説明

画像形成装置および不良ノズル検知方法

【課題】印字動作中であってもインク滴を吐出できない不良ノズルを精度よく検知することができる画像形成装置および不良ノズル検知方法を提供する。
【解決手段】吐出信号出力部101が、検知対象ノズルからインク滴を吐出させるための吐出信号を出力する。判定部102は、吐出信号の出力に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値以下の場合に、検知対象ノズルを不良ノズルと判定する。補正部103は、判定部102が検知対象ノズルを不良ノズルと判定した場合に、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号を第2の閾値と比較し、第2の検出信号が第2の閾値以下であれば、判定部102の判定結果を無効とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルからインク滴を吐出して記録紙に画像を形成する画像形成装置、および、インク滴を吐出できない不良ノズルを検知する不良ノズル検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の一つであるインクジェットプリンタは、複数のノズルが配列された印字ヘッドを備え、この印字ヘッドに設けられたノズルから記録紙の紙面上にインク滴を吐出することにより、記録紙に画像を形成する。このようなインクジェットプリンタは、インクの粘度の増加や、気泡の混入、塵や紙粉の付着等の原因によって、いくつかのノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できない場合がある。
【0003】
インク滴を吐出できない不良ノズルが発生した場合、そのままの状態で画像形成を継続すると画像品位が著しく低下する。そのため、不良ノズルをいち早く検知して、クリーニングなどの対策を迅速に行うことが望まれる。特に、複数の印字ヘッドを主走査方向に沿って配列したライン型インクジェットプリンタは、印字速度が速く、不良ノズルが発生してからの対処が遅れると多大な損失を受けてしまう。
【0004】
このような観点から、インクジェットプリンタの分野では、不良ノズルを検知するための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1に開示されているように、インク滴の吐出方向と交差する方向に向けて検出光を出射する発光素子と、ノズルから吐出されたインク滴に検出光が照射されることで生じる散乱光を受光する受光素子とを設け、受光素子からの出力に基づいてインク液の吐出状態を判定して不良ノズルを検知する技術が知られている。
【0005】
また、記録紙への画像形成を行う動作中(印字動作中)に不良ノズルを検知する技術として、例えば、特許文献2に開示される技術や、特許文献3に開示される技術が知られている。
【0006】
特許文献2に開示される技術は、記録紙の端部を検出するためのセンサを用いて、印字動作中に順次搬送される2つの記録紙の間の記録紙が存在しないスペースを判定し、このスペースが差し掛かるたびに各ノズルからインク滴を順次吐出させて光学的に不良ノズルの検知を行うというものである。
【0007】
また、特許文献3に開示される技術は、検知対象となるノズルのインク滴吐出のタイミングを、他のノズルがインク滴を吐出するタイミングに対して早くまたは遅くすることで、印字動作中に光学的に不良ノズルを検知できるようにするというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、印字動作中に光学的に不良ノズルの検知を行う場合には、記録紙を搬送する搬送ベルトの浮きや搬送ベルト上の記録紙の浮きによって、発光素子から出射された検出光が遮られてしまう場合があり、このような場合には不良ノズルを適切に検知することができない。特に、ライン型インクジェットプリンタでは、印字動作中に、印字ヘッドが、高速回転する搬送ベルトの間に1mm程度の僅かなギャップを介して対向する位置に固定される。このため、搬送ベルトや記録紙に僅かな浮きが生じただけでも、不良ノズルを検知するための検出光が遮られてしまって適切な検知が行えなくなる。
【0009】
ライン型インクジェットプリンタでは、搬送ベルトの浮きを抑えるための様々な技術が提案されているが、搬送ベルトの浮きを完全になくすことは難しい。このため、突発的に搬送ベルトの浮きや記録紙の浮きが生じることによって、一時的に検出光が遮られてしまうことがある。そして、従来技術では、このような搬送ベルトの浮きや記録紙の浮きによって検出光が遮られていることを判断できないため、搬送ベルトの浮きや記録紙の浮きによって検出光が遮られていることによって受光素子の出力が低下している場合に、インク滴が吐出されていないと判定してしまい、不良ノズルの検知精度が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印字動作中であってもインク滴を吐出できない不良ノズルを精度よく検知することができる画像形成装置および不良ノズル検知方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、印字ヘッドに設けられたノズルから、搬送手段により搬送される記録紙上にインク滴を吐出することにより、前記記録紙に画像を形成する画像形成装置であって、前記インク滴の吐出経路と交差する検出光を発生する発光手段と、前記ノズルのうち不良検知の対象となる検知対象ノズルから前記インク滴を吐出させるための吐出信号を出力する吐出信号出力手段と、前記検出光が前記インク滴に照射されることで生じる散乱光を受光して、受光した光量に応じた第1の検出信号を出力する第1の受光手段と、前記インク滴に照射されずに前記インク滴の吐出経路を通過した前記検出光を受光して、受光した光量に応じた第2の検出信号を出力する第2の受光手段と、前記吐出信号が出力された際に前記第1の受光手段から出力される前記第1の検出信号に基づいて、前記検知対象ノズルが前記インク滴を吐出できない不良ノズルか否かを判定する判定手段と、前記第2の受光手段から出力される前記第2の検出信号に基づいて、前記判定手段の判定結果を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る不良ノズル検知方法は、印字ヘッドに設けられたノズルから、搬送手段により搬送される記録紙上にインク滴を吐出することにより、前記記録紙に画像を形成する画像形成装置において実行される不良ノズル検知方法であって、前記画像形成装置の発光手段が、前記インク滴の吐出経路と交差する検出光を発生するステップと、前記画像形成装置の吐出信号出力手段が、前記ノズルのうち不良検知の対象となる検知対象ノズルから前記インク滴を吐出させるための吐出