説明

画像形成装置及び電圧発生回路

【課題】
直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアス電圧の生成に際して、トランスの磁束密度の最大値を小さく抑えるようにした画像形成装置及び電圧発生回路を提供する。
【解決手段】
画像形成装置は、像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を付着させて現像を行なう現像剤担持体と、現像バイアス電圧を現像剤担持体に印加する電圧発生回路とを具備する。ここで、電圧発生回路は、一次巻線の作用により二次巻線に交流電圧を発生するトランスと、トランスの一次巻線の一端に接続されるコンデンサと、トランスの一次巻線の一端と異なる他端に接続され、第1の電圧を発生する第1の電圧発生手段と、コンデンサを介してトランスの一次巻線の一端に接続され、第1の電圧と異なる電圧値を持つ第2の電圧を発生する第2の電圧発生手段と、トランスの一次巻線の作用により交流電圧を発生させる前に、第1の電圧及び第2の電圧をコンデンサに蓄電させる制御を行なう制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び電圧発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式や静電記録方式を採用する画像形成装置が知られている。これら装置における現像処理では、磁性トナーを主成分とした一成分現像剤、又は非磁性トナーと磁性キャリアとを主成分とした二成分現像剤が用いられる。特に、電子写真方式によりフルカラー画像やマルチカラー画像を形成する画像形成装置においては、画像の色味などの観点から、二成分現像剤を使用している場合が多い。
【0003】
上述した現像処理においては、現像剤担持体において、現像剤を担持し、当該担持した静電潜像を現像する。このとき、現像剤担持体には、直流電圧に交流電圧を重畳した高電圧の電圧が印加される。
【0004】
現像間隙(像担持体(感光体)と現像剤担持体(現像スリーブ)との間の隙間)に高電圧が印加された場合、記録媒体(例えば、用紙)上において、図6に示すような、リング状又はスポット状の模様が生じてしまう場合がある(以下、リングマークと称する)。図6(a)は、背景部に生じるリングマークであり、図6(b)は、画像部に生じるリングマークである。このようなリングマークの発生は、画質を著しく損ねてしまう。
【0005】
ここで、リングマークの発生メカニズムについて説明する。画像形成装置において、画像形成処理を繰り返し行なうと、現像スリーブの表面がキャリア等で削られたり、金属ビス等からの金属粉が現像器内に混入したりしてしまう。現像器に金属異物が混入すると、現像間隙が狭まり、金属異物と像担持体の表面との間で放電が発生する。リングマークの発生は、この放電現象に起因する。
【0006】
このようなリングマークの発生原理から、図7に示す現像交流電圧の正の電圧Vp+を小さくすることで背景部に生じるリングマークを抑制する技術が知られている。図7には、現像剤担持体及び像担持体の表面電位と、現像剤の移動の概要との一例が示される。Vdarkは、帯電器により一様に帯電され、露光部により露光されていない(現像されない)領域の像担持体の表面電位を示している。Vlightは、露光により形成された像担持体の潜像の電位を示している。Vdcは、現像直流発生器により現像スリーブ(現像剤担持体)に印加された直流電位を示しており、Vp+、Vp−は、現像交流発生器により現像スリーブに印加された交流電圧の振幅値を示している。
【0007】
ここで、VdcとVlightとの電位差Vcontrastの大きさが現像濃度、すなわち、可視画像の濃度に作用する。また、VdarkとVdcとの電位差Vbackは、非露光部が現像されないようにする(いわゆるかぶり防止)ための電位差である。Vp+を小さくすることは、VdarkとVp+との電位差を小さくすることになり、結果的にリングマークを減少させることができる。
【0008】
また、像担持体上において、高濃度領域の潜像と低濃度領域の潜像とが隣接していると、低濃度領域に付着すべき現像剤が高濃度領域の潜像に引き寄せられてしまう。その結果、本来現像されなくてはならない領域が現像されず、画像が抜けてしまう現象(以下、白抜けと呼ぶ)が生じる場合がある。
