説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】各結像光学系のデフォーカス量の差異が画像に与える影響を抑制して、良好な画像形成を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】第1の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第1の発光素子群の発光を、第1の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第1の二値データに基づいて制御するとともに、第2の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第2の発光素子群の発光を、第1の閾値マトリックスと異なる第2の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第2の二値データに基づいて制御し、第1の結像光学系を透過した光および第2の結像光学系を透過した光によって潜像担持体に形成した潜像を現像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の結像光学系それぞれに対応して発光素子を配設するとともに、各結像光学系を透過した光を照射することで潜像担持体に潜像を形成する画像形成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、複数の結像光学系を主走査方向に3行千鳥で並べた露光ヘッド(ラインヘッド)が記載されている。また、この露光ヘッドでは、主走査方向に千鳥状に並ぶ複数の発光素子で構成された発光素子群(発光素子グループ)が、各結像光学系に対向している。したがって、発光素子が発光した光は当該発光素子に対向する結像光学系に結像され、これにより潜像担持体(感光体ドラム)の表面に光のスポットが形成される。したがって、各発光素子の発光を制御することで、潜像を潜像担持体表面に形成することができ、さらには、この潜像を現像することで所望の画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−093882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1でも指摘されているとおり、複数の結像光学系を有する露光ヘッドを用いて潜像担持体の表面を露光する画像形成装置では、潜像担持体表面でのデフォーカス量が各結像光学系で異なる場合があった。そして、このような場合には、潜像担持体表面に形成されるスポットのサイズが各結像光学系で異なってしまい、その結果、良好な画像を形成できないおそれがあった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、各結像光学系のデフォーカス量の差異が画像に与える影響を抑制して、良好な画像形成を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、第1の結像光学系、第2の結像光学系、第1の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第1の発光素子群、および第2の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第2の発光素子群を有する露光ヘッドと、第1の結像光学系を透過した光が照射され、第2の結像光学系を透過した光が照射されて、潜像が形成される潜像担持体と、潜像を現像する現像部と、第1の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第1の二値データに基づいて、第1の発光素子群の発光素子の発光を制御し、第1の閾値マトリックスと異なる第2の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第2の二値データに基づいて、第2の発光素子群の発光素子の発光を制御する発光制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、第1の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第1の発光素子群の発光を、第1の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第1の二値データに基づいて制御するとともに、第2の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第2の発光素子群の発光を、第1の閾値マトリックスと異なる第2の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第2の二値データに基づいて制御し、第1の結像光学系を透過した光および第2の結像光学系を透過した光によって潜像担持体に形成した潜像を現像することを特徴とする。
【0008】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)は、第1の結像光学系を透過した光および第2の結像光学系を透過した光を照射することで、潜像担持体に潜像を形成する。したがって、第1の結像光学系と第2の結像光学系とで潜像担持体でのデフォーカス量が異なるような場合、各結像光学系が潜像担持体に形成するスポットのサイズが異なってしまい、良好な画像形成ができないおそれがあった。これに対して、本発明は、第1の結像光学系を透過する光を発光する第1の発光素子群と、第2の結像光学系を透過する光を発光する第2の発光素子群とで、発光制御を変えている。具体的には、第1の発光素子群の発光素子の発光は、第1の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第1の二値データに基づいて制御される。一方、第2の発光素子群の発光素子の発光は、第1の閾値マトリックスと異なる第2の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第2の二値データに基づいて制御される。つまり、第1の発光素子群の発光と第2の発光素子群の発光とを、互いに異なる閾値マトリックスに基づいて制御することで、各結像光学系のデフォーカス量の差異が画像に与える影響を抑制することができ、その結果、良好な画像形成が実現可能となる。
【0009】
また、潜像担持体は、第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向の断面で有限の曲率を有し、第1の結像光学系と第2の結像光学系とは、第2の方向に異なる位置に配設される構成においては、潜像担持体でのデフォーカス量の差異が、第1・第2の結像光学系の間で顕著となる傾向にある。そこで、かかる構成に対しては、本発明を適用することが好適である。
【0010】
