説明

画像形成装置

【課題】印刷データを効率的で、かつ画質を低下させることなく高速に印字出力できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 印刷時に印刷データを検出する印刷データ検出部14と、印刷データを出力する際に水平方向あるいは垂直方向のどちらでデータ出力を行うかを決定する印刷方向決定部15と、を有する画像形成装置10であって、前記印刷データ検出部14は、展開された印刷データの内容を検出し、前記印刷方向決定部15は、前記印刷データ検出部14により検出された印刷データの内容から水平方向及び垂直方向のどちらで出力するかを決定するように構成した画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に、出力される印刷データの内容に応じてデータの出力方向を変更することが可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置は、受信したデータを用紙に印字出力するものであり、その印字出力の方法としてはインクジェット式あるいはレーザー式等がある。前記印字出力方法のうち、特にレーザー式のものは高速出力が可能であり、市場でも広く使用されている。
【0003】
ところで、レーザー式の印字出力を行う画像形成装置は、出力速度の低減防止や、画像品質の確保等のために印字出力の際の負荷を低減する技術が種々考案されており、特許文献にも多く紹介されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
以下には、印字出力の際の画像形成装置への負荷を削減する技術の一例として、特許文献1、2について簡単に説明する。
特許文献1(特開2003−280452号公報)に開示された画像形成装置においては、用紙の表面性や解像度の設定の違いに応じて定着速度、定着温度、加圧ローラの圧力を制御することで画像品質の確保、及び省エネルギーによる生産性向上を図っている。すなわち、この画像形成装置は、感光ドラムに形成されたトナー画像が転写紙に転写された後、該転写後のトナー画像を加熱加圧して画像定着する定着ユニットと、感光ドラムに潜像形成を行う際に高いドット密度又は通常のドット密度で潜像形成を行うかを選択可能なタッチキーと、転写されたトナー定着画像に光沢性を持たせるか持たせないかを選択可能なタッチキーと、転写紙の坪量及び表面性を設定可能なタッチキーとを備えていて、転写紙の坪量の違いに応じて定着速度を変化させると共に、高グロスモードが選択された場合は、更に転写紙の表面性の違いに応じて、定着速度を変化させるようにしたものである。
【0005】
また、下記の特許文献2(特開平11−125987号公報)に開示された画像形成装置においては、画像形成動作前に検出したトナー消費情報に応じて定着速度、定着温度を制御することで定着部のウォームアップ時間を短縮し、また、安定して画像を形成するようにしている。すなわち、特許文献2に開示された画像形成装置は、画像形成動作前にトナー消費量情報を検出し、このトナー消費量情報に基づき定着温度が所定温度未満でも定着動作を行うことが可能であるか否かを判断する。そして、定着温度が所定温度未満でも定着動作が可能であると判断されたときは、定着動作を実行する。これにより、用紙上のトナー付着量が少ない場合には、定着温度が所定温度に達していない場合でも、印刷又はコピーを行うことができるので、ウォームアップ時における印刷開始までの待ち時間を短くすることができるように構成したものである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−280452号公報(図11)
【特許文献2】特開平11−125987号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、レーザー式の印字出力プロセスを有する画像形成装置は、レーザー式の印字出力プロセスが、インクジェット式のものと異なり、潜像形成ドラムにより描画を行い、前記潜像形成ドラムにより形成された像にヘッドによりトナーを静電吸着させて印字がなされることから、例えば、用紙の一部分にのみドットが存在するデータを出力する場合は、潜像形成ドラムも一部分のみに像を形成し、他の部分には像が形成されず、結果として前記像を形成した一部分にのみトナーが供給され印字出力が行われる。
【0008】
このような出力が行われると、特にイメージデータのような多くのトナーを消費するデータを印刷する際には、上述のようなデータの偏りがあると大量のトナーを一部分に集中的に使用することとなり、場合によってはトナーの補給が追いつかず、画質の低下あるいは出力速度の低下を招来する恐れがある。
【0009】
