説明

画像形成装置用クリーニングブレード

【課題】感光体ドラム回転時のクリーニングブレードのニップ幅が適切に調整されることにより、感光体ドラム表面に残留するトナーのクリーニング性能を向上したクリーニングブレードを提供する。
【解決手段】画像形成装置の感光体ドラムの外周面に接触させて該感光体ドラム外周面の残留トナーを除去するクリーニングブレード20であって、前記感光体ドラム12の回転時に、該感光体ドラム12に対して荷重2〜60N、面圧1.3〜66.7MPaで当接される動的状態において、該回転ドラム12外周面との接触幅nw2(ニップ幅)を3〜10μmとしている。また、クリーニングブレードを母体層20−1とエッジ層20−2との2層構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いられるクリーニングブレードに関し、詳しくは、回転している感光体ドラムに当接するクリーニングブレードのニップ幅を適切に調整して、感光体ドラム表面に残留するトナーのクリーニング性能を向上させるものである。
【背景技術】
【0002】
普通紙を記録紙として用いる静電式写真複写機では、一般に、感光体ドラムの表面に放電により静電荷を与え、その上に画像を露光して静電潜像を形成し、次に逆極性を帯びたトナーを静電潜像に付着させて現像し、そのトナー像を記録紙に転写し、最後にトナー像が転写された記録紙を加熱加圧し、トナーを記録紙上に定着させることによって複写を行っている。従って、複数枚の記録紙に順次複写を行うためには、前記工程において感光体ドラムより記録紙にトナー像を転写した後、感光体ドラムの表面に残留するトナーを除去する必要がある。
前記感光体ドラムの残留トナーの除去方法の一つとして、クリーニングブレードを感光体ドラム表面に圧接し、感光体ドラムを摺接してクリーニングするブレード・クリーニング方式が知られている。
【0003】
当該方式で用いられるクリーニングブレードとしては、従来より、弾性部材から構成されるクリーニングブレードが用いられ、これにより感光体ドラム上の粉砕トナーや異形化処理された重合トナーのクリーニングが行なわれていた。しかしながら、近年、省エネルギー、低コスト、高画質化のトレンドにより、小粒径、球形重合トナーが開発された結果、クリーニングブレードに荷重をかけて、感光体ドラムを摺接しないと、残留するトナーの除去が不十分となり、クリーニング不良が生じやすくなるという問題が生じてきた。
【0004】
その結果、画像形成装置の感光体ドラムのクリーニング装置において、感光体ドラムに摺接するクリーニングブレードの荷重が制御されるようになり、この荷重は、従来より「線圧(N/cm)」として設定されてきた。線圧とは、感光体ドラムに対してクリーニングブレードにかける総荷重をクリーニングブレードの稜線の長さで割った値であり、クリーニングブレードと感光体ドラムが線で接触していることを前提とするものである。
【0005】
しかしながら、実際、クリーニングブレードは、線ではなく、面で感光体ドラムに接触しており、ニップ幅(接触幅)を有している。そのため、感光体ドラムへのクリーニングブレードの荷重は、「線圧」ではなく、「面圧」で設定しなければ実際の画像形成装置におけるクリーニングブレードの性能を正確に評価することはできない。
【0006】
そこで、特開2006−154747号公報(特許文献1)では、クリーニングブレードの先端稜線部を形成する角度を鈍角とするとともに、その先端稜線部をクリーニング部材に面圧2.0MPa以上で押し当てることにより、低線圧で高面圧なクリーニング構成を得るクリーニング装置を提案している。
しかし、特許文献1では、感光体ドラムが回転していない静的状態における接触幅から面圧を求めているため、感光体ドラムが回転している動的状態、すなわち実際のクリーニング機構の稼動時における面圧を反映するものではない。
【0007】
また、感光体表面の微細凹凸に追従させることを目的として、従来のように低硬度の単層のクリーニングブレードを使用すると、感光体に対するエッジの接地圧を上げることができないため、クリーニング不良が発生しやすくなっていた。
一方、エッジの接地圧を上げるために、クリーニングブレードの硬度を高くすると、柔軟性が失われるために感光体表面の微細凹凸に追従できなくなり、トナーのすり抜けが発生してクリーニング不良が発生する。さらに、硬度を高くすると脆くなるため磨耗しやすくもなる。
このように、単層構造のクリーニングブレードによって、接地圧を上げながら、感光体表面の微細凹凸に追従させて十分なクリーニング性能を得るのは非常に困難である。
【0008】
前記のような単層構造のクリーニングブレードの欠点を補い、小粒径・球形重合トナーに対するクリーニング性能を向上させるため、種々の2層構造のクリーニングブレードが提案されている。
例えば、特開2004−361844号公報(特許文献2)では、板状バネ部材の少なくともクリーニングエッジ部に高硬度の合成樹脂部材を設けた2層構造のクリーニングブレードが提案されている。
また、特開2006−053514号公報(特許文献3)では、弾性体ブレードの感光体当接側と非当接側が異なる弾性特性を有し、その弾性特性として、硬度(JISA Hs)/反発弾性(%)の値が感光体当接側の方が大きいことを特徴とする画像形成装置が提案されている。
【0009】
しかし、前記特許文献2および前記特許文献3のクリーニングブレードは、感光体に当接する層が感光体に当接しない層よりも高硬度材質で構成されているため、感光体表面の微細凹凸に追従できるものではなく、小粒径・球形重合トナーに対して使用した場合、トナーのすり抜けが生じ、十分なクリーニング性能が得られないおそれがある。
さらに、これらのクリーニングブレードは、感光体への当接側が高硬度材料で形成されているため、脆く、耐磨耗性に欠け、長期に渡り十分なクリーニング性能が得られない可能性もある。
【0010】
【特許文献1】特開2006−154747号公報
【特許文献2】特開2004−361844号公報
【特許文献3】特開2006−053514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、感光体に対する圧力と、弾性との相反する要求に対応できる物性を有し、回転している感光体ドラムに当接するクリーニングブレードのニップ幅が適切に調整されたクリーニングブレードを提供し、感光体ドラム表面に残留するトナーのクリーニング性能を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、画像形成装置の感光体ドラムの外周面に接触させて該感光体ドラム外周面の残留トナーを除去するクリーニングブレードであって、
熱硬化性エラストマー組成物から成形されており、該熱硬化性エラストマー組成物はゴム成分(1)、充填剤(2)および架橋剤(3)を含み、
前記ゴム成分(1)を100質量部とすると、前記充填剤(2)として、少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛とを混合したもの(2a)を5質量部〜60質量部を配合している熱硬化性エラストマー組成物、あるいは
前記ゴム成分(1)100質量部のうち、ベースポリマーである水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムにメタクリル酸亜鉛を分散させたもの(1a)を10質量部〜75質量部を配合している熱硬化性エラストマー組成物からなり、
前記感光体ドラムの回転時に、該感光体ドラムに対して荷重2〜60N、面圧1.3〜66.7MPaで当接される動的状態において、該回転ドラム外周面との接触幅(ニップ幅)が3〜10μmであることを特徴とする画像形成装置用クリーニングブレードを提供している。
【0013】
本発明においては、前記したように、充填剤(2)として、メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛とを混合したもの(2a)あるいは、ベースポリマーであるHNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたものゴム成分(1a)を所定量配合することにより、メタクリル酸亜鉛の共架橋効果を発揮させて機械的物性を向上させ、クリーニングブレードとして、所要の面圧と弾性とを付与している。かつ、メタクリル酸亜鉛の配合量を前記した範囲としていることにより、過剰な補強効果により、高硬度、低引張伸びなど機械的物性に弾性機能が失われないようにしている。
【0014】
前記熱硬化性エラストマー組成物からなるクリーニングブレードにおいて、感光体ドラムの回転時に、該感光体ドラムに対して荷重2〜60N、面圧1.3〜66.7MPaで当接される動的状態において、該回転ドラム外周面との接触幅(ニップ幅)が3〜10μmとなるように設定している。
これは、感光体ドラムが回転している動的状態におけるクリーニングブレードのニップ幅を適切な範囲とすることで、良好なクリーニング性能が得られることを知見したことにより設定している。
【0015】
前記動的状態での当接状態の観察は、図1に示すように、円柱ガラス30にクリーニングブレード1を当接させ、該円柱ガラス30を回転させて、稜線方向から高速度カメラ40でクリーニングブレード1のエッジの形状を観察することにより行った。
ここで、円柱ガラス30は後述する感光体ドラム12の代用として用いており、表層には感光体ドラムの表層材料と同一の透明な材料を塗布している。
【0016】
このようにして観察されたクリーニングブレードの感光体ドラム(円柱ガラス)への当接状態を、図2を用いて説明する。
図2(A)は感光体ドラムに当接させる前のクリーニングブレード1を示す。該クリーニングブレード1は、稜線カット機により精密カットされたカット面1aと、成形により形成された成形面1bの二面によって略90度に形成されたエッジ部1cを備えている。
次に、回転していない状態(静的状態)の感光体ドラム12にクリーニングブレード1を当接させると、図2(B)に示すように、クリーニングブレード1は成形面1bで感光体ドラム12に当接し、比較的大きい接触幅(ニップ幅)で感光体ドラム12に接する。この静的状態でのニップ幅をnw1とする。
さらに、図2(B)の静的状態から、図中矢印の方向に感光体ドラム12を回転させた状態(動的状態)とすると、図2(C)に示すように、クリーニングブレード1は、感光体ドラム12との間に摩擦力を生じ、エッジ部1cが引きずられて応力変形する。そのため、動的状態においては、カット面1aで感光体ドラム12に当接し、その接触幅は静的状態でのニップ幅(nw1)よりもかなり小さくなる。すなわち、動的状態のニップ幅をnw2とすると、nw2<nw1となる。
【0017】
このように動的状態のクリーニングブレード1は、摩擦を生じて応力変形するため、静的状態のクリーニングブレード1とは、当接状態が大きく異なる。
そのため、実際の画像形成装置の駆動時において良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードとするには静的状態ではなく、動的状態のニップ幅を適切な範囲に設定することが重要となる。
【0018】
本発明では感光体ドラムの回転時におけるクリーニングブレードのニップ幅を下記の方法で測定し、動的状態でのクリーニングブレードのニップ幅が3〜10μmとなるようにしている。
動的状態のニップ幅を3〜10μmとしているのは、感光体ドラム回転時のニップ幅が10μmを超えると接触面積が大きくなるため面圧が低下し、クリーニング不良が発生するおそれがあり、逆に3μm未満であると接触面積が小さくなるため、ニップが不安定となり、耐磨耗性が悪くなったり、クリーニング不良が発生するおそれがあるためである。該クリーニングブレードのニップ幅は、より好ましくは3〜8μmである。
【0019】