さらには、第1の結像光学系の潜像担持体での第1のデフォーカス量と第2の結像光学系の潜像担持体での第2のデフォーカス量とが異なることに対応すべく、第1の閾値マトリックスの閾値は第1のデフォーカス量に応じて設定され、第2の閾値マトリックスの閾値は第2のデフォーカス量に応じて設定されるように構成しても良い。これにより、各結像光学系のデフォーカス量の差異が画像に与える影響をより確実に抑制することができ、その結果、さらなる良好な画像形成が可能となる。
【0011】
ところで、本発明を適用する結像光学系の個数は、当然のことながら2個には限られない。そこで、露光ヘッドは、第1の結像光学系および第2の結像光学系に対して第2の方向に異なる位置に配設された第3の結像光学系と、第3の結像光学系を透過して潜像担持体に照射される光を発光する発光素子を前記第1の方向に配設した第3の発光素子群とを有し、第3の結像光学系の潜像担持体での第3のデフォーカス量は、第1のデフォーカス量および第2のデフォーカス量と異なるような構成に対しても本発明を適用可能である。すなわち、発光制御部は、第3のデフォーカス量に応じて閾値が設定された第3の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第3の二値データに基づいて、第3の発光素子群の発光素子の発光を制御するように構成すれば良い。これにより、第3の結像光学系を含む各結像光学系のデフォーカス量の違いに依らず、良好な画像形成が可能となる。
【0012】
ちなみに、露光ヘッドは、第1の結像光学系に対して第2の方向も同じ位置に配設された第4の結像光学系と、第4の結像光学系を透過して潜像担持体に照射される光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第4の発光素子群とを有し、第4の結像光学系の潜像担持体での第4のデフォーカス量は、第1のデフォーカス量と等しい場合には、発光制御部は、第4の発光素子群の発光素子の発光を、第1の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第4の二値データに基づいて制御するように構成すれば良い。
【0013】
また、潜像担持体についても種々のバリエーションが考えられ、潜像担持体は感光体ドラムであっても良く、あるいは、ローラーに巻きかけられた感光体ベルトであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの一例を示す図。
【図4】ラインヘッドの一例を示す図。
【図5】ラインヘッドの一例を示す図。
【図6】ラインヘッドによる露光動作の一例を示す図。
【図7】スクリーン処理で用いられる閾値マトリックスを示す図。
【図8】スクリーン処理で用いられる基本セルと画素との対応関係を示す図。
【図9】結像光学系と感光体ドラムとの配置関係を示す模式図。
【図10】スポットのビームプロファイルをデフォーカス量についてプロットした図。
【図11】デフォーカス量とスポットサイズとの関係を表として示す図。
【図12】実施形態の作用効果を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。
【0016】
この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号を与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、ヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメーター値とに基づき、各色の画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kそれぞれのラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート状の記録媒体RMに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図1では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図1に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造および動作も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0018】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動することとなる。
【0019】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成するラインヘッド29と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像器24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0020】
この実施形態では、帯電器22は2つのコロナ帯電器221、222で構成されており、感光体ドラム21の回転方向D21においてコロナ帯電器221がコロナ帯電器222に対して上流側に配置されており、2つのコロナ帯電器221、222により2段階で帯電されるように構成されている。各コロナ帯電器221、222は同一構成であり、感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、スコロトロン帯電器である。
【0021】
そして、コロナ帯電器221、222により帯電された感光体ドラム21表面に対して、ラインヘッド29がビデオデータVDに基づいて静電潜像を形成する。つまり、ヘッドコントローラーHCがラインヘッド29にビデオデータVDを送信すると、このビデオデータVDに基づいて各発光素子Eが発光する。これにより、感光体ドラム21表面が露光されて、画像信号に対応した静電潜像が形成される。なお、ラインヘッド29の構成および動作の詳細は後述する。
【0022】
こうして形成された静電潜像に対して現像器24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。この画像形成装置1の現像器24は、現像ローラー241を有している。この現像ローラー241は円筒状の部材であり、鉄等金属製の内芯の外周部に、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、NBR、PFAチューブなどの弾性層を設けたものである。この現像ローラー241は現像用モーターに接続され、図1紙面において反時計回りに回転駆動されて感光体ドラム21に対してウィズ回転する。また、この現像ローラー241は図示を省略する現像バイアス発生部(定電圧電源)と電気的に接続されており、適当なタイミングで現像バイアスが印加されるように構成されている。
【0023】
