説明

画像形成装置用の導電性部材

【課題】十分に低い抵抗値を維持しながら電気抵抗の環境依存性を小さくし、連続通電時の抵抗上昇を小さくする画像形成装置用導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性付与剤としてイオン導電性添加塩のみを含み、電子導電性充填剤は含まない導電性ポリマー組成物から形成される導電層を備えた導電性ローラおよび導電性ベルトを含む画像形成装置用の導電性部材であって、上記導電層は、連続相と1相の非連続相との2相からなり、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、上記非連続相に陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させ、該非連続相を構成するポリマーは上記連続相を構成するポリマーよりも上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性を高くし、印加電圧100Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積抵抗率が10〜1012[Ω・cm]である上記ポリマー組成物から形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いられるローラやベルトからなる導電性部材、およびその製造方法に関し、詳しくは、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の事務機器の画像形成装置に用いられる導電性ローラや導電性ベルト性からなる導電性部材として好適に用いられ、該導電性部材の導電層を形成する導電性ポリマー組成物の電気抵抗の環境依存性・経時変化等を改良し、安定して良好な画像を得るものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる導電性ローラや導電性ベルト等の導電性部材に導電性を付与する方法としてはポリマー中に金属酸化物の粉末やカーボンブラック等の導電性充填剤を配合した電子導電性ポリマー組成物を用いる方法と、ウレタン、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ポリマー組成物を用いる方法とがある。
【0003】
金属酸化物の粉末やカーボンブラック等の導電性充填剤を配合することによって得られる電子導電性ポリマー組成物を用いた場合、特に要求される半導電の領域では、添加量のわずかな変化により電気抵抗値が急激に変化するため、その制御が非常に困難になる。このため、ポリマー組成物中で導電性充填剤が均一に分散し難いことから、ローラの周方向や長手方向、ベルトの面内で抵抗値がばらつきを持つという問題を生じる。
即ち、導電性充填剤の各粒子の分散状態により、電子の移動に伴う電流の流れ方が左右されるため、粒子の分散状態にバラツキがあると、抵抗値の制御が困難となり、ローラやベルトの製品面内での抵抗値のバラツキが大きくなりやすい。粒子の2次凝集がある場合はさらにバラツキが大きくなる。また、カーボンブラックを用いるとベルトが黒色となり、トナー等によるベルトの汚れを目視しにくくなる。
【0004】
また、金属酸化物を用いた電子導電とすると、例えば、導電性亜鉛華を用いた場合、低抵抗化のために充填量が多くなると、ベルトの脆化を招くこととなる。さらに、粒子の分散が課題となり、抵抗調整が困難である。特に、10Ω・cm〜1012Ω・cmのような抵抗値に調整するのが困難である。
【0005】
上記問題は各ローラやベルト自体の各部材の問題となるだけでなく、部材間の電気抵抗値のばらつきも非常に大きくなる問題も生じる。更には、得られる導電性ローラや導電性ベルトの電気抵抗値は印加電圧に依存し、一定の抵抗値を示さない。特に、導電性充填剤としてカーボンブラックを使用した場合、これらの傾向が顕著に現れる。かかる現象は、帯電・現像・転写・定着といった画像形成過程において機械的な制御を難しくし、コストアップにつながる場合がある。また、カーボンを用いた場合、自由に着色出来ないという問題もある。
【0006】
以上の点から、高画質かつ省エネルギーが要求される昨今の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においてはイオン導電性ローラ、或いはイオン導電性ベルトが好まれる傾向にあり、従来から、種々の提案がなされている。
例えば、特開平10−169641号では、基材である高分子材料に第4級アンモニウム塩を添加し、使用環境を考慮しながら、連続通電時の抵抗値を規定した半導電性高分子弾性部材が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記特開平10−169641号では、特定の陰イオンを有する第4級アンモニウム塩を配合することによって、イオン導電性ローラやイオン導電性ベルトにおいて連続通電時の抵抗値上昇の低減を図っているが、電気抵抗値の環境依存性(温度依存性+湿度依存性)を十分に低減できないという問題がある。さらに、配合する塩の種類や存在状況、あるいは配合内容によっては、感光体を汚染する場合がある。
このように、導電性部材においては、連続通電時の抵抗値の上昇を低減するだけでなく、電気抵抗の環境依存性や、配合する塩等の感光体への移行汚染の問題も考慮する必要がある。
【0008】
イオン導電性の導電剤として、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル構造を含む導電性オリゴマーや導電性可塑剤(いずれもMn<10000)があるが、これらはポリマー組成物中で固定されていないために、ブリードやブルームを起こしてしまう問題がある。特に、複写機やプリンタ用の導電性ローラや導電性ベルト等に用いた場合、これらのものが移行して感光体を汚染し、画像を汚してしまったり、最悪、感光体を変質し破壊してしまう場合がある。
【0009】
また、過塩素酸リチウム等の金属塩や各種第4級アンモニウム塩等のイオン導電性添加塩を用いた系では、配合量や基材ポリマーとの相容性にもよるが、塩が解離したイオンが、連続通電時に電極に向かって移動し、長時間たつと抵抗値がかなり上昇してしまうことがある。また、添加塩等が導電性部材の表面に析出し、物質によっては感光体を汚染する場合もある。特に、添加塩を分散させるのに、低分子量のポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を用いると、塩がポリマー中を移動しやすくなり導電性が向上する反面、連続通電時に表面等に析出しやすくなってしまう。さらには、用いたこれらの低分子量媒体も表面に移行し、長時間使用した場合に、移行汚染やトナーの固着が起こって、実用性を失うという問題が生じる場合がある。実際の画像形成装置においても、長時間連続して用いた場合、これらの点が問題となる場合が多い。
【0010】
また、イオン導電性のベルトについては、特開2002−304064号公報において、少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂とは非相溶性である少なくとも1種の親水性樹脂とを配合してなる樹脂組成物を押出成形して得られ、押出成形時の成形温度における該熱可塑性樹脂の粘度が該親水性樹脂の粘度より高くしたエンドレスベルト(シームレスベルト)が提案されている。
しかしながら、上記特開2002−304064号公報等の従来の公報に記載された一般的なイオン導電によるベルトでは体積抵抗率の環境依存性が大きくなったり、連続通電時の抵抗率の上昇が大きくなったりする場合があるという問題がある。この場合、転写電圧のコントロールが困難となり画像形成装置の機構が複雑になったり、より大きな電源が必要となり、消費電力が大きくなったりしてコストが上昇してしまう等の問題がある。
【0011】
また、イオン導電とした場合でも、低分子量の界面活性剤的な静電気防止剤等を用いると、ブリードにより感光体汚染を引き起こす恐れがある。また、吸湿性が大きいと湿度変化による電気抵抗の変化が大きくなってしまう。さらには、過塩素酸ナトリウム(NaClO)等は、熱可塑性エラストマーとの混練時の取り扱いが難しかったり、また、一般的に高価なものが多い。
【0012】
さらに、近年、導電性ベルトにおいて、その使用上の環境を考慮し、難燃性を有することが要求されているものもある。導電性ベルトは画像形成装置内において高電圧、高温環境下に置かれる場合があるため、ベルトが可燃性で燃えやすかったり、難燃性が不十分であると、装置内の環境条件によっては使用状態が制限される恐れがある。現在提供されているベルトは、導電性、耐久性等の性能には優れており、通常の使用には影響ないものの、難燃性対策が不十分なものがあり、未だ改善の余地がある。
【0013】
熱可塑性樹脂等からなる導電性ベルトを難燃化するには、難燃剤の添加が一般的である。従来、難燃剤としてはハロゲン系の難燃剤、リン酸エステル系の難燃剤等が添加されている。
しかしながら、上記ハロゲン系の難燃剤を添加した場合には、使用後の廃棄時にベルトが高温下にさらされると、ダイオキシン等の有毒ガスが発生することも考えられる。また、上記リン酸エステル系の難燃剤を添加した場合には、ベルトが高温下で長期間使用されると、時間の経過とともにベルト内部から、かかる難燃剤がベルト表面にしみ出して感光体などを汚染することがある。
【0014】
このように、画像形成装置等に使用される搬送ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、定着ベルト、現像ベルト、感光体基体用のベルトについて、難燃性の付与は優先度が高い要求となっている。特に、導電性ベルトに難燃性を付与する際に、ノンハロゲンで環境への影響が小さく、使用時に非汚染性にて実現することが望まれている。
【特許文献1】特開平10−169641号公報
【特許文献2】特開2002−304064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、画像形成装置用のローラやベルト等からなる導電性部材として充分に低い抵抗値を維持しながら、電気抵抗の環境依存性(温度依存性+湿度依存性)を小さくし、かつ連続通電時の抵抗上昇を小さくした画像形成装置用の導電性部材を得ると共に、電気特性が良好であり、消費電力が小さく、良好で均質な画像を長期に渡って得ることができる画像形成装置を提供することを課題としている。
さらに、導電性ベルトに関しては、導電性等の他の性能に影響を与えることなく優れた難燃性を有すると共に、連続通電時の抵抗上昇が小さく、かつ、ベルト面内の抵抗値のバラツキや環境依存性も小さい難燃性のベルトを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、イオン導電性添加塩を含む導電性ポリマー組成物から形成した導電層を備えた導電性ローラおよび導電性ベルトを含む画像形成装置用の導電性部材であって、
上記導電層は、連続相と1相または2相以上の非連続相とからなり、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、上記非連続相の少なくとも1相は、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させた第1非連続相とし、該第1非連続相を構成するポリマーは上記連続相を構成するポリマーよりも上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性を高くしており、また、印加電圧100Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積抵抗率が10〜1012[Ω・cm]とした上記ポリマー組成物から形成していることを特徴とする画像形成装置用の導電性部材を提供している。
【0017】
本発明は、本発明者が鋭意研究の結果、低電気抵抗を実現できる塩の配置及び塩とポリマーとの親和性に着目し、導電性部材を構成するポリマー材料や配合されるイオン電導性添加塩について検討、実験を積み重ね、イオンによる良好な電気特性を維持しながら、塩の組成物外への移行を防止できる相構造を見出したことに基づくものである。
【0018】
具体的には、連続相と1相以上の非連続相とからなる相構造を有し、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を非連続相に偏在させ、かつ、高導電度で電気抵抗低下能力が大きい陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させた非連続相を構成するポリマーは、連続相を構成するポリマーよりも、かかる陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性を高くしている。これにより、非連続相中での塩の自由度を高め低い電気抵抗を維持しながら、電界を加えたときの塩の相外への流出を抑制できるため、塩の組成物外への移行や連続通電時の抵抗上昇等を防ぐことができる。更には、塩が非連続相中に存在するため温度や湿度等の環境の影響も受けにくく、かつ、イオン導電によるため、電気抵抗のばらつきや電圧依存性も小さい。
【0019】
なお、従来は、組成物全体の抵抗値を極力低下させるために、連続相に塩が分配される試みがなされていたが、本発明は、塩とポリマーとの親和性や、塩の配置に着目し、上記構成としたことにより、充分に低い抵抗値を維持しながら、電気抵抗の環境依存性(温度依存性+湿度依存性)を小さくし、かつ連続通電時の抵抗上昇を小さくすることを可能とした。
特に、本発明では、イオンの解離度が高く高電導度を発揮する塩を用い、かつ、電界をかけ続けても上記塩を系外に移行させにくくしたため、塩が表面に析出したり、抵抗値を大きく上昇させずに、導電性に優れた塩の少量の配合で優れた導電性を得ることができる。よって、圧縮永久ひずみや硬度等の他の物性に及ぼす影響も極力低減することができ、複写機やプリンタ等の画像形成装置用の導電性ローラや導電性ベルト等の導電性部材として非常に有用である。
【0020】
連続相、非連続相等のポリマー組成物の相構造は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)式の走査型プローブ顕微鏡(SPM)の位相モード等で観察することができる。
【0021】
上記非連続相として上記第1非連続相と第2非連続相の2相を設け、第2非連続相は上記塩を殆ど添加していない。また、連続相にも上記塩を殆ど添加していないような形態とすることも出来る。
この場合、これらの条件に加えて上記各相のポリマーの塩との親和性は第1非連続相>連続相>第2非連続相とし、各相の電気抵抗値(体積抵抗率)は第1非連続相<連続相<第2非連続相としていることが好ましい。
各相のポリマーの塩との親和性は、塩を含んでいない状態での各相のポリマーの体積抵抗率(後述のρV1、ρV2、ρV3)や塩を含んだ状態での各相のポリマーの体積抵抗率から評価することが出来る。これらの抵抗率が低い程、ポリマーと塩との親和性が高いといえる。
上記構成とすることにより、導電性をあまり大きく損なうことなく、解離可能な塩を偏在させる第1非連続相の割合を抑えることができる。その結果、解離可能な塩の配合量を少なくしても組成物全体として低い体積抵抗率を維持することができる。
上記第1非連続相で第2非連続相を取り囲むように存在させることが好ましい。また、第1非連続相、第2非連続相、および連続相が各々2種以上のポリマーから形成されていても構わないし、各々が、さらに細かいいくつかの相に分かれていても、本発明の趣旨と効用が満たされていれば構わない。
【0022】
陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させた第1非連続相を構成するポリマーの体積抵抗率をρV1、連続相を構成するポリマーの体積抵抗率をρV2とすると、0.2≦log10ρV2−log10ρV1≦5としていることが好ましい。
上記値が0.2より小さいと連続相に解離可能な塩が移行しやすくなるためである。一方、上記値が5より大きいと全体として低抵抗を実現しにくくなる上、均一な組成物を得ることが難しくなり、ローラであれば周むら等が大きくなってしまうためである。なお、1つの相を構成するポリマーが2種類以上のポリマーのブレンドとしている場合は、そのブレンドされたポリマーの体積抵抗率とする。また、ここでの体積抵抗率は、塩を含んでいないポリマーのみの体積抵抗率である。尚、log10ρV2−log10ρV1は0.5以上4以下であればより好ましく、1以上3以下であれば更に好ましい。
【0023】
非連続相を構成するポリマーと連続相を構成するポリマーとの重量比は、(非連続相を構成するポリマー:連続相を構成するポリマー)=(5:95)〜(75:25)であることが好ましい。
非連続相を構成するポリマーの配合比率が、上記範囲より少ないと、非連続相の体積分率が低すぎるため、組成物全体の体積抵抗率、或いは該組成物から成形するローラやベルトの抵抗値を十分に下げることが出来なくなる。一方、連続相を構成するポリマーの配合比率が上記範囲より少ないと、動的架橋等の手法を用いても、連続相として存在し得なくなる。
上記重量比は、さらに好ましくは(10:90)〜(60:40)、より好ましくは(20:80)〜(45:55)が良い。
また、本発明では、解離可能な塩の配合量を固定したまま、連続相と非連続相の比率を変えることによっても、電気抵抗値の制御がある程度可能である。なお、動的架橋を用いれば比較的分率の高い成分を非連続相にもってくることができ、非連続相を構成するポリマーの比率を高めることができる。
なお、上記連続相、第1非連続相、第2非連続相の体積分率は、連続相>第2非連続相>第1非連続相とすることが好ましい。
【0024】
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩は、全ポリマー成分100重量部に対して0.01重量部以上20重量部以下の割合で配合されていることが好ましい。
これは、0.01重量部より小さいと十分な電気抵抗の低減効果が得られないためであり、20重量部より大きいとコスト高を招く割には配合量増加による電気抵抗の低減効果の向上が得にくくなるためである。なお、より好ましくは0.2重量部以上10重量部以下、さらに好ましくは0.4重量部以上6重量部以下である。
【0025】
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩はプロピレンカーボネート(PC)/ジメチルカーボネート(DME)系混合溶媒(体積分率1/2)中、25℃で0.1mol/リットルの塩濃度で測定した導電率が2.3mS/cm以上であることが好ましい。この導電率は解離したイオンの濃度とその移動度に比例するものである。上記範囲より小さいと低い抵抗値を得にくくなる。3.5mS/cm以上であればより好ましい。尚、かかる塩の導電率は大きい程好ましいが、実際に存在する塩の導電率の上限は4.5mS/cm程度である。
