説明

画像形成装置およびその制御方法

【課題】環境に依存した形成画像の変化をより好適に補償する。
【解決手段】画像データを処理して画像形成手段により画像形成を行う画像形成装置において、画像データを入力する入力手段と、前記画像データに含まれる各画素の画像属性を判定する属性判定手段と、前記画像形成手段の動作環境を示し、少なくとも温度情報を含む環境情報を取得する取得手段と、前記取得した環境情報に基づいて、前記画像形成手段における動作環境に依存した画像形成濃度の変動を補償するための画像修正処理が必要か否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記画像修正処理が必要と判定された場合、前記画像データに対し前記画像修正処理を施す画像修正手段と、前記画像修正処理により画素値が変化した画素の画像属性を、該画素の画素値の決定に使用された画素の画像属性に修正する属性修正手段と、各画素の画像属性に従って、前記画像形成手段で利用される形成画像データを生成する生成手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置における画像処理技術、特に、環境に依存した形成画像の変化を補償する画像処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機などにおける記録媒体(用紙など)への出力において、出力環境や出力条件および画像形成部(感光ドラム、レーザ照射部など)の使用状況(例えば出力枚数)によって、出力画像の細線や文字の太さが変化する場合があった。例えば、使用により劣化した複写機を温度が高い環境で出力すると細線や文字の太さが、通常時よりも太く出力される場合があった。また、出力する紙種によって細線や文字の太さが変化してしまう場合があった。このような問題に対処すべく、画像形成に先立って行われる画像処理において細線や文字の予め細らせる技術が知られている。例えば特許文献1は、細線や文字のエッジ部の画素値を下げる(濃度を薄くする)細線化処理を施す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−070128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景に画像(例えばグラフィック属性の画像)がある文字に対して上述の細線化処理を適用した場合、当該文字のエッジ部の濃度が薄くなる。その結果、白抜けが発生したようにみえる画像が出力される場合や、ジャギーなどが目立つ画像が出力される場合があった。
【0005】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、環境に依存した形成画像の変化をより好適に補償する画像処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の1以上の問題点を解決するため、本発明の画像形成装置は以下の構成を備える。すなわち、画像データを処理して画像形成手段により画像形成を行う画像形成装置において、画像データを入力する入力手段と、前記画像データに含まれる各画素の画像属性を判定する属性判定手段と、前記画像形成手段の動作環境を示し、少なくとも温度情報を含む環境情報を取得する取得手段と、前記取得した環境情報に基づいて、前記画像形成手段における動作環境に依存した画像形成濃度の変動を補償するための画像修正処理が必要か否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記画像修正処理が必要と判定された場合、前記画像データに対し前記画像修正処理を施す画像修正手段と、前記画像修正処理により画素値が変化した画素の画像属性を、該画素の画素値の決定に使用された画素の画像属性に修正する属性修正手段と、各画素の画像属性に従って、前記画像形成手段で利用される形成画像データを生成する生成手段と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境に依存した形成画像の変化をより好適に補償する画像処理技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】画像形成装置の概略ブロック図である。
【図2】画像修正処理部のフローチャートである。
【図3】環境情報判定部を説明する図である。
【図4】環境情報判定部の詳細図である。
【図5】細らせ処理及び太らせ処理を説明する図である。
【図6A】画像修正処理UIを示す図である。
【図6B】画像修正処理UIの詳細設定画面を示す図である。
