説明

画像形成装置

【課題】 二次転写ニップに進入する直前のトナー像を、二次転写ニップに進入する直前の転写材の先端エッジが削ってしまい、転写材上に形成されるトナー像を乱す。また、転写材の先端がトナーで汚れる。
【解決手段】 二次転写ニップに進入する転写材の先端を、二次転写ローラーがガイドして二次転写ニップに導く構成とし、二次転写ニップに進入する前に転写材先端が、中間転写体上のトナー像と接触することを防止する。また、転写ローラー表面を滑らかにすることで、転写材の先端がひっかかることなく、二次転写ニップにガイドされる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に担持されたトナー像を転写材に転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真技術として、トナー像を担持した像担持体と転写ローラーの間に転写材を通して、前記像担持体上のトナー像を転写材に転写する技術がある。
【0003】
この技術において、転写ニップに転写材が進入する仕方について、記述されている先行技術がある(特許文献1)。特許文献1に記載されている画像形成装置には、中間転写ベルトの二次転写ニップ部に向けて転写材を案内するガイド部材がある。このガイド部材によって、転写材の先端が先ず中間転写ベルトに接触して、転写材を中間転写ベルトに沿わせるようにして二次転写ニップに進入してゆく。
【特許文献1】特開2001−356538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の画像形成装置のような、二次転写ニップへの転写材の進入方法は、中間転写ベルト上のトナー像を転写材の先端部が削り取ってしまうという現象を発生させることがある。そして、転写材の先端部がトナー像を削り取ることは、画像欠損を生じさせる。転写材の先端側の縁に十分な余白が確保されている場合は、この画像欠損が発生しづらいが、余白が小さい場合や、余白が無い画像を形成する場合には、この画像欠損が顕著に現われる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明の第1の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、転写材の搬送方向の先端エッジが前記ニップに進入する前に転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材と、を有し、前記転写部材が前記転写材の先端エッジを前記ニップにガイドする画像形成装置において、前記転写部材は発泡層を有し、前記転写部材の転写材と接触する表面には発泡セルの凹部が現われていないことを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、前記像担持体に関して前記転写部材とは反対側に設けられて前記転写部材との間に転写電界を形成する転写対向部材と、前記転写材の先端エッジが前記ニップに進入する前に、前記転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材とを有する画像形成装置において、転写材の搬送方向において、前記転写対向部材と前記像担持体が接触する領域の最上流位置よりも、前記ニップの最上流位置が上流側にあることを特徴とする。
【0007】
本発明の第3の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像の転写を受ける中間転写体と、前記中間転写体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、前記転写材の先端エッジが前記ニップに進入する前に、前記転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材と、を有する画像形成装置において、前記転写部材は前記転写材の先端エッジが接触する表面がフッ化化合物でコートされていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第4の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像の転写を受ける中間転写体と、前記中間転写体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、前記転写材の先端エッジが前記ニップに進入する前に、前記転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材と、を有する画像形成装置において、前記転写部材は前記転写材の先端エッジが接触する表面がシロキサン化合物でコートされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、転写材の先端が像担持体上のトナー像を削り取ってしまうことを抑止し、トナー像の欠損を抑止するものである。また、他の効果は、転写材が転写部材に滑らかにガイドされて転写ニップに進入でき、転写材とトナー像との相対位置精度が高まることにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施例1)