このような範囲の塩としては、CFSOLi{:2.3mS/cm}、CSOLi{:2.3mS/cm}、(CFSONLi{:4.0mS/cm}、(CSONLi{:3.8mS/cm}、(CSO)(CFSO)NLi{:3.5mS/cm}、(FSO)(CFSO)NLi{:3.0mS/cm}、(C17SO)(CFSO)NLi{:3.2mS/cm}、(CFCHOSONLi{:3.0mS/cm}、(CFCFCHOSONLi{:3.0mS/cm}、(HCFCFCHOSONLi{:2.9mS/cm}、((CFCHOSONLi{:3.1mS/cm}、(CFSOCLi{:3.6mS/cm}、(CFCHOSO)CLi{:2.9mS/cm}、LiPF{:4.4mS/cm}等がある。尚、{:}内は上記導電率の値である。
上記した様な導電率の高い塩を用いると、文字通り少量の添加で非常に低い電気抵抗値を得ることが出来好ましいが、他方で、この様な塩を用いた場合が、特に本発明の効果を著しく発揮出来る場合といえる。なぜならば、かかる導電率の高い塩は、系内を移動しやすく、本発明を用いなかった場合、連続使用時の抵抗上昇が、導電率の低い塩に比べて著しく大きくなりやすいためである。
【0026】
また、上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として、フルオロ基(F−)及びスルホニル基(−SO−)を有する陰イオンを備えた塩、例えば、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン、フルオロアルキルスルホン酸イオン等の陰イオンを備えたリチウム塩、カリウム塩、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩が好適に用いられる。この様な塩は、フルオロ基、スルホニル基等の官能基が電子吸引性を有するため、陰イオンがより安定化され、イオンがより高い解離度を示す。これにより、少量の添加で、非常に低い電気抵抗値を得ることが出来る。
上記第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩は置換されるアルキル基等の官能基をかえることにより、誘電率、静電容量等の変更もでき、例えば、静電容量を小さくすること等ができる。
【0027】
また、上記の様に、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンとして、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン、フルオロアルキルスルホン酸イオン、特には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンからなる群の内の少なくとも1つから選ばれたイオンであることが好ましい。
これにより体積抵抗率等の環境依存性を良好とすることができ、解離度が非常に大きい点や、EO−PO−AGE共重合体やエピクロルヒドリンゴム等の非連続相を構成するポリマーとの相容性が高い点からも好ましい。また、上記塩のうち、とりわけ、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンからなる塩を用いると、体積抵抗率等の環境依存性を非常に小さく出来る。
【0028】
上記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩の陽イオンは、アルカリ金属、2A族、遷移金属、両性金属のいずれかの陽イオンであることが好ましい。アルカリ金属は、特に、イオン化エネルギーが小さいため安定な陽イオンを形成しやすい点で好ましい。その他、金属の陽イオン以外にも、下記の化学式(化2、化3)で示されるような陽イオンを備えた塩とすることもできる。式中R1〜R6は、各々炭素数1〜20のアルキル基またはその誘導体であり、R1〜R4、および、R5とR6は同じものでも別々のものでも良い。これらの中でも、R1〜R4の内の3つがメチル基、その他の1つが炭素数4〜20、より好ましくは炭素数6〜20のアルキル基またはその誘導体からなる、トリメチルタイプの第4級アンモニウム陽イオンからなる塩は電子供与性の強い3つのメチル基により窒素原子上の正電荷を安定化でき、他のアルキル基またはその誘導体によりポリマーとの相容性を向上できることから特に好ましい。また、化3の形式の陽イオンにおいては、R5あるいはR6は電子供与性を有する方が同じく窒素原子上の正電荷を安定しやすいことからメチル基あるいはエチル基であることが望ましい。このように、窒素原子上の正電荷を安定化させることにより、陽イオンとしての安定度を高め、より解離度が高く、よって導電性付与性能に優れた塩にすることができる。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
上述した理由により、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドのアルカリ金属塩、トリフルオロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩からなる群の内の少なくとも1つから選ばれた塩であるのが最適である。
【0032】
陰イオンがビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンからなる塩、特には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムは、非常に高温に渡っても安定なため、従来、用いられていた過塩素酸リチウムや過塩素酸第4級アンモニウム塩等と異なり、防爆仕様にする等の処置が不要である。この点からも、製造コストを減じたり、安全性を確保したりでき、非常に優れている。
【0033】
陽イオンと陰イオンに解離可能な塩は、分子量1万以下の低分子量ポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を介さずに配合されていることが好ましい。このような媒体を用いると長時間連続して用いた場合に電気抵抗値が大きく上昇し、通電特性が悪くなったり、媒体がイオンとともに析出し、感光体汚染を起こしやすくなる。尚、分子量1万以下の低分子量ポリエーテル化合物の具体例としては、低分子量(一般に分子量が数百から数千まで)のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリエーテルポリオール等があげられる。また、低分子量極性化合物としては、同じく分子量が1万以下の低分子量ポリエステルポリオール、アジピン酸エステル、フタル酸エステル等があげられる。
上記した媒体を介さずに、解離可能な塩を配合する方法は、公知の手法を用いることが出来る。例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー等でドライブレンドを行った後、解離可能な塩とポリマーを含むブレンド物を、単軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融混合を行う等の方法を用いることが出来る。この他、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーのポリマー系で、解離可能な塩を高温で配合する場合、ポリマーの劣化を防ぐ等の目的で、必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で配合(混合)を行うことも出来る。
【0034】
本発明の導電性ポリマー組成物は、適度な弾性等を付与できるため、加硫ゴム組成物あるいは熱可塑性エラストマー組成物であることが好ましいが、その他、ポリマーとして樹脂を用いても良い。
【0035】
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させた第1非連続相を構成するポリマーは、エーテル結合やシアン基により、かかる塩から生じる陽イオンを強く安定化出来ることから、塩とポリマーとの親和性を高く出来るという理由により、ポリオキシアルキレン系共重合体、シアン基を有するポリマー、エピクロヒドリン系ポリマーの少なくとも1つを主成分としていることが好ましい。このように、第1非連続相を構成するポリマーと塩との親和性を高くすることにより、組成物全体の抵抗値を効果的に下げることが出来るとともに、塩の系外への析出や、連続使用時の抵抗値の上昇を防ぐことが出来る。
【0036】
具体的には、上記第1非連続相を構成するポリマーとしては、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(EO−PO−AGE共重合体)あるいは/及びエピクロルヒドリンゴムを用いることが好ましい。エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。
【0037】
この他、ポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体、ポリエーテルエステルアミド共重合体も、本発明で用いられる塩との親和性が大きく、第1非連続相を構成するポリマーとして好適に用いられる。
具体的には、例えば、上記第1非連続相はポリエーテル系ポリマー、連続相は低ニトリルNBR、第2非連続層はEPDMとし、低ニトリルNBRを90〜50重量%、ポリエーテル系ポリマーを0.5〜25重量%、EPDMを10〜40重量%、上記塩を0.1〜2重量%で配合するとよい。
【0038】
前記EO−PO−AGE共重合体を用いた場合、組成物の物性(圧縮永久ひずみ、硬度)を維持しながら、体積抵抗率を低減できるように共重合比率を設定することができる。共重合体中、エチレンオキサイド比率は55モル%以上95モル%以下であるのが好ましく、65モル%以上92モル%以下であるとより好ましい。イオン導電性が発揮されるのは、ポリマー中のオキソニウムイオンや金属陽イオン等(例えば、添加した塩中のリチウムイオン等の陽イオン等)が、エチレンオキサイドユニットやプロピレンオキサイドユニットで安定化され、その部分の分子鎖のセグメント運動により運搬されることによる。尚、一般にはエチレンオキサイドユニットの方がプロピレンオキサイドユニットよりも上記の安定化能は高い。よって、エチレンオキサイドユニットの比率が高い方が多くのイオンを安定化でき、より低抵抗化を実現できる。一方、エチレンオキサイドユニットの比率が95モル%を超えると、エチレンオキサイドユニットが結晶化してイオンを輸送しにくくなり、電気抵抗は上昇してしまう。
EO−PO−AGE共重合体を用いた場合、アリルグリシジルエーテルの共重合比率は1モル%以上10モル%以下とするのが良い。1モル%未満ではブリードや感光体汚染の発生が起こり易くなる一方、10モル%を超えると、加硫後の架橋点の数が多くなり、低抵抗を実現しにくく、また、引張強さや疲労特性、耐屈曲性が悪化しやすい。また、EO−PO−AGE共重合体の数平均分子量は10000以上が好ましく、より好ましくは50000以上が良い。この理由はブリードブルームや感光体汚染を防止するためである。
【0039】
上記連続相を構成するポリマーは、低ニトリルNBRあるいは/及び中高ニトリルNBR、または、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしていることが好ましい。これにより、全体として極力低い抵抗値とすることができる上に、解離可能な塩の組成物外への移行や連続通電時の抵抗上昇を防ぐことができる。なお、連続相の材料としては、ある程度電気抵抗値が低く、かつ、Tgが低いため室温付近での粘弾性の温度依存性が小さく、それによって体積抵抗率の環境依存性を小さくすることの出来る、低ニトリルNBR等が特に好ましい。また、これらのポリマーのTgとしては−40℃以下、より好ましくは−50℃以下がよい。かかるTgは低ければ低い程よいが、実際に存在するあるいは、実用化されているポリマーの中でコストを考慮しながら探すことを考えると、−120℃以上、あるいは、−100℃以上、あるいは、−80℃以上程度となる。
【0040】
陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させない上記第2非連続相は、低極性ゴムを主成分としていることが好ましい。具体的には、低極性ゴムが、エチレンプロピレンジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)から選択される1種以上のゴムであることが好ましい。これにより、組成物に耐オゾン性を付与することができる。例えば、画像形成装置に用いられる導電性部材等に用いた場合でも、装置内に生じるオゾンに対して、耐オゾン性を確保することができる。
さらに、系全体の室温付近での粘弾性の温度依存性を小さくして、電気抵抗値の環境依存性を小さくするために、連続相に用いるポリマーだけでなく、第2非連続相に用いるポリマーもよりTgの低いものが好ましい。これは、第1非連続相に用いるポリマーについても同様である。尚、これらのポリマーのTgとしては−40℃以下であることが好ましく、さらには−50℃以下であるとより好ましい。第1非連続相あるいは、第2非連続相に用いるポリマーのTgの下限についても、連続相を構成するポリマーの場合と同様に、低ければ低い程よいが、実際には、−120℃以上、あるいは、−100℃以上、あるいは、−80℃以上程度となる。
【0041】
また、添加する塩から生じるイオンの一部を、陰イオン吸着剤等を用いてシングルイオン化し、導電性の安定や、少量添加時の導電性向上をはかることができる。陰イオン吸着剤としては、MgとAlを主成分とする合成ハイドロタルサイト、Mg−Al系,Sb系,Ca系等の無機イオン交換体やアニオンを連鎖中に固定するイオン席を有する共重合体等の公知の化合物が有用である。具体的には、合成ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、商品名キョーワード2000、キョーワード1000)、アニオン交換性イオン交換樹脂(日本錬水(株)製、商品名ダイアノンDCA11)等が挙げられる。
【0042】
ポリマーとして塩素等のハロゲンを含むポリマーを使用する場合、ポリマーの脱塩化水素反応による劣化や、混練機が錆びるのを防ぐため、ハイドロタルサイト等の受酸剤を配合することが好ましい。配合量としては、合成ハイドロタルサイトの場合、ハロゲン含有ポリマー100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下、好ましくは3重量部以上12重量部以下とすると良い。
【0043】
添加する加硫剤としては、特に、低電気抵抗を実現できるため、硫黄が好ましい。また、硫黄、有機含硫黄化合物の他、過酸化物なども使用可能であり、これらを併用することもできる。特に、EPDM、EPM等を上記第2非連続相を形成する低極性ゴムとして用いた場合、過酸化物によればこれらのゴムからなる相を効果的に加硫することができる。
有機含硫黄化合物としては、例えば、テトラエチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリンなどが挙げられる。過酸化物としてはジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド等を挙げることができる。なお、これらのうち、加硫とともに発泡を行う場合には、加硫速度と発泡速度のバランスが良くなる点から硫黄を用いるのが好ましい。加硫剤の添加量は、ポリマー成分100重量部に対して、0.5重量部以上5重量部以下、好ましくは1重量部以上3重量部以下がよい。
【0044】
また、加硫促進剤を配合してもよく、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や以下に記す有機促進剤を用いることができる。
有機促進剤としては、2−メルカプト・ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系、チオウレア系等を適宜組み合わせて用いることができる。
また、加硫促進剤は、ポリマー成分100重量部に対して、1重量部以上5重量部以下、さらには2重量部以上4重量部以下が好ましい。
【0045】
また、加硫促進助剤を配合しても良く、例えば亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の加硫促進助剤が挙げられる。
柔軟性等の付与のためポリマー成分100重量部に対して、化学発泡剤を3重量部以上12重量部以下の割合で配合しても良い。その他、オイル等の軟化剤、老化防止剤等を配合しても良い。
また、機械的強度を向上させる等の目的のために、電気特性や他の物性を損なわない範囲で必要に応じて充填剤を配合することができる。充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の粉体を挙げることができる。充填剤はポリマー100重量部に対し5重量部以上60重量部以下とするのが良い。
【0046】
なお、本発明の導電性ポリマー組成物は、塩素、あるいは臭素を含有する塩を用いないで、非塩素系、非臭素系とするとより好ましい。
具体的には、ポリマーとして塩素・臭素を含まない材料を用いると共に、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウムあるいは、過塩素酸第4級アンモニウム塩等の塩素・臭素を含む塩を用いず、組成物全体として非塩素、非臭素系の組成物とすることで、導電性ローラのシャフト等の金属表面を腐食したり、発錆させたりあるいは汚染したりする恐れがなくなる。さらに、使用後の焼却処理等も非常に行いやすく、環境に優しい組成物とすることができる。
【0047】
本発明の導電性部材の導電層を形成する導電性ポリマー組成物は、JIS K6262に記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験法において、測定温度70℃、測定時間22〜24時間、圧縮率25%で測定した圧縮永久ひずみの大きさが30%以下であることが好ましい。これは、30%より大きいと、上記組成物を成形してローラやベルト等の導電性部材として使用した時に寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さない場合があるためである。なお、より好ましくは25%以下であり、小さければ小さいほど良いが、現状の配合技術や測定精度を考慮すると、実際には1%以上程度が実現可能な値である。