【図7】画像修正処理の詳細フローチャートである。
【図8】環境情報判定の例を示す図である。
【図9】環境情報判定の詳細な例を示す図である。
【図10】細らせ/太らせ処理の方向および参照画素を示す図である。
【図11】様々な画像属性を模式的に示す図である。
【図12】画像属性の修正による効果を模式的に示す図である。
【図13】太らせ処理の具体的処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0010】
(第1実施形態)
本発明に係る画像処理装置の第1実施形態として、画像形成装置を例に挙げて以下に説明する。
【0011】
<装置構成>
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置100の概略ブロック図である。以下では、画像形成装置100は、画像読取部10で読み取った画像データ又は画像受信部11により不図示の外部装置から受信した画像データを印刷出力するデジタル複合機であるとして説明する。なお以下の説明では、画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の色材(トナーやインクなど)を利用することを想定する。しかし、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の色材など他の色材の組合せを利用する場合についても適用可能である。
【0012】
画像形成装置100は、画像読取部10、画像受信部11、設定ユーザインタフェース(UI)17、各種画像処理を行う画像処理部12、記憶部15、CPU16及び画像出力部13を備える。画像読取部10は、入力画像を読み取る。例えば、画像読取部10はカラー画像等を読み取る機能部である。また、画像受信部11は、LANやインターネット等の外部通信路14を介して、画像データを管理するサーバや、この画像形成装置に対してプリントの実行を指示するパーソナルコンピュータ(PC)から画像データを受信する。
【0013】
画像読取部10で読み取った画像データ又は画像受信部11に入力された画像データは、画像処理部12に入力される。スキャナ画像処理部120は、画像読取部10で読み取った画像データに対してシェーディング補正、像域分離処理、色変換等の画像処理を行う。なお、像域分離処理とは、画像データの各画素に当該画素の属性情報を付加する処理である。
【0014】
図11は、画像に含まれる各種属性を有するオブジェクト画像を模式的に示す図である。具体的には、オブジェクト画像の属性には、文字50を示す文字属性、背景51を示す背景属性、自然画などのイメージ52を示すイメージ属性、細線53であることを示す細線属性、図形などのグラフィック54であることを示すグラフィック属性などが含まれる。
【0015】
一方、プリンタ画像処理部121は、画像データがプリンタ記述言語(PDL)で表現されたデータであった場合、当該画像データに含まれるPDLのコマンド群を解釈し中間コードを出力する。そして、プリンタ画像処理部121内のラスターイメージプロセッサ(RIP)は中間コードからビットマップ画像へと展開し色処理部122に出力する。一方で、PDLのコマンド群に含まれる属性情報から画素毎の属性情報を展開し、画像修正処理部123に出力する。
【0016】
次いで、色処理部122は、スキャナ画像処理部120又はプリンタ画像処理部121からの画像データを受け付け、RGB→CMYKの色変換処理などを行う。画像修正処理部123は、CMYK画像に対して画像修正を行う。特に、画像修正処理部123は、画像出力部13の環境による画像形成の変動を補償するための画像処理(後述する太らせ処理や細らせ処理)を行う。
【0017】
図2は、画像修正処理部123のより詳細な機能ブロックを示す図である。属性判定部123−1、濃度判定部123−2、濃度修正部123−3、属性修正部123−4が含まれる。属性判定部123−1は、入力された画像データの各画素の画像属性を判定する。当該判定はスキャナ画像処理部120から入力された像域分離処理の結果又はプリンタ画像処理部121入力された属性情報を用いて行われる。濃度判定部123−2は、入力された画像データの各画素の濃度(画素値)を判定する。濃度修正部123−3は、濃度判定部123−2において判定された各画素の濃度(画素値)を用いて、注目画素の濃度(画素値)を修正する。属性修正部123−4は、濃度修正部123−3において濃度(画素値)が修正された画素の属性情報を修正する。なお、画像修正処理部123における画像修正処理の詳細については図7を参照して後述する。
【0018】