また、この現像ローラー241に対して液体現像剤を供給するためにアニロックスローラーが設けられており、アニロックスローラーを介して現像剤貯留部から現像ローラー241へ液体現像剤が供給される。このようにアニロックスローラーは現像ローラー241に対して液体現像剤を供給する機能を有する。このアニロックスローラーは、液体現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に彫刻された螺旋溝などによる凹部パターンが形成されたローラーである。現像ローラー241と同様に、金属の芯金にウレタン、NBRなどのゴム層を巻き付けたものや、PFAチューブを被せたものなどが用いられる。また、アニロックスローラーは現像用モーターに接続されて回転する。
【0024】
現像剤貯留部に貯留される液体現像剤は、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)を液体キャリアとした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0025】
上記のようにして、液体現像剤が供給された現像ローラー241はアニロックスローラーと同時に回転すると共に、感光体ドラム21の表面とは同方向に移動するように回転して現像ローラー241の表面に担持された液体現像剤を現像位置に搬送する。なお、トナー像を形成するため、現像ローラー241の回転方向は、その表面が感光体ドラム21の表面と同方向に移動するようにウィズ回転する必要があるが、アニロックスローラーに対しては、逆方向、或いは、同方向、どちらに移動する構成であってもよい。
【0026】
また、現像器24では、この現像ローラー241の回転方向において現像位置の上流側直前にトナー圧縮コロナ発生器242が現像ローラー241に対向して配置されている。このトナー圧縮コロナ発生器242は現像ローラー241の表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、定電流電源で構成されたトナーチャージ発生部(図示省略)と電気的に接続されている。そして、トナー圧縮コロナ発生器242に対してトナーチャージバイアスが与えられると、現像ローラー241によって搬送される液体現像剤のトナーに対して、このトナー圧縮コロナ発生器242と近接する位置で電界が印加され、帯電、圧縮が施される。なお、このトナー帯電、圧縮には、電解印加によるコロナ放電に代えて、接触して帯電させるコンパクションローラーを用いてもよい。
【0027】
また、このように構成された現像器24は感光体ドラム21上の潜像を現像する現像位置と感光体ドラム21から離れた退避位置との間で往復可能となっている。したがって、現像器24が退避位置に移動して位置決めされると、その間、シアン用の画像形成ステーション2Cでは、感光体ドラム21への新たな液体現像剤の供給は停止される。
【0028】
感光体ドラム21の回転方向D21において現像位置の下流側に、第1スクイーズ部25が配置されるとともに、さらに第1スクイーズ部25の下流側に第2スクイーズ部26が配置されている。これらのスクイーズ部25、26にはスクイーズローラー251、261がそれぞれ設けられている。そして、スクイーズローラー251が第1スクイーズ位置で感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰現像剤を除去する。また、感光体ドラム21の回転方向D21において第1スクイーズ位置の下流側の第2スクイーズ位置でスクイーズローラー261が感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰液体キャリアやカブリトナーを除去する。また、本実施形態ではスクイーズ効率を高めるために、スクイーズローラー251、261に対して図示省略するスクイーズバイアス発生部(定電圧電源)が電気的に接続されており、適当なタイミングでスクイーズバイアスが印加されるように構成されている。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26を設けているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0029】
これらのスクイーズ位置を通過してきたトナー像は転写部3の中間転写体31に1次転写される。この中間転写体31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を一時的に担持可能な像担持体としての無端状ベルトであり、複数のローラー32、33、34、35および36に掛け渡されている。これらのうちローラー32はメインモーターに連結されて、中間転写体31を図1の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。なお、本実施形態では、記録紙RMとの密着性を高めて記録紙RMへのトナー像の転写性を高めるために、中間転写体31の表面に弾性層を設け、当該弾性層の表面にトナー像が担持されるように構成されている。
【0030】
ここで、中間転写体31を掛け渡されたローラー32ないし36のうち、メインモーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33ないし36は駆動源を有しない従動ローラーである。また、ベルト駆動ローラー32は、ベルト移動方向D31において一次転写位置TR1の下流側、かつ後述する二次転写位置TR2の上流側で中間転写体31を巻き掛けている。
【0031】
転写部3は一次転写バックアップローラー37を有しており、一次転写バックアップローラー37は中間転写体31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写体31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21の外周面が中間転写体31と当接して一次転写ニップ部NP1cを形成している。そして、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写体31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写体31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写体31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写体31へのトナー像転写が行われる。
【0032】
こうして中間転写体31に転写されたトナー像は、ベルト駆動ローラー32への巻き掛け位置を経由して二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写体31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写部4の二次転写ローラー42が中間転写体31を挟んで対向配置されており、中間転写体31表面と転写ローラー42表面とが互いに当接して二次転写ニップ部NP2を形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。バックアップローラー34の回転軸は、例えばバネのような弾性部材である押圧部345によって弾性的に、かつ中間転写体31に対して近接・離間移動自在に支持されている。
