説明

画像形成装置及び画像形成プログラム

【課題】より適正なタイミングでキャリブレーション制御を行うことができ、画像形成処理時間の浪費を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写紙の表面に画像を形成する画像形成部と、転写紙に関する指定情報を取得すると共にその取得した転写媒体に関する指定情報に応じて画像形成部に対するキャリブレーションの実行回数を、取得した転写媒体に関する指定情報が、普通紙である場合のキャリブレーションの制御回数を基準値とし、低品質紙である場合のキャリブレーションの制御回数を基準値よりも減らし、高品質紙である場合のキャリブレーションの制御回数を基準値よりも増やすように変更制御する制御回路23と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写媒体の表面に画像形成処理を実行する際、トナー濃度の検知結果に応じてキャリブレーション制御を行う画像形成装置及び画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ・複写機・ファクシミリ、或いは、これらを機能的に備えた複合機といった画像形成装置、特に、カラー画像形成処理を可能とした画像形成装置には、温度や湿度等の環境の変化やトナー等の消耗部材の使用に伴い、印刷結果(画像品質)に違いが生じることを防ぐため、例えば、像担持体を一様に帯電する帯電部、像担持体を露光して静電潜像を形成する露光部、静電潜像をトナー像に可視化する現像部、可視化されたトナー像を転写媒体に転写する転写部、転写後の像担持体を除電する除電部、等の画像形成部を構成する各部に対するキャリブレーション制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2003−140415号公報
【特許文献1】特開2004−252573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した画像形成装置におけるキャリブレーション制御は、例えば、画像形成装置としてのカラープリンタであって、そのカラープリンタに接続されたパーソナルコンピュータからキャリブレーション条件の指示を与える必要があるが、ユーザが手元で簡単にキャリブレーション制御操作をすることは困難である。
【0004】
そのため、キャリブレーション制御の必要がない画像データに対する画像形成処理時においても、不測にキャリブレーション制御が実行されてしまい、余計な画像形成処理時間を浪費してしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、より適正なタイミングでキャリブレーション制御を行うことができ、画像形成処理時間の浪費を抑制することができる画像形成装置及び画像形成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、転写媒体の表面に画像を形成する画像形成部と、転写媒体に関する指定情報を取得するメディア情報取得部と、該メディア情報取得部で取得した転写媒体に関する指定情報に応じて前記画像形成部に対するキャリブレーションの制御回数を変更する制御回路と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の画像形成装置は、前記制御回路は、前記メディア情報取得部で取得した転写媒体に関する指定情報が、予め設定した種類の何れを指定しているのかを判断し、転写媒体に関する指定情報が予め設定した標準情報である場合のキャリブレーションの制御回数を基準値として、転写媒体に関する指定情報がキャリブレーション回数を減らすように設定した種類の指定情報の場合にはキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも減らし、或いは、転写媒体に関する指定情報がキャリブレーション回数を増やすように設定した種類の指定情報の場合にはキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも増やすことを特徴とする。
【0008】
この際、前記制御回路は、前記メディア情報取得部で取得した転写媒体に関する指定情報が、低品質紙・普通紙・高品質紙の何れを指定しているのかを判断し、転写媒体に関する指定情報が普通紙である場合のキャリブレーションの制御回数を基準値とし、転写媒体に関する指定情報が低品質紙である場合のキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも減らし、転写媒体に関する指定情報が高品質紙である場合のキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも増やすことが好ましい。
【0009】
