説明

画像形成装置及びヘッドタンク

【課題】吸引回復動作によって正常吐出ノズルが吐出異常になることを低減する。
【解決手段】ヘッドタンク35は、タンクケース201の液体収容部200の一部の壁面が可撓性フィルム状部材203で形成され、液体収容部200の可撓性フィルム状部材203と対向する壁面200aと可撓性フィルム状部材203との間にバネ204が配設され、バネ204は一方が可撓性フィルム状部材203に固定され、他方は液体収容部200の壁面に固定されておらず、液体収容部200内の液体量が所定量以上になったときにバネ204と液体収容部200の壁面との間に隙間Lが生じ、この状態で吸引回復動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びヘッドタンクに関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置及び記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような画像形成装置において、記録ヘッドにインクを供給するヘッドタンク(サブタンク、バッファタンクとも称される。)を備え、装置本体側に着脱自在に装着されるメインタンク(インクカートリッジとも称する)からヘッドタンクに対してインクを供給する方式のものが知られている。
【0005】
従来のヘッドタンクとしては、例えば、液体を収容する液体収容部を形成するタンクケースと、タンクケースの液体収容部の一部の壁面を形成する可撓性フィルム状部材と、液体収容部の壁面と可撓性フィルム状部材との間に配設され、可撓性フィルム状部材を外方に付勢する弾性部材とを有し、弾性部材の付勢力で負圧を発生させるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【0006】
一方、記録ヘッドの性能を維持回復するための維持回復動作として、記録ヘッドのノズル面を吸引キャップでキャッピングしてノズルから液体を吸引排出させる吸引回復方式、記録ヘッドに液体を加圧供給してノズルから液体を排出させる加圧回復方式、両者を行う方式などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−59274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したように記録ヘッドのノズル面を吸引キャップでキャッピングして吸引回復を行なうとき、吸引手段により液体の吸引を行った後の吸引キャップ内は排出された液体で満たされており、吸引キャップをノズル面から離間させる(デキャップする)ときに吸引キャップ内の液体が引き離されてノズル面に残留することがある。その後、ノズル面に付着した液体はワイパ部材によって払拭(ワイピング)され、ノズル面の清浄化が行われるが、吸引キャップの離間からワイパ部材による払拭までの間、ノズル面には液体が付着したままの状態となっている。
【0009】
一方、記録ヘッドは、ノズルのメニスカスを保つために、内部が所定の負圧に維持される。
【0010】
ところが、吸引キャップの離間からワイピングまでの間にノズル面に液体が付着している状態では、ノズルにメニスカスが形成されない状態であるため、ワイピングが行われるまでの間にノズル面に付着している残留液体がヘッド内部の負圧によってヘッド内部へと引き込まれ、それと同時に液体以外の気泡や異物がノズル内に引き込まれることがある。この気泡や異物の引き込みが発生すると、噴射曲がりや吐出不能などの吐出不良が生じることになる。
【0011】
このように、ヘッドの回復動作を行うことで、却って、それまで正常な吐出を行うことができていたノズルが吐出異常になるという課題がある。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、回復動作によって正常吐出ノズルが吐出異常になることを低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングする吸引キャップと、前記吸引キャップに接続された吸引手段とを有する維持回復機構と、
前記吸引キャップで前記ノズル面をキャッピングさせ前記吸引手段を駆動して前記ノズルから液体を吸引排出させる回復動作を制御する手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは、
液体を収容する液体収容部を形成するタンクケースと、
前記タンクケースの液体収容部の一部の壁面を形成する可撓性フィルム状部材と、
前記液体収容部の壁面と前記可撓性フィルム状部材との間に配設された弾性部材と、を有し、
前記弾性部材は、前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方に固定され、他方に固定されておらず、
前記液体収容部内の液体量が所定量以上になったときには前記弾性部材と前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じ、
前記回復動作を制御する手段は、前記ヘッドタンクの前記弾性部材と前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じている状態で前記回復動作を行わせる
構成とした。
【0014】
本発明に係るヘッドタンクは、
液滴を吐出する記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクであって、
液体を収容する液体収容部を形成するタンクケースと、
前記タンクケースの液体収容部の一部の壁面を形成する可撓性フィルム状部材と、
前記液体収容部の壁面と前記可撓性フィルム状部材との間に配設された弾性部材と、を有し、
前記弾性部材は、前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方に固定され、他方に固定されておらず、
前記液体収容部内の液体量が所定量以上になったときには前記弾性部材と前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じる
構成とした。
【0015】