前記感光体ドラム回転時のニップ幅の測定方法を図3に示す。
クリーニングブレード1を支持部材(図示せず)に取り付けて作製したクリーニング部材を、回転する感光体ドラムを備えると共に重合トナーの現像を可能とした、実機の画像形成装置と同様の機能を有する自社製の測定装置(図示せず)に装着する。
内側からクリーニングブレード1の接触状態を観察・撮影するため、図3(A)に示すように、前記感光体ドラムの代わりとして、内部に反射鏡31を備えた透明な直径30mmの円柱ガラス30を準備する。該円柱ガラス30の表層には感光体ドラムの表層材料と同一の透明な材料を塗布しておく。
【0020】
次に、荷重をかけて、クリーニングブレード1を前記円柱ガラス30に当接させる。
該円柱ガラス30の側面に高速度カメラ40(Photron製FASTCAM−APX−RS−250K)を設置し、該円柱ガラス30を200mm/secの線速で回転させ、円柱ガラス30内部の反射鏡31に映し出されたクリーニングブレード1を撮影速度100,000fps、露光時間10μsで撮影する。
【0021】
図3(B)に示すように、観察された画像50には、円柱ガラス30と接触しているクリーニングブレードの部分が影51となり現れる。この影51の幅W3を測定し、別に測定したスケール画像を用いて換算し、ニップ幅を算出している。
ニップ幅は、撮影した画像の中からランダムに8枚の静止画を選択し、その平均値として求めている。
なお、試験は、温度23℃、相対湿度55%で行っている。
【0022】
本発明において、前記感光体ドラム回転時の感光体ドラムに対するクリーニングブレードの荷重を2〜60Nとしているのは、荷重が60Nを超えると過剰な圧力設定となり、画像形成装置用として適さないためであり、2N未満であるとクリーニングに必要な面圧を得ることができないためである。より好ましくは2〜40N、さらに好ましくは3〜35Nである。
荷重は、圧力センサを用いて測定している。
【0023】
クリーニングブレードを面圧1.3〜66.7MPaで感光体ドラムに当接させているのは、66.7MPaを超えるとクリーニングブレードを構成する材料が面圧に耐え切れずに摩耗が激しく進行してしまい、1.3MPa未満であると感光体ドラムとクリーニングブレード間の圧力が小さくなり過ぎて、小粒径、球形重合トナーをクリーニングすることができないためである。より好ましくは1.3〜45MPa、さらに好ましくは1.3〜40MPaである。
面圧は、前記ニップ幅と前記荷重により、下式を用いて算出している。
面圧(MPa)=荷重(N)/クリーニングブレードの接触面積(mm
クリーニングブレードの接触面積(mm)=ニップ幅(mm)×クリーニングブレードの稜線の長さ(mm)
【0024】
クリーニングブレードとして成形する熱硬化性エラストマー組成物は、硬度(JIS−A)が60〜90、反発弾性率が20〜70%、引張強度が10〜80MPa、引張伸びが100〜600%であることが好ましい。
【0025】
クリーニングブレードは、前記したような静的状態と動的状態を繰り返すことにより、感光体ドラム表面のトナーをクリーニングするが、静的状態から動的状態へのニップ幅の変化率は一定ではなく、該変化率はクリーニングブレードの材質によっても大きく左右される。そのため、本発明においては熱硬化性エラストマー組成物からなる前記した物性(硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸び)を有するクリーニングブレードとすることが好ましい。
【0026】
前記クリーニングブレードの硬度(JIS−A)を60〜90とするのは、硬度が90を超えると弾性が少なくなり、動的状態で安定したニップ幅を得られず、60未満であるとニップ幅が大きくなり過ぎ、面圧が低下してクリーニング不良が発生するためである。より好ましくは、下限は70、上限は85である。
前記硬度(JIS−A)は、JIS K 6253に従って、作成した圧縮玉を用いてタイプAにて測定している。
【0027】
前記クリーニングブレードの反発弾性率を20〜70%とするのは、70%を超えるとクリーニングブレードが感光体ドラムに張り付いて、静的状態から動的状態への移行がスムーズに進まなくなるためである。すなわち、スティックスリップが大きくなり、感光体ドラム表面でクリーニングブレードがバウンドすることでトナーのすり抜けが発生するため、トナーの除去性能が悪くなる。一方、20%未満であるとクリーニングブレードの弾性が乏しくなりクリーニング性能が悪くなるおそれがあることに因る。より好ましくは、下限は40%で、上限は60%である。
前記反発弾性率は、作成した圧縮玉を用いて、JIS K 6255のリュプケ式により温度23℃で測定している。
【0028】
前記クリーニングブレードの引張強度を10〜80MPaとするのは、引張強度が80MPaを超えるとブレード全体のゴム弾性が乏しくなり、10MPa未満であると脆く摩耗しやすくなるため、好ましくないことによる。より好ましくは、下限は30MPaで、上限は70MPa、さらに、65MPaが好ましい。
前記引張強度は、シートからダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251に従って引張速度500mm/分で最大値の強度を測定している。
【0029】
前記引張伸びを100〜600%とするのは、引張伸びが600%を超えると必要以上に伸びが発生して感光体ドラムへの荷重が弱まるためトナーの除去性能が悪くなり、100%未満であるとブレード全体のゴム弾性がなくなることによる。より好ましくは、下限は200%、上限は500%である。
前記引張伸びは、シートからダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251の引張試験に従い、引張速度500mm/分での引張破断時の伸び率を測定している。
【0030】
前記熱硬化性エラストマー組成物は、一軸押出機、1.5軸押出機、二軸押出機、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサーまたは熱ロールなどの混練装置を用いて前記各成分を混合することにより得ることができる。
各成分の混合順序は特に限定されず、全ての成分を一度に混練装置に投入して混合してもよいし、一部の成分を混練装置に投入して予め混練しておき、得られた混合物に残りの成分を添加し混練してもよい。好ましくは、ゴム成分(1)と充填剤(2)を予め混練しておき、得られた混合物に架橋剤(3)を添加し混練する方法がよい。
【0031】
クリーニングブレードは、熱硬化性エラストマー組成物を、圧縮成形あるいは射出成形などの公知の成形方法を用いて、厚み1mm〜3mm、長さ10mm〜40mm、幅200mm〜500mmの短冊形に成形・加工することが好ましい。特に、厚みは1.5〜2.5mmとするのがより好ましく、2mm程度とするのが最も好ましい。
【0032】
前記熱硬化性エラストマー組成物より形成するクリーニングブレードは前記形状からなる単層で形成しても良いし、母体層とエッジ層とからなる2層構造としてもよい。
その場合、クリーニングブレードは、前記熱硬化性エラストマー組成物により夫々成形した肉厚が相違するエッジ層と母体層とを備え、該母体層の一面にエッジ層を固着した2層構造とし、該エッジ層は前記感光体ドラムへ当接させるものとし、
前記母体層は引張永久歪みを0〜10%とし、前記エッジ層は動摩擦係数を0.5〜1.5としていることが好ましい。
前記母体層およびエッジ層は、いずれも、前記した硬度(JIS−A)が60〜90、反発弾性率が20〜70%、引張強度が10〜80MPa、引張伸びが100〜600%である物性値を有するものとしている。
【0033】
前記クリーニングブレードは、前記エッジ層及び前記母体層共に、熱硬化性エラストマー組成物から形成し、全体の厚さ(T)は1mm〜3mm、長さ(L)は10mm〜40mm、幅(W)200mm〜500mmの短冊形に成形・加工したのちに、中央部を稜線カットすることが好ましい。
【0034】
感光体ドラムへ当接させるエッジ層と、該エッジ層を一面に固着した母体層の2層構造からなるクリーニングブレードは、全体として偏平な直方体形状とし、画像形成装置への取付時には、長さ方向の一辺を保持して感光体ドラムに向けて下方傾斜して配置されるものである。
【0035】
前記エッジ層と前記母体層の配置は次の2通りのタイプ(タイプA、タイプB)とすることができる。
タイプAは、クリーニングブレードの厚さ(T)方向で2層構造とし、母体層の厚み(t2)はエッジ層より厚み(t1)を大とすると共に母体層とエッジ層の長さ(L)は同一とし、厚さ方向となる前記エッジ層の肉厚(t1)は0.05〜0.5mmとしている
タイプBは、クリーニングブレードの長さ(L)方向で2層構造とし、クリーニングブレードの厚さ(T)方向では母体層とエッジ層の厚さは同一としている。長さ方向となるエッジ層の肉厚を0.05〜0.5mmとしている。
前記タイプAとすると、エッジ層と母体層を貼り合わせてからカットすることができるという加工面での利点があり、タイプBとするとエッジ層を少ない材料で加工することができる利点がある。
【0036】
前記タイプA、Bとも、エッジ層の肉厚は0.05〜0.5mmとし、好ましくは0.05〜0.3mmとしている。
これは、クリーニングブレードの厚みを一定とした場合、エッジ層の厚みが0.5mmを超えると母体層におけるエッジ層の割合が大きくなり、2層構造としている意味がなくなるからであり、0.05mm未満であると、エッジ層が薄くなりすぎて成形が困難となるためである。
前記エッジ層の肉厚は、母体層と接着する前のエッジ層のシートの厚みをダイヤルゲージで測定して求めている。
【0037】
また、前記タイプAのクリーニングブレードでは、前記母体層の厚み(t2)は1.5〜1.95mmであることが好ましく、さらに1.7〜1.95mmであることがより好ましい。
これは、クリーニングブレードの厚み(T)を一定とした場合、母体層の厚み(t2)が1.95mmを超えるとエッジ層が薄くなり、成形困難となるからであり、1.5mm未満であるとエッジ層の厚み比率が大きくなり、2層構造としている意味がなくなるからである。
【0038】
一方、タイプBのクリーニングブレードでは、前記母体層の長さ(L2)は11.9〜12.35mmであることが好ましく、さらに12.1〜12.35mmであることがより好ましい。
これは、クリーニングブレードの長さ(L)を一定とした場合、母体層の長さが12.35mmを超えるとエッジ層が薄くなり、成形困難となるからであり、11.9mm未満であると母体層に対するエッジ層の割合が大きくなり、2層構造としている意味がなくなるからである。
【0039】
クリーニングブレードを単層とした場合、あるいは前記母体層とエッジ層との2層構造とした場合のいずれにおいても、前記のように、本発明のクリーニングブレードとする熱硬化性エラストマー組成物は、ゴム成分(1)、充填剤(2)及び架橋剤(3)から構成している。
【0040】
前記のように、エッジ層と母体層とからなる2層構造とし、前記物性を有する母体層とエッジ層を任意に組み合わせて、クリーニングブレードを装着する画像形成装置に対応した最適な圧力と弾性を保持する構成とし、クリーニングブレードのエッジの接地圧を高く維持しながら、感光体表面の微細凹凸にも追従させ、かつ、クリーニングブレード全体の耐摩耗性を向上させている。
【0041】
よって、本発明のクリーニングブレードでは、前記エッジ層と母体層との物性を相違させ、例えば、前記エッジ層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する高硬度材で形成しているとともに、前記母体層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する低硬度材で形成している。