また、本発明の画像形成プログラムは、転写媒体の表面に画像を形成する画像形成ステップと、転写媒体に関する指定情報を取得するメディア情報取得ステップと、転写媒体に関する指定情報に応じて画像形成部に対するキャリブレーションの制御回数を変更するキャリブレーション制御ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成装置は、より適正なタイミングでキャリブレーション制御を行うことができ、画像形成処理時間の浪費を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置をカラー式のプリンタに適用し、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラー式のプリンタの説明図、図2は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラー式のプリンタの要部の説明図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラー式のプリンタ1は、プリンタ本体2の一面(例えば、正面)から引き出し可能な給紙カセット3と、プリンタ本体2の一面に起倒可能に設けられた手差し給紙トレイ4と、給紙カセット3又は手差し給紙トレイ4にセットされた転写媒体としての転写紙(図示せず)を搬送する搬送経路5と、搬送経路5の上流端を構成する給紙ユニット部6と、搬送経路5の中途部に配置された転写部としての二次転写ローラ7と、二次転写ローラ7と協働して転写紙の表面にトナー転写像を形成する無端ベルト状の中間転写体8と、中間転写体8の表面に必要に応じた各色(例えば、イエロー・マゼンダ・シアン・ブラック)のトナーをトナー像として転写する複数のトナー供給ユニット9と、搬送経路5の終端寄りに配置されて転写紙の表面に形成されたトナー転写像を定着させる定着ユニット10と、定着後の転写紙を搬送経路5の下流端からプリンタ本体2の排紙トレイ部11へと排出する排出部12とを備えている。
【0014】
トナー供給ユニット9は、本実施の形態では中間転写体8の搬送方向(矢印参照)に沿って4ヶ所に配置され、基本的には同一構成のものが配置されている。また、トナー供給ユニット9は、各色のトナーを収納したトナーカートリッジ13と、トナーカートリッジ13に収納したトナーを供給する供給部14と、中間転写体8にトナー像を一次転写する一次画像形成処理部15とを備えている。
【0015】
一次画像形成処理部15は、図2に示すように、ドラム状の像担持体16と、像担持体16の表面を帯電する帯電部17と、像担持体16の表面に所定の静電潜像を形成する露光部18と、供給部14の一部を構成して供給部14から像担持体16にトナーを供給する現像ローラ19と、中間転写体8を挟んで像担持体16に対向配置された一次転写ローラ20と、像担持体16の表面に付着した残トナー等を除去するクリーニング部21と、次の画像形成処理のために像担持体16の電荷を除去する除電部22と、をこの順(プロセス順)に備えている。また、像担持体16・帯電部17・露光部18・除電部22は、制御回路23によって駆動等が制御されている。
【0016】
制御回路23は、例えば、装置本体2の底面寄りに配置された制御回路基板24(図1参照)に設けられている。また、制御回路23は、ROM25に格納した画像形成処理全般に係わる各種制御プログラムに基づいて像担持体16・帯電部17・露光部18・除電部22等をキャリブレーション制御する。
【0017】
ROM25には、本発明の像担持体制御に係わる制御プログラムも格納されており、このキャリブレーション制御プログラムを実行する制御回路23とでマイクロコンピュータを構成している。尚、画像形成処理を実行する際の画像データ等は、このROM25とは別のRAM26又はHDD27等の記憶部に一時的に記憶される。
【0018】
また、制御回路23は、受信部28で受信したプリンタ1に接続されたパーソナルコンピュータ等(図示せず)から送信された印刷データや、プリンタ本体2に設けられた操作部29の操作によって、転写紙の種類が指定されていた場合、その転写紙の指定種類に応じたキャリブレーション制御を行う。従って、制御回路23は、受信部28又は操作部29からの転写紙の指定情報を取得するメディア情報取得部としての機能を兼ねている。
【0019】
尚、制御回路23は、この転写紙の指定種類に応じたキャリブレーション制御に関し、中間転写体8の表面のトナー濃度を検知するトナー濃度検知センサ30からの検知結果に応じた通常のキャリブレーション制御の制御条件と独立して行っても併用して行っても良い。
【0020】
また、上述したパーソナルコンピュータ等から送信される印刷データには、画像形成処理そのものの文書・画像等の画像データの他、印刷部数や拡大・縮小等の印刷条件に関するデータが含まれており、この印刷条件のひとつに転写紙の種類(例えば、普通紙・低品質紙・高品質紙等)のデータが指定情報として含まれている。