フィルタ処理部124は、画像修正処理部123から入力された画像データに対し、エッジ強調やスムージングなどの処理を行う。載り量制御処理部125は、フィルタ処理部124から入力されたフィルタ後の画像データに基づいて記録材(用紙などの記録媒体)に適した載り量の制御を行う。ガンマ処理部126は、載り量制御処理部125から入力された画像データに基づいて、当該画像データのガンマ処理を行う。ディザ処理部127は、上述の各処理部で処理された画像データに対してディザ処理を行う。フィルタ処理部124及びディザ処理部127による処理により、画像出力部13により利用されるCMYK各色の形成画像データが生成される。
【0019】
フィルタ処理部124からディザ処理部127の各処理部では、画像データに含まれる各画素の属性情報を用いて当該画像データを処理するように構成されている。例えば、ディザ処理部127は、文字属性又は細線属性を有する画素に対してはジャギーが目立たないように高線数スクリーン(例えば200線以上)を適用する。一方、背景属性、イメージ属性、グラフィック属性を有する画素に対しては、画像処理における色変動の発生を低減すべく、低線数スクリーン(例えば130〜170線程度)を適用する。
【0020】
記憶部15は、ランダムアクセスメモリ(RAM)や読み出し専用メモリ(ROM)等のさまざまな記憶媒体から構成される。例えば、RAMはデータや各種情報を格納する領域として用いられたり、CPU16の作業領域として用いられたりする。一方、ROMは、各種制御プログラムを格納する領域として用いられる。また、CPU16は、ROMに格納されたプログラムに従って各種処理を判断、制御する。画像出力部13は、画像を出力(例えば、印刷用紙等の記録媒体への画像形成出力)を行う。
【0021】
図3は、情報調整部21が実行する処理を説明する図である。情報調整部21は、画像形成装置100における環境情報に基づいて画像修正処理部123における画像修正処理(太らせ処理や細らせ処理)の要否や修正量を決定する。
【0022】
環境情報判定部211は、記録材情報取得部18から取得される記録材に関する記録材情報、環境情報取得部19から取得される環境情報、耐久情報取得部20から取得される耐久情報を取得する。つまり、色材(トナーやインクなど)の記録材(用紙など)への定着性の変化の要因となり得る、画像形成の動作環境に関する情報を取得する。そして環境情報判定部211は、これらの情報に基づいて太らせ処理や細らせ処理の必要があるか判定を行う。
【0023】
具体的には、記録材の種別(上質紙か再生紙かなど)によって定着性などが変化する。また、画像出力部13の温度・湿度などの環境によっても定着性が変化する。さらに、画像出力部13の経年劣化によっても定着性などが変化する。なお、環境情報については画像形成出力時における情報だけでなく、過去の履歴情報を併せて用いるように構成してもよい。過去の履歴情報を用いることにより、制御の過多を抑制することが可能になる。
【0024】
環境情報判定部211が、太らせ処理または細らせ処理の必要があると判断した場合、修正幅を算出し画像修正設定保存部151に進み修正幅の値を記憶部15に保存する。一方、画像修正処理の必要がないと判断した場合、画像修正設定保存部151に進み修正幅を”0”として記憶部15に保存する。
【0025】
環境情報判定部211における判定方法についてより詳細に説明する。まず、環境情報取得部19から温度情報を取得し、画像修正処理の必要が無い”通常温域”の範囲にあるか否かの判定を行う。なお、”通常温域”の上限及び下限の閾値温度はあらかじめ記憶部15に記憶されている。取得された温度が”通常温域”の範囲にある場合は、修正幅を”0”として決定する。一方、取得された温度が、”通常温域”より高い”高温域”、”通常温域”より低い”低温域”の何れかにある場合は画像修正処理の必要があると判断し、対応する修正幅を設定する。具体的には、低温域であると判定された場合、細線や文字は細る傾向(濃度が薄くなる傾向)にあるので予め画像を太らせる必要があると判定する。一方、高温である場合は太る傾向(濃度が濃くなる傾向)にあるので予め細らせる必要があると判定する。例えば、修正幅は、予め太らせる必要があると判定された場合は”+1”、予め細らせる必要があると判定された場合は”−1”と決定する。ただし、温度域に応じてより詳細に修正幅を決定してもよい。
【0026】
