説明

画像形成装置及び画像形成システム

【課題】ユーザが、ドキュメントの印刷範囲を指定した複数の親展印刷ジョブファイルを出力したときに、メモリ容量を余分に使用することなく、必要な親展印刷ジョブファイルのみを残すことができる画像形成装置、及び、画像形成システムを提供することを目的とする。
【解決手段】外部装置2から順次出力された親展印刷ジョブファイルを順次受け付ける受付部11と、親展印刷ジョブファイルを記憶する記憶部12と、受付部11が順次受け付けた親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ、同一のジョブ名及び印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには、最新の親展印刷ジョブファイルのみを記憶部12へ記憶させる一方、受付部11が順次受け付けた親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ同一のジョブ名が設定されており、それぞれ異なる印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには、2以上の親展印刷ジョブファイルの各々を記憶部12へ記憶させる制御部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
親展印刷を行う画像形成装置が存在する。この種の画像形成装置は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から、画像データの親展印刷を要求する親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルを受信して記憶しておき、親展印刷ジョブファイルの各々に対応して予め設定されたパスワードが入力されたときに、その親展印刷ジョブファイルで親展印刷が要求されている画像データを印刷する。この種の画像形成装置は、特許文献1ないし3に例示されている。
【0003】
特許文献1では、画像形成装置であるプリンタと、外部装置であるホストコンピュータとがネットワークを介して接続されている。プリンタがネットワークを介して親展印刷要求を受け付けると、所定のキーワードをホストコンピュータへ出力する。そして、ホストコンピュータへ出力されたキーワードが予めホストコンピュータに設定されているキーワードと合致すれば、ホストコンピュータからプリンタへプリントデータが出力される。
【0004】
特許文献2では、プリンタは、親展印刷の対象となる印刷ジョブが印刷されるまでその印刷ジョブを保存する。
【0005】
特許文献3では、画像形成装置は、情報処理装置から送られてきた印刷データを記憶装置に記憶させておき、所定の印刷指示を受け付けたときに、その印刷データを印刷する。
【0006】
この種の画像形成装置は、例えば、以下に示される処理を行う。外部装置において、文書作成アプリケーションとしてマイクロソフト社のWORD(登録商標)を用いて、ドキュメントが作成されていると仮定する。そして、外部装置において、そのドキュメントを親展印刷することを要求する親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルが画像形成装置に出力されたと仮定する。
【0007】
すると、画像形成装置は、親展印刷ジョブファイルをメモリに記憶させる。そして、画像形成装置は、親展印刷ジョブファイルに対応して予め設定されているパスワードが入力されたときに、親展印刷ジョブファイルで親展印刷が要求されているドキュメントを印刷し、その後、親展印刷ジョブファイルをメモリから削除する。
【0008】
このように、親展印刷を行う画像形成装置は、予め設定されたパスワードが入力されるまで、外部装置から送られてきた親展印刷ジョブファイルを保存しておき、パスワードが入力されると、その親展印刷ジョブファイルで親展印刷が要求されているドキュメントを印刷し、その後、親展印刷ジョブファイルを削除する。このとき、その親展印刷ジョブファイルで親展印刷が要求されているドキュメントも削除される。これにより、情報の機密性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−152516号公報
【特許文献2】特開2006−239944号公報
【特許文献3】特開2007−251279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、外部装置において、ユーザが、例えば、或る文書ファイルのうち10ページ目のドキュメントを親展印刷することを要求する操作を行い、その後、その文書ファイルのうち20ページ目のドキュメントを親展印刷することを要求する操作を行ったと仮定する。その際、外部装置に予め準備されているプリンタドライバの設定状態によって、以下の問題が生じる。
【0011】
