説明

画像形成装置

【課題】タンデム方式のカラー画像形成装置において、記録紙の搬送速度の安定化を図る。
【解決手段】搬送ベルト30の移動方向の最も上流側に配設された転写ロール31Yとレジストロール53との間に配設され、搬送ベルト30にて搬送される用紙を搬送ベルト30に向けて押圧する吸着ロール34は、搬送ベルト30にて搬送される用紙を押圧する押圧力が、レジストロール53が用紙を押圧する押圧力よりも大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)を帯電装置により所定の電位で一様に帯電し、これを画像情報に基づいて制御された光で露光して静電潜像を形成する。そして、現像装置により静電潜像を現像してトナー像化し、さらにトナー像を記録紙へ転写・定着することで、記録紙にトナー画像を形成している。
【0003】
このような電子写真方式を用いたカラー画像形成装置においては、高速化に適した「タンデム方式」と呼ばれる構成が多く採用されている。タンデム方式のカラー画像形成装置では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色トナー像をそれぞれ異なる感光体ドラムに形成し、各感光体ドラムに形成された各色トナー像を直接記録紙に順次転写するか、または中間転写体に順次転写した後に一括して記録紙に転写することで、各色トナー像を重畳させたフルカラー画像を形成している。
その中でも各色トナー像を直接記録紙に順次転写する構成を採用した場合には、各感光体ドラムに沿って記録紙を搬送する搬送部材は、常時一定の速度で移動するように制御する必要がある。それによって、画像形成時において記録紙の搬送速度が一定となるように設定して、カラーレジストレーション(色合わせ)の安定化を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−114348号公報(第4−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、記録紙を搬送する搬送部材には、記録紙搬送方向の前後にレジストロールや定着装置等といった記録紙を搬送する別の搬送手段が配置されている。そのため、記録紙が搬送部材に搬入される場合および記録紙が搬送部材から搬出される際に、記録紙が搬送部材と同時に、かかる別の搬送手段からも搬送力を受ける状況が発生する。
そのために、搬送部材の移動速度を一定に制御したとしても、記録紙の後端が上記した別の搬送手段から抜け出た際、または記録紙の先端が上記した別の搬送手段に進入した際に、記録紙がこれらの搬送手段からの搬送力の影響を受けて、記録紙の搬送速度が変動する場合があった。その結果、色ズレや画像ズレといった画像乱れが発生する場合があった。
【0006】
そこで本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、タンデム方式のカラー画像形成装置において、記録紙の搬送速度の安定化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明の画像形成装置は、複数の像保持体と、複数の像保持体の配列方向に沿って記録材を搬送するベルト部材と、ベルト部材にて搬送される記録材に、複数の像保持体にて形成された各々のトナー像を転写する各々の転写部材と、ベルト部材に記録材を搬入する搬入ロール部材と、転写部材の中でベルト部材の移動方向の最も上流側に配設された転写部材と搬入ロール部材との間に配設され、ベルト部材にて搬送される記録材をベルト部材に向けて押圧する押圧ロール部材とを備え、押圧ロール部材は、ベルト部材にて搬送される記録材を押圧する押圧力が、搬入ロール部材が記録材を押圧する押圧力よりも大きく設定されたことを特徴としている。
【0008】
ここで、押圧ロール部材は、ベルト部材を張架する張架ロール部材を押圧する位置に配設されたことを特徴とすることができる。また、押圧ロール部材は、ベルト部材に従動することを特徴とすることができる。さらに、押圧ロール部材は、ベルト部材にて搬送される記録材に電荷を供給することを特徴とすることができる。加えて、搬入ロール部材は、ベルト部材の進行方向とほぼ平行にベルト部材に記録材を搬入することを特徴とすることができる。
【0009】
また、転写部材の中のベルト部材の移動方向最下流側に配設された転写部材は、ベルト部材を介して対向する像保持体に向けて作用させる押圧力が他の転写部材が各々対向する像担持体に向けて作用させる押圧力よりも大きく設定されたことを特徴とすることができる。さらには、像保持体は、像保持体を接触帯電する接触帯電部材と、像保持体に形成された静電潜像を現像する現像部材と、像保持体表面を清掃するクリーニング部材とが一体的に構成された画像形成ユニット内に配置されたことを特徴とすることもできる。
【0010】