信号を出力するステップと、前記画像形成装置の第1の受光手段が、前記検出光が前記インク滴に照射されることで生じる散乱光を受光して、受光した光量に応じた第1の検出信号を出力するステップと、前記画像形成装置の第2の受光手段が、前記インク滴に照射されずに前記インク滴の吐出経路を通過した前記検出光を受光して、受光した光量に応じた第2の検出信号を出力するステップと、前記画像形成装置の判定手段が、前記吐出信号が出力された際に前記第1の受光手段から出力される前記第1の検出信号に基づいて、前記検知対象ノズルが前記インク滴を吐出できない不良ノズルか否かを判定するステップと、前記画像形成装置の補正手段が、前記第2の受光手段から出力される前記第2の検出信号に基づいて、前記判定手段の判定結果を補正するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印字動作中であってもインク滴を吐出できない不良ノズルを精度よく検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態に係る画像形成装置の側面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る画像形成装置の上面図である。
【図3】図3は、搬送ベルトの一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図4は、ヘッドアレイを図1中の矢印Aで示す方向からみた正面図である。
【図5】図5は、ヘッドアレイを図1中の矢印Bで示す方向から見た底面図である。
【図6】図6は、ヘッドアレイに設けられた発光ユニットと受光ユニットの配置を説明する図である。
【図7】図7は、発光ユニットが発生する検出光の幅と、印字ヘッドに設けられたノズル列との関係を説明する図である。
【図8】図8は、発光ユニットの外観を示す斜視図である。
【図9】図9は、発光ユニットの内部構成を示す断面図である。
【図10】図10は、受光ユニットの外観を示す斜視図である。
【図11】図11は、受光ユニットの内部構成を示す断面図である。
【図12】図12は、受光ユニットの内部構成を示す平面図である。
【図13】図13は、検出光の光路を印字ヘッドのノズル面側から見た様子を示す模式図である。
【図14】図14は、印字ヘッドをキャッピングするキャッピングユニットの概略構成を示す側面図である。
【図15】図15は、本実施形態に係る画像形成装置の不良ノズル検知機構に関わる制御系の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は、搬送ベルトや記録紙によって検出光が遮られていない正常な状態において不良ノズルを検知するための処理を行った場合のタイミングチャートである。
【図17】図17は、搬送ベルトや記録紙によって検出光が遮られた状態において不良ノズルを検知するための処理を行った場合のタイミングチャートである。
【図18】図18は、印字直前や印字動作中にヘッドアレイが画像形成位置に固定された状態で実施される不良ノズルを検知するための処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】図19は、ヘッドアレイが待機位置に位置した状態で実施される不良ノズルを検知するための処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】図20は、画像形成装置の起動時に実施される不良ノズルを検知するための処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像形成装置および不良ノズル検知方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1および図2は、本実施形態に係る画像形成装置の機械的な構成を模式的に示す図であり、図1は画像形成装置の側面図、図2は画像形成装置の上面図である。
【0017】
本実施形態に係る画像形成装置は、図1および図2に示すように、記録紙Pの幅方向(主走査方向)に対して十分な長さを有する4つのヘッドアレイ10a〜10dを、記録紙Pの搬送方向(副走査方向)に沿って順次配列したライン型インクジェットプリンタとして構成されている。4つのヘッドアレイ10a〜10dは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応しており、搬送される記録紙Pに対して各ヘッドアレイ10a〜10dから対応する色のインク滴を順次吐出することで、記録紙Pにフルカラーの画像を形成することが可能となっている。
【0018】
記録紙Pは、搬送ベルト20によって搬送される。搬送ベルト20は、ローラ21,22によって懸架された無端状のベルトであり、ローラ21,22の少なくとも一方が図示しない駆動装置により回転駆動されることによって、記録紙Pを搬送する。搬送ベルト20には、図3に示すように、多数の貫通孔が設けられている。また、搬送ベルト20のヘッドアレイ10a〜10dと対向する周面の直下には、図示しない吸引ファンが設けられている。搬送ベルト20上の記録紙Pは、吸引ファンの作動により生じる負圧によって搬送ベルト20上に吸引され、搬送される。
【0019】
図4および図5は、ヘッドアレイ10a〜10d(ヘッドアレイ10a〜10dはインクの色が異なるのみで共通の構成を有しているため、以下、ヘッドアレイ10と総称する。)を拡大して示す図であり、図4はヘッドアレイ10を図1中の矢印Aで示す方向からみた正面図、図5はヘッドアレイ10を図1中の矢印Bで示す方向から見た底面図である。
【0020】
ヘッドアレイ10には、搬送ベルト20と対向する底面側に、複数の印字ヘッド11が設けられている。複数の印字ヘッド11は、図5に示すように、記録紙Pの幅方向(主走査方向)に沿って2列のヘッド列を形成する。そして、一方のヘッド列における印字ヘッド11の端部間の隙間と他方のヘッド列における印字ヘッド11の端部間の隙間が、記録紙Pの搬送方向(副走査方向)において重ならないように、複数の印字ヘッド11は千鳥状に配置されている。
【0021】
印字ヘッド11には、記録紙Pの紙面に向かってインク滴を吐出する多数のノズルが設けられている。これらのノズルは、例えば、奇数画素に対応したODDノズルのノズル列12aと、偶数画素に対応したEVENノズルのノズル列12bの2列のノズル列として、印字ヘッド11のノズル面(搬送ベルト20により搬送される記録紙Pの紙面と対向する面)に形成されている。
【0022】
ヘッドアレイ10は、記録紙Pに画像を形成する印字動作中においては、図4に示すように、印字ヘッド11のノズル面が搬送ベルト20の表面から1mm程度のギャップGを介して対向する位置(以下、画像形成位置という。)に固定される。ヘッドアレイ10が画像形成位置に固定された状態で、搬送ベルト20により搬送される記録紙Pの紙面に向かって印字ヘッド11のノズルからインク滴を吐出し、インク滴が記録紙Pに付着することで画像が形成される。