10ページ目のドキュメント、及び、20ページ目のドキュメントは、或るユーザ名で外部装置にインストールされているアプリケーションで作成された同じドキュメント内に存在するドキュメントである。そのため、プリンタドライバの設定によっては、画像形成装置は、先に受け付けた10ページ目のドキュメントの親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルJ1、及び、後に受け付けた20ページ目のドキュメントの親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルJ2に、同一のファイル名を付けることがある。
【0012】
その場合、画像形成装置は、先に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ1を、後に受け付けられた親展印刷ジョブJ2に置き換えてしまう。この場合、先に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ1は、画像形成装置内に残っていないため、ユーザは、親展印刷ジョブファイルJ1を画像形成装置に出力させようとする場合、以下に示される作業が要される。
【0013】
すなわち、ユーザは、画像形成装置内に残っている親展印刷ジョブファイルJ2で親展印刷が要求されているドキュメントを先に印刷させた後、外部装置側へ戻って再度、親展印刷ジョブファイルJ1を再度外部装置から出力させる。その後、ユーザは、画像形成装置において、親展印刷ジョブファイルJ1で親展印刷が要求されているドキュメントを印刷させる。このように、外部装置側から画像形成装置側へ赴き、外部装置側に戻って再度画像形成装置側へ赴くという作業は、ユーザにとって面倒である。
【0014】
または、ユーザが、プリンタドライバの設定を後述される別の設定に切り換えることが要される。この作業もユーザによっては面倒である。
【0015】
また、親展印刷ジョブファイルJ1及び親展印刷ジョブファイルJ2を各々異なるファイル名を付ける設定が、プリンタドライバにおいてなされることもある。この場合、画像形成装置において、親展印刷ジョブファイルJ1及びJ2の各々が、それぞれ異なるファイル名で保存されるため、先に受け付けられた親展印刷ジョブファイルJ1が後に受け付けられた親展印刷ジョブファイルJ2に置き換えられることがない。
【0016】
ところが、ユーザが、外部装置側で親展印刷ジョブファイルJ1を出力してから、その親展印刷ジョブファイルJ1で親展印刷が要求されているドキュメントの中に誤記を発見したため、そのドキュメントを修正し、再度そのドキュメントの親展印刷を要求する親展印刷ジョブ2を出力したと仮定する。
【0017】
この場合、画像形成装置において、先に受け付けた親展印刷ジョブJ1と、後に受け付けた親展印刷ジョブJ2とが、メモリに記憶されるので、メモリ容量を余分に使用してしまう問題が生じる。
【0018】
本発明は、上記問題を解決するために提案されるものであり、ユーザが、ドキュメントの印刷範囲を指定した複数の親展印刷ジョブファイルを出力したときに、メモリ容量を余分に使用することなく、必要な親展印刷ジョブファイルのみを残すことができる画像形成装置、及び、画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、親展印刷されるべきドキュメントのファイル名を用いてジョブ名が設定されるとともにそのドキュメントの印刷されるべき印刷範囲が設定された親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルを順次出力する外部装置と組み合わせて使用され、前記外部装置から順次出力された親展印刷ジョブファイルを順次受け付ける受付部と、前記親展印刷ジョブファイルを記憶する記憶部と、前記受付部が順次受け付けた親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ、同一のジョブ名及び印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには、最新の親展印刷ジョブファイルのみを前記記憶部へ記憶させる一方、前記受付部が順次受け付けた親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ同一のジョブ名が設定されており、それぞれ異なる印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには、前記2以上の親展印刷ジョブファイルの各々を前記記憶部へ記憶させる制御部と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0020】
この構成によれば、外部装置から順次受け付けた複数の親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ、同一のジョブ名及び印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには最新の親展印刷ジョブファイルのみが記憶される。一方、外部装置から順次受け付けた複数の親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ同一のジョブ名が設定されており、それぞれ異なる印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには、これら2以上の親展印刷ジョブファイルの全てが記憶される。