【0021】
さらに、受信部28は、例えば、複写機や複合機等の場合には、複写機における読取部やファクシミリにおける受信部として機能する。
【0022】
次に、本発明の制御回路23によるキャリブレーション制御例を図3のフロー図に基づいて説明する。
【0023】
(ステップS1)
ステップS1では、制御回路23は、受信部28又は操作部29で転写媒体としての転写紙に関する指定情報が普通紙を指定しているか否かを判断し、普通紙以外が指定されていると判断した場合にはステップS2へと移行し、普通紙以外が指定されていると判断した場合にはステップS3へと移行する。
【0024】
(ステップS2)
ステップS2では、制御回路23は、受信部28又は操作部29で転写媒体としての転写紙に関する指定情報が高品質紙を指定しているか否かを判断し、高品質紙が指定されていると判断した場合にはステップS4へと移行し、高品質紙以外(=低品質紙)が指定されていると判断した場合にはステップS5へと移行する。
【0025】
(ステップS3)
ステップS3では、制御回路23は、普通紙を指定していることから、ROM25に格納された普通紙に関するキャリブレーション条件(基準値)を取得してステップS6へと移行する。
【0026】
(ステップS4)
ステップS4では、制御回路23は、高品質紙を指定していることから、ROM25に格納された高品質紙に関するキャリブレーション条件を取得してステップS6へと移行する。
【0027】
(ステップS5)
ステップS5では、制御回路23は、低品質紙を指定していることから、ROM25に格納された低品質紙に関するキャリブレーション条件(基準値)を取得してステップS6へと移行する。
【0028】
(ステップS6)
ステップS6では、制御回路23は、受信部28で受信した印刷データに基づいて画像形成処理を実行してステップS7へと移行する。
【0029】
(ステップS7)
ステップS7では、制御回路23は、普通紙・高品質紙・低品質紙の指定情報に応じたキャリブレーション制御を実行してステップS8へと移行する。
【0030】
図4は、これら普通紙・高品質紙・低品質紙毎に設定されたキャリブレーション条件の一例を示し、これらキャリブレーション条件がROM25にテーブル方式で格納されている。また、ここでのキャリブレーション制御としては、像担持体16・帯電部17・露光部18・現像ローラ19の電位やバイアスの制御、除電部22のイレース光量等をキャリブレーション制御条件として制御する。
【0031】
尚、本実施の形態では、転写紙に関する指定情報として、普通紙・高品質紙・低品質紙としたが、例えば、普通紙としては、上質PPC紙やC2紙等の一般的に使用されている紙を対象とし、高品質紙としては光沢紙やラベル紙等を対象とし、低品質紙としては所謂裏紙(裏面印刷紙)や100%再生紙等を対象としている。
【0032】
この際、これらの条件は限定されるものではなく、より細かい指定情報に分類しても良い。また、例えば、転写紙に関する指定情報に加えて、画質指定と組み合わせ、例えば、普通紙+高画質の場合と高画質紙+高画質の場合とで、基準値(例えば、普通紙+普通画質)よりも高い設定を細分化しても良い。
【0033】
尚、図4中、キャリブレーション制御欄の『間欠印字』とは、数分乃至数十分以下の印字休止期間をはさんで間欠的に印字を繰り返す印字モードを意味し、『間欠・連続ランダム』とは連続印字と間欠印字とがランダムにモード指定されている場合の他、図表上覧に当てはまらない場合を含めた条件を含むものとする。
【0034】
(ステップS8)
ステップS8では、制御回路23は、画像形成処理が終了したか否かを判断し、画像形成処理が終了したと判断した場合にはステップS9へと移行し、画像形成処理が終了していないと判断した場合にはステップS8へとループして、引き続きキャリブレーション制御を必要に応じて実行する。
【0035】
(ステップS9)
ステップS9では、制御回路23は、画像形成処理後にキャリブレーション制御が必要である場合には、それを実行してこのルーチンを終了する。尚、ここでのキャリブレーション制御には、例えば、ステップS4やステップS5の設定を行った後に、予め基準値に設定を戻す場合を含む。
【0036】
このように、本発明の画像形成装置によれば、画像形成部で画像形成処理する転写紙の種類の指定状況に応じたキャリブレーション回数を変更することにより、より適正なタイミングでキャリブレーション制御を行うことができ、画像形成処理時間の浪費を抑制することができる。
【0037】
即ち、本発明の画像形成装置では、転写紙の種類に応じて異なったタイミングでキャリブレーション制御を行うことにより、キャリブレーション制御回数を転写紙の種類によって増減することで、例えば、低品質紙の場合には普通紙の場合を基準としてキャリブレーション制御の回数を減らすことで、連続印字時の生産性を向上することができる。また、高品質紙の場合には、普通紙の場合よりもキャリブレーション制御回数を増やすことで、濃度ムラのない高画質の画像形性処理を実行することができる。