【0023】
なお、印字ヘッド11のノズル内のインクは、印字ヘッド11がキャッピングされない状態で放置されると乾燥してしまう。このため、記録紙Pが搬送ベルト20上に存在しないときに、上述した搬送ベルト20に設けられた貫通孔に向けてノズルからインク滴を空吐出し、乾燥によって増粘したノズル内のインクを破棄するようにしている。ノズルから空吐出されたインク滴は、吸引ファンの作動により、搬送ベルト20に設けられた貫通孔を通して吸引される。
【0024】
以上のようなインク滴の空吐出を行うようにした場合でも、急激なインクの乾燥による粘度の増加、あるいはノズルへの気泡の混入、塵や紙粉の付着等が生じると、印字ヘッド11のいくつかのノズルが目詰まりを起こし、インク滴の吐出が行えない状態となる場合がある。そこで、本実施形態に係る画像形成装置には、インク滴を吐出できない状態となった不良ノズルを光学的に検知するための機構(以下、不良ノズル検知機構という。)が設けられている。
【0025】
不良ノズル検知機構は、ヘッドアレイ10の長手方向の両端部に設けられた発光ユニット30および受光ユニット40を備える。発光ユニット30は、図6に示すように、印字ヘッド11のノズルから吐出されるインク滴の吐出経路と交差する検出光L(例えば、レーザ光)を発生するユニットである。受光ユニット40は、発光ユニット30が発生する検出光Lがインク滴に照射されることで生じる散乱光と、インク滴に照射されることなくインク滴の吐出経路を通過した検出光L(以下、直接光という。)と、を受光するユニットである。これら発光ユニット30と受光ユニット40は、ヘッドアレイ10に設けられた2列のヘッド列のそれぞれに対して、1組ずつ設けられている。
【0026】
発光ユニット30が発生する検出光Lの幅Wは、図7に示すように、印字ヘッド11に設けられたODDノズルのノズル列12aとEVENノズルのノズル列12bとの間の距離よりも十分に大きい。したがって、ODDノズルのノズル列12aからインク滴が吐出された場合でも、EVENノズルのノズル列12bからインク滴が吐出された場合でも、検出光Lの光路を変化させることなく、吐出されたインク滴に対して検出光Lを照射することが可能である。
【0027】
図8および図9は、発光ユニット30の詳細を示す図であり、図8は発光ユニット30の外観を示す斜視図、図9は発光ユニット30の内部構成を示す断面図である。
【0028】
発光ユニット30は、ケース31の内部に設けられたLD駆動回路基板32を備える。LD駆動回路基板32には、検出光L(レーザ光)を出射する光源であるLD33が実装されている。また、ケース31の内部には、LD33から出射される検出光Lの光軸上に位置して、検出光Lを集光して平行光とするコリメートレンズ34が配設されている。また、ケース31には、コリメートレンズ34と対向する位置に、通過する検出光Lの光量を調整するアパーチャ35が設けられている。
【0029】
LD33から出射された検出光Lは、コリメートレンズ34で集光され、アパーチャ35により光量が調整されてケース31の外部に出射される。そして、アパーチャ35を通してケース31の外部に出射された検出光Lが、受光ユニット40に向かって、印字ヘッド11に設けられたノズル列12a,12bに沿うように照射される。光学ユニット30における光学部品であるLD33やコリメートレンズ34は、ケース31によって覆われることで、ミストによる汚れ付着が防止されている。
【0030】
図10〜図12は、受光ユニット40の詳細を示す図であり、図10は受光ユニット40の外観を示す斜視図、図11は受光ユニット40の内部構成を示す断面図、図12は受光ユニット40の内部構成を示す平面図である。
【0031】
受光ユニット40は、ケース41の内部に設けられたPD駆動回路基板42を備える。PD駆動回路基板42には、発光ユニット30が発生する検出光Lが印字ヘッド11のノズル列12a,12bから吐出されたインク滴に照射されることで生じる散乱光を受光して、受光した散乱光の光量に応じた第1の検出信号を出力する散乱光受光用PD43と、発光ユニット30が発生する検出光Lの直接光を受光して、受光した直接光の光量に応じた第2の検出信号を出力する直接光受光用PD44とが設けられている。散乱光受光用PD43は、ODDノズルのノズル列12aから吐出されたインク滴に照射された検出光Lの散乱光を受光するものと、EVENノズルのノズル列12bから吐出されたインク滴に照射された検出光Lの散乱光を受光するものとの2つが、直接光受光用PD44を挟んで両側に設けられている。また、ケース41には、散乱光受光用PD43と対向する位置および直接光受光用PD44と対向する位置に、検出光Lの散乱光や直接光をケース41内部に通過させるための受光孔45が形成されている。
【0032】
検出光Lが印字ヘッド11のノズル列12a,12bから吐出されたインク滴に照射されることで生じる散乱光は、散乱光受光用PD43に対向して設けられた受光孔45を通って受光ユニット40のケース41内部に入射し、散乱光受光用PD43によって受光される。散乱光受光用PD43は、ケース41内部に入射した散乱光を受光すると、受光した散乱光の光量に応じた第1の検出信号を出力する。また、インク滴に照射されない検出光Lの直接光は、直接光受光用PD44に対向して設けられた受光孔45を通って受光ユニット40のケース41内部に入射し、直接光受光用PD44によって受光される。直接光受光用PD44は、ケース41内部に入射した直接光を受光すると、受光した直接光の光量に応じた第2の検出信号を出力する。受光ユニット40における光学部品である散乱光受光用PD43および直接光受光用PD44は、ケース41によって覆われることで、ミストによる汚れ付着が防止されている。
【0033】
図13は、検出光Lの光路を印字ヘッド11のノズル面側から見た様子を示す模式図である。検出光Lの直接光を受光するための直接光受光用PD44は、図13に示すように、印字ヘッド11に設けられたノズル列12a,12bに沿うように照射される検出光Lの光軸上に位置するように、LD33に対向して配置されている。直接光受光用PD44は、LD33から検出光Lが出射されている間、受光した直接光の受光量に応じた第2の検出信号を常に出力する。
【0034】
ヘッドアレイ10は、後述するヘッド移動機構によって、上述した画像形成位置と、この画像形成位置とは異なる位置である所定の待機位置との間で移動可能とされている。ヘッドアレイ10は、印字動作中以外の待機状態においては待機位置にて待機し、印字動作を行うときにヘッド移動機構の駆動により画像形成位置に移動して、画像形成位置に固定される。また、ヘッドアレイ10は、印字動作が終了すると、ヘッド移動機構の駆動により待機位置へと移動し、待機位置にて次の印字動作が行われるまで待機する。