【0009】
ここで、Vp−が大きい場合、Vp−とVlightとの電位差が大きくなり、低濃度領域の潜像に対しても現像性が向上することが知られている。また、交流電圧が現像スリーブへ印加されると、現像スリーブから感光体へ現像剤を飛ばす方向に生じる電界Vp−と、感光体から現像スリーブへ現像剤を戻す方向に生じる電界Vp+とが交互に得られ、現像ムラのないように現像剤が揺り動かされる。そのため、交流電圧の印加は、現像濃度の均一化に効果がある。
【0010】
また、このような現像剤担持体への電圧の印加に偏デューティーブランクパルス波形を用いる技術が提案されている。この波形を用いると、正の電圧Vp+を出力している時間と、負の電圧Vp−を出力している時間とを異ならせることができる。また、Vp+の絶対値がVp−の絶対値よりも小さく、且つブランク期間をも設けられる。これにより、上記交流高圧のメリットを生かしつつ、交流電圧を用いた場合のデメリットを抑制させることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−33815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現像剤担持体への電圧の印加に際して、特に、出力開始時の動作シーケンスにおいて、トランスの磁気飽和が生じる場合がある。トランスの磁気飽和は、コアの透磁率が1になることをいい、トランスのコア内の磁束密度が、飽和磁束密度(コアの形状、材質、巻数で決まる)を越えた場合に発生する。トランスが磁気飽和すると、インダクタンスが急激に減少するため、トランスに大電流が流れてしまい、回路の破損に至る。コア内の磁束密度は、トランスのコイルに流れる電流に比例する。
【0013】
ここで、電流は、以下で表される。
【0014】
I=∫V/Ldt V:電圧 L:インダクタンス
すなわち、磁束密度は、トランスに入力される電圧と時間との積(VT積)に比例する。そのため、例えば、VT積が大きい場合に磁気飽和を防ぐには、トランスの巻数の増加、コアサイズのアップ、コアを飽和磁束密度の高いコア材に変更、等する必要がある。いずれの対策もトランスのコストアップに繋がってしまう。
【0015】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアス電圧の生成に際して、トランスの磁束密度の最大値を小さく抑えるようにした画像形成装置及び電圧発生回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による画像形成装置は、像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を付着させて現像を行なう現像剤担持体と、前記現像剤担持体に現像バイアス電圧を印加する電圧発生回路とを具備し、前記電圧発生回路は、一次巻線の作用により二次巻線に交流電圧を発生するトランスと、前記トランスの前記一次巻線の一端に接続されるコンデンサと、前記トランスの前記一次巻線の前記一端と異なる他端に接続され、第1の電圧を発生する第1の電圧発生手段と、前記コンデンサを介して前記トランスの前記一次巻線の前記一端に接続され、前記第1の電圧と異なる電圧値を持つ第2の電圧を発生する第2の電圧発生手段と、前記トランスの前記一次巻線の作用により前記交流電圧を発生させる前に、前記第1の電圧及び前記第2の電圧を前記コンデンサに蓄電させる制御を行なう制御手段とを具備し、前記トランスの前記二次巻線に生じた前記交流電圧を直流電圧に重畳することにより前記現像バイアス電圧を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トランスの磁束密度の最大値を小さく抑えることができるため、飽和磁束密度の低い安価なトランスでも、偏デューティーのブランクパルス波形を出力できる。また、出力開始時からトランスが磁気飽和を起こすこともなく、更に、任意の振幅値又はデューティー比、ブランク期間においても所望の出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる画像形成装置10における画像形成系の構成の一例を示す図。
