画像データ入力手段によって入力された前記原画像データを構成する画素に使用されていない前記画像表現色である不使用色を特定する不使用色特定手段と、
前記不使用色特定手段により前記不使用色が特定された場合に、前記不使用色を、印刷可能領域内の前記原画像が配置される領域以外の領域である背景領域を構成する画素に使用する背景色として設定する第1の背景色設定手段と、
前記背景領域を構成する前記画素に前記背景色を使用して、前記印刷領域内に前記原画像を配置した画像の画像データを作成する画像データ作成手段と、
前記画像データ作成手段によって作成された前記画像データを前記印刷データ作成装置に出力する画像データ出力手段と、
前記背景色を、前記印刷データ作成装置が参照可能な背景色記憶手段に記憶させる背景色保存手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記不使用色特定手段により、前記不使用色が特定されない場合に、前記原画像データを構成する前記画素に使用されている特定の画像表現色で表現された前記画素の前記特定の画像表現色を他の画像表現色へ変更する色変更手段と、
前記色変更手段による色の変更によって、前記不使用色となった前記特定の画像表現色を、前記背景色として設定する第2の背景色設定手段とをさらに備え、
前記画像データ作成手段は、前記背景領域を構成する前記画素に、前記第2の背景色設定手段によって設定された前記背景色を使用して、前記印刷領域内に前記原画像を配置した画像の画像データを作成することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記色変更手段は、前記特定の画像表現色を構成する色成分の内、いずれか1つの成分の階調値を変更することにより、前記特定の画像表現色を前記他の画像表現色に変更することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記他の画像表現色は、前記特定の画像表現色が位置する画素の隣の画素に使用されている画像表現色であることを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記不使用色特定手段は、
前記画像表現色の各々について、前記原画像データを構成する前記画素に使用されている回数である使用回数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段によってカウントされた前記使用回数がゼロの前記画像表現色があるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記使用回数がゼロの前記画像表現色があると判断された場合に、前記使用回数がゼロの前記画像表現色を前記不使用色として特定する特定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記不使用色特定手段は、
前記画像表現色の各々について、前記原画像データを構成する前記画素に使用されている回数である使用回数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段によってカウントされた前記使用回数がゼロの前記画像表現色があるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記使用回数がゼロの前記画像表現色があると判断された場合に、前記使用回数がゼロの前記画像表現色を前記不使用色として特定する特定手段と
を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記特定の画像表現色は、前記カウント手段によりカウントされた前記使用回数が最も少ない画像表現色であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための画像形成プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−239801(P2009−239801A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85575(P2008−85575)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】