説明

画像形成装置及び画像形成システム

【課題】
画像デ−タ又は記録媒体に応じて、定着動作を開始する最適な定着温度を調節することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。また、定着動作を開始する最適な定着温度を調節することで、安定した定着性を得ることができ定着品質の向上が可能な画像形成装置を提供する
【解決手段】
受信した画像デ−タに基づいて形成された現像剤画像を媒体に定着させる定着部を備えた画像形成装置であって、媒体に基づいて設定された定着温度を目標定着温度として決定する目標定着温度決定部と、目標定着温度を基準とし、媒体の媒体情報を利用して現像剤画像を媒体に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部と、定着可能温度範囲演算部が演算した定着可能温度範囲に基づいて定着部を制御する定着温度制御部とを備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着温度制御機能を備えた画像形成装置及び当該画像形成装置を備えた画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な電子写真方式の画像形成装置は、感光ドラム等の像担持体表面に形成された現像剤画像を記録媒体に定着させる定着部を備える。このような定着部は、発熱体を有するヒ−トロ−ラとこのヒ−トロ−ラに圧接して設けられた加圧ロ−ラとを備える。現像剤画像が転写された記録媒体がヒ−トロ−ラと加圧ロ−ラとの間を通過する際に熱及び圧力が付与され、現像剤画像は記録媒体に定着される。
【0003】
通常、このような定着部を備える画像形成装置はヒ−トロ−ラの表面温度をモニタ−し、定着温度を制御する定着温度制御機能を備える。例えば、特許文献1には、ヒ−トロ−ラの表面温度が所定の温度に達した時点から加圧ロ−ラの全外周の表面温度が均一になるまでの時間をセットするタイマ手段を備えた画像形成装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平05−46051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような定着温度制御機能を備えた画像形成装置は、記録媒体に定着させる画像の画質を担保するため、定着動作を開始する定着温度を固定とし、ヒ−トロ−ラの表面温度が所定の定着温度に達するまで定着動作を停止していた。そのため、例えば画像形成装置の電源をオンにした直後に印刷を開始しても、ヒ−トロ−ラが所定の定着温度に達するまでは印刷は開始されず、印刷が終了するまでに時間がかかるといった問題が生じていた。また、定着動作を開始する定着温度が常に固定されていると、画像デ−タや記録媒体に応じて最適な定着温度を選択できないことから、画像品質を向上させることができないといった問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、画像デ−タ又は記録媒体に応じて、定着動作を開始する最適な定着温度を調節することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。また、定着動作を開始する最適な定着温度を調節することで、安定した定着性を得ることができ定着品質の向上が可能な画像形成装置及び当該画像形成装置を備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、受信した画像デ−タに基づいて形成された現像剤画像を媒体に定着させる定着部を備えた画像形成装置であって、媒体に基づいて設定された定着温度を目標定着温度として決定する目標定着温度決定部と、目標定着温度を基準とし、媒体の媒体情報を利用して現像剤画像を媒体に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部と、定着可能温度範囲演算部が演算した定着可能温度範囲に基づいて定着部を制御する定着温度制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成装置によれば、媒体に基づいて設定された定着温度を目標定着温度とし、この目標定着温度を基準として媒体の媒体情報を利用することで、現像剤画像を記録媒体に定着可能な定着温度範囲を演算することができる。その結果、定着動作を開始する最適な定着温度に到達するまでの時間を調節することが可能となる。
【0009】
また、本発明の画像形成システムは、画像データを処理する画像処理装置と、該画像処理装置から受信した画像デ−タに基づいて形成された現像剤画像を媒体に定着させる定着部を有する画像形成装置とを備えた画像形成システムである。この画像形成装置は、媒体に基づいて設定された定着温度を目標定着温度として決定する目標定着温度決定部と、媒体の媒体情報の入力を受付ける媒体情報入力部と、目標定着温度を基準とし、媒体情報入力部を介して入力された媒体情報を利用して現像剤画像を媒体に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部と、定着可能温度範囲演算部が演算した定着可能温度範囲に基づいて定着部を制御する定着温度制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成システムによれば、媒体に基づいて設定された定着温度を目標定着温度とし、この目標定着温度を基準として媒体の媒体情報を利用することで、現像剤画像を記録媒体に定着可能な定着温度範囲を演算することができる。その結果、定着動作を開始する最適な定着温度に到達するまでの時間を調節することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像デ−タ又は記録媒体に応じて、定着動作を開始する最適な定着温度に到達するまでの時間を調節することが可能な画像形成装置を提供することができる。また、定着動作を開始する最適な定着温度を調節することで、安定した定着性を得ることができ定着品質の向上が可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態にかかる電子写真方式の画像形成装置を説明する構成図である。画像形成装置は、感光ドラム等の像担持体表面に形成された現像剤画像を記録媒体に定着させる定着部を備える。まず、本発明の画像形成装置について説明する。
【0014】
本発明の画像形成装置101は、用紙10を収納する用紙カセット102と、用紙カセット102から用紙10を1枚ずつ分離搬送する給紙ロ−ラ103と、給紙ロ−ラ103により給紙された用紙10の搬送をガイドする搬送経路104と、用紙10を搬送ベルト106に搬送する搬送ロ−ラ105と、画像形成部108による画像形成時に用紙10を搬送する搬送ベルト106と、搬送ベルト106を張設する駆動ロ−ラ107a,107bと、電子写真方式により現像剤画像を形成する画像形成部108と、画像形成部108が備える感光ドラム109表面上に光線によって静電潜像を形成する印刷ヘッド部110と、感光ドラム109表面上に形成された現像剤画像を用紙10に転写する転写ロ−ラ111と、用紙10に転写された現像剤画像を熱及び圧力により定着させる定着部112と、搬送ロ−ラ106により搬送された用紙10の搬送をガイドする搬送経路117と、用紙10を用紙排出方向に搬送する搬送ロ−ラ118,119と、用紙10を排出する排出ロ−ラ120と、排出された用紙10をスタックするスタッカ−121と、画像形成装置101を制御する制御基板122と、画像形成装置101の制御プログラム等を記憶する不揮発性メモリ123と、ユ−ザによる印刷設定を受付けるオペレ−タパネル124と、印刷デ−タ等の送受信を行うインタフェ−スコネクタ125とを備える。
【0015】
用紙カセット102は、画像を形成する用紙10を堆積させ、給紙ロ−ラ103による用紙10の取り出しが可能となるように上面に開口部を有する箱型部材である。
【0016】
この用紙カセット102には、用紙カセット102の用紙10と接触するように給紙ロ−ラ103が備えられている。給紙ロ−ラ103は、少なくとも1対のロ−ラを有し、図示せぬ駆動系から伝達された動力により回転することで用紙10を1枚ずつ分離し、搬送経路102に用紙10を供給する。
【0017】
搬送経路104は、用紙カセット102から供給された用紙10を搬送ロ−ラ105へガイドするガイド部材である。搬送ロ−ラ105は1対のロ−ラから構成され、搬送経路104の終端に配設される。搬送ロ−ラ105は、搬送経路104に沿ってガイドされた用紙10を搬送ベルト106に搬送する。
【0018】
搬送ベルト106は、一定の圧力で感光ドラム109と当接すように配設される無端のベルト部材である。この搬送ベルト106は、両端部において駆動ロ−ラ107a,107bにより張設されている。駆動ロ−ラ107a,107bは、一定の張力を持って搬送ベルト106を支持する。また、駆動ロ−ラ107a,107bは、図示せぬ駆動系により伝達された動力により回転することで、搬送ベルト106を作動させる。
【0019】