【図2】現像交流電圧発生回路の概略構成の一例を示す図。
【図3】偏デューティーブランクパルス波形の一例を示す図。
【図4】制御部100の動作の一例を示すフローチャート。
【図5】制御部100による制御処理の概要の一例を示す図。
【図6】従来技術の課題の一例を示す図。
【図7】従来技術の課題の一例を示す図。
【図8】従来技術の課題の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係わる画像形成装置及び電圧発生回路の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
なお、本実施形態においては、Y、M、C、Bkの4色のカラーに対応し、電子写真方式を利用して画像を形成する画像形成装置を例に挙げて説明する。これに限られず、例えば、6色のカラーに対応していてもよいし、モノクロのみの対応であってもよい。
【0021】
また、記録媒体とは、用紙等の紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、トナー等の現像剤を受容可能な媒体を含む。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係わる画像形成装置10における画像形成系の構成の一例を示す図である。
【0023】
画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の4つの像形成ステーションを有している。なお、符号の中の数字の後に付されたa〜dはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒の像形成部に対応する。以降の説明ではa〜dの表記を省略する。
【0024】
画像形成装置は、感光体1と、1次帯電器2と、露光部3と、現像器4と、1次転写ローラ53と、クリーナー6と、中間転写ベルト51と、中間転写ベルトクリーナー55と、2次転写ローラ56、57とを具備して構成される。
【0025】
ここで、感光体1は、像担持体として機能する。感光体1は、1次帯電器(1次帯電ローラ)2が印加する帯電高圧の作用により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。
【0026】
露光部3は、一様に帯電された感光体1に向けて画像信号に応じた露光処理を行なう。これにより、感光体1上には、例えば、色成分像(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した静電潜像が形成される。
【0027】
現像器4は、現像剤(例えば、トナー)を担持する現像剤担持体として機能する。現像器4は、感光体1上に形成された静電潜像に現像剤を付着させる。これにより、感光体1に現像剤が現像される。
【0028】
一次転写ローラ(1次転写部)43は、中間転写ベルト51を挟んで、感光体1の対向位置に配置されている。感光体1上の静電潜像は、一次転写ローラ43に印加した静電気の作用により中間転写ベルト51に転写される。中間転写ベルト51は、感光体1から転写された像を記録媒体(例えば、用紙)上に転写する。これにより、用紙上に画像が形成される。
【0029】
ここで、図1に示す画像形成装置10において画像形成を行なう際の流れの一例について簡単に説明する。
【0030】
まず、1次帯電器2が、感光体1を一様に帯電する。すると、露光部3は、画像信号に応じて感光体1を露光する。これにより、感光体1の表面に静電潜像が形成される。その後、現像器4が、感光体1上に形成された静電潜像に現像剤を付着させる。
【0031】
感光体1上にトナー像が現像されると、4個の感光体1上のトナー像が、1次転写ローラによって中間転写ベルト51に重ねて転写されるとともに、2次転写ローラによって記録媒体Pに転写される。感光体1上に残った転写残トナーは、クリーナー6によって回収され、中間転写ベルト51に残った転写残トナーは、中間転写ベルトクリーナー55によって回収される。記録媒体Pに転写されたトナー像は、定着器7によって定着される。これにより、記録媒体P上にカラー画像が形成される。
【0032】
