説明

画像形成装置

【課題】像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写し、該記録媒体から除電装置を用いて除電する画像形成装置であって、トナー像が転写された記録媒体から除電するにあたり、トナー像の乱れ、トナーの飛散、それらによる画像ノイズの発生を招く過除電を抑制しつつ記録媒体の像担持体からの安定した分離を可能にする除電を行うことができ、それだけ画像ノイズの抑制された画像を形成できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体である中間転写ベルト4上に形成されたトナー像を2次転写ローラ5により記録媒体Sに転写し、該記録媒体Sから除電装置6Aを用いて除電する画像形成装置PR1。除電装置6Aは、記録媒体Sの画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、記録媒体Sの画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ機、これらのうち2以上を組み合わせた複合機等の、電子写真方式や静電記録方式等による画像形成装置に関し、さらに言えば、像担持体上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写し、トナー像が転写された該記録媒体から除電装置を用いて除電するタイプの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、通常、例えば感光体のような静電潜像担持体の表面を所定電位に帯電させ、該帯電域に形成しようとする画像に応じた露光を施して静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して可視トナー像を形成し、該可視トナー像を最終的には記録媒体に転写し、定着させる。
【0003】
静電記録方式の画像形成装置では、例えば静電記録用誘電体のような静電潜像担持体の表面を所定電位に帯電させ、該帯電域に形成しようとする画像に応じた静電記録を施して静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して可視トナー像を形成し、該可視トナー像を最終的には記録媒体に転写し、定着させる。
【0004】
いずれの方式の画像形成装置の場合も、モノクロ画像形成装置では、通常、像担持体である感光体のような静電潜像担持体に形成されたトナー像は直接記録媒体に転写され、定着される。カラー画像形成装置では、一般的には、静電潜像担持体に形成されたトナー像は一旦中間転写ベルト等の中間転写体(像担持体の一種)に1次転写され、該中間転写体から記録媒体に2次転写され、定着される。カラー画像形成装置の中には、像担持体である感光体等の静電潜像担持体上に形成されるトナー像が、荷電された記録媒体支持体上に静電吸着支持された記録媒体に転写される画像形成装置もある。
【0005】
いずれにしても、モノクロ画像形成装置における感光体等の像担持体、中間転写体を採用するカラー画像形成装置における該中間転写体(像担持体)、記録媒体支持体に保持された記録媒体に感光体等の像担持体から直接トナー像を転写する画像形成装置における該感光体等の像担持体といった像担持体から記録媒体へのトナー像の転写は転写装置を用いて行われる。
【0006】
かかる転写装置は、記録媒体へ転写しようとするトナー像を形成しているトナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧を記録媒体に印加し、それにより転写電界を形成して像担持体上のトナー像を記録媒体へ転写する。従って、このようにトナー像が転写された記録媒体は、転写装置からトナーの正規帯電極性とは逆極性の電荷が付与された状態となり、そのままであると、該電荷のため記録媒体は像担持体に静電吸着し、像担持体から離れ難くなる。
【0007】
そこで、トナー像が転写された記録媒体から除電装置を用いて除電し、記録媒体が像担持体から離れやすくすることが行われている。かかる除電装置は、一般的には記録媒体から除電するための除電部材を備えており、該除電部材に除電電圧が印加される。該除電電圧は前記転写装置により印加される転写電圧とは逆極性の電圧、すなわち、トナーの正規帯電極性の電圧と同極性の電圧であったり、0〔V〕或いは接地電位であったりする。
【0008】
かかる除電装置は、例えば、特開平11−95564号公報に記載されている。同公報に記載された除電装置は、記録媒体から除電することができるほか、転写装置が記録媒体を介さず直接的に対向する像担持体の部分に転写電荷による転写メモリ(その後の静電潜像現像に悪影響を与える転写メモリ))が発生しても、これを消去できるようにしたものである。具体的に、像担持体と対向して配置された複数の除電部材を有するもので、像担持体の記録媒体が当接される部分とそれ以外の部分に対応して、該それ以外の部分に対する放電量を多くして転写メモリを消去できるようにしたものである。
【特許文献1】特開平11−95564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、トナー像が転写された記録媒体から除電装置を用いて除電する場合、該記録媒体が像担持体から離れやすくするために除電装置の除電能力を高くしすぎると、トナー像が乱れたり、トナーが記録媒体から飛散したり、或いは、これらにより画像ノイズが発生したりする過除電(過剰除電)が生じる。かといって、除電部材と記録媒体との距離を広げるなどして除電能力を低く設定すると、記録媒体を像担持体から確実に分離させ難くなる。
【0010】
前記特開平11−95564号公報に記載されている除電装置においても、記録媒体に対応する除電部材については、一様な除電電圧を印加し、記録媒体の搬送方向を横切る幅方向の全体にわたり一様に除電するのであるから、この問題を解決できない。
【0011】
記録媒体が普通紙のように、比較的、所謂腰の強いものであれば、除電装置による除電能力を低めに設定することで、過除電を抑制しつつ記録媒体の分離性も達成できることが無いとは言えないが、過除電の抑制と分離性の双方の達成は困難であるし、記録媒体が、像担持体表面の曲率に沿いやすい薄い記録紙や特殊紙のようなものであると、過除電の抑制と分離性の双方の達成はなおさら困難であり、いずれかを犠牲にせざるを得ない。
【0012】
そこで本発明は、像担持体上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写し、トナー像が転写された該記録媒体から除電装置を用いて除電する画像形成装置であって、トナー像が転写された記録媒体から該除電装置を用いて除電するにあたり、記録媒体に転写されたトナー像の乱れ、トナー像からのトナーの飛散、それらによる画像ノイズの発生を招く過除電を抑制しつつ記録媒体の像担持体からの安定した分離を可能にする除電を行うことができ、それだけ画像ノイズの抑制された画像を形成できる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため本発明は、像担持体上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写し、トナー像が転写された該記録媒体から除電装置を用いて除電する画像形成装置であり、該除電装置は、該記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、該記録媒体の該画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行う除電装置である画像形成装置を提供する。