【0048】
また、本発明の導電性部材の導電層を形成する導電性ポリマー組成物は、印加電圧100Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積抵抗率が104.0〜1012.0[Ω・cm]の範囲、好ましくは106.0〜1010[Ω・cm]、さらに好ましくは107.5〜109.5[Ω・cm]としている。これは、体積抵抗率が1012.0[Ω・cm]より大きくなると、導電性部材等とした際に、良好な導電性が得られず、実用に適さなくなるためである。また、該組成物を成形してローラやベルト等とした際に転写や帯電、トナー供給等の効率が低下しやすいためである。一方、体積抵抗率が104.0[Ω・cm]より小さくなると、電荷の保持が困難となる等、画像形成装置の部材として機能しなくなることがあるためである。
【0049】
上記導電層を備えた導電性部材はローラ形状、あるいはエンドレスベルト形状として画像形成装置に用いる導電性ローラあるいは導電性ベルトとしている。
該導電性ローラや導電性ベルトからなる導電性部材は、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩と、該陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させる非連続相を構成するポリマーとを混練あるいは均一に混合した後に、該混練物あるいは該混合物に連続相を構成するポリマーやその他の非連続相を構成するポリマー等を加えて再度混練して得られた導電性ポリマー組成物を作製し、
上記導電性ポリマー組成物を加熱成形することで導電層を備えた導電性ローラあるいは導電性ベルトからなる導電性部材を製造している。
このように、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を所望のポリマー中に偏在させ、かつ陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させたポリマーを非連続相とした導電性ポリマー組成物を、押出成形等によりローラ状、ベルト状等の所望の形状に成形することで、良好な導電性を示す導電層を備えた導電性部材を容易に製造することができる。
【0050】
導電性ローラとする場合には、23℃、相対湿度55%の環境下で、1000Vの定電圧を96時間連続印加した場合の抵抗値R[Ω]を測定し、抵抗値の上昇量Δlog10R=log10R(t=96hr.)−log10R(t=0hr.)の値を0.5以下としているのが好ましい。これは、上記のように規定するローラ抵抗値の上昇量の指標値が0.5より大きいと、導電性ローラを連続使用等した際の抵抗の上昇が大きくなり、より大きな電源を必要としたり、実用に支障をきたすおそれが生じたりするためである。かかる上昇量の指標値は小さければ小さい程良いが、測定精度や現在の配合技術の水準から考えると、0.01以上、あるいは、0.05以上、あるいは、0.08以上程度となる。
一方、導電性ベルトとする場合には、同様に23℃、相対湿度55%の環境下で厚みが0.25mmのサンプルに対し、1000Vの定電圧を5時間連続で印加した場合の体積抵抗率ρ[Ω・cm]を測定し、体積抵抗率の上昇量Δlog10ρ=log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.)の値を0.5以下としていることが好ましい。0.5よりも大きくなると、導電性ローラと同様の問題を生じる。尚、かかる上昇量の下限については、導電性ローラの場合と同様、小さければ小さい程良いが、測定精度や現在の配合技術の水準から考えると、0.01以上、あるいは、0.1以上、あるいは、0.3以上程度となる。
【0051】
また、10℃相対湿度15%、32.5℃相対湿度90%の条件下でのローラ抵抗値R[Ω]あるいは導電性ベルトの体積抵抗率ρ[Ω・cm]を測定し、ローラ抵抗値、あるいはベルトの体積抵抗率の環境依存性Δlog10R=log10R(10℃相対湿度15%)−log10R(32.5℃相対湿度90%)の値、あるいはΔlog10ρ=log10ρ(10℃相対湿度15%)−log10ρ(32.5℃相対湿度90%)の値を1.7以下としていることが好ましい。
これは、上記ローラ抵抗値あるいはベルト体積抵抗率の環境依存性の指標値が1.7より大きいと導電性部材の使用環境の変化による抵抗値の変化が大きいため、より大きな電源を必要とし、画像形成装置の消費電力や製品コストが上昇したりするためである。
特に、導電性ローラの場合は上記抵抗値の環境依存性の指標値は1.4以下、さらには好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下が良い。かかる指標値は小さければ小さい程良いが、測定精度や現在の技術水準から考えると、0.1以上、あるいは、0.5以上あるいは、0.8以上程度となる。
また、導電性ベルトの場合は上記抵抗値の環境依存性の指標値は1.6以下が良く、小さければ小さい程良いが、測定精度や現在の技術水準から考えると、0.1以上、あるいは、0.5以上、あるいは、1.0以上程度となる。本発明の画像形成装置用の導電性部材は、従来のイオン導電性ゴム組成物、或いは、熱可塑性でない反応硬化型のイオン導電性ウレタン組成物等からなる部材では実現できていなかったレベルの環境依存性の低減を実現している。
【0052】
また、上記導電性部材、特に、導電性ローラとする場合には、発泡倍率(体積%)を100%以上500%以下とし、JIS K6253に記載のタイプEデュロメータで測定した硬度が60度以下の発泡層とすることが好ましい。これにより、柔軟性が向上し、転写ロール等に使用したときに、転写部材を押圧した時のトナー画像の乱れが生じにくく、良好な画像を得ることができる。このように導電性部材中の導電層の表面積が大きくなる発泡層とした場合でも、本発明を用いると、移行汚染を防止でき、通電時の抵抗上昇を抑制することができ非常に優れている。尚、後述する実施例・比較例からもわかるように発泡層とした場合の連続通電時の抵抗上昇は、ソリッドの場合に比べて一般にかなり大きくなるが、そのような場合においても、本発明により供給される導電性(発泡)部材は、かかる抵抗上昇を小さく抑えることが出来、非常に優れている。尚、発泡倍率は150%以上300%以下がより好ましく、200%以上270%以下がさらに好ましい。また、硬度(デュロメータE硬度)は、20度以上40度以下がより好ましく、25度以上35度以下がさらに好ましい。
【0053】
導電性ローラは、円筒状の導電層と円柱状の芯金とを備えた構成とし、芯金の周囲の導電層1層のみとしても良いが、導電層以外に、ロールの抵抗調整や、表面保護等のために2層、3層等の複層構造としても良く、要求性能に応じて各層の種類、積層順序、積層厚み等を適宜設定することができる。芯金は、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、鉄等の金属製、セラミック製等とすることができる。また、導電性ローラの表面に紫外線照射や各種コーティングを行い、紙粉の付着やトナーの固着を防止することもできる。
上記導電性ローラは画像形成装置内で使用され、具体的には、感光ドラムを一様に帯電させるための帯電ローラ、トナーを感光体に付着させるための現像ローラ、トナー像を感光体等から用紙または中間転写ベルト等に転写するための転写ローラ、トナーを搬送させるためのトナー供給ローラ、転写ベルトを内側から駆動するための駆動ローラとして用いられる。
【0054】
導電性ローラは、常法により作製でき、例えば、上記導電性ポリマー組成物(混練物)を単軸押出機でチューブ状に予備成形し、この予備成形品を160℃、15〜70分加硫したのち、芯金を挿入・接着し表面を研磨した後、所要寸法にカットしてローラとする等の従来公知の種々の方法を用いることができる。加硫時間は、加硫試験用レオメータ(例:キュラストメータ)により最適加硫時間を求めて決めるとよい。また、加硫温度は必要に応じて上記温度に上下して定めてもよい。なお、感光体汚染と圧縮永久ひずみを低減させるため、なるべく十分な加硫量を得られる様に条件を設定することが好ましい。なお、ローラの加硫方法については、水蒸気加圧下の加硫缶中で加硫しても構わないし、可能な配合に関しては連続加硫による方法をとっても構わない。また、必要に応じて二次加硫を行っても良い。また、導電性ローラは、印加電圧1000Vにおけるローラ抵抗値が103.5Ω〜1011.0Ωであることが好ましく、104.0Ω〜109.0Ωであることがより好ましく、さらには104.5Ω〜108.5Ωが好ましい。
【0055】
導電性ベルトは、導電層1層のみとしても良いし、導電層以外に、抵抗調整や、表面保護等のために内周面あるいは外周面に層を設け、2層、3層等の複層構造としても良い。要求性能に応じて各層の種類、積層順序、積層厚み等を適宜設定することができる。また、導電性ベルトの表面に紫外線照射や各種コーティングを行い、紙粉の付着やトナーの固着を防止することもできる。
上記導電性ベルトは画像形成装置に用いられ、具体的には、転写ベルト、中間転写ベルト、定着ベルト、感光体基体用ベルト等として用いられる。
転写ベルトまたは中間転写ベルトとした場合には、転写時に残ったトナーをかき取りやすくするため、トナーの着脱性を変化させるため、表面エネルギーをコントロールするため等、目的に応じ、ウレタン、アクリル、ゴムラテックス等を主ポリマーとし、フッ素系樹脂を分散させたような公知の材料を静電塗装、吹き付け塗装、ディッピング、刷毛塗り塗装等公知の方法により塗布したコーティング層を設けることが好ましい。コーティング層の厚みは1μm〜20μmが好ましい。これにより、更なるベルトの高機能化を実現することができる。
【0056】
上記導電性ベルトは、上記導電性ポリマー組成物(混練物)を、樹脂用の押出成形機により200℃〜270℃、好ましくは200℃〜250℃、さらに好ましくは220℃〜240℃で、ベルト状に押し出して成形した後、空冷してベルト本体を作製する等の従来公知の種々の方法を用いることができる。
押出成形されるベルトの肉厚は50μm〜500μmとするのが良い。押出成形する際にダイリップの間隙を調整すること、また、熱可塑性組成物の吐出量とベルトの引き取り速度を調整することで可変とすることができる。
上記範囲としているのは、50μmより薄いと伸びやすくなり、例えば中間転写ベルトとして使用しカラーの画像形成装置で多色トナーを重ねて作像する際にズレが生じやすくなったりするためである。一方、500μmより厚いとベルトの曲げ剛性が高くなり、ベルトを駆動軸に懸架しにくくなくなる。また、ベルト外面の表面粗さRzは2.0μm以下、さらには1.8μm以下であることが好ましい。これにより転写効率や搬送性、トナークリーニング性を良好なものとすることができる。
【0057】
上記導電性ベルトとしては、難燃性ベルトとすることが特に好ましい。
上記難燃性ベルトとする場合では、導電性ポリマー組成物は、全ポリマー成分100重量部に対してポリエステル系熱可塑性エラストマーを95重量部〜50重量部とし、ポリマー組成物の全重量100重量%に対して難燃剤であるメラミンシアヌレートを15重量%〜40重量%の割合で含有すると共に、全ポリマー成分100重量部に対して下記の化学式1に記載の陰イオンを備えた塩を0.01重量部〜3重量部の割合で含有し、ポリエーテルブロックを有する共重合体を上記ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して5〜50重量部の割合で含有し、体積抵抗率を10〜1012[Ω・cm]とした熱可塑性組成物を用いて成形している。
【化1】

(式中、X,Xは、C,F−,−SO−を含む、炭素数が1〜8の官能基)
【0058】
上記構成からなるベルトは、ポリエーテルブロックを有する共重合体を含有しているため、ポリエーテル構造が、組成物中の塩のイオンを安定化する。即ち、ポリエーテルブロックを有する共重合体が、イオン導電性を発現する上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩を選択的に取り込み、ポリエステル系熱可塑性エラストマー中に海島構造で分散される。また、難燃剤としてメラミンシアヌレートを含有させても、ベルトの体積抵抗率及びその環境依存性等に影響を及ぼすことはなく、ベルトの電気抵抗は変化しないため、導電性を維持したままベルトに難燃性を付与できる。
【0059】
よって、難燃性を維持したまま、電界を加えた時の塩のポリマー外への流出を抑制できるため、塩のポリマー外への移行や連続通電時の抵抗上昇等を防ぐことができ、電気抵抗を効果的に低減した上で、連続通電による体積抵抗率の上昇を抑えることができる。
このように、上記難燃性ベルトは、優れた難燃性を有するため、画像形成装置において、高電圧、高温条件下でも、使用状態に制限を受けることなく使用することができ、高画質化を達成することができる。また、ベルトの抵抗調整が容易である上に、ベルト面内の抵抗値のバラツキが小さく、抵抗値の環境依存性・連続通電時の抵抗上昇も低減することができる。
例えば、中間転写ベルトとして用いた場合には、転写ズレや転写不良を発生することなく良好な転写性能を長期に亘って得ることができる。また、搬送ベルト、現像ベルト、定着ベルト、ベルト状感光体の基体ベルト等にも使用することができ、各々従来よりも良好な性能を得ることができる。
【0060】
上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩は、化学式1のX,Xの官能基にあるフルオロ基、スルホニル基の電子吸引性により、陰イオンとして安定化され、イオンがより高い解離度を示す。これにより、少量の添加で非常に低い電気抵抗値を得ることができる。また、この塩は、電極等に対する化学的・電気化学的安定性が高く、安全性も高い。また、使用可能温度領域が広い上に、電気抵抗の調整が容易で、ベルト面内での抵抗値のバラツキが少なく、特に、ポリエーテルセグメント中に取り込まれやすいため、環境依存性が小さく、感光体汚染を起こしにくいベルトとすることができる。さらに、入手しやすく、常温で粉体であり、混練しやすく、押出成形しても表面肌を平滑にすることができる。特に、ポリエーテルポリエステル系のポリマー等を押出成形する際の押出肌を平滑にすることができる。
【0061】
上記化学式1に記載の陰イオンにおいて、式中、X,Xは各々、C,F−,−SO−の全てを含む、炭素数が1〜8の官能基であれば良く、安定性、コスト、取り扱い性の点から、さらには、化学式3中のX−がCn1m1(2n1-m1+1)−SO−であり、X−がCn2m2(2n2-m2+1)−SO−である(n1,n2は1以上の整数、m1,m2は0以上の整数)ことが好ましい。
【0062】
上記化学式1に記載の陰イオンと対になり塩を構成する陽イオンがアルカリ金属、2A族、遷移金属、両性金属のいずれかの陽イオンであることが好ましく、中でも、アルカリ金属は、特に、イオン化エネルギーが小さいため安定な陽イオンを形成しやすいので好ましい。特に、陽イオンを構成する金属は導電度の高いリチウムであることが好ましい。その他、金属の陽イオン以外にも、前記の化学式2(化2)、化学式3(化3)で示されるような陽イオンを備えた塩とすることもできる。
【0063】
上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩の中でも、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CFSONLi)は融点が228℃と混練り及びベルト加工温度(200℃〜270℃、好ましくは200℃〜240℃)の範囲に入り、ポリエーテルセグメント中へより取り込まれやすくなるため、特に好ましい。その他、前記した塩を用いることもでき、複数種を併用しても良い。
【0064】
上記ポリエーテルブロックを有する共重合体は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して5重量部〜50重量部、さらには10重量部〜50重量部の割合で含有している。
上記範囲としているのは、5重量部より少ないと連続通電時の体積抵抗率の上昇を抑えたまま十分に低い体積抵抗率を実現するのが難しくなるためである。一方、50重量部より多いとベルトとしての主成分であるポリエステル系熱可塑性エラストマーの持つ適度な弾性や優れた耐久性といった特性を損なうことになる上に成形性が悪化しやすいためである。
【0065】
また、ポリエーテルブロックを有する共重合体の重量は、上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩の重量の1.6倍〜3333倍、さらには10倍〜3000倍であることが好ましい。これにより良好な押出肌を維持しながら、良好な電気特性を得ることができる。上記範囲としているのは、上記範囲より小さいとポリエーテルブロックを有する共重合体によるイオンの安定化や、ポリエーテルブロックを有する共重合体中への塩の分散が不十分となり、連続通電時の抵抗値上昇を抑制しにくくなるためである。一方、上記範囲より大きいと塩の濃度が低くなり、ベルトの電気抵抗値を十分に下げにくくなるためである。
【0066】
上記ポリエーテルブロックを有する共重合体は、ポリエーテル以外の他の構造により、基材ポリマーとある程度の相容性を確保することができるため、良好な物性と加工性を得ることができる。
特に、上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩と併用しているため、抵抗値の調整が容易となる上に、ベルトの電気抵抗値の面内ムラがなくなり、かつ環境依存性も低減できると共に、良好な押出肌を保ちながら効率良く抵抗値を低減することができる。
【0067】
上記ポリエーテルブロックを有する共重合体のガラス転移温度Tgは−40℃以下、さらには−50℃以下であることが好ましく低ければ低い程良い。これは、Tgが−40℃より高いと体積抵抗率の環境依存性が大きくなりやすいためである。
このように、ある程度Tgが低い領域であると、ベルト使用温度領域での弾性率変化の温度依存性が小さく、それによって体積抵抗率の環境依存性を小さくすることができる。また、一般的に本発明におけるポリエーテルブロックを有する共重合体のTgは量産化されていて入手しやすい等の条件を考慮すると−80℃以上程度である。
なお、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのガラス転移温度Tgも−40℃以下であることが好ましい。
【0068】