図2は、図1に示す画像形成装置10に設けられた現像交流電圧発生回路の概略構成の一例を示す図である。なお、現像交流電圧発生回路は、直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアス電圧の生成に際して、当該交流電圧を発生する回路である。
【0033】
駆動電源Vinは、現像交流電圧発生回路に電圧(例えば、24V)を供給する。現像交流電圧発生回路には、当該駆動電源を入力するための入力部(不図示)が設けられる。スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、トランスT1の1次巻線とコンデンサC1とを負荷に持つ、いわゆるフルブリッジ回路を構成する電子スイッチとして機能する。各スイッチング素子には、例えば、FETを用いればよい。
【0034】
コンデンサC1は、トランスT1の一次側(以下、一次巻線と呼ぶ)のTb端に接続され、交流電圧の正負の電圧の不平衡を吸収する。スイッチング素子Q1は、第1の切替手段として機能し、トランスT1の一次巻線のTa端と第1の電圧発生部(後述する)との間に接続され、当該接続を接続状態(オン)又は未接続状態(オフ)にする。例えば、トランスのTa端に印加される電圧をオンオフする。スイッチング素子Q2は、第2の切替手段として機能し、トランスT1の一次巻線のTa端とグランド(GND)との間に接続され、当該接続をオンオフする。例えば、トランスT1の一次巻線のTa端の電位を基準電位(グランド電位)に切り替える。
【0035】
スイッチング素子Q3は、第3の切替手段として機能し、コンデンサC1と第2の電圧発生部(後述する)の間に接続され、当該接続をオンオフする。例えば、トランスのTb端に印加される電圧をコンデンサC1を介してオンオフする。スイッチング素子Q4は、第4の切替手段として機能し、コンデンサC1とグランド(GND)との間に接続され、当該接続をオンオフする。例えば、トランスT1の一次巻線のTb端の電位を基準電位(グランド電位)に切り替える。
【0036】
トランジスタQ5は、第1の電圧制御素子として機能し、トランジスタQ6は、第2の電圧制御素子として機能する。トランジスタQ5は、駆動電源Vinからスイッチング素子Q1に印加される電圧Vaを所望の値にするため駆動する。また、トランジスタQ6は、駆動電源Vinからスイッチング素子Q2に印加される電圧Vbを所望の値にするために駆動される。なお、電圧Va及びVbは、異なる電圧値を有する。スイッチング素子Q1及びQ2は、その出力特性がリニアである領域で駆動される。
【0037】
コンデンサC2及びC3、ダイオードD1及びD2は、それぞれトランジスタQ5、Q6のベース・エミッタ間に設けられる。ここで、Q5、C2、D1は、電圧Vaを生成する第1の電圧発生部を構成する。また、Q6、C3、D2は、電圧Vbを生成する第2の電圧発生部を構成する。
【0038】
トランスT1の二次側(以下、二次巻線と呼ぶ)の一端は、負荷である現像スリーブ41に接続されており、もう一端(他端)は、現像直流電圧発生回路Vdcに接続されている。そして、トランスT1の一次巻線の作用により、トランスT1の二次巻線に交流電圧が生じる。この構成により、直流電圧と交流電圧とが重畳された高電圧が現像バイアス電圧として現像スリーブ41に印加される。
【0039】
現像スリーブ41は、例えば、トナーとキャリアとで構成される。現像スリーブ41は、現像剤を担持して回転し、感光体1に形成された静電潜像とトナーとの電位差を利用して、感光体1上にトナーを付着させる。これにより、現像が行なわれる。
【0040】
上位制御部200は、例えば、CPUで構成され、画像形成装置10全体の制御を司る。上位制御部200では、例えば、オペレータパネル(不図示)を介したユーザからの指示等を受け、当該指示に基づいて各部の動作を制御する。
【0041】
制御部100は、スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフ及びトランジスタQ5、Q6のベース電圧をそれぞれ独立に制御する。この制御は、上位制御部200から与えられる指令値(現像スリーブ41に印加する電圧Vp+及びVp−の指令値)に基づいて行なわれる。