【0014】
ここで、記録媒体の画像形成領域部分に対する「過除電」とは、該画像形成領域に転写されたトナー像が乱れたり、該トナー像におけるトナーが記録媒体から飛散したり、或いはさらにこれらにより画像ノイズが生じる程度まで記録媒体から除電することである。
【0015】
また、記録媒体の「画像形成領域部分」とは、画像形成が許される記録媒体領域部分であり、記録媒体に対する画像形成装置の最大印字幅の領域部分であってもよく、画像形成装置の印字制御において設定される印字幅の領域部分であってもよい。
【0016】
「記録媒体の該画像形成領域部分の外側耳部」とは、記録媒体搬送方向を横切る方向、換言すれば、記録媒体搬送方向を横切る方向の記録媒体の幅方向における、画像形成領域部分の外側の耳部であり、一般に採用される、例えば10mm〜20mm程度の幅の記録媒体左右の余白は、該外側耳部として採用できる。
【0017】
本発明に係る画像形成装置によると、トナー像が転写された記録媒体から除電する除電装置は、トナー像が転写された記録媒体から除電するにあたり、該記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行うので、記録媒体に転写されたトナー像の乱れ、トナー像からのトナーの飛散、それらによる画像ノイズの発生が抑制される一方、該記録媒体の該画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行うので、記録媒体の像担持体からの安定した分離が可能となり、これらにより、それだけ画像ノイズの抑制された画像を形成できる。
【0018】
前記除電装置の具体例として次の除電装置を挙げることができる。
(1)第1除電装置
記録媒体に臨む除電部材を備えており、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む該除電部材の部分と該記録媒体との間隔が、該記録媒体の画像形成領域部分に臨む該除電部材の部分と該記録媒体との間隔より小さくなるように該除電部材が設定されている除電装置。
【0019】
この除電装置では、除電部材に全体的に一様な除電電圧を印加して用いることができる。除電部材に全体的に一様な除電電圧を印加しても、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む該除電部材の部分と記録媒体との間隔が、記録媒体の画像形成領域部分に臨む該除電部材の部分と記録媒体との間隔より小さくなるように設定されているから、除電電圧を調整するなどして、記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行える一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体を像担持体から安定して分離させることができる。
なお、この第1除電装置の場合についても、後述する他の除電装置についても、「除電電圧」は、状況に応じて0〔V〕或いは接地電位であっても、それ以外の電圧であってもよく、状況に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
(2)第2除電装置
記録媒体の画像形成領域部分に臨む除電部材及び該記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材を備えており、該外側耳部に臨む除電部材は該画像形成領域部分に臨む除電部材より除電能力の高い種類の除電部材である除電装置。
【0021】
この除電装置において、「該外側耳部に臨む除電部材は該画像形成領域部分に臨む除電部材より除電能力の高い種類の除電部材」における「除電能力の高い種類の除電部材」とは、外側耳部に臨む除電部材に画像形成領域部分に臨む除電部材に印加される除電電圧と同じ除電電圧が印加された場合に、記録媒体搬送方向を横切る記録媒体幅方向の除電部材単位長さあたりの除電能力が画像形成領域部分に臨む除電部材より高い除電部材である。
【0022】
第2除電装置は、各除電部材には同じ除電電圧を印加して用いることができる。各除電部材に同じ除電電圧を印加しても、外側耳部に臨む除電部材として画像形成領域部分に臨む除電部材より除電能力の高い種類の除電部材を採用しているから、除電電圧を調整するなどして、記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行える一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体を像担持体から安定して分離させることができる。
【0023】
(3)第3除電装置
記録媒体の画像形成領域部分に臨む除電部材及び該記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材を備えており、該外側耳部に臨む除電部材には該画像形成領域部分に臨む除電部材より高い(絶対値で大きい)除電電圧を印加する除電装置。
【0024】
第3除電装置によると、外側耳部に臨む除電部材には画像形成領域部分に臨む除電部材より高い(絶対値で大きい)除電電圧が印加される構成であるから、各除電部材に印加する除電電圧を調整するなどして、記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体を像担持体から安定して分離させることができる。
【0025】
(4)第4除電装置
記録媒体の搬送方向を横切る方向に並べられて該記録媒体に臨む、除電能力の異なる複数種類の除電部材を備えており、該複数種類の除電部材のうち少なくとも一つは、該記録媒体の画像形成領域部分に対して配置される除電部材より、該記録媒体の該画像形成領域部分の外側耳部に対して配置される除電部材の方が高い除電能力を有する除電部材となるように、該記録媒体の画像形成領域の幅に応じて位置調節可能である除電装置。
【0026】
ここで「除電能力の異なる除電部材」とは、同じ除電電圧が印加された場合に、記録媒体搬送方向を横切る方向(換言すれば、記録媒体幅方向)における除電部材単位長さ当たりの除電能力が異なる除電部材である。
【0027】