【0021】
これにより、ユーザは、或る印刷範囲内のドキュメントの親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルを画像形成装置に出力した後、その印刷範囲内のドキュメントの誤りに気付いて修正して、そのドキュメントの親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルを再度出力しても、再度出力された親展印刷ジョブファイルのみが画像形成装置に記憶される。これにより、ユーザが、ドキュメント内の同一の印刷範囲を指定した複数の親展印刷ジョブを画像形成装置に出力したときに、画像形成装置において、不要な親展印刷ジョブファイルが記憶部に記憶されることがなく、必要な親展印刷ジョブファイルのみが画像形成装置に記憶されるため、メモリ容量を無駄に消費することが防止できる。
【0022】
また、ユーザは、それぞれ印刷範囲が異なる同一ファイル内のドキュメントの親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルを画像形成装置に出力させれば、これらすべての親展印刷ジョブファイルが画像形成装置に記憶される。そのため、必要な親展印刷ジョブファイルすべてが画像形成装置に記憶される。
【0023】
これにより、本発明によれば、ユーザが、ドキュメントの印刷範囲を指定した複数の親展印刷ジョブファイルを出力したときに、メモリ容量を余分に使用することなく、必要な親展印刷ジョブファイルのみを残すことができる画像形成装置を提供することができる。
【0024】
上記構成において、前記制御部は、前記受付部が受け付けた最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されているジョブ名及び印刷範囲と同一のジョブ名及び印刷範囲が設定されている親展印刷ジョブファイルが、既に前記記憶部に記憶されているときには、その親展印刷ジョブファイルを、最新の親展印刷ジョブファイルに書き換える構成とすることができる(請求項2)。
【0025】
この構成によれば、最新の親展印刷ジョブを受け付けた時点で、その親展印刷ジョブで設定されているジョブ名及び印刷範囲と同一のジョブ名及び印刷範囲が設定されている親展印刷ジョブが既に記憶部に記憶されているときには、その親展印刷ジョブを最新の親展印刷ジョブに書き換える。
【0026】
これにより、ユーザが、ドキュメント内の同一の印刷範囲を指定した複数の親展印刷ジョブを画像形成装置に出力したときに、画像形成装置において、最新の親展印刷ジョブファイルのみを画像形成装置に記憶させる処理が具現化される。
【0027】
上記構成において、前記制御部は、前記受付部が受け付けた最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されているジョブ名と同じジョブ名が設定されており、前記最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されている印刷範囲と異なる印刷範囲が設定されている親展印刷ジョブファイルが、既に前記記憶部に記憶されているときには、その親展印刷ジョブファイルとは別に、最新の親展印刷ジョブファイルを前記記憶部に記憶させる構成とすることができる(請求項3)。
【0028】
この構成によれば、最新の親展印刷ジョブを受け付けた時点で、最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されているジョブ名と同じジョブ名が設定されており、最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されている印刷範囲と異なる印刷範囲が設定されている親展印刷ジョブファイルが、既に記憶部に記憶されているときには、その親展印刷ジョブファイルとは別に、最新の親展印刷ジョブファイルを記憶部に記憶させる。
【0029】
これにより、ユーザが、ドキュメント内のそれぞれ異なる印刷範囲を指定した複数の親展印刷ジョブを画像形成装置に出力したときに、画像形成装置において、複数の親展印刷ジョブの全てを画像形成装置に記憶させる処理が具現化される。
【0030】
上記構成において、前記制御部は、最新の親展印刷ジョブファイルを前記記憶部に記憶させるときには、その親展印刷ジョブファイルに、その親展印刷ジョブファイルで設定されている前記ジョブ名及び前記印刷範囲からなるファイル名を付ける構成とすることができる(請求項4)。
【0031】
この構成によれば、親展印刷ジョブファイルを新たに記憶部に記憶させる際には、その親展印刷ジョブファイルで表される親展印刷ジョブで親展印刷が要求されているドキュメントのファイル名が用いられたジョブ名、及び印刷範囲からなるファイル名が付けられる。これにより、親展印刷ジョブで親展印刷が要求されているドキュメントの名称及び枚数が容易に判る。