ここで、前記弾性部材の姿勢を安定させる補助弾性部材を有している構成とできる。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係るヘッドタンクを備えているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る画像形成装置によれば、ヘッドタンクは、液体を収容する液体収容部を形成するタンクケースと、タンクケースの液体収容部の一部の壁面を形成する可撓性フィルム状部材と、液体収容部の壁面と可撓性フィルム状部材との間に配設された弾性部材と、を有し、弾性部材は、液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方に固定され、他方に固定されておらず、液体収容部内の液体量が所定量以上になったときには弾性部材と液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じ、回復動作を制御する手段は、ヘッドタンクの弾性部材と液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じている状態で回復動作を行わせる構成としたので、記録ヘッドが正圧状態で回復動作を行うことができて、デキャップからワイピングまでの間にノズル面の残留液体が気泡や異物を伴ってノズル内に引き込まれることが防止され、回復動作によって正常吐出ノズルが吐出異常になることが低減し、回復動作の成功率(正常吐出ノズルが吐出異常にならない確率)を向上することができる。
【0018】
本発明に係るヘッドタンクによれば、液体を収容する液体収容部を形成するタンクケースと、タンクケースの液体収容部の一部の壁面を形成する可撓性フィルム状部材と、液体収容部の壁面と可撓性フィルム状部材との間に配設された弾性部材と、を有し、弾性部材は、液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方に固定され、他方に固定されておらず、液体収容部内の液体量が所定量以上になったときには弾性部材と液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じる構成としたので、ヘッドタンクの弾性部材と液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じている状態で回復動作を行わせることができるようになり、記録ヘッドが正圧状態で回復動作を行うことができて、デキャップからワイピングまでの間にノズル面の残留液体が気泡や異物を伴ってノズル内に引き込まれることが防止され、回復動作によって正常吐出ノズルが吐出異常になることが低減し、回復動作の成功率を向上することができるようになる。
【0019】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係るヘッドタンクを備えているので、回復動作によって正常吐出ノズルが吐出異常になることが低減し、回復動作の成功率を向上することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るヘッドタンクの模式的平面説明図である。
【図4】同じく図3の模式的正面説明図である。
【図5】同ヘッドタンクの滴吐出を行っているときの状態を説明する説明図である。
【図6】同ヘッドタンクの弾性部材の配設の一例と所定量以上の液体量の状態の一例を説明する説明図である。
【図7】同ヘッドタンクの弾性部材の配設の他の例と所定量以上の液体量の状態の一例を説明する説明図である。
【図8】インク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図9】同装置の制御部を説明するブロック説明図である。
【図10】制御部による吸引動作を行うときのノズル近傍の圧力の状態の変化を説明する説明図である。
【図11】同じく吸引動作を行うときのノズル近傍の状態を説明する説明図である。
【図12】比較例のヘッドタンクを使用して吸引動作を行うときのノズル近傍の状態を説明する説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係るヘッドタンクの模式的説明図である。
【図14】本発明の第3実施形態の異なる例に係るヘッドタンクの模式的説明図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係るヘッドタンクの模式的説明図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係るヘッドタンクの模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0022】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0023】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0024】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0025】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0026】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0027】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0028】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0029】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0030】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0031】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0032】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0033】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0034】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0035】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0036】