【0035】
待機位置には、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11をキャッピングするキャッピングユニット50が設けられている。キャッピングユニット50は、図14に示すように、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11に対応したキャップ51と、印字ヘッド11のノズル面をワイピングしてノズルをクリーニングするワイパ52が設けられている。ワイパ52は、印字ヘッド11のノズル面を傷つけないように、ゴムなどの弾力性部材で構成されている。
【0036】
ヘッドアレイ10は、ヘッド移動機構の駆動により、待機位置において上下方向、水平方向の移動が可能とされている。ノズルのクリーニング時、ヘッドアレイ10は印字ヘッド11のノズル面がキャッピングユニット50のワイパ52に接する位置まで移動し、ワイパ52がノズル面に接した状態で水平移動することで、ノズル面のワイピングが行われる。また、キャッピングユニット50には図示しない吸引ポンプが設けられている。ノズルのクリーニング時には、この吸引ポンプによりノズル内の増粘インクや気泡の吸引が行われる。ノズル内から吸引されたインクは、図示しない吸引タンクへと送られる。
【0037】
本実施形態に係る画像形成装置では、印字動作中に、上述した不良ノズル検知機構により不良ノズルを検知するための処理が行われるが、印字動作中に不良ノズルが検知された場合には、ヘッドアレイ10が、ヘッド移動機構の駆動により画像形成位置から待機位置に移動し、上述したクリーニング動作によって不良ノズルのクリーニングが行われる。また、本実施形態に係る画像形成装置では、ヘッドアレイ10が待機位置に位置した状態であっても、上述した不良ノズル検知機構により不良ノズルを検知するための処理が可能である。待機位置にて不良ノズルを検知するための処理を行う場合、印字ヘッド11のノズルからキャッピングユニット50のキャップ51内にインク滴が吐出され、キャップ51内に吐出されたインクは吸引ポンプによって吸引される。
【0038】
図15は、本実施形態に係る画像形成装置の不良ノズル検知機構に関わる制御系の構成を示すブロック図である。
【0039】
図15に示すように、発光ユニット30のLD33と、受光ユニット40の散乱光受光用PD43および直接光受光用PD44と、ヘッド移動機構60とが、制御装置100に接続されている。制御装置100は、例えば、CPUやROM、RAM、入出力インターフェース回路等を備えたマイクロコンピュータとして構成される。この制御装置100は、例えば、CPUがRAMをワークエリアとして利用して、ROMに格納された不良ノズル検知プログラムを実行することによって、吐出信号出力部101、判定部102、補正部103の各制御機能を実現し、不良ノズルを検知するための処理を行う。
【0040】
吐出信号出力部101は、不良検知の対象となるノズル(以下、検知対象ノズルという。)からインク滴を吐出させるための吐出信号を出力する。
【0041】
判定部102は、吐出信号出力部101から吐出信号が出力された際に、受光ユニット40の散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号に基づいて、検知対象ノズルがインク滴を吐出できない不良ノズルか否かを判定する。
【0042】
補正部103は、受光ユニット40の直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号に基づいて、判定部102の判定結果を補正する。
【0043】
本実施形態に係る画像形成装置では、制御装置100による制御に従って、印字直前と印字動作中とに、ヘッドアレイ10が画像形成位置に固定された状態で、不良ノズルを検知する処理が行われる。不良ノズルを検知する処理が開始されると、制御装置100は、まず発光ユニット30のLD33を駆動して、検出光Lを出射させる。検出光Lは、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11に設けられたノズルから吐出されるインク滴と交差するように、印字ヘッド11のノズル面と搬送ベルト20との間のギャップG内に照射される。
【0044】
発光ユニット30からの検出光LがギャップG内に照射された状態で、制御装置100の吐出信号出力部101が、検知対象ノズルからインク滴を吐出させるための吐出信号を出力する。検知対象ノズルが正常であれば、この吐出信号に応じて、検知対象ノズルからインク滴が吐出される。検知対象ノズルからインク滴が吐出されると、発光ユニット30からの検出光Lがインク滴に照射されることで散乱光が生じ、この検出光Lの散乱光が受光ユニット40の散乱光受光用PD43により受光される。散乱光受光用PD43が検出光Lの散乱光を受光した場合、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号は、高い値を示すこととなる。
【0045】
一方、検知対象ノズルがインク滴を吐出できない不良ノズルの場合、吐出信号出力部101から吐出信号が出力されてもインク滴が吐出されず、検出光Lの散乱光は生じない。このため、受光ユニット40の散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号は、低い値のままとなる。
【0046】
判定部102は、吐出信号出力部101から吐出信号が出力された際の散乱光受光用PD43の出力をモニタリングする。そして、判定部102は、吐出信号の出力に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が、予め定めた第1の閾値を超えた場合、検知対象ノズルを正常ノズルと判定する。一方、判定部102は、吐出信号の出力に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値以下の場合、検知対象ノズルを不良ノズルと判定する。
【0047】
以上のように、判定部102は、吐出信号出力部101からの吐出信号に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値を超えるか否かにより、検知対象ノズルが、インク滴を正常に吐出することができる正常ノズルであるか、あるいはインク滴を吐出できない不良ノズルであるかの判定を行っている。しかしながら、記録紙Pを搬送する搬送ベルト20や、搬送ベルト20によって搬送される記録紙Pに突発的に浮きが生じ、これら搬送ベルト20や記録紙Pによって検出光Lが遮断された場合には、検知対象ノズルからインク滴が正常に吐出されていても散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値以下となり、判定部102が、検知対象ノズルを不良ノズルであると誤って判定してしまう場合がある。