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。また、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1〜図4を用いて、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について説明する。図2は第1実施形態に係る中間転写方式を用いたカラー画像形成装置の概略構成図である。
【0012】
図2に示す中間転写方式のカラー画像形成装置では、画像入力データに基づき、複数の画像形成部において各感光体ドラム2に各色トナー像が形成される。前記複数の画像形成部は、無端状のベルト部材としての中間転写ベルト(中間転写体)8に沿って並べて配置されている。中間転写ベルト8は、トナー像の転写を受ける像担持体として機能する。
【0013】
各色画像形成部は、それぞれ像担持体である感光体ドラム2(2a,2b,2c,2d)を有している。各感光体ドラム2の周囲には、トナー像を形成する手段として、一次帯電手段としての帯電ローラー7(7a,7b,7c,7d)、露光装置1(1a,1b,1c,1d)、現像手段を構成する現像装置3(3a,3b,3c,3d)、感光体ドラムクリーニングブレード5(5a,5b,5c,5d)が配置されている。各現像装置3には、各色のトナーカートリッジ6(6a,6b,6c,6d)が収納されている。
【0014】
各感光体ドラム2の下部には、中間転写ベルト8を介して、表面に発泡ゴムなどの弾性体を被覆した一次転写ローラー4(4a,4b,4c,4d)が当接しており、各感光体ドラム2に形成されたトナー像を中間転写ベルト8に転写する一次転写部を形成している。よって、前記各感光体ドラム2に形成された各色トナー像は、各一次転写部において一次転写ローラー4により中間転写ベルト(中間転写体)8に順次重ね転写される(前記転写工程を「一次転写」という)。
【0015】
そして、中間転写ベルト8に重畳されたトナー像は、中間転写ベルト8に当接して転写領域を構成する転写部材としての二次転写ローラー10によって転写材Pに一括転写される。転写材Pは、給送カセット20から一枚づつ給送され、転写材搬送部としての二次転写前搬送ローラー18によって二次転写ローラー10と中間転写ベルト8とで形成される領域α、βに搬送される。転写材Pの搬送途中において、転写材Pはガイド部材である転写前ガイド17によって案内され、転写材Pは前記領域α、βに安定して搬送されることとなる。この転前ガイド17は、転写材Pの先端を、領域αに進入する前に二次転写ローラー10に接触するように案内する。そして前記領域α及びβを通過した転写材は、定着器21にて加圧および加熱されることにより、前述の如くして転写されたトナー像が転写材上に定着される。一方、二次転写後に中間転写ベルト8上に残ったトナーは、中間転写体クリーニングブレード11によって中間転写ベルト8から掻き落とされる。掻き落とされたトナーは、廃トナー送り機構12により廃トナー容器14に送られ、格納される。
【0016】
ここで、上記中間転写ベルト8や二次転写ローラー10などの二次転写部を構成する主要部材の寸法や材質などについて詳述する。
【0017】
中間転写ベルト8は、二次転写対向部材である二次転写対向ローラー15、テンションローラー9、二次転写前張架ローラー13によって張架されている。中間転写ベルト8は、厚み75μm、周長1115mm、長手方向(画像形成幅方向)長さ310mmの単層かつ無端状(シームレス)の樹脂ベルトである。この中間転写ベルト8は、ベルトの主材料であるポリイミド材料中にカーボンを分散することによって電気抵抗の調整がなされている。この中間転写ベルト8の体積抵抗率は、Advantest社製R8340超高抵抗計(登録商標)を用いて測定した結果、10Ω・cmであり、表面抵抗は、1012Ω/□以上であった。この中間転写ベルト8の体積抵抗率の測定方法は、JIS−K6911に準拠して行った。測定時は、測定用の電極とベルト8の表面との間に抵抗値が低い導電性ゴムを挟んで行った。電極と中間転写体ベルト8との接触性を安定させるためである。そして、中間転写体ベルト8の体積抵抗率を100V、10秒印加の条件にて測定した。尚、中間転写ベルト8の表裏いずれから測定しても、測定値は同一のものであった。
【0018】
二次転写対向ローラー15は、中間転写ベルト8を張架するローラーであるとともに、二次転写ローラー10の対向ローラーとしての機能と、駆動ローラーとしての機能を有している。また、二次転写対向ローラー15は、接地されており、二次転写ローラー10との間に転写電界を形成することができる。二次転写対向ローラー15は、直径30mmの芯金にカーボンブラックにより抵抗調整されたEPDMゴムを500μmの厚みで被覆したものである。
【0019】
テンションローラー9は、直径30mmのアルミ製中空管であり、両端軸受部にバネがあり総圧40Nでベルトを張架している。二次転写前張架ローラー13は、直径14mmのステンレス製のローラーであり、中間転写ベルト8に従動回転している。
【0020】