また、本発明の画像形成装置は、複数の像保持体と、複数の像保持体の配列方向に沿って記録材を搬送するベルト部材と、ベルト部材にて搬送される記録材に、複数の像保持体にて形成された各々のトナー像を転写する各々の転写部材と、記録材に転写されたトナー像を定着する定着部材とを備え、転写部材の中で最も定着部材側に配設された転写部材は、ベルト部材を介して対向する像保持体に向けて作用させる押圧力が、他の転写部材が各々対向する像担持体に向けて作用させる押圧力よりも大きく設定されたことを特徴としている。
【0011】
ここで、ベルト部材と定着部材とは、同一の駆動源により駆動されることを特徴とすることができる。また、ベルト部材を張架する張架ロール部材がベルト部材にラップされる位置に、ベルト部材およびベルト部材に搬送される記録材を帯電するベルト帯電部材をさらに備えたことを特徴とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カラーレジストレーション(色合わせ)の精度を向上させることができるので、高品質なカラー画像を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成を示す図である。図1に示した画像形成装置1は、4つの画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)10Y,10M,10C,10Kが上下方向(略鉛直方向)に一定の間隔を置いて並列配置された所謂タンデム型で構成されている。プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kは、像保持体としての感光体ドラム11、感光体ドラム11の表面を所定電位で一様に帯電する帯電ロール12、トナー(マイナス帯電特性)とキァリア(磁性粒子)とからなる現像剤を用いて感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像する2成分現像方式の現像器13、転写後の感光体ドラム11表面を清掃するドラムクリーナ14が一体として構成されている。
【0014】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kは、現像器13に収納されたトナーを除いて、略同様に構成されている。そして、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
また、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kは、画像形成装置1本体に対して着脱自在に構成されており、例えば現像器13内のトナーが消費された場合には、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10K毎に個別に交換することができるように構成されている。
【0015】
本実施の形態の画像形成装置1では、露光系として、プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kのそれぞれに配設された感光体ドラム11を露光するレーザ露光装置20、転写後の感光体ドラム11を除電する除電ランプ21が設けられている。
【0016】
また、本実施の形態の画像形成装置1には、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kの感光体ドラム11に当接させながら記録材(記録紙)である用紙を搬送する搬送ベルト(ベルト部材)30が配置されている。搬送ベルト30は、用紙を静電吸着し得るフィルム状の無端ベルトで形成されている。そして、駆動ロール32とアイドルロール33とに張架されて循環移動され、用紙が搬送される用紙搬送路M1を形成している。
【0017】
搬送ベルト30の内側であって各感光体ドラム11と対向する位置には、それぞれ転写部材の一例としての転写ロール31Y,31M,31C,31Kが配置されている。各転写ロール31(31Y,31M,31C,31K)は、感光体ドラム11との間に転写電界を形成することで、搬送ベルト30に保持・搬送される用紙上に、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kで形成された各色トナー像を順次転写する。
また、搬送ベルト30の感光体ドラム11側の最上流部には、搬送ベルト30を帯電するベルト帯電部材の一例としての吸着ロール34が配設されている。搬送ベルト30および用紙が吸着ロール34によって帯電されることで、用紙を搬送ベルト30上に安定的に静電吸着させることが可能となる。
加えて、搬送ベルト30の用紙搬送路M1下流側には、用紙上の未定着トナー像に対して熱および圧力による定着処理を施す定着部材の一例としての定着器40が配設されている。
【0018】