逆に、前記エッジ層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する低硬度材で形成しているとともに、前記母体層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する高硬度材で形成している。
【0042】
具体的には、例えば、前記エッジ層の硬度(JIS−A)を60以上75未満、反発弾性率を35%以上70%以下とする一方、前記母体層の硬度(JIS−A)を70以上90以下、反発弾性率を20%以上45%未満としている。
前記構成では、感光体に接触するエッジ層で主として弾性を持たせ、圧力は母体層で担持している。
あるいは、前記エッジ層の硬度(JIS−A)を70以上90以下、反発弾性率を20%以上45%未満とする一方、母体層の硬度(JIS−A)を60以上75未満、反発弾性率を35%以上70%以下としている。
前記構成では、クリーニングブレードは全体的に高弾性を有するものとし、感光体と当接するエッジ層は硬度を高めて接地圧を保持している。
【0043】
前記のようにエッジ層と母体層との物性を変えて、エッジ層は高硬度材とすると共に母体層は低硬度材、逆に、エッジ層は低硬度材とすると共に母体層を高硬度材とし、エッジ層と母体層とを一体化して、全体で所要の圧力と弾性とを付与することで、エッジ層を感光体の特性に合わせて低硬度材あるいは高硬度材とすることができる。
【0044】
具体的には、いずれの組み合わせの場合も、前記母体層およびエッジ層の物性は前記した範囲としている。
即ち、前記母体層の硬度(JIS−A)は60〜90とし、好ましくは60〜80の範囲としている。これは、母体層の硬度が90を超えるとブレード全体の弾性がなくなり、引張永久歪みが悪くなり、60未満であると感光体に対する線圧が小さくなるため、好ましくないからである。
一方、前記エッジ層の硬度(JIS−A)は60〜90とし、好ましくは60〜80としている。これは、エッジ層の硬度が90を超えるとエッジ層の弾性がなくなり、感光体表面の微細凹凸に追従できなくなるからであり、60未満であると感光体の回転方向にクリーニングブレードがめくれるおそれがあるからである。
前記硬度(JIS−A)は、前記母体層と前記エッジ層を構成するそれぞれのシートについて、JIS K 6253に準拠して作成した圧縮玉を用いて測定している。
【0045】
前記母体層の反発弾性率は20〜70%とし、好ましくは30〜70%としている。
これは、母体層の反発弾性率が70%を超えるとクリーニングブレードと感光体との間の摩擦抵抗により回転する感光体表面でクリーニングブレードが振動する現象、いわゆる「びびり」がクリーニングブレード全体で大きく発生し、感光体上のトナーの除去性能が悪くなるからであり、20%未満であると弾性が乏しくなりクリーニング性能が悪くなるおそれがあるからである。
一方、前記エッジ層の反発弾性率は20〜70%とし、好ましくは40〜70%としている。これは、エッジ層の反発弾性率が70%を超えると、びびりが大きくなるため、感光体上のトナーの除去性能が悪くなり、20%未満であると弾性がなくなり、感光体回転方向にめくれるおそれがあるため好ましくないからである。
なお、前記反発弾性率は、前記母体層と前記エッジ層を構成するそれぞれのシートについて、作成した圧縮玉を用いて、JIS K 6255のリュプケ式により温度23℃で測定している。
【0046】
前記母体層の引張永久歪みは0〜10%とし、好ましくは8%以下としている。これは、母体層の引張永久歪みが10%より大きいと、画像形成装置に長期に渡り設置されると感光体へのブレードの圧力が小さくなり、クリーニング不良が発生するからである。引張永久歪みの下限値は特に限定されないが、0に近いほど好ましい。
前記母体層の引張永久歪みは、シートからダンベル状4号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K6262に従って測定している。
【0047】
前記母体層および前記エッジ層の引張強度は10〜80MPaとし、好ましくは30〜70MPaとしている。これは、母体層の引張強度が80MPaを超えるとブレード全体のゴム弾性が乏しくなり、10MPa未満であると脆く摩耗しやすくなるため、好ましくないからである。
前記引張強度は、前記母体層と前記エッジ層を構成するそれぞれのシートからダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251に従って引張速度500mm/分で最大値の強度を測定している。
【0048】
前記母体層およびエッジ層の引張伸びは100〜600%とし、好ましくは200〜500%としている。これは引張伸びが600%を超えると必要以上に伸びが発生して感光体への荷重が弱まり、100%未満であるとブレード全体のゴム弾性がなくなるため、好ましくないからである。
前記引張伸びは、前記母体層と前記エッジ層を構成するそれぞれのシートからダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251の引張試験に従い、引張速度500mm/分での引張破断時の伸び率を測定している。
【0049】
前記エッジ層の動摩擦係数は0.5〜1.5とし、好ましくは0.5〜1.3としている。これは、エッジ層の動摩擦係数が1.5を超えると、鳴き現象やびびりが発生し、反転現象も起こりやすくなり、さらにトナーの除去性能が悪くなるために好ましくないからである。また、0.5未満であると感光体との摩擦力が働かなくなり、トナーを除去できなくなるので好ましくない。
前記動摩擦係数は、2mm厚シートより20mm長さのクリーニングブレードを作成して、支持部材に貼り付け、表面性測定機(新東科学(株)製「タイプ14」)に角度20度で装着し、OPC塗布ガラス(自社製のOPC(Organic Photo Conductor)を塗布したガラス)をクリーニングブレードに対してカウンター方式で荷重0.59N、移動速度100mm/秒で移動させ、OPC塗布ガラスに対するクリーニングブレードの摺動抵抗より算出している。なお、動摩擦係数の測定は5回行い、最大値と最小値を除く3回の平均値としている。
【0050】
該熱硬化性エラストマー組成物は、前記のように、
ゴム成分(1)を100質量部とすると、充填剤(2)として少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛とを混合したもの(2a)を5質量部〜60質量部を配合している熱硬化性エラストマー組成物、あるいは
ゴム成分(1)100質量部のうち、ベースポリマーである水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムにメタクリル酸亜鉛を分散させたもの(1a)を10質量部〜75質量部を配合している熱硬化性エラストマー組成物とし、
メタクリル酸亜鉛の共架橋効果を発揮させて機械的物性を向上させ、クリーニングブレードとして、所要の面圧と弾性とを付与すると共に、過剰な補強効果を発生しないように抑制して、弾性機能が失われないようにしている。
【0051】
前記充填剤(2)としてメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛とを混合する場合、ゴム成分(1)としては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、カルボニル基を導入したアクリロニトリル−ブタジエンゴム、あるいは水素添加したアクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム(U)等が好適に用いられる。
これらは1種類を単独に用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0052】
ゴム成分(1)としてはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)あるいは/および水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)を用いることが好ましい。特に、残存二重結合が10%以下である水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)を用いることが最も好ましい。
【0053】
NBRまたはH−NBRの原料となるNBRとしては、結合アクリロニトリル量が25%以下である低ニトリルNBR、結合アクリロニトリル量が25%〜31%である中ニトリルNBR、結合アクリロニトリル量が31%〜36%である中高ニトリルNBR、結合アクリロニトリル量が36%以上である高ニトリルNBRのいずれを用いてもよいが、メタクリル酸亜鉛を微分散させるベースポリマーであるHNBRの結合アクリロニトリル量は、17%〜50%であることが好ましく、さらに21%〜46%であることが好ましい。
【0054】
また、アクリロニトリルブタジエンゴムあるいは/および水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムに所望により他のゴムを組み合わせてもよい。他のゴムとしては先に例示したゴムのいずれを用いてもよいが、アクリロニトリルブタジエンゴムあるいは/および水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(ゴムa)に他のゴム(ゴムb)を組み合わせて用いる場合には、ゴム成分(1)の総質量を100質量部とすると、ゴムaの配合量を90質量部〜50質量部、好ましくは90質量部〜70質量部とし、ゴムbの配合量を10質量部〜50質量部、好ましくは10質量部〜30質量部とすることが好ましい。
【0055】
前記充填剤(2)としては、メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛とを混合したもの(2a)を配合し、前記のように、ゴム成分(1)100質量部に対し、5質量部〜60質量部配合している。
さらに、共架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、ゴム用軟化剤、補強剤、その他の添加剤からなる充填剤(2b)の群から選択される1種または2種以上のものを配合することが好ましい。充填剤(2b)は、ゴム成分(1)100質量部に対し、0.1〜80質量部配合することが好ましい。
【0056】
一方、ゴム成分として、ベースポリマーである水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)にメタクリル酸亜鉛を高度に微分散させたものを用いる場合、H−NBRにメタクリル酸亜鉛を混入して微分散させてもよいし、H−NBRにメタクリル酸と酸化亜鉛とを混入し、混合によって生成されるメタクリル酸亜鉛をH−NBRに微分散させるようにしてもよい。
前記H−NBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたものでは、該H−NBR100質量部に対してメタクリル酸亜鉛を40質量部〜240質量部で配合するのが好ましく、80質量部〜120質量部で配合するのがより好ましく、91質量部〜115質量部で配合していることが最も好ましい。
H−NBRにメタクリル酸亜鉛を高度に微分散させたものとしては、予めH−NBRにメタクリル酸亜鉛が混合され微分散された市販品、例えば日本ゼオン(株)製 Zeoforte ZSCシリーズ等を用いることもできる。
この場合、ゴム成分(1)100質量部のうち、ベースポリマーである水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムにメタクリル酸亜鉛を分散させたもの(1a)を10質量部〜75質量部を配合している。
【0057】