二次転写ローラー10は、直径が12mmの芯金に3層の層を構成するローラーである。図4に断面図を示した。芯金10a上に弾性体(弾性層10b)を310mmに渡り直径が20mmになるように芯金側から約4mmの厚みの発泡ヒドリンゴムを被覆し、厚み1mm程度のソリッド状ヒドリンゴムをその上に層構成した(被覆層10c)。そして更にその上に約20ミクロンの粉末状PVDF(ポリふっ化ビニリデン)を分散させたウレタンコーティングを施した構成となっている。この層構成と、フッ化化合物のコーティングにより、二次転写ローラー10は、その表面が滑らかになっている。なお、表面を滑らかにするにあたり、シリコーンコート(シロキサン化合物によるコート)を用いることも有用である。転写材Pのエッジが当たっても、そのエッジを二次転写ローラー10の表面を滑らすことができるほど滑らかである。この二次転写ローラー10の表面性を純水を使った接触角で測定したところ、接触角θが100゜であった。耐久によって、表面が汚染されても、接触角60゜以上を確保できた。この二次転写ローラー10の接触角θの測定方法は、二次転写ローラー表面に約3mlの純水を滴下し、純水と二次転写ローラーとの接触点における純水の接触角を顕微鏡を用いて測定した。図3に、接触角θの定義を示した。尚、測定には協和界面科学株式会社の接触角計CA−X型を用いた。また、二次転写ローラー10の硬度は500g荷重状態でのAsker−C硬度で35°である。二次転写ローラー10は、Asker−C硬度が45°以下であることが好ましい。領域α及びβを確実に作り、転写材Pの安定した搬送を実現するためである。
【0021】
なお、二次転写ローラー10のいわゆる実抵抗値は10Ωである。この抵抗値の測定方法は、測定対象のローラーを直径30mmのアルミ製シリンダーに対して従動回転させながら、Advantest社製R8340超高抵抗計(登録商標)を用いて測定した結果である。この測定条件は、印加電圧;2kV、印加時間;30秒、当接圧;9.8N、二次転写ローラー10の回転周速;190mm/secとした。
【0022】
次に領域α及びβに転写材Pが搬送される経路についての説明を行う。転写前搬送ローラー18により搬送されてきた転写材Pは、転写前ガイド17に案内されて転写材P先端が、まず二次転写ローラー10に接触する。本実施形態に係る二次転写ローラーは、前述したように、その表面の滑り性が良好であるため、転写材Pの先端は二次転写ローラー10表面を滑るように搬送・ガイドされ、第一の領域αに導入される。この構成により、転写材Pは、中間転写ベルト8に接触することなく第一の領域αに進入することが可能となる。そして、前記転写材Pは、転写直前ニップ部である第一の領域αにおいて中間転写ベルト8に対して充分な密着性を保ちつつ、転写ニップ部である第ニの領域βに搬送されることとなる。
【0023】
なお、二次転写ローラー表面の滑り性が悪い場合には、転写材Pの先端縁(先端エッジ)と二次転写ローラー10とが引っ掛かり易くなる。そして、転写材Pが二次転写ローラー10に接触した時の抵抗により転写材Pの先端の挙動が乱れてしまい、転写材Pの先端が中間転写ベルト8上のトナー像と接触して画像を乱してしまう。よって、上記のように、二次転写ローラーの表面の滑り性を確保し、転写材先端が二次転写ローラー10に接触した直後の転写材が安定して領域αに進入するようにした。
【0024】
前述のように、転写材Pの先端部は上記の挙動により、転写材Pの先端が、前記第一の領域αへ進入する前に中間転写ベルト8上のトナー像に接触することを抑止することができる。このことは、ある画像欠損を抑止できるという効果を奏する。その画像欠損とは、転写材Pの先端が中間転写ベルト8上に担持されているトナー像を削り取ることによって生ずるものである。転写材Pの先端部がニップ領域へ進入する前に中間転写ベルト8上のトナー像に接触して、これから転写される予定のトナー像を削り取るという現象である。この現象により、トナー像が削り取られること自体による画像欠損と、転写材Pの先端がトナーで汚れることによる画像欠損の二つの画像欠損を生じることとなる。
【0025】
上記の画像欠損が発生するメカニズムについて、更に詳述する。背景技術に示したような画像形成装置は、転写材が、中間転写ベルト上の所定位置において、中間転写ベルト上のトナー像と初めて接触するように構成されている。この構成においては、転写材の搬送速度制御や、中間転写ベルトへの転写材の進入角度の設定次第で、上記画像欠損が発生する。今回は、理解し易いケースとして、転写材が中間転写ベルトに接触する位置が中間転写ベルトの移動方向上流側にずれた場合を挙げてについて説明する。
【0026】
転写材が中間転写ベルトの移動方向上流側で接触するということは、転写材が本来搬送にされる経路から迂回することを意味する。転写材が迂回して中間転写ベルトに接触すると、中間転写ベルトも転写材も移動しているので、迂回した転写材よりも中間転写ベルト上のトナー像の方が先行することとなる。すると、本来、転写材の先端が接触する予定の位置よりも中間転写ベルトの移動方向後ろ側に転写材の先端が接触することになる。更に、転写材の先端が二次転写ベルトと接触したまま転写ニップまで移動すると、中間転写ベルトと転写材が転写ニップに達する過程で、転写材の先端が中間転写ベルト上のトナー像を削ることになる。転写材が転写ニップに達するときには、転写材と中間転写ベルト上のトナー像はその相対位置が予定の位置になっており、迂回した経路が解消するに至るからである。つまり、転写材と中間転写ベルト上のトナー像がズレて接触していたものが、移動過程において、転写材の姿勢が修正され、ズレが徐々に解消されることになり、その過程で転写材の先端が中間転写ベルト上のトナー像を削ることになるからである。