ポリエーテルブロックを有する共重合体は、ポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体、ポリエーテルエステルアミド共重合体からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。これらは上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩との親和性が高く、良好な電気抵抗値に調整することができると共に、基材となるポリエステル系熱可塑性エラストマーの良好な物性を保持することができる。その他、ポリエーテルブロックポリオレフィン樹脂等の樹脂型帯電防止剤を用いることもできる。また、上記共重合体には、過塩素酸ナトリウム等の塩が配合されていても良い。
【0069】
特に、ポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体が好ましく、中でもポリエチレンオキサイドブロックナイロン共重合体が好ましい。具体的には、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン11共重合体、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン6共重合体等を用いることができる。なお、複数のポリマーを併用しても構わない。
【0070】
また、ポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体にポリアミドホモポリマーをブレンドしたもの、とりわけ、ポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体中のアミドと同一構造のポリアミドホモポリマーをブレンドしたものを用いることもできる。成形時に高温で融解しているブレンド物が冷却されて相構造を形成していく際に、ポリアミドホモポリマーが先に繊維状に凝固していき、続いてそこにポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体がポリアミドホモポリマーとの相容性によって、効果的に配列され、効果的に体積抵抗率を低減することができる。
即ち、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体とナイロン12のブレンド物、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン6共重合体とナイロン6のブレンド物等が効果的に体積抵抗率を低減できるので好ましい。
【0071】
難燃性ベルト全重量に対して、上記したように、メラミンシアヌレートの含有量を15重量%〜40重量%としている。この範囲としているのは、15重量%より少ないとベルトに十分な難燃性を付与することができないという問題があるためであり、一方、40重量%より多いと成形したベルトが脆くなるという問題があるためである。尚、メラミンシアヌレートの含有量は、好ましくは20重量%〜35重量%である。
【0072】
上記メラミンシアヌレートは分解温度300℃以上であるため、この温度領域までは粉末状で存在する。このため、画像形成装置等の使用環境程度の温度であれば、ベルト表面からのブリードやブルーミングを生じることはなく、感光体を汚染することもない。
さらには、メラミンシアヌレートは窒素系の難燃剤であり、燃焼熱で熱分解し、窒素系のガスで酸素を置換し燃焼を妨げる働きをするものであるため、ハロゲンに起因する有毒ガス等の発生の心配もなく、環境への影響が小さいベルトを得ることができる。
【0073】
上記難燃性ベルトは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分としている。これにより、ベルトとしての適度な弾性及び柔軟性と、適度な硬度とを両立することができ、さらには、繰り返し曲げられても優れた耐久性を実現することができる。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、耐衝撃性、耐熱性、成形性も良好である上に、耐油性も良好であるため、トナー等により変質しにくく感光体汚染も生じにくい。さらには、着色性も良好であるため、メラミンシアヌレートの体質顔料としての作用と合わせることにより、白色のベルトや、他の色に着色したベルトを得ることができる。白色のベルトとすると、特に中間転写ベルトとして用いる場合には、トナーの付着が簡単に目視可能となるため、クリーニング性能の評価に好ましい。白色ベルトとする場合には、カーボンブラック等の配合すると黒色となる添加剤等は配合しないことが好ましい。
なお、潤滑剤等を添加することにより、さらに成形性を向上することができる。従って、厚み方向には適度な柔軟性を有する一方、長さ方向には伸びにくく、しかも、振動性にも優れた難燃性シームレスベルトを得ることができる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、全ポリマー成分の60重量%以上、さらには65重量%以上とするのが良い。
【0074】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは要求されるベルトの特性に応じて、硬度、弾性率、成形性など適当なグレードのものを使用することができ、例えば、ポリエステルポリエーテル系、ポリエステルポリエステル系等が挙げられ、複数種を混合しても良い。
ポリエーテルのエーテル結合付近やポリエステルのエステル結合付近に陽イオンが捕捉されたような形で取り込まれるため、塩が系外に染み出しにくく、良好な導電性を発現することができる。また、ポリエーテルポリエステル系では、ソフトセグメントであるこの分子鎖は、低温低湿状態と高温高湿状態との間で弾性率の変化が小さく安定しているため、抵抗値の環境依存性がより小さくなる。
【0075】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとは、芳香環を有するポリエステルからなるハードセグメントとポリエーテル及び/又はポリエステルからなる低融点ソフトセグメントからなる共重合体であることが好ましい。また、高融点ポリエステル構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が150℃以上であり、低融点ソフトセグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下の構成成分からなるポリエステル系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0076】
上記の芳香環を有する高融点ポリエステルセグメント構成成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと炭素数が1〜25のグリコール及びそのエステル形成性誘導体を用いることができる。なお、高融点ポリエステルセグメント構成成分の酸性分として、テレフタル酸が全酸成分の70モル%以上であることが好ましい。また、炭素数が1〜25のグリコールとしてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。その他の酸成分も必要に応じて用いることができるが、これらの量は全酸成分の30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは25モル%以下である。
【0077】
本発明におけるポリエーテルからなる低融点ソフトセグメントとしては、例えば、ポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール等のポリアルキレンエーテルグリコールを示すことができる。高融点化や成形性の面から、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールが好ましく、分子量800〜1500が低温特性から特に好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの全重量の15%〜75%であることが好ましい。
【0078】
本発明におけるポリエステルからなる低融点ソフトセグメントとしては、ラクトン類を用いることが好ましい。また、ラクトン類としては、カプロラクトンが最も好ましいが、その他としてエナンラクトン、カプリロラクトン等も使用することができ、これらのラクトン類も2種以上を併用することができる。芳香族ポリエステルとラクトン類との共重合割合は、用途に応じて両者の共重合割合が選定され得るが、標準的な比率としては、重量比で芳香族ポリエステル/ラクトン類が97/3〜5/95、より一般的には95/5〜30/70の範囲であることが好ましい。
【0079】
上記熱可塑性組成物には、ポリエステル系熱可塑性エラストマー以外にも、必要に応じて公知の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂等のポリマー成分を単独あるいは複数組み合わせて使用可能である。
【0080】
なお、融点が80℃以上のリン酸エステルを、全重量に対するリンの重量割合が0.1重量%以上0.4重量%以下となるように含有することもできる。メラミンシアヌレートと上記リン酸エステルを併用することにより、メラミンシアヌレートを必要以上に増量することなく難燃性をより向上させることができ、良好な強度を有すると共に、残炎時間が短いシームレスベルトを得ることができる。
【0081】
また、機械的強度を向上させるために、炭酸カルシウム、シリカ、クレー、タルク、硫酸バリウム、ケイ藻土などの充填剤を配合しても良い。さらに、ベルト表面からの添加剤等の遊離、ブリード、ブルーミングや感光体汚染性などの接触物への移行などを起こさない範囲で、かつ難燃性や導電性に悪影響を及ぼさない範囲で、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックスなどの軟化剤を配合しても良い。これによりベルトの硬度や柔軟性を適度に調整することができる。さらには、イミダゾール類、アミン類、フェノール類などの老化防止剤を配合しても良い。
【0082】
上記難燃性ベルトの体積抵抗率は、上記したように106.0Ω・cm〜1012.0Ω・cmの範囲としているが、好ましくは106.0Ω・cm〜1011.0Ω・cmとしている。これにより、中間転写、シート材搬送ベルト等の導電性シームレスベルトとして、幅広い用途に使用することができる。上記範囲としているのは、106.0Ω・cmより抵抗値が小さいと電流が流れやすくなるため、電荷の保持が困難となる等、画像形成装置の部材として機能しなくなることがあるためである。一方、1012.0Ω・cmより大きいと、転写や帯電、トナー供給等のプロセスに高電圧が必要となったり効率が低下したりすることで実用に適さなくなるという問題があるためである。
【0083】
106.0Ω・cm〜1012.0Ω・cmの範囲に体積抵抗率を調整するには、上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩を全ポリマー成分100重量部に対して0.01重量部〜3重量部、好ましくは0.05重量部〜2.7重量部の割合で含有している。
上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩を使用すると、微量の添加によりベルトの抵抗値を低下させる効果に優れるが、上記範囲より少ないと抵抗値の調整等が困難なためである。一方、上記範囲より多く含有しても電気抵抗値の低減効果がほぼ飽和状態となり、さらなる電気抵抗の低下が難しくなったり、ベルト使用時に電界がかかったり、感光体と接触したりすることで塩が染み出しを起こしたりするためである。また、ベルトの押出成形時に金型のダイリップ及びサイジング用型に粘着しやすくなり、成形が困難になるためである。
【0084】
上記難燃性ベルトは、測定環境23℃、相対湿度55%、試料厚み250μm、印加電圧1000Vで電圧を印加したときの電圧印加直後の体積抵抗率をρ(t=0hr.)、連続5時間電圧印加後の体積抵抗率をρ(t=5hr.)とすると、log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.)≦0.5の関係を満たしていることが好ましい。
上記関係を満たしていれば、連続的に電圧を印加した場合でも、体積抵抗率が上昇することがなく、電気特性に非常に優れた難燃性ベルトとすることができる。ρ(t=5hr.)とρ(t=0hr.)とは同じとなっても良く、(log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.))の値は0.5より小さければ小さい程良い。測定精度や現在の技術水準から考えると(log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.))の値の下限は0.01以上、あるいは、0.1以上、あるいは、0.3以上程度となる。
【0085】
上記難燃性ベルトは、ポリエーテルブロックを有する共重合体を主成分とし化学式1に記載の陰イオンを備えた塩が1重量%〜20重量%配合された導電性マスターバッチと、難燃剤と、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とする熱可塑性組成物とを押出機で溶融混練したものを材料とし、該材料を環状ダイスから押し出し、サイジング用型に沿わさせてベルト状に成形している。
【0086】
化学式1に記載の陰イオンを備えた塩を、ポリエーテルブロックを有する共重合体中に予め練り込み導電性マスターバッチとすることで、塩がポリエーテルブロックを有する共重合体中に存在するため、連続通電時においても塩の移動を抑制でき、抵抗上昇を低減することができると共に、温度や湿度等の環境の影響を受けにくく、電気抵抗のばらつきや電圧依存性も小さくすることができる。また、組成物中への上記塩の配合量が少量である場合、抵抗値の調整が容易になる。
上記導電性マスターバッチと難燃剤、上記熱可塑性組成物とを混練し、押出成形することで、上記塩はポリエーテルブロックを有する共重合体と共に均一に分散され、抵抗値のバラツキが少ない上に、適度な弾性と難燃性を有するシームレスベルトを容易に得ることができる。
【0087】
導電性マスターバッチ中において、化学式1に記載の陰イオンを備えた塩の配合量が1重量%より少ないと導電性マスターバッチとする効果を得にくくなる。一方、20重量%より多いと上記塩の練り込みが困難となる。混練は、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の方法により可能であるが、2軸押出機でストランドを引くことにより行うのが好ましい。また、導電性マスターバッチ中、ポリエーテルブロックを有する共重合体は全ポリマー成分の50重量%以上が好ましく、100重量%としても良い。導電性マスターバッチ中には、その他、複数種のポリエーテルブロックを有する共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリマーを配合しても良い。
【0088】
上記難燃剤と上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とする熱可塑性組成物とは予め混練した難燃性マスターバッチとして上記押出機に投入されると共に、上記材料は、上記環状ダイスから鉛直方向に押し出されることが好ましい。
押出機で溶融された熱可塑性組成物を環状ダイスに導き、ダイリップより押し出して、溶融状態のままダイリップ下流に設けたサイジング用型に接触冷却硬化させてベルト形状に成形することができる。サイジングされた連続円筒状成形品が、さらに下流に設けられたカット装置でカットされ、所定の幅のベルトを得ることができる。押出機での溶融温度は200℃〜270℃、好ましくは200℃〜250℃、さらに好ましくは220℃〜240℃がよい。具体的には、導電性マスターバッチと難燃性マスターバッチとポリエステル系熱可塑性エラストマーとをドライブレンドし、2軸押出機で混練してベルト用材料とする。その後、ストランドを引き、ペレット化し、乾燥する。このペレットを単軸押出機のホッパーに投入して、押出成形する。このように押出成形により成形することで、例えば、φ168mm、肉厚250μm、幅400mmのような大径薄肉のベルトでも容易に成形することができる。
【0089】
ダイリップから出てくる溶融物は鉛直方向に押し出されることで重力による影響を受けず、残留ひずみも低減され、円筒状態を維持したままサイジング用型へ導かれ、寸法精度を高めることができる。特に、押出方向が鉛直下向きである方が好ましい。
【0090】
メラミンシアヌレート等の難燃剤は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリマー中に予め練り込み難燃性マスターバッチとすることで、難燃剤の分散性が向上し、ベルト成形時に発生する可能性がある難燃剤の凝集によるブツをなくすことができる。難燃性マスターバッチを使わない方法でも、混練り効果を上げればブツの発生は防止できるが、マスターバッチ方式の方が容易であり好ましい。難燃性マスターバッチ中、難燃剤は30重量%〜70重量%、さらには40重量%〜60重量%配合されているのが良い。
【発明の効果】
【0091】
以上の説明より明らかなように、本発明の導電性部材では、その導電層は連続相と1相以上の非連続相とからなる相構造を有し、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を非連続相に偏在させ、かつ、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させた非連続相を構成するポリマーは、連続相を構成するポリマーよりも、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性を高くしている。このため、非連続相中での塩の自由度を高め低い電気抵抗を維持しながら、電界を加えたときの塩の系外への流出を抑制できるため、塩の組成物外への移行や連続動電時の抵抗上昇等を防ぐことができる。更には、塩が非連続相中に偏在するため温度や湿度等の環境の影響も受けにくく、かつ、イオン導電によるため、電気抵抗のばらつきや電圧依存性も小さい。
【0092】
また、電界をかけ続けても塩が移行して表面に出たり、抵抗値が上昇することが抑制されているため、導電性に優れた塩の使用が可能となり、導電性に優れた塩の少量の配合でも優れた導電性を得ることができる。よって、抵抗値の面内バラツキや環境依存性が小さい上に連続通電時の抵抗上昇も小さくできる。かつ、ブリード、ブルームや感光体汚染・移行汚染等の問題点を生じることもない上に、圧縮永久ひずみや硬度等の他の物性に及ぼす影響も極力低減することができる。