また、本実施の形態の画像形成装置1には、電源(電圧供給手段)として、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kの帯電ロール12に所定の帯電バイアス電圧を印加する帯電電源61、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kの現像器13に所定の現像バイアス電圧を印加する現像電源62、各転写ロール31に所定の転写電圧を印加する転写電源63、吸着ロール34に所定の吸着電圧を印加する吸着電源64が備えられている。
本実施の形態の帯電電源61は、マイナスの直流電圧を可変出力できるように構成されている。また、現像電源62は、マイナスの可変直流電圧に所定値の交流電圧を重畳した電圧を出力するように構成されている。また、本実施の形態の転写電源63および吸着電源64は、所定のプラスの直流電圧を出力するように構成されている。
【0019】
制御部60は、帯電電源61、現像電源62、転写電源63および吸着電源64における各出力電圧値や出力タイミング等の出力制御を行なう。また、除電ランプ21の点灯制御を行なう。さらには、搬送ベルト30の駆動制御を含む画像形成装置1全体の動作制御も行なう。
【0020】
本実施の形態の画像形成装置1においては、制御部60による動作制御の下で、レーザ露光装置20は、画像情報に基づいて変調されたレーザ光(露光ビーム)を生成して、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kの感光体ドラム11に静電潜像を形成する。例えば黒(K)のプロセスカートリッジ10Kでは、帯電ロール12により所定電位で一様に帯電された感光体ドラム11の表面が、レーザ露光装置20により生成された露光ビームで走査露光されて、感光体ドラム11上に静電潜像が形成される。そして、形成された静電潜像は現像器13により現像され、感光体ドラム11上には黒(K)のトナー像が形成される。同様に、プロセスカートリッジ10Y,10M,10Cにおいても、それぞれY、M、Cの各色トナー像が形成される。
【0021】
各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kでの各色トナー像の形成が開始されると、用紙カセット50から取り出された用紙は、図1の矢印方向に循環移動する搬送ベルト30上に静電吸着された状態で、用紙搬送路M1を搬送される。そして、転写ロール31(31Y,31M,31C,31K)により形成される転写電界によって、各色トナー像が用紙上に順次重畳的に転写される。
トナー像が静電転写された用紙は、プロセスカートリッジ10Kの下流で搬送ベルト30から剥離され、定着器40に搬送される。用紙が定着器40に搬送されると、用紙上の未定着トナー像は、熱および圧力による定着処理を受けて用紙に定着される。定着画像が形成された用紙は、画像形成装置1の排出部に設けられた排紙部70に積載される。一方、両面プリント時には、両面搬送路M2(図1参照)を経由して再度の同様な転写処理が行なわれた後、排紙部70に積載されることとなる。
【0022】
続いて、本実施の形態の画像形成装置1における用紙搬送機構について説明する。図2は、本実施の形態の用紙搬送機構を説明する図である。
図2に示したように、本実施の形態の画像形成装置1には、用紙搬送機構として、給紙側に、用紙を収容する用紙カセット50、この用紙カセット50に集積された用紙を所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51により繰り出された用紙を搬送する搬送ロール52、画像形成動作に合わせて用紙を搬送ベルト30に送り出す搬入ロール部材の一例としてのレジストロール53が配設されている。
【0023】
さらには、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kが配置された領域に、上記した各感光体ドラム11に当接させながら用紙を搬送する搬送ベルト30が配置されている。搬送ベルト30は、制御部60によって制御された駆動モータ(不図示)により一定の速度で回転駆動される駆動ロール32と、従動回転するアイドルロール33とに張架されている。
搬送ベルト30の感光体ドラム11側の最上流部には、搬送ベルト30を介してアイドルロール33を所定圧で押圧するように、搬送ベルト30および用紙を帯電する吸着ロール34が配設されている。給紙側から搬送ベルト30に搬送された用紙は、搬送ベルト30と吸着ロール34との間を通過する際に、吸着電源64(図1参照)から吸着ロール34に印加される所定電圧(例えば、+3000V)によって帯電される。それによって、用紙は搬送ベルト30表面に安定的に静電吸着される。そして、用紙が静電吸着された状態で搬送ベルト30が循環駆動されることにより、用紙が転写位置で感光体ドラム11に当接しながら略鉛直方向下方から上方に向けて搬送される用紙搬送路M1が形成される。
【0024】