前記充填剤(2)の共架橋剤とは、それ自身も架橋すると共に、ゴム分子とも反応して架橋し全体を高分子化する働きをするものを総称している。
共架橋剤としては、一般的に、エチレン性不飽和単量体、多官能ポリマー類またはジオキシム等が挙げられる。
【0058】
共架橋剤として好ましく用いられるエチレン性不飽和単量体としては、
メタクリル酸;
トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、テトラハイドロフルフリルメタクリレートもしくはイソブチレンエチレンジメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;
アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸アルミニウム、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸カルシウム、メタクリル酸カルシウム、アクリル酸マグネシウムもしくはメタクリル酸マグネシウム等のメタクリル酸もしくはアクリル酸の金属塩;
トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルイタコネート、ビニルトルエン、ビニルピリジンまたはジビニルベンゼン
等が挙げられる。
また、前記多官能ポリマー類としては、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマー類が挙げられ、より具体的には、Buton150、Buton100、ポリブタジエンR−15、Diene−35またはHystal−B2000等が挙げられる。
前記ジオキシムとしては、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムまたはN,N’−m−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。
【0059】
前記した共架橋剤のうち、メタクリル酸亜鉛を主要な共架橋剤として機能させているが、必要に応じて他の共架橋剤を併用してもよい。
【0060】
前記加硫促進剤としては、無機促進剤または有機促進剤のいずれを用いることが可能である。
無機促進剤としては、消石灰、MgO等の酸化マグネシウム、酸化チタンまたはリサージ(PbO)等が挙げられる。
有機促進剤として、チウラム類、チアゾール類、チオウレア類、ジチオカーバミン酸塩類、グアニジン類およびスルフェンアミド類等が例示される。
【0061】
チウラム類としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドまたはジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
チアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドまたはN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
チオウレア類としては、N,N’−ジエチルチオウレア、エチレンチオウレアまたはトリメチルチオウレア等が挙げられる。
ジチオカーバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカーバミン酸銅、ジメチルジチオカーバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカーバミン酸セレン、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等が挙げられる。
グアニジン系促進剤としては、ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等が挙げられる。
スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。
【0062】
前記加硫促進剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、本発明においては、必要に応じてゴム成分100質量部に対して0〜3質量部の範囲から選択することができる。
【0063】
加硫促進助剤としては、亜鉛華、炭酸亜鉛等の金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸もしくは綿実脂肪酸等の脂肪酸;その他従来公知の加硫促進助剤等が挙げられる。なお、亜鉛華等の金属酸化物は下記の補強剤としての役割も果たす。
前記加硫促進助剤の配合量はゴム成分の物性が十分に発揮される量であればよく、本発明においては、ゴム成分100質量部に対して0〜30質量部、さらに0.5〜5質量部の範囲から選択することが好ましい。
なお、本発明においては、ゴム成分に酸化亜鉛とメタクリル酸を混合したものを配合することにより、ゴム中でメタクリル酸亜鉛を生成させ、このメタクリル酸亜鉛の共架橋効果を発揮させているが、このように、メタクリル酸亜鉛を生成させる目的でメタクリル酸と共に配合している酸化亜鉛は共架橋剤に含め、加硫促進助剤には含めていない。
可塑剤としては、例えば、フタル酸系、アジピン酸系、セバチン系、安息香酸系などの化合物が用いられ、具体的には、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルフォスフェート(TCC)などが挙げられる。
【0064】
また、前記老化防止剤とは、老化と呼ばれる酸化劣化、熱劣化、オゾン劣化、疲労劣化などの一連の劣化を防止する配合剤のことをいい、アミン類やフェノール類からなる一次老化剤と、硫黄化合物やフォスファイト類からなる二次老化防止剤とに分類される。一次老化防止剤は各種ポリマーラジカルに水素を供与して自動酸化の連鎖反応を停止させる機能を有し、二次老化防止剤はヒドロキシペルオキシドを安定なアルコールに変えることにより安定化作用を示すものである。
【0065】
近年の画像形成装置用クリーニングブレードはあらゆる環境にさらされるため、クリーニングブレードには老化に対する防止対策が必要となる。まず、感光体ドラムとクリーニングブレードとの摩擦によりポリマーが破壊され、ポリマーの破壊によって発生したラジカルが自動酸化反応を促進し、酸化劣化として磨耗が促進されるため、クリーニングブレードには酸化劣化の防止対策が必要である。また、クリーニングブレードは高温環境にさらされるため、熱劣化の防止対策も重要である。さらに、帯電機構によりオゾンが発生するため、オゾン劣化の防止対策も必要である。そのため、数種の老化防止剤を組み合わせることにより、前記の各劣化を防止することができる。特に、酸化劣化によるクリーニングブレードのエッジ磨耗を防止するための老化防止剤を配合することは重要である。
【0066】
前記老化防止剤としては、アミン類、フェノール類、イミダゾール類、リン類またはチオウレア類等が挙げられる。
アミン類としては、フェニル−α−ナフチルアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマー(TMDQ)、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(ETMDQ)、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン(ODPA)、p,p’−ジクミルジフェニルアミン(DCDP)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD)等が挙げられる。
フェノール類としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DTBMP)、スチレン化メチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMBP)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(TBMTBP)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(DBHQ)、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン(DAHQ)等が挙げられる。
イミダゾール類としては、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(ZnMBI)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(NiBDC)等が挙げられる。
その他、トリス(ノニル化フェニル)フォスファイト(TNPP)などのリン類、1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオウレア、トリブチルチオウレア(TBTU)などのチオウレア類、オゾン劣化防止用ワックス等を用いてもよい。
なかでも、p,p’−ジクミルジフェニルアミン、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が好適に用いられる。
【0067】
前記老化防止剤の配合量はゴム成分100質量部に対して0.1質量部〜15質量部であることが好ましい。ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の配合量を0.1質量部〜15質量部としているのは、配合量が0.1質量部未満であると、老化防止の効果が発揮されず、機械的物性の低下や磨耗が激しく進行してしまうおそれがあるためであり、配合量が15質量部を超えると、過剰な配合により分散不良が生じ、機械的物性の低下を招くおそれがある。
好ましくは、ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の配合量が0.5質量部〜10質量部である。
【0068】
前記ゴム用軟化剤としては、具体的には、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、セバチン酸誘導体、安息香酸誘導体およびリン酸誘導体などが挙げられる。前記ゴム用軟化剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、必要に応じてゴム成分100質量部に対して0質量〜5質量部の範囲から選択することができる。
【0069】
前記補強剤としては、ゴムとの相互作用を導くフィラーとして主にカーボンブラックが使用される他、例えばホワイトカーボン(例えば乾式シリカもしくは湿式シリカなどのシリカ系充填剤、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩等)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウム・シリケート、クレー(ケイ酸アルミニウム)、シラン改質クレーもしくはタルクなどの無機補強剤や、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、木粉等の有機補強剤が挙げられる。
カーボンブラックとしては、例えばSAFカーボン(平均粒径18〜22nm)、ISAFカーボン(平均粒径19〜29nm)、HAFカーボン(平均粒径26〜30nm)、FEFカーボン(平均粒径40〜52nm)等が例示される。
なかでも、補強効果、コスト、分散性および耐摩耗性に優れたISAFカーボン(平均粒径19〜29nm)が好適に用いられる。
【0070】
本発明においては、メタクリル酸亜鉛の共架橋効果により熱硬化性エラストマー組成物の機械的物性を大幅に向上させることができるため、前記補強剤は必ずしも必要ではないが、必要に応じて前記補強剤をゴム成分100質量部に対して0質量部〜100質量部の範囲から選択して配合することができる。