【0093】
よって、本発明のローラあるいはベルトからなる導電性部材を備えた複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置は、主としてイオン導電により低抵抗化されているにもかかわらず、連続通電時の抵抗上昇が低減し、かつ、電気抵抗値の環境依存性も小さく、ローラやベルトの面内バラツキも小さいため、均一な画像が得られるだけでなく、抵抗値変化をカバーするためにより大きな電源にする必要がなく、画像形成装置全体としての消費電力も小さくできる。また、印加電圧を変えてコントロールする範囲がより小さくでき、装置をより簡易な構造とすることができる。さらには、制御系の簡略化が可能となり、開発時の環境試験を軽減することができるため、開発に要する時間やコストを抑制することができる。また、周囲の部材への負担が小さい上に長期に渡って安定した画像を得ることができる。
【0094】
また、難燃性ベルトでは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とし、難燃剤であるメラミンシアヌレート、および上記陰イオンを備えた塩、ポリエーテルブロックを有する共重合体を上記各規定重量にて含有させて成形しているため、ベルトの体積抵抗率に影響を及ぼすことなくベルトに優れた難燃性を付与することができる。かつ、押出肌が平滑で感光体汚染がなく、かつ、適度な弾性により駆動性、耐久性に優れたベルトを得ることができる。特に、連続通電時の抵抗上昇が小さいため、画像形成装置の中間転写ベルト等として使用したときに、転写電圧を変えてコントロールする範囲がより小さくでき、良好な画像を得ることができると共に、画像形成装置の機構をより簡易なものとすることができる。
また、メラミンシアヌレートは窒素系の難燃剤であるため、ハロゲンに起因する有毒ガス等の発生の心配もなく、環境への影響が小さいベルトを得ることができる。さらに、メラミンシアヌレートは体質顔料としても作用するため、ベルトの着色を自由にすることができる。特に、添加剤等を調整することにより、白色のベルトを得ることができるため、中間転写ベルトとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の画像形成装置用の導電性部材からなる第1実施形態の導電性ローラ10を示す。該導電性ローラ10は、導電性を有する円柱状の金属製の芯金12と、芯金12の表面側に上記導電層11を備え、円筒状の導電層11の中空部に芯金12を圧入して取り付けている。
【0096】
上記導電層11を形成するイオン導電性ポリマー組成物の構造を図2の模式図に示す。上記イオン導電性ポリマーは、連続相1と、第1非連続相2、第2非連続相3とからなり、3つの相は海−島構造を呈している。第1非連続相2および第2非連続相3は連続相1中にほぼ均一に存在し、かつ、第1非連続層2は第2非連続相3を取り囲むように存在している。尚、第2非連続相は必ずしも存在しなくとも構わない。
【0097】
図3は、上記導電性ポリマー組成物を原子間力顕微鏡(AFM)式の走査型プローブ顕微鏡(SPM)において位相モードで観察したモルフォロジー(1辺10μm)を示す。図3において、連続相1は最も薄い色を呈し、第1非連続相2は最も濃い色を呈し、第2非連続相3は中程度の色濃度を呈している。図中で色の濃い部分は弾性率が高く、色の薄い部分は弾性率が低くなっている。
また、図3で示すように、体積分率は、連続相1>第2非連続相3>第1非連続相2となっている。
【0098】
前記図2および図3に示すような海−島構造を呈するように、各相のポリマーの種類と量を規定するとともに、添加する塩の量および添加方法を規定している。
上記イオン導電性ポリマー組成物には、全ポリマー100重量部に対して0.01〜20重量部の陽イオンと陰イオンとに解離可能な塩を添加しており、上記第1非連続相2に上記塩を優先的に分配して偏在させ、第2非連続相3及び連続相1には殆ど塩を添加しない。
【0099】
上記第1非連続相2のポリマーは、連続相1を構成するポリマーよりも、解離可能な塩との親和性が高く、かつ、連続相1を構成するポリマーは、解離可能な塩を添加しない第2非連続相3を構成するポリマーよりも解離可能な塩との親和性が高いものとしている。即ち、上記各相のポリマーの塩との親和性は第1非連続相2>連続相1>第2非連続相3としている。
【0100】
具体的には、後述の実施例2に示す様に、例えば第1非連続相2を構成するポリマーとしてEO−PO−AGE共重合体(EO:PO:AGE=90:4:6(モル比))を10重量部用い、連続相1を構成するポリマーとして低ニトリルNBRを63重量部用い、解離可能な塩を殆ど添加しない第2非連続相3を構成するポリマーとして低極性の耐オゾン性ゴムであるEPDMを27重量部用いている。即ち、解離可能な塩との親和性は、EO−PO−AGE共重合体>低ニトリルNBR>EPDMである。
【0101】
第1非連続相2のEO−PO−AGE共重合体の体積抵抗率をρV1、連続相1の低ニトリルNBRの体積抵抗率をρV2、第2非連続相3のEPDMの体積抵抗率をρV3とすると、log10ρV1は7.9、log10ρV2は10.2、log10ρV3は14.8であり、(log10ρV2−log10ρV1)の値を2.3としている。
上記第1、第2非連続相2、3を構成するポリマーと連続相1を構成するポリマーとの重量比は37:63としている。
【0102】
上記導電性ポリマーに添加する陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1.1重量部用いている。この塩は、PC/DME系混合溶媒(体積分率1/2)中,25℃で0.1mol/リットルの塩濃度で測定した導電率が4.0mS/cmである。また、分子量1万以下の低分子量ポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を介さずに配合している。
なお、本実施形態では陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いているが、その他カリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ヘキシルトリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウム−トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン等を用いてもよい。
【0103】
上記導電性ポリマー組成物は、充填剤としてカーボンブラック9重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸を1重量部、加硫剤として粉末硫黄1.5重量部、2種の加硫促進剤は各々1.5重量部、0.5重量部配合した加硫ゴム組成物からなる。
【0104】
図1に記載される上記導電性ポリマー組成物から形成した導電層11を有する導電性ローラ10は、下の方法により製造している。
まず、解離可能な塩とEO−PO−AGE共重合体とを混練機を用いて60℃、3分混練し、ここで得られた混練物に、低ニトリルNBR、EPDM、その他各種配合剤を配合し、再度、60℃、4分オープンロール、密閉式混練機等で混練し導電性ポリマー組成物を作製する。
なお、解離可能な塩とEO−PO−AGE共重合体との混合は混練機を用いずに、ヘンシェルミキサーやタンブラー等の混合機を用いて均一に混合するだけでも良い。
【0105】
この導電性ポリマー組成物をφ60mmの単軸押出機に投入し60℃で中空チューブ状に押し出して予備成形し、この生ゴムチューブを所定寸法に裁断して予備成形体を得ている。この予備成形体を加圧水蒸気式加硫缶に投入し、発泡させる場合は化学発泡剤がガス化して発泡すると共に、ゴム成分が架橋する温度(160℃で15〜70分)で加硫して加硫ゴムチューブを得ている。
加硫条件はキュラストメーター等により測定し、95%トルク上昇時間t95[分]程度を目安に適宜調整している。
なお、感光体汚染と圧縮永久歪みを低減させるため、なるべく充分な加硫量を得られるように条件を設定した方が望ましい。
【0106】
芯金12を用意し、その外周面にホットメルト接着剤を塗布した後、先に得られた加硫ゴムチューブに芯金を挿入し、加熱し接着した後、表面を研磨して導電層11を目標寸法に仕上げた。導電性ローラ10の導電層11の寸法は、内径6mm、外径14mm、長さ218mmとしている。
【0107】
上記導電層11は、JIS K 6262に記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久歪み試験法において、測定温度70℃、測定時間24時間で測定した圧縮永久歪みの値が17%であり、印加電圧100Vのもとで測定したJIS K 6911に記載の体積抵抗率が109.0[Ω・cm]である。
【0108】
また、導電性ローラ10は、印加電圧1000Vでの電気抵抗値を107.7Ωとし、23℃、相対湿度55%の環境下で、1000Vの定電圧を96時間連続印加した場合の抵抗値R[Ω]を測定し、抵抗値の上昇量Δlog10R=log10R(t=96hr.)−log10R(t=0hr.)の値を0.10としている。また、10℃相対湿度15%、32.5℃相対湿度90%の条件下での抵抗値R[Ω]を測定し、抵抗値の環境依存性Δlog10R=log10R(10℃相対湿度15%)−log10R(32.5℃相対湿度90%)の値を0.9としている。
【0109】
上記方法で製造された導電性ローラ10の導電層11は、上記連続相1、第1非連続相2、第2非連続相3を備え、第1非連続相2で第2非連続相3を取り囲むように存在させている。このように、モルフォルジーを制御すると共に、少量で抵抗値を下げ得る高性能の塩をEO−PO−AGE共重合体を主成分とする第1非連続相2に偏在させているため、電界を加えた時に起こる塩の製品外への移行や連続通電時の抵抗上昇等を防ぎながら、実用に必要な低電気抵抗値を得ることが出来る。
【0110】
よって、低電気抵抗を維持しながら、電気抵抗の環境による変化や連続使用による変化を小さくすると共に、ローラの部位による電気抵抗のばらつきを低減し、安定して良好な画像を形成でき、環境に優しい導電性ローラを得ることができる。よって、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等に好適である。特に、高画質を要求されるカラー複写機あるいはカラープリンタ用のこれらの導電性ローラとして適している。
なお、発泡剤を配合し、発泡倍率が100%以上500%以下であり、JIS K6253に記載のタイプEデュロメータで測定した硬度が60度以下の発泡層を有する発泡ローラとすることもできる。
【0111】
かつ、上記導電層11では、塩を殆ど分配していない第2非連続相3を設け、該第2非連続相3を、塩を偏在させた第1非連続相2で取り囲むように存在させているため、導電性をあまり大きく損なうことなく、塩を偏在させた第1非連続相1の体積分率を抑えることができる。これにより、塩やそれを積極的に分配する第1非連続相1のポリマーの添加量を少なくしても、全体として低い体積抵抗率、ローラの製品抵抗値を得ることができる。かつ、上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として用いるフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩等は高価であることより、これらの塩の添加量を少なくすることで、コスト上昇を抑えることができる。
【0112】
上記導電性ローラの実施例、比較例を作製して物性を測定した。
実施例1〜11、比較例1〜10については、表1〜表4に記載の各配合材料を上記実施形態と同様の方法により混練、押出、加硫、成形加工、研磨して導電性ローラを作製した。ヒューレットパッカード社製Laser Jet4050型レーザービームプリンタ搭載の転写ローラ用の導電性ローラとした。
【0113】
これと並行して、混練機からリボン取りしたゴムをローラヘッド押出機により押し出してシート状に成形し、それを160℃で最適時間加硫缶にて加硫したあと、厚さが約2mmとなるようにスライスし、体積抵抗率(体積固有抵抗値)評価用の加硫ゴムスラブシートを得た。これらのローラやゴムスラブシートを用いて行った評価結果及び後述するローラとしての各種評価を表1〜4に示す。
また、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)の示差走査熱量計DSC2910を用いて、−100℃から100℃まで、10℃/minで昇温しながら測定することにより求めた、各実施例・比較例で使用しているポリマーのガラス転移温度(Tg〔℃〕)もあわせて表中に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
(実施例1〜6)
非連続相を構成するポリマーとして実施例1〜4、実施例6はEO−PO−AGE共重合体を用い、実施例5はエピクロルヒドリンゴムを用い、これに陽イオンと陰イオンに解離可能な塩である塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドあるいは塩2のリチウム−トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンを偏在させた。連続相として低ニトリルNBRを用い、実施例1〜4は、他の非連続相としてEPDMを用いた。実施例2以外は発泡ローラとした。尚、塩2のPC/DME系混合溶媒(体積分率1/2)中25℃で0.1mol/リットルの塩濃度で測定した導電率は3.6mS/cmである。
【0119】
(実施例7)
エピクロルヒドリンゴム50phr分とNBR、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、亜鉛華、ステアリン酸を混入し、120℃に予熱した密閉式混練機で混練した。混練しながら予め作製したエピクロルヒドリンゴム(10phr分)のチオウレア架橋剤(加硫剤2)マスターバッチ、及びチオウレア架橋剤用の加硫促進剤(加硫促進剤3)を入れ動的架橋した。練りトルクのチャートを見ながら架橋が進み、トルクピーク付近で混練を一旦完了した。続いて50℃まで冷却し、混練機により、硫黄、加硫促進剤1、加硫促進剤2を混入し、動的架橋組成物を得た。これを、実施例1〜6と同様に、チューブ状に押し出して予備成形し、そのチューブを裁断したものを160℃で10〜70分加硫して導電層を得た。
【0120】
(実施例8〜11)
実施例8〜11は、非連続相を構成するポリマーとして、EO−PO−AGE共重合体を用い、これに陽イオンと陰イオンに解離可能な塩である塩3〜塩6をそれぞれ偏在させた。塩3はカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、塩4はヘキシルトリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、塩5は1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略して、EMI−TFSI)、塩6は1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−テトラフルオロボレート(略して、EMI−BF)である。
その他については、実施例2と同様とし、また、ソリッドのローラとした。
塩4は陽イオンが化学式2で示されるトリメチルタイプ(R1〜R4の内の3つがメチル基)の第四級アンモニウム塩、塩5は化学式3で示されるイミダゾリウム塩でR5またはR6の一方がメチル基で他方がエチル基である。
【0121】
(比較例1〜6)
比較例1は陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を用いなかった。比較例2、3は低ニトリルNBRからなる連続相とEPDMからなる非連続相の2相構造とし、連続相に陽イオンと陰イオンに解離可能な塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(塩1)を偏在させた。比較例4、5は1種のポリマーから構成される1相のみの構造とし、その1相に陽イオンと陰イオンに解離可能な塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(塩1)を配合した。比較例6は、実施例1〜4、6と同様にして非連続相を構成するポリマーとしてEO−PO−AGE共重合体を用い、これに陽イオンと陰イオンに解離可能な塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(塩1)を偏在させたが、連続相には体積抵抗率が高く塩との親和性が小さいEPDMを用いた。比較例1、2は発泡ローラとした。
【0122】
(比較例7〜10)
比較例7〜10は、低ニトリルNBRからなる連続相とEPDMからなる非連続相の2相構造とし、連続相に陽イオンと陰イオンに解離可能な塩である塩3のカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、塩4のヘキシルトリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、塩5のEMI−TFSI、塩6のEMI−BF4をそれぞれ偏在させた。
【0123】
上記塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、特公平1−38781号、特開平9−173856号、特許3117369号、特開平11−209338号、特開2000−86617号、特開2001−139540号、特開2001−288193号等の従来公知の方法により合成したものを用いた。本発明の実施形態では、具体的には、3M Fluorad HQ−115(住友スリーエム株式会社製)を用いた。
塩2のリチウム−トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンは、米国特許第5554664号、特開2000−219692号、特開2000−226392号等の従来公知の方法により合成したものを用いた。具体的には、以下の様な方法で合成した。フラスコにメチルリチウム/エーテル溶液を入れて−55℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホニルクロライドを激しく攪拌しながら滴下した後、徐々に昇温して沸騰還流下で長時間反応させた。その後室温まで放令した後、冷却しながら塩酸を加えた。次いで、晶析してくる塩化リチウムと水酸化リチウムをろ別して得たろ液をエーテルで抽出した後、飽和食塩水でさらに洗浄した。その有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した後、孔径0.2μmのメンブランフィルターにより減圧ろ過し、ろ液から減圧下で溶媒を除去後、トルエンを加えて共沸脱水を行うことにより得た結晶を乾燥した。