また、潜像形成ドラムは、熱により用紙に像を定着させているが、その定着熱量に関しても潜像形成ドラムの各部分あるいは定着タイミングによってまちまちであり、例えば、潜像形成ドラムの隅部に比べて中心部の方が定着熱量は濃密であり、潜像形成ドラムに搬送される用紙の最後に像が定着される終端部に比べて始めに像が定着される先端部の方が定着熱量は濃密である。したがって、印字を行うドットが潜像形成ドラムの中心部でかつ先端部に集中しているものに比べて、ドットが潜像形成ドラムの隅部でかつ終端部に集中しているものの方が出力に時間がかかり、エネルギー効率も悪くなるため画質の低下をもたらす恐れがある。
【0010】
本発明者らは上記問題点に鑑み、より効率的で、かつ画質を低下させることなく高速な出力が可能な画像形成装置を種々検討した結果、印刷されるデータの印字量の分布に合わせて出力する画像を水平方向あるいは垂直方向に回転可能とし、潜像形成ドラムにより像を定着する際に印字量が偏らない向きに用紙の向きを変更して出力すれば、より効率的で、かつ画像を低下させることなく高速な印字出力処理を実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち本発明の目的は、印刷データを効率的で、かつ画質を低下させることなく高速に印字出力できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の画像形成装置は、印刷時に印刷データを検出する印刷データ検出部と、印刷データを出力する際に水平方向あるいは垂直方向のどちらでデータ出力を行うかを決定する印刷方向決定部と、を有する画像形成装置であって、
前記印刷データ検出部は、展開された印刷データの内容を検出し、
前記印刷方向決定部は、前記印刷データ検出部により検出された印刷データの内容から水平方向及び垂直方向のどちらで出力するかを決定するように構成したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置に係り、前記印刷方向決定部は、前記印刷データ検出部により検出された印刷データの水平方向あるいは垂直方向の印字量の分布に基づいて水平方向あるいは垂直方向のどちらでデータ出力するかを決定するように構成したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置に係り、前記印刷方向決定部は、前記印刷データの印字量の分布に基づき、印字量が潜像形成ドラムの各位置に対して均一に分布するように印字出力方向を決定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置に係り、前記印刷方向決定部は、前記印刷データの印字量の分布に基づき、印字量が比較的多い部分が潜像形成ドラムの中央部あるいは印字出力を行う先端部となるように印字出力方向を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1によれば、印刷データ検出部で検出した印刷データの情報に基づいて印刷方向決定部で出力する画像データの画像読み込み方向及び用紙搬送方向を選択決定することにより、印刷データの内容から、最も効率的かつ確実な印字出力を行うことができるようになる。
【0017】
請求項2によれば、印刷データ検出部で検出した印刷データの印字量、すなわちドットの分布により、回転方向を決定するため、印字出力途中でトナーの補給が追いつかなくなるようなドットの集中を未然に防ぐことができるようになり、画質の低下を予防した印字出力を行うことができるようになる。
【0018】
請求項3によれば、印刷データの印字量の分布から、画像形成装置の備える潜像形成ドラムに対して、ドット数が均一に配置するような方向に印字出力方向を決定するため、単車ドラムの一部分にドット数が集中することなく、よってヘッドから供給されるトナーの排出量も全体を均一に使用するようになり、トナーの補給が追いつかなくなる恐れを低減できるようになる。
【0019】
請求項4によれば、潜像形成ドラムの定着熱量が他の部分に比べて濃密な中央部、あるいは像の定着の初期段階に定着が行われるため定着熱量が例えば最後に行われる像の定着に比べて濃密な先端部に、ドットの多い部分がくるように印字出力方向を変更することにより、像の定着がより良好に行われるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための画像形成装置を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0021】
以下には本発明の一実施例として、画像形成装置をプリンタとして利用した場合について説明する。ただし、本発明の画像形成装置はプリンタ機能以外の機能に対しても同様の効果を奏することは当業者にとり自明であろう。
図1は本発明の一実施例に係る画像形成装置の内部構成を簡単に示すブロック図であり、図2は本発明を適用した代表的な画像形成装置であるレーザープリンタの構成を示すブロック図であり、図3は本発明の画像形成装置の印字出力処理の工程を示すフローチャートであり、図4は画像形成装置の受信する印刷データの一例を示す図である。
【0022】