【0048】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置では、受光ユニット40に検出光Lの直接光を受光するための直接光受光用PD44を設けるとともに、制御装置100に補正部103を設け、補正部103が、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号に基づいて、判定部102の判定結果を補正するようにしている。
【0049】
受光ユニット40の直接光受光用PD44は、上述したように、発光ユニット30のLD33が検出光Lを出射している間、受光した直接光の受光量に応じた第2の検出信号を常に出力している。検出光Lが検知対象ノズルから吐出されたインク滴に照射されることで散乱光が生じた場合にも減衰するが、検出光Lが搬送ベルト20や記録紙Pの突発的な浮きによって遮断された場合には大きく減衰する。
【0050】
制御装置100の補正部103は、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号を常時モニタリングしており、判定部102が検知対象ノズルを不良ノズルと判定した場合に、その判定に用いた第1の検出信号と同じタイミングで直接光受光用PD44から出力された第2の検出信号を、予め定めた第2の閾値と比較する。そして、補正部103は、直接光受光用PD44から出力された第2の検出信号が第2の閾値を超えていれば、判定部102の判定結果を有効とし、直接光受光用PD44から出力された第2の検出信号が第2の閾値以下であれば、判定部102の判定結果を無効とする。つまり、散乱光受光用PD43からの第1の検出信号が第1の閾値以下であるために判定部102が検知対象ノズルを不良ノズルと判定した場合であっても、直接光受光用PD44からの第2の検出信号が第2の閾値以下であれば、散乱光受光用PD43からの第1の検出信号が第1の閾値以下となった原因が、検知対象ノズルからインク滴が吐出されないことによるものではなく、搬送ベルト20や記録紙Pの突発的な浮きによって検出光Lが遮断されたことによるものである可能性が高いため、補正部103が、判定部102の判定結果を無効とする。
【0051】
補正部103が判定部102の判定結果を無効とした場合、判定結果が無効となった検知対象ノズルが不良ノズルかどうかの判定が再度行われる。すなわち、吐出信号出力部101は、判定部102の判定結果が無効となった検知対象ノズルからインク滴を吐出させるための吐出信号を再度出力する。そして、判定部102は、吐出信号出力部101から再度出力された吐出信号に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号をモニタリングし、第1の検出信号が第1の閾値を超えるか否かにより、検知対象ノズルが正常ノズルであるか不良ノズルであるかの判定を再度行う。
【0052】
制御装置100は、印字直前と印字動作中とに、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11に設けられた各ノズルに対して、検知対象ノズルを順次切り替えながら、以上のような不良ノズルを検知するための処理を繰り返し実行する。印字直前に不良ノズルを検知するための処理を行う場合は、ヘッド移動機構60の駆動によりヘッドアレイ10が画像形成位置に固定された状態において、搬送ベルト20を回転させながら、搬送ベルト20に設けられた貫通孔が検知対象ノズルの直下となるタイミングで、印字ヘッド11の端部のノズルから順番にインク滴を吐出させ、各ノズルからのインク滴の吐出状態を確認する。また、印字動作中に不良ノズルを検知するための処理を行う場合は、ヘッド移動機構60の駆動によりヘッドアレイ10が画像形成位置に固定された状態において、搬送ベルト20によって順次搬送される2つの記録紙Pの間の記録紙Pが存在しないスペースがヘッドアレイ10と対向する位置に差し掛かるときに、搬送ベルト20に設けられた貫通孔が検知対象ノズルの直下となるタイミングで、印字ヘッド11の端部のノズルから順番にインク滴を吐出させ、各ノズルからのインク滴の吐出状態を確認する。
【0053】
印字直前や印字動作中に画像形成位置にて不良ノズルを検知するための処理を行った場合には、判定部102が検知対象ノズルを不良ノズルと判定し、且つ、補正部103が判定部102の判定結果を有効とした場合に、上述したように、ヘッド移動機構60の駆動によりヘッドアレイ10が画像形成位置から待機位置へと移動して、待機位置において不良ノズルに対するクリーニング動作が行われる。
【0054】
図16は、搬送ベルト20や記録紙Pによって検出光Lが遮られていない正常な状態において、不良ノズルを検知するための処理を行った場合のタイミングチャートであり、吐出信号出力部101から出力される吐出信号と、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号と、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号との関係を、検知対象ノズルからインク滴が吐出された場合と、インク滴が吐出されない場合とを比較して示した図である。
【0055】
不良ノズルを検知するための処理が開始されると、検出光Lが照射された状態で、吐出信号出力部101から周期Tで吐出信号が出力され、印字ヘッド11の各ノズルが、時間間隔Tでインク滴を順次吐出するように動作する。ここで、検知対象ノズルがインク滴を吐出した場合、吐出されたインク滴に検出光Lが照射されることによって散乱光が生じるため、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号は高い値となり、第1の閾値Sh1を超える。なお、インク滴が吐出されると検出光Lがインク滴によって遮られるため、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号は減衰する。
【0056】
一方、検知対象ノズルがインク滴を吐出しない場合は、検出光Lがインク滴に照射されず散乱光が生じないため、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号は低い値のままとなり、第1の閾値Sh1以下となる。また、インク滴が吐出されない場合は検出光Lがインク滴によって遮られることがないので、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号は、第2の閾値Sh2を超える高い値を維持する。
【0057】