塩3のカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、上記塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと同様にして、上記公報に記載されるような従来公知の方法により合成したものを用いた。具体的には、森田化学工業株式会社製のものでリチウム電池およびキャパシター用フッ素化合物の1つとして販売されているものを用いた。以下、塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよび塩3のカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得る方法の一例を記載する。まず、4つ口フラスコにアセトニトリル、フッ化カリウム、トリフルオロメタンスルホニルアミド(CFSONH)を加え、40℃の湯浴に反応容器を漬け、十分に攪拌しながらトリフルオロメタンスルホニルフロリド(CFSOF)を導入し、反応液をろ過して、ろ液を減圧下で濃縮して、塩3のカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得た。このカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを濃硫酸を入れたフラスコに加えて加熱融解後、減圧下で蒸留することにより得られるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸(HN(SOCF)を純水に溶解し、炭酸リチウムと反応させてろ過し、ろ液を濃縮することにより、塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを得た。該方法は塩1の安価で効率の良い製造方法として、特開2001−288193号に開示されている。該方法で製造することにより、塩3のカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの製造工程における中間物質として生成できるので、コストが安くなるという利点がある。
塩4のヘキシルトリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、光栄化学工業株式会社製のものを用いた。
塩5の1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−TFSI)はステラケミファ株式会社製のもの、塩6の1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−テトラフルオロボレート(EMI−BF)も、ステラケミファ株式会社製のものを用いた。
【0124】
EO−PO−AGE共重合体、エピクロルヒドリンゴムには、解離可能な塩と予め混練したものを用いた。カーボンブラックとEPDMの併用系では、カーボンブラックをEPDMに予め練りこんでマスターバッチ化したものを用いた。実施例6ではカーボンブラックをNBRに予め練りこんでマスターバッチ化したものを用いた。加硫促進剤1はジベンゾチアジルジスルフィド、加硫促進剤2はテトラメチルチウラムモノスルフィドとし、発泡剤1は4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)とした。
【0125】
陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させた非連続相を構成するポリマーの体積抵抗率ρV1、連続相を構成するポリマーの体積抵抗率ρV2、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させない非連続相を構成するポリマーの体積抵抗率ρV3の測定は塩を入れずに行った。
例えば、実施例1あるいは実施例2では、ZSN8030を100重量部、シースト3を9重量部、銀嶺Rを5重量部、ステアリン酸4931を1重量部、粉末硫黄を1.5重量部、ノクセラーDMを1.5重量部、ノクセラーTSを0.5重量部配合した組成物の体積抵抗率を測定した。測定時の印加電圧は100V、測定環境は23℃相対湿度55%とした。
【0126】
(体積抵抗率の測定)
上記の様に作製した測定用シートに対して、アドバンテストコーポレーション社製の超高抵抗微小電流計R−8340Aを用いて、23℃相対湿度55%の恒温恒湿条件下で測定した。測定方法は、JIS K6911に記載の体積抵抗率(体積固有抵抗値)の測定方法に従い、また測定時の印加電圧は100Vとした。表中にその常用対数値を表示する。また、本発明の第2実施形態である後述の導電性ベルトの実施例12〜17、比較例11〜16については、得られた導電性ベルトをそのまま用いて、ベルトの周方向4点×長手方向5点の計20点で上記と同様に測定し、log10ρ[Ω・cm]の平均値を表中に記載した。
【0127】
(ローラ抵抗値)
温度23℃、相対湿度55%雰囲気下で、図4に示すように、芯金42を通した導電層41をφ30のアルミドラム43上に当接搭載し、電源44の+側に接続した内部抵抗r(100Ω〜10kΩ)の導線の先端をアルミドラム43の一端面に接続すると共に電源44の−側に接続した導線の先端を芯金42の一端面に接続して通電を行った。芯金42の両端部に500gずつの荷重Fをかけ、芯金42とアルミドラム43間に1000Vの電圧をかけながらアルミドラム43を回転させることで間接的に導電性ローラ40を回転させた。このとき周方向に36回抵抗測定を行い、その平均値を求めた。内部抵抗の値は、ローラの抵抗値のレベルにあわせて、測定値の有効数字が極力大きくなるように調節した。この図4の装置で、印加電圧をEとすると、ローラ抵抗値RはR=r×E/V−rとなるが、今回−rの項は微小とみなし、R=r×E/Vとし、内部抵抗rにかかる検出電圧Vよりローラ抵抗値Rを算出した。表中には、そのローラ抵抗値の平均値の常用対数値を用いて示している。
【0128】
(ローラ抵抗値の環境依存性の測定)
図4に示す装置を各測定環境に置き、印加電圧1000Vのもとで、10℃相対湿度15%(LL条件)あるいは32.5℃相対湿度90%(HH条件)の条件下でローラの電気抵抗値R(Ω)を測定し、Δlog10R=log10R(10℃相対湿度15%)−log10R(32.5℃相対湿度90%)の式に従い、環境依存性を算出した。なお、表中には、その常用対数値を用いて示している。この値が1.7を越えると好ましくない。
【0129】
(ローラ抵抗値の周ムラ)
図4に示す装置を用い、温度23℃、相対湿度55%雰囲気下で、芯金の両端に500gずつの荷重Fをかけ、アルミドラムを回転数30rpmで回転させることで導電性ローラを回転させた状態で、1000Vの印加電圧をかけたとき、1周内の周むら((周方向の電気抵抗の最大値/周方向の電気抵抗の最小値)の比率)を求めた。周むらは1.0〜1.3、より好ましくは、1.0〜1.2、さらに好ましくは、1.0〜1.15であるのが良い。
【0130】
(連続通電時の抵抗上昇)
〔実施例1〜11〕、〔比較例1〜10〕に関して。
23℃、相対湿度55%の環境下で、ローラ抵抗値[Ω]の測定時と同様の状態で、ローラに1000Vの定電圧を96時間連続印加した。このときの、電圧印加直後のローラ抵抗値R(t=0hr.)と、96時間印加後のローラ抵抗値R(t=96hr.)の値を上記と同様にして測定し、これらの値を用いて連続通電時の抵抗上昇量:Δlog10
R(t=96−0hr.)〔Ω〕= log10 R(t=96hr.)−log10 R(t=0hr.)を計算した。数値は表1〜4中に示す。尚、アルミドラムの回転数が30rpm,径が30mmφのため、回転時の線速度は94mm/分となる。
【0131】
(圧縮永久ひずみ)
上記で得られた導電性ローラを10mm幅で端面に平行にカットした試験片を用いて、JIS K6262に記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法に従い、測定温度70℃、測定時間22〜24時間、圧縮率25%で測定した。この圧縮永久ひずみの値が30%を越える場合は、ローラになったときの寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さなくなる可能性が高い。
【0132】
(感光体汚染試験)
実施例1〜実施例11、比較例1〜比較例10においては、以下の方法で試験した。
ヒューレットパッカード社製のLaser Jet4050型レーザービームプリンタのカートリッジ(カートリッジタイプ C4127X)にセットされている感光体に、実施例・比較例の加硫ゴムスラブシートを押しつけた状態で、32.5℃,相対湿度90%の条件下で2週間保管する。その後、感光体から加硫ゴムスラブシートを除去し、当該感光体を用いて上記プリンターにてハーフトーンの印刷を行い、印刷物に汚れが出るかどうかを次の基準で調査した。
○:印刷物を目で見る限り汚染なし
△:軽度の汚染(5枚以内の刷り込みにより、目で見て判らない程度にまでとれる使用上問題ない汚染)
×:重度の汚染(5枚以上刷り込んでも、印刷物を目で見て異常が判る汚染)
尚、後述する本発明の第2実施形態である導電性ベルトに関する実施例12〜17、比較例11〜16については、得られた導電性ベルトの切片と、富士ゼロックス株式会社製のレーザービームプリンタDocuPrint 180及び、それのカートリッジ(商品コード CT350035)にセットされている感光体を用い、上記と同様にして評価した。但し、保管条件は、45℃,相対湿度80%とした。
【0133】
(硬度の測定)
導電性ローラについて、JIS K6253に記載のタイプEデュロメータを用いて500gの荷重をかけたもとでの硬度を測定した(デュロメータE硬度)。但し、ソリッドローラについては、荷重を1000gとした。
【0134】
表1、2に示すように、実施例1〜11の導電性ローラは、所要の1相の第1非連続相に解離可能な塩を偏在させているため、いずれも電気特性に優れると共に移行汚染等の問題も生じなかった。特に、電気抵抗の環境依存性が小さい上に、連続通電時の抵抗上昇も少なかった。また、発泡ローラとしても通電時の抵抗上昇が小さく、良好であった。
特に、実施例8のように、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩としてカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いた場合は、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドよりも少ない工程で得られるため、コストの低減を図ることができると共に、カリウム陽イオンはリチウム陽イオンよりやや重いことから連続通電時の抵抗上昇をより大きく低減することができた。
実施例9のように、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として第4級アンモニウム塩を用いた場合は、陽イオンを重くしながら充分な導電性を得ることができるため、上記と同様に連続通電時の抵抗上昇を低減することができた。
実施例10のように、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩としてEMI−TFSIを用いた場合は、連続通電時の抵抗上昇を低減すると共に抵抗値の環境依存性も低減することができ、非常に優れていた。
実施例11のように、EMI−BFを用いた場合にも、比較的良好な結果が得られた。
【0135】
一方、表3、4に示すように、比較例1は解離可能な塩を配合しなかったため体積固有抵抗値、及び、ローラ抵抗値が上記記載の転写ローラ用としてはやや高くなってしまった。また、実施例1〜11と比較すると導電性ローラとしては抵抗値の環境依存性もやや大きくなってしまっている。
比較例2、3、7〜10は連続相に解離可能な塩が偏在されたため連続通電時の抵抗上昇が大きく不適であった。
比較例4、5は1相の系で解離可能な塩を用いたため連続通電時の抵抗上昇が大きく不適であった。
比較例6は連続相にほぼ絶縁であるEPDMを用いたため、体積固有抵抗値およびローラ抵抗値が高かった。また、EPDMとEO−PO−AGE共重合体との相容性が悪いため、周むらも非常に大きくなっている。
【0136】
また、上述した図3は、実施例2を原子間力顕微鏡(AFM)式の走査型プローブ顕微鏡(SPM)において位相モードで観察したモルフォロジーであった。また、比較例3のモルフォロジー(1辺10μm)を図5に示す。比較例3は1つの連続相と1つの非連続相からなり、解離可能な塩は連続相に偏在させたものである。
【0137】
さらに、図6は、実施例1と比較例2の連続通電時の抵抗変化を示している。横軸を通電時間、縦軸をローラ抵抗値とした。実施例1と比較例2では初期状態でのローラ抵抗値はほぼ同等であるが、図6に示すように、連続通電により比較例2は抵抗が著しく上昇するのに対して、実施例1はごくわずかに上昇するのみであった。
【0138】
図7及び図8は第2実施形態を示し、本発明の導電性ポリマー組成物を用いて形成される導電性ベルト13を転写ベルトとして用いている。
上記導電性ベルト13は、2個のプーリー14によって張架状態とされ、回転移動する導電性ベルト13の上側の直線状部分15に紙等のシート材16を担持して搬送し、また感光体上に作られたトナー像をシート材16に転写するものである。
【0139】
上記導電性ベルト13は、以下の形態のみには限定されないが、シームレスなベルト状の1層の導電性ポリマー組成物から形成した導電層21のみからなる。該導電層21は、図8に示すように、1相の連続相1’と、1相の第1非連続相2’とからなり、連続相1’と第1非連続相2’とは海−島構造を呈している。
第1非連続相2’にのみ陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させ、該第1非連続相2’を構成するポリマーは、連続相1’を構成するポリマーよりも、解離可能な塩との親和性が高いものとしている。
【0140】
具体的には、解離可能な塩を偏在させた第1非連続相2’を構成するポリマーとしてポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体からなる樹脂型帯電防止剤30重量部用い、連続相1’を構成するポリマーとしてポリエーテルからなるソフトセグメントとポリエステルからなるハードセグメントから構成されるポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部用いている。
【0141】
第1非連続相を構成する樹脂型帯電防止剤の体積抵抗率をρV1、連続相を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの体積抵抗率をρV2とするとlog10ρV1は9.0、log10ρV2は13.4であり、(log10ρV2−log10ρV1)の値を4.4としている。第1非連続相2’を構成するポリマーと連続相1’を構成するポリマーとの重量比は23:77としている。
【0142】
陽イオンと陰イオンに解離可能な塩としては、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1.5重量部用いている。この塩は、PC/DME系混合溶媒(体積分率1/2)中、25℃で0.1mol/リットルの塩濃度で測定した導電率が4.0mS/cmであり、分子量1万以下の低分子量ポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を介さずに配合している。
【0143】
導電性ベルト13は以下の方法により製造している。
解離可能な塩と樹脂型帯電防止剤とをタンブラーを用いてドライブレンドする。該ドライブレンド物をすみやかに2軸押出機に送り込み、170〜210℃で2分間混練した後、冷却してペレット化する。ここで得られた混練物のペレットに、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのペレットを上記と同様にしてドライブレンドし、再度、2軸押出機を用いて210〜270℃で2分間混練し、冷却して導電性ポリマー組成物のペレットを作製する。この導電性ポリマー組成物のペレットを押出成形機によりベルト状に成形している。
【0144】
導電性ベルト13は、印加電圧100Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積抵抗率が109.6[Ω・cm]である。
【0145】
また、導電性ベルト13は、23℃、相対湿度55%の環境下で、厚みが0.25mmのサンプルに対し1000Vの定電圧を5時間連続印加した場合の体積抵抗率ρ[Ω・cm]を測定し、体積抵抗率の上昇量Δlog10ρ=log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.)の値を0.36としている。また、10℃相対湿度15%、32.5℃相対湿度90%の条件下での体積抵抗率ρ[Ω・cm]を測定し、体積抵抗率の環境依存性Δlog10ρ=log10ρ(10℃相対湿度15%)−log10ρ(32.5℃相対湿度90%)の値を1.4としている。
【0146】
上記導電性ベルト13は、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を第1非連続相2’に偏在させた導電層21を備え、かつ、この添加する塩として少量で抵抗値を低下できる塩を用い、さらには、各相に用いるポリマーを適切に選択しているため電界を加えたときに起こる塩の系外への移行や連続通電時の抵抗上昇等を防ぎながら、かつ、実用に必要な低電気抵抗値を得ることができる。また、厚み方向には適度な柔軟性を有する一方、長さ方向には伸びにくい。かつ、後述する実施例12〜17の様に非塩素・非臭素系の組成物とした場合には、環境にも良い、実用性に非常に優れた導電性シームレスベルトとなる。
【0147】
上記第2実施形態のベルトは転写ベルトであるが、その他、例えば、画像形成装置に用いられる中間転写ベルト、定着ベルト、現像ベルト、搬送ベルト等としても用いることができる。特に、白色のベルトとすると、トナーの付着が簡単に目視可能となるため、クリーニング性能の評価に適し、中間転写ベルトとして好適に用いることができる。
【0148】
上記導電性ベルトの実施例12〜17、比較例11〜16を作製して物性を測定した。
