説明

画像形成装置

【課題】
タンデム式のカラープリンターで用いられるスリップ転写を採用する画像形成装置においても転写が原因となる画像不良を生じにくく、環境変動に対しても安定に高品質印刷が出来る画像形成装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、表面に潜像を形成し潜像に応じてトナーを付着させてトナー像とする感光体と、回転可能な画像搬送体と、前記感光体からトナー像を前記画像搬送体へ転写する転写部を有する画像形成装置において、前記感光体が正帯電性の感光体であり、前記画像搬送体の表面の仕事関数を4.5eV以下にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターや複写機など電子写真方式を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンターや複写機等の画像形成装置では、カラー画像を高速且つ高画質に形成することを目的として、所謂フルカラーのタンデム機が提案されている。このタンデム機の代表的なものとしては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの画像形成ユニットを互いに並列的に配置し、これらの各画像形成ユニットにて順次形成されるイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー像を、中間転写体である中間転写ベルト上に一旦多重に転写(一次転写)した後、この中間転写ベルトから転写紙上に一括して転写(二次転写)し、その後、前記転写紙上に形成されたトナー像を定着することによって、カラー画像を形成するものが挙げられる。
【0003】
ここで、中間転写ベルト上には1色の単層トナー層から、最大3層トナー層まで形成されているため、それらを安定に転写する必要があり、そのための最適な転写電圧または転写電流が設定されている。但し、この転写に必要な転写電圧または転写電流は転写されるトナーの帯電量、付着量そして感光体および中間転写ベルトの表面電荷量に大きく依存する為、これら因子の安定化若しくは制御が必要となる。、
また、このような中間転写方式を採用した従来の画像形成装置では、中間転写ベルトをその内側からバックアップロールで支持し、この中間転写ベルトの表面側に潜像担持体である感光体および二次転写装置が配設されている。
【0004】
このとき、上記中間転写ベルト、上記感光体および上記二次転写装置の回転運動は通常、独立に制御され、回転半径差や駆動ロール偏芯などの影響を受け、その相対速度差により各転写域ではスリップ転写を生じる。このスリップ転写による画像劣化を防止する方法としては、意識的に速度差を設定する事で一定の方向のスリップ転写を確保する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−234532号公報(第1−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したようなスリップ転写が生じると、中間転写ベルトと感光体は摩擦帯電により、その表面電位(電荷)の変動が起こる。その結果、必要転写電圧値(または電流値)が変動し、前記摩擦帯電量が過剰な場合は転写不足不良(転写効率低下による画像濃度低下)や過剰転写不良(過剰な転写電界による放電現象が原因の画像飛散り)が生じる事となる。
【0007】
また、この摩擦帯電は、環境の影響を大きく受け、特に低湿環境下では上記したスリップ転写時の摩擦帯電が印刷画質へ与える影響は無視できなくなる。
【0008】
本発明は、上記スリップ転写を採用する画像形成装置においても転写不良を生じにくく、環境変動に対しても安定に高品質印刷が出来る画像形成装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、表面に潜像を形成し潜像に応じてトナーを付着させてトナー像とする感光体と、回転可能な画像搬送体と、前記感光体からトナー像を前記画像搬送体へ転写する転写部を有する画像形成装置において、前記感光体が正帯電性の感光体であり、前記画像搬送体の表面の仕事関数を4.5eV以下にすることによって解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摩擦帯電による中間転写および感光体への帯電量が抑制でき、安定な転写条件が維持できる。また、環境変動(特に湿度変動)による転写効率変動も抑制され、長期に亘り安定に高画質印刷を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本実施例が適用される画像形成装置を示した図である。図1に示す画像形成装置は、所謂タンデム型、所謂中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット2(2Y、2M、2C、2K)、各画像形成ユニット2にて形成された各色成分トナー像を順次転写(一次転写)して保持させる中間転写ベルト1、中間転写ベルト1上に転写された重畳トナー画像を記録材(転写紙)である用紙5に一括転写(二次転写)させる二次転写ロール3、二次転写された画像を用紙5上に定着させる定着部6を備えている。
【0013】
本実施例において、各画像形成ユニット2(2Y、2M、2C、2K)は、矢印A方向に回転する感光体ドラム21の周囲に、これらの感光体ドラム21が帯電される帯電器22、感光体ドラム21上に静電潜像が書込まれるレーザー露光器23(図中露光ビームを矢印で示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム21上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置24、感光体ドラム21上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト1に転写する一次転写ロール4(4Y、4M、4C、4K)、感光体ドラム21上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ25、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット2は、中間転写ベルト1の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0014】