【0027】
一方、本実施の形態の画像形成装置は、二次転写ローラー10上を滑るように搬送された転写材Pの先端が、中間転写ベルト8に接触することなく領域αに導入されるので、上記のような画像欠損が生じない。このことは、特に、転写材の縁までトナー像を形成するような場合(いわゆる先端余白が小さい画像の形成や、余白が無い画像形成(以下、「縁無し画像」とも記述する。)を前記転写材Pに転写する場合)に、その効果が顕著に現われる。その転写材の先端付近のトナー像が、転写の過程で乱されないからである。本実施の形態の画像形成装置では、転写材Pの縁までトナー像を綺麗に形成することをも可能となる。
【0028】
次に、転写材Pの搬送速度について説明する。転写材Pの搬送速度は、領域βにおける転写材Pの搬送速度を100%とすると、それに対して、二次転写前搬送ローラー18による転写材Pの搬送速度は、101%に設定している。この速度の関係により、以下の作用が奏される。ある転写材Pが領域α、βにあり、かつ、二次転写搬送ローラー18にニップされている場合に、領域α、βと二次転写搬送ローラー18の間に転写材Pのループが若干形成される。このループが形成されることによって、領域αに進入している転写材Pが二次転写前搬送ローラー18に引っ張られることなく搬送されることになる。このことは、領域αに進入した転写材Pがその搬送過程において、中間転写ベルト8の移動に伴って安定的に搬送されることを意味し、搬送過程で、中間転写ベルト8との位置に大きくズレが生ずることを抑止できるものである。すなわち、転写材P上でトナー像がズレるようなことがおきにくく、より安定した転写が実現されるものである。
【0029】
次に領域α及びβの構成について詳述する。
【0030】
二次転写ローラー10の芯金には、給電バネを介して不図示の二次転写バイアス電源から二次転写電圧が約2kV印加される。そして、二次転写対向ローラー15はその芯金が接地されており、二次転写ローラー10と二次転写対向ローラー15の間に転写電界が形成される。図1における領域βに、主としてこの転写電界が形成されることとなる。図1に示してあるように、二次転写ローラー10は、二次転写対向ローラー15に対してベルト移動方向上流にオフセット配置されている。更に前記両ローラー10,15よりもベルト移動方向上流に二次転写前張架ローラー13が配置されている。これらローラーの配置によって、第一の領域αと第二の領域βが形成される。第ニの領域βは、二次転写ローラー10と二次転写対向ローラー15の両者が中間転写ベルト8の表裏に接触している領域である。第一の領域αは、前記第ニの領域βよりもベルト移動方向上流側から中間転写ベルト8と二次転写ローラー10によって転写材Pをニップ搬送するニップ領域である。この領域αが、領域βの前に設けられていることにより、本実施の形態では、「トナーの飛び散りや、放電による「転写抜け」が抑止され、トナー像の転写品位が向している。領域αにおいて、中間転写ベルト8と転写材Pが密着し、その密着している状態で領域βに至るので、上記「飛び散り」及び「転写抜け」が抑止され、画像品位が高く維持される。
【0031】
仮に、転写材Pの先端が中間転写ベルト8との間に充分な密着性が得られないまま転写ニップ部に導入されると、いわゆる「トナーの飛び散りや、放電による「転写抜け」が生ずることになる。本発実施の形態の構成は、これらを抑止するものである。
【0032】
「トナーの飛び散り」とは、転写材P上に形成されるトナー像の、イメージ部分(トナーが存在する部分)のトナーが広がる現象である。例えば、文字等の線図が滲んだような画像になる現象である。
【0033】
この「トナーの飛び散り」のメカニズムを説明すると、以下である。転写材Pの先端が中間転写ベルト8との間に充分な密着性が得られないまま転写ニップ部に導入されると、転写材Pと中間転写ベルト8との間に空隙がある状態で転写材Pと中間転写ベルト8との間に転写電界が生じることとなる。トナーは、転写電界に従って中間転写ベルト8から転写材Pに移動をしようとする。すると、中間転写ベルト8と転写材Pとの間に空隙があるので、その間をトナーが飛翔して、すなわち、空隙というトナーにとって長い距離を移動することとなり、トナーの移動が不安定になる。また、トナーは一定の電荷を有し、トナー同士で静電的に反発をする傾向を有する。よって、空隙があることにより、転写の過程でトナーが広がる現象が生じることになる。この現象が「トナーの飛び散り」に繋がる。
【0034】
放電による「転写抜け」とは、放電による画像欠損で、いわゆる放電模様を伴うことが多い。特にハーフトーン画像上では、その模様が現われ易い。
【0035】
放電による「転写抜け」のメカニズムを説明すると、以下である。先述のとおり、中間転写ベルト8と転写材Pが密着せずに転写ニップに進入すると、空隙に転写電界が生ずる。この空隙部の転写電界がパッシェン則を超えると空隙部で放電が発生し、空隙付近にあるトナーの帯電極性が反転するものがでてくる。マイナス帯電しているトナーの極性は反転しプラス極性となる。すると、電荷が反転したトナーは、転写工程によって、本来移動する方向と逆行することになり、転写材Pへ到着しなくなる。そして、トナーが移動しない部分は、トナー像が抜けている状態になり、「転写抜け」になる。これが放電による「転写抜け」の形成メカニズムである。