次に、本発明の第1実施形態に係るヘッドタンク35について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的上面説明図、図4は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的正面説明図である。
ヘッドタンク35は、インクを保持するための一側部が開口した液体収容部であるインク収容部200を形成するタンクケース201を有し、このタンクケース201の液体収容部200の開口部を可撓性フィルム状部材203で密閉し(可撓性フィルム状部材203で液体収容部200の一部の壁面を形成し)、タンクケース201内には、可撓性フィルム状部材203と対向する液体収容部200の壁面200aと可撓性フィルム状部材203との間に弾性部材としてのバネ204が配設されている。
【0037】
これにより、図5に示すように、タンクケース201の可撓性フィルム状部材203に対してバネ204による外方への付勢力が作用した状態では、タンクケース201内のインク残量が減少することによって負圧が発生する。
【0038】
ここで、弾性部材であるバネ204は、図6に示すように、一方が可撓性フィルム状部材203に固定され、他方は液体収容部200の壁面200aに固定されておらず、液体収容部200内の液体量が所定量以上になったときにバネ204と液体収容部200の壁面200aとの間に隙間Lが生じる構成としている。
【0039】
あるいは、弾性部材であるバネ204は、図7に示すように、一方が液体収容部200の壁面200aに固定され、他方は可撓性フィルム状部材203に固定されておらず、液体収容部200内の液体量が所定量以上になったときにバネ204と可撓性フィルム状部材203との間に隙間Lが生じる構成としている。
【0040】
また、タンクケース201の外側には、一端部を支軸202で揺動可能に支持され、タンクケース201側に向けて付勢されているフィラからなる変位部材(満タン検知フィラともいう。)205がフィルム203に接着などで固定され、フィルム203の動きに連動して変位部材205が変位するので、装置本体側に配置された光学センサからなる満タン検知センサ301によって変位部材205の変位量を検知することによりヘッドタンク35内のインク残量などを検知することができる。
【0041】
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口209があり、インク供給チューブ36に接続されている。また、タンクケース201の側部には、ヘッドタンク35内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。この大気開放機構207は、ヘッドタンク35内に連通する大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に付勢するスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放ソレノイド302によって弁体207bを押すことで開弁されて、ヘッドタンク35内に大気開放状態(大気に連通した状態)になる。
【0042】
また、ヘッドタンク35内のインク液面高さを検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、ヘッドタンク35の空気量が所定量以上になった、或いは、ヘッドタンク35の液体残量が所定量以下になったことを検出することができる。
【0043】
次に、この画像形成装置におけるインク供給排出系について図8を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ(メインタンク)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、供給ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す動作とを行なえるようにしている。
【0044】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク813に排出される。
【0045】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の大気解放機構207を開閉する押圧部材である大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気解放機構207を開放することができる。さらに、装置本体側にはヘッドタンク35の変位部材205を検知する光学センサからなるセンサ301が設けられている。
【0046】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図9を参照して説明する。なお、図9は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行する本発明における回復動作に関する処理を行うプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0047】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、ヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する大気開放ソレノイド302を駆動するソレノイド駆動部512と、送液ポンプ241を駆動するポンプ駆動部516と、メインタンク10に設けられて不揮発性メモリ(ここでは、EEPROM)521に対するデータの読み出し及び書き込みのための通信を行うカートリッジ通信部522などを備えている。