画像形成部108は感光ドラム109等から構成され、感光ドラム109上に形成された静電潜像を現像する現像剤画像形成機構により、ブラック(K),イエロ−(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の各色に対応する現像剤画像を形成する。それぞれの画像形成部108−K(ブラック),108−Y(イエロ−),108−M(マゼンタ),108−C(シアン)は、搬送ベルト106の直上に設けられており、用紙10の搬送方向上流から画像形成部108−K,108−Y,108−M,108−Cの順で配設されている。また、それぞれの画像形成部108の構成は、収容される現像剤が異なるのみであり、その他の構成は同一である。
【0020】
感光ドラム109は、その表面に電荷を蓄積することができ、後述する印刷ヘッド部110から照射された光線により静電潜像が形成される像担持体である。感光ドラム109は、中心軸回りに回転可能なドラム状部材であり、画像形成部108の最下部において搬送ベルト106と当接するように配設される。
【0021】
印刷ヘッド部110は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を備え、感光ドラム109の直上に配設される。印刷ヘッド部110は、受信した画像デ−タに基づき発光素子を発光させ、感光ドラム109の表面に静電潜像を露光する。
【0022】
転写ロ−ラ111は、搬送ベルト106を介して感光ドラム109と対峙する位置に配設される。用紙10が感光ドラム109と搬送ベルト106の間を通過する際に、転写ロ−ラ111には図示せぬ電源より高電圧が印加され、画像形成部108で形成された現像剤画像は用紙10に転写される。
【0023】
定着部112は、中心軸回りに回転可能なヒ−トロ−ラ113と、このヒ−トロ−ラ113と圧接するように設けられた加圧ロ−ラ116とを備える。ヒ−トロ−ラ113は、内部に加熱部材としてのハロゲンランプ114が内蔵されたアルミニウムや鉄等といった金属製の芯金を有し、その表面にシリコンゴムといった弾性体が設けられている。そして、弾性体の表面には用紙10上に転写された現像剤画像との分離性を確保するためのコ−ティング層又は同じ機能を有するチュ−ブが被覆されている。
【0024】
このヒ−トロ−ラ113には、ヒ−トロ−ラ113の表面から一定の間隔をもって非接触性のサ−ミスタ等の温度センサ115が配設されている。この温度センサ115は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度を測定する。温度センサ115での測定温度に基づく制御プログラムの実行結果によってハロゲンランプ114がオンオフされることにより、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が制御される。
【0025】
加圧ロ−ラ116は、図示せぬテンションバネにより、ヒ−トロ−ラ113の表面と一定の圧力で接触するように設けられている。これによって、加圧ロ−ラ116はヒ−トロ−ラ113と一定の圧力で接触することになり、用紙10に熱及び圧力付与されるNIP部が形成される。
【0026】
搬送経路117は、搬送ベルト106から搬送された用紙10を排出ロ−ラ120へガイドするガイド部材である。搬送ロ−ラ118,119はそれぞれ1対のロ−ラから構成され、搬送経路117の中途に配設される。搬送ロ−ラ118,119は、搬送経路117に沿ってガイドされた用紙10を排出ロ−ラ120に搬送する。
【0027】
排出ロ−ラ120は1対のロ−ラから構成され、搬送経路117の終端に配設される。排出ロ−ラ120は、搬送経路117に沿ってガイドされた用紙10をスタッカ−121に排出する。スタッカ−121は、排出ロ−ラ120の下位に設けられ、排出ロ−ラ120から排出された用紙10を積載する。
【0028】
制御基板122は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)や不揮発性メモリ123等を搭載する基板材である。この制御基板122に搭載されるCPUは、不揮発性メモリ123に記憶されている制御プログラムを実行することによって、画像形成装置101を制御する。
【0029】
不揮発性メモリ123は、フラッシュメモリ、UV−EPROM(Ultra−Violet Erasable Programmable Read Only Memory:紫外消去型ROM)、又はEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等のメモリから構成され、画像形成装置101の制御プログラム等を記憶する。
【0030】
オペレ−タパネル124は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示機構及びスイッチ等の入力機構を備え、ユ−ザによる入力操作を容易にするために画像形成装置101の上方部に設けられる。オペレ−タパネル124は、画像形成装置101の装置状況又は印刷進行状況の表示や、ユ−ザからの印刷設定の入力を受付ける。
【0031】
インタフェ−スコネクタ125は、LAN(Local Area Network)又はUSB(Universal serial BuS)ケ−ブル等を接続するためのインタフェ−スコネクタである。
【0032】
このような構成を備えた画像形成装置101の印刷動作について説明する。まず、オペレ−タパネル124を介してユ−ザによる印刷設定の入力を受付けた後、インタフェ−スコネクタ125を介して印刷デ−タを受信すると、制御基板122上のCPUは不揮発性メモリ123に記憶されている制御プログラムを読み出す。
【0033】
読み出された制御プログラムに基づきCPUは、図示せぬ駆動系及び電源系に作動指令を供給する。作動指令の供給を受けた駆動系は、各ロ−ラ類に駆動力を伝達する。また、電源系は、高電圧を印加するための初動動作を開始する。
【0034】
駆動系により駆動力を伝達された給紙ロ−ラ103は回転を開始し、用紙10を1枚ずつ用紙カセット102から分離搬送する。給紙ロ−ラ103から搬送された用紙10は搬送経路104に沿ってガイドされ、搬送ロ−ラ105に搬送される。搬送ロ−ラ105は、用紙10を搬送ベルト106に搬送する。搬送ベルト106は、駆動ロ−ラ107a,107bの回転により駆動し、感光ドラム109が当接している位置まで用紙10を搬送する。
【0035】
この時、印刷ヘッド部110は受信した印刷デ−タに基づいて駆動し、感光ドラム109上に静電潜像を形成する。画像形成部108は、感光ドラム109上に形成された静電潜像を現像剤画像形成機構により現像する。この現像剤画像は、用紙10が感光ドラム109と搬送ベルト106との間を搬送される際に、図示せぬ電源系より高電圧が印加された転写ロ−ラ111により用紙10に転写される。
【0036】
現像剤画像が転写された用紙10は、搬送ベルト106の駆動により定着部112に搬送される。定着部112では、温度センサ115での測定温度に基づく制御プログラムの実行結果によって、最適な定着温度となるようヒ−トロ−ラ113が制御されている。定着部112に到達した用紙10には熱及び圧力が付与され、現像剤画像が定着される。
【0037】
現像剤画像が定着された用紙10は、搬送ロ−ラ118,119の回転により搬送経路117のガイドに沿って排出ロ−ラ120まで搬送される。搬送された用紙10は、排出ロ−ラ120の回転によりスタッカ−121に排出される。
【0038】
次に、上述した画像形成装置101の印刷動作を実行可能とする制御プログラムについて説明する。図2は、CPUが実行する制御プログラムの構成を説明するブロック図である。
【0039】
制御プログラムは、インタフェ−スコネクタ125を介してホストコンピュ−タ等との印刷デ−タの送受信を行う送受信部201と、受信した印刷デ−タの所定領域当りの画像密度情報を算出する画像密度情報算出部202と、用紙10に基づいて設定された定着温度を目標定着温度として決定する目標定着温度決定部203と、目標定着温度を基準とし画像密度情報を利用して現像剤画像を用紙10に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部204と、定着温度可能範囲に基づいてヒ−トロ−ラ113の表面温度を制御する定着温度制御部205と、ヒ−トロ−ラ113の表面温度に基づき印刷動作を開始するか否かを判定する印刷開始可能判定部206と、温度センサ115が測定したヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果を取得する定着温度測定部207と、画像形成装置101の印刷動作全般を制御する印刷制御部208と、用紙10の給紙制御を行う給紙機構制御部209と、画像形成及び転写プロセスを制御する画像形成機構制御部210とを備える。
【0040】
送受信部201は、インタフェ−スコネクタ125を介してホストコンピュ−タ等との印刷デ−タの送受信を行う。送受信部201は印刷デ−タを受信すると、印刷デ−タを受信した旨を画像密度情報算出部202に通知する。
【0041】