表5〜表7に記載の各配合材料を上述した方法によりタンブラー、2軸押出機を用いて配合、混練した後に、樹脂用の押出成形機により押出して、内径168mm、平均厚み0.25mm、幅350mmの転写ベルト用の導電性ベルトを作製した。評価結果及び上記したベルトとしての各種評価を表5〜7に示す。また、前記表1〜表4中の値と同様にして測定して求めた各ポリマーのTg〔℃〕についてもあわせて表中に示す。
【0149】
【表5】

【0150】
【表6】

【0151】
【表7】

【0152】
(実施例12〜17)
非連続相を構成するポリマーとして本発明で用いる様な陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性が非常に高いポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体や、ポリエーテルエステルアミド共重合体からなる樹脂型帯電防止剤を用い、これに陽イオンと陰イオンに解離可能な塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等を偏在させた。連続相としてポリエーテルからなるソフトセグメントとポリエステルからなるハードセグメントから構成されるポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いた。リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の塩の濃度がいずれも5wt%となるような上記の樹脂型帯電防止剤とのマスターバッチを作製し、それを用いた。尚、比較例12のデータ中のρV2の値や組成物の体積固有抵抗値が、それなりに低い値を示していることから、これら実施例で用いた熱可塑性エラストマー(ペルプレン)は、本発明で用いる塩とはそれなりの親和性を有することがわかる。
【0153】
(比較例11〜16)
比較例11は、塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをアジピン酸ジブトキシエトキシエチルに20wt%溶解したものを、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(ポリエーテル−ポリエステルブロック共重合体ペルプレンP90BD)に配合した。このとき、このアジピン酸ジブトキシエトキシエチルに塩1が20wt%溶解したアジピン酸エステル系イオン導電付与剤を2.5重量部用い、これによって塩1の量を0.5重量部とした。
比較例12は塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを低分子量のポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を用いずにポリエステル系熱可塑性エラストマー1相中に直接分散させて用いた。
比較例13〜16は、比較例12と同様にして、それぞれ上記の塩3〜6を低分子量のポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を用いずにポリエステル系熱可塑性エラストマー1相中に直接分散させて用いた。
【0154】
樹脂型帯電防止剤1は、ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体を主成分とする。樹脂型帯電防止剤2は、ポリエーテルエステルアミド共重合体を主成分として含んでいる。
【0155】
(体積固有抵抗値環境依存性)
導電性ベルトの実施例・比較例について、10℃相対湿度15%(LL環境)と、32.5℃相対湿度90%(HH環境)の環境下においても、上記と同様にして、100V印加時の導電性ベルトの体積抵抗率を測定した。
そして、体積抵抗率の環境依存性:Δlog10ρ(LL-HH)[Ω.cm]= log10ρ(10℃,15%rh.)−log10ρ(32.5℃,90%rh.)
の式に従い、環境依存性の数値を計算し、その値を表5〜7に記載する。この値が1.7を越えると好ましくない。
【0156】
体積固有抵抗値、感光体汚染試験については、上記の導電性ローラの測定方法のところで述べた方法にて測定した。
【0157】
(連続通電時の抵抗上昇)
〔実施例12〜17〕、〔比較例11〜16〕に関して。
23℃、相対湿度55%の環境下で、体積固有抵抗値の測定時と同様の状態で、厚み0.25mmの導電性ベルト内のある1点において、アドバンテストコーポレーション社製のデジタル超高抵抗微小電流計R−8240Aを用いて、1000Vの定電圧を5時間連続印加した。このときの、電圧印加直後のベルトの体積固有抵抗値ρ(t=0hr.)と、5時間印加後のベルトの体積固有抵抗値ρ(t=5hr.)の値を、上記と同様にして測定し、これらの値を用いて連続通電時の抵抗上昇量:Δlog10ρ(t=5−0hr.)〔Ω・cm〕
= log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.)を計算した。数値は表5〜7中に示す。
【0158】
(面内むら)
導電性ベルトの面内むらの測定は、上記で説明した導電性ベルトの体積抵抗率(体積固有抵抗値)の測定において、1本のベルト内で得られた20点の体積固有抵抗値について、その最大値を最小値で除した値を計算し、それを表5〜7に記載した。これにより、実施例・比較例中のいずれのベルトも、むらがほとんどなく非常に均一であることがわかる。他方、カーボン導電のベルトでは、この値が2から10程度、大きいものでは、100程度になることもあり得る。
【0159】
表5に示すように、実施例12、13は所要の1相の第1非連続相に解離可能な塩を偏在させているため、いずれも電気特性に優れると共に移行汚染等の問題も生じなかった。特に、電気抵抗の環境依存性が小さい上に、連続通電時の抵抗上昇も少なかった。
【0160】
表6に示すように、実施例14は、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として、塩1のリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの代わりに塩3のカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いた以外は実施例12と同様にした。塩3は、陽イオンがリチウムイオンよりも重いカリウムイオンであるため、連続通電時の抵抗上昇をより低減することができた。また、上述したように、塩3は塩1よりも安価であるが、同一配合量でほぼ同様の抵抗値を得ることができるため、コストの低減も図ることができた。さらに、体積固有抵抗値の環境依存性を一層低減することもできた。
実施例15では、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として、塩1の代わりに塩4を用いた以外は実施例12と同様にしたが、比較例14と比較して環境依存性、連続通電時の抵抗上昇、感光体汚染等において優れた特性をもつことがわかった。
実施例16では、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として、塩1の代わりに塩5を用いた以外は実施例12と同様にした。実施例14と同様に、陽イオンを重くしながら十分な導電性を得ることができるため、連続通電時の抵抗上昇を低減できた。さらに、体積固有抵抗値の環境依存性を一層低減することもできた。
実施例17では、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩として、塩1の代わりに塩6を用いた以外は実施例12と同様にした。他の実施例と比較して環境依存性等は若干劣るが、比較例16と比較すると通電上昇が小さい点で非常に優れていることがわかった。
【0161】
一方、比較例11は、1相の系で解離可能な塩を用い、またかかる塩を低分子量極性化合物からなる媒体を用いて分散させたため連続時の抵抗上昇が非常に大きく、感光体汚染も生じ不適であった。
比較例12は、連続通電時の抵抗上昇が大きく、環境依存性もやや大きかった。
比較例13〜16についても比較例12と同様に1相の系であるため、連続通電時の抵抗上昇が大きかった。また、比較例14においては、感光体汚染も生じ不適であった。
【0162】
図9は、本発明の第3実施形態の難燃性シームレスベルトからなる中間転写ベルト33を備えたカラープリンタ用の画像形成装置を示す。カラー用プリンターは、転写ローラ30a、30b、帯電ローラ31、感光体32、中間転写ベルト33、定着ローラ34、4色のトナー35(35a、35b、35c、35d)、鏡36を備えている。
【0163】
このカラー用画像形成装置によって画像が形成される場合、まず、感光体32が図中の矢印の方向に回転し、帯電ローラ31によって感光体32が帯電された後に、鏡36を介してレーザー37が感光体32の非画像部を露光して除電され、画線部に相当する部分が帯電した状態になる。次に、トナー35aが感光体32上に供給されて、帯電画線部にトナー35aが付着し1色目の画像が形成される。このトナー画像は一次転写ローラ30aに電界がかけられることにより中間転写ベルト33上へ転写される。同様にして、感光体32上に形成されたトナー35b〜35dの各色の画像が中間転写ベルト33上に転写され、中間転写ベルト33上に4色のトナー35(35a〜35d)からなるフルカラー画像が一旦形成される。このフルカラー画像は二次転写ローラ30bに電界がかけられることにより被転写体(通常は紙)38上へ転写され、所定の温度に加熱されている定着ローラ34を通過することで被転写体38の表面へ定着される。なお、両面印刷を行う場合には、定着ローラ34を通過した被転写体38がプリンター内部で反転され、上記画像形成工程を繰り返し、再度裏面に画像が形成される。
【0164】
本発明の難燃性シームレスベルトからなる中間転写ベルト33は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とし、全重量に対してメラミンシアヌレートを25重量%の割合で含有しており、上述した化学式1に記載の陰イオンを備えた塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを全ポリマー成分100重量部に対して1.2重量部含有し、ポリエーテルブロックを有する共重合体であるポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体(ガラス転移温度Tgが−57℃)をポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して30重量部の割合で含有し、体積抵抗率を109.6Ω・cmとした熱可塑性組成物を2軸押出機を用い混練りした後、押出成形により成形している。
【0165】
測定環境23℃、相対湿度55%、試料厚み250μm、印加電圧1000Vで電圧を印加したときの電圧印加直後の体積抵抗率をρ(t=0hr.)、連続5時間電圧印加後の体積抵抗率をρ(t=5hr.)とすると、log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.)=0.36としている。
【0166】
また、低温低湿環境(10℃、相対湿度15%)における体積抵抗率ρ(10℃相対湿度15%)と、高温高湿環境(32.5℃、相対湿度90%)における体積抵抗率ρ(32.5℃相対湿度90%)との関係は、log10ρ(10℃相対湿度15%)−log10ρ(32.5℃相対湿度90%)=1.6となっている。
【0167】
本実施形態では、ポリエーテルブロックを有する共重合体の重量は、上記化学式1に記載の陰イオンを備えた塩の重量の19.2倍としている。なお、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、分子量1万以下の低分子量ポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を介さずに配合されている。
【0168】
本発明の中間転写ベルト33は、優れた難燃性を有し、感光体汚染もない上に、厚み方向には適度な柔軟性を有する一方、長さ方向には伸びにくく、かつ環境への影響が小さく実用性に非常に優れたシームレスベルトである。また、体積抵抗率に影響を及ぼすことなくベルトに難燃性が付与されており、抵抗値の面内バラツキや環境依存性が小さい上に連続通電時の抵抗上昇も小さく、かつ、押出肌も平滑である。従って、本発明の難燃性シームレスベルトは、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置内において、ベルトが高電圧、高温環境下に置かれる場合でも、使用状態に制限を受けることなく使用することができ、均一な画像を得ることができる。
【0169】
以下、例えば上記中間転写ベルトとして用いることのできる難燃性シームレスベルトの製造方法について詳述する。
まず、ポリエーテルブロックを有する共重合体を主成分とし上述した化学式1に記載の陰イオンを備えた塩が5重量%配合された導電性マスターバッチを作製すると共に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとメラミンシアヌレートとを同量ずつ配合された難燃性マスターバッチを作製する。ここで得られた導電性マスターバッチと、難燃性マスターバッチと、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとを所要量2軸押出機で混練し、各材料が規定量配合されたベルト成形用の熱可塑性組成物からなる材料を得る。
導電性マスターバッチの混練温度は200℃〜270℃、好ましくは200℃〜250℃、混練時間は1分〜20分が好ましく、難燃性マスターバッチの混練温度は同じく200℃〜270℃、好ましくは200℃〜250℃、混練時間は1分〜20分が好ましい。
【0170】
図10はベルト製造装置50を示す。ベルト製造装置50は、材料を投入するホッパー51と、投入された材料を溶融押出する押出機52と、押出機52の中心軸とダイの中心軸が直角になり環状ダイス構成としたクロスヘッドダイ53と、押出機52とクロスヘッドダイ53の間に配置され押出量を調整するギヤポンプ54と、押し出された環状物Bを内周面側から整形するサイジング用型であるインサイドサイジング55と、整形された環状物Bを鉛直方向に引き取る引取機56と、連続的に成形される環状物Bを所定長さにカットする自動カット機57とを備えている。クロスヘッドダイ53は、環状ダイスのダイリップ53aから溶融物を鉛直下向きに押し出す構成としている。
【0171】
上記ベルト成形用材料を押出機52のホッパー51から投入して200℃〜270℃、好ましくは200℃〜250℃で溶融し、溶融物をギヤポンプ54で押出量を調整しながらクロスヘッドダイ53へ送り込む。溶融物は、クロスヘッドダイ53の環状ダイスのダイリップ53aから環状に鉛直下向きに押出速度133mL/minで押し出す。ダイリップ53aから押し出された環状物Bはインサイドサイジング55に沿わさせて70℃〜100℃で冷却してベルト状に整形し、引取機56により鉛直下方へ引き取られ、自動カット機57により所定の長さにカットされ難燃性シームレスベルトを製造する。
【0172】
上記第3実施形態の難燃性ベルトは中間転写ベルトとして用いているが、その他、画像形成装置等に用いられる定着ベルト、現像ベルト、搬送ベルト等としても用いることができる。特に、白色のベルトとすると、トナーの付着が簡単に目視可能となるため、クリーニング性能の評価に適し、中間転写ベルトとして好適に用いることができる。
【0173】
上記第3実施形態では、上記熱可塑性組成物を用いて成形された1層のみの構造としているが、外周面側に少なくとも1層のコーティング層を有しても良い。コーティング層等の被覆層は、2層、3層等の複層構造としても良く、シームレスベルトの外周面側あるいは/及び内周面側とすることができる。
【0174】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリエステルポリエーテル系あるいはポリエステルポリエステル系等を用いることができる。また、化学式1に記載の陰イオンを備えていれば上記塩に限定されず、陽イオンの種類等を変更しても良い。ポリエーテルブロックを有する共重合体も適宜変更することができる。なお、上記押出成形による製法以外にも、インジェクション成形等により成形することも可能であり、マスターバッチを用いずに成形することもできる。
【0175】
以下、第3実施形態の難燃性ベルトの実施例、比較例について詳述する。
(実施例18)
上述した化学式1に記載の陰イオンを備えた塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、ポリエーテルブロックを有する共重合体(IrgastatP16、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:ポリエチレンオキサイドブロックナイロン12共重合体(ガラス転移温度Tgが−57℃))に5重量%の割合になるようにドライブレンドし、これを2軸押出機のホッパーに投入し、210℃設定にて混練りすることで導電性マスターバッチを得た。この時の樹脂温度実測値は230℃であった。
【0176】
メラミンシアヌレート(MC640:日産化学製)をポリエステル系熱可塑性エラストマー(ペルプレンP90BD、東洋紡績製:ポリエステルポリエーテル系(ガラス転移温度Tgが−56℃))に50重量%の割合になるようにドライブレンドし、これを2軸押出機のホッパーに投入し、210℃設定にて混練りすることで難燃性マスターバッチを得た。この時の樹脂温度実測値は230℃であった。
【0177】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーと、導電性マスターバッチと、難燃性マスターバッチとの各ペレットを、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの含有量がポリエーテルブロックを有する共重合体とポリエステル系熱可塑性エラストマーとの合計である全ポリマー成分100重量部に対し1.2重量部となり、ポリエーテルブロックを有する共重合体の含有量がポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対し30重量部となり、また、メラミンシアヌレートの含有量が全重量の25重量%になるような割合でドライブレンドした。これを2軸押出機のホッパーに投入し210℃にて混練りすることでベルト形成用の材料を得た。この時の樹脂温度実測値は230℃であった。
【0178】