【0071】
その他の添加剤としては、アミド化合物、脂肪酸金属塩またはワックス等が挙げられる。
アミド化合物としては、脂肪族系アミド化合物または芳香族系アミド化合物が挙げられる。脂肪族系アミド化合物の脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸、エルシン酸、エライジン酸、トランス−11−エイコセン酸、トランス−13−ドコセン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸が挙げられる。脂肪族系アミド化合物としては、具体的にはエチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミドなどが挙げられ、特に、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドが好ましい。
脂肪酸金属塩としては、脂肪酸がラウリル酸、ステアリン酸、パルミチン酸、またはオレイン酸であり、金属が亜鉛、鉄、カルシウム、アルミニウム、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、鉛またはマンガンである塩が挙げられる。
ワックスとしては、パラフィン系ワックス、モンタン系ワックス、アマイド系ワックス等が挙げられる。
これらの添加剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、本発明においては、ゴム成分100質量部に対して0質量部〜10質量部の範囲から選択することができる。
【0072】
さらに、本発明のクリーニングブレードを構成する熱硬化性エラストマー組成物には架橋剤(3)を0.1質量部〜30質量部で配合していることが好ましい。これは、架橋剤(3)の配合量が0.1質量部未満であると加硫密度が小さくなり所望の物性が得られなくなるおそれがあるからであり、一方、架橋剤(3)の配合量が30質量部を超えると過剰な架橋反応により硬度が大きくなりすぎ、本発明のクリーニングブレードが感光体ドラムを傷つけるおそれがあるからである。
【0073】
前記架橋剤(3)としては、有機過酸化物、硫黄、有機含硫黄化合物、耐熱性架橋剤または樹脂架橋剤等が挙げられる。
硫黄としては、粉末硫黄が挙げられる。
有機含硫黄化合物としては、例えば、N,N’−ジチオビスモルホリン、ジフェニルジスルフィド、ペンタブロモジスルフィド、ペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩などが挙げられる。
有機過酸化物としては、ジクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)−3−ヘキセン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が挙げられる。その中でも、ジクミルパーオキシドが好適に用いられる。
耐熱性架橋剤としては、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6−ビス(ジベンジルチオカルバモイルジスルフィド)ヘキサン等が挙げられる。
樹脂架橋剤としては、タッキーロール201、タッキーロール250−III(以上、田岡化学工業(株)製)、ヒタノール2501(日立化成工業(株)製)などアルキルフェノール樹脂または臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0074】
前記架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上の組合わせとすることも可能である。前記架橋剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、通常は前記したように、ゴム成分(1)100質量部に対して0.1質量部〜30質量部の範囲から選択される。
【発明の効果】
【0075】
前述したように、本発明のクリーニングブレードは、回転している感光体ドラムに当接するクリーニングブレードのニップ幅を適切に調整しているので、感光体ドラム表面に残留するトナーのクリーニング性能を確実に向上させることができる。特に、本発明のクリーニングブレードは小粒径・球形重合トナーに対するクリーニング性能に優れている。
【0076】
また、エッジ層と母体層とを組み合わせた2層構造とした場合、装着する画像形成装置、特に、感光体に対応させ(さらに、使用するトナーに応じて)、エッジ層に付与する弾性と圧力のバランスをいずれに重点をおくかによって、該エッジ層と組み合わせる母体層を選択し、これらエッジ層と母体層との組み合わせで、感光体表面の微細凹凸に追従できる弾性を付与しながら、感光体へのエッジの線圧を高めることができ、しかも、長期に渡って耐摩耗性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、画像形成装置における本発明のクリーニングブレードの実施形態について詳述する。
図4に、クリーニングブレード20および当該クリーニングブレードが装着された画像形成装置を示す。
クリーニングブレード20は、通常、接着剤により支持部材21に接合されている。支持材21は剛体の金属、弾性を有する金属、プラスチックまたはセラミック等で形成されたものが用いられるが、金属製が好ましく、クロムフリーSECC製が特に好ましい。
クリーニングブレード20と支持部材21とを接合するために用いる接着剤としては、ポリアミド系もしくはポリウレタン系ホットメルト接着剤や、エポキシ系もしくはフェノール系接着剤等が挙げられる。これらのなかではホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0078】
図4に示す画像形成装置において、以下の工程で画像が形成される。
まず、感光体ドラム12が図中の矢印の方向に回転し、帯電ローラ11によって感光体ドラム12が帯電された後に、鏡16を介してレーザー17が感光体ドラム12の非画像部を露光して除電し、画線部に相当する部分が帯電した状態になる。次に、トナー15aが感光体ドラム12上に供給されて、帯電画線部にトナー15aが付着し1色目の画像が形成される。このトナー画像は一次転写ローラ19aを介して中間転写ベルト13上へ転写される。同様にして、感光体ドラム12上に形成されたトナー15b〜15dの各色の画像が中間転写ベルト13上に転写され、転写ベルト13上に4色のトナー15(15a〜15d)からなるフルカラー画像が一旦形成される。このフルカラー画像は二次転写ローラ19bを介して被転写体(通常は紙)18上へ転写され、所定の温度に加熱されている定着ローラ14を通過することで被転写体18の表面へ定着される。
【0079】
前記工程において、複数枚の記録紙に順次複写を行うために、中間転写ベルト13上へ転写されず感光体ドラム12上に残留したトナーは、感光体ドラム12表面に圧接されているクリーニングブレード20が感光体ドラム12を摺擦することにより除去され、トナー回収ボックス22に回収される。
【0080】
第1実施形態のクリーニングブレード20は、単層の1部材からなるものとしている。
該クリーニングブレード20は、図5に示すように、感光体ドラム12の外周面12aにエッジ20xで当接させ、後述する実施例に記載の方法で測定した動的状態のニップ幅が3〜10μmとなる設定としている。
即ち、該クリーニングブレード20は、回転している感光体ドラム12に対して、2〜60N、好ましくは2〜40Nの荷重で押し当てられ、1.3〜66.7MPa、好ましくは1.3〜45MPaの面圧で感光体ドラム12に当接させた状態で、クリーニングブレード20のニップ幅が3〜10μmになるようにしている。
【0081】
前記のように、クリーニングブレード20を小さい荷重で面圧を高くして当接させ、ニップ幅を3〜10μmとすることにより、クリーニングに適切な条件とすることができ、小粒径・重合トナーに対しても良好なクリーニング性能を得たものとすることができる。
荷重及び面圧は、後述する実施例に記載の方法で測定している。
【0082】
本実施形態のクリーニングブレード20は、熱硬化性エラストマー組成物から成形している。
該熱硬化性エラストマー組成物は、少なくともゴム成分(1)と充填剤(2a、2b)と架橋剤(3)を含む。
前記ゴム成分(1)としては、アクリロニトリルブタジエンゴムあるいは/および水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(1a)を用いている。
アクリロニトリルブタジエンゴムとしては、結合アクリロニトリル量が31%〜36%である中高ニトリルアクリロニトリルブタジエンゴムを用いることが好ましい。
水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムとしては、中高ニトリルアクリロニトリルブタジエンゴムに水素添加し、残存二重結合が10%以下としたものが好ましく、これをゴム成分(1)として用いることが最も好ましい。
【0083】
充填剤(2)としては、共架橋剤であるメタクリル酸と酸化亜鉛とを混合したもの(2a)をゴム成分(1)に配合している。この場合のメタクリル酸と酸化亜鉛の混合比率は約1:1としており、メタクリル酸と酸化亜鉛を混合したものの配合量はゴム成分(1)に対して5質量部〜60質量部配合している。
また、充填剤(2)として、共架橋剤としては、メタクリル酸亜鉛(2a)を配合することもできる。メタクリル酸亜鉛の配合量はゴム成分(1)100質量部に対して、5質量部〜60質量部の割合で配合している。
【0084】
メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛を混合したものを充填剤(2)として配合せず、ゴム成分(1)中に、ベースポリマーであるHNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたものをゴム成分(1a)を配合することもできる。即ち、ゴム成分(1)としては、同様にNBRあるいは/およびHNBR(ゴムa)を用い、そのゴム成分(1)100質量部に対して10質量部〜75質量部はベースポリマーであるHNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたゴム成分(1a)を用いている。
【0085】
ベースポリマーであるHNBRに分散させるメタクリル酸亜鉛の量は、HNBR100質量部に対して91質量部〜110質量で配合している。
また、ベースポリマーであるHNBRの結合アクリロニトリル量は21%〜44%であり、さらに、ベースポリマーであるHNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)は40〜150である。
【0086】
また、他の充填剤(2b)として、加硫促進剤、加硫促進助剤、補強剤、老化防止剤を配合している。
前記加硫促進剤としては、無機促進剤である酸化マグネシウム、有機促進剤であるジベンゾチアジルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドを用いている。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分(1)100質量部に対して0〜3質量部としている。
加硫促進助剤としては、前記酸化亜鉛以外のほか、ステアリン酸を用いている。前記ステアリン酸の配合量はゴム成分100質量部に対して0〜5質量部としている。
補強剤としては、カーボンブラックを用いている。補強剤の配合量は、ゴム成分(1)100質量部に対して0質量部〜100質量部としている。
老化防止剤としては、p、p’−ジクミルジフェニルアミン、2−メルカプトベンゾイミダゾールを用いている。老化防止剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し0.1質量部〜15質量部としている。