【0032】
また、本発明の他の局面に係る画像形成システムは、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置と、親展印刷されるべきドキュメントのファイル名を用いてジョブ名が設定されるとともにそのドキュメントの印刷されるべき印刷範囲が設定された親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルを順次出力する外部装置と、を備えることを特徴とする(請求項5)。
【0033】
この構成によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置が奏する効果が発揮できる画像形成システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ユーザが、ドキュメントの印刷範囲を指定した複数の親展印刷ジョブファイルを出力したときに、メモリ容量を余分に使用することなく、必要な親展印刷ジョブファイルのみを残すことができる。これにより、親展印刷ジョブファイルを記憶するメモリ容量と、ユーザの使い勝手とを考慮した画像形成装置及び画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの一例を概略的に示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプリンタの機能モジュールの一例を示したブロック図である。
【図3】パーソナルコンピュータにおけるプリンタの設定画面の一例を示した図である。
【図4】印刷ジョブファイル記憶処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【図5】或るドキュメント内のそれぞれページ番号が異なるドキュメントの親展印刷が連続して要求されたときの印刷ジョブファイル記憶処理の概要の一例を模式的に示した図である。
【図6】或るドキュメント内のそれぞれページ番号が同じドキュメントの親展印刷が連続して要求されたときの印刷ジョブファイル記憶処理の概要の一例を模式的に示した図である。
【図7】親展画像データ印刷処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置及び画像形成システムについて説明する。尚、本発明の一実施形態に係る画像形成装置として、以下のように、ネットワークに接続されたプリンタが例示されている。しかしながら、この例には限られず、ネットワークに接続された複写機やファクシミリ装置など、ネットワークを通じてデータを受信し、そのデータを画像データとして記憶できる装置が適用されうる。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの一例を概略的に示した図である。図1に示される画像形成システムでは、プリンタ(画像形成装置)1と、パーソナルコンピュータ(外部装置)2とが、ネットワーク(例えばLAN;Local Area Network)Nに接続されている。
【0038】
そして、パーソナルコンピュータ2の各々には、プリンタ1を作動させるためのプリンタドライバが、記憶部22に予め準備されている。パーソナルコンピュータ2は、プリンタドライバの機能によって、以下に示される処理を実行することができる。
【0039】
例えば、パーソナルコンピュータ2に予めインストールされているアプリケーション(例えば、マイクロソフト社のWORD(登録商標))を用いてドキュメントを生成し、ドキュメントの全部又は一部を親展印刷することを要求する親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルをネットワークNへ出力する。
【0040】
すると、ネットワークNへ出力された親展印刷ジョブファイルがプリンタ1によって受け付けられる。親展印刷ジョブファイルを受け付けたプリンタ1は、その親展印刷ジョブファイルで親展印刷が要求されているドキュメントを画像データに変換して、予め設定されたパスワードと対応づけて記憶させる。そして、プリンタ1は、その親展印刷ジョブファイルに対応するパスワードが入力されたときに、その親展印刷ジョブファイルで親展印刷が要求されているドキュメントを印刷する。その後、プリンタ1は、その親展印刷ジョブファイルを削除する。
【0041】
パーソナルコンピュータ2の各々は、記憶部22の他に、表示部20及び操作部21を備える。表示部20は例えば液晶画面で構成されており、プリンタ1の設定を行うための設定画面200(後述)を表示する。操作部21は、例えばキーボード及びマウスで構成されており、ドキュメントの作成や、プリンタ1の設定を行うために操作される。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態に係るプリンタ1の機能モジュールの一例を示したブロック図である。図2に示されるプリンタ1は、制御部10、インタフェース(受付部)11、ジョブファイルメモリ(記憶部)12、印字部13、操作部14、画像メモリ15、及び、表示部16を備える。