画像密度情報算出部202は、用紙10上に形成される印刷デ−タを例えば、図3に示すように所定領域毎のマス目状に区切り、このマス目単位でのデ−タドット数を求める。画像密度情報算出部202は、求めた1マス毎のデ−タドット数を1マスが占める全ドット数で除することにより画像密度を算出する。ここで、用紙10に形成される画像がカラ−画像であれば、通常色表現に用いられる色は、シアン,マゼンタ,イエロ−の3色である。したがって、画像密度情報算出部202は、各色毎に画像密度を算出し、最終的に3色合計の画像密度(以下、合算画像密度)を算出する。
【0042】
この場合、シアン,マゼンタ,イエロ−の各色の最大画像密度は100%であるため、3色合計の合算画像密度は300%となるが、画像形成装置によっては、定着性等の問題から各色の最大画像密度を100%未満の値に抑えている装置もあるため、合算画像密度は必ずしも300%となる訳ではないことに留意する。
【0043】
目標定着温度決定部203は、用紙10の厚み情報に関連付けられて設定された定着温度を目標定着温度(以下、Tprintと言う)として決定する。第1の実施の形態においては、印刷に供される用紙10の厚みに応じて、合算画像密度を300%として印刷した場合に良好な印刷結果が得られるよう、基準となる定着温度が予め設定されている。目標定着温度決定部203は、印刷に用いられる用紙10の厚みに基づいてTprintを決定する。例えば、用紙10の厚みが120μmである場合、目標定着温度決定部203は、Tprintを180℃に決定する。
【0044】
定着可能温度範囲演算部204は、目標定着温度決定部203が決定したTprintを基準とし、画像密度情報算出部202が算出した合算画像密度を利用して現像剤画像を用紙10に定着可能な定着温度範囲を演算する。ここで、合算画像密度が高い部分ほど現像剤は多く使用されることになり、現像剤に奪われる熱量も多くなる。したがって、定着可能温度範囲演算部204は、画像密度情報算出部202が算出した合算画像密度の中で、最も高い合算画像密度を利用して定着可能温度範囲を演算する。
【0045】
具体的には、定着可能温度範囲演算部204は、図4に示すような定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを使用して、定着可能温度範囲を演算する。例えば、印刷に供される用紙10の厚みが120μmであり、目標定着温度決定部203がTprintを180℃に決定し、画像密度情報演算部202が演算した合算画像密度が250%であった場合、定着可能温度範囲演算部204は、定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照して、定着可能温度範囲の上限温度(以下、Tupperと言う)を183℃(Tprint:180℃+上限温度オフセット値(Toff1):3℃)、定着可能温度範囲の下限温度(以下、Tlowerと言う)を176℃(Tprint:180℃+下限温度オフセット値(Toff2):−4℃)と演算する。
【0046】
定着温度制御部205は、定着可能温度範囲演算部204が演算した定着可能温度範囲に基づいてハロゲンランプ114をオンオフすることによりヒ−トロ−ラ113の表面温度を制御する。
【0047】
印刷開始可能判定部206は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果に基づき、印刷動作を開始するか否かを判断する。
【0048】
定着温度測定部207は、定着温度制御部205又は印刷開始可能判定部206の指示に基づいて温度センサ115が測定したヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果を取得する。取得したヒ−トロ−ラ113の表面温度は、定着温度制御部205又は印刷開始可能判定部206に通知される。
【0049】
印刷制御部208は、印刷開始可能判定部206が印刷開始可能と判断した場合に、画像形成装置101全般の印刷動作を制御する。
【0050】
給紙機構制御部209は印刷制御部208の制御に基づき、給紙ロ−ラ103等による用紙10の給紙の制御を行う。
【0051】
画像形成機構制御部210は印刷制御部208の制御に基づき、画像形成部108による画像形成及び転写ロ−ラ111等による転写プロセスを制御する。
【0052】
上述した制御プログラムに基づく処理フロ−について図5のフロ−チャ−トを用いて説明する。
【0053】
まず、ホストコンピュ−タから印刷デ−タが画像形成装置101に対して送信されると、送受信部201はインタフェ−スコネクタ125を介して受信する。送受信部201は、画像密度情報算出部202に対して印刷デ−タを受信した旨を通知する(ステップS101 YES)。通知を受けた画像密度情報算出部202は、受信した印刷デ−タの画像密度を算出する(ステップS102)。この時、画像密度情報算出部202は、印刷ペ−ジ内で最も画像密度が高い部分の合算画像密度を算出するものとする。
【0054】
次に、ステップS103において、目標定着温度決定部203は用紙10の厚みに基づいてTprintを決定する。
【0055】
次に、定着可能温度範囲演算部204は、目標定着温度決定部203が決定したTprintを基準とし、画像密度情報算出部202が算出した合算画像密度を利用してTupper及びTlowerを演算する(ステップS104)。
【0056】
ステップS105において、定着温度制御部205は、定着温度測定部207に対して温度センサ115でヒ−トロ−ラ113の表面温度を測定するよう指示を与える。温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprint未満である場合、定着温度制御部205は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度をTprintに調整すべく、図示せぬ電源系にハロゲンランプ114に通電するよう指示を与える。定着温度制御部205により指示を受けた図示せぬ電源系はハロゲンランプ114に通電を開始する。
【0057】
一方、温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprint以上である場合、定着温度制御部205は、図示せぬ電源系にハロゲンランプ114への通電指示は与えない。
【0058】
ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprintに到達した後、定着温度制御部205は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度をTprintに保つよう図示せぬ電源系を制御する。
【0059】
次に、印刷開始可能判定部206は、定着温度測定部207に対して温度センサ115でヒ−トロ−ラ113の表面温度を測定するよう指示を与える。温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲内である場合(ステップS106 YES)、印刷開始可能判定部206は、印刷制御部208に印刷開始指示を与える。印刷開始指示を受けた印刷制御部208は、給紙機構制御部209及び画像形成機構制御部210に印刷実行指示を与える。印刷制御部208より印刷実行指示を受けた給紙機構制御部209は、給紙ロ−ラ103等を駆動させ用紙10の搬送を開始させる。搬送された用紙10には、画像形成機構制御部210から指示を受けた画像形成部108及び転写ロ−ラ111により現像剤画像が形成される。
【0060】
用紙10上の現像剤画像は、定着部112により定着される。現像剤画像が定着された用紙10は、搬送経路118に沿ってガイドされ排出ロ−ラ120に搬送される。排出ロ−ラ120は、用紙10をスタッカ−121上に排出する(ステップS107)。
【0061】
ステップS106において、温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲外である場合(ステップS106 No)、印刷開始可能判定部206は、印刷制御部208に印刷開始実行指示を与えない。印刷開始可能判定部206は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が定着可能温度範囲内に達するまで待機し、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲内に達した段階で印刷制御部208に印刷開始実行指示を与える。
【0062】
これまでに説明した制御プログラムに基づく動作によって実現される印刷開始可能タイミングの調節について、従来装置と比較しながらより詳細に説明する。
【0063】
まず、定着部112の加熱時における印刷開始可能タイミングの調整について説明する。
【0064】
ハロゲンランプ114のオンによる定着部112の加熱にかかる時間tは、加熱温度変化率をh、室温をTroom、印刷開始温度をT1とすると、式(1)で表される。
t=(T1−Troom)/h (1)
【0065】