図9(a)は、温度と修正幅の対応関係を例示的に示す図である。ここで修正幅は画素数を表しプラスであれば太らせ処理を意味し、マイナスであれば細らせ処理を意味する。なお、区間901では1画素分太るが、当該画素の濃度は0〜255(8ビットの場合)の間で変化する。また、区間902では2画素分太るが、1画素目の画素(より内周の画素)の濃度は255に設定され、2画素目の画素(より外周の画素)の濃度は0〜255(8ビットの場合)の間で変化する。以下では、例えば、修正幅=+1.5(画素)とは、1画素目の修正濃度が”255”で2画素目の修正濃度が”128”であることを意味する。
【0027】
図9(b)は、温度と修正幅の他の対応関係を例示的に示す図である。図9(a)に示される対応関係とは、”通常温域”の上限(第1の閾値温度)及び下限(第2の閾値温度)の閾値温度が異なり、図9(b)における”通常温域”の方がより広く設定されている。図9(b)に示される対応関係は、例えば、耐久情報取得部20から取得された耐久情報により使用回数が少ないと判定された場合に使用される。 つまり、一般に画像出力部13の使用回数が増え経年劣化が進むほど、画像形成濃度の変動が大きくなる。そこで、画像出力部13の使用回数が少ないうちは図9(b)の関係を使用し、使用回数が所定回数より多くなった場合に図9(a)に示される関係を使用するよう構成するのである。なお、同様に湿度や記録材の種別に応じて上述の”通常温域”の上限及び下限の閾値温度を変更するよう構成してもよい。
【0028】
さらに温度だけではなく修正幅に関するパラメータを変更するよう構成してもよい。また、ユーザによって設定された修正強度(図6Bを参照して後述する自動設定レベルのUI176)に応じて、温度と修正幅の対応関係を選択的に使用するよう構成してもよい。図9(c)は、ユーザにより修正強度を弱くする設定(レベル1)が指定された場合の対応関係を例示的に示している。
【0029】
図4は、判定基準決定処理を説明する図である。判定基準決定部211−1は、記録材情報取得部18から記録材情報、環境情報取得部19から湿度情報、耐久情報取得部20から耐久情報をそれぞれ取得し、最後に設定UI17からレベル情報を取得する。これによって図9(a)〜(c)に例示される対応関係を決定する。具体的には、対応関係ををあらかじめ複数個用意しておき、記録材情報、湿度情報、耐久情報そしてレベル情報などによって選択するよう構成するとよい。
【0030】
その後、太らせ細らせ判定部211−2は、環境情報取得部19から現在の温度情報を取得し、判定基準決定部211−1が決定した図9に例示される対応関係を用いて修正幅を決定する。その後、画像修正設定保存部151に修正幅の情報を保存する。
【0031】
図8は、対応関係の選択に利用する記録材(紙種X)に対するルックアップテーブルを意味している。ここでは、対応関係1A〜3Cまで9つの対応関係を用意している。そして、湿度や耐久情報に基づいてA〜Cの何れかを選択し、ユーザにより選択されたレベル情報(UI176)に基づいてレベル1〜3の何れかを選択するよう構成されている。もちろん、取得した情報(湿度や耐久情報、レベル)をパラメータとして、所定の数式に代入することにより対応関係を導出するよう構成してもよい。
【0032】
<設定UI>
図6A及び図6Bは、設定UI17で行われる設定について説明する。ここでは、修正に必要な情報の設定方法について説明する。設定UI17により設定されたパラメータは画像修正設定保存部151へ保存される。
【0033】
図6Aは、画像修正処理(太らせ処理や細らせ処理)に関するパラメータを設定するユーザインタフェース(UI)を例示的に示す図である。具体的には、各画像属性(文字、細線、イメージ、グラフィック)に対する修正方法、修正幅、修正濃度の設定を受け付ける。UI171では修正方法を、”太らせ”、”細らせ”、”なし”、”自動”の4つから選択する。ここで”自動”が選択されると、上述した環境情報判定部211による自動設定がなされる。”太らせ”または”細らせ”が選択されると、UI172における修正幅が固定的に適用される。なお、修正幅は例えば0〜3画素の間で指定される。また、UI173における修正濃度は、画像修正処理における参照画素の濃度に対する注目画素の濃度修正の度合いを示す値が設定される。例えば、修正濃度は、0〜100%の間で指定される。なお、”なし”が選択されると修正幅及び修正濃度は共に”0”に設定される。
【0034】
図6Bは、太らせ処理における色版毎の詳細設定を行うユーザインタフェース(UI)を例示的に示す図である。YMCKの色版ごとに、修正の要否の設定、及び修正を行う場合の修正方向の設定をユーザから受け付ける。ここで、例えばブラックだけが選択されていればブラックだけ太らせる(又は細らせる)ことが可能になる。UI175において指定する修正方向は、太らせ処理や細らせ処理の方向を8方向から指定する。これは、例えば画像出力部13における主走査方向及び副走査方向の画像形成特性の違いを補償するために使用される。修正方向を適切に設定することで形成画像の品位を高く保つことができる。