第4除電装置によると、記録媒体として、例えばA3サイズの記録紙が採用されることもあり、A4サイズの記録紙が採用されることもある、といったように用いられる記録媒体のサイズが異なる場合がある故に、記録媒体の画像形成領域の幅が異なってくる場合に、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、画像形成領域外側の耳部に対しては除電能力の高い除電部材を臨ませ、除電電圧を調整するなどして、その記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体を像担持体から安定して分離させることができる。
【0028】
この第4除電装置における除電能力の異なる複数種類の除電部材は、例えば、記録媒体の搬送方向を横切る方向において、除電能力の最も低い除電部材の両側に臨んで該除電部材より除電能力の高い除電部材がそれぞれ位置するように配列されており、該除電能力の高い除電部材は、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨むように位置調節可能であってもよい。
【0029】
(5)第5除電装置
記録媒体の搬送方向を横切る方向に並べられて該記録媒体に臨む複数個の除電部材を備えており、該記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、該記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨む除電部材には、該画像形成領域に臨む除電部材より高い(絶対値で大きい)除電電圧を印加する除電装置。
【0030】
第5除電装置の場合、複数個の除電部材のそれぞれは、記録媒体搬送方向を横切る記録媒体幅方向における除電部材単位長さ当たりの除電能力が同じであってもよい。
第5除電装置の場合、各除電部材に印加する除電電圧を調整するなどして、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、その記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体を像担持体から安定して分離させることができる。
【0031】
(6)第6除電装置
複数本の除電針が記録媒体の搬送方向を横切る方向に連ねられて該記録媒体に臨む除電部材を二つ有しており、該記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、該二つの除電部材を前記記録媒体の搬送方向を横切る方向に相対的に移動させることで、該二つの除電部材が共同して、該記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨む除電針の密度を、該画像形成領域に臨む除電針の密度より大きく設定できる除電装置。
【0032】
ここで「除電針の密度」とは、換言すれば、記録媒体搬送方向を横切る方向の単位長さ当たりの除電針の本数である。
第6除電装置において、除電針密度が高く設定された部分では、それより除電針密度が低く設定された部分より除電能力が高くなる。
【0033】
第6除電装置では、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨む除電針の密度を、該画像形成領域に臨む除電針の密度より大きく設定できるから、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて画像形成領域外側耳部に対しては除電針密度を高く設定し、除電電圧を調整するなどして、その記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体を像担持体から安定して分離させることができる。
【0034】
以上説明した各除電装置の特徴、利点は、支障が無ければ、適宜組み合わせ採用してもよい。
また、以上説明した第1〜第6のいずれの除電装置においても、環境(除電装置周囲雰囲気の温度及び(又は)湿度)に応じて前記除電部材に印加する除電電圧を変更可能としてもよい。また、記録媒体の種類(普通紙か、薄紙か、特殊紙か等)に応じて前記除電部材に印加する除電電圧を変更可能としてもよい。
【0035】
いずれにしても、前記除電装置の配置位置の代表例として、記録媒体の搬送方向において前記転写装置の下流側の位置を挙げることができる。
【0036】
いずれにしても、除電装置は、前記像担持体上に形成されたトナー像が前記転写装置により転写された記録媒体を該像担持体から分離するために該記録媒体から除電するものである場合を例示できる。
この場合、該「像担持体」として、感光体等の静電潜像担持体に形成されるトナー像が記録媒体に直接転写される画像形成装置(代表的にはモノクロ画像形成装置)における該静電潜像担持体を例示できる。
また、感光体等の静電潜像担持体に形成されるトナー像を一端中間転写ベルト等の中間転写体に1次転写し、該中間転写体から記録媒体へ2次転写する画像形成装置(代表例としてはタンデム型、4サイクル型のカラー画像形成装置)の場合には、像担持体の1種と言える該中間転写体を例示できる。
【0037】
また、除電装置は、像担持体上に形成されたトナー像が転写装置により転写された記録媒体を、該記録媒体を静電吸着している記録媒体支持体から分離するために該記録媒体から除電するものであってもよい。
この場合の画像形成装置として、感光体等の静電潜像担持体上に形成されるトナー像が、例えば記録媒体静電吸着用チャージャにより荷電される記録媒体支持体上に静電吸着支持された記録媒体に転写される画像形成装置(代表的にはカラー画像形成装置)を例示できる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように本発明によると、像担持体上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写し、トナー像が転写された該記録媒体から除電装置を用いて除電する画像形成装置であって、トナー像が転写された記録媒体から該除電装置を用いて除電するにあたり、記録媒体に転写されたトナー像の乱れ、トナー像からのトナーの飛散、それらによる画像ノイズの発生を招く過除電を抑制しつつ記録媒体の像担持体からの安定した分離を可能にする除電を行うことができ、それだけ画像ノイズの抑制された画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態 図1、図2、図3参照)
図1は、本発明に係る画像形成装置の1例を示している。
図1に示す画像形成装置は、タンデム型のフルカラープリンタである。このプリンタPR1は、駆動ローラ31とこれに対向するローラ32に巻き掛けられた無端の中間転写ベルト4を有している。転写ベルト4は、図示省略のベルト駆動部により駆動される駆動ローラ31により図中反時計方向(図中矢印方向)に回転させることができる。
【0040】
対向ローラ32上の転写ベルト部分には転写ベルト4上の2次転写残トナー等を清掃するクリーナ9が臨んでいる。駆動ローラ31上の転写ベルト部分には、2次転写ローラ5が臨んでいるとともに2次転写ローラ5の直ぐ下流側で除電装置6Aが臨んでおり、さらにその直ぐ下流側で分離爪60が臨んでいる。
【0041】