【0087】
架橋剤(3)として、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物を用いている。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記硫黄としては粉末硫黄を用いている。硫黄の配合量はゴム成分100質量部に対し、0質量部〜30質量部としている。
前記硫黄化合物としてはジフェニルジスルフィドを用いている。硫黄化合物の配合量はゴム成分100質量部に対し0.1質量部〜20質量部としている。
前記有機過酸化物としてはジクミルパーオキシドを用いている。有機過酸化物の配合量はゴム成分100質量部に対し0.5質量部〜10質量部、好ましくは1質量部〜6質量部としている。
架橋剤(3)の配合量は、ゴム成分(1)100質量部に対し、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物の合計で0.5質量部〜30質量部としている。
【0088】
本発明で用いる熱硬化性エラストマー組成物は以下のようにして作製している。
まず、ゴム成分(1)と充填剤(2)を一軸押出機、1.5軸押出機、二軸押出機、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサーまたは熱ロールなどの混練装置を用いて混練する。混練温度は80℃〜120℃、混練時間は5〜6分である。混練温度が80℃未満、混練時間が5分未満ではゴム成分(1)が十分に可塑化せず混練りが不十分となりやすいからであり、混練温度が120℃を超え、混練時間が6分を超えてはゴム成分(1)が分解するおそれがあるからである。
【0089】
ついで、得られた混合物に架橋剤(3)を添加し、前記のような混練装置を用いて混練する。混練温度は80℃〜90℃、混練時間は5分〜6分である。混練温度が80℃未満、混練時間が5分未満では混合物が十分に可塑化せず混練りが不十分となりやすいからであり、混練温度が90℃を超え、混練時間が6分を超えては架橋剤(3)が分解するおそれがあるからである。
【0090】
以上のようにして得られた熱硬化性エラストマー組成物より本発明のクリーニングブレード20を成形している。該クリーニングブレード20は、厚さ(T)は1mm〜3mm、長さ(L)は10mm〜40mm、幅(W)は200mm〜500mmの短冊状に成形・加工することが好ましい。
成形方法としては特に限定されず、射出成形や圧縮成形など公知の成形方法を用いればよい。
具体的には、例えば、熱硬化性エラストマー組成物を金型内にセットして、160℃〜170℃にて20分〜40分間プレス加硫するという方法が挙げられる。加硫温度が160℃未満、加硫時間が20分未満では加硫不足になるからであり、加硫温度が170℃を超え、加硫時間が40分を超えてはゴム成分が分解するおそれがあるからである。
【0091】
この他、ゴム成分(1)として、ポリウレタンゴムを用いる場合には、次のようにポリウレタンゴムシートを作製してもよい。
まず、主剤であるイソシアネート(R−N=C=O)と硬化剤であるポリエーテルポリオールあるいはポリエステルポリオールを混ぜ合わせてプレポリマーを作成したのち、該プレポリマーに架橋剤を70℃で混合して、ポリウレタン液状物(未硬化ポリウレタン組成物)を作製する。次に未硬化性ポリウレタン組成物をシートが作製できる金型に注入し、140〜150℃で20〜40分間加熱・硬化して、シートを成形している。また、市販品のポリウレタンゴムシートを用いることも可能である。
【0092】
このようにして得られるクリーニングブレード20は、硬度(JIS−A)が60〜90、反発弾性率が20〜70%、引張強度が10〜80MPa、引張伸びが100〜600%となる物性を有する。前記物性とすることにより、耐摩耗性に優れ、小粒径・球形重合トナーのクリーニング性能を向上させることができる。
前記物性は、実施例に記載の方法で測定している。
【0093】
クリーニングブレード20は、荷重をかけて感光体ドラム12に当接させると、感光体ドラム回転時において前記した範囲のニップ幅となり、鳴きや反転現象が起こることもなく、耐磨耗性、クリーニング性能に優れた感光体のクリーニングブレードとなる。
【0094】
以下、本発明の第1実施形態の実施例1〜6および比較例1〜3について説明する。
【0095】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
ゴム成分(1)及び充填剤(2a、2b)を表1(A)〜(D)に示す配合量計量し、二軸押出機、オープンロール、バンバリーミキサーまたはニーダーなどのゴム混練装置に投入して80℃〜120℃に加熱しながら5分〜6分間混練りした。
得られた混合物と表1に示す配合量の架橋剤(3)をオープンロール、バンバリーミキサーまたはニーダーなどのゴム混練装置に投入して、80℃〜90℃に加熱しながら5分〜6分間程度混練りした。
得られたゴム組成物を金型内にセットし、160℃〜170℃にて20分〜40分間程度プレス加硫して、2mm厚のシートを作製した。
【0096】
【表1】

【0097】
なお、表1のゴム成分(1)、充填剤(2)、架橋剤(3)の配合量の単位は質量部であり、ZDMA含有HNBRのメタクリル酸亜鉛(2a)量は、ゴム成分(1)のZDMA含有HNBRに含有されているメタクリル酸亜鉛(2a)量(質量部)である。
表1に示す「全ゴム成分100質量部に対する充填剤(2a)の質量」は、ZDMA含有HNBR以外のゴム成分とZDMA含有HNBR中のベースポリマーであるHNBRの総質量で示される、全ゴム成分100質量部に対する前記ZDMA含有HNBR中のメタクリル酸亜鉛(2a)量を含めた充填剤(2a)の総質量を示している。
【0098】
表1に記載の成分のうち下記成分については、具体的に下記製品を用いた。
・NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム);JSR(株)製「N232S」(結合アクリロニトリル量35%)
・H−NBR(水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム);日本ゼオン(株)製「Zetpol2010H(商品名)」(結合アクリロニトリル量36% ムーニー粘度145)
・ZDMA含有HNBR(ベースポリマーであるHNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたもの);日本ゼオン(株)製「Zeoforte ZSC 2195H(商品名)」(メタクリル酸亜鉛の含有量:50質量%)
・メタクリル酸;三菱レイヨン(株)製「MAA(商品名)」
・酸化亜鉛;三井金属(株)製「酸化亜鉛2種(商品名)」
・カーボンブラック;東海カーボン(株)製「シーストISAF(商品名)」
・老化防止剤A(p,p’−ジクミルジフェニルアミン);大内新興化学(株)製「ノクラックCD(商品名)」
・老化防止剤B(2−メルカプトベンゾイミダゾール);大内新興化学(株)製「ノクラックMB(商品名)」
・硫黄化合物(ジフェニルジスルフィド);住友精化(株)製「DPDS(商品名)」
・有機過酸化物(ジクミルパーオキシド);日本油脂(株)製「パークミルD(商品名)」
【0099】
前記表1(A)〜(D)の熱硬化性エラストマー組成物からなる実施例及び比較例のクリーニングブレードの下記物性は前記した方法と同一の方法で測定した。即ち、
(1)硬度(JIS−A);JIS K 6253に従って、作成した圧縮玉を用いてタイプAにて測定した。
(2)反発弾性率;作成した圧縮玉を用いて、JIS K 6255のリュプケ式により温度23℃で測定した。
(3)引張強度;作製した2mm厚のシートからダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251に従って引張強度500mm/分で引張強度を測定した。
(4)引張伸び;作製した2mm厚のシートからダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251の引張試験に従い、引張速度500mm/分での引張破断時の伸び率を測定した。
【0100】
次に、前記2mm厚シートをブレード状の大きさに打抜き、クロムフリーSECC製の支持部材にホットメルトを用いて貼り付け、シート中心部をカットしてクリーニング部材を作製した。表2に示す荷重をかけたときのニップ幅及び面圧をそれぞれ測定し、表2に記した。
【0101】
【表2】

【0102】
ニップ幅、荷重及び面圧は、前記した方法と同一の方法で測定した。即ち、
(5)ニップ幅;クリーニング部材を、回転する感光体ドラムを備えると共に重合トナーの現像を可能とした、実機の画像形成装置と同様の機能を有する自社製の測定装置(図示せず)に装着する。
前記図3(A)に示すように、内部に反射鏡31を備えた透明な直径30mmの円柱ガラス30を準備し、前記円柱ガラス30に対してクリーニングブレード1(20)を、荷重2〜60Nで当接させた。なお、該円柱ガラス30の表層には感光体ドラムの表層材料と同一の透明な材料を塗布しておいた。
次に、円柱ガラス30の側面に高速度カメラ40(Photron製FASTCAM−APX−RS−250K)を設置し、該円柱ガラス30を200mm/secの線速で回転させたときに円柱ガラス30内部の反射鏡31に映し出されたクリーニングブレード20を撮影速度100,000fps、露光時間10μsで撮影した。
図3(B)に示すように観察された画像50の影51の幅W3を測定し、別に測定したスケール画像により換算して、ニップ幅を算出した。
ニップ幅は、撮影した画像の中からランダムに8枚の静止画を選択し、その平均値として求めた。
なお、試験は、温度23℃、相対湿度55%で行った。
【0103】
(6)荷重;ニッタ製「PINCH−A3」にて、測定、観測した。
(7)面圧;荷重、ニップ幅及びクリーニングブレードの稜線の長さから下式を用いて算出した。
面圧(MPa)=荷重(N)/クリーニングブレードの接触面積(mm
クリーニングブレードの接触面積(mm)=ニップ幅(mm)×クリーニングブレードの稜線の長さ(mm)
【0104】
次に、前記クリーニングブレードについて、以下の評価を行なった。
【0105】
(8)鳴き及び反転現象評価;図9に示すように、水平におかれたOPC(自社製のOrganic Photo Conductor)を塗布したガラス25上に小粒径・球形重合トナー(キャノン、富士ゼロックスの市販のプリンターより抜きだした市販のトナー)を付着させた。OPC塗布ガラス25に対し20度の角度で保持し、その角度を保ったままOPC塗布ガラス25を水平に200mm/secでスライドさせた。その際の鳴き・反転現象を有無を観察した。なお、本試験は常温23℃、相対湿度55%で行なった。
表2においては、鳴き・反転現象が全く観察されない場合を「○」とし、わずかに観察される場合を「△」とし、ひどく観察される場合を「×」とした。
【0106】
(9)耐磨耗性評価
クリーニングブレード20を感光体ドラムが回転し画像形成可能な画像形成装置(市販品プリンタ)に装着し、感光体ドラムの回転速度200〜500mm/sec、4%の印字濃度で150,000枚印刷し、その後クリーニングブレード20のエッジを観察した(図6(A))。耐摩耗性評価は、図6(A)(B)に示すように、ブレードゴム磨耗面の断面長さWs(20a)を傾斜45度時の水平距離としてブレードゴム磨耗面の断面長さWs45(20d)を測定し、その大小で耐摩耗性を評価した。クリーニングブレード10の20bは摩耗幅Wc、20cは摩耗深さWmである。
なお、本試験は常温23℃、相対湿度55%で行った。