【0033】
二次転写位置TR2においては、中間転写体31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録媒体RMに転写される。また、トナー像が二次転写された記録媒体RMは、二次転写ローラー42から搬送経路PT上に設けられた定着ユニット7へ送出される。定着ユニット7では、記録媒体RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録媒体RMへのトナー像の定着が行われる。こうして、記録媒体RMに所望の画像を形成することができる。
【0034】
以上が画像形成装置の概略構成である。続いて、本実施形態にかかる画像形成装置に適用可能なラインヘッド29の詳細について説明する。図3、図4および図5は、ラインヘッドの一例を示す図である。特に、図3は、ラインヘッド29が備える発光素子およびレンズの位置関係を、レンズが構成する結像光学系の光軸方向Doaから見た平面図であり、図4は、ラインヘッド29の部分斜視図であり、図5は、ラインヘッド29のA−A線(図3の階段状の二点鎖線)における部分階段断面図であって、該断面をラインヘッド29の長手方向LGDから見た場合に相当する。図3では、レンズLS1、LS2が一点鎖線で記載されているが、これは、発光素子EとレンズLS1、LS2とが光軸方向Doaにおいて異なる位置にあることを考慮したものである。
【0035】
このラインヘッド29は、長手方向LGDに長尺で幅方向LTDに短尺な全体構成を備える。そこで、図3〜図5および以下の図面では必要に応じて、ラインヘッド29の長手方向LGDおよび幅方向LTDを示す。また、レンズが構成する結像光学系の光軸方向Doaについても、図3〜図5および以下の図面で適宜示すとともに、必要に応じて、光軸方向Doaの矢印側を「表」あるいは「上」と表現し、光軸方向Doaの矢印と反対側を「裏」「下」あるいは「底」と表現する。なお、これらの方向LGD、LTD、Doaは互いに直交もしくは略直交している。
【0036】
また、上述のとおり、同ラインヘッド29を画像形成装置に適用するにあたっては、ラインヘッド29は、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動する感光体ドラム21表面に対して露光を行なうものであり、しかも、感光体ドラム21表面の主走査方向MDはラインヘッド29の長手方向LGDに平行もしくは略平行であり、感光体ドラム21表面の副走査方向SDはラインヘッド29の幅方向LTDに平行もしくは略平行である。そこで、必要に応じて、長手方向LGD・幅方向LTDと一緒に、主走査方向MD・副走査方向SDも図示することとする。
【0037】
ラインヘッド29では、複数(図1の例では15個)の発光素子Eを長手方向LGDに2行千鳥で並べて、1個の発光素子グループEGが構成されている。さらに、複数の発光素子グループEGが3行千鳥で長手方向LGDに並べられている。かかる配列態様は、換言すれば次のようにも説明できる。つまり、長手方向LGDへ距離3×Dg毎に発光素子グループEGを配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数の発光素子グループEGから1行の発光素子グループ行GRa等が構成される。さらに、3行の発光素子グループ行GRa、GRb、GRcは、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。
【0038】
また、各発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有するボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。つまり、各発光素子Eを構成する有機EL素子は、長手方向LGDに長く幅方向LTDに短いガラス平板であるヘッド基板293の裏面293−tに形成されて、ガラス製の封止部材294により封止されている。なお、この封止部材294は、ヘッド基板293の裏面293−tに接着剤により固定されている。
【0039】
上述のように配置された複数の発光素子グループEGそれぞれに対しては1つの結像光学系OSが対向している。具体的には、この結像光学系OSは、発光素子グループEG側に凸の2枚のレンズLS1、LS2から構成されている。なお、図4、図5では、発光素子グループEGとレンズLS1、LS2との間には遮光部材297が図示されているが、これについては結像光学系の説明の後に説明する。
【0040】
このラインヘッド29では、3行千鳥で並ぶ複数の発光素子グループEGのそれぞれに対向してレンズLS1、LS2を配置するために、複数のレンズLS1を3行千鳥で並べたレンズアレイLA1と、複数のレンズLS2を3行千鳥で並べたレンズアレイLA2とが設けられている。つまり、レンズアレイLA1(LA2)では、長手方向LGDへ距離3×Dg毎にレンズLS1(LS2)を配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数のレンズLS1(LS2)から1行のレンズ行が構成される。さらに、3行のレンズ行は、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。
【0041】
ちなみに、レンズアレイLA1(LA2)は、光透過製のガラス平板に樹脂製のレンズLS1(LS2)を形成することで構成することができる。また、この実施形態では、長手方向LGDに長尺なレンズアレイを一体的な構成で作成することは困難であることに鑑みて、比較的短尺なガラス平板に樹脂製のレンズLS1(LS2)を3行千鳥で形成して1つの短尺なレンズアレイLA1(LA2)を作製し、この短尺レンズアレイLA1(LA2)を長手方向LGDに複数並べることで、長手方向LGDに長尺なレンズアレイを構成している。
【0042】
より具体的には、ヘッド基板表面293−hの幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP1が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP1、SP1に架設された状態で、複数のレンズアレイLA1が長手方向LGDに並べられて、1つの長尺レンズアレイが構成されている。また、レンズアレイLA1からなる長尺レンズアレイ表面の幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP2が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP2、SP2に架設された状態で、複数のレンズアレイLA2が長手方向LGDに並べられて、1つの長尺レンズアレイが構成されている。さらに、レンズアレイLA2からなる長尺レンズアレイ表面には平板状の支持ガラスSSが接着されており、複数のレンズアレイLA2は各スペーサーSP2のみならず、当該スペーサーSP2の反対側から支持ガラスSSによっても支持されている。また、この支持ガラスSSは、各レンズアレイLA2が外部に露出しないように、当該レンズアレイLA2を覆う機能も併せ持つ。