2次転写ローラ5の表層部は弾性材料で形成されており、図示省略の押圧手段にて中間転写ベルト4に押圧され、中間転写ベルト4との間にニップ部を形成し、中間転写ベルト4の回転に従動して、或いは、後述するように該ニップ部に送り込まれる記録媒体Sの移動に従動して回転する。2次転写ローラ5には、図示省略の2次転写バイアス電源装置から2次転写バイアスを印加することができる。
除電装置6Aについては後述する。
【0042】
除電装置6A及び分離爪60の上方には定着装置8が配置されている。2次転写ローラ5の下方には、タイミングローラ対70が配置されており、さらにその下方に、図示省略の、記録紙等の記録媒体を収容した記録媒体収容カセットが配置されている。
【0043】
定着装置8は、本例では、図示省略のハロゲンランプヒータ等の熱源を内蔵した定着ローラとこれに圧接される加圧ローラとを含むものである。
図示省略の記録媒体収容カセットに収容された記録媒体Sは、図示省略の媒体供給ローラにて1枚ずつ引き出してタイミングローラ対70へ供給することができる。
【0044】
中間転写ベルト4を巻き掛けたローラ31、32の間には、転写ベルト4に沿って、ローラ32から31に向けて、イエロー画像形成部Y、マゼンタ画像形成部M、シアン画像形成部C及びブラック画像形成部Kがこの順序で配置されている。
【0045】
Y、M、C、Kの各画像形成部は、静電潜像担持体としてドラム型の感光体11を備えており、該感光体の周囲に帯電装置12、画像露光装置13、現像装置14、1次転写ローラ2、感光体上の1次転写残トナーを除去清掃するクリーナ15及び感光体上の残留電荷を光除電する光イレーサ16がこの順序で配置されている。
【0046】
1次転写ローラ2は転写ベルト4を間にして感光体11に対向しており、ベルトの走行に従動回転する。1次転写ローラ2には、感光体11上に形成されるトナー像をベルト4へ1次転写するための1次転写バイアスを図示省略の1次転写バイアス電源装置から印加できる。
露光装置13は、図示省略のパーソナルコンピュータ等から提供される画像情報に応じて、レーザービームを用いて感光体11に画像露光を施せるものである。
【0047】
各画像形成部における感光体11は、ここでは負帯電性の感光体であり、図示省略の感光体駆動モータにて図中時計方向回りに回転駆動できる。
各画像形成部における帯電装置12には、図示省略の帯電用電源装置から所定のタイミングで帯電電圧を印加できる。
【0048】
各画像形成部における現像装置14は、それには限定されないが、本例では、負帯電性トナーを採用するもので、感光体11上に形成される静電潜像を、図示省略の現像バイアス印加電源装置から現像バイアス電圧が印加される現像ローラ141で反転現像することができる。
【0049】
このプリンタPR1によると、Y、M、C、Kの画像形成部のうち1又は2以上を用いて画像を形成することができる。
画像形成部Y、M、C及びKのすべてを用いてフルカラー画像を形成する場合を例にとると、先ず、イエロー画像形成部Yにおいてイエロートナー像を形成し、これを転写ベルト4に1次転写する。
【0050】
すなわち、イエロー画像形成部Yにおいて、感光体11が図中時計方向に回転駆動され、帯電装置12にて表面が一様に所定電位に帯電せしめられた感光体11の該帯電域に画像露光装置13からイエロー画像用の画像露光が施され、感光体11上にイエロー用静電潜像が形成される。この静電潜像はイエロートナーを有する現像装置14の現像バイアスが印加された現像ローラ141にて現像されて可視イエロートナー像となり、該トナー像が1次転写ローラ2にて転写ベルト4上に1次転写される。このとき、1次転写ローラ15には図示省略の電源装置から1次転写バイアス電圧が印加される。
【0051】
同様にして、マゼンタ画像形成部Mにおいてマゼンタトナー像が形成されて転写ベルト4に転写され、シアン画像形成部Cにおいてシアントナー像が形成されて転写ベルト4に転写され、ブラック画像形成部Kにおいてブラックトナー像が形成されて転写ベルト4に転写される。
【0052】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像はこれらが中間転写ベルト4上に重ねて転写されるタイミングで形成される。
かくして転写ベルト4上に形成された多重トナー像は転写ベルト4の回動により2次転写ローラ5へ向け移動する。
【0053】
一方、記録媒体Sが図示省略の記録媒体収容カセットから媒体供給ローラにて引き出され、タイミングローラ対70へ供給され、待機している。
【0054】
このようにタイミングローラ対70のところで待機する記録媒体Sは、中間転写ベルト4にて送られてくる多重トナー像に合わせて、転写ベルト4と2次転写ローラ5とのニップ部に供給され、図示省略の電源装置から、トナーの正規帯電極性(負極性)とは逆極性(正極性)の2次転写バイアス電圧が印加された2次転写ローラ5にて該多重トナー像が記録媒体S上に2次転写される。
【0055】
このようにトナー像が転写された記録媒体Sは、除電装置6Aにて除電されることで像担持体である中間転写ベルト4から円滑に分離できるようになり、分離爪60に案内されてベルト4から離れる。なお、分離爪60は必ずしも要しない。
【0056】
その後記録媒体Sは定着装置8に通され、そこで多重トナー像が加熱加圧下に記録媒体Sに定着される。記録媒体Sはひき続き、図示省略の排出ローラ対等にて排出トレイに排出される。
【0057】
以上説明したようにして画像形成されるのであるが、このプリンタPR1における除電装置6Aは次の特徴を有するものである。
先ず、その動作原理を説明すると、図2に示すように、除電装置6Aは、記録媒体から除電するための除電部材を備えており、該除電部材に除電電圧が印加されることで、記録媒体Sの、トナー像が2次転写された面とは反対側の裏面に除電電荷を与える。
【0058】
そのとき、記録媒体Sの画像形成領域については低除電能力で弱除電し、該画像形成領域の両外側の耳部については該低除電能力より高い除電能力で強除電する。それにより、記録媒体Sに転写されたトナー像の乱れ、トナー像からのトナーの飛散、それらによる画像ノイズの発生を抑制しつつ、記録媒体Sの該画像形成領域部分の外側耳部に対しては高除電能力にて除電を行うことで、記録媒体Sの像担持体(中間転写ベルト4)からの安定した分離を可能とする。
【0059】
具体的には、図3に示すように、除電装置6Aは、記録媒体Sに臨む一つの除電部材61aを備えており、記録媒体Sの画像形成領域部分の外側耳部に臨む該除電部材の部分611aと該記録媒体との間隔g1が、記録媒体Sの画像形成領域部分に臨む該除電部材の中央部分611bと該記録媒体との間隔g2より小さくなるように該除電部材61aが設定されている。除電部材61aは、鋸歯状の除電針を除電部材長手方向(記録媒体Sの搬送方向を横切る幅方向に一致)に多数連ねて配列したものである。除電部材61aには除電電圧印加のための一つの電源装置PWから除電のタイミングで除電電圧が印加される。 電源装置PWから印加する除電電圧は、記録媒体Sから、その画像形成領域部分については過除電することなく除電するとともに、画像形成領域部分外側の耳部に対しては、記録媒体Sを中間転写ベルト4から円滑に分離させ得る除電を行えるものであれば、0〔V〕或いは接地電位の除電電圧を印加するものでもよく、それ以外の除電電圧を印加するものでもよい。この点は、後述する除電電圧印加のための電源装置についても同様である。