【0043】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などで構成されており、プリンタ1を統括的に制御する。インタフェース11は、プリンタ1をネットワークNに接続するために設けられており、外部装置2から出力されてくる印刷ジョブファイルを受け付ける。ここに、印刷ジョブファイルは、印刷ジョブを表すファイルであり、先述される親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイル、及び、後述される通常印刷ジョブを表す通常印刷ジョブファイルを含む概念である。
【0044】
ジョブファイルメモリ12は、親展印刷ジョブファイルを記憶する複数の記憶ボックス120を備える。記憶ボックス120の各々には、親展印刷ジョブファイルが固有のファイル名で記憶される。例えば、ボックス番号“1”の記憶ボックス120には、親展印刷ジョブファイルJ1が、ファイル名“A doc/01”で記憶されている。また、ボックス番号“2”の記憶ボックス120には、親展印刷ジョブファイルJ2が、ファイル名“A doc/02”で記憶されている。
【0045】
ここに、親展印刷ジョブファイルJ1は、ジョブ名として、外部装置2で作成された或るドキュメントのファイル名を用いて設定されたジョブ名“A doc”を表すデータを含んでいる。また、親展印刷ジョブファイルJ1は、印刷範囲として、外部装置2において設定された、1ページ目を表す“01”を表すデータを含んでいる。
【0046】
また、親展印刷ジョブファイルJ2は、ジョブ名として、外部装置2で作成された或るドキュメントのファイル名を用いて設定されたジョブ名“A doc”を表すデータを含んでいる。また、親展印刷ジョブファイルJ2は、印刷範囲として、外部装置2において設定された、2ページ目を表す“02”を表すデータを含んでいる。
【0047】
これにより、図2に示されるように、親展印刷ジョブファイルJ1は、“ジョブ名/印刷範囲“からなるファイル名”A doc/01“で記憶されている。また、親展印刷ジョブファイルJ2は、”ジョブ名/印刷範囲“からなるファイル名”A doc/02“で記憶されている。
【0048】
尚、図2に示される例では、親展印刷ジョブファイルJ1及びJ2の各々は、“ジョブ名/印刷範囲”からなるファイル名で記憶されているが、この例には限られず、“ジョブ名/親展印刷ジョブファイルを受け付けた日時”からなるファイル名で記憶されていてもよい。
【0049】
また、親展印刷ジョブファイルJ1及びJ2の各々には、親展印刷ジョブファイルJ1及びJ2の各々で親展印刷が要求されているドキュメントの親展印刷を行うためのパスワードも含まれている。尚、パスワードは、図示しない管理メモリに予めユーザの登録操作によって登録されていてもよい。
【0050】
印字部14は、親展印刷ジョブファイルJ1及びJ2の各々で親展印刷が要求されているドキュメントを記録紙に印刷する。また、印字部14は、画像メモリ16に記憶されている画像データを印刷する。操作部15は、各種の操作キーが設けられており、親展印刷ジョブファイルJ1及びJ2で親展印刷が要求されているドキュメントを印刷させるために、親展印刷ジョブファイルJ1及びJ2で設定されているパスワードの入力(認証操作)を受け付ける。
【0051】
画像メモリ16は、通常の画像データを記憶する。ここに、通常の画像データは、後述される通常印刷ジョブファイルで印刷することが要求されている画像データである。表示部17は、例えば液晶パネルで構成されており、各種の表示を行う。
【0052】
図3は、パーソナルコンピュータ2におけるプリンタ1の設定画面の一例を示した図である。図3に示される設定画面200において、ジョブ拡張機能203として、ユーザボックス、クイックコピー、試し刷り後保留、プライベートプリント、及び、ジョブ保留のいずれか1の機能が選択されるようになっている。
【0053】
ここに、プライベートプリントは、親展印刷を行う機能を表す。パーソナルコンピュータ2に予め準備されているプリンタドライバは、プライベートプリントが選択されると、パスワード入力欄207へのパスワード入力を受け付ける。図3に示される例では、ジョブ拡張機能203としてプライベートプリントが選択されており、パスワード入力欄207には、“○○○○××”で表されるパスワードが入力されている。
【0054】
このように、ジョブ拡張機能203としてプライベートプリントが選択されており、パスワード入力欄207にパスワードが入力されているときには、プリンタドライバは、印刷ジョブを表す印刷ジョブファイルに、当該印刷ジョブファイルが、親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルであることを表す親展指定情報を含ませる。
【0055】