【0042】
制御部100は、与えられた指令値(Vp+、Vp−)に対し、n2*Va=n1*|Vp−|を満たすVaが、コンデンサC2の電位となるようにトランジスタQ5のベース電圧を制御する。n1は、トランスT1の一次巻線の巻数を示し、n2はトランスT1の二次巻線の巻数を示している。制御部100は、トランジスタQ5のベース電圧の制御時と同様に、n2*Vb=n1*Vp+を満たすVbが、コンデンサC3の電位となるようにトランジスタQ6のベース電圧を制御する。
【0043】
また、制御部100は、図3に示すように、予め決められた交流電圧の周期tに対しVp+:|Vp−|=tb:ta、且つt=ta+tbを満たすta及びtbを導出する。制御部100は、電圧Vaと電圧Vbとの絶対値の比が、期間taと期間tbとの比に一致するような期間ta及びtbを求める。期間taにおいては、トランスT1の一次巻線のTa端に電圧Vaが印加され、期間tbにおいては、トランスT1の一次巻線のTb端に電圧Vbが印加される。なお、各色現像器4に対応して制御部100を設け、現像器4各々を独立に動作させるように構成してもよいし、また、複数の現像器に対して共有の制御部100を設けるように構成してもよい。
【0044】
図4は、図2に示す制御部100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0045】
画像形成装置10が停止中の場合、制御部100は、スイッチング素子Q1〜Q4、トランジスタQ5及びQ6をオフ状態に制御する(S1)。上位制御部200は、ユーザからの指示を受けると、制御部100に向けて作像待機信号を出力する。
【0046】
制御部100は、作像待機信号の受信待ち状態にある(S2でNO)。ここで、この信号を受けると(S2でYES)、制御部100は、スイッチング素子Q1及びQ3ゲートをオン状態に制御する(S3)。このとき、制御部100は、第1の電圧発生部及び第2の電圧発生部(トランジスタQ5及びQ6)の制御も開始する。具体的には、制御部100は、第1の電圧発生部(Q5、C2、D1を含む)により発生される電圧Vaが所定の定電圧になるように制御し、第2の電圧発生部(Q6、C3、D2を含む)により発生される電圧Vbが所定の定電圧になるように制御する。この制御においては、スイッチング素子Q1及びQ3をオンした後、トランジスタQ5及びQ6の制御を開始するのが望ましいが、トランジスタQ5及びQ6に対する制御の開始が先であっても、また、両制御が同時に行なわれても構わない。
【0047】
上位制御部200は、感光体1の現像画像が中間転写ベルト51を介して記録媒体Pの所定位置に現像されるタイミングに合わせて、制御部100に向けて現像交流電圧の出力信号を出力する。なお、作像待機信号から出力信号が出力されるまでの期間、第1の電圧発生部及び第2の電圧発生部それぞれは、電圧Va及び電圧Vbの出力を安定させる。コンデンサC1には、Va―Vbの電位が蓄電される。
【0048】
ここで、制御部100は、現像交流電圧の出力信号の受信待ち状態にある(S4でNO)。当該出力信号を受けると(S4でYES)、制御部100は、スイッチング素子Q1及びQ4ゲートにオン信号を与えるとともに、スイッチング素子Q2及びQ3ゲートにオフ信号を与える(S5)。これにより、ta期間(第1の制御期間)の間、スイッチング素子Q1及びQ4を導通させる。このとき、Va−(Va−Vb)=Vbの電圧がトランスT1の一次巻線の両端の電位差として得られる。これにより、トランスT1の二次巻線側において、当該電位差に基づく電圧が交流電圧として発生される。
【0049】
ta期間の経過後、制御部100は、スイッチング素子Q1及びQ4ゲートにオフ信号を与えるとともに、スイッチング素子Q2及びQ3ゲートにオン信号を与える(S6)。これにより、tb期間(第2の制御期間)の間、スイッチング素子Q2及びQ3を導通させる。このとき、Vb−(Vb−Va)=Vaの電圧がトランスT1の一次巻線の両端の電位差として得られる。そして、トランスT1の二次巻線側において、当該電位差に基づく電圧が交流電圧として発生される。これにより、現像交流電圧発生回路においては、所望のピーク電圧となる矩形波を最初のパルスから出力することができる。また、トランスの磁気飽和に対して余裕のある駆動が実現できる。