【0060】
この除電装置6Aでは、記録媒体Sの画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材の部分611aと記録媒体Sとの間隔g1が、記録媒体Sの画像形成領域部分に臨む除電部材部分611bと記録媒体Sとの間隔g2より小さくなるように設定されるから、電源装置PWから印加する除電電圧の調整及び(又は)間隔g1、g2の調整により、画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行える一方、外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体Sを像担持体(ここでは中間転写ベルト4)から安定して分離させることができる。
【0061】
(第2実施形態 図4参照)
第2実施形態の画像形成装置は、図1に示す画像形成装置において、除電装置6Aを図4に示す除電装置6Bに置き換えたものである。その他の点は図1の画像形成装置と同じである。
【0062】
除電装置6Bは、記録媒体Sの画像形成領域部分に臨む除電部材61b及び該記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材61b’を備えている。中央の除電部材61bは、鋸歯状の除電針を除電部材長手方向に多数連ねて配列したものである。除電部材61b’は、除電布からなるもので、記録媒体幅方向の単位長さあたりの除電能力が除電部材61bより高いものである。ここで、除電布とは、導電性の繊維を含む不織布であり、鋸歯状の除電針を連ねた除電部材より例えば数10倍〜100倍程度の除電針密度を有し、除電能力に優れるものである。
【0063】
除電部材61bと記録媒体Sとの間隔、除電部材61b’と記録媒体Sとの間隔は等しい。各除電部材には、一つの電源装置PWから除電のタイミングで実質上同じ除電電圧が印加される。
【0064】
この除電装置6Bによると、記録媒体Sの外側耳部に臨む除電部材61b’は、記録媒体Sの画像形成領域に臨む除電部材61bより除電能力が高いものであるから、電源装置PWから印加する除電電圧の調整等により、画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行える一方、外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体Sを中間転写ベルト4から安定して分離させることができる。
【0065】
(第3実施形態 図5参照)
第3実施形態の画像形成装置は、図1に示す画像形成装置において、除電装置6Aを図5に示す除電装置6Cに置き換えたものである。その他の点は図1の画像形成装置と同じである。
【0066】
除電装置6Cは、記録媒体Sの画像形成領域部分に臨む除電部材61c及び記録媒体Sの画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材61c’を備えている。除電部材61c、61c’はいずれも、鋸歯状の除電針を除電部材長手方向に多数連ねて配列したものである。しかし、除電針の除電部材単位長さあたりの本数(除電針の密度)は、除電部材61cより除電部材61c’の方が多く(除電針密度が高く)、従って、除電部材61c’の方が除電部材61cより単位長さあたりの除電能力が高い。
【0067】
除電部材61cと記録媒体Sとの間隔、除電部材61c’と記録媒体Sとの間隔は等しい。各除電部材には、一つの電源装置PWから除電のタイミングで実質上同じ除電電圧が印加される。
【0068】
この除電装置6Cによると、記録媒体Sの外側耳部に臨む除電部材61c’は、記録媒体Sの画像形成領域に臨む除電部材61cより除電能力が高いものであるから、電源装置PWから印加する除電電圧の調整等により、画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行える一方、外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体Sを中間転写ベルト4から安定して分離させることができる。
【0069】
(第4実施形態 図6参照)
第4実施形態の画像形成装置は、図1に示す画像形成装置において、除電装置6Aを図6(A)に示す除電装置6Dに置き換えたものである。その他の点は図1の画像形成装置と同じである。
【0070】
除電装置6Dは、記録媒体Sの画像形成領域部分に臨む除電部材61d及び該記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材61d’を備えている。除電部材61d、61d’はいずれも、鋸歯状の除電針を除電部材長手方向に多数連ねて配列したものである。両除電部材は、除電針密度が等しく、記録媒体との間隔も等しい。
除電部材61dには電源装置PW1から除電のタイミングで除電電圧が印加され、除電部材61d’には、電源装置PW1より高い(絶対値で大きい)除電電圧を印加する電源装置PW2から除電のタイミングで、除電部材61dに対するより高い除電電圧が印加される。
【0071】
除電装置6Dによると、外側耳部に臨む除電部材61d’には画像形成領域部分に臨む除電部材61dより高い除電電圧が印加される構成であるから、各除電電圧を調整するなどして、記録媒体Sの画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、記録媒体Sの外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行って、記録媒体Sを中間転写ベルト4から安定して分離させることができる。例えば、除電部材61dには−200〔V〕を、除電部材61d’には−800〔V〕を印加する場合を挙げることができる。
【0072】
なお、図6(A)に示す除電装置6Dにおいては、除電部材61d、61d’は同一平面上で若干離して配置してあるが、図6(B)に示すように、除電部材61d、61d’を若干離した並行な二つの平面のそれぞれに配置してもよい。
また、除電部材61d’は高除電能力の除電布に代えてもよい。
【0073】
(第5実施形態 図7、図8参照)
第5実施形態の画像形成装置は、図1に示す画像形成装置において、除電装置6Aを図7に示す除電装置6Eに置き換えたものである。その他の点は図1の画像形成装置と同じである。
【0074】