【0035】
<装置の動作>
・細らせ処理の場合
図7は、画像修正処理部123で行われる画像修正処理の詳細フローチャートである。ここでは、情報調整部21と設定UI17で決定された情報をもとに細らせ処理を行う場合について説明する。なお、以下の処理はある1つの画素(注目画素)に対する処理を示しており、実際には、画像データの全画素(あるいは指定された画像領域の画素)に対して以下で説明する処理が順次実行される。
【0036】
ステップS1231は、注目画素の属性判定を行うサブステップS1231−1と参照画素の属性判定を行うサブステップS1231−2とを含む。S1231−1では、属性判定部123−1は、注目画素の属性が、細らせ処理の対象となる属性と一致するか否かを判定する。上述したように、図6Aに示すUIにおいて属性毎に画像修正処理が指定され、当該指定は画像修正設定保存部151に保存されている。一致する(細らせ処理の対象である)と判定された場合はS1231−2に進み、対象でないと判定された場合は現在の注目画素に対する処理は終了する。S1231−2では、属性判定部123−1は、現在の注目画素に対応する参照画素の属性が、細らせ処理の対象となる属性と一致するか否かを判定する。ここで、参照画素とは、図6Bにおける修正方向設定UI17に指定された細らせを行う方向と逆方向の領域を示している。
【0037】
図10(a)は、細らせ処理における注目画素と参照画素の関係を例示的に示す図である。細らせ処理を行う方向がパターン1001のように設定されている場合、それとは反転したパターン1002に示す領域内の3個の画素が参照画素になる。なお、中心の1個の画素が注目画素に相当する。
【0038】
S1231−2において、一致しないと判定された場合は、ステップS1232に進み、一致すると判定された場合は現在の注目画素に対する処理は終了する。例えば、文字属性の画像を細らせると設定されていた場合、画像修正設定保存部151は、注目画素が文字属性であり参照画素が文字属性以外であると設定されている。すなわち、注目画素が文字属性でありかつ参照画素が文字属性以外である場合に細らせ処理の対象と判定される。つまり、文字画像の画素のうち背景画像と接しているエッジ領域を細らせ処理の対象画素として判定するのである。
【0039】
ステップS1232は、注目画素の濃度判定を行うサブステップS1232−1と参照画素の濃度判定を行うサブステップS1232−2とを含み、細らせ処理を実行すべき画素であるか否かを判定する。S1232−1では、濃度判定部123−2は、注目画素の濃度と画像修正設定保存部151で設定されている第1閾値とを比較し、注目画素の濃度が第1閾値以上であればS1232−2へ進む。注目画素の濃度が第1閾値未満であれば細らせ処理の対象でないと判定し現在の注目画素に対する処理は終了する。S1232−2では、濃度判定部123−2は、参照画素の濃度と画像修正設定保存部151で設定されている第2閾値とを比較し、参照画素の濃度が第2閾値以上であればS1233へ進む。参照画素の濃度が第2閾値未満であれば細らせ処理の対象でないと判定し現在の注目画素に対する処理は終了する。
【0040】
なお、望ましい形態として、注目画素濃度判定処理(S1232−1)は色版ごとに行われ、色版ごとに第1閾値を設定できるようにする。例えば、修正色版(UI174)がブラックのみ指定された場合、ブラックの第1閾値は”0”と設定されブラック以外の第1閾値は”255”と設定する。その結果、注目画素濃度判定(S1232−1)では、注目画素にブラックがあれば常に細らせ処理を実行すべき画素であると判定することが出来る。
【0041】
また、例えば第1閾値を”150”と設定すれば濃度が濃い画素のみを細らせる設定が可能になる。また、例えば第2閾値を”0”と設定した場合、任意の背景濃度に対して細らせ処理を行うことが可能になる。
【0042】
ステップS1233では、濃度修正部123−3は、参照画素を参照して注目画素の濃度を修正する。例えば、参照画素の濃度にUI173で設定された修正濃度の設定値を乗じた値を、修正後の注目画素の濃度として決定する。もちろん修正後の注目画素の濃度の具体的な決定方法は他の様々な形態が考えられる。例えば、UI173において修正濃度が”A”(%)に設定されていた場合に、
(修正後の注目画素濃度)={(現在の注目画素濃度)×(100−A)%+(参照画素濃度)×(A)%}