表2において、耐磨耗性が40μm以下の場合を「○」、40μmを超える場合を「×」とした。
【0107】
(10)クリーニング性能評価
クリーニング部材を感光体ドラムが回転し画像形成可能な画像形成装置(自社製)に装着する。
あらかじめ感光体ドラムへの単位面積あたりトナー量を計算しておき(すり抜け前トナー量)、4%印字濃度で100,000枚(100k枚)印刷後、感光体ドラムを回転させ、クリーニングブレードにトナーをクリーニングさせた時のクリーニングブレード後方の感光体ドラム上に存在するトナー量(すり抜け後トナー量)を単位面積に換算し、(クリーニング性能)=(すり抜け後トナー量)/(すり抜け前トナー量)としてクリーニング性能値を算出した。なお、100k枚印刷する前に、鳴き・反転現象が見られる等、クリーニング不良が生じていると判断した場合には途中で印刷を止め、その時点でのクリーニング性能値を算出した。
本試験は常温23℃、相対湿度55%で行い、トナーとして体積平均粒径が5〜10μm、球形化度0.90〜0.99の真球重合トナーを用いた。
クリーニング性能は0.5以下であれば、良好であり、表2において、クリーニング性能が0.5以下の場合を「○」、0.5を超えて0.7以下の場合を「△」、0.7を超える場合を「×」とした。
【0108】
前述した鳴き、反転現象、耐磨耗性、クリーニング性能の4項目の評価結果から、
「○」が3個以上かつ「×」がないものを「○」、
「○」が2個以上かつ「×」がないものを「△」、
「×」が1個以上あるものを「×」、として総合評価を行った。
【0109】
表2に示すように、配合(B)または(C)の熱硬化性エラストマー組成物から形成した実施例1〜6のクリーニングブレードは、60Nの荷重を加えた実施例3でクリーニング性能が0.51となり、僅かに鳴きが観察されて総合評価が「△」となった以外は、いずれも総合評価が「○」となった。このように実施例のクリーニングブレードは、感光体ドラム回転時のニップ幅が3〜10μmの範囲となり、鳴き・反転現象の発生もなく、耐磨耗性、クリーニング性能に優れていた。
一方、配合(A)または配合(D)の熱硬化性エラストマー組成物から形成した比較例1〜3のクリーニングブレードは、実施例と同一荷重を加えても感光体ドラム回転時のニップ幅が3〜10μmの範囲外となり、総合評価も「×」となった。このように、比較例1〜3のクリーニングブレードは全ての評価において、実施例1〜6のクリーニングブレードに対して劣っていた。
【0110】
図7に、本発明のクリーニングブレードの第2実施形態を示す。
第2実施形態のクリーニングブレード20は母体層20−1とエッジ層20−2とからなる二層構造としている。
エッジ層20−2は母体層20−1の感光体側の厚さ方向の一面全面に一体的に固着している。即ち、感光体25の表面12aへの当接側のエッジ層20−2と非当接側の母体層20−1の2層構造からなる。
【0111】
エッジ層20−2の厚さをt1、母体層の厚さをt2とすると、t1<t2としている。
。エッジ層20−2の厚さt1は0.05〜0.5mmとし、母体層20−1の厚さt2を1.5〜1.95mmとしている。クリーニングブレード20の厚さ(t1+t2=T)を1〜3mmとしている。
前記エッジ層20−2、母体層20−1を一体化したクリーニングブレード20の長さ(L)は10mm〜40mmとし、長さと直交する幅(W)は200mm〜500mmとしている。
【0112】
また、本発明のクリーニングブレードは、母体層20−1の硬度(JIS−A)を60〜90、反発弾性率を20〜70%、引張永久歪みを0〜10%、引張強度を10〜80MPa、引張伸びを100〜600%とし、エッジ層20−2の硬度(JIS−A)を60〜90、反発弾性率を20〜70%、動摩擦係数を0.5〜1.5、引張強度を10〜80MPa、引張伸びを100〜600%とし、該範囲内で母体層20−1とエッジ層20−2の物性を相違させている。
【0113】
前記エッジ層20−2は高硬度材で形成し、硬度を70以上90以下、反発弾性率を20%以上45%未満とし、母体層20−1は低硬度材で形成し、特に硬度を60以上75未満、反発弾性率を35%以上70%以下としている。
【0114】
前記エッジ層20−2と前記母体層20−1は、共に前記第1実施形態のクリーニングブレードと同様の熱硬化性エラストマー組成物で形成し、少なくともゴム成分(1)、充填剤(2a、2b)及び架橋剤(3)を含んでいる。また、母体層20−1とエッジ層20−2ををそれぞれ構成するシートをそれぞれ射出成形や圧縮成形など公知の方法で成形している。
【0115】
得られたエッジ層と母体層を構成するそれぞれのシートを重ねて金型内にセットし、160℃で30分間プレス加硫することにより加硫接着している。その後、図7(B)の点線に示すように、シート中心部を稜線カットしてクリーニングブレード20を作製している。
該クリーニングブレード20は第1実施形態と同様に、長さ方向の一端側は、接着剤で支持部材21に接合している。
【0116】
前記第2実施形態の画像形成装置用クリーニングブレード20は、エッジ層は高硬度材とすると共に母体層は低硬度材とし、エッジ層と母体層とを一体化して、全体で所要の圧力と弾性とを付与しているので、感光体12の表面の微細凹凸に追従しながらも、感光体12に対する線圧を高めることができる。さらに耐摩耗性にも優れ、小粒径・球形重合トナーのクリーニング性能に優れている。
【0117】
前記第2実施形態のクリーニングブレード20に代えて、母体層20−1を構成する熱硬化性エラストマー組成物をエッジ層20−2に用い、エッジ層20−2を構成するエラストマー組成物を母体層20−1に用い、母体層20−1とエッジ層20−2を入れ替えて形成してもよい。
この場合、具体的には、前記エッジ層は硬度を60以上75未満、反発弾性率を35%以上70%以下とする低硬度材で形成しているとともに、前記母体層は硬度を70以上90以下、反発弾性率を20%以上45%未満とする高硬度材で形成している。
【0118】
このように、エッジ層を低硬度材、母体層を高硬度材とする2層構造としても、全体で所要の圧力と弾性とを付与しているので、本発明のクリーニングブレードは第1、第2実施形態と同様に、鳴きや反転現象が生じることもなく、耐摩耗性に優れ、小粒径・球形重合トナーのクリーニング性能に優れている。
【0119】
図8に、第3実施形態のクリーニングブレード20を示す。
第3実施形態のクリーニングブレード20は、第2実施形態のクリーニングブレードの母体層20−1とエッジ層20−2の配置方向を変えている。
母体層20−1及びエッジ層20−2を構成するシート材としては、第2実施形態と同様のものを用いているが、該クリーニングブレード20は長さ(L)の方向で2層構造とし、母体層20−1の長さ方向に沿った先端面にエッジ層20−2を固着している。すなわち、感光体12の回転方向の上流側をエッジ層20−2とし、下流側に母体層20−1を配置し、2層構造としている。
【0120】
第3実施形態のクリーニングブレードのエッジ層20−2の長さをL1、母体層の長さをL2とすると、L1<L2としている。エッジ層20−2の長さL1は0.05〜0.5mmとし、母体層20−1の長さL2を11.9〜12.35mmとし、全体長さ(L)を11.95〜12.85mmとしている。
前記エッジ層20−2、母体層20−1を一体化したクリーニングブレード20は、長さ(L)と直交する全体の幅(W)は200mm〜500mmとしている。
【0121】
さらに、第3実施形態では、第2実施形態のように加硫接着とせず、接着剤接着としている。すなわち、エッジ層及び母体層を構成する組成物をそれぞれシートに成形、プレス加硫したシートを接着剤で貼り合わせている。
具体的には、図8(C)に示すように、2つの母体層20−1を構成するシートの端部間に、エッジ層20−2を構成するシートを接着剤で接着したのち、エッジ層を構成するシートの中央部(図中に示す点線部分)で稜線カットしている。
接着剤としては、加硫接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ホットメルト接着剤等を使用している。
第3実施形態のクリーニングブレードは、長さ方向に沿った先端面にエッジ層を備えているので、エッジ層を少ない材料で加工することができる。
その他の構成および効果は、第2実施形態と同様であるので、同一符合を付して説明を省略する。
【0122】
前記第3実施形態のクリーニングブレードに代えて、母体層を構成する熱硬化性エラストマー組成物をエッジ層に用い、エッジ層を構成するエラストマー組成物を母体層に用い、母体層とエッジ層を入れ替えてもよい。
この場合、具体的には、前記エッジ層20−2は硬度を60以上75未満、反発弾性率を35%以上70%以下とする低硬度材で形成しているとともに、前記母体層は硬度を70以上90以下、反発弾性率を20%以上45%未満とする高硬度材で形成している。
このように、エッジ層を低硬度材、母体層を高硬度材とする2層構造としても、全体で所要の圧力と弾性とを付与しているので、第2、第3実施形態と同様に、鳴きや反転現象が生じることもなく、耐摩耗性に優れ、小粒径・球形重合トナーのクリーニング性能に優れている。
【0123】
以下、本発明の第2、第3実施形態の実施例7〜14および比較例4〜6について説明する。
(実施例7〜12、比較例4〜6)
ゴム成分(1)および充填剤(2)を表3に示す配合量(配合E〜J)計量し、二軸押出機、オープンロール、バンバリーミキサーまたはニーダーなどのゴム混練装置に投入して80℃〜120℃に加熱しながら5分〜6分間混練りした。
得られた混合物と表3に示す配合量(配合E〜J)の架橋剤(3)をオープンロール、バンバリーミキサーまたはニーダーなどのゴム混練装置に投入して、80℃〜90℃に加熱しながら5分〜6分間程度混練りした。
得られた配合E〜Jの熱硬化性エラストマー組成物を金型内にセットし、160℃〜170℃にて30分間程度プレス加硫して、母体層を構成するシート及びエッジ層を構成するシートを表4の構成(厚み、組合せ)となるようにそれぞれ作製した。
次いで、接着前の母体層とエッジ層を構成する各シートについて、物性を測定した。測定結果は表4のとおりである。
(実施例13,14)
市販品のポリウレタンゴムシート(配合K,L:市販品1、市販品2)を母体層及びエッジ層として用いた。
物性の測定結果を表4に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
なお、表3のゴム成分(1)、充填剤(2)、架橋剤(3)の配合量の単位は質量部であり、表3に記載の成分のうち下記成分については、具体的に下記製品を用いた。
・H−NBR(水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム);ベースポリマーであるHNBRは、日本ゼオン(株)製「Zetpol2010H」(結合アクリロニトリル量36% ムーニー粘度145)
・ZDMA含有HNBR(ベースポリマーであるHNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたもの);日本ゼオン(株)製「Zeoforte ZSC 2195H」(メタクリル酸亜鉛含量:50質量%)
・ポリウレタンゴム1;市販品ポリウレタンゴムシート
・ポリウレタンゴム2;市販品ポリウレタンゴムシート
・メタクリル酸;三菱レイヨン(株)製「MAA(商品名)」
・酸化亜鉛;三井金属(株)製「酸化亜鉛2種(商品名)」
・カーボンブラック;東海カーボン(株)製「シーストISAF」
・老化防止剤A(p,p’−ジクミルジフェニルアミン);大内新興化学(株)製「ノクラックCD」
・老化防止剤B(2−メルカプトベンゾイミダゾール);大内新興化学(株)製「ノクラックMB」
・有機過酸化物(ジクミルパーオキシド);日本油脂(株)製「パークミルD」
【0127】