本実施の形態にかかる画像形成装置101の印刷開始までにかかる時間ts1は、図6−1に示されるように、印刷開始温度、すなわち定着可能温度範囲の下限温度であるTlower=170℃、加熱温度変化率h=2.5℃/秒、室温Troom=25℃とすると、上式(1)により、
ts1=(170−25)/2.5=58(秒)となる。
【0066】
一方、従来装置において印刷開始までにかかる時間ts1´は、印刷開始温度、すなわち目標定着温度であるTprint=180℃、加熱温度変化率h=2.5℃/秒、室温Troom=25℃とすると、上式(1)により、
ts1´=(180−25)/2.5=62(秒)となる。
【0067】
したがって、本実施の形態にかかる画像形成装置101によれば、従来装置よりも4秒(62秒−58秒)早く印刷を開始することができる。
【0068】
次に、定着部112の放熱時における印刷開始可能タイミングの調整について説明する。
定着部112は、連続印刷後のように一旦温度が高温となると熱を蓄積してしまい、温度が下がりにくくなる。よって、一般的には放熱時の定着部112の温度変化は加熱時と比較して緩やかになる。
【0069】
定着部112の放熱にかかる時間tは、放熱温度変化率をr、現時点での定着部112の温度をT0、印刷開始温度をT1とすると、式(2)で表される。
t=(T0−T1)/r (2)
【0070】
本実施の形態にかかる画像形成装置101の印刷開始までにかかる時間ts2は、図6−2に示されるように、印刷開始温度、すなわち定着可能温度範囲の上限温度であるTupper=190℃、放熱温度変化率r=0.2℃/秒、現時点での定着部112の温度T0=200℃とすると、上式(2)より、
ts2=(200−190)/0.2=50(秒)となる。
【0071】
一方、従来装置において印刷開始までにかかる時間ts2´は、印刷開始温度、すなわち目標定着温度であるTprint=180℃、放熱温度変化率r=0.2℃/秒、現時点での定着部112の温度T0=200℃とすると、上式(2)により、
ts2´=(200−180)/0.2=100(秒)となる。
【0072】
したがって、本実施の形態にかかる画像形成装置101によれば、従来装置よりも50秒も早く印刷を開始することができる。
【0073】
上述した従来装置と比較しての効果に加えて、本実施形態にかかる定着可能温度範囲演算部204は、画像密度情報算出部202が算出した合算画像密度に基づき、図4に示した定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照して定着可能温度範囲を演算する。したがって、例えば、印刷に供される用紙10の厚みが120μmであり、目標定着温度決定部203が、Tprintを180℃に決定し、画像密度情報演算部202が演算した合算画像密度が250%であった場合、定着可能温度範囲演算部204は、定着可能温度範囲の上限温度であるTupperを183℃、定着可能温度範囲の下限温度であるTlowerを176℃と演算する(定着可能温度範囲:176℃〜183℃)。さらに、例えば、印刷に供される用紙10の厚みが120μmであり、目標定着温度決定部203がTprintを180℃に決定し、画像密度情報演算部202が演算した合算画像密度が50%であった場合、定着可能温度範囲演算部204は、定着可能温度範囲の上限温度であるTupperを190℃、定着可能温度範囲の下限温度であるTlowerを167℃と演算する(定着可能温度範囲:167℃〜190℃)。
【0074】
したがって、図7−1に示すように、本実施形態においては、定着部112の加熱時における印刷開始可能タイミングを合算画像密度に応じて調節することができる。例えば、合算画像密度が50%の場合では、定着部112の温度が定着可能温度範囲の下限温度であるTlower=167℃に達した時間(ts3)から印刷を開始することができる。すなわち、加熱温度変化率を2.5℃/秒とした場合、合算画像密度が250%の場合において、定着部112が定着可能温度範囲の下限温度であるTlower=176℃に達するまでに要する時間(ts4)よりも3.6秒((176−167)/2.5))早く印刷を実行することができる。
【0075】
また、同様に図7−2に示すように、本実施形態においては、定着部112の放熱時における印刷開始可能タイミングを合算画像密度に応じて調節することができる。例えば、合算画像密度が50%の場合では、定着部112の温度が定着可能温度範囲の上限温度であるTupper=190℃に達した時間(ts5)から印刷を開始することができる。すなわち、放熱温度変化率を0.2℃/秒とした場合、合算画像密度が250%の場合において、定着部112が定着可能温度範囲の上限温度であるTupper=183℃に達するまでに要する時間(ts6)よりも35秒((190−183)/0.2))早く印刷を実行することができる。
【0076】
これまでに説明した画像密度情報算出部202は、受信した印刷デ−タの所定領域に当りのデ−タドット数に基づいて合算画像密度を算出する形態としていたが、これ以外にも、例えば図8に示すように、用紙10上に積載されたシアン,マゼンタ,イエロ−の各色の現像剤の層厚を計測することにより合算画像密度を算出する形態とし、得られた合算画像密度に基づいて定着可能温度範囲を演算してもよい。
【0077】
また、定着可能温度範囲演算部204は、図4に示す定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照して定着可能上限温度であるTupper及び定着可能下限温度であるTlowerを演算していたが、これ以外にも、例えば最大合算画像密度及び最低合算画像密度における定着温度オフセット値を予め設定しておき、この2つの値を基に演算することでTupper及びTlowerを求めてもよい。この場合、現像剤は色により定着性が異なることがあるため、色毎に設けられた定着性の係数で補正することにより、より正確なTupper及びTlowerを演算することができる。
【0078】
さらに、給紙機構制御部209は、定着部112の温度が定着可能温度範囲内に達した段階で、用紙10の搬送を開始していたが、給紙ロ−ラ103等の回転数を制御することにより、定着部112の温度が定着可能温度範囲内に達する前から用紙10の搬送を開始する形態としてもよい。
【0079】
以上のように、第1の実施形態によれば、印刷デ−タの合算画像密度が低い場合、定着可能温度範囲が拡大されるので、印刷開始可能ポイントを早めることができる。したがって、定着部112における定着温度調整の待ち時間を短縮することが可能となる。特に、連続印刷後のように一旦温度が高温となると熱を蓄積してしまい、温度が下がりにくくなるため、この場合には定着温度調整の待ち時間を大幅に短縮することができる。また、印刷デ−タの合算画像密度が高い場合、定着可能温度範囲を縮小することにより、安定した定着性を得ることができ、定着品質の向上が可能となる。
【0080】
[第2の実施形態]
第2の実施形態にかかる画像形成装置101の構成及び印刷動作は、第1の実施の形態で説明した画像形成装置101と略同一である。したがって、同一な部分についての説明は省略する。第2の実施形態においては、画像形成装置101の印刷動作を実行可能とする制御プログラムが第1の実施形態とは異なる。以下、詳細に説明する。
【0081】
図9は、CPUが実行する制御プログラムの構成を説明する図である。
【0082】
制御プログラムは、インタフェ−スコネクタ125を介してホストコンピュ−タ等との印刷デ−タの送受信を行う送受信部801と、オペレ−タパネル124の制御を行うオペレ−タパネル制御部802と、ユ−ザによりオペレ−タパネル124を介して入力された用紙10の厚み情報を不揮発性メモリ123に格納する媒体情報記憶部803と、媒体情報記憶部803に記憶された用紙の厚み情報に関連付けられて設定された定着温度を目標温度として決定する目標定着温度決定部804と、目標定着温度を基準とし用紙10の厚み情報を利用して現像剤画像を用紙10に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部805と、定着温度可能範囲に基づいてヒ−トロ−ラ113の表面温度を制御する定着温度制御部806と、ヒ−トロ−ラ113の表面温度に基づき印刷動作を開始するか否かを判定する印刷開始可能判定部807と、温度センサ115が測定したヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果を取得する定着温度測定部808と、画像形成装置101の印刷動作全般を制御する印刷制御部809と、用紙10の給紙制御を行う給紙機構制御部810と、画像形成及び転写プロセスを制御する画像形成機構制御部811とを備える。
【0083】
送受信部801は、インタフェ−スコネクタ125を介してホストコンピュ−タ等との印刷デ−タの送受信を行う。送受信部801は、印刷デ−タを受信すると、印刷デ−タを受信した旨を目標定着温度決定部804に通知する。
【0084】
オペレ−タパネル制御部802は、ユ−ザによる用紙10の厚み情報の入力を受付けるオペレ−タパネル124を制御する。
【0085】
媒体情報記憶部803は、オペレ−タパネル124を介して入力された用紙10の厚み情報を不揮発性メモリ123に格納する。