除電装置6Eの動作原理を図8に示す。図8に示すように、除電装置6Eは、記録媒体として、例えばA4サイズの記録紙が採用されることもあり、A5サイズの記録紙が採用されることもある、といったように用いられる記録媒体のサイズが異なる場合がある故に、記録媒体の画像形成領域の幅が異なってくる場合に、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、その記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による 弱除電を行う一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて強除電を行って、記録媒体を像担持体から安定して分離させるものである。
【0075】
具体的には図7に示すように、除電装置6Eは、記録媒体Sの搬送方向を横切る方向に並べられて該記録媒体に臨む、除電能力の異なる2種類の除電部材6e及び6e’を備えている。除電部材6eは除電針を連ねた除電部材であり、除電部材6e’は除電布からなっている。同じ除電電圧が印加されるとすると、除電部材6e’の方が除電部材6eより単位長さ当たりの除電能力が高い。本例では、図示を省略しているが除電部材6e、6e’には同じ電源装置から実質上同じ除電電圧が印加される。
【0076】
除電部材6e’は、記録媒体Sの画像形成領域に臨むように配置された除電部材6eの両側に臨むように、且つ、除電部材6eに一部重なるように配置され、支持アーム601にて支持されている。それぞれが除電部材6e’を支持する2本の支持アーム601はガイド部材602に案内されて記録媒体幅方向に移動可能である。
【0077】
ガイド部材602と並行にネジ棒603が設けられており、該ネジ棒に刻まれた右ネジ部に一方の支持アーム601が、左ネジ部に他方の支持アーム601が螺合しており、該ネジ棒603が正逆運転可能のモータ604で回されることで、一対の支持アーム601が互いに接近したり、離反したりでき、それにより左右の除電部材6e’を互いに近づけたり、離したりできる。従って、記録媒体Sの幅に応じて、左右の除電部材6e’の位置を調整して、高除電能力の除電部材6e’を該幅の記録媒体の外側耳部に臨ませることができる。なお、除電部材6e’は手動で動かせるようにしてもよい。
【0078】
除電装置6Eによると、記録媒体として、例えばA4サイズの記録紙が採用されることもあり、A5サイズの記録紙が採用されることもある、といったように用いられる記録媒体のサイズが異なる場合がある故に、記録媒体の画像形成領域の幅が異なってくる場合に、記録媒体Sの画像形成領域の幅に応じて、高除電能力の除電部材6e’を画像形成領域外側耳部に臨ませ、除電電圧を調整するなどして、その記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力の除電部材6eによる除電を行う一方、記録媒体Sの画像形成領域部分の外側耳部に対しては、除電部材6e’にて高除電能力で除電を行い、これらにより記録媒体Sを中間転写体4から安定して分離させることができる。
【0079】
(第6実施形態 図9参照)
第6実施形態の画像形成装置は、図1に示す画像形成装置において、除電装置6Aを図9に示す除電装置6Fに置き換えたものである。その他の点は図1の画像形成装置と同じである。除電装置6Fの動作原理は除電装置6Eと同じである(図8参照)。
【0080】
除電装置6Fは、記録媒体の搬送方向を横切る方向に並べられて該記録媒体に臨む、本例では5個の除電部材を備えている。すなわち、比較的長い中央部の除電部材6f1の両側にそれぞれ短い除電部材6f2が配置されており、さらにその外側に短い除電部材6f3が配置されている。これら除電部材はいずれも除電針を連ねた形態の除電部材であり、単位長さあたりの除電能力は同一であり、記録媒体との間隔も同一である。
【0081】
中央の除電部材6f1には、電源装置PW1から除電のタイミングで除電電圧を印加できる。また、電源装置PW1から印加される除電電圧より高い(絶対値で大きい)除電電圧を電源装置PW2から、スイッチSWの切り換え操作で、各除電部材6f2又は各除電部材6f3に選択的に印加できるようにしてある。
【0082】
従って、記録媒体Sの幅に応じて、該幅の記録媒体における画像形成領域の外側耳部に臨む左右の除電部材6f2又は除電部材6f3に、中央除電部材6f1より高い除電電圧を印加することができる。
【0083】
この除電装置6Fによると、各除電部材に印加する除電電圧を調整するなどして、記録媒体Sの画像形成領域の幅に応じて、その記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力の除電部材6f1による除電を行う一方、記録媒体Sの画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力の除電部材6f2又は6f3にて除電を行って、記録媒体Sを中間転写体4から安定して分離させることができる。
【0084】
なお、記録媒体の各外側耳部に臨ませる除電部材は本例では2分割されているだけであるが、もっと細かく、例えば、除電針1本ごとに分割し、記録媒体の幅に応じて、それら除電部材の1又は2以上に選択的に高除電電圧を印加するようにしてもよい。
【0085】
(第7実施形態 図10参照)
第7実施形態の画像形成装置は、図1に示す画像形成装置において、除電装置6Aを図10に示す除電装置6Gに置き換えたものである。その他の点は図1の画像形成装置と同じである。除電装置6Gの動作原理は除電装置6Eと同じである(図8参照)。
【0086】
この除電装置6Gは、記録媒体に臨むことができる二つの除電部材6g1、6g2を有している。一方の除電部材6g1は、複数の除電針が、記録媒体の搬送方向を横切る方向に、且つ、使用可能の記録媒体のうち最大幅の記録媒体の該幅全体に臨むことができる長さにわたって連ねられているものである。他方の除電部材6g2は、部分的に除電針を形成したものである。
【0087】
これら除電部材6g1、6g2は互い接近させて並行に配置されており、除電部材6g2は静止配置の除電部材6g1に対し、図示省略の駆動機構により、自動的に或いは手動で、並行に移動させることができる。かかる移動により、図10(A)に示すように、除電針の密度の高い一対の領域G1を形成することができ、また、図10(B)に示すように、除電針の密度の高い一対の領域G2を、前記一対の領域G1の間隔より狭い間隔で形成することができる。
【0088】
本例では、除電部材6g1、6g2のいずれにおいても除電針ピッチは同ピッチとするとともに、除電部材6g1の除電針に対し、除電部材6g2の除電針を0.5ピッチずらしてあり、さらに、除電部材6g2における間隔をあけて形成した除電針群gのうち左側、右側のそれぞれにおいて互いに隣り合う除電針群gのピッチを除電針ピッチに対し1.5ピッチずらしある。かくして、前記除電針密度の高い(各除電部材における除電針密度の2倍の除電針密度の)一対の領域G1又は領域G2を選択的に得ることができる。
【0089】