中間転写体である中間転写ベルト1は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたものが用いられ、その体積抵抗率が10〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度のフィルム状の無端ベルトで構成されている。中間転写ベルト1は、各種ロールによって図に示すA方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト1を循環駆動させる駆動ロール7、各感光体ドラム21の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト1を支持する支持ロール8、中間転写ベルト1に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト1の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール9、二次転写ロール3に設けられるバックアップロール10、中間転写ベルト1上の残留トナーを掻き取るクリーニング部11に設けられるクリーニングバックアップロール12を有している。
【0015】
各感光体ドラム21に対向し、略直線状に延びる中間転写ベルト1の内側に設けられる各一次転写ロール4には、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム21上のトナー像が中間転写ベルト1に順次、静電吸引され、中間転写ベルト1上に重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0016】
二次転部位は、中間転写ベルト1のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール3と、バックアップロール10等とによって構成される。バックアップロール13は、表面にカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムからなり、その表面抵抗率が10〜1010Ω/cmでロール径が20mmとなるように形成され、硬度は例えば60°(アスカーC)に設定される。このバックアップロール10は、中間転写ベルト1の裏面側に配置されて二次転写ロール3の対向電極をなして配置されている。
【0017】
次に、本実施例に係る画像形成装置の基本的な印刷プロセスについて説明する。図示しないパーソナルコンピュータ等から出力される画像データは、図1に示すような画像形成装置に入力される。入力された画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の色材階調データに変換され、レーザー露光器に出力される。
【0018】
レーザー露光器23では、入力された色材階調データーに応じて、露光ビームを画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Kの各々の感光体ドラム21に照射する。画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Kの各感光体ドラム21では、帯電器22によって表面が帯電された後、このレーザー露光器23によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Kにて、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0019】
画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Kの感光体ドラム21上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム21と中間転写ベルト1とが当接する一次転写部にて、中間転写ベルト1上に転写される。ここで感光体ドラム21にはφ150mmの負帯電型OPCドラム(膜厚24μm)を用いた。一次転写部にでは、一次転写ロール4にて中間転写ベルト1の基材に対しトナーの帯電極性(−)と逆極性の電圧(+)を付加され、未定着トナー像が中間転写ベルト1の表面に順次重ね合わせられて一次転写が行われる。ここで、中間転写ベルト1と各感光体ドラム21の回転運動は独立に制御され、その送り速度は中間転写ベルト1の方が約1%速く設定されている。よって各一次転写部では常にスリップ転写が生じている状態となっている。以上のようにして一次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト1の回転に伴って二次転写部に搬送される。
【0020】
一方、用紙搬送系では、画像形成のタイミングに合わせて図示しない用紙供給装置から用紙5が供給される。供給された用紙5は、図示しない搬送ロールにより搬送され、二次転写部に到達する。二次転写部では、中間転写ベルト1上に担持された未定着トナー像が、二次転写ロール3とバックアップロール10とによって押圧される二次転写位置にて、用紙5に静電転写される。
【0021】