【0086】
目標定着温度決定部804は、媒体情報記憶部803に格納された用紙10の厚み情報を読み出し、この用紙10の厚み情報に関連付けられて設定された定着温度を目標定着温度(以下、Tprintと言う)として決定する。ここで、用紙10に形成される画像がカラ−画像であれば、通常色表現に用いられる色は、シアン,マゼンタ,イエロ−の3色である。各色の最大密度は100%でであるため、3色合計の合算画像密度は300%となる。
【0087】
しかしながら、画像形成装置によっては、定着性等の問題から各色の最大画像密度を100%未満の値に抑えている装置もあるため、合算画像密度は必ずしも300%となる訳ではないことに留意する。
【0088】
第2の実施の形態においては、印刷に供される用紙10の厚みに応じて、合算画像密度を300%として印刷した場合に良好な印刷結果が得られるよう、基準となる定着温度が予め設定されている。目標定着温度決定部804は、印刷に用いられる用紙10の厚みに基づいてTprintを決定する。例えば、用紙10の厚みが100μmである場合、目標定着温度決定部804は、Tprintを170℃に決定し、また、用紙10の厚みが250μmである場合、目標定着温度決定部804は、Tprintを180℃に決定する。
【0089】
定着可能温度範囲演算部805は、目標定着温度決定部804が決定したTprintを基準とし、用紙10の厚み情報を利用して現像剤画像を用紙10に定着可能な温度の上限温度(以下、Tupperと言う)及び下限温度(以下、Tlowerと言う)からなる定着可能温度範囲を演算する。
【0090】
一般的に、印刷に供される用紙10厚みが厚いほど、奪われる熱量も多くなる。したがって、定着性を保つためには、TprintとTlowerとの温度差を小さく設定する必要があるが、逆にTprintとTupperとの温度差は大きく設定することができる。また、印刷に供される用紙10の厚みが薄いほど、奪われる熱量は少なくなる。したがって、TprintとTlowerとの温度差を大きく設定しても定着性は保たれる。しかしながら、厚みが薄い用紙10に合算画像密度が高い印刷デ−タを印刷した場合、ヒ−トロ−ラ113の温度が高いとヒ−トロ−ラ113によって溶解した現像剤がヒ−トロ−ラ113自身に張り付き、用紙10がヒ−トロ−ラ113に巻きつく恐れがある。これによりジャムが発生する可能性があるため、TprintとTupperとの温度差は小さく設定する必要がある。
【0091】
このような条件に基づき定着可能温度範囲演算部805は定着可能温度範囲を演算する。具体的には、定着可能温度範囲演算部805は、図10に示すような定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを使用して、定着可能温度範囲を演算する。例えば、印刷に供される用紙10の厚みが100μmであり、目標定着温度決定部804がTprintを170℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部805は、定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照してTupperを175℃(Tprint:170℃+上限温度オフセット値(Toff1):5℃)、Tlowerを160℃(Tprint:170℃+下限温度オフセット値(Toff2):−10℃)と演算する。また、印刷に供される用紙10の厚みが250μmであり、目標定着温度決定部804がTprintを180℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部805は、定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照してTupperを192℃(Tprint:180℃+上限温度オフセット値(Toff1):12℃)、Tlowerを176℃(Tprint:180℃+下限温度オフセット値(Toff2):−4℃)と演算する。
【0092】
定着温度制御部806は、定着可能温度範囲演算部805が演算した定着可能温度範囲に基づいてハロゲンランプ114をオンオフすることによりヒ−トロ−ラ113の表面温度を制御する。
【0093】
印刷開始可能判定部807は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果に基づき、印刷動作を開始するか否かを判断する。
【0094】
定着温度測定部808は、定着温度制御部806又は印刷開始可能判定部807の指示に基づいて温度センサ115が測定したヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果を取得する。取得したヒ−トロ−ラ113の表面温度は、定着温度制御部806又は印刷開始可能判定部807に通知される。
【0095】
印刷制御部809は、印刷開始可能判定部807が印刷開始可能と判断した場合に、画像形成装置101全般の印刷動作を制御する。
【0096】
給紙機構制御部810は印刷制御部809の制御に基づき、給紙ロ−ラ103等による用紙10の給紙の制御を行う。
【0097】
画像形成機構制御部811は印刷制御部809の制御に基づき、画像形成部108による画像形成及び転写ロ−ラ111等による転写プロセスを制御する。
【0098】
上述した制御プログラムに基づく処理フロ−について図11のフロ−チャ−トを用いて説明する。なお、印刷に供される用紙10の厚みに応じて、合算画像密度を300%として印刷した場合に良好な印刷結果が得られるよう、基準となる定着温度が予め設定されているものとする。
【0099】
まず、ユ−ザによって用紙10の厚み情報がオペレ−タパネル124を介して入力される。オペレ−タパネル制御部802は、入力を受付けた用紙10の厚み情報を媒体情報記憶部803に通知する。媒体情報記憶部803は、用紙10の厚み情報を不揮発性メモリ123に格納する(ステップS201)。
【0100】
次に、ホストコンピュ−タから印刷デ−タが画像形成装置101に対して送信されると、送受信部801はインタフェ−スコネクタ125を介して受信する。送受信部801は目標定着温度決定部804に対して印刷デ−タを受信した旨を通知する(ステップS202 YES)。
【0101】
ステップS203において、通知を受けた目標定着温度決定部804は不揮発性メモリ123に格納された用紙10の厚み情報に基づいてTprintを決定する。
【0102】
次に、定着可能温度範囲演算部805は、目標定着温度決定部804が決定したTprintを基準とし、用紙10の厚み情報を利用してTupper及びTlowerを演算する(ステップS204)。
【0103】
ステップS205において、定着温度制御部806は、定着温度測定部808に対して温度センサ115でヒ−トロ−ラ113の表面温度を測定するよう指示を与える。温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprint未満である場合、定着温度制御部806は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度をTprintに調整すべく、図示せぬ電源系にハロゲンランプ114に通電するよう指示を与える。定着温度制御部806により指示を受けた図示せぬ電源系はハロゲンランプ114に通電を開始する。
【0104】
一方、温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprint以上である場合、定着温度制御部806は、図示せぬ電源系にハロゲンランプ114への通電指示は与えない。
【0105】
ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprintに到達した後、定着温度制御部806は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度をTprintに保つよう図示せぬ電源系を制御する。
【0106】
次に、印刷開始可能判定部807は、定着温度測定部808に対して温度センサ115でヒ−トロ−ラ113の表面温度を測定するよう指示を与える。温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲内である場合(ステップS206 YES)、印刷開始可能判定部807は、印刷制御部809に印刷開始指示を与える。印刷開始指示を受けた印刷制御部809は、給紙機構制御部810及び画像形成機構制御部811に印刷実行指示を与える。印刷制御部809より印刷実行指示を受けた給紙機構制御部810は、給紙ロ−ラ103等を駆動させ用紙10の搬送を開始させる。搬送された用紙10には、画像形成機構制御部811から指示を受けた画像形成部108及び転写ロ−ラ111により現像剤画像が形成される。
【0107】
用紙10上の現像剤画像は、定着部112により定着される。現像剤画像が定着された用紙10は、搬送経路118に沿ってガイドされ排出ロ−ラ120に搬送される。排出ロ−ラ120は、用紙10をスタッカ−121上に排出する(ステップS207)。