すなわち、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、該二つの除電部材6g1、6g2を記録媒体の搬送方向を横切る方向に相対的に移動させて、該二つの除電部材が共同して、該記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨む除電針の密度を、該画像形成領域に臨む除電針の密度より大きく設定できる。除電針密度が高くなった領域では、それより除電針密度が低い領域より除電能力が高くなる。また、一般的に除電針を連ねた除電部材の場合、除電部材の板厚は0.3mm程度のものであり、本例でも、除電部材6g1、6g2の板厚はその程度のものであり、該両除電部材において除電針が重なる領域では、実質上1枚の除電部材の除電能力しか示さない。
【0090】
除電部材6g1、6g2には電源装置PWから除電のタイミングで実質上同じ除電電圧を印加すればよい。
除電装置6Gによると、記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、その記録媒体の画像形成領域部分に対しては、両除電部材6g1、6g2による、過除電を生じさせることのない除電針密度の小さい低除電能力領域Gで除電を行える一方、記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に対しては除電針密度の大きい高除電能力領域(記録媒体幅に応じて領域G1又はG2)を臨ませて除電を行い、記録媒体を像担持体から安定して分離させることができる。
除電装置6Gは、除電部材の可動範囲を小さく済ませることができるので、図7の除電装置6Eと比べると、除電部材の駆動機構を簡素化できる利点がある。
【0091】
以上説明したいずれの除電装置を採用する場合でも、環境(除電装置周囲雰囲気の温度及び(又は)湿度)に応じて前記除電部材に印加する除電電圧を変更可能としてもよい。 環境に応じて除電部材に印加する除電電圧を変更して除電能力を変えることで、記録媒体の像担持体からの分離性をより確実に達成できるようになる。
【0092】
低温低湿環境(例えば10℃、15%RH)の場合、一般的には記録紙である記録媒体の電気抵抗が高くなるため、記録媒体は、転写ベルトや感光体等の像担持体との静電吸着力が強くなり、像担持体から分離し難くなる。一方、トナー帯電量が増すため、過除電によるトナーの飛び散りは発生し難くなる。従って、低温低湿環境では、通常環境の場合より、除電電圧を上げて除電能力を高めることが可能であり、記録媒体の画像形成領域の外側耳部に対してだけではなく、画像形成領域部分に対しても除電能力を高めることが可能である。それにより記録媒体の分離性を高めることができる。
【0093】
高温高湿環境(例えば30℃、85%RH)の場合、記録媒体の電気抵抗は低くなるため、記録媒体は、転写ベルトや感光体等の像担持体との静電吸着力が弱まり、像担持体から分離しやすくなる。しかし、トナー帯電量が減少するため、過除電によるトナー像の乱れ、トナーの飛び散り、さらには画像ノイズが発生しやすくなる。従って、高温高湿環境では、通常環境の場合より、記録媒体の外側耳部に対する除電電圧を低く設定することで、より確実に画像ノイズの発生を抑制することができる。
【0094】
例えば、前記除電装置6D(図6)の場合、通常環境では、画像形成領域に対応する除電部材61dには−200〔V〕を、外側耳部に対応する除電部材61d’には−800〔V〕を印加する場合を例示できるが、高温高湿環境では、除電部材61dには−200〔V〕を、外側耳部に対応する除電部材61d’には−400〔V〕を印加する場合を例示できる。なお、除電電圧の変更条件は除電装置に応じて適宜変更しても構わない。
【0095】
また、以上説明したいずれの除電装置を採用する場合でも、記録媒体の種類(普通紙か、薄紙か、特殊紙か等)に応じて前記除電部材に印加する除電電圧を変更可能としてもよい。
【0096】
例えば記録媒体が薄紙の場合、普通紙より腰が弱いため、転写ベルトや感光体等の像担持体の表面曲率に沿いやすく、分離しにくい。このような種類の記録媒体については、画像形成領域の外側耳部に対してだけでなく、画像形成領域に対しても除電電圧を上げることで、像担持体からの分離性をより確実に達成できる。この場合、過除電による画像ノイズの発生が懸念されるが、従来のように記録媒体の全体に対し同じように除電電圧を上げる場合に比べると、画像ノイズの発生を実用上無視できる程度に抑制することが可能である。
【0097】
以上、タンデム型カラー画像形成装置を例にとって説明したが、本発明は、一つの感光体等からなる静電潜像担持体に、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの四つの現像装置を順次用いて各色のトナー像を順次形成し、各色トナー像を中間転写体に重ね転写し、該多重トナー像を記録媒体に転写し、該記録媒体を中間転写体から除電装置を用いて分離する4サイクル型カラー画像形成装置等のカラー画像形成装置にも、モノクロ画像形成装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、像担持体上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写し、トナー像が転写された該記録媒体から除電装置を用いて除電する画像形成装置であって、トナー像が転写された記録媒体から該除電装置を用いて除電するにあたり、記録媒体に転写されたトナー像の乱れ、トナー像からのトナーの飛散、それらによる画像ノイズの発生を招く過除電を抑制しつつ記録媒体の像担持体からの安定した分離を可能にする除電を行うことができ、それだけ画像ノイズの抑制された画像を形成できる画像形成装置を提供することに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係る画像形成装置の1例(タンデム型カラープリンタ)の概略構成を示す図である。
【図2】図1のプリンタにおける除電装置の動作原理を示す図である。
【図3】図1のプリンタにおける除電装置の具体的構成を示す図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の他の例で採用される、図2の動作原理の除電装置の構成を示す図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置のさらに他の例で採用される、図2の動作原理の除電装置の構成を示す図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置のさらに他の例で採用される、図2の動作原理の除電装置の構成を示す図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置のさらに他の例で採用される除電装置の構成を示す図である。
【図8】図7に示す除電装置の動作原理を示す図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置のさらに他の例で採用される、図8と同様の動作原理の除電装置の構成を示す図である。
【図10】本発明に係る画像形成装置のさらに他の例で採用される、図8と同様の動作原理の除電装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
PR1 カラープリンタ