【0043】
つまり、上述のように構成された2枚レンズアレイLA1、LA2をヘッド基板293に対向させることで、発光素子グループEGの3行千鳥配置に対応して、2枚のレンズLS1、LS2で構成される結像光学系OSが3行千鳥で長手方向LGDに並ぶこととなる。そして、発光素子グループEGの各発光素子Eが射出した光は、結像光学系OSおよび支持ガラスSSを透過して、感光体ドラム21表面に照射される。なお、図5では、発光素子グループ行GRaに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSaが併記されている。また、同様にして、発光素子グループ行GRb、GRcに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSb、OScが併記されている。すなわち、幅方向LTDに互いに異なる位置に配置された結像光学系OSに対して、異なる符合OSa、OSb、OScが付されている。
【0044】
このように、ラインヘッド29では、複数の発光素子グループEGそれぞれに対して専用の結像光学系OSが配置されている。このようなラインヘッド29では、発光素子グループEGからの光は、当該発光素子グループEGに設けられた結像光学系OSにのみ入射し、それ以外の結像光学系OSに入射しないことが望ましい。そこで、ヘッド基板293の表面293−hとレンズアレイLA1との間には、遮光部材297が設けられている。この遮光部材297は、発光素子グループEGから当該発光素子グループEGに対向する結像光学系OSに向かう光を制限する機能を果たす。具体的には、遮光部材297には、発光素子グループEGからこれに対向する結像光学系OSへと向かう導光孔2971が、光軸方向Doaに貫通形成されている。導光孔2971は円柱形状の孔であり、その中心軸は結像光学系OSの光軸OAと概ね一致している。したがって、発光素子グループEGから射出された光のうち、遮光部材297の底面で遮られることなく導光孔2971を通過した光が、結像光学系OSに入射することとなる。そして、結像光学系OSで結像された光が感光体ドラム21表面に照射されて、感光体ドラム21表面が露光される。続いて、ラインヘッド29による露光動作を説明する。
【0045】
図6は、ラインヘッドによる露光動作の一例を示す図である。同図では、感光体ドラム21表面に仮想的に配列された画素PXと、画素PXに照射されるスポットSTとが記載されている。このスポットSTは、1個の発光素子Eからの光が結像光学系OSにより結像されることで、感光体ドラム21表面に照射される光である。ここでは、同図を用いて、主走査方向MD(長手方向LGD)に3行千鳥で並ぶ複数の発光素子グループEGそれぞれを同時点灯させて実行する露光動作の一例について説明する。より詳しくは、この露光動作例は、感光体ドラム21表面を副走査方向SDに移動させながら、各発光素子グループEGの同時点灯を各時刻t1、t2、t3、…で繰り返すことで、感光体ドラム21表面をくまなく露光するものである。
【0046】
まず、時刻t1において、各発光素子グループEGが同時点灯すると、ハッチングの無い丸印で表された複数のスポットSTがそれぞれ画素PX上に形成される。なお、上述のとおり、発光素子グループEGは主走査方向MDに2行千鳥で並ぶ15個の発光素子Eで構成されている。そのため、発光素子グループEGの各発光素子Eが発光すると、15個のスポットSTを主走査方向MDに2行千鳥で並べたスポットグループSGが形成される。
【0047】
また、上述の図3〜図5を用いた説明が示すとおり、ラインヘッド29では、結像光学系OSa、OSb、OScが、主走査方向MDにピッチDgで周期的に配置されている。したがって、結像光学系OSa、OSb、OScそれぞれは、主走査方向MDにおいて互いに異なる領域ERa、ERb、ERcにスポットSTを形成する。さらに、結像光学系OSa、OSb、OScは副走査方向SDに距離Dtずつシフトしていることから、結像光学系OSa、OSb、OScがスポットグループSGを形成する位置も副走査方向SDに距離Dtずつシフトする。なお、図6では、結像光学系OSaにより形成されたスポットグループSGに対して符号SGaが併記され、同様にして、結像光学系OSb、OScにより形成されたスポットグループSGに対して符号SGb、SGcが併記されている。
【0048】
続いて、感光体ドラム21表面が副走査方向SDに1画素分だけ移動した時刻t2で、複数の発光素子グループEGが同時点灯して、複数のスポットグループSG(複数の斜め線のハッチングが施されたスポットSTからなるスポットグループSG)が形成される。さらに、感光体ドラム21表面が副走査方向SDに1画素分だけ移動した時刻t3で、複数の発光素子グループEGが同時点灯して、複数のスポットグループ(複数の点のハッチングが施されたスポットSTからなるスポットグループSG)が形成される。そして、このような点灯動作を繰り返すことで、感光体ドラム21表面をくまなく露光することができる。
【0049】
なお、ここでは、感光体ドラム21表面をくまなく露光する場合を例示して、ラインヘッド29による露光動作を説明した。しかしながら、ラインヘッド29が実行可能な露光動作はこれだけに限られず、画像形成指令に応じた露光動作を適宜実行可能であることは言うまでも無い。つまり、この場合は、画像形成指令に含まれる画像データに応じた画素PXに対して選択的にスポットSTを形成するように、各発光素子Eの発光を制御することで、画像形成指令に応じた露光動作を行なうことができる。
【0050】
より具体的には、画像データを受信したメインコントローラーMC(図2)では、画像データに含まれるRGB階調データをCMYK階調データに色変換する。このRGB階調データは1画素1色成分あたり8ビット(つまり、256段階の階調を表す)のデータであり、CMYK階調データも同様に1画素1色成分あたり8ビットのデータである。さらに、メインコントローラーMCは、CMYK階調データに対してスクリーン処理を行う。このスクリーン処理は、1画素1色成分あたり8ビットの多段階で現されたCMYK階調データを、スポットSTを形成するか否かを画素PX毎に示す二値データ(ビデオデータVD)に変換する。こうして生成されたビデオデータVDはメインコントローラーMCからヘッドコントローラーHCに転送され、このビデオデータVDに基づいてヘッドコントローラーHCがラインヘッド29の発光素子Eの点灯を制御する。これにより、画像データに応じた画素PXに選択的にスポットSTを形成することができる。そして、このスポット形成動作により感光体ドラム21表面に形成された潜像が現像されて、所望の画像が形成される。続いて、上述のスクリーン処理の詳細について説明する。
【0051】