また、設定画面200において、ジョブ名を自動的に設定するかユーザ自身で設定するかを選択するための項目204が存在する。さらに、設定画面200において、アプリケーション名(例えばWORD(登録商標))を、ジョブ名を付けるときに使用するかしないかを選択するための項目205が存在する。さらに、設定画面200において、ファイル名の付け方を選択するための項目206が存在する。
【0056】
ここに、図3に示される例では、項目204において、ジョブ名を自動的に設定することが選択されている。また、項目205において、アプリケーション名を、ジョブ名を付けるときに使用しないことが選択されている。また、項目206において、ファイル名の付け方として、「ジョブ名+ページ名を使用」が選択されている。
【0057】
以上に示される設定画面200において、ユーザによってOKボタン201が操作されたときには、選択されている項目を表す情報、及び、入力されているパスワード(以下、設定情報という)が、パーソナルコンピュータ2の記憶部22に一時的に記憶される。また、アプリケーションを外部装置2へ準備(インストール)したときに外部装置2へ登録したユーザ名も記憶部22に一時的に記憶される。尚、キャンセルボタン202は、選択されている項目を表す情報、及び、入力されているパスワードを一旦初期状態に戻すために操作されるボタンである。
【0058】
そして、パーソナルコンピュータ2において、所定の印刷要求操作が行われたときに、プリンタドライバが、記憶部22に一時的に記憶された設定情報を用いて設定された親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルをプリンタ1に出力する。ここに、所定の印刷要求操作として、例えば、ドキュメントのうち印刷されるべきページ番号(印刷範囲)を指定し、そのページ番号のドキュメントの印刷を要求する操作が挙げられる。
【0059】
パーソナルコンピュータ2からプリンタ1に対して出力される親展印刷ジョブファイルにおいて、少なくとも、外部装置2においてドキュメントに対して付けられたファイル名が設定されたジョブ名、印刷されるべきドキュメントのページ番号(印刷範囲)、及び、外部装置2へアプリケーションをインストールしたときに登録されたユーザ名が設定されている。
【0060】
なお、本明細書において、パーソナルコンピュータ2から、パスワードを含まない設定情報を含み、画像データを記録紙に印刷することを要求するジョブは、親展印刷ジョブと区別するために、“通常印刷ジョブ”と呼ばれる。また、本明細書において、親展印刷ジョブと通常印刷ジョブとを含むジョブは、“印刷ジョブ”とされている。
【0061】
プリンタ1は、パーソナルコンピュータ2から出力される印刷ジョブを受け付ける毎に、以下に示される印刷ジョブファイル記憶処理を行う。図4は、印刷ジョブファイル記憶処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【0062】
制御部10は、インタフェース11によって印刷ジョブファイルが受け付けられる毎に(ステップS1のYES)、以下のステップS2〜S6で示される処理を繰り返す。つまり、制御部10は、印刷ジョブファイルが受け付けられたときには(ステップS1のYES)、印刷ジョブにおいて、親展指定情報が含まれているか否かを判定する(ステップS2)。
【0063】
そして、印刷ジョブファイルに、親展指定情報が含まれているときには(ステップS2のYES)、制御部10は、その印刷ジョブファイルが親展印刷ジョブファイルであると判断して、ジョブファイルメモリ12の各記憶ボックス120に、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルで設定されているジョブ名及びページ番号と同じジョブ名及びページ番号が設定されている親展印刷ジョブファイルが記憶されているか否かを判定する(ステップS3)。また、印刷ジョブファイルに、親展指定情報が含まれていないときには(ステップS2のNO)、制御部10は、印刷要求されているドキュメントを画像データに変換して印字させる(ステップS6)。
【0064】
ステップS3において、ジョブファイルメモリ12の各記憶ボックス120に、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルで設定されているジョブ名及びページ番号と同じジョブ名及びページ番号が設定されている親展印刷ジョブファイルが記憶されているときには(ステップS3のYES)、制御部10は、その親展印刷ジョブファイルを、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルに書き換える(ステップS5)。
【0065】
一方、ジョブファイルメモリ12の各記憶ボックス120に、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルで設定されているジョブ名及びページ番号と同じジョブ名及びページ番号が設定されている親展印刷ジョブファイルが記憶されていないときには(ステップS3のNO)、制御部10は、以下に示される処理を行う。
【0066】