Y イエロー画像形成部
M マゼンタ画像形成部
C シアン画像形成部
K ブラック画像形成部
11 感光体
12 帯電装置
13 画像露光装置
14 現像装置
141 現像ローラ
15 クリーナ
16 光イレーサ
2 1次転写ローラ
31 駆動ローラ
32 対向ローラ
4 中間転写ベルト
5 2次転写ローラ
6A 除電装置
61a 除電部材
611a 除電部材の部分
611b 除電部材の部分
g1 除電部材部分611aと記録媒体Sとの間隔
g2 除電部材部分611bと記録媒体Sとの間隔
PW 電源装置
6B 除電装置
61b、61b’除電部材
6C 除電装置
61c、61c’除電部材
6D 除電装置
61d、61d’ 除電部材
PW1、PW2 電源装置
6E 除電装置
6e、6e’ 除電部材
601 支持アーム
602 ガイド部材
603 ネジ棒
604 モータ
6F 除電装置
6f1、6f2、6f3 除電部材
6G 除電装置
6g1、6g2 除電部材
G1、G2 除電針の密度の高い領域
g 除電針群
60 分離爪
70 タイミングローラ対
8 定着装置
9 クリーナ
S 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写し、トナー像が転写された該記録媒体から除電装置を用いて除電する画像形成装置であり、該除電装置は、該記録媒体の画像形成領域部分に対しては過除電を生じさせることのない低除電能力による除電を行う一方、該記録媒体の該画像形成領域部分の外側耳部に対しては該低除電能力より高除電能力にて除電を行う除電装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記除電装置は、前記記録媒体に臨む除電部材を備えており、前記記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む該除電部材の部分と該記録媒体との間隔が、該記録媒体の画像形成領域部分に臨む該除電部材の部分と該記録媒体との間隔より小さくなるように該除電部材が設定されている請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記除電装置は、前記記録媒体の画像形成領域部分に臨む除電部材及び該記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材を備えており、該外側耳部に臨む除電部材は該画像形成領域部分に臨む除電部材より除電能力の高い種類の除電部材である請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記除電装置は、前記記録媒体の画像形成領域部分に臨む除電部材及び該記録媒体の画像形成領域部分の外側耳部に臨む除電部材を備えており、該外側耳部に臨む除電部材には該画像形成領域部分に臨む除電部材より高い除電電圧を印加する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記除電装置は、前記記録媒体の搬送方向を横切る方向に並べられて該記録媒体に臨む、除電能力の異なる複数種類の除電部材を備えており、該複数種類の除電部材のうち少なくとも一つは、該記録媒体の画像形成領域部分に対して配置される除電部材より、該記録媒体の該画像形成領域部分の外側耳部に対して配置される除電部材の方が高い除電能力を有する除電部材となるように、該記録媒体の画像形成領域の幅に応じて位置調節可能である請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記除電能力の異なる複数種類の除電部材は、前記記録媒体の搬送方向を横切る方向において、除電能力の最も低い除電部材の両側に臨んで該除電部材より除電能力の高い除電部材がそれぞれ位置するように配列されており、該除電能力の高い除電部材は、該記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、該記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨むように位置調節可能である請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記除電装置は、前記記録媒体の搬送方向を横切る方向に並べられて該記録媒体に臨む複数個の除電部材を備えており、該記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、該記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨む除電部材には、該画像形成領域に臨む除電部材より高い除電電圧を印加する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記除電装置は、複数本の除電針が前記記録媒体の搬送方向を横切る方向に連ねられて該記録媒体に臨む除電部材を二つ有しており、該記録媒体の画像形成領域の幅に応じて、該二つの除電部材を前記記録媒体の搬送方向を横切る方向に相対的に移動させることで、該二つの除電部材が共同して、該記録媒体の画像形成領域の外側耳部に臨む除電針の密度を、該画像形成領域に臨む除電針の密度より大きく設定できる請求項1記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記除電装置は、環境に応じて前記除電部材に印加する除電電圧を変更可能である請求項2から8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記除電装置は、記録媒体の種類に応じて前記除電部材に印加する除電電圧を変更可能である請求項2から8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記除電装置は、前記記録媒体の搬送方向において前記転写装置の下流側に設けられている請求項1から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記除電装置は、前記像担持体上に形成されたトナー像が前記転写装置により転写された記録媒体を該像担持体から分離するために該記録媒体から除電するものである請求項1から11のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記除電装置は、前記像担持体上に形成されたトナー像が前記転写装置により転写された記録媒体を、該記録媒体を静電吸着している記録媒体支持体から分離するために該記録媒体から除電するものである請求項1から11のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−206472(P2007−206472A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26578(P2006−26578)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】