【0108】
ステップS206において、温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲外である場合(ステップS206 No)、印刷開始可能判定部807は、印刷制御部809に印刷開始実行指示を与えない。印刷開始可能判定部807は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が定着可能温度範囲内に達するまで待機し、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲内に達した段階で印刷制御部809に印刷開始実行指示を与える。
【0109】
本実施形態にかかる定着可能温度範囲演算部805は、用紙10の厚み情報に基づき、図10に示した定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照して定着可能温度範囲を演算する。したがって、例えば、印刷に供される用紙10の厚みが100μmであり、目標定着温度決定部804が、Tprintを170℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部805は、Tupperを175℃、Tlowerを160℃と演算する(定着可能温度範囲:160℃〜175℃)。さらに、例えば、印刷に供される用紙10の厚みが250μmであり、目標定着温度決定部804が、Tprintを180℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部805は、Tupperを192℃、Tlowerを176℃と演算する(定着可能温度範囲:176℃〜192℃)。
【0110】
したがって、図12に示すように、本実施形態においては、定着部112の加熱時における印刷開始可能タイミングを用紙10の用紙厚さに応じて調節することができる。例えば、用紙10の厚みが100μmの場合では、定着部112の温度が定着可能温度範囲の下限温度であるTlower=160℃に達した時間(ts7)から印刷を開始することができる。すなわち、加熱温度変化率を2.5℃/秒とした場合、目標温度Tprint=170℃に達するまでの時間(ts7´)よりも4秒((170−160)/2.5))早く印刷を開始することができる。また、用紙10の厚みが250μmの場合では、Tlower=176℃に達した時間(ts8)から印刷を開始することができ、加熱温度変化率を2.5℃/秒とした場合、目標温度Tprint=180℃に達するまでの時間(ts8´)よりも1.6秒((180−176)/2.5))早く印刷を開始することができる。従って、加熱時は用紙10の厚みが薄い程大きな効果が得られる。
【0111】
また、同様に図13に示すように、本実施形態においては、定着部112の放熱時における印刷開始可能タイミングを用紙10の用紙厚さに応じて調節することができる。例えば、用紙10の厚みが250μmの場合では、定着部112の温度が定着可能温度範囲の上限温度であるTupper=192℃に達した時間(ts9)から印刷を開始することができる。すなわち、放熱温度変化率を0.5℃/秒とした場合、目標温度Tprint=180℃に達するまでの時間(ts9´)よりも24秒((192−180)/0.5))早く印刷を開始することができる。また、用紙10の厚みが100μmの場合では、Tupper=175℃に達した時間(ts10)から印刷を開始することができ、放熱温度変化率を0.5℃/秒とした場合、目標温度Tprint=170℃に達するまでの時間(ts10´)よりも10秒((175−170)/0.5))早く印刷を開始することができる。従って、放熱時は用紙10の厚みが厚い程大きな効果が得られる。
【0112】
これまでに説明した定着可能温度範囲演算部204は、図10に示す定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照して定着可能上限温度であるTupper及び定着可能下限温度であるTlowerを演算していたが、これ以外にも、例えば最大用紙厚み及び最低用紙厚みにおける定着温度オフセット値を予め設定しておき、この2つの値を基に演算することでTupper及びTlowerを求めてもよい。
【0113】
さらに、給紙機構制御部810は、定着部112の温度が定着可能温度範囲内に達した段階で、用紙10の搬送を開始していたが、給紙ロ−ラ103等の回転数を制御することにより、定着部112の温度が定着可能温度範囲内に達する前から用紙10の搬送を開始する形態としてもよい。
【0114】
以上のように、第2の実施形態によれば、用紙10の厚み情報に基づいて印刷開始可能ポイントを早めることができる。したがって、定着部112における定着温度調整の待ち時間を短縮することが可能となる。特に、連続印刷後のように一旦温度が高温となると熱を蓄積してしまい、温度が下がりにくくなるため、この場合には定着温度調整の待ち時間を大幅に短縮することができる。また、用紙10の厚さが厚い場合には、TprintとTlowerとの温度差を小さく設定することにより、定着性が上がり印刷品質を向上することができる。また、用紙10の厚さが薄い場合には、TprintとTupperとの温度差を小さく設定することにより、ヒ−トロ−ラ113への用紙10の巻きつきジャムを防止することができる。
【0115】
[第3の実施形態]
第3の実施形態にかかる画像形成装置101の構成及び印刷動作は、第1の実施の形態で説明した画像形成装置101と略同一である。したがって、同一な部分についての説明は省略する。第3の実施形態においては、第2の実施形態と同様に画像形成装置101の印刷動作を実行可能とする制御プログラムが第1の実施形態とは異なる。以下、詳細に説明する。
【0116】
図14は、CPUが実行する制御プログラムの構成を説明する図である。
【0117】
制御プログラムは、インタフェ−スコネクタ125を介してホストコンピュ−タ等との印刷デ−タの送受信を行う送受信部1201と、オペレ−タパネル124の制御を行うオペレ−タパネル制御部1202と、ユ−ザによりオペレ−タパネル124を介して入力された用紙10の種類情報を不揮発性メモリ123に格納する媒体情報記憶部1203と、媒体情報記憶部1203に記憶された用紙の種類情報に関連付けられて設定された定着温度を目標温度として決定する目標定着温度決定部1204と、目標定着温度を基準とし用紙10の種類情報を利用して現像剤画像を用紙10に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部1205と、定着温度可能範囲に基づいてヒ−トロ−ラ113の表面温度を制御する定着温度制御部1206と、ヒ−トロ−ラ113の表面温度に基づき印刷動作を開始するか否かを判定する印刷開始可能判定部1207と、温度センサ115が測定したヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果を取得する定着温度測定部1208と、画像形成装置101の印刷動作全般を制御する印刷制御部1209と、用紙10の給紙制御を行う給紙機構制御部1210と、画像形成及び転写プロセスを制御する画像形成機構制御部1211とを備える。
【0118】
送受信部1201は、インタフェ−スコネクタ125を介してホストコンピュ−タ等との印刷デ−タの送受信を行う。送受信部1201は、印刷デ−タを受信すると、印刷デ−タを受信した旨を目標定着温度決定部1204に通知する。
【0119】
オペレ−タパネル制御部1202は、ユ−ザによる用紙10の種類情報の入力を受付けるオペレ−タパネル124を制御する。
【0120】
媒体情報記憶部1203は、オペレ−タパネル124を介して入力された用紙10の種類情報を不揮発性メモリ123に格納する。
【0121】
目標定着温度決定部1204は、媒体情報記憶部1203に格納された用紙10の種類情報を読み出し、この用紙10の種類情報に関連付けられて設定された定着温度を目標定着温度(以下、Tprintと言う)として決定する。ここで、用紙10に形成される画像がカラ−画像であれば、通常色表現に用いられる色は、シアン,マゼンタ,イエロ−の3色である。各色の最大密度は100%でであるため、3色合計の合算画像密度は300%となる。
【0122】
しかしながら、画像形成装置によっては、定着性等の問題から各色の最大画像密度を100%未満の値に抑えている装置もあるため、合算画像密度は必ずしも300%となる訳ではないことに留意する。
【0123】
第3の実施の形態においては、印刷に供される用紙10の種類に応じて、合算画像密度を300%として印刷した場合に良好な印刷結果が得られるよう、基準となる定着温度が予め設定されている。目標定着温度決定部1204は、印刷に用いられる用紙10の種類に基づいてTprintを決定する。例えば、用紙10が普通紙である場合、目標定着温度決定部1204は、Tprintを180℃に決定する。
【0124】
定着可能温度範囲演算部1205は、目標定着温度決定部1204が決定したTprintを基準とし、用紙10の種類情報を利用して現像剤画像を用紙10に定着可能な温度の上限温度(以下、Tupperと言う)及び下限温度(以下、Tlowerと言う)からなる定着可能温度範囲を演算する。