また、排紙側には、定着器40にて定着処理された用紙を搬送する排紙ロール54、片面プリントの場合には用紙を装置本体上部に設けられた排紙部70に向けて排出し、両面プリントの場合には排紙部70に向けた回転方向から所定のタイミングで逆方向に反転することで、定着器40にて片面が定着された用紙を両面搬送路M2に向けて送り出す反転ロール55が配設されている。加えて、両面搬送路M2には、両面搬送路M2に沿って複数の搬送ロール56が配設されている。
【0025】
本実施の形態の用紙搬送機構では、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kでの各色トナー像の形成が開始されると、所定のタイミングでピックアップロール51が回転し、用紙カセット50から用紙を繰り出す。繰り出された用紙は、搬送ロール52によりレジストロール53に搬送され、レジストロール53によりトナー像の形成タイミングに合わせて搬送ベルト30に供給される。
搬送ベルト30に供給された用紙は、まず、搬送ベルト30と吸着ロール34との間を通過する。その際に、吸着電源64から吸着ロール34に対して所定電圧(例えば、+3000V)が印加される。それによって、用紙はプラス電荷で帯電され、搬送ベルト30に強く安定的に静電吸着される。
そして、用紙は図2の矢印方向に循環移動する搬送ベルト30上に静電吸着された状態で、用紙搬送路M1を搬送される。
【0026】
搬送ベルト30上に静電吸着された状態で用紙搬送路M1を搬送される用紙には、各プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kにて形成された各色トナー像が、各転写ロール31により形成される転写電界によって、順次重畳的に転写される。そのため、プロセスカートリッジ10Kを通過した時点で、用紙上にはフルカラーの転写トナー画像が形成される。
用紙は、プロセスカートリッジ10Kを通過した後、搬送ベルト30から剥離され、搬送ベルト30の用紙搬送路M1下流側に配置された定着器40に搬送される。定着器40は、用紙上に形成されたフルカラーの転写トナー画像に対して、加熱および加圧を施すことで、用紙上にフルカラーの定着画像を形成する。
【0027】
定着器40にて定着処理が施された用紙は、片面プリントの場合には、排紙ロール54と反転ロール55とによって排紙部70に積載される。一方、両面プリントの場合には、定着器40での定着処理の後、所定のタイミングで反転ロール55が排紙部70に向けた回転方向からそれとは逆方向の回転方向に逆回転(反転)する。それによって、定着器40にて片面が定着された用紙は、両面搬送路M2に向けて送り出される。両面搬送路M2に送り出された用紙は、両面搬送路M2に沿って配置された複数の搬送ロール56によって、レジストロール53に搬送される。
その後、再度レジストロール53によりトナー像の形成タイミングに合わせて搬送ベルト30に供給される。搬送ベルト30に供給された用紙は、同様に搬送ベルト30上に静電吸着され、用紙搬送路M1を搬送される。その際には、前回にトナー像が形成された面の裏面が感光体ドラム11側に面するように搬送ベルト30上に静電吸着される。そして、この裏面に定着画像が形成された後、排紙部70に積載されることとなる。
【0028】
ここで、本実施の形態の搬送ベルト30に搬送される用紙に作用する搬送力について述べる。図3は、レジストロール53からプロセスカートリッジ10Yの転写位置までの構成を示した図である。
図3に示したように、画像形成時には、用紙(以下の図面において「P」と記す)がレジストロール53と搬送ベルト30との双方に跨って搬送されている状態が生じる。その状態では、用紙Pは、搬送ベルト30に静電吸着されることにより、搬送ベルト30からの搬送力F1を受けて搬送されているが、以下に述べるように、レジストロール53の搬送力の影響も受けることとなる。
【0029】
用紙Pを搬送する際の搬送ベルト30の移動速度と、搬送ベルト30に用紙Pを搬入するレジストロール53の周速(ロール表面速度)とは、通常、僅かではあるが速度差を有している。すなわち、設計上は搬送ベルト30の移動速度とレジストロール53の周速とが一致するように設定されている。しかし、実際にはレジストロール53やアイドルロール33等の部品の製造上の公差(所謂寸法のバラツキ)や例えば駆動源(駆動モータ)が別であった場合の回転速度の微妙な違い等が存在することから、搬送ベルト30の移動速度とレジストロール53の周速とを厳密に一致させることは極めて難しい。そのため、搬送ベルト30の移動速度とレジストロール53の周速との間に速度差が生じる。そして、例えばレジストロール53の周速が搬送ベルト30の移動速度よりも遅い場合には、レジストロール53と用紙との間に生じる摩擦力が、搬送ベルト30の搬送力F1とは反対方向の抗力F2として用紙Pに作用することとなる。その場合には、用紙Pの後端がレジストロール53を通過し終えた際に、搬送ベルト30での用紙Pの搬送に若干ではあるが影響を及ぼすこととなる。
【0030】