前記表4に記載の物性は、前記した方法と同一の方法で測定した。即ち、
(1)硬度(JIS−A);JIS K 6253に従って、作成した圧縮玉を用いてタイプAにて測定した。
(2)反発弾性率;作成した圧縮玉を用いて、JIS K 6255のリュプケ式により温度23℃で測定した。
(3)引張強度;ダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251に従って引張強度500mm/分で引張強度を測定した。
(4)引張伸び;ダンベル状3号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K 6251の引張試験に従い、引張速度500mm/分での引張破断時の伸び率を測定した。
(5)引張永久歪み;ダンベル状4号試験片を打ち抜いて作製し、JIS K6262に従って測定した。
(6)動摩擦係数;図9に示すように、2mm厚シートより20mm長さのクリーニングブレード20を作成して、支持部材21に貼り付け、表面性測定機(新東科学(株)製「タイプ14」)に角度20度で装着し、OPC塗布ガラス25(自社製のOPC(Organic Photo Conductor)を塗布したガラス)をクリーニングブレード20に対してカウンター方式で荷重0.59N、移動速度は100mm/秒で移動させ、OPC塗布ガラス25に対するクリーニングブレード20の摺動抵抗より動摩擦係数を算出した。なお、動摩擦係数の測定は5回行い、最大値と最小値を除く3回の平均値とした。
(7)各層の厚み及び長さ;ダイヤルゲージまたはスケールを用いて測定した。
【0128】
次に、表4に示す構成のクリーニングブレードを作製した。
実施例7、9、11〜14及び比較例4、5は、図7に示す厚さ方向に積層したタイプAの構成とし、エッジ層と母体層を構成するシートを所望のクリーニングブレードの幅及び長さに切り出し、該エッジ層と母体層のシートを厚さ方向にシアノ系接着剤(LOCTITE製401)で接着した後、クロムフリーSECC製の支持部材にホットメルト(ダイヤモンド製材質)を用いて貼り付け、シート中心部を稜線カットして、厚さ方向に2層構造とするクリーニングブレードとした。
【0129】
実施例8,10及び比較例6は、図8に示す長さ方向に積層したタイプBの構成とし、母体層とエッジ層を構成するシートをシアノ系接着剤(LOCTITE製401)で図8(C)のように接着して、クロムフリーSECC製の支持部材にホットメルト(ダイヤモンド製材質)を用いて貼り付け、シート中心部(エッジ層20−2の中央部)を稜線カットして、長さ方向に沿った先端面にエッジ層を有する2層構造を有するクリーニングブレードを作製した。
【0130】
次に、実施例7〜14及び比較例4〜6のクリーニングブレード20を支持部材21に貼り付けてクリーニング部材を作製し、以下の性能評価を行なった。
鳴き及び反転現象評価、耐磨耗性評価、クリーニング性能評価は、前記した実施例1〜6の場合と同様の方法で評価した。
【0131】
表4に示すように、実施例7〜14のクリーニングブレードは、いずれも鳴きや反転現象が発生せず、耐磨耗性にも優れ、かつクリーニング性能は0.5以下となっており、優れていることが確認できた。
一方、比較例4〜6のクリーニングブレードは、表4から明らかなように、いずれの評価においても、実施例7〜14のクリーニングブレードに対して劣ることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】感光体ドラムに対するクリーニングブレードの当接状態を観察する方法を説明する図である。
【図2】感光体ドラムに対するクリーニングブレードの当接状態を説明する図であり、(A)はクリーニングブレードを感光体ドラムに当接させていない状態、(B)はクリーニングブレードを静的状態の感光体ドラムに当接させている状態、(C)はクリーニングブレードを回転している動的状態の感光体ドラムに当接させている状態を示す。
【図3】本発明の第1実施形態のクリーニングブレードのニップ幅の測定方法を説明する図であり、(A)はニップ幅の観察方法、(B)は観察画像を示す図である。
【図4】本発明の画像形成装置用クリーニングブレードを搭載したカラー用画像形成装置の模式図である。
【図5】感光体ドラムに対するクリーニングブレードの当接状態を説明する図である。
【図6】耐摩耗性試験の評価方法について説明する図であり、(A)はクリーニングブレードゴムの磨耗面の断面長さWsを説明するための図、(B)は磨耗面の断面長さWs45を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態の厚み方向に2層構造を有するクリーニングブレードについて説明する図であり、(A)はエッジ層と母体層の配置を示す正面図、(B)は(A)のクリーニングブレードのエッジの形成方法を説明する図である。
【図8】本発明の第3実施形態の長さ方向に2層構造を有するクリーニングブレードについて説明する図であり、(A)はエッジ層と母体層の配置を示す正面図、(B)は(A)の平面図、(C)は(A)のクリーニングブレードのエッジの形成方法を説明する図である。
【図9】クリーニングブレードの鳴き及び反転現象の評価方法及び動摩擦係数の測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0133】
20 クリーニングブレード
20x エッジ
20−1 母体層
20−2 エッジ層
21 支持部材
25 OPC塗布ガラス
30 円柱ガラス
31 反射鏡
40 高速度カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の感光体ドラムの外周面に接触させて該感光体ドラム外周面の残留トナーを除去するクリーニングブレードであって、
熱硬化性エラストマー組成物から成形されており、該熱硬化性エラストマー組成物はゴム成分(1)、充填剤(2)および架橋剤(3)を含み、
前記ゴム成分(1)を100質量部とすると、前記充填剤(2)として、少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛とを混合したもの(2a)を5質量部〜60質量部を配合している熱硬化性エラストマー組成物、あるいは
前記ゴム成分(1)100質量部のうち、ベースポリマーである水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムにメタクリル酸亜鉛を分散させたもの(1a)を10質量部〜75質量部を配合している熱硬化性エラストマー組成物からなり、
前記感光体ドラムの回転時に、該感光体ドラムに対して荷重2〜60N、面圧1.3〜66.7MPaで当接される動的状態において、該回転ドラム外周面との接触幅(ニップ幅)が3〜10μmであることを特徴とする画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項2】
熱硬化性エラストマー組成物から形成され、硬度(JIS−A)が60〜90、反発弾性率が20〜70%、引張強度が10〜80MPa、引張伸びが100〜600%である請求項1に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項3】
前記熱硬化性エラストマー組成物によりそれぞれ成形した母体層とエッジ層とを厚さ方向に積層した2層構造とし、
前記母体層は前記エッジ層より厚みを大とすると共に母体層とエッジ層の長さは同一とし、前記エッジ層の厚み(t1)は0.05〜0.5mmとすると共に該エッジ層は前記感光体ドラムへ当接させるものとしており、
前記母体層は引張永久歪みを0〜10%とし、前記エッジ層は動摩擦係数を0.5〜1.5としている請求項2に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項4】
前記母体層の厚み(t2)が、1.5〜1.95mmである請求項3に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項5】
前記熱硬化性エラストマー組成物によりそれぞれ成形した母体層とエッジ層とを長さ方向に積層した2層構造とし、
前記母体層の長さ(L2)はエッジ層の長さ(L1)よりも大とすると共に母体層とエッジ層の厚さは同一とし、
前記エッジ層の長さ(L1)は0.05〜0.5mmとすると共に、該エッジ層は前記感光体ドラムへ当接させるものとしており、
前記母体層は引張永久歪みを0〜10%とし、前記エッジ層は動摩擦係数を0.5〜1.5としている請求項2に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項6】
前記母体層の長さ(L2)が、11.9〜12.35mmである請求項5に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項7】
前記エッジ層と前記母体層との物性を相違させ、
前記エッジ層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する高硬度材で形成しているとともに、前記母体層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する低硬度材で形成し、あるいは、
前記エッジ層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する低硬度材で形成しているとともに、前記母体層は前記範囲内の硬度、反発弾性率、引張強度、引張伸びを有する高硬度材で形成している請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項8】
前記エッジ層の硬度(JIS−A)を60以上75未満、反発弾性率を35%以上70%以下とする一方、前記母体層の硬度(JIS−A)を70以上90以下、反発弾性率を20%以上45%未満とし、あるいは、
前記エッジ層の硬度(JIS−A)を70以上90以下、反発弾性率を20%以上45%未満とする一方、母体層の硬度(JIS−A)を60以上75未満、反発弾性率を35%以上70%以下としている請求項7に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項9】
前記ゴム成分(1)として、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、カルボニル基を導入したアクリロニトリル−ブタジエンゴム、あるいは水素添加したアクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム(U)から選択された1種または2種以上のゴム成分(1)を含む請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項10】
前記ゴム成分(1)としてアクリロニトリルブタジエンゴムあるいは/および水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(ゴムa)に他のゴム(ゴムb)を組み合わせて用い、前記ゴム成分(1)の総質量を100質量部とすると、(ゴムa)の配合量を90質量部〜50質量部、(ゴムb)の配合量を10〜50質量部とし、
前記ゴム成分(1)100質量部に対し、前記(2a)以外の充填剤(2b)を0.1質量部〜80質量部、前記架橋剤(3)を0.1〜30質量部で配合している請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−112149(P2008−112149A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258808(P2007−258808)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】