説明

画像形成装置および画像処理方法、プログラム

【課題】 多次色キャリブレーションの実行タイミングを適正化することを目的とする。
【解決手段】 画像形成部の複数の色材色のうち何れか1つの色材色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行い、該キャリブレーション実行工程の実行結果に基づき、複数の色材色のうち2つ以上の色材色の組合せの色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行うか否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の色材色を有する画像形成部のキャリブレーションを実行する画像処理装置及び画像処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式、インクジェット方式、熱転写方式等を用いたデジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置が広く普及してきている。これらの画像形成装置においては、色や濃度の再現性についての個体差や時間的変動を軽減するために、通常、画像形成装置に対してキャリブレーションを行っている。一般的に、キャリブレーションとしては、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(ブラック)等の各1次色を独立に補正する1次色キャリブレーションが行われている。1次色キャリブレーションは、現状のプリンタの色空間値を取得し、目標となる色空間値に近づけるため、逆関数(又は逆変換)によって、1次色キャリブレーションテーブルを求める方法である。より具体的には、補正対象のプリンタからC、M、Y、K単色の階調パッチを出力し、出力したパッチを測色器等で測定する。そして、測色器等で測定した現状の測定値を目標とする色空間値に近づけるため、逆関数によって1次色キャリブレーションテーブルを求める。なお、求められた1次色キャリブレーションテーブルは、C、M、Y、Kの入力値(例えば0〜255)に対して、C´、M´、Y´、K´の出力値(0〜255)を記述したLUT(ルックアップテーブル)が一般的である。
【0003】
しかしながら、従来の1次色キャリブレーションでは、1次色が補正されていても、2次色、3次色といったCMYKの組み合わせで再現されるグレーや肌色といった多次色の補正はできない。例えば、環境要因、経時変化に起因する現像効率の変化や定着温度の変化などにより多次色部分で変動が起こるため、1次色キャリブレーションだけでは、多次色部分の色ずれに対応できないといった問題がある。
【0004】
そこで、2次、3次色といった多次色を補正する多次色キャリブレーションが提案されている(特許文献1、特許文献2)。これらの方法は、補正対象プリンタから数十点の多次色パッチを形成し、出力された該多次色パッチを測定する。そして、パッチの測定結果から現状のプリンタの出力状態を予測し、目標とする色空間値からの色ずれ分を逆補正する多次色キャリブレーションテーブルを作成するものである。多次色キャリブレーションは、1次色キャリブレーションと併用して用いることで、1次色だけでなく、多次色の色補正が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−089031号公報
【特許文献2】特開2010−056793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1および特許文献2に記載された手法によれば、以下のような問題がある。上述したように、多次色キャリブレーションは、多次色の色補正ができるため、1次色キャリブレーションに比べ精度は良い。しかし、1次色キャリブレーションと同様、キャリブレーションには一定の時間を要し、キャリブレーション実行中は印刷処理を行うことができない。即ち、多次色キャリブレーションを頻繁に行うことにより通常印刷のスループットに悪影響を及ぼしてしまう。また、それぞれのキャリブレーションは、実行頻度が異なるため、過剰にキャリブレーション行われる可能性がある。過度のキャリブレーションの実行はトナーや紙を無駄に消費してしまう。
そこで、本発明は、多次色キャリブレーションの実行タイミングを適正化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の画像処理装置は、画像形成部の複数の色材色のうち何れか1つの色材色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行う第1キャリブレーション実行手段と、前記第1キャリブレーション実行手段の実行結果に基づき、第2キャリブレーション実行手段によるキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により第2キャリブレーション実行手段によるキャリブレーションを実行すると判断された場合、前記複数の色材色のうち2つ以上の色材色の組合せの色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行う第2キャリブレーション実行手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多次色キャリブレーションの実行タイミングを適正化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の画像形成装置のシステム構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態の画像処理部の詳細構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態のプリンタエンジン部の詳細構成を示す模式図。