のように重み付け演算を用いてもよい。
【0043】
ここで、図5(a)を参照して濃度修正部123−3のより詳細な動作について説明する。具体的には、背景属性を持つ画像領域520と文字属性を持つ画像領域510との境界(エッジ領域)において、文字属性である注目画素500の濃度を算出する場合について述べる。図5(a)の左図において注目画素500に対応する参照画素は領域501に位置する3個の画素(何れも濃度が”0”)である。修正濃度が100%である場合、注目画素500の濃度は上述の数式により、参照画素の濃度である”0”に置換される。その結果、図5(a)の右図に示されるように、細らせ処理を実現することができる。
【0044】
なお、JPEG圧縮などの影響により文字の周辺の濃度が不均一となっている場合には、3個の参照画素の濃度の平均値で置換するよう構成してもよい。このようにすることにより、圧縮ノイズの濃い参照画素が存在した場合であっても、好適に細らせ処理を行うことが可能になる。
【0045】
ステップS1234では、属性修正部123−4は、修正後の注目画素の属性を参照画素の属性に修正する。例えば、注目画素が文字属性であり参照画素が背景属性であれば、注目画素の属性を文字属性から背景属性に修正する。
【0046】
・太らせ処理の場合
上述した細らせ処理と同様に図7をい参照して太らせ処理を説明する。なお、以下の処理はある1つの画素(注目画素)に対する処理を示しており、実際には、画像データの全画素(あるいは指定された画像領域の画素)に対して以下で説明する処理が順次実行される。
【0047】
ステップS1231では、属性判定部123−1は、注目画素の属性が、太らせ処理の対象となる属性と一致するか否かを判定する。一致する(太らせ処理の対象である)と判定された場合はS1231−2に進み、対象でないと判定された場合は現在の注目画素に対する処理は終了する。S1231−2では、属性判定部123−1は、現在の注目画素に対応する参照画素の属性が、太らせ処理の対象となる属性と一致するか否かを判定する。
【0048】
図10(b)は、太らせ処理における注目画素と参照画素の関係を例示的に示す図である。太らせ処理を行う方向がパターン1003のように設定されている場合、それとは反転したパターン1004に示す領域内の3個の画素が参照画素になる。なお、中心の1個の画素が注目画素に相当する。
【0049】
S1231−2において、一致しないと判定された場合は、ステップS1232に進み、一致すると判定された場合は現在の注目画素に対する処理は終了する。例えば、文字属性の画像を太らせると設定されていた場合、画像修正設定保存部151は、注目画素が文字属性以外であり参照画素が文字属性であると設定されている。すなわち、注目画素が文字属性以外でありかつ参照画素が文字属性である場合に画像修正処理の対象と判定される。つまり、背景画像の画素のうち文字画像と接しているエッジ領域を画像修正処理の対象画素として判定するのである。
【0050】
ステップS1232は、注目画素の濃度判定を行うサブステップS1232−1と参照画素の濃度判定を行うサブステップS1232−2とを含み、画像修正処理を実行すべき画素であるか否かを判定する。S1232−1では、濃度判定部123−2は、注目画素の濃度と画像修正設定保存部151で設定されている第3閾値とを比較し、注目画素の濃度が第3閾値以上であればS1232−2へ進む。注目画素の濃度が第3閾値未満であれば画像修正処理の対象でないと判定し現在の注目画素に対する処理は終了する。S1232−2では、濃度判定部123−2は、参照画素の濃度と画像修正設定保存部151で設定されている第4閾値とを比較し、参照画素の濃度が第4閾値以上であればS1233へ進む。参照画素の濃度が第4閾値未満であれば画像修正処理の対象でないと判定し現在の注目画素に対する処理は終了する。
【0051】
なお、第3閾値及び第4閾値は、例えば、図6Bに示すUIにおける設定により決定される。また、望ましい形態として、参照画素濃度判定処理(S1232−2)は色版ごとに行われ、色版ごとに第4閾値を設定できるようにする。例えば、修正色版(UI174)がブラックのみ指定された場合、ブラックの第4閾値は”0”と設定されブラック以外の第4閾値は”255”と設定する。その結果、参照画素濃度判定(S1232−2)では、参照画素にブラックがあれば常に画像修正処理を実行すべき画素であると判定することが出来る。また、例えば第3閾値を”0”と設定した場合、任意の文字濃度に対して太らせ処理を行うことが可能になる。
【0052】