判定部102は、吐出信号に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値Sh1を超えていれば、検知対象ノズルからインク滴が吐出されていると判断し、検知対象ノズルを正常ノズルと判定する。一方、吐出信号に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値Sh1以下であれば、判定部102は、検知対象ノズルからインク滴が吐出されていないと判断し、検知対象ノズルを不良ノズルと判定する。
【0058】
直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号は、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値Sh1以下となっている場合に、補正部103の補正に用いられる。補正部103は、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値Sh1以下であり、判定部102によって検知対象ノズルが不良ノズルと判定された場合に、吐出信号に呼応して直接光受光用PD44から出力された第2の検出信号を第2の閾値Sh2と比較して、第2の検出信号が第2の閾値Sh2以下であれば、判定部102の判定結果を無効とする。散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値Sh1を超えており、判定部102によって検知対象ノズルが正常ノズルと判定された場合には、その結果から検出光Lが搬送ベルト20や記録紙Pなどによって遮断されていないことが分かるので、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号を用いた補正は行わない。
【0059】
図17は、搬送ベルト20や記録紙Pによって検出光Lが遮られた状態において、不良ノズルを検知するための処理を行った場合のタイミングチャートであり、吐出信号出力部101から出力される吐出信号と、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号と、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号との関係を、検知対象ノズルからインク滴が吐出された場合と、インク滴が吐出されない場合とを比較して示した図である。
【0060】
搬送ベルト20や記録紙Pによって検出光Lが遮られている場合、検知対象ノズルがインク滴を吐出したとしても、吐出されたインク滴に検出光Lが照射されず、散乱光が生じないため、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号は低い値のままとなり、第1の閾値Sh1以下となる。また、検知対象ノズルがインク滴を吐出しない場合にも、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号は第1の閾値Sh1以下となる。したがって、判定部103は、検知対象ノズルからインク滴が吐出されているか否かに関わらず、検知対象ノズルを不良ノズルと判定してしまうことになる。
【0061】
直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号は、搬送ベルト20や記録紙Pによって検出光Lが遮られている場合には、正常な状態のとき(図16参照)と比べて大きく減衰し、第2の閾値Sh2以下となる。補正部103は、判定部102が検知対象ノズルを不良ノズルと判定した場合に、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号を第2の閾値Sh2と比較し、第2の検出信号が第2の閾値Sh2以下であれば、搬送ベルト20や記録紙Pの突発的な浮きによって検出光Lが遮断されている可能性が高いと判断し、判定部102の判定結果を無効とする。
【0062】
図18は、印字直前や印字動作中にヘッドアレイ10が画像形成位置に固定された状態で実施される不良ノズルを検知するための処理の流れを示すフローチャートである。
【0063】
処理がスタートすると、まず、発光ユニット30から検出光Lが出射された状態で、制御装置100の吐出信号出力部101が、検知対象ノズルからインク滴を吐出させるための吐出信号を出力する(ステップS101)。そして、制御装置100の判定部102が、吐出信号に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号を読み込み、第1の検出信号を第1の閾値Sh1と比較する(ステップS102)。ここで、第1の検出信号が第1の閾値Sh1を超えている場合(ステップS102:Yes)、判定部102は、検知対象ノズルを正常ノズルと判定する(ステップS103)。一方、第1の検出信号が第1の閾値Sh1以下の場合(ステップS102:No)、判定部102は、検知対象ノズルを不良ノズルと判定する(ステップS104)。
【0064】
判定部102が検知対象ノズルを不良ノズルと判定した場合、制御装置100の補正部103が、判定部102での判定に用いた第1の検出信号と同じタイミングで直接光受光用PD44から出力された第2の検出信号を第2の閾値Sh2と比較する(ステップS105)。そして、第2の検出信号が第2の閾値Sh2を超えている場合(ステップS105:Yes)、補正部103は、検知対象ノズルを不良ノズルと判定した判定部102の判定結果を有効とする(ステップS106)。この場合、画像形成装置による印字動作は停止され(ステップS107)、クリーニング動作へと移行する(ステップS108)。この場合、ヘッド移動機構60の駆動によりヘッドアレイ10が画像形成位置から待機位置へと移動する。そして、ヘッドアレイ10が待機位置に位置した状態で、不良ノズルに対するクリーニング動作が実施される。
【0065】
一方、第2の検出信号が第2の閾値Sh2以下の場合(ステップS105:No)、補正部103は、検知対象ノズルを不良ノズルと判定した判定部102の判定結果を無効とする(ステップS109)。この場合、ステップS101にリターンして、判定部102の判定結果が無効となった検知対象ノズルに対するステップS101以降の処理が再度行われる。
【0066】
以上の処理は、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11に設けられた各ノズルを対象として繰り返し実施される。すなわち、ステップS110において、印字ヘッド11に設けられた全てのノズルに対して、不良ノズルを検知するための処理が終了したかどうかが判定され、全てのノズルに対する処理が終了していない場合には(ステップS110:No)、検知対象ノズルが変更され(ステップS111)、ステップS101にリターンして、新たな検知対象ノズルに対するステップS101以降の処理が繰り返される。そして、全てのノズルに対する処理が終了すると(ステップS110:Yes)、図18のフローチャートで示す一連の処理が終了する。