ここに、ジョブファイルメモリ12の各記憶ボックス120に、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルで設定されているジョブ名及びページ番号と同じジョブ名及びページ番号が設定されている親展印刷ジョブファイルが記憶されていないことの中には、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルにおいて設定されているジョブ名と同じジョブ名が設定されており、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルにおいて設定されているページ番号とは異なるページ番号が設定されている親展印刷ジョブファイルが記憶されていることを含む概念である。
【0067】
このとき、制御部10は、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルを、新たな親展印刷ジョブファイルとして、ジョブファイルメモリ12の空き記憶ボックス120に記憶させる(ステップS4)。このとき、制御部10は、ステップS1で受け付けた印刷ジョブファイルを、固有のファイル名で記憶させる。例えば、制御部10は、ステップS1で受け付けた親展印刷ジョブファイルで設定されているジョブ名及び印刷範囲からなるファイル名(例えば、“ジョブ名/ページ番号”からなるファイル名)で記憶させる。
【0068】
以下に、ステップS3〜S5で示される処理を、図5及び6を用いて詳述する。図5は、或るドキュメント内のそれぞれページ番号が異なるドキュメントの親展印刷が連続して要求されたときの印刷ジョブファイル記憶処理の概要の一例を模式的に示した図である。図6は、或るドキュメント内のそれぞれページ番号が同じドキュメントの親展印刷が連続して要求されたときの印刷ジョブファイル記憶処理の概要の一例を模式的に示した図である。
【0069】
図5に示されるドキュメントD1及びD2は、或るドキュメント内のそれぞれページ番号が異なるドキュメントである。そのため、ドキュメントD1の親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルJ1、及び、ドキュメントD2の親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルJ2において設定されているジョブ名は同一であるが、親展印刷ジョブJ1及びJ2の各々で設定されているページ番号は異なる。
【0070】
したがって、制御部10は、先に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ1を、その親展印刷ジョブファイルJ1で設定されているジョブ名“A doc”及びページ番号“01”からなるファイル名“A doc/01”で、ジョブファイルメモリ12の空き記憶ボックス120に記憶させる。
【0071】
また、制御部10は、後に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ2を、その親展印刷ジョブファイルJ2で設定されているジョブ名“A doc”及びページ番号“02”からなるファイル名“A doc/02”で、ジョブファイルメモリ12の空き記憶ボックス120に記憶させる。
【0072】
一方、図6に示されるドキュメントD1及びD2は、或るドキュメント内のそれぞれページ番号が同じドキュメントである。そのため、ドキュメントD1の親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルJ1、及び、ドキュメントD2の親展印刷を要求する親展印刷ジョブファイルJ2において設定されているジョブ名及びページ番号が同一である。
【0073】
したがって、制御部10は、先に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ1を、その親展印刷ジョブファイルJ2で設定されているジョブ名“A doc”及びページ番号“01”からなるファイル名“A.doc/01”で、ジョブファイルメモリ12の空き記憶ボックス120に記憶させる。
【0074】
その後、制御部10は、後に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ2を、先に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ1と同一のファイル名“A doc/01”で、親展印刷ジョブファイルJ1が記憶されている空き記憶ボックス120と同一の空き記憶ボックス120に記憶させる。つまり、制御部10は、後に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ2を、先に受け付けた親展印刷ジョブファイルJ1へ上書きする。
【0075】
以上に示される印刷ジョブファイル記憶処理によって記憶された親展印刷ジョブファイルで親展印刷が要求されているドキュメントは、以下に示される親展画像データ印刷処理において印刷される。図7は、親展画像データ印刷処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【0076】