図7は、スクリーン処理で用いられる閾値マトリックスを示す図である。ここで説明するスクリーン処理では、2種類の閾値マトリックスMXa、MXbcが用いられる。これら閾値マトリックスMXa、MXbcは、主走査方向MDに3画素でかつ副走査方向SDに3画素の正方形状を有するドット集中型の3×3閾値マトリックスである点で共通する。ただし、これらは、スクリーンドット(網点)の成長態様において異なる。具体的には、閾値マトリックスMXbcに比較して、閾値マトリックスMXaは、階調増加に対する副走査方向SDへのスクリーンドットの成長速度が遅い。
【0052】
図8は、スクリーン処理で用いられる基本セルと画素との対応関係を示す図である。上述のとおり、このスクリーン処理では3×3閾値マトリックスが用いられるため、これに対応して3×3の基本セルCLが各画素PXに対応付けられる(図8)。この際、図8に示すように、領域ERa、ERb、ERcを跨がないように、基本セルCLは各画素PXに対応付けられている。そして、CMYK階調データと閾値マトリックスMXa、MXbとが基本セルCL毎に比較されて、各画素PXにスポットSTを形成するか否かが判断される。こうして、ビデオデータVDとしての二値データが生成される。
【0053】
そして、本実施形態では、メインコントローラーMCは、領域ERa、ERb、ERcによって、閾値マトリックスMXa、MXbcを使い分けている。具体的には、領域ERbおよび領域ERcに対しては閾値マトリックスMXbcを使用する一方、領域ERaに対しては、副走査方向SDへのスクリーンドットの成長速度が遅い閾値マトリックスMXaを使用する。このように閾値マトリックスMXa、MXbを使い分ける理由は、結像光学系OSa、OSb、OScのデフォーカス量が異なることに対応するためである。これについて、次に詳述する。
【0054】
図9は、結像光学系と感光体ドラムとの配置関係を示す模式図である。上述したとおり、本実施形態では、3個の結像光学系OSa、OSb、OScは、副走査方向SDにおいて間隔Dtを空けて互いに異なる位置に配置されている。一方で、感光体ドラム21は円筒形状を有するため、感光体ドラム21の表面(周面)は副走査方向SD断面において有限の曲率を有する。そのため、結像光学系OSa、OSb、OSc毎にワークディスタンス(感光体ドラム21表面までの距離)が異なってしまい、その結果、結像光学系OSa、OSb、OSc毎に、感光体ドラム21表面でのデフォーカス量も異なってしまう場合があった。ここで、デフォーカス量とは、感光体ドラム21表面に形成されたスポットSTと、結像光学系OSの結像面とのずれ量とする。
【0055】
ここでは、結像光学系OScの光軸OAが感光体ドラム21表面の曲率中心C21を通過するように、ラインヘッド29が配置されている場合を例示して、デフォーカス量の違いが発生する原因について説明する。また、この発生原因の理解を容易とするために、結像光学系OScの結像位置は感光体ドラム21表面に一致し、しかも、結像光学系OSa、OSb、OScは副走査方向SDに平行な同じ結像面IPに光を結像する場合を例示して説明する。この場合、結像光学系OScのデフォーカス量は略ゼロである一方、結像光学系OSbはデフォーカス量ΔDbを有し、結像光学系OSaはさらに大きいデフォーカス量ΔDa(>ΔDb)を有する。つまり、感光体ドラム21表面の曲率中心C21から副走査方向SDに離れるに連れて、結像光学系OSはより大きなデフォーカス量を有することとなる。これについて、結像光学系OSaを取り上げて定量的に示すと次のとおりである。
【0056】
各値p、r、θを次のように、
p:感光体ドラム21表面の曲率中心C21を通って光軸方向Doaに平行な仮想直線VL1(この例では、結像光学系OScの光軸と同一視できる)と、結像光学系OSaの光軸OAとの距離、
r:感光体ドラム21表面の曲率半径、
θ:結像光学系OSaの光軸OAが感光体ドラム21表面に交差する交点Iaと曲率中心C21とを結ぶ仮想直線VL2が、仮想直線VL1と成す角度、
定義すると、次式、
p=r×sinθ
が成立する。これを角度θについて解くと、次式
θ=arcsin(p/r)…式1
が得られる。一方で、デフォーカス量ΔDaは、次式
ΔDa=r−r×cosθ
=r×(1−cosθ)…式2
を満たし、式1および式2から、次式
ΔDa=r×(1−cos(arcsin(p/r)))…式3
でデフォーカス量ΔDaが与えられることが判る。
【0057】
そして、このデフォーカス量ΔDaは、結像光学系OSaが形成するスポットSTの大きさに影響する(図10、図11)。図10は、感光体ドラム表面に形成されるスポットのビームプロファイルを各デフォーカス量についてプロットしたものであり、同図の上段はデフォーカス量をプラス側に変化させた場合を示し、同図の下段はデフォーカス量をマイナス側に変化させた場合を示している。図11は、デフォーカス量とスポットサイズとの関係を表として示す図である。図10から、デフォーカス量の絶対値が増大するにしたがってビームプロファイルがブロードになる様子が判る。そして、ビームプロファイルにおいて最大強度の13.5%となる部分をスポットSTとして、スポットサイズを求めた結果が図11である。これによれば、デフォーカス量の絶対値の増大にしたがって、スポットサイズが増大する傾向が見て取れる。
【0058】
以上の議論から、デフォーカス量が大きくなると、スポットSTのビームプロファイルがブロードになって、スポットSTのサイズが大きくなることが判る。したがって、結像光学系OSa、OSb、OScは、それぞれのデフォーカス量の違いに起因して、互いに異なるサイズのスポットSTを形成することとなる。特に、図9の例では、結像光学系OSaのデフォーカス量ΔDaが、その他の結像光学系OSb、OScのデフォーカス量と比べて大きく、その結果、結像光学系OSaが形成するスポットSTのサイズが顕著に大きくなる。そこで、本実施形態では、デフォーカス量の大きい結像光学系OSaが露光する領域ERaに対しては、副走査方向SDへのスクリーンドットの成長速度が遅い閾値マトリックスMXaが使用される。一方、デフォーカス量の小さい結像光学系OSb、OScが露光する領域ERb、ERcに対しては、副走査方向SDへのスクリーンドットの成長速度が速い閾値マトリックスMXbcが使用される。換言すれば、本実施形態では、デフォーカス量に応じて閾値が設定された閾値マトリックスMXa、MXbcが、結像光学系OSa、OSb、OScに応じて使い分けられる。そして、これによって次のような作用効果が奏される。
【0059】
図12は、本実施形態の作用効果を説明するための模式図である。同図の上段の「比較形態」の欄は、領域ERa、ERb、ERcで閾値マトリックスを使い分けず、各領域ERa、ERb、ERcに対して同じ閾値マトリックスMXbcを用いた場合に対応する。一方、同図の下段の「実施形態」の欄は、領域ERaと領域ERb、ERcとで閾値マトリックスMXa、MXbcを使い分けた場合に対応する。また、いずれの形態においても、YMCK階調データの階調値は「100」であるとする。
【0060】