【図4】本実施形態のキャリブレーション処理の動作を示すフローチャート。
【図5】本実施形態の1次色キャリブレーションチャートの一例を示す図。
【図6】本実施形態の画像形成装置における1次色の階調特性の一例を示す図。
【図7】本実施形態における1次色の測定値の解析結果および多次色の変動量推定結果を示す図。
【図8】本実施形態における多次色の変動量推定結果から多次色キャリブレーションの実行有無を判定する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、説明を簡単にするために、電子写真方式のカラーレーザプリンタを例に本発明を適用した場合について説明する。但し、本発明はこの場合に限られるものではなく、例えばインクジェット方式のカラープリンタや熱転写方式のカラープリンタ等の画像形成装置に適用しても良い。また、カラー複写機やカラーファクシミリ等の画像形成装置あるいは表示装置等に適用しても良い。更に、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置に適用しても良い。
【実施例1】
【0011】
<画像形成装置システム全体の構成>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成システムは、ネットワーク100を介してホストコンピュータ101と画像形成装置110が接続されることにより構成される。また、画像形成装置110には、コントローラ部120とプリンタエンジン部130を備えている。
【0012】
ネットワーク100は、例えばLAN(Local Area Network)であり、ネットワーク100に接続された各ユニット相互の情報授受やデータ転送を行う。ホストコンピュータ101は、例えばアプリケーションプログラムにより色情報、文字、図形、イメージ画像、印刷枚数、印刷モード等の印刷情報をコントローラ部120へ送出する。コントローラ部120は、例えばCPU121、I/Oインターフェース122、メモリインターフェース123、画像処理部124を備えている。また、外部イメージメモリ111、ROM112が接続されている。
【0013】
CPU121は、各部とのアクセスおよび処理を統括的に制御する。CPU121は、例えばホストコンピュータ101から送出された印刷対象のデータを複数色成分で表現した画像データに変換して外部イメージメモリ111に展開する処理など、各種データの処理や転送命令を行う中央処理装置である。
【0014】
外部イメージメモリ111は、CPU121が展開した画像データ等を一時格納する領域を備えている。ROM112は、コントローラ部120を制御するためのプログラムや画像処理部124が用いるデータ等を格納するメモリである。I/Oインターフェース122は、外部から接続される装置との間でデータの入出力を制御する。メモリインターフェース123は、外部イメージメモリ111から出力された画像データなどを画像処理部124に出力する。画像処理部124は、画像データに対し、予め定められた各種画像処理を施し、処理した画像データ信号をプリンタエンジン部130へ送出する。
【0015】
プリンタエンジン部130は、画像形成部131、センサ部132を備えている。画像形成部131は、画像処理部124から出力された画像データ信号に基づいて画像形成を行う。センサ部132は、後述する中間転写ベルト上のトナー像の濃度を読み取る濃度センサや定着後のトナー像の色度値(例えば、CIE−Lab値)を読み取るカラーセンサ等で構成され、センサから読み取った色の測定値を画像処理部124へフィードバックする。以下、画像形成装置110の画像処理部124とプリンタエンジン部130の詳細な構成について説明する。
【0016】
<画像処理部の構成>
図2は、画像形成装置110における画像処理部124の詳細な構成を示すブロック図である。画像処理部124には、色変換処理部201、濃度補正処理部202、キャリブレーション用LUT生成部203、キャリブレーション処理部204、ハーフトーン処理部205を備えている。
【0017】
色変換処理部201は、例えばメモリインターフェース123を介して外部イメージメモリ123に格納されたRGB形式の画像データを、予め設計された色変換テーブルを参照し、CMYK形式の画像データに変換する。キャリブレーション用LUT生成部203は、センサ部132から読み取ったパッチの測定値および入力値を受け取り、キャリブレーション用LUTを生成する。キャリブレーション処理部204は、色変換処理部201より送られたCMYK値を、キャリブレーション用LUT生成部203で作成されたLUTを参照し、目標値の再現色が得られるように補正したCMYK値に変換を行う。濃度補正処理部202は、色変換処理部201により変換されたCMYK形式の画像データに対して、濃度補正テーブルを参照し、濃度補正処理を行う。ハーフトーン処理部205は、濃度補正処理部202によって濃度補正されたCMYK形式の各色の画像データに対して、ハーフトーン処理(擬似中間調処理)を行う。ハーフトーン処理部204により変換された画像データは、レーザ露光の照射時間に相当するパルス幅に各画素が変調され、プリンタエンジン部130へ送出する。