【0050】
ここで、上位制御部200から与えられた所定の規定回数(図3に示す波形では2回)に連続パルス信号が達していなければ(S7でNO)、制御部100は、S5、S6で説明した処理を繰り返し行なう。また、所定の規定回数に達した場合には(S7でYES)、制御部100は、ブランク期間(第3の制御期間)を生成させる。具体的には、規定パルス回数に達した場合、制御部100は、スイッチング素子Q1及びQ3のゲートにオン信号を与えるとともに、スイッチング素子Q2及びQ4のゲートにオフ信号を与える(S8)。すなわち、ブランク期間tblankの間、スイッチング素子Q1及びQ3を導通させる。これにより、トランスT1の二次巻線側の出力0Vを得る。
【0051】
現像交流電圧の停止信号を受信するまでの間、制御部100は、上述した、ta期間、tb期間、tblank期間の動作を繰り返し実行する。これにより、偏デューティーブランクパルスを継続出力する。
【0052】
上位制御部200は、記録媒体Pへの現像処理が終わると、現像交流電圧の停止を示す停止信号を制御部100に向けて出力する。制御部100は、上位制御部200から停止信号を受信したか否かを判断する(S9)。制御部100は、当該停止信号を受けると(S9でYES)、スイッチング素子Q2及びQ4ゲートをオフに制御するとともに、スイッチング素子Q1及びQ3ゲートをオンに制御する。また、トランジスタQ5及びQ6の出力をVa、Vbに制御した状態にする(S10)。これは、S3に示す作像待機状態と同じ状態であるといえる。
【0053】
ここで、制御部100は、次の現像交流電圧の出力信号、又は待機解除信号のいずれかを上位制御部200から受信するまで待機する。この待機中に何らかの信号を受信すると、制御部100は、当該信号が何であるかを判断する。判断の結果、次の現像交流電圧の出力信号であれば(S11で現像交流電圧の出力信号受信)、制御部100は、再度、S5の動作に移り、上述した動作を実行する。また、待機解除信号であれば(S11で待機解除信号受信)、制御部100は、スイッチング素子Q1〜Q4を全てオフし、トランジスタQ5及びQ6の制御を停止する(S12)。
【0054】
次に、図5及び図8を用いて、図4で説明した制御部100による制御処理の概要の一例について説明する。図5には、各種制御信号(図4参照)、図2に示すコンデンサC1の両端の電圧、トランスT1の両端の電圧、トランスT1の出力タイミングの一例が示される。ここでは、比較例として、本実施形態に係わる構成を有さない場合の制御処理の概要を図8に示す。図8では、制御部は、作像待機信号を受けると、トランジスタQ5及びQ6の制御を開始するが、スイッチング素子Q1〜Q4をオフ状態で待機させる。
【0055】
C1は、コンデンサC1両端の電位差であり、スイッチング素子Q4側の端を基準にしたもう一端側の電圧を示している。VTa−Tbは、トランスT1の一次巻線の電位差であり、Tb端を基準にしたTa端の電圧を示している。ITa−Tbは、トランスT1の一次巻線のTa端からTb端に流れる電流である。また、図中縦の二重波線は、時間軸の省略を示しており、作像待機信号を受けた後、コンデンサC1への所定量の蓄電が終わるまでの時間や出力信号を受信するまでの時間が、出力パルス周期に比較して十分に長いことを示している。更に、図中上側のS1〜S8は、図4で説明したフローチャートにおける各処理に対応する。但し、図4の判断ステップであるS2、S4、S7に関しては、判断のトリガーとなる事象に対応している。図5及び図8の両者に見られるスイッチング素子オンオフ切換え時の電流の変化は、負荷である現像器4の充放電電流である。
【0056】
ここで、図5及び図8を比較してみると、交流電圧の出力開始前(すなわち、現像交流電圧の出力信号の受信前)に、コンデンサC1に電荷が蓄積されているか否かにおいて相違する。図5の場合、Vb:Va=V+:|V―|=tb:taの関係が成立っている。すなわち、コンデンサC1には、Va−Vbの電荷がかかっているので、スイッチング素子Q1からQ4に導通させているとき(期間ta)、トランスT1の一次巻線の両端の電位差としては、Va−(Va−Vb)=Vbが得られる。
【0057】