図4は、用紙Pの後端がレジストロール53を通過し終えた際の用紙Pの搬送状態を示した図である。上記した図3に示した状態では、用紙Pは、搬送ベルト30による搬送力F1と、搬送ベルト30の移動速度とレジストロール53の周速との速度差に起因する抗力F2とが作用して、用紙Pは搬送力F′(=F1−F2)を受けて搬送されている。ところが、図4に示したように、用紙Pの後端がレジストロール53を通過し終えた瞬間に、抗力F2は0となることから、用紙Pに作用する搬送力F′は、搬送ベルト30による搬送力F1だけとなり、F′からF1(>F′)に急激に増加する。その際に、このような搬送力の変化によって、用紙Pと搬送ベルト30との間に微小なスリップ(移動速度の変化)が発生する現象が見られる。スリップが発生すると、プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kの転写位置において、用紙Pの移動速度に変化が生じて、カラーレジストレーション(色合わせ)にズレが発生する場合がある。
近年の画像形成装置1での画像密度は、例えば1200dpi(dot per inch)等といった極めて高精細に形成されるため、僅かなカラーレジストレーションのズレは、色再現性を低下させて画像品質を低下させることとなる。
【0031】
そこで、本実施の形態の画像形成装置1では、吸着ロール34をレジストロール53と転写ロール31Yの間の用紙搬送路M1上に、搬送ベルト30に従動回転するように配置するとともに、吸着ロール34が搬送ベルト30を介してアイドルロール33を所定の押圧力で押圧するように設置している。そして、吸着ロール34とアイドルロール33との間の押圧力によって、吸着ロール34が配置された位置における用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力を高めるように構成している。したがって、ここでの吸着ロール34は、用紙を搬送ベルト30に向けて押圧する押圧ロール部材として機能する。
その場合に、吸着ロール34は、アイドルロール33が搬送ベルト30にラップされる領域であって、搬送ベルト30が用紙を搬送する領域に配置される。それにより、アイドルロール33がバックアップロールとなって、吸着ロール34からの押圧力を高く設定できる。また、用紙と吸着ロール34との密着性を高めることができるので、帯電効率も向上させることができる。
【0032】
それにより、用紙Pの後端がレジストロール53を通過し終えた瞬間に抗力F2が0と変化した場合に、吸着ロール34位置での用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力が、用紙Pを搬送方向前方に進めようとする力に対抗する力となって、吸着ロール34よりも下流側の用紙Pの移動速度に影響が及ぶことを緩和することができる。そのため、プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kの転写位置における用紙Pの移動速度の変化を、極めて軽微なものとすることができる。その結果、カラーレジストレーションのズレの発生を極めて低減することが可能となる。
【0033】
この場合に、吸着ロール34とアイドルロール33との間の押圧力を、レジストロール53同士の押圧力よりも大きく設定している。このように設定することで、吸着ロール34とアイドルロール33とが配置された位置では、用紙Pと搬送ベルト30との吸着力は、静電吸着力に加えて吸着ロール34とアイドルロール33との間の押圧力による大きな摩擦力が加わることとなる。そのため、吸着ロール34とアイドルロール33との間の領域では、搬送ベルト30による搬送力が大きくなり、例えばレジストロール53の周速が搬送ベルト30の移動速度よりも遅い場合には、用紙Pがレジストロール53を通過する際にスリップすることとなる。そのため、上記した搬送ベルト30の移動速度とレジストロール53の周速との速度差に起因する抗力F2が小さくなり、用紙Pの後端がレジストロール53を通過し終えた瞬間に抗力F2が0と変化することにより生じる衝撃を、極めて小さなものとすることができる。その結果、カラーレジストレーションのズレの発生を極めて低減することができる。
【0034】
ここで、図5は、吸着ロール34とアイドルロール33との間の押圧力(吸着ロール荷重)とカラーレジストレーションのズレ量との関係を示した図である。なお、この場合のレジストロール53同士の荷重は、300gである。図5に示したように、吸着ロール34とアイドルロール33との間の押圧力を大きくするほど、カラーレジストレーションのズレ量を低下させることが確認できる。本実施の形態においては、例えば、カラーレジストレーションのズレ量の許容値を150μmと設定すれば、図5の結果から、吸着ロール荷重として500g以上に設定することで、カラーレジストレーションのズレ量を許容レベルに低減することができる。
【0035】