その後、トナー像が静電転写された用紙5は、図示しない用紙搬送装置により定着装置6まで搬送される。定着装置6に搬送された用紙5上の未定着トナー像は、定着装置6によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙5上に定着され、定着画像が形成された用紙5は、排出ロール(図示せず)によって装置の外部に排出される。一方、用紙5への転写が終了した後、中間転写ベルト1上に残った残留トナーは、中間転写ベルト1の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール12および中間転写ベルトクリーナー11によって中間転写ベルト1上から除去される。かかる一連の作像プロセスによって、カラー画像の形成が行なわれる。
【0022】
ここで、上記したように一次転写部では中間転写ベルト1と感光体ドラム21が約1%の速度差を持っているため常に摩擦を行っている。本実施例では感光体ドラム21は負帯電型OPCでありその表面仕事関数は約5.4eVで、中間転写ベルト1はポリイミド樹脂にカーボンブラックを適当量含有させ、体積抵抗値10Ωcm、ベルト厚み100μmで表面仕事関数は約4.7eVであり、仕事関数の差は約0.7 eVであった。この中期転写ベルト1と感光体ドラム21の組合せを用いて連続印刷実験を行い、印刷画質について検討した結果を次に述べる。
印刷実験時の各設定条件は以下の通りである。
【0023】
<設定条件>
・プロセス速度:500mm/sec
・書込み光:600dpi、LDレーザー
・感光体ドラム21:OPCドラム(外径:φ150mm)、周速500mm/sec
帯電電位:約―500v
・中間転写ベルト1:周速505mm/sec
・現像剤(Y、M、C、Kとも同一条件)
キャリア平均粒径:60μm、
トナー平均粒径:7μm
トナー混合比2.5wt%
・印刷パターン:1on1offラインパターンで、
Y、M、C、K単色印刷とRGB2色重ね印刷
・一次転写電圧:1000v
・二次転写電圧:2500v
上記印刷条件にて、5000頁の連続印刷実験を行い、印刷画質を目視および解像度MTFにて評価した。その結果、画像濃度得られているものの、ラインエッジ部でのトナー飛散が生じ、そのMTFは0.4で解像度も低い結果となった。
【実施例2】
【0024】
次に、上記中間転写ベルト1の表面2μmをフッ素系樹脂でコーティング処理し、その表面仕事関数を5.2eVとした中間転写ベルト1を用いて、同様の印刷実験を行った。この条件での中間転写ベルト1と感光体ドラム21との仕事関数差は0.2eVである。
【0025】
その結果、5000頁後の印刷画質は目視における異常は見られず、解像度MTFの値も0.8と良好であり、転写部でのトナー飛散が生じなくなった事が確認出来た。
【0026】
図2に負帯電感光体(OPC)を用いた時の中間転写ベルト1の表面仕事関数と実施例で測定した解像度MTFとの関係を示す。この結果から、良好な解像度が得られるMTF≧75%を確保するには、中間転写ベルト1の仕事関数は5.5以上が適当である事がわかる。
【実施例3】
【0027】
次に、感光体ドラム21を正帯電のSeドラム(φ150mm、膜厚:60μm、仕事関数:4.1eV)とし、実施例1で使用した未処理の中間転写ベルト1(仕事関数4.7eV)との組合せで、同様の印刷実験を行った。その際の中間転写ベルト1と感光体ドラム21との仕事関数差は0.6eVであった。実験結果は、5000頁後の印刷画質で解像度MTFは0.7と許容値で有り、トナー飛散も少ないが、2色重ねのR、G、B印刷部での一部分の画像濃度が低く、転写不足の現象が生じた。
【実施例4】
【0028】
上記実施例3で使用した中間転写ベルト1をAr雰囲気中のプラズマ処理で表面改質を行い、その表面仕事関数を4.4eVとし、正帯電のSe感光体ドラム(仕事関数4.1eV)との組合せで、同様の印刷実験を行った。この条件での中間転写ベルト1と感光体ドラム21との仕事関数差は0.3eVである。
【0029】
その結果、5000頁後の印刷画質は、部分的な画像濃度低下は無く、解像度MTFの値も0.8と良好であり、部分的な転写不足が生じなくなった事が確認出来た。
【0030】
図3に正帯電感光体(Se感光体)を用いた時の中間転写ベルト1の表面仕事関数と実施例3で測定した画像濃度との関係を示す。この結果から、良好な画像濃度であるO.D.1.2を確保するには、中間転写ベルト1の仕事関数は4.5以下が適当である事がわかる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の模式図である。
【図2】負帯電感光体を用いた際の、中間転写ベルトの仕事関数と印刷画質の解像度MTFの関係を示したグラフ。
【図3】正帯電感光体を用いた際の、中間転写ベルトの仕事関数と印刷画質の画像濃度の関係を示したグラフ。
【符号の説明】
【0032】
1…中間転写ベルト、2…画像形成ユニット、3…二次転写ロール、4…一次転写ロール、5…用紙、6…定着装置、21…感光体、22…帯電器、23…レーザー露光装置、24…現像装置、25…清掃ブラシ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に潜像を形成し潜像に応じてトナーを付着させてトナー像とする感光体と、回転可
能な画像搬送体と、前記感光体からトナー像を前記画像搬送体へ転写する転写部を有する
画像形成装置において、前記感光体が正帯電性の感光体であり、前記画像搬送体の表面の仕事関数が4.5eV以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像搬送体は、複数回の転写工程を経てトナーを重ね合せる、カラー印刷に用いられることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
プロセス速度が300mm/s以上であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−189704(P2006−189704A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2593(P2005−2593)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】