作製したベルト形成用の材料を、上述した図10に示す製造装置の押出機のホッパーへ投入し、押出機を運転して溶融し、ダイ温度235℃で内径185mm、間隙0.5mmの環状ダイスより溶融物を鉛直方向へ押し出した。その後、外径170mmのインサイドサイジングに沿わせることで80℃で冷却し、固化成形し、引き取り速度1m/minで鉛直下向きに引っ張り、自動カット機で400mm幅にカットすることで連続的に難燃性シームレスベルトを得た。ベルト内径=169.5mm、平均肉厚=250μm、幅=400mmとした。
【0179】
実施例18のベルトの性能を下記に示す。各性能は後述する方法により測定した。
体積抵抗率:10の9.6乗(Ω・cm)
連続通電時の抵抗上昇:0.36
面内バラツキ:0.3
環境依存性:1.6
表面粗さ:Rz=1.1μm
画像出し:良好
難燃性:○
【0180】
(体積抵抗率の測定及び連続通電時の抵抗上昇)
アドバンテストコーポレーション社製の超高抵抗微小電流計R−8340Aを用いて、23℃相対湿度55%の恒温恒湿条件下で測定した。測定方法は、JIS K 6911に記載の体積抵抗率の測定方法に従い、また測定時の印加電圧は500Vとした。
なお、連続通電時の抵抗上昇については、測定環境23℃、相対湿度55%、試料厚み250μm、印加電圧1000Vで電圧を印加したときの電圧印加直後の体積抵抗率をρ(t=0hr.)、連続5時間電圧印加後の体積抵抗率をρ(t=5hr.)とし、log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.)の値を評価した。この値は0.5以下が好ましい。
また、実施例18、下記の実施例19、比較例17について連続通電時の体積抵抗率の経時変化を図11に示す。
【0181】
(面内バラツキ)
各ベルトの面内30点の体積抵抗率(Ω・cm)を測定し、30点の最大値の常用対数値−最小値の常用対数値=面内バラツキとした(測定環境:23℃×55%、測定方法:ハイレスタ、URSプローブ、10s、250V)。この面内バラツキの値は0.5以下が好ましい。
【0182】
(環境依存性)
500Vの電圧印加時のLL条件(温度10℃、相対湿度15%)の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値と、HH条件(温度32.5℃、相対湿度90%)の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値の差を環境依存性とした。この環境依存性の値は2.5以下が好ましく、1.7以下がより好ましい。
【0183】
(表面粗さ)
JIS B0601に基づき、表面粗さRzを測定した。測定条件は、カットオフ値0.25mm、測定長さ2.0mm、測定速度0.3mm/sとした。
【0184】
(画像出し)
各ベルトをフルカラー電子写真装置(セイコーエプソン製、インターカラーLP−8300C)の中間転写ベルトとして装着し、画像出しテストを行い、転写性能を評価した。
【0185】
(難燃性)
難燃性試験:VTM2
UL−94:プラスチック材料の燃焼性試験に準ずる。薄膜サンプルを対照とした「薄手材料垂直燃焼試験:VTM−0、VTM−1、VTM−2」の方法により試験を行った。VTM−2のレベルに達しているものを「○」、達していないものを「×」とした。
【0186】
(ガラス転移温度の測定)
ガラス転移温度Tgの測定は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)の示差走査熱量計DSC2910を用いて、−100℃から100℃まで10℃/minで昇温しながら測定した。
【0187】
(実施例19)
ポリエーテルブロックを有する共重合体を、ポリエーテルエステルアミド共重合体(ペレスタットNC6321:三洋化成工業(株)製、ガラス転移温度Tgが−43℃)に変更した。その他は実施例18と同様とした。
体積抵抗率:10の9.4乗(Ω・cm)
連続通電時の抵抗上昇:0.32
面内バラツキ:0.4
環境依存性:2.1
表面粗さ:Rz=1.6μm
画像出し:良好
難燃性:○
【0188】
(比較例17)
リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをポリエステル系熱可塑性エラストマー(ペルプレンP90BD)に10重量%の割合になるようにドライブレンドした導電性マスターバッチを用い、ポリエーテルブロックを有する共重合体を含有しなかった。
リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの含有量をポリマー全成分100重量部に対し0.5重量部とした。その他は実施例18と同様とした。
【0189】
体積抵抗率:10の8.7乗(Ω・cm)
連続通電時の抵抗上昇:1.14
面内バラツキ:0.4
環境依存性:2.0
表面粗さ:Rz=1.6μm
画像出し:良好
難燃性:○
【0190】
図11に示すように、実施例18、19は、5時間連続で電圧を印加した場合でも、体積抵抗率の上昇がほとんど見られず、電気的特性が非常に安定していることが確認できた。一方、比較例17は、通電時間が経過するに従い、体積抵抗率が上昇しており、特に、通電初期段階での抵抗上昇が大きく、画像形成装置等に用いた場合にはより細かい抵抗値のコントロールが必要となり、比較例17の難燃性ベルトを用いた場合はコストの上昇が予想される結果となった。
【0191】
以上のように、実施例18、19は、いずれの評価結果も良好であり、実用性に優れた難燃性シームレスベルトであることが確認できた。一方、比較例17はポリエーテルブロックを有する共重合体を含有して2相構造とし、島相に塩を偏在させることができていないため、連続通電時の抵抗上昇が非常に大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】本発明の第1実施形態の導電性ポリマーより形成した導電層を備えた導電性ローラの概略図である。
【図2】上記導電層を形成する導電性ポリマー組成物の構造を示す模式図である。
【図3】図2の導電性ポリマーの相構造(モルフォロジー)を示す図である。
【図4】ローラ抵抗値等のローラの電気特性の測定装置の概略図である。
【図5】比較例3の導電性部材を形成する導電性ポリマーの相構造(モルフォロジー)を示す図である。
【図6】実施例1と比較例2のローラの連続通電時の抵抗変化を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態の導電性ポリマー組成物を用いて形成される導電性ベルトの概略図である。
【図8】第2実施形態の導電性ポリマー組成物の構造を示す模式図である。
【図9】本発明の第3実施形態の難燃性ベルトを備えたカラー画像形成装置の模式的正面図である。
【図10】難燃性ベルトの製造装置の概略図である。
【図11】実施例18、19、比較例17に用いた材料の連続通電時の体積抵抗率の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0193】
1、1’ 連続相
2、2’ 第1非連続相
3 第2非連続相
10 導電性ローラ
11、21 導電層
12 芯金
13 導電性ベルト
33 中間転写ベルト
50 ベルト製造装置
51 ホッパー
52 押出機
53 クロスヘッドダイ
54 ギヤポンプ
55 インサイドサイジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性付与剤としてイオン導電性添加塩のみを含み、電子導電性充填剤は含まない導電性ポリマー組成物から形成される導電層を備えた導電性ローラおよび導電性ベルトを含む画像形成装置用の導電性部材であって、
上記導電層は、連続相と1相の非連続相との2相からなり、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、上記非連続相に陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させ、該非連続相を構成するポリマーは上記連続相を構成するポリマーよりも上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性を高くし、
印加電圧100Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積抵抗率が10〜1012[Ω・cm]である上記ポリマー組成物から形成していることを特徴とする画像形成装置用の導電性部材。
【請求項2】
導電性付与剤としてイオン導電性添加塩を含む導電性ポリマー組成物から形成される導電層を備えた導電性ローラおよび導電性ベルトを含む画像形成装置用の導電性部材であって、
上記導電層は、連続相と1相の非連続相との2相からなり、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、上記非連続相に陽イオンと陰イオンに解離可能が塩を偏在し、該非連続相を構成するポリマーは上記連続相を構成するポリマーよりも上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性を高くし、
前記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩は、分子量1万以下の低分子量ポリエーテル化合物や低分子量極性化合物からなる媒体を介さずに配合されており、
印加電圧100Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積抵抗率が10〜1012[Ω・cm]である上記ポリマー組成物から形成していることを特徴とする画像形成装置用の導電性部材。
【請求項3】
導電性付与剤としてイオン導電性添加塩を含む導電性ポリマー組成物から形成される導電層を備えた導電性ローラおよび導電性ベルトを含む画像形成装置用の導電性部材であって、
上記導電層は、連続相と1相の非連続相との2相からなり、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、上記非連続相に陽イオンと陰イオンに解離可能な塩が偏在し、該非連続相を構成するポリマーは上記連続相を構成するポリマーよりも上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩との親和性を高くし、
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩は、プロピレンカーボネート(PC)/ジメチルカーボネート(DME)系混合溶媒(体積分率1/2)中、25℃で0.1mol/リットルの塩濃度で測定した導電率が3.5mS/cm以上であり、
印加電圧100Vのもとで測定したJIS K6911に記載の体積抵抗率が10〜1012[Ω・cm]である上記ポリマー組成物から形成していることを特徴とする画像形成装置用の導電性部材。
【請求項4】
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩は、プロピレンカーボネート(PC)/ジメチルカーボネート(DME)系混合溶媒(体積分率1/2)中、25℃で0.1mol/リットルの塩濃度で測定した導電率が2.3mS/cm以上である請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項5】
補強用としてカーボンブラックを含んでいる請求項2または請求項3に記載の画像形成用の導電部材。
【請求項6】
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させた上記非連続相を構成するポリマーの体積抵抗率をρV1、上記連続相を構成するポリマーの体積抵抗率をρV2とすると、
0.2≦log10ρV2−log10ρV1≦5としている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項7】
上記非連続相を構成するポリマーと上記連続相を構成するポリマーとの重量比は、(上記非連続相を構成するポリマー:上記連続相を構成するポリマー)=(5:95)〜(75:25)である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項8】
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩が、フルオロ基、スルホニル基を有する陰イオンを備えた塩である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項9】
上記陽イオンと陰イオンに解離可能な塩がリチウム塩、カリウム塩、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩である請求項8に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項10】
上記導電性ポリマー組成物は、加硫ゴム組成物あるいは熱可塑性エラストマー組成物である請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項11】
上記各相に用いるポリマーはガラス転移温度Tgが−40℃以下である請求項1乃至請求項10のいずれか1項の記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項12】
上記連続相は低ニトリルNBR、上記第1非連続相はポリエーテル系ポリマーを含有し、
上記第1非連続相のポリエーテル系ポリマーに上記塩を偏在させている請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項13】
上記ポリエーテル系ポリマーとして、エチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体あるいは/及びエピクロルヒドリンゴムを少なくとも含有する請求項12に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項14】
上記連続相はポリエステル系熱可塑性エラストマー、上記第1非連続相はポリエーテルブロックを有する共重合体を含有し、上記ポリエーテルブロックを有する共重合体はポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して5重量部〜50重量部の割合で配合しており、
上記非連続相のポリエーテルブロックを有する共重合体に上記塩を偏在させている請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項15】
上記導電性ポリマー組成物は、JIS K6262に記載の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験法において、測定温度70℃、測定時間22〜24時間、圧縮率25%で測定した圧縮永久ひずみの大きさが30%以下である請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項16】
上記導電層を備えたローラあるいはベルトからなる請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項17】
23℃、相対湿度55%の環境下で、1000Vの定電圧を96時間連続印加した場合の抵抗値R[Ω]を測定し、抵抗値の上昇量Δlog10R=log10R(t=96hr.)−log10R(t=0hr.)の値を0.5以下としている導電性ローラからなる請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項18】
10℃相対湿度15%、32.5℃相対湿度90%の条件下での抵抗値R[Ω]を測定し、抵抗値の環境依存性Δlog10R=log10R(10℃相対湿度15%)−log10R(32.5℃相対湿度90%)の値を1.7以下としている導電性ローラからなる請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項19】
上記導電層は、発泡倍率が100%以上500%以下であり、JIS K6253に記載のタイプEデュロメータで測定した硬度が60度以下である発泡層としている導電性ローラあるいは/および導電性ベルトからなる請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項20】
23℃、相対湿度55%の環境下で、厚みが0.25mmのサンプルに対し1000Vの定電圧を5時間連続で印加した場合の体積抵抗率ρ[Ω・cm]を測定し、体積抵抗率の上昇量△log10ρ=log10ρ(t=5hr.)−log10ρ(t=0hr.)の値を0.5以下としている導電性ベルトからなる請求項1乃至請求項16、請求項19のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項21】
10℃相対湿度15%、32.5℃相対湿度90%の条件下での体積抵抗率ρ[Ω・cm]を測定し、体積抵抗率の環境依存性△log10ρ=log10ρ(10℃相対湿度15%)−log10ρ(32.5℃相対湿度90%)の値を1.7以下としている導電性ベルトからなる請求項1乃至請求項16、請求項19乃至請求項20のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材。
【請求項22】
請求項1乃至請求項21のいずれか1項に記載の導電性部材を備えた画像形成装置。
【請求項23】
請求項1乃至請求項21のいずれか1項に記載の画像形成装置用の導電性部材の製造方法であって、
陽イオンと陰イオンに解離可能な塩と、該陽イオンと陰イオンに解離可能な塩を偏在させる非連続相を構成するポリマーとを混練あるいは均一に混合した後に、該混練物あるいは該混合物に連続相を構成するポリマー、非連続相を構成するポリマーを加えて再度混練して得られた導電性ポリマー組成物を作製し、
上記導電性ポリマー組成物を加熱成形することで導電層を備えた導電性部材を製造することを特徴とする画像形成装置用の導電性部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−241307(P2007−241307A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121175(P2007−121175)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【分割の表示】特願2003−355345(P2003−355345)の分割
【原出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】