「比較形態」の欄に示す例では、各領域ERa、ERb、ERcに対して同じ閾値マトリックスMXbcを用いた結果、領域ERa、ERb、ERcのいずれにおいても、4つの画素PX(マトリックスMXbcの閾値が「100」以下の4つの画素PX)に対してスポットSTが照射される。そして、スポットSTが照射された各部がドットdtとして現像されて、4つのドットdtで構成されるスクリーンドットSdtが形成される。この際、結像光学系OSaによるスポットSTのサイズは、結像光学系OSb、OScによるスポットSTのサイズと比較して顕著に大きい。そのため、領域ERaに形成されるスクリーンドットSdtの副走査方向SDへのサイズWa(幅)は、他の領域ERbに形成されるスクリーンドットSdrの副走査方向SDへのサイズWb、Wcと比較して大きくなる。その結果、所望の階調が再現できなかったり、あるいは、ライン画像を形成したような場合に、ライン幅がまちまちになってしまったりするといったおそれがあった。
【0061】
これに対して、「実施形態」に示す例では、デフォーカス量に応じて閾値が設定された閾値マトリックスMXa、MXbcが、結像光学系OSa、OSb、OScで使い分けられる。そのため、デフォーカス量の大きい結像光学系OSaで露光される領域ERaでは、2つの画素(マトリックスMXaの閾値が「100」以下の2つの画素PX)に対してのみスポットSTが照射される。そして、スポットSTが照射された各部がドットdtとして現像されて、領域ERaでは、2つのドットdtで構成されるスクリーンドットSdtが形成される。その結果、領域ERaのスクリーンドット幅Waと、他の領域ERb、ERcのスクリーンドット幅Wb、Wcとの差が抑制され、良好な画像形成が可能となっている。
【0062】
以上のように本実施形態は、結像光学系OSa(第1の結像光学系)に対応する発光素子グループEG(第1の発光素子群)と、結像光学系OSb、OSc(第2の結像光学系)に対応する発光素子グループEG(第2の発光素子群)とで、発光制御を変えている。具体的には、結像光学系OSaに対応する発光素子グループEGの発光は、閾値マトリックスMXa(第1の閾値マトリックス)とCMYK階調データ(階調データ)とを比較して生成したビデオデータVD(第1の二値データ)に基づいて制御される。一方、結像光学系OSb、OScに対応する発光素子グループEGの発光は、閾値マトリックスMXaと異なる閾値マトリックスMXb(第2の閾値マトリックス)とCMYK階調データとを比較して生成したビデオデータVD(第2の二値データ)に基づいて制御される。つまり、これらの発光素子グループEGの発光を、互いに異なる閾値マトリックスMXa、MXbに基づいて制御することで、各結像光学系OSa、OSb、OScのデフォーカス量の差異が画像に与える影響を抑制することができ、その結果、良好な画像形成が実現可能となる。
【0063】
特に、本実施形態では、閾値マトリックスMXaの閾値は結像光学系OSaのデフォーカス量(第1のデフォーカス量)に応じて設定され、閾値マトリックスMXbcの閾値は結像光学系OSb、OScのデフォーカス量(第2のデフォーカス量)に応じて設定されている。これにより、各結像光学系OSa、OSb、OScのデフォーカス量の差異が画像に与える影響をより確実に抑制することができ、その結果、さらなる良好な画像形成が可能となっている。
【0064】
その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、現像器24が本発明の「現像部」に相当し、メインコントローラーMCおよびヘッドコントローラーHCが協働して本発明の「発光制御部」として機能する。また、主走査方向MD(長手方向LGD)が本発明の「第1の方向」に相当し、副走査方向SD(幅方向LTD)が本発明の「第2の方向」に相当している。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、結像光学系OSbと結像光学系OScに対しては、同じ閾値マトリックスMXbcを用いた。しかしながら、これら結像光学系OSb、OScのデフォーカス量は厳密には異なる。そこで、結像光学系OSa、OSb、OScそれぞれのデフォーカス量(第1・第2・第3のデフォーカス量)に応じて、3種類の閾値マトリックスMXa、MXb、MXc(第1・第2・第3の閾値マトリックス)を使い分けて、ビデオデータVD(第1・第2・第3の二値データ)を生成し、これに基づいて各発光素子グループEG(第1・第2・第3の発光素子群)の発光を制御してもよい。これにより、各結像光学系OSa、OSb、OScのデフォーカス量の違いに依らず、良好な画像形成を図ることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、副走査方向SDに異なる位置にある結像光学系OSa、OSb、OScを中心に説明し、副走査方向SDに同じ位置にある複数の結像光学系OS、例えば、主走査方向MDに隣り合う2つの結像光学系OSa、OSaについては特に言及しなかった。ただし、例えば、これらの結像光学系OSa、OSaについても、デフォーカス量に応じて閾値を設定した閾値マトリックスを使い分けることができる。具体的には、これら結像光学系OSa、OSaのデフォーカス量に大きな差がある場合は、異なる閾値マトリックスを使い分ければ良い。ちなみに、これら結像光学系OSa、OSaのデフォーカス量が大きくなる要因としては、感光体ドラム21に対するラインヘッド29のスキューが考えられる。
【0067】
なお、これら結像光学系OSa、OSa(第1・第4の結像光学系)のデフォーカス量(第1・第4のデフォーカス量)が略同じであれば、共通の閾値マトリックスを用いて生成したビデオデータVD(第1・第4の二値データ)に基づいて、各発光素子グループEG(第1・第4の発光素子群)の発光を制御することが好適といえる。なぜなら、閾値マトリックスを共通化することで、メインコントローラーMCの構成やデータ処理の簡素化を図ることができるからである。
【0068】
また、上記実施形態では、潜像担持体として感光体ドラム21を用いた。しかしながら、特開2008−221570号公報の図26に記載されているような、感光体ベルトを潜像担持体として用い、感光体ベルトのローラーへの巻きかけ部をラインヘッド29で露光するように構成することもできる。
【0069】
また、感光体ドラム21と結像光学系OSa、OSb、OScとの配置関係も図9に示したものに限られず、結像光学系OSaまたは結像光学系OSbの光軸が曲率中心C21を通るように構成したり、あるいは結像光学系OSa、OSb、OScのいずれの光軸OAも曲率中心C21から外れるように構成したりすることができる。
【0070】
また、副走査方向SDに異なる位置に配置される結像光学系OSの個数(換言すれば、レンズ行の行数)は3個に限られず、2個あるいは4個以上であっても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、結像光学系OSの光学倍率については特に言及しなかった。しかしながら、結像光学系OSとしては、倒立像を結像するもの、正立像を結像するもの、縮小像を結像するもの、拡大像を結像するもの、あるいはこれらを組み合わせた光学特性を有するものを用いることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、各結像光学系OSa、OSb、OScは同じ結像面IPに結像していたが、各結像光学系OSa、OSb、OScが異なる結像面IPに結像するように構成することもできる。