ステップS1233では、濃度修正部123−3は、参照画素を参照して注目画素の濃度を修正する。ここで、図5(b)を参照して濃度修正部123−3のより詳細な動作について説明する。具体的には、背景属性を持つ画像領域520と文字属性を持つ画像領域510との境界(エッジ領域)において、背景属性である注目画素500の濃度を算出する場合について述べる。図5(b)の左図において注目画素500に対応する参照画素は領域502に位置する3個の画素である。3個の参照画素のうち2個は濃度が”255”であり1個は濃度が”0”である。ここでは、参照画素の濃度の最大値である”255”に置換される。その結果、図5(b)の右図に示されるように、太らせ処理を実現することができる。
【0053】
ステップS1234では、属性修正部123−4は、修正後の注目画素の属性を参照画素の属性に修正する。例えば、注目画素が背景属性であり参照画素が文字属性であれば、注目画素の属性を背景属性から文字属性に修正する。
【0054】
なお、以上の説明においては、文字属性の画素の濃度は”255”であり、背景属性の画素の濃度は”0”であるとして説明を行ったが、文字属性の画素の濃度が背景属性の画素の濃度より大きければ同様の処理が適用可能である。なお、白抜き文字のように、文字属性の画素の濃度が背景属性の画素の濃度より小さい場合は、高温域において文字属性の画像の太らせ処理を行い、低温域において文字属性の画像の細らせ処理を行うよう構成するとよい。
【0055】
<第1実施形態の効果>
図12は、画像修正処理(太らせ処理)を行った際の形成画像の様子を模式的に示す図である。
【0056】
背景属性を有する画像領域520と文字属性を持つ画像領域510とを含む画像1200に対して、太らせ処理を行った画像1210の拡大図が例示的に示されいる。画像1210には、太らせ処理により画素値が変化した画像領域530が含まれている。
【0057】
従来の技術においては、画像領域530の画像領域対応する属性は修正しない(つまり背景属性のまま)。そのため、画像1210をディザ処理部127により処理する場合、画像領域530を画像処理における色変動の発生を低減すべく、低線数スクリーン(例えば130〜170線程度)を適用して処理する。その結果、場合によっては、背景技術において説明した白抜けが発生したようにみえる画像1210aが出力されることになる。
【0058】
一方、第1実施形態においては、画像領域530の画像領域対応する属性を修正する(つまり文字属性に修正される)。そのため、画像1210をディザ処理部127により処理する場合、画像領域530を画像処理に起因するジャギーが目立たないように高線数スクリーン(例えば200線以上)を適用して処理する。その結果、白抜けが発生したようにみえる画像が出力されることを低減することが可能となる。
【0059】
なお、ここではディザ処理部127における処理について説明した。しかし、画像領域530の画像領域対応する属性を修正した後、当該属性に基づいた処理を行うことにより、フィルタ処理部124、載り量制御処理部125、ガンマ処理部126などにおいても、より好適な処理結果が得られることが期待できる。
【0060】
さらに、プリンタ画像処理部121内のラスターイメージプロセッサ(RIP)から出力される属性情報と共に、線幅を示すポイントや画素数などの情報を付加してもよい。その場合、属性ごとに太らせや細らせを行いたいポイントや画素数を指定することにより、例えば、細らせ処理後の細線の幅が0画素となり消失するような事態を低減することが可能となる。
【0061】
以上説明したとおり第1実施形態によれば、環境に依存する画像形成濃度を補償すると共に、当該補償のための画像修正処理に起因する画像の劣化を低減することが可能となる。
【0062】
(第2実施形態)
第2の実施形態では、非整数画素(例えば1.5画素)分の画像修正処理を行う場合について説明する。装置構成および装置の概略動作については第1実施形態と同様であるので説明は省略する。以下では、1.5画素分の太らせ処理について、図13を参照して説明する。なお、図13は、第1実施形態における図5(b)に対応する図である。
【0063】
図13は、1.5画素分の太らせ処理を模式的に説明する図である。具体的には、図5(b)と同様、背景属性を持つ画像領域520と文字属性を持つ画像領域510との境界(エッジ領域)において、背景属性である注目画素500の濃度を算出する場合について述べる。ただし、1.5画素分の太らせ処理を行うため、文字属性を有する画像領域510から2画素分離れた位置に注目画素がある場合にも濃度修正が発生する。つまり、1.5画素を、1画素分離れた画素に”1.0”を、2画素分離れた画素に”0.5”をそれぞれ分配する。