また、スイッチング素子Q3からQ2に導通されているとき(期間tb)、トランスT1の一次巻線の両端の電位差としては、Vb−(Vb−Va)=Vaが得られる。図3に示すケースでは、V+<|V−|なので、制御部100においては、ta>tb、Vb<Vaの関係を有する値を演算する。VT積は、スイッチング素子Q1及びQ4がオン且つスイッチング素子Q2及びQ3がオフの状態から(S5参照)、スイッチング素子Q2及びQ3がオン且つスイッチング素子Q1及びQ4がオフの状態に切り換わる時の(S6参照)、磁束密度の最大値を採る。この値はVb*ta(=Vb*tb)となる。
【0058】
一方、図8では、交流電圧の出力開始時において、コンデンサC1電位が0Vとなっている。そのため、スイッチング素子Q1〜Q4に導通させている間、トランスT1の一次巻線の両端では、Va−ΔVc≒Va(ΔVcは、C1過渡充電電圧)の電位差が得られる。また、スイッチング素子Q3からQ2に導通させている間、トランスT1の一次巻線の両端では、Vb−ΔVc≒Vbの電位差が得られる。
【0059】
すなわち、交流電圧の出力開始時のVT積は、Q1及びQ4がオン且つQ2及びQ3がオフの状態から(S5参照)、Q2及びQ3がオン且つQ1及びQ4がオフの状態に切り換わる時(S6参照)に磁束密度が最大値を採る。この値は、Va*ta(>Vb*ta=Va*tb)となる。Va*taの大きなVT積がトランスにかかり、図8に示すように、トランスは、磁気飽和による大電流に至る。
【0060】
例えば、Vp+:Vp−を6:4の振幅比すると、
図5の場合、VT積は、Vb*ta=4x*6y=24*xy
x,yは定数
図8の場合、VT積は、Va*ta=6x*6y=36*xy
となり、図5に比較し、図8では、磁束密度最大値は1.5倍にも達してしまう。
【0061】
Vp+:Vp−を7:3の振幅比すると、図5に比較し、図8では、磁束密度最大値は、2.3倍に達してしまう。
【0062】
以上説明したように本実施形態によれば、トランス磁束密度の最大値を小さく抑えることができるため、飽和磁束密度の低い安価なトランスでも、偏デューティーのブランクパルス波形を出力できる。そのため、例えば、コストの削減を図れる。
【0063】
また、交流電圧の出力開始時からトランスが磁気飽和を起こすこともなく、更に、任意の振幅値又はデューティー比、ブランク期間においても所望の出力を得ることができる。
【0064】
なお、上述した実施形態においては、波形が、2周期分のパルスと0Vのブランク波形である場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。図2に示す回路構成において、出力可能なパルス数は任意の数、また、ブランク期間の電圧は、0V以外であってもパルス期間とブランク期間の和で交流波形をなす物であれば、任意の値の場合についても実施可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を付着させて現像を行なう現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に現像バイアス電圧を印加する電圧発生回路と
を具備し、
前記電圧発生回路は、
一次巻線の作用により二次巻線に交流電圧を発生するトランスと、
前記トランスの前記一次巻線の一端に接続されるコンデンサと、
前記トランスの前記一次巻線の前記一端と異なる他端に接続され、第1の電圧を発生する第1の電圧発生手段と、
前記コンデンサを介して前記トランスの前記一次巻線の前記一端に接続され、前記第1の電圧と異なる電圧値を持つ第2の電圧を発生する第2の電圧発生手段と、
前記トランスの前記一次巻線の作用により前記交流電圧を発生させる前に、前記第1の電圧及び前記第2の電圧を前記コンデンサに蓄電させる制御を行なう制御手段と
を具備し、
前記トランスの前記二次巻線に生じた前記交流電圧を直流電圧に重畳することにより前記現像バイアス電圧を生成する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の電圧発生手段と前記トランスの前記一次巻線の前記他端との間に接続され、該接続を接続状態又は未接続状態に切り替える第1の切替手段と、