【0048】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0049】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0050】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0051】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0052】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0053】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。このI/O部513に入力されるセンサ群515には、前述したヘッドタンク35の変位部材205を検知するセンサ301、検知電極ピン208a、208bなどの信号も入力される。
【0054】
次に、この制御部による記録ヘッドの回復動作の制御(処理)について図10を参照して説明する。なお、図10は吸引回復動作を行なうときのノズル近傍の圧力状態の説明図である。
まず、液滴を吐出しているときには、前述した図5に示すように、バネ204が液体収容部200の壁面と可撓性フィルム状部材203との間に挟まれて可撓性フィルム状部材203に対してバネ204による外方への付勢力が作用しており、ヘッドタンク35内部は負圧状態になっているので、図10に示すように、記録ヘッド34のノズル近傍は負圧状態になっている。
【0055】
そこで、回復動作を行うときには、吸引動作を行なう前に、送液ポンプ241を正転駆動してメインタンク10からヘッドタンク35にインク(液体)を供給する(時点T1〜T2〜T3の間)。このインク供給によって、ヘッドタンク35の液体残量(インク残量)が増加し、時点T2でバネ204の固定されていない側が液体収容部200の壁面から離れ(図6の例)、あるいは可撓性フィルム状部材203から離れる(図7)。
【0056】
これによって、可撓性フィルム状部材203にバネ204による付勢力が作用しなくなるので、ヘッドタンク35内部は負圧状態にはならず、更にヘッドタンク35の下側に記録ヘッド34があるので、ノズル面とヘッドタンク35の水頭差によって、ノズル近傍は正圧状態に移行し、時点T3までインク供給が継続されることで正圧が高くなる。この正圧状態は、ヘッドタンク35内のインクが減少しバネ204の弾性変形が始まる状態になるまで継続される。
【0057】
そこで、吸引キャップ82aで記録ヘッド34のノズル面をキャッピングし、例えば時点T4から時点T5まで吸引ポンプ812を駆動して吸引を開始し、記録ヘッド34のノズルから所定量のインクを吸引キャップ82a内に吸引排出する。この吸引動作は、記録ヘッド34のノズル近傍が正圧状態に維持されている領域、すなわち、ヘッドタンク35のバネ204による付勢力が可撓性フィルム状部材203に作用しない領域で行う。
【0058】
その後、時点T5で吸引を終了し、吸引キャップ82aを記録ヘッド34のノズル面から離間させ(デキャップ)、ワイパ部材83をワイピング位置に上昇させてワイピングを行い、ノズル面の残留する廃液の除去及びノズルメニスカスの形成を行う。このとき、記録ヘッド34のノズル近傍は正圧状態に維持されているので、デキャップ後にノズル面に残留する廃液(インク)がノズル内に引き込まれることが防止される。
【0059】
そして、ワイピング終了後、記録ヘッド34から所要量の液滴を空吐出させて、バネ204による付勢力が可撓性フィルム状部材203に作用するまでヘッドタンク35のインク残量を減少させて、負圧を形成する。
【0060】
このように、本実施形態では、正圧状態で吸引回復動作を行うので、吸引キャップ82aのデキャップからワイピングが行われるまでの間に、気泡や異物がノズル内に引き込まれ、それまで正常であったノズルまで異常ノズル(吐出不良を生じるノズル)になることが防止される。
【0061】
つまり、図11(a)に示すように、液滴吐出状態では記録ヘッド34のノズル341にはメニスカス342が形成され、このメニスカス342を保つためにヘッドタンク35によってヘッド内部は常に負圧状態に維持されている。
【0062】
そして、吸引回復動作を行うときには、前述したようにヘッドタンク35にインクを供給し、ヘッドタンク35にバネ204による付勢力が可撓性フィルム部材203に作用しなくなる状態にして、ヘッド34のノズル近傍を正圧状態にするので、図11(b)に示すように、ノズル341のメニスカス342はノズル面240から膨らんだ状態になり、図11(c)に示すように、吸引キャップ82aのデキャップによってノズル面340に付着したインク345に気泡346や異物347が含まれていてもノズル341内に引き込まれることがない。
【0063】
これに対し、ヘッドタンク35のバネ204を液体収容部200の壁面と可撓性フィルム状部材203に固定した比較例を使用した場合には、吸引キャップ82aのデキャップによって図12(a)に示すようにノズル面340のノズル341の近傍にインク345が付着すると、メニスカスが形成されない状態になるため、ワイピングが行われるまでの間、ノズル面340に付着したインク345はヘッド内部の負圧によりノズル341内に引き込まれ、それと同時に、同図(c)に示すように、インク345以外の気泡346や異物347もノズル341内に引き込まれ、吐出不良が生じる。このノズル341への気泡346などの引き込みがそれまで正常であったノズルについて生じた場合、回復動作を行うことによって却って異常ノズルが発生することになる。
【0064】
このように、ヘッドタンクの弾性部材は、液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方に固定され、他方に固定されておらず、液体収容部内の液体量が所定量以上になったときには弾性部材と液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じる構成とし、ヘッドタンクの弾性部材と液体収容部の壁面及び可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じている状態で吸引による回復動作を行わせる構成とすることで、記録ヘッドが正圧状態で回復動作を行うことができて、デキャップからワイピングまでの間にノズル面の残留液体が気泡や異物を伴ってノズル内に引き込まれることが防止される。つまり、回復動作によって正常吐出ノズルが吐出異常になることが低減し、回復動作の成功率を向上することができる。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態に係るヘッドタンクについて図13を参照して説明する。なお、図13は同ヘッドタンクの模式的説明図である。