一方、搬送ベルト30に用紙を送り出すレジストロール53の配置構成としては、用紙Pの進行方法と搬送ベルト30の進行方法とが一致するように構成するのが好ましい。すなわち、レジストロール53から搬出された用紙Pが搬送ベルト30の進行方向に対して概ね真っ直ぐに進入するように、レジストロール53のニップ方向を設定するのが好適である。これにより、吸着ロール34とアイドルロール33との間に搬入される用紙Pは、吸着ロール34とアイドルロール33との間で形成されるニップと平行となって進行するので、ニップに対して角度を持って進入する場合と比較して、吸着ロール34周辺での用紙Pと搬送ベルト30との密着面積が大きく設定される。そのため、用紙Pは吸着ロール34からプラス電荷を効果的に付与されることとなるので、用紙Pと搬送ベルト30との間の静電吸着力を高めることができる。それにより、搬送ベルト30による搬送力を増加することができ、上記した衝撃をさらに小さなものとすることができる。その結果、カラーレジストレーションのズレ量をさらに低減させることができる。
【0036】
また、吸着ロール34は、搬送ベルト30に従動回転するように配設されている。そのため、吸着ロール34の周速は、常に搬送ベルト30と同速に設定される。それにより、吸着ロール34が搬送ベルト30と速度差を持つことがないので、搬送ベルト30の搬送力F1に対して抗力となることがない。
【0037】
引き続いて、図6は、プロセスカートリッジ10Yの転写位置から定着器40までの構成を示した図である。図6に示したように、画像形成時には、用紙Pが搬送ベルト30と定着器40との双方に跨って搬送されている状態も生じる。その場合には、用紙Pは、搬送ベルト30に静電吸着されることによる搬送ベルト30との間の摩擦力Frを受けて搬送されているが、以下に述べるように、定着器40の搬送力および各感光体ドラム11と転写ロール31との間の押圧力の影響も受けることとなる。
【0038】
図6に示したように、画像形成工程の途中において、用紙Pの先端が定着器40を通過した際に、用紙Pの後端がまだ用紙搬送路M1の最上流側に配置されたプロセスカートリッジ10Yの転写位置(転写ロール31Y)を通過している状態が生じ得る。その場合には、用紙Pには、搬送ベルト30との静電吸着力による摩擦力Frbと、定着器40の搬送力F3と、各感光体ドラム11と各転写ロール31との間の押圧力が作用している。ここで、各感光体ドラム11と各転写ロール31との間の押圧力は、各転写ロール31位置(転写位置)での用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力Fr(FrY,FrM,FrC,FrK)を発生させ得る。
【0039】
定着器40に用紙Pが搬送されると、定着器40に配置された定着ロールと加圧部材との間に形成されるニップにより、用紙Pは搬送力F3を受ける。用紙Pとして例えば坪量の大きな厚紙が用いられるほど、定着器40のニップ量が大きくなるために、搬送力F3は大きくなる傾向がある。用紙Pが定着器40から大きな搬送力F3を受けると、用紙Pには定着器40側に引っ張り力が働くこととなる。その場合には、用紙Pが搬送ベルト30上を搬送される際に、搬送ベルト30との静電吸着力による摩擦力Frbと、各転写位置での用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力Fr(FrY,FrM,FrC,FrK)とが定着器40による搬送力F3に対抗する抗力として作用することとなる。
【0040】
用紙Pの後端がまだプロセスカートリッジ10Yの転写位置(転写ロール31Y)を通過している状態では、定着器40による搬送力F3に対抗する抗力は、搬送ベルト30との静電吸着力による摩擦力Frbと、各転写位置での用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力Frの総量(=FrY+FrM+FrC+FrK)である。ところが、各転写ロール31を通過する毎に転写位置での摩擦力Frの総量は次第に減っていく。
ここで、図7は、用紙Pが搬送ベルト30を搬送されていく状態の一例を示した図である。図7に示したように、用紙Pがプロセスカートリッジ10Yを通過した状態では、摩擦力Frの総量はFrM+FrC+FrKであり、用紙Pがプロセスカートリッジ10Mを通過した状態(図7はこの状態を示している)では、摩擦力Frの総量はFrC+FrKであり、用紙Pがプロセスカートリッジ10Cを通過した状態では、摩擦力Frの総量はFrKだけとなる。また、搬送ベルト30との静電吸着力による摩擦力Frbについても、用紙Pと搬送ベルト30との接触面積が次第に小さくなるので、同様に減少していく。
そのため、用紙Pが搬送ベルト30上を搬送されるに従って抗力が低下することから、定着器40による搬送力F3が支配的になって、次第に用紙Pの移動速度が速くなる現象が発生する。そのために、次第にカラーレジストレーションのズレ量が増大することとなる。