【0125】
一般的に、印刷に供される用紙10の種類(普通紙,光沢紙,ラベル紙,ハガキ,封筒,OHP等)に応じて、奪われる熱量も異なるため、予め用紙10の種類毎に良好な定着性が得られる温度オフセット値を設定する必要がある。したがって、定着可能温度範囲演算部1205は、図15に示すような定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを使用して、定着可能温度範囲を演算する。例えば、印刷に供される用紙10が普通紙であり、目標定着温度決定部1204がTprintを180℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部1205は、Tupperを190℃(Tprint:180℃+上限温度オフセット値(Toff1):10℃)、Tlowerを167℃(Tprint:180℃+下限温度オフセット値(Toff2):−13℃)と演算する。また、印刷に供される用紙10が光沢紙であり、目標定着温度決定部1204がTprintを180℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部1205は、定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照してTupperを185℃(Tprint:180℃+上限温度オフセット値(Toff1):5℃)、Tlowerを174℃(Tprint:180℃+下限温度オフセット値(Toff2):−6℃)と演算する。
【0126】
定着温度制御部1206は、定着可能温度範囲演算部1205が演算した定着可能温度範囲に基づいてハロゲンランプ114をオンオフすることによりヒ−トロ−ラ113の表面温度を制御する。
【0127】
印刷開始可能判定部1207は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果に基づき、印刷動作を開始するか否かを判断する。
【0128】
定着温度測定部1208は、定着温度制御部1206又は印刷開始可能判定部1207の指示に基づいて温度センサ115が測定したヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果を取得する。取得したヒ−トロ−ラ113の表面温度は、定着温度制御部1206又は印刷開始可能判定部1207に通知される。
【0129】
印刷制御部1209は、印刷開始可能判定部1207が印刷開始可能と判断した場合に、画像形成装置101全般の印刷動作を制御する。
【0130】
給紙機構制御部1210は印刷制御部1209の制御に基づき、給紙ロ−ラ103等による用紙10の給紙の制御を行う。
【0131】
画像形成機構制御部1211は印刷制御部1209の制御に基づき、画像形成部108による画像形成及び転写ロ−ラ111等による転写プロセスを制御する。
【0132】
上述した制御プログラムに基づく処理フロ−について図16のフロ−チャ−トを用いて説明する。なお、印刷に供される用紙10の種類に応じて、合算画像密度を300%として印刷した場合に良好な印刷結果が得られるよう、基準となる定着温度が予め設定されているものとする。
【0133】
まず、ユ−ザによって用紙10の種類情報がオペレ−タパネル124を介して入力される。オペレ−タパネル制御部1202は、入力を受付けた用紙10の種類情報を媒体情報記憶部1203に通知する。媒体情報記憶部1203は、用紙10の種類情報を不揮発性メモリ123に格納する(ステップS301)。
【0134】
次に、ホストコンピュ−タから印刷デ−タが画像形成装置101に対して送信されると、送受信部1201はインタフェ−スコネクタ125を介して受信する。送受信部1201は目標定着温度決定部1204に対して印刷デ−タを受信した旨を通知する(ステップS302 YES)。
【0135】
ステップS303において、通知を受けた目標定着温度決定部1204は不揮発性メモリ123に格納された用紙10の種類情報に基づいてTprintを決定する。
【0136】
次に、定着可能温度範囲演算部1205は、目標定着温度決定部1204が決定したTprintを基準とし、用紙10の種類情報を利用してTupper及びTlowerを演算する(ステップS304)。
【0137】
ステップS305において、定着温度制御部1206は、定着温度測定部1208に対して温度センサ115でヒ−トロ−ラ113の表面温度を測定するよう指示を与える。温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprint未満である場合、定着温度制御部1206は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度をTprintに調整すべく、図示せぬ電源系にハロゲンランプ114に通電するよう指示を与える。定着温度制御部1206により指示を受けた図示せぬ電源系はハロゲンランプ114に通電を開始する。
【0138】
一方、温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度の測定結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprint以上である場合、定着温度制御部1206は、図示せぬ電源系にハロゲンランプ114への通電指示は与えない。
【0139】
ヒ−トロ−ラ113の表面温度がTprintに到達した後、定着温度制御部1206は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度をTprintに保つよう図示せぬ電源系を制御する。
【0140】
次に、印刷開始可能判定部1207は、定着温度測定部1208に対して温度センサ115でヒ−トロ−ラ113の表面温度を測定するよう指示を与える。温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲内である場合(ステップS306 YES)、印刷開始可能判定部1207は、印刷制御部1209に印刷開始指示を与える。印刷開始指示を受けた印刷制御部1209は、給紙機構制御部1210及び画像形成機構制御部1211に印刷実行指示を与える。印刷制御部1209より印刷実行指示を受けた給紙機構制御部1210は、給紙ロ−ラ103等を駆動させ用紙10の搬送を開始させる。搬送された用紙10には、画像形成機構制御部1211から指示を受けた画像形成部108及び転写ロ−ラ111により現像剤画像が形成される。
【0141】
用紙10上の現像剤画像は、定着部112により定着される。現像剤画像が定着された用紙10は、搬送経路118に沿ってガイドされ排出ロ−ラ120に搬送される。排出ロ−ラ120は、用紙10をスタッカ−121上に排出する(ステップS307)。
【0142】
ステップS306において、温度センサ115によるヒ−トロ−ラ113の表面温度測定の結果、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲外である場合(ステップS306 No)、印刷開始可能判定部1207は、印刷制御部1209に印刷開始実行指示を与えない。印刷開始可能判定部1207は、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が定着可能温度範囲内に達するまで待機し、ヒ−トロ−ラ113の表面温度が、定着可能温度範囲内に達した段階で印刷制御部1209に印刷開始実行指示を与える。
【0143】
本実施形態にかかる定着可能温度範囲演算部1205は、用紙10の種類情報に基づき、図15に示した定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを参照して定着可能温度範囲を演算する。したがって、例えば、印刷に供される用紙10が普通紙であり、目標定着温度決定部1204が、Tprintを180℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部1205は、Tupperを190℃、Tlowerを167℃と演算する(定着可能温度範囲:167℃〜190℃)。さらに、例えば、印刷に供される用紙10が光沢紙であり、目標定着温度決定部1204が、Tprintを180℃に決定した場合、定着可能温度範囲演算部1205は、Tupperを185℃、Tlowerを174℃と演算する(定着可能温度範囲:174℃〜185℃)。
【0144】
したがって、図17に示すように、本実施形態においては、定着部112の加熱時における印刷開始可能タイミングを用紙10の種類に応じて調節することができる。例えば、用紙10が普通紙の場合では、定着部112の温度が定着可能温度範囲の下限温度であるTlower=167℃に達した時間(ts11)から印刷を開始することができる。すなわち、加熱温度変化率を2.5℃/秒とした場合、用紙10が光沢紙の場合において、定着部112が定着可能温度範囲の下限温度であるTlower=174℃に達するまでに要する時間(ts12)よりも2.8秒((174−167)/2.5))早く印刷を実行することができる。