制御部10は、操作部15の操作によって、印刷すべきドキュメント(親展画像データ)が選択されたか否かを判定する(ステップS10)。このステップS10の処理は、例えば、制御部10が、ジョブファイルメモリ12に記憶されている親展印刷ジョブファイルのうちいずれかの親展印刷ジョブファイルが選択されたことを判定することで実現される。
【0077】
そして、印刷すべき親展画像データが選択されたときには(ステップS10のYES)、パスワードの入力要求を行う(ステップS11)。ここに、パスワードの入力要求は、例えば、表示部17によって、所定のパスワード入力要求画面を表示させることで実現できる。
【0078】
そして、操作部15がパスワードの入力を受け付けたときには(ステップS12のYES)、制御部10は、選択された親展印刷ジョブファイルで設定されているパスワードと、入力されたパスワードとの間で照合を行って、これらが一致しているか否かを判定する(ステップS13)。
【0079】
そして、一致していれば、選択された親展画像データを印刷する(ステップS14)。このステップS14の処理は、例えば、制御部10が、ステップS10で選択された親展印刷ジョブファイルを実行することで実現される。一方、パスワードが一致していなければ、所定のエラー処理を行う(ステップS15)。
【符号の説明】
【0080】
1 プリンタ
2 パーソナルコンピュータ
10 制御部
11 インタフェース
12 ジョブファイルメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親展印刷されるべきドキュメントのファイル名を用いてジョブ名が設定されるとともにそのドキュメントの印刷されるべき印刷範囲が設定された親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルを順次出力する外部装置と組み合わせて使用され、
前記外部装置から順次出力された親展印刷ジョブファイルを順次受け付ける受付部と、
前記親展印刷ジョブファイルを記憶する記憶部と、
前記受付部が順次受け付けた親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ、同一のジョブ名及び印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには、最新の親展印刷ジョブファイルのみを前記記憶部へ記憶させる一方、
前記受付部が順次受け付けた親展印刷ジョブファイルにおいて、それぞれ同一のジョブ名が設定されており、それぞれ異なる印刷範囲が設定されている2以上の親展印刷ジョブファイルが存在するときには、前記2以上の親展印刷ジョブファイルの各々を前記記憶部へ記憶させる制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記受付部が受け付けた最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されているジョブ名及び印刷範囲と同一のジョブ名及び印刷範囲が設定されている親展印刷ジョブファイルが、既に前記記憶部に記憶されているときには、その親展印刷ジョブファイルを、最新の親展印刷ジョブファイルに書き換えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記受付部が受け付けた最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されているジョブ名と同じジョブ名が設定されており、前記最新の親展印刷ジョブファイルにおいて設定されている印刷範囲と異なる印刷範囲が設定されている親展印刷ジョブファイルが、既に前記記憶部に記憶されているときには、その親展印刷ジョブファイルとは別に、最新の親展印刷ジョブファイルを前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
最新の親展印刷ジョブファイルを前記記憶部に記憶させるときには、その親展印刷ジョブファイルに、その親展印刷ジョブファイルで設定されている前記ジョブ名及び前記印刷範囲からなるファイル名を付けることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置と、
親展印刷されるべきドキュメントのファイル名を用いてジョブ名が設定されるとともにそのドキュメントの印刷されるべき印刷範囲が設定された親展印刷ジョブを表す親展印刷ジョブファイルを順次出力する外部装置と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−42135(P2011−42135A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192894(P2009−192894)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】