【0018】
<プリンタエンジン部の構成>
図3は、画像形成装置110におけるプリンタエンジン部130の詳細構成を示す模式図である。プリンタエンジン部130において、複数色の画像形成ユニット310a〜dが中間転写ベルト321上に矢印の移動方向に沿って順次配列されている。画像形成ユニット310には、感光ドラム311が像担持体として中心に軸支され、感光ドラム311の外周面に対向し回転方向に、帯電器312、レーザスキャナ313、現像器314、クリーニングブレード315が配置されている。またプリンタエンジン部130には、給紙カセット330、印刷用紙S、用紙搬送ベルト331、中間転写ベルト321上のクリーニング装置323、定着器324、カラーセンサ322が備えられている。
【0019】
プリンタエンジン部130における画像形成動作は、次のように行われる。まず、帯電器312において感光ドラム311の表面に均一な帯電量の電荷が与えられる。次に、レーザスキャナ313により、画像信号に応じて変調した半導体レーザなどの光線で感光ドラム311上を露光し、感光ドラム311上に静電潜像を形成する。次に、例えばC、M、Y、Kといった現像剤(以下、トナーと称す)をそれぞれ収納した現像器314によって、上記静電潜像をトナー像とし、可視化する。次に、感光ドラム311上のトナー像を中間転写ベルト321上に一次転写する。次に、給紙カセット330から給紙された印刷用紙Sが、用紙搬送ベルト331上を搬送され、印刷用紙Sに上記中間転写ベルト321上のトナー像を二次転写する。次に、定着器324は、上記印刷用紙S上のトナー像を熱と圧力とによって定着する。その後、トナー像定着後の印刷用紙Sは、排出ローラによって排紙トレイに排出される。なお、感光ドラム311上や中間転写ベルト321上に残った残留トナーは、感光ドラム311上のクリーニング装置315、中間転写ベルト321上のクリーニング装置323により回収する。本実施形態では、プリンタエンジン部130が濃度センサ325とカラーセンサ322を有し、その検出結果に基づいてキャリブレーション補正を行うことを特徴とするが、その動作の詳細については後述する。
【0020】
<キャリブレーション処理の動作フロー>
上述した構成を備える画像形成装置110におけるキャリブレーション補正処理について、図4のキャリブレーションの処理手順を示すフローチャートに従い説明する。
【0021】
なお、以下の説明を簡略化するため、本実施形態では、1次色キャリブレーションおよび2次色、3次色を補正する多次色キャリブレーションは、公知のキャリブレーションを用いることとする。本実施形態における1次色とは、画像形成装置110の複数の色材色(C,M,Y,K)が単独で(独立して)使用された場合の色をいう。2次色とは、画像形成装置110の複数の色材色のうち2つの色材色の組合せの色をいう。3次色とは、画像形成装置110の複数の色材色のうち3つの色材色の組合せの色をいう。そして、2次色、3次色など、複数の色材色の組合せにより表現される色を多次色という。なお、黒は1次色(Kの色材)によっても、3次色(C,M,Yの組合せ)によっても生成することができる。しかしながら、前者は1つの色材色のみを用いることから1次色、後者は複数の色材色を用いることから多次色とする。
【0022】
以下、目標値やパッチの測定値の色空間値をCIELab値として、キャリブレーションの実行タイミングの制御方法について説明する。
【0023】
まず、ホストコンピュータ101からネットワーク100を介し入力された印刷情報を画像形成装置110により印刷処理が行われる(ステップS401)。なお、本キャリブレーション処理は、1次色であっても多次色であっても、プリンタの印刷処理の一環として、コントローラ部120によって行われる処理である。
【0024】
次に、ステップS401で印刷処理中に、例えば、所定の時間ごとや所定の枚数印刷ごとに、1次色キャリブレーション(第1キャリブレーション)の実行有無を判定する(ステップS402)。ここでは、例えば、前回の1次色キャリブレーション処理を行ってからの経過時間や環境温度、湿度をセンサ部132から取得し、これらの情報が予め設定された閾値を超えているかに基づき、1次色キャリブレーションの実行有無を判断する。なお、1次色キャリブレーションの実行有無の判断には、例えば、印刷した用紙の枚数を基準としても良い。このステップS402の判定により、1次色キャリブレーション補正を実行する場合は、以下で説明するステップS403の処理を行い、そうでない場合は、ステップS401へ戻り、印刷処理を継続する。
【0025】
次に、画像形成部131は、ステップS402の1次色キャリブレーション要求に基づき、1次色キャリブレーションチャートを出力(画像形成・印字)する(ステップS403)。1次色キャリブレーションチャートは、例えば、CMYK各色の階調パッチパターンである。ここでは、図5で示すように、各色9階調のパッチパターンとする。図5は、各色の画素値の最大値が、例えば255(8ビット)の場合を示しており、0/255が紙白、255/255が各色のベタパッチを表している。
【0026】
次に、センサ部132のカラーセンサ322で、ステップS403で画像形成した各色の階調パッチの測色値を読み取る(ステップS404)。
【0027】