【0067】
本実施形態に係る画像形成装置では、上述したように、ヘッドアレイ10が待機位置に位置した状態でも不良ノズルを検知するための処理を実施することが可能である。ヘッドアレイ10が待機位置に位置した状態で不良ノズルを検知するための処理を実施する場合、発光ユニット30から出射される検出光Lが搬送ベルト20や記録紙Pによって遮られることがないため、散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号のみを用いた処理が行われる。
【0068】
図19は、ヘッドアレイ10が待機位置に位置した状態で実施される不良ノズルを検知するための処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
処理がスタートすると、まず、発光ユニット30から検出光Lが出射された状態で、制御装置100の吐出信号出力部101が、検知対象ノズルからインク滴を吐出させるための吐出信号を出力する(ステップS201)。そして、制御装置100の判定部102が、吐出信号に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号を読み込み、第1の検出信号を第1の閾値Sh1と比較する(ステップS202)。ここで、第1の検出信号が第1の閾値Sh1を超えている場合(ステップS202:Yes)、判定部102は、検知対象ノズルを正常ノズルと判定する(ステップS203)。一方、第1の検出信号が第1の閾値Sh1以下の場合(ステップS202:No)、判定部102は、検知対象ノズルを不良ノズルと判定する(ステップS204)。
【0070】
以上の処理は、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11に設けられた各ノズルを対象として繰り返し実施される。すなわち、ステップS205において、印字ヘッド11に設けられた全てのノズルに対して、不良ノズルを検知するための処理が終了したかどうかが判定される。そして、全てのノズルに対する処理が終了していない場合には(ステップS205:No)、検知対象ノズルが変更され(ステップS206)、ステップS201にリターンして、新たな検知対象ノズルに対するステップS201以降の処理が繰り返される。そして、全てのノズルに対する処理が終了すると(ステップS205:Yes)、図19のフローチャートで示す一連の処理が終了する。
【0071】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、起動時においてヘッドアレイ10が待機位置に位置した状態で、上述した不良ノズルを検知するための処理が実施される。そして、この処理によって不良ノズルがないと判定されると、ヘッドアレイ10が画像形成位置に移動し、ヘッドアレイ10が画像形成装置に固定された状態で、印字動作の直前にも不良ノズルを検知するための処理が再度実施される。さらに、印字動作中においても、不良ノズルを検知するための処理が必要に応じて実施される。これにより、不良ノズルが発生した場合にその不良ノズルをいち早く検知して、クリーニングなどの対策を迅速に行うことができる。
【0072】
図20は、画像形成装置の起動時から印字動作が開始までに実施される一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
画像形成装置が起動して処理がスタートすると、まず、ヘッドアレイ10が待機位置にてキャッピングユニット50から離間する方向に移動する(ステップS301)。そして、ヘッドアレイ10がキャッピングユニット50から離間した状態で、図19のフローチャートで示した不良ノズルを検知するための処理が実施される(ステップS302)。このとき、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11に設けられた各ノズルは、吐出信号出力部101から出力される吐出信号に応じて、キャッピングユニット50のキャップ51に向けてインク滴を順次吐出する。
【0074】
次に、ステップS302の処理によって不良ノズルが検知されたか否かが判定され(ステップS303)、不良ノズルが検知された場合には(ステップS303:Yes)、印字ヘッド11に対するキャッピングが行われるとともに(ステップS304)、不良ノズルに対するクリーニングが実施される(ステップS305)。そして、ステップS302にリターンし、図19のフローチャートで示した不良ノズルを検知するための処理が再度実施される。
【0075】
一方、ステップS302の処理で不良ノズルが検知されない場合には(ステップS303:No)、ヘッド移動機構60の駆動により、ヘッドアレイ10が待機位置から画像形成位置へと移動する(ステップS306)。そして、搬送ベルト20の駆動が開始され(ステップS307)、記録紙Pの搬送が行われる前に、図18のフローチャートで示した不良ノズルを検知するための処理が実施される(ステップS308)。このとき、ヘッドアレイ10の印字ヘッド11に設けられた各ノズルは、吐出信号出力部101から出力される吐出信号に応じて、搬送ベルト20に設けられた貫通孔に向けてインク滴を順次吐出する。
【0076】
次に、ステップS308の処理によって不良ノズルが検知されたか否かが判定され(ステップS309)、不良ノズルが検知されない場合には(ステップS309:No)、印字動作が開始される(ステップS310)。一方、不良ノズルが検知された場合には(ステップS309:Yes)、搬送ベルト20の駆動が停止され(ステップS311)、ヘッド移動機構60の駆動により、ヘッドアレイ10が画像形成位置から待機位置へと移動する(ステップS312)。そして、印字ヘッド11に対するキャッピングが行われるとともに(ステップS304)、不良ノズルに対するクリーニングが実施され(ステップS305)、ステップS302にリターンして、図19のフローチャートで示した不良ノズルを検知するための処理が再度実施される。