【0145】
また、同様に図18に示すように、本実施形態においては、定着部112の放熱時における印刷開始可能タイミングを用紙10の種類に応じて調節することができる。例えば、用紙10が普通紙の場合では、定着部112の温度が定着可能温度範囲の上限温度であるTupper=190℃に達した時間(ts13)から印刷を開始することができる。すなわち、放熱温度変化率を0.2℃/秒とした場合、用紙10が光沢紙の場合において、定着部112が定着可能温度範囲の上限温度であるTupper=185℃に達するまでに要する時間(ts14)よりも25秒((190−185)/0.2))早く印刷を実行することができる。
【0146】
本実施形態における給紙機構制御部1210は、定着部112の温度が定着可能温度範囲内に達した段階で、用紙10の搬送を開始していたが、給紙ロ−ラ103等の回転数を制御することにより、定着部112の温度が定着可能温度範囲内に達する前から用紙10の搬送を開始する形態としてもよい。
【0147】
以上のように、第3の実施形態によれば、用紙10の種類情報に基づいて印刷開始可能ポイントを早めることができる。したがって、定着部112における定着温度調整の待ち時間を短縮することが可能となる。特に、連続印刷後のように一旦温度が高温となると熱を蓄積してしまい、温度が下がりにくくなるため、この場合には定着温度調整の待ち時間を大幅に短縮することができる。また、印刷に供する用紙10が光沢紙/ラベル紙等の特殊媒体である場合、定着可能温度範囲を狭く設定し、定着温度の変動幅を少なくすることにより、印刷品質を向上することができる。
【0148】
上述した実施形態においては、複数色の現像剤を使用し、カラ−画像を形成する画像形成装置を例として説明したが、単色の現像剤を使用し、モノクロ画像を形成する画像形成装置においても、同様な制御が可能である。また、本発明は、FAXやMFP、コピ−機等にも適用することが可能である。なお、上述した実施形態では、オペレータパネル124を介して、ユーザからの媒体情報を含む印刷設定の入力を受付けていたが、この構成に替えてホストコンピュータの側で媒体情報を含む印刷設定を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】画像形成装置の構成を説明する図である。
【図2】制御プログラムの構成を説明するブロック図である。
【図3】画像密度情報の算出方法を説明する図である。
【図4】定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを説明する図である。
【図5】制御プログラムに基づく処理フロ−を説明するフロ−チャ−トである。
【図6】印刷開始可能タイミングを説明する図である。
【図7】印刷開始可能タイミングを説明する図である。
【図8】画像密度情報の算出方法を説明する図である。
【図9】制御プログラムの構成を説明するブロック図である。
【図10】定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを説明する図である。
【図11】制御プログラムに基づく処理フロ−を説明するフロ−チャ−トである。
【図12】印刷開始可能タイミングを説明する図である。
【図13】印刷開始可能タイミングを説明する図である。
【図14】制御プログラムの構成を説明するブロック図である。
【図15】定着可能温度範囲オフセットテ−ブルを説明する図である。
【図16】制御プログラムに基づく処理フロ−を説明するフロ−チャ−トである。
【図17】印刷開始可能タイミングを説明する図である。
【図18】印刷開始可能タイミングを説明する図である。
【符号の説明】
【0150】
101 画像形成装置
102 用紙カセット
103 給紙ローラ
104 搬送経路
105 搬送ローラ
106 搬送ベルト
107 駆動ローラ
108 画像形成部
109 感光ドラム
110 印刷ヘッド
111 転写ローラ
112 定着部
117 搬送経路
118 搬送ローラ
119 搬送ローラ
120 排出ローラ
121 スタッカー
122 制御基板
123 不揮発メモリ
124 オペレータパネル
125 インタフェースコネクタ
201 送受信部
202 画像密度情報算出部
203 目標定着温度決定部
204 定着可能温度範囲演算部
205 定着温度制御部
206 印刷開始可能判定部
207 定着温度測定部
208 印刷制御部
209 給紙機構制御部
210 画像形成機構制御部
801 送受信部
802 オペレータパネル制御部
803 媒体情報記憶部
804 目標定着温度決定部
805 定着可能温度範囲演算部
806 定着温度制御部
807 印刷開始可能判定部
808 定着温度測定部
809 印刷制御部
810 給紙機構制御部
811 画像形成機構制御部
1201 送受信部
1202 オペレータパネル制御部
1203 媒体情報記憶部
1204 目標定着温度決定部
1205 定着可能温度範囲演算部
1206 定着温度制御部
1207 印刷開始可能判定部
1208 定着温度測定部
1209 印刷制御部
1210 給紙機構制御部
1211 画像形成機構制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した画像デ−タに基づいて形成された現像剤画像を媒体に定着させる定着部を備えた画像形成装置であって、
前記媒体に基づいて設定された定着温度を目標定着温度として決定する目標定着温度決定部と、
前記目標定着温度を基準とし、前記媒体の媒体情報を利用して前記現像剤画像を前記媒体に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部と、
前記定着可能温度範囲演算部が演算した前記定着可能温度範囲に基づいて前記定着部を制御する定着温度制御部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記媒体情報は前記画像デ−タの所定領域当りのデ−タドット数に基づく画像密度情報であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記媒体情報は前記画像デ−タの所定領域当りの現像剤層層厚に基づく画像密度情報であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
媒体の媒体情報の入力を受付ける媒体情報入力部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記媒体情報は前記媒体の厚み情報であることを特徴とする請求項1又は4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記媒体情報は前記媒体の種類情報であることを特徴とする請求項1又は4記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像データを処理する画像処理装置と、該画像処理装置から受信した画像デ−タに基づいて形成された現像剤画像を媒体に定着させる定着部を有する画像形成装置とを備えた画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
前記画像処理装置との間で通信を行う通信部と、
前記媒体に基づいて設定された定着温度を目標定着温度として決定する目標定着温度決定部と、
前記目標定着温度を基準とし、前記媒体の媒体情報を利用して前記現像剤画像を前記媒体に定着可能な定着温度範囲を演算する定着可能温度範囲演算部と、
前記定着可能温度範囲演算部が演算した前記定着可能温度範囲に基づいて前記定着部を制御する定着温度制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
前記媒体情報は前記画像デ−タの所定領域当りのデ−タドット数に基づく画像密度情報であることを特徴とする請求項7記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記媒体情報は前記画像デ−タの所定領域当りの現像剤層層厚に基づく画像密度情報であることを特徴とする請求項7記載の画像形成システム。
【請求項10】
媒体の媒体情報の入力を受付ける媒体情報入力部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記媒体情報は前記媒体の厚み情報であることを特徴とする請求項7又は10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記媒体情報は前記媒体の種類情報であることを特徴とする請求項7又は10記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−181065(P2009−181065A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21766(P2008−21766)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】