【0036】
本実施の形態に示す画像形成装置は、領域αを有し、中間転写ベルト8と転写材Pが密着している状態で領域βに至るので、上記「トナーの飛び散り」及び「転写抜け」が抑止され、画像品位が高く維持されている。
【0037】
なお、前述のように、領域βにおける転写材Pの搬送速度に対して、二次転写前搬送ローラー18による転写材Pの搬送速度が高いという関係を有しているので、領域αに至った転写材Pは、二次転写前搬送ローラー18に引っ張られることなく搬送される。そして、転写時の転写材Pの移動を転写材の全域にわたって安定させることができ、記録偉材Pと中間転写ベルト8の密着状態が維持されるので、転写材全域にわたってトナーの飛び散り、及び「転写抜け」を抑止することができる。
【0038】
(実施例2)
第2実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、画像形成装置全体の概略構成は前述した実施形態と略同様であるため、ここでは前述した第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。前述した第1実施形態では、2つ以上の層からなる二次転写ローラーとして、芯金上に3層構造からなる弾性体を有する構成を例示したが、第2実施形態では、二次転写ローラーが2層構造である場合を例示している。以下、二次転写ローラーの構成および材質について説明する。
【0039】
本実施形態に係る二次転写ローラーは2層構造であり、表層以外の層がAsker−C硬度45°以下の弾性体である。具体的には、2層構造の二次転写ローラーは、基層がエピクロロヒドリンとNBRのブレンドゴムからなる発泡ゴム(弾性体)であり、基層部分の硬度(基層+芯金の硬度)が荷重500g下でのAsker−C硬度が30°である。
【0040】
そして表層は、樹脂チューブで形成されている。上記発泡ゴムをチューブで被覆している。この二次転写ローラーの表層をなす樹脂チューブは、厚み70μmの樹脂チューブである。本実施形態においては、表層をなす樹脂チューブとして、転写材に対しての滑り性が高い樹脂を選択している。具体的には、表層をなす樹脂チューブとして、カーボンブラックで抵抗調整されたPVDF(ポリふっ化ビニリデン)を用いている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のその他の樹脂を用いたチューブであっても良い。
【0041】
このように表面の滑り性の高い樹脂チューブで被覆することにより、本実施形態に係る二次転写ローラーは、そのローラー表面の接触角(純水の接触角)が70°となった。
【0042】
前記二次転写ローラーの表層をなす樹脂チューブは、基層の発泡ゴムを圧縮変形させた状態で被覆したものである。基層と表層との間に締め付け力により樹脂チューブは固定されている。もし、表層と基層との間にズレなどが生じる場合においては接着層を設けてもよい。
【0043】
表層に樹脂チューブを被覆した二次転写ローラーの場合、ローラー表面の硬度が高くなることが懸念される。二次転写ローラーとして使用する場合においては硬度が高すぎると転写性や転写材の搬送性が安定しないという問題がある。本発明者の実験結果によれば、二次転写部での安定したニップ、安定した転写材搬送性を得るためには、二次転写ローラーの硬度を45°以下とすることが望ましい。
【0044】
そこで、本発明者は、500g荷重下でのAsker−C硬度が30°の発泡ゴムに被覆する樹脂チューブの厚みを70μmとし、二次転写ローラーのAsker−C硬度が37°となるようにした。
【0045】
なお、厚みの違うのPVDF製の樹脂チューブを被覆した、硬度測定を行ったところ、樹脂チューブの厚み[μm]を30,70,150,250としたとき、ローラー全体としてのAsker−C硬度はそれぞれ34,37,45,49であった。
【0046】
上述したように、表層の樹脂チューブに表面の滑り性の高い樹脂を選択したことにより、前述した第1実施形態と同様の効果が得られ、良好な画像を得ることができる。
【0047】
(実施例3)
第3実施形態に係る画像形成装置について図5を用いて説明する。図5は二次転写部周辺の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置全体の概略構成は前述した実施形態とほぼ同様であるため、ここでは前述した第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0048】
本実施の形態の画像形成装置は、転写材P上に余白なくトナー像を形成するモード「縁無し画像形成モード」を有する。
【0049】
本実施形態に係る画像形成装置においては、転写材Pの搬送タイミングがずれた状態においても転写材Pの縁までトナー像が形成されるように転写材のサイズよりも前後左右方向に3mmだけ大きいトナー画像を中間転写ベルト8上に形成した。このため、二次転写時に中間転写ベルト8から転写材P上に転写しきれなかった、はみ出したトナーは、二次転写ローラー23上に直接転写されてしまう。
【0050】