図1に示すように本発明にかかる画像形成装置10は、画像処理部11と出力処理部12と印刷処理部13とを備えており、また、印刷データ検出部14、印刷方向決定部15、ユーザ通知部16を備えている。画像処理部11は、ユーザのコンピュータ装置(図示せず)から受信した印刷データをページ単位でビットマップ展開する画像処理、すなわち、ドットイメージに展開する画像処理を行う。印刷データは、また、印刷データ検出部14に送られ、印刷データ検出部14によってページごとのデータ内容の検出が行われる。
【0023】
印刷データ検出部14は、用紙に印刷されるべき印刷データを解析して、データ内の印字位置等を認識するものである。詳しくは印刷データ検出部14で検出する印刷データの内容は、例えば、印刷データの印刷ドット数、前記印刷ドット数の分布状況、あるいはその他の各種設定事項であり、印刷ドット数からは、ページ毎の印刷データが白黒のデータであるかカラーのデータであるか、あるいは、イメージデータが含まれているか、あるいはデータ自体が偏った位置にあるかなどが検出される。
【0024】
上記印刷データ検出部14で検出された印刷データの種々の情報は、印刷方向決定部15に送られ、印刷方向決定部15において印字出力を行う方向が決定される。すなわち、前記印刷データ検出部14で検出された各種情報を参照し、どの方向で印字すれば潜像形成ドラムに対してコンスタントにドット数が配置されるかが判断され、その結果により印字方向が決定する。ただし、印字方向の決定を行う判断基準は上記ドット数を潜像形成ドラムにコンスタントに配置されるものに限らず、例えば、どの方向で印字すれば印字を効率よく行うことができるか等でも判断でき、判断基準についてはユーザに合わせて各自設定可能である。
【0025】
出力処理部12は、印刷方向決定部15で決定された印字方向に従って画像処理部11で画像処理された1ページ毎のビットマップデータを印刷処理部13に供給し、印刷処理部13は、用紙に印刷処理する。出力処理部12は、また、印刷処理部13にビットマップデータを供給すると、ユーザ通知部16に出力処理の完了を通知し、ユーザ通知部16は、印刷データを送信したユーザのコンピュータ装置(図示せず)に出力完了の通知を行う。また、ユーザ通知部16は、印刷方向決定部15で印刷順序の変更が行われた場合にユーザにその旨を通知する。
【0026】
図2は、本発明を適用した代表的な画像形成装置であるレーザープリンタ21の構成を示すブロック図である。レーザープリンタ21は、プリンタコントローラ22とプリンタエンジン23とから構成され、プリンタコントローラ22は、主制御部を構成するCPUユニット32とフレームバッファ34とから構成されている。CPUユニット32は、図示しないプロセッサ、RAM、ROMなどから構成された一般的なものであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の制御を行う。
【0027】
レーザープリンタ21(画像形成装置)は、ホスト機器20(ユーザのコンピュータ装置等)から受信する印刷データに基づいて印刷をプリンタエンジン23で印刷を行うものであり、プリンタコントローラ22は、ホスト機器20からの印刷データ(画像情報)を受信するインターフェース部321、受信した印刷データ(画像情報)中の枚数や用紙サイズ等のプリント設定に基づいて各部を制御するプリント制御部323、印刷(画像)データからドットイメージを形成してフレームバッファ34に格納するドットイメージ描画部325、画像信号化したドットイメージやプリント設定をプリンタエンジン23に送信する出力制御部328とから構成される。
【0028】
また、本実施例では、フレームバッファに格納されるドットイメージより印字量の分布を検出し、その分布状況と、各種設定に応じて印字方向を変更する画像形成方向判断部329を備えている。ちなみに、印字出力の方向の変更を行うか否かはユーザにより適宜設定変更を行うことにより切り替えが可能であるとより好ましい。
【0029】
以上のように構成されたレーザープリンタ21(画像形成装置10)の印刷処理手順について、図3に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0030】
先ずレーザープリンタ21は、ステップS1においてホスト装置20から印刷データを受信すると、ステップS2において、印刷データを画像処理部11でビットマップ展開し、ドットイメージとする。続いてステップS3で出力方向を変更して出力するか否かを設定により判断し、出力方向の変更が行われないように設定されている場合はステップS4で通常印刷を行った後、処理を終了する。
【0031】