ここでは、バネ204の一端を可撓性フィルム状部材203に固定し、バネ204を固定する部分の外面にフィルム補強部材241を設けている。これにより、他端が固定されていないバネ204の姿勢が安定する。
【0066】
次に、本発明の第3実施形態の異なる例に係るヘッドタンクについて図14を参照して説明する。なお、図14は同ヘッドタンクの模式的説明図である。
ここでは、バネ204の一端を可撓性フィルム状部材203に固定し、液体収容部200の壁面側にバネ204をガイドするガイド部材242を設けている。ガイド部材242はバネ204の外周側を案内する構成(図12(a))、バネ204の内周側を案内する構成(図12(b))のいずれでもよい。これにより、他端が固定されていないバネ204の姿勢を安定させることができる。
【0067】
次に、本発明の第4実施形態に係るヘッドタンクについて図15を参照して説明する。なお、図15は同ヘッドタンクの模式的説明図である。
ここでは、バネ204の姿勢を安定させる補助バネ243を液体収容部200の壁面と可撓性フィルム状部材203との間に介装している。補助バネ243の弾性は極めて弱く、正圧状態(バネ204の付勢力が作用しない状態)を妨げるものではない。これにより、他端が固定されていないバネ204の姿勢を安定させることができる。
【0068】
次に、本発明の第5実施形態に係るヘッドタンクについて図16を参照して説明する。なお、図16は同ヘッドタンクの模式的説明図である。
ここでは、弾性部材としてスポンジ245を使用している。なお、スポンジ以外にも弾性を有するものであれば、ゴムや多孔質材などでもよい。
【0069】
以上の回復動作に係る制御は、ROM502に格納されているプログラムによってコンピュータに実行させる。このプログラムは、情報処理装置(ホスト600)側にダウンロードして画像形成装置にインストールすることができる。本発明に係る画像形成装置と情報処理装置又は画像形成装置と本発明に係る処理を行うプログラムを有する情報処理装置とを組み合わせて画像形成システムとして構成することもできる。さらに、上記実施形態ではシリアル型画像形成装置に適用した例で説明しているが、ライン型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 インクカートリッジ
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
81 維持回復機構
82a 吸引キャップ
200 液体収容部
201 タンクケース
203 可撓性フィルム状部材
204 ばね(弾性部材)
241 送液ポンプ
500 制御部
600 ホスト(情報処理装置)
812 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングする吸引キャップと、前記吸引キャップに接続された吸引手段とを有する維持回復機構と、
前記吸引キャップで前記ノズル面をキャッピングさせ前記吸引手段を駆動して前記ノズルから液体を吸引排出させる回復動作を制御する手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは、
液体を収容する液体収容部を形成するタンクケースと、
前記タンクケースの液体収容部の一部の壁面を形成する可撓性フィルム状部材と、
前記液体収容部の壁面と前記可撓性フィルム状部材との間に配設された弾性部材と、を有し、
前記弾性部材は、前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方に固定され、他方に固定されておらず、
前記液体収容部内の液体量が所定量以上になったときには前記弾性部材と前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じ、
前記回復動作を制御する手段は、前記ヘッドタンクの前記弾性部材と前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じている状態で前記回復動作を行わせる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
液滴を吐出する記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクであって、
液体を収容する液体収容部を形成するタンクケースと、
前記タンクケースの液体収容部の一部の壁面を形成する可撓性フィルム状部材と、
前記液体収容部の壁面と前記可撓性フィルム状部材との間に配設された弾性部材と、を有し、
前記弾性部材は、前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方に固定され、他方に固定されておらず、
前記液体収容部内の液体量が所定量以上になったときには前記弾性部材と前記液体収容部の壁面及び前記可撓性フィルム状部材の一方との間に隙間が生じる
ことを特徴とするヘッドタンク。
【請求項3】
前記弾性部材の姿勢を安定させる補助弾性部材を有していることを特徴とする請求項2に記載のヘッドタンク。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のヘッドタンクを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−192642(P2012−192642A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58900(P2011−58900)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】