そこで本実施形態においては、前記二次転写ローラー23に付着したトナーを除去する転写部材清掃手段を有している。具体的には、図5に示すように、前記転写部材清掃手段として、二次転写ローラー23に当接してトナーを書き落とすクリーニングブレード22を有している。このクリーニングブレード22は、ウレタンゴム製であり、線圧が20〜100g/cmの範囲で二次転写ローラー23に接触させている。またクリーニングブレード22で掻き落としたトナーは廃トナー容器19に格納される構成となっている。
【0051】
なお、本実施形態に係る二次転写ローラー23は、前述した第1実施形態にかかる二次転写ローラー10と同様に滑り性に優れているので、トナーの除去も容易である。このため、二次転写ローラー23の表面はクリーニング性が良好である。二次転写ローラー23は、その作成工程として、円筒状の容器内で発泡させて、弾性層を整形する。その整形の際に、円筒状の容器と接触する箇所には、いわゆるスキン層が結果として形成され、表面には、発泡のセルが現われていないローラーとなっている。
【0052】
また、本発明者の実験結果により、二次転写ローラー表面の接触角を70°以上に保つことで、高湿環境においても、水の付着が少なく、安定したクリーニングが実現できた。クリーニングブレード22と二次転写ローラー23との引っ掛かりを少なく抑えることができたからである。
【0053】
更に本実施形態では、二次転写ローラー23表面の十点平均粗さRzを3μmとしている。Rzをトナー粒径より小さくすることで、より確実にトナーをクリーニングすることが可能となるからである。クリーニングブレード22をトナーがすり抜けてクリーニング不良が発生してしまうことを予防するものである。
【0054】
上述したように、本実施形態によれば、転写材のサイズよりも大きい画像を中間転写ベルト上に形成することにより余白の無い画像を転写材に記録する場合において、二次転写ローラー23の清掃を可能とした。また、前述した第1実施形態と同様の効果が得られるものとなった。
【0055】
尚、本実施形態においては二次転写ローラー10の清掃手段をブレードとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばブラシ、ウェブ等の他の物理的な清掃手段や二次転写ローラーにバイアス印加可能なクリーニングローラーなどを当接させて回収する静電的な清掃手段を採用しても良い。
【0056】
前述した実施形態では、カラー画像を形成するために画像形成部を4つ使用しているが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。そして、カラー画像形成装置に限定されるものでもなく、モノクロ画像を形成する画像形成装置であっても良い。
【0057】
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良く、画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0058】
さらに、本発明の様々な実施形態を示し説明したが、本発明の趣旨と範囲は本明細書内の特定の説明と図に限定されるものではない。例えば、感光体から直接転写材に転写する場合等も本発明の適用が可能であることは、述べるまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施例に係る画像形成装置の二次転写部を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】転写ローラー表面の純水の接触角(θ)を示す図である。
【図4】本発明の第3実施例に係る画像形成装置の二次転写部を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る画像形成装置の二次転写ローラー10を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0060】
8 中間転写ベルト(中間転写体)
10 二次転写ローラー(転写部材)
10a 芯金
10b 弾性層
10c 被覆層
15 二次転写対向ローラー(対向部材)
17 転写前ガイド(ガイド部材)
18 二次転写前搬送ローラー(搬送部材)
22 クリーニングブレード(清掃部材)
23 二次転写ローラー(転写部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、前記転写材の搬送方向の先端エッジが前記ニップに進入する前に、前記転写材の先端が前記転写部材の表面に接触するようにガイドするガイド部材と、を有する画像形成装置において、
前記転写部材は発泡層と被覆層を有し、前記被覆層は発泡されておらず前記転写部材の表面を構成していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記被覆層が、樹脂チューブから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記被覆層が、フッ化化合物でコートされていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、転写材の搬送方向の先端エッジが前記ニップに進入する前に転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材と、を有し、前記転写部材が前記転写材の先端エッジを前記ニップにガイドする画像形成装置において、