前記トランスの前記一次巻線の前記他端とグランドとの間に接続され、該接続を接続状態又は未接続状態に切り替える第2の切替手段と、
前記第2の電圧発生手段と前記コンデンサとの間に接続され、該接続を接続状態又は未接続状態に切り替える第3の切替手段と、
前記コンデンサとグランドとの間に接続され、該接続を接続状態又は未接続状態に切り替える第4の切替手段と
を更に具備し、
前記制御手段は、
前記トランスの前記一次巻線の作用により前記交流電圧を発生させる前に、前記第1の切替手段及び前記第3の切替手段を接続状態に制御するとともに、前記第2の切替手段及び前記第4の切替手段を未接続状態に制御し、前記第1の電圧及び前記第2の電圧を前記コンデンサに蓄電させる
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記コンデンサへの所定量の蓄電が済んだ後、前記第1の切替手段及び前記第4の切替手段を接続状態に制御するとともに、前記第2の切替手段及び前記第3の切替手段を未接続状態に制御する第1の制御期間と、
前記第1の制御期間の経過後、前記第2の切替手段及び前記第3の切替手段を接続状態に制御するとともに、前記第1の切替手段及び前記第4の切替手段を未接続状態に制御する第2の制御期間と
を有し、
前記トランスの前記一次巻線の作用により前記交流電圧を発生させるときに、前記第1の制御期間及び前記第2の制御期間による制御を所定の規定回数に達するまで繰り返し実施する
ことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記第2の制御期間の経過後、前記第1の切替手段及び前記第3の切替手段を接続状態に制御するとともに、前記第2の切替手段及び前記第4の切替手段を未接続状態に制御する第3の制御期間
を更に有し、
前記第1の制御期間及び前記第2の制御期間による制御が前記所定の規定回数に達した場合、前記第3の制御期間による制御を実施する
ことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トランスの前記二次巻線は、
前記第1の制御期間による制御に際して、前記トランスの前記一次巻線の前記一端及び前記他端の電位差である前記第2の電圧に基づく電圧を前記交流電圧として発生し、前記第2の制御期間による制御に際して、前記トランスの前記一次巻線の前記一端及び前記他端の電位差である前記第1の電圧に基づく電圧を前記交流電圧として発生する
ことを特徴とする請求項3又は4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2の電圧の絶対値に対する前記第1の電圧の絶対値の比と、前記第2の制御期間に対する前記第1の制御期間の比とが等しい
ことを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
像担持体の表面に形成された静電潜像に現像剤を付着させて現像を行なう現像剤担持体に対して現像バイアス電圧を印加する電圧発生回路であって、
一次巻線の作用により二次巻線に交流電圧を発生するトランスと、
前記トランスの一次巻線の一端に接続されるコンデンサと、
前記トランスの前記一次巻線の前記一端と異なる他端に接続され、第1の電圧を発生する第1の電圧発生手段と、
前記コンデンサを介して前記トランスの前記一次巻線の前記一端に接続され、前記第1の電圧と異なる電圧値を持つ第2の電圧を発生する第2の電圧発生手段と、
前記トランスの前記一次巻線の作用により前記交流電圧を発生させる前に、前記第1の電圧及び前記第2の電圧を前記コンデンサに蓄電させる制御を行なう制御手段と
を具備し、
前記トランスの前記二次巻線に生じた前記交流電圧を直流電圧に重畳することにより前記現像バイアス電圧を生成する
ことを特徴とする電圧発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−27937(P2011−27937A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172568(P2009−172568)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】