【0077】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る画像形成装置においては、検知対象ノズルからインク滴を吐出させるための吐出信号の出力に呼応して散乱光受光用PD43から出力される第1の検出信号が第1の閾値以下の場合に、判定部102が、検知対象ノズルを不良ノズルと判定するようにしている。そして、判定部102が検知対象ノズルを不良ノズルと判定した場合に、補正部103が、直接光受光用PD44から出力される第2の検出信号を第2の閾値と比較し、第2の検出信号が第2の閾値以下であれば、判定部102の判定結果を無効とするようにしている。したがって、印字動作中に不良ノズルを検知するための処理を行う場合であっても、搬送ベルト20や記録紙Pにより検出光Lが遮断されることによって生じる判定部102の誤判定を有効に防止して、不良ノズルを精度よく検知することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、判定部102による判定結果が無効となった検知対象ノズルに対して、不良ノズルを検知するための処理を繰り返し行うようにしているので、不良ノズルを確実に検知することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、印字直前または印字動作中にヘッドアレイ10が画像形成位置に固定された状態で不良ノズルを検知するための処理を行った結果、不良ノズルが検知された場合には、印字動作を中断し、ヘッドアレイ10を待機位置へと移動させて不良ノズルに対するクリーニング動作を行うようにしているので、記録紙Pに形成する画像品位の低下を未然に防止することができる。
【0080】
なお、以上説明した実施形態は本発明の好適な実施形態の一例を示すものであり、本発明の技術範囲は実施形態として開示した技術事項そのままに限定されるものではない。本発明の技術範囲は、実施形態として開示した技術事項に技術常識を加味して容易に導かれる変形例、代替手段なども含むものである。
【符号の説明】
【0081】
10 ヘッドアレイ
11 印字ヘッド
20 搬送ベルト
30 発光ユニット
33 LD
40 受光ユニット
43 散乱光受光用PD
44 直接光受光用PD
100 制御装置
101 吐出信号出力部
102 判定部
103 補正部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開2009−132025号公報
【特許文献2】特開2007−15193号公報
【特許文献3】特許第3991279号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドに設けられたノズルから、搬送手段により搬送される記録紙上にインク滴を吐出することにより、前記記録紙に画像を形成する画像形成装置であって、
前記インク滴の吐出経路と交差する検出光を発生する発光手段と、
前記ノズルのうち不良検知の対象となる検知対象ノズルから前記インク滴を吐出させるための吐出信号を出力する吐出信号出力手段と、
前記検出光が前記インク滴に照射されることで生じる散乱光を受光して、受光した光量に応じた第1の検出信号を出力する第1の受光手段と、
前記インク滴に照射されずに前記インク滴の吐出経路を通過した前記検出光を受光して、受光した光量に応じた第2の検出信号を出力する第2の受光手段と、
前記吐出信号が出力された際に前記第1の受光手段から出力される前記第1の検出信号に基づいて、前記検知対象ノズルが前記インク滴を吐出できない不良ノズルか否かを判定する判定手段と、
前記第2の受光手段から出力される前記第2の検出信号に基づいて、前記判定手段の判定結果を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記判定手段が前記検知対象ノズルを不良ノズルと判定した場合に、前記第2の検出信号を所定の閾値と比較して、前記第2の検出信号が前記閾値以下であれば、前記判定手段の判定結果を無効とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記吐出信号出力手段は、前記判定手段の判定結果が無効となった前記検知対象ノズルから前記インク滴を吐出させるための吐出信号を再度出力し、
前記判定手段は、前記吐出信号が再度出力された際に前記第1の受光手段から出力される前記第1の検出信号に基づいて、前記検知対象ノズルが前記不良ノズルか否かを再度判定することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の受光手段は、前記検出光の光軸上に位置するように前記発光手段に対向して配置され、前記発光手段が前記検出光を発生している間、前記第2の検出信号を常に出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ノズルのクリーニングを行うクリーニング手段と、
前記印字ヘッドを前記記録紙に画像を形成する位置である画像形成位置と当該画像形成位置とは異なる位置である待機位置との間で移動させる印字ヘッド移動手段と、をさらに備え、
前記印字ヘッド移動手段は、前記画像形成位置に前記印字ヘッドが位置している状態で前記判定手段が前記検知対象ノズルを前記不良ノズルと判定し、且つ、前記補正手段が前記判定手段の判定結果を有効とした場合に、前記印字ヘッドを前記待機位置に移動させ、
前記クリーニング手段は、前記待機位置に移動した前記印字ヘッドの前記不良ノズルに対してクリーニングを行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
印字ヘッドに設けられたノズルから、搬送手段により搬送される記録紙上にインク滴を吐出することにより、前記記録紙に画像を形成する画像形成装置において実行される不良ノズル検知方法であって、
前記画像形成装置の発光手段が、前記インク滴の吐出経路と交差する検出光を発生するステップと、
前記画像形成装置の吐出信号出力手段が、前記ノズルのうち不良検知の対象となる検知対象ノズルから前記インク滴を吐出させるための吐出信号を出力するステップと、
前記画像形成装置の第1の受光手段が、前記検出光が前記インク滴に照射されることで生じる散乱光を受光して、受光した光量に応じた第1の検出信号を出力するステップと、
前記画像形成装置の第2の受光手段が、前記インク滴に照射されずに前記インク滴の吐出経路を通過した前記検出光を受光して、受光した光量に応じた第2の検出信号を出力するステップと、
前記画像形成装置の判定手段が、前記吐出信号が出力された際に前記第1の受光手段から出力される前記第1の検出信号に基づいて、前記検知対象ノズルが前記インク滴を吐出できない不良ノズルか否かを判定するステップと、
前記画像形成装置の補正手段が、前記第2の受光手段から出力される前記第2の検出信号に基づいて、前記判定手段の判定結果を補正するステップと、を含むことを特徴とする不良ノズル検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−116162(P2012−116162A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270330(P2010−270330)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】