前記転写部材は発泡層を有し、前記転写部材の転写材と接触する表面には発泡セルの凹部が現われていないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体の前記ニップが形成されている面とは反対側の面に接触し、前記転写部材との間に転写電界を形成する転写対向部材を有し、転写材の搬送方向において、前記転写対向部材と前記像担持体の接触領域の最上流位置よりも、前記ニップの最上流位置が上流側にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、前記像担持体に関して前記転写部材とは反対側に設けられて前記転写部材との間に転写電界を形成する転写対向部材と、前記転写材の先端エッジが前記ニップに進入する前に、前記転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材とを有する画像形成装置において、
転写材の搬送方向において、前記転写対向部材と前記像担持体が接触する領域の最上流位置よりも、前記ニップの最上流位置が上流側にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記転写材の先端エッジは、予め前記像担持体に接触することなく、前記ニップに進入することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体上に転写材よりも大きいトナー像を形成し、前記像担持体上の前記トナー像の一部を前記転写材に転写するモードを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
トナー像を担持する感光体を有し、前記像担持体は、前記感光体からトナー像の転写を受ける中間転写体であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像の転写を受ける中間転写体と、前記中間転写体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、前記転写材の先端エッジが前記ニップに進入する前に、前記転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材と、を有する画像形成装置において、
前記転写部材は前記転写材の先端エッジが接触する表面がフッ化化合物でコートされていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像の転写を受ける中間転写体と、前記中間転写体とニップを形成し、前記ニップに進入する転写材にトナー像の転写をする転写部材と、前記転写材の先端エッジが前記ニップに進入する前に、前記転写材の先端エッジが前記転写部材に接触するようにガイドするガイド部材と、を有する画像形成装置において、
前記転写部材は前記転写材の先端エッジが接触する表面がシロキサン化合物でコートされていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記転写材の先端エッジは、予め前記中間転写体に接触することなく、前記ニップに進入することを特徴とする請求項10または11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記中間転写体の前記ニップが形成されている面とは反対側の面に接触し、前記転写部材との間に転写電界を形成する転写対向部材を有し、転写材の搬送方向において、前記転写対向部材と前記中間転写体の接触領域の最上流位置よりも、前記ニップの最上流位置が上流側にあることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記中間転写体に転写材よりも大きいトナー像を形成し、前記中間転写体上の前記トナー像の一部を前記転写材に転写するモードを有することを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記転写部材の硬度は、Asker−C硬度で45度以下であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記転写部材は、転写材を搬送可能なローラーであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
転写材を前記ガイド部材に搬送する搬送部材を有し、前記搬送部材が転写材を搬送する速さは、前記転写部材が転写材を搬送する速度よりも速いことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記転写部材に接触する清掃部材を有し、前記清掃部材は、前記転写部材に付着したトナーを前記転写部材から除去することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−330702(P2006−330702A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112235(P2006−112235)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】