次に、キャリブレーション用LUT生成部203で、パッチの測色値を受け取り、それらの離散的な測色値から、図6で示すような全体の階調特性を求め、目標(基準)とする階調特性を得るための1次色キャリブレーション補正テーブルを生成する(ステップS405)。図6は、1次色の階調特性の一例であり、例えばシアンの階調パッチに関して表している。同図は、横軸に階調パッチの画素値を示しており、縦軸はカラーセンサ322で読み取った明度値(L*値)である。また、実線がシアンの階調特性であり、破線が目標値(基準となる基準色材量)である。このように、CMYK各色において、階調特性を求めた後、現状の階調特性が目標値に近づくように逆関数(逆変換)で、1次色キャリブレーション補正テーブルを生成する。ここで生成された1次色キャリブレーション補正テーブルは、濃度補正処理部202で適用される。これにより、1次色キャリブレーションが完了する。なお、図6の例では、1次色キャリブレーション補正テーブルを生成するのに、明度値(L*値)を用いたが、濃度値(OD値)を用いても良い。
【0028】
次に、ステップS404で読み取った1次色の階調パッチの変動量を解析する(ステップS406)。ここでは、1次色の測色値から1次色の変動量を解析し、その解析結果から2次、3次色といった多次色の変動量を推定する。1次色の変動量解析としては、まず、各階調で1次色の目標値と測色値から差分値を算出する。次に、階調パッチの載り量と算出した差分値から近似曲線を作成し、測定した階調パッチの階調以外の変動量を推定する。これをCMYK各色において解析し、1次色の変動量を求める。図7は、横軸に階調パッチの載り量、縦軸は算出した目標値と測色値との差分値であり、実線で示している曲線が各色の変動特性である。例えば、図7(a)はシアンの変動特性であり、図7(b)はマゼンタの変動特性である。なお、載り量は、1次色のベタパッチ(255/255)を100%とし、2次色のベタパッチ(例えば、シアン100%、マゼンタ100%の重ね合わせ)は200%としている。また、目標値と測色値は、L*値とし、その差分をΔL*とするが、これに限るものではない。
【0029】
次に、各1次色の変動特性から多次色の変動量を推定する(ステップS407)。多次色の変動量は、各1次色の変動量と相関があり、本実施例では、各1次色と多次色の相関関係を利用し、多次色の変動量を推定する。ここでは、一例として、CM(2次色)の変動量推定について説明する。まず、ステップS406で求めたCとMの1次色の変動特性(近似曲線)を読み込む。次に、以下の式1により、2次色の変動量を推定する。
【0030】
CM=h×C+h×M ・・・(式1)
式1でCMは、2次色の変動量(ΔL*)であり、iは載り量を示す。また、hとhは、CMYK各色で設定する補正係数である。CとMは、1次色の変動量(ΔL*)であり、jは載り量を示す。式1の計算を例えば9階調の載り量において計算し、2次色の変動量を推定する。なお、補正係数は、画像形成装置ごとに予め設定しておいても良いし、画像形成装置の外部から変更する仕様でも良い、また多次色キャリブレーション実行時に変更する仕様でも良い。例えば、式1で推定した2次色の変動量と実際にパッチを出力、測定で得られた2次色の変動量の差が最小となるように補正係数を最適化すれば良い。ここでは、hとhは、1.0として扱う。次に、1次色の変動量解析と同様に、載り量と算出した2次色の変動量から近似曲線を作成し、9階調以外の変動量を推定する。図7(c)は、前述した方法により算出した多次色変動量の推定結果の一例である。同図は、図7(a)と図7(b)で示したシアン(1次色)の変動特性とマゼンタ(1次色)の変動特性から、CM(2次色)の変動量を推定したものである。なお、同図で示しているCMの変動特性は、CとMが同じ載り量の重ね合わせでの特性を示している。具体的には、CMの載り量50%は、C25%、M25%の重ね合わせであり、CMの載り量100%は、C50%、M50%の重ね合わせである。このように、2次、3次色といった多次色の変動量は、各1次色の変動特性から推定することが可能である。なお、3次色の変動量においても、3色の1次色の変動特性から計算することで、算出可能である。また、1次色の載り量が異なる場合(例えば、C50%、M25%)の2次色変動量についても、前述した式1により算出可能である。
【0031】
次に、ステップS407の多次色変動量の推定結果から、多次色部分で補正が必要かどうかを判定する(ステップS408)。図8に示すように、ステップS407の多次色変動量の推定結果から、予め設定された閾値を超えているかに基づき、多次色キャリブレーション(第2キャリブレーション)の実行有無を判断する。図8では、例えば多次色変動判定の閾値をΔL*=±4とし、この閾値を超える変動がある場合は、多次色キャリブレーションの実行要求を行う。このステップS408の判定により、多次色キャリブレーション補正を実行する場合は、以下で説明するステップS409の処理を行い、そうでない場合は、ステップS401へ戻り、印刷処理を継続する。
【0032】
次に、ステップS408の多次色キャリブレーション実行要求に基づき、多次色キャリブレーションチャートを作成し、出力する(ステップS409)。ここで用いるチャートは、ステップS407の多次色変動量推定結果から目標値と測色値との差分が大きい順に多次色パッチを選択する。
【0033】