【0064】
図13(a)は、文字属性を有する画像領域510から2画素分離れた画素における太らせ処理を示す図である。ここでは、注目画素1300の濃度を参照画素の領域1301内かつ文字属性を有する画素の濃度を用いて決定する。すなわち、領域1301内の画像領域510の3個の画素の何れかの濃度に、上述のように分配された0.5を乗じた値を用いて決定する。その結果、修正後の注目画素の濃度は、画像領域520の画素の濃度と画像領域510の画素の濃度との平均濃度に設定される。一方、図13(b)は、文字属性を有する画像領域510から1画素分離れた画素における太らせ処理を示す図である。上述のように分配された”1,0”を乗じた値を用いて決定する。その結果、修正後の注目画素の濃度は、画像領域510の画素の濃度と同一の濃度に設定される。これらの処理を行うことにより、図13(c)に示されるような1.5画素分の太らせ処理を実現することができる。
【0065】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを処理して画像形成手段により画像形成を行う画像形成装置であって、
画像データを入力する入力手段と、
前記画像データに含まれる各画素の画像属性を判定する属性判定手段と、
前記画像形成手段の動作環境を示し、少なくとも温度情報を含む環境情報を取得する取得手段と、
前記取得した環境情報に基づいて、前記画像形成手段における動作環境に依存した画像形成濃度の変動を補償するための画像修正処理が必要か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記画像修正処理が必要と判定された場合、前記画像データに対し前記画像修正処理を施す画像修正手段と、
前記画像修正処理により画素値が変化した画素の画像属性を、該画素の画素値の決定に使用された画素の画像属性に修正する属性修正手段と、
各画素の画像属性に従って、前記画像形成手段で利用される形成画像データを生成する生成手段と、
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像修正処理の対象となる画像属性を指定する指定手段を更に備え、
前記画像修正手段は、前記指定手段で指定された画像属性の画像領域のエッジ領域の画素の濃度を修正するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像修正処理は、エッジ領域の画素の濃度を下げる細らせ処理とエッジ領域の画素の濃度を上げる太らせ処理とを含むことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記温度情報が第1の閾値温度より高い温度を示す場合は前記細らせ処理が必要と判定し、前記温度情報が前記第1の閾値温度より低い第2の閾値温度より低い温度を示す場合は前記太らせ処理が必要と判定することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像データを処理して画像形成手段により画像形成を行う画像形成装置の制御方法であって、
入力手段が、画像データを入力する入力工程と、
属性判定手段が、前記画像データに含まれる各画素の画像属性を判定する属性判定工程と、
取得手段が、前記画像形成手段の動作環境を示し、少なくとも温度情報を含む環境情報を取得する取得工程と、
判定手段が、前記取得した環境情報に基づいて、前記画像形成手段における動作環境に依存した画像形成濃度の変動を補償するための画像修正処理が必要か否かを判定する判定工程と、
画像修正手段が、前記判定工程により前記画像修正処理が必要と判定された場合、前記画像データに対し前記画像修正処理を施す画像修正工程と、
属性修正手段が、前記画像修正処理により画素値が変化した画素の画像属性を、該画素の画素値の決定に使用された画素の画像属性に修正する属性修正工程と、
生成手段が、各画素の画像属性に従って、前記画像形成手段で利用される形成画像データを生成する生成工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図5】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−121265(P2012−121265A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274917(P2010−274917)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】