【0041】
そこで、本実施の形態の画像形成装置1では、用紙搬送路M1の最下流部に配置されているプロセスカートリッジ10Kにおいて、感光体ドラム11Kと転写ロール31Kとの間の押圧力が、他のプロセスカートリッジ10Y,10M,10Cでの各感光体ドラム11と各転写ロール31との押圧力よりも大きくなるように設定している。それにより、プロセスカートリッジ10Kにおける転写位置での用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力FrKを大きく設定できるので、用紙Pがプロセスカートリッジ10Y,10M,10Cを通過しても、定着器40による搬送力F3に対抗する力を摩擦力FrKによって所定値以上に保つことが可能となる。その結果、用紙Pが搬送ベルト30上を搬送されるに従って、次第にカラーレジストレーションのズレ量が増大することを抑制することが可能となる。
【0042】
すなわち、感光体ドラム11Kと転写ロール31Kとの間の押圧力が、他のプロセスカートリッジ10Y,10M,10Cでの各感光体ドラム11と各転写ロール31との押圧力よりも大きくなるように設定することで、FrY,FrM,FrC≪FrKを実現している。それにより、定着器40による搬送力F3に対して、プロセスカートリッジ10Kにおける転写位置での摩擦力FrKが単独で対抗できるように構成できるので、用紙Pが搬送ベルト30上を搬送されるに従ってFrY,FrM,FrC=0かつFrb≒0となっても、用紙Pの搬送に伴うカラーレジストレーションのズレ量の増大を抑制することが可能となる。
【0043】
また、この場合に、定着器40を回転駆動する駆動源と搬送ベルト30を循環駆動する駆動源とは、同一の駆動源で構成するのが好ましい。このように同一の駆動源を用いることで、定着器40と搬送ベルト30との用紙搬送速度を可能な限り同速度に設定できるので、搬送ベルト30に搬送される用紙Pに作用する定着器40側からの引っ張り力が、大きくなることを抑制することができる。そのため、カラーレジストレーションのズレ量を安定的に低減することができる。
【0044】
ここで、図8は、感光体ドラム11Kと転写ロール31Kとの間の押圧力(転写ロール31Kの荷重)とカラーレジストレーションのズレ量との関係を示した図である。なお、この場合の感光体ドラム11Y,11M,11Cと転写ロール31Y,31M,31Cとの間のそれぞれの押圧力は、ともに200gである。図8に示したように、感光体ドラム11Kと転写ロール31Kとの間の押圧力を大きくするほど、カラーレジストレーションのズレ量を低下させることが確認できる。本実施の形態においては、例えば、カラーレジストレーションのズレ量の許容値を150μmと設定すれば、図8の結果から、転写ロール31Kの荷重として550g以上に設定することで、カラーレジストレーションのズレ量を許容レベルに低減することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置1においては、吸着ロール34をレジストロール53と転写ロール31Yの間の用紙搬送路M1上に配置するとともに、吸着ロール34が搬送ベルト30を介してアイドルロール33を所定の押圧力で押圧するように設置している。それによって、吸着ロール34とアイドルロール33との間の押圧力により、吸着ロール34が配置された位置における用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力を高めるように構成している。
そのため、用紙Pの後端がレジストロール53を通過し終えた際に、吸着ロール34よりも下流側の用紙Pの移動速度に影響が及ぶことを緩和することができる。その結果、カラーレジストレーションのズレの発生を極めて低減することが可能となる。
【0046】
また、用紙搬送路M1の最下流部に配置されているプロセスカートリッジ10Kにおいて、感光体ドラム11Kと転写ロール31Kとの間の押圧力が、他のプロセスカートリッジ10Y,10M,10Cでの各感光体ドラム11と各転写ロール31との押圧力よりも大きく設定している。それによって、プロセスカートリッジ10Kにおける転写位置での用紙Pと搬送ベルト30との間の摩擦力FrKを大きく設定するように構成している。
そのため、用紙Pがプロセスカートリッジ10Y,10M,10Cを通過しても、定着器40による搬送力F3に対抗する力を所定値以上に保つことが可能となるので、カラーレジストレーションのズレ量を許容レベルに低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図2】用紙搬送機構を説明する図である。
【図3】レジストロールからプロセスカートリッジ(10Y)の転写位置までの構成を示した図である。
【図4】用紙の後端がレジストロールを通過し終えた際の用紙の搬送状態を示した図である。
【図5】吸着ロール荷重とカラーレジストレーションのズレ量との関係を示した図である。