【0038】
また、これらの制御をユーザによる指定が可能なので、ユーザの要求に応じて簡単に制御条件(制御回数)を変更することができる。
【0039】
ところで、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置及び画像形成プログラムをカラープリンタに適用して説明したが、例えば、複写機や複合機等の画像形成装置全般に適用することができることは勿論である。
【0040】
また、上記実施の形態では、制御回路23は、低品質紙・普通紙・高品質紙の3種類を指定情報として予め設定してキャリブレーションの制御回数を制御するものとして説明したが、普通紙に対するキャリブレーションの制御回数を基準値として、この普通紙と他の1種類の計2種類、例えば、低品質紙の場合にのみ転写媒体に関する指定情報がキャリブレーション回数を減らすように設定した種類の指定情報としてキャリブレーションの制御回数を基準値よりも減らしても良く、また、これとは逆に、高品質紙の場合にのみ転写媒体に関する指定情報がキャリブレーション回数を増やすように設定した種類の指定情報としてキャリブレーションの制御回数を基準値よりも増やしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラー式のプリンタの説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラー式のプリンタの要部の拡大説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における制御回路の制御ルーチンのフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における制御回路の制御条件(制御テーブル)の図表である。
【符号の説明】
【0042】
1…プリンタ(画像形成装置)
23…制御回路(メディア情報取得部)
30…トナー濃度検知センサ(トナー濃度検知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写媒体の表面に画像を形成する画像形成部と、転写媒体に関する指定情報を取得するメディア情報取得部と、該メディア情報取得部で取得した転写媒体に関する指定情報に応じて前記画像形成部に対するキャリブレーションの制御回数を変更する制御回路と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記メディア情報取得部で取得した転写媒体に関する指定情報が、予め設定した種類の何れを指定しているのかを判断し、転写媒体に関する指定情報が予め設定した標準情報である場合のキャリブレーションの制御回数を基準値として、転写媒体に関する指定情報がキャリブレーション回数を減らすように設定した種類の指定情報の場合にはキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも減らし、或いは、転写媒体に関する指定情報がキャリブレーション回数を増やすように設定した種類の指定情報の場合にはキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも増やすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記メディア情報取得部で取得した転写媒体に関する指定情報が、低品質紙・普通紙・高品質紙の何れを指定しているのかを判断し、転写媒体に関する指定情報が普通紙である場合のキャリブレーションの制御回数を基準値とし、転写媒体に関する指定情報が低品質紙である場合のキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも減らし、転写媒体に関する指定情報が高品質紙である場合のキャリブレーションの制御回数を前記基準値よりも増やすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
転写媒体の表面に画像を形成する画像形成ステップと、転写媒体に関する指定情報を取得するメディア情報取得ステップと、転写媒体に関する指定情報に応じて画像形成部に対するキャリブレーションの制御回数を変更するキャリブレーション制御ステップと、をコンピュータに実行させるための画像形成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−309920(P2008−309920A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156051(P2007−156051)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】