【0073】
また、閾値マトリックスMXa、MXbcのサイズも上述の3×3に限られず、任意のサイズのものを使用可能である。この際、閾値マトリックスMXa、MXbcのサイズを共通としても良く、あるいは互いに異ならせても良い。
【0074】
また、上記実施形態では、同じ領域ERa等に属する基本セルCLに対しては同じ閾値マトリックスMXa等を用いた。例を挙げると、領域ERaには複数の基本セルCLが対応付けられているが(図7)、各基本セルCLに対して同じ閾値マトリックスMXaが用いられている。しかしながら、同じ領域ERaに属する複数の基本セルCLに対して、互いに異なる閾値マトリックスを用いることも可能である。
【0075】
また、基本セルCLと画素PXとの対応関係についても種々の変形が可能であり、例えば、隣接する基本セルCLを数画素ずつずらして、スクリーン角を持たせつつスクリーンドットSdtを成長させるように構成することもできる。
【0076】
また、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数や、配置態様も種々の変更が可能である。
【0077】
また、上述の有機EL素子以外に、LED(Light Emitting Diode)等の光源を、発光素子Eとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0078】
21…感光体ドラム、 24…現像器、 29…ラインヘッド、 E…発光素子、 EG…発光素子グループ、 LS1、LS2…レンズ、 OS、OSa、OSb、OSc…結像光学系、 MC…メインコントローラー、 HC…ヘッドコントローラー、 MXa、MXbc…閾値マトリックス、 ΔDa、ΔDb…デフォーカス量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の結像光学系、第2の結像光学系、前記第1の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第1の発光素子群、および前記第2の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を前記第1の方向に配設した第2の発光素子群を有する露光ヘッドと、
前記第1の結像光学系を透過した光が照射され、前記第2の結像光学系を透過した光が照射されて、潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像を現像する現像部と、
第1の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第1の二値データに基づいて、前記第1の発光素子群の発光素子の発光を制御し、第1の閾値マトリックスと異なる第2の閾値マトリックスと前記階調データとを比較して生成した第2の二値データに基づいて、前記第2の発光素子群の発光素子の発光を制御する発光制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記潜像担持体は、前記第1の方向に直交もしくは略直交する第2の方向の断面で有限の曲率を有し、
前記第1の結像光学系と前記第2の結像光学系とは、前記第2の方向に異なる位置に配設される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の結像光学系の前記潜像担持体での第1のデフォーカス量と前記第2の結像光学系の前記潜像担持体での第2のデフォーカス量とが異なり、前記第1の閾値マトリックスの閾値は前記第1のデフォーカス量に応じて設定され、前記第2の閾値マトリックスの閾値は前記第2のデフォーカス量に応じて設定される請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記露光ヘッドは、前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系に対して前記第2の方向に異なる位置に配設された第3の結像光学系と、前記第3の結像光学系を透過して前記潜像担持体に照射される光を発光する発光素子を前記第1の方向に配設した第3の発光素子群とを有し、
前記第3の結像光学系の前記潜像担持体での第3のデフォーカス量は、前記第1のデフォーカス量および前記第2のデフォーカス量と異なり、
前記発光制御部は、前記第3のデフォーカス量に応じて閾値が設定された第3の閾値マトリックスと前記階調データとを比較して生成した第3の二値データに基づいて、前記第3の発光素子群の発光素子の発光を制御する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記露光ヘッドは、前記第1の結像光学系に対して前記第2の方向に同じ位置に配設された第4の結像光学系と、前記第4の結像光学系を透過して前記潜像担持体に照射される光を発光する発光素子を前記第1の方向に配設した第4の発光素子群とを有し、
前記第4の結像光学系の前記潜像担持体での第4のデフォーカス量は、前記第1のデフォーカス量と等しく、
前記発光制御部は、前記第4の発光素子群の発光素子の発光を、前記第1の閾値マトリックスと前記階調データとを比較して生成した第4の二値データに基づいて制御する請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記潜像担持体は、感光体ドラムである請求項2ないし5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記潜像担持体は、ローラーに巻きかけられた感光体ベルトである請求項2ないし5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
第1の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を第1の方向に配設した第1の発光素子群の発光を、第1の閾値マトリックスと階調データとを比較して生成した第1の二値データに基づいて制御するとともに、第2の結像光学系を透過する光を発光する発光素子を前記第1の方向に配設した第2の発光素子群の発光を、前記第1の閾値マトリックスと異なる第2の閾値マトリックスと前記階調データとを比較して生成した第2の二値データに基づいて制御し、前記第1の結像光学系を透過した光および前記第2の結像光学系を透過した光によって潜像担持体に形成した潜像を現像することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−180396(P2011−180396A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44887(P2010−44887)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】