【図6】プロセスカートリッジ(10Y)の転写位置から定着器までの構成を示した図である。
【図7】用紙が搬送ベルトを搬送されていく状態の一例を示した図である。
【図8】転写ロール(31K)の荷重とカラーレジストレーションのズレ量との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1…画像形成装置、10Y,10M,10C,10K…画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)、11(11Y,11M,11C,11K)…感光体ドラム、12(12Y,12M,12C,12K)…帯電ロール、13(13Y,13M,13C,13K)…現像器、14(14Y,14M,14C,14K)…ドラムクリーナ、20…レーザ露光装置、21…除電ランプ、31(31Y,31M,31C,31K)…転写ロール、40…定着器、60…制御部、61…帯電電源、62…現像電源、63…転写電源、64…吸着電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の像保持体と、
前記複数の像保持体の配列方向に沿って記録材を搬送するベルト部材と、
前記ベルト部材にて搬送される記録材に、前記複数の像保持体にて形成された各々のトナー像を転写する各々の転写部材と、
前記ベルト部材に記録材を搬入する搬入ロール部材と、
前記転写部材の中で前記ベルト部材の移動方向の最も上流側に配設された転写部材と前記搬入ロール部材との間に配設され、当該ベルト部材にて搬送される記録材を当該ベルト部材に向けて押圧する押圧ロール部材とを備え、
前記押圧ロール部材は、前記ベルト部材にて搬送される記録材を押圧する押圧力が、前記搬入ロール部材が記録材を押圧する押圧力よりも大きく設定されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記押圧ロール部材は、前記ベルト部材を張架する張架ロール部材を押圧する位置に配設されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押圧ロール部材は、前記ベルト部材に従動することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記押圧ロール部材は、前記ベルト部材にて搬送される記録材に電荷を供給することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬入ロール部材は、前記ベルト部材の進行方向とほぼ平行に当該ベルト部材に記録材を搬入することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写部材の中の前記ベルト部材の移動方向最下流側に配設された転写部材は、当該ベルト部材を介して対向する像保持体に向けて作用させる押圧力が他の転写部材が各々対向する像担持体に向けて作用させる押圧力よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像保持体は、像保持体を接触帯電する接触帯電部材と、像保持体に形成された静電潜像を現像する現像部材と、像保持体表面を清掃するクリーニング部材とが一体的に構成された画像形成ユニット内に配置されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
複数の像保持体と、
前記複数の像保持体の配列方向に沿って記録材を搬送するベルト部材と、
前記ベルト部材にて搬送される記録材に、前記複数の像保持体にて形成された各々のトナー像を転写する各々の転写部材と、
前記記録材に転写されたトナー像を定着する定着部材とを備え、
前記転写部材の中で最も前記定着部材側に配設された転写部材は、前記ベルト部材を介して対向する像保持体に向けて作用させる押圧力が、他の転写部材が各々対向する像担持体に向けて作用させる押圧力よりも大きく設定されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記ベルト部材と前記定着部材とは、同一の駆動源により駆動されることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ベルト部材を張架する張架ロール部材が当該ベルト部材にラップされる位置に、当該ベルト部材および当該ベルト部材に搬送される記録材を帯電するベルト帯電部材をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−304190(P2007−304190A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130446(P2006−130446)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】