次に、ステップS409で作成した多次色のキャリブレーションチャートを用い、多次色キャリブレーションを実行する(ステップS410)。具体的には、色変換処理部201から出力されたCMYK値を目標値の再現色が得られるように補正したC´M´Y´K´に変換するLUTを生成する。キャリブレーション補正部204では、生成した多次色キャリブレーションLUTを参照し、C´M´Y´K´に変換することで目標値の再現色を得ることが可能となる。これにより、多次色キャリブレーション補正が完了し、ステップS401へ戻り、印刷処理を継続する。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態に係る画像形成装置のシステム構成では、1次色キャリブレーションの結果に応じて多次色キャリブレーションの実行有無を判断し、過剰な回数の多次色キャリブレーションを適正化することが可能である。よって、トナーや紙の無駄が削減でき、また、通常印刷のスループットの低下を抑えることが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態では、1次色キャリブレーション補正を行う際、CMYK各色の階調パッチパターンの測定にカラーセンサを用いたが、濃度センサを用いても良い。例えば、濃度センサを用いる場合、中間転写ベルト上にCMYK各色の階調パッチパターンを形成し、そのパッチパターンを濃度センサで読み取る。読み取った各色の濃度値から濃度特性を求め、目標値を再現する濃度値が得られるように、濃度補正テーブルを作成すれば良い。また、多次色キャリブレーション補正の実行有無は、読み取った濃度値と目標値との差分を載り量に応じて求めることで、2次色、3次色の変動量を推定可能のため、本実施形態同様に、キャリブレーション補正の実行タイミングを適正化することが可能である。
【0036】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部の複数の色材色のうち何れか1つの色材色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行う第1キャリブレーション実行手段と、
前記第1キャリブレーション実行手段の実行結果に基づき、第2キャリブレーション実行手段によるキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により第2キャリブレーション実行手段によるキャリブレーションを実行すると判断された場合、前記複数の色材色のうち2つ以上の色材色の組合せの色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行う第2キャリブレーション実行手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1キャリブレーション実行手段は、
前記画像形成部の複数の色材色のうち何れか1つの色材色により形成される第1の画像を示す画像データを出力する第1の出力手段と、
前記第1の画像を測定した第1のデータを取得する第1の取得手段と、
前記第1のデータに基づいて、前記複数の色材色のうち何れか1つの色材色を補正するための第1の補正テーブルを生成する第1の生成手段とを有し、
前記第2キャリブレーション実行手段は、
前記画像形成部の複数の色材色のうち何れか2つ以上の色材色の組合せの色により形成される第2の画像を示す画像データを出力する第2の出力手段と、
前記第2の画像を測定した第2のデータを取得する第2の取得手段と、
前記第2のデータに基づいて、前記複数の色材色のうち2つ以上の色材色の組合せの色を補正するための第2の補正テーブルを生成する第2の生成手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記複数の色材色のうち何れか1つの色材色の、基準となる基準色材色量からの変動量に基づいて、第2キャリブレーション実行手段によるキャリブレーションを実行するか否かを判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記変動量を複数の色材色について取得し、該複数の色材色に基づいて該複数の色材色の組合せの色の変動量を推定することにより、第2キャリブレーション実行手段によるキャリブレーションを実行するか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記推定された複数の色材色の組合せの色の変動量と閾値とを比較することにより、第2キャリブレーション実行手段によるキャリブレーションを実行するか否かを判断することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像処理装置を備えた画像形成装置。
【請求項7】
画像形成部の複数の色材色のうち何れか1つの色材色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行う第1キャリブレーション実行工程と、
前記第1キャリブレーション実行工程の実行結果に基づき、第2キャリブレーション実行工程におけるキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程でキャリブレーションを実行すると判断された場合、前記複数の色材色のうち2つ以上の色材色の組合せの色により形成される画像に基づいてキャリブレーションを行う第2キャリブレーション実行工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−55538(P2013−55538A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192851(P2011−192851)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】