ステップS3において、出力方向を変更して出力するように設定されている場合はステップS5に移行し、ステップS5で印刷データ検出部14によりドットイメージに展開された印刷データのドットの分布を検出する。ステップS5でドットの分布が検出されると、ステップS6で印刷方向決定部15によりドットの分布状況を参照して最適な印字出力方向を決定する。このとき、最適な印字出力方向を判断する基準としては、ドットの分布が潜像形成ドラムの全体に均一に分布すること、あるいは潜像形成ドラムの中央部もしくは潜像形成ドラムに搬送される用紙の先端部にドット数の多い部分がくること等があげられるが、そのウエイト等については適宜ユーザあるいは出荷段階で設定しておくとよい。ステップS6で最適な印字出力方向が決定すれば、ステップS7において前記決定した印字出力方向で印字を行い、処理を終了する。
【0032】
次に、図4を参照して、本発明の画像形成装置により印字出力される印刷データ40の印字方向について説明する。
【0033】
図4に示すように、印刷データ40は所定サイズ(例えばA4)の用紙に印刷されるように要求され、印字出力処理が行われるものである。この印刷データが例えばビットマップ展開した際に、X部分にドット数の多い領域、例えばイメージデータが存在した場合、従来の画像形成装置ではドット数の分布を参照しないため、単純にA方向から画像を走査し、画像形成装置の有する複数のトレイのうち、A4縦のトレイから用紙を搬送し、潜像形成ドラムにおいて像の定着がなされる。
【0034】
しかしながら、このように出力を行うと、ドット数の多いX部分が潜像形成ドラムの隅部に位置するようになり、しかもその隅部のみでドット数の多いX部分の像の定着を行わなければならず、場合によってはこの部分の画像形成時にトナーの補給が追いつかず、画像品質の低下を招来することがあった。
【0035】
これに比べて、本発明の画像形成装置においては、通常A方向から画像の走査がなされるのに対し、印刷データ40のドットの分布から、図4のようなドットの分布の場合はB方向からの走査が選択され、潜像形成ドラムには何れかのトレイからA4横の用紙が搬送され、印字出力がなされる。このようになせば、ドット数の多いX部分を潜像形成ドラムの全体に均一に像の定着を行わせることができ、かつ、潜像形成ドラムに搬送される用紙の先端部にドット数の多いX部分がくるため、良好な像の定着を行うことができるようになる。ちなみに、図4では用紙の上部にドット数の多い部分が位置しているが、ドット数の分布がどのような状態であっても、最も最適な出力方向を図4のA〜D方向の何れかから選択でき、以ってどのような印刷データを受信した場合であっても良好な出力結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の内部構成を簡単に示すブロック図、
【図2】本発明を適用した代表的な画像形成装置であるレーザープリンタの構成を示すブロック図、
【図3】本発明の画像形成装置の印字出力処理の工程を示すフローチャート、
【図4】画像形成装置の受信する印刷データの一例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
10 画像形成装置
11 画像処理部
12 出力処理部
13 印刷処理部
14 印刷データ検出部
15 印刷方向決定部
16 ユーザ通知部
20 ホスト装置
21 レーザープリンタ
22 プリンタコントローラ
23 プリンタエンジン
40 印刷データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷時に印刷データを検出する印刷データ検出部と、印刷データを出力する際に水平方向あるいは垂直方向のどちらでデータ出力を行うかを決定する印刷方向決定部と、を有する画像形成装置であって、
前記印刷データ検出部は、展開された印刷データの内容を検出し、
前記印刷方向決定部は、前記印刷データ検出部により検出された印刷データの内容から水平方向及び垂直方向のどちらで出力するかを決定するように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷方向決定部は、前記印刷データ検出部により検出された印刷データの水平方向あるいは垂直方向の印字量の分布に基づいて水平方向あるいは垂直方向のどちらでデータ出力するかを決定するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷方向決定部は、前記印刷データの印字量の分布に基づき、印字量が潜像形成ドラムの各位置に対して均一に分布するように印字出力方向を決定することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷方向決定部は、前記印刷データの印字量の分布に基づき、印字量が比較的多い部分が潜像形成ドラムの中央部あるいは印字出力を行う先端部となるように印字出力方向を決定することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−33767(P2006−33767A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213706(P2004−213706)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】