説明

画像形成装置

【課題】 定着部から排出された用紙が高温であること、また用紙からの放熱による装置内部の温度上昇を回避するとともに、定着部の熱量不足解消、消費電力低減を図る。
【解決手段】 定着部30に対して、下流側用紙搬送路である両面印刷部進入搬送路15上において、両面印刷部50の中間トレイ52の上方には、用紙Pの冷却手段である冷却ファン60を備える。定着部30の上流側用紙搬送路である定着部進入搬送路12に設けた用紙進入ガイド35の下方には、予備加熱ダクト63を備える。冷却ファン60と予備加熱ダクト63との間は、排熱ダクト62で連結される。予備加熱ダクト63の背面側には、本体2の背面パネル17に排気口64を設ける。これにより、冷却ファン60で中間トレイ52から吸引された排熱により、予備加熱ダクト63と用紙進入ガイド35が暖められ、定着部進入搬送路12を通過して定着部30に進入する用紙Pが加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタに代表される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに代表される電子写真方式の画像形成装置においては、転写部で用紙に転写された未定着トナー像を定着させる方法として、熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式とは、ローラやベルトで構成される2個の回転部材を互いに圧接させてニップを形成して、これらの回転部材のうち一方、或いは両方の近傍に加熱手段を配置して回転部材を加熱し、そのニップに未定着トナー像を担持した用紙を挿通することにより加熱、加圧して用紙にトナーを定着するものである。
【0003】
ここで、近年の画像形成装置は、高画質化とともに高速化が強く要求されている。しかし、用紙にトナーを定着させるためには一定の熱量が必要であり、高速化が進むと、トナー定着後の用紙の冷却が十分に行われないという現象が生じる。その結果、定着部から排出された用紙自体が高温であることにより、また用紙からの放熱により画像形成装置内部の温度が上昇して、装置の運転に支障をきたすことが懸念されている。
【0004】
例えば、現像器周辺の温度が上昇すると、現像器内のトナーが溶融して流動性が悪くなり、現像ローラ表面のトナーによる薄層形成に乱れが生じる可能性が高くなる。これにより、像担持体表面のトナー像に悪影響が及び、用紙に形成される画像に不良が発生する恐れがある。また、両面印刷を行った後の用紙の排出部において、重なり合う用紙のトナー同士が溶着してしまうという問題が起こり得る。そして、一度利用した用紙の裏面を、再利用して印刷する場合にも同様の問題が起こる可能性がある。
【0005】
一方、画像形成装置の高速化に伴い、定着部における熱量の不足も懸念されている。これらの問題を解決すべく、用紙自体や画像形成装置内部の温度上昇を回避するため、また定着部の熱量不足を解消するために提案された画像形成装置の例を、特許文献1に見ることができる。
【特許文献1】特開2004−177471号公報(第3−5頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の画像形成装置では、定着部の用紙搬送方向下流側の用紙搬送路に、シート(用紙)を冷却する冷却手段を設け、この冷却手段にて得られる排熱を定着部へ移動させて、定着部の熱量を一定に保つようにしている。しかしながら、この画像形成装置は、定着後の用紙から得られる排熱を利用して、定着部の、熱源を持たない加圧ローラを保温するものであって、排熱により用紙が直接加熱されるわけではない。すなわち、この画像形成装置は、用紙自体や画像形成装置内部の温度上昇を回避することに関しては好適な結果が得られると考えられるが、定着部の熱量不足を解消することに関しては十分な効果が得られるかどうか期待できない。定着後の用紙から得られる排熱を利用して、定着前の用紙を直接加熱することが望ましい。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、定着部から排出された用紙自体が高温であること、また用紙からの放熱に起因する画像形成装置内部の温度上昇を回避するとともに、定着部の熱量不足の解消、及び消費電力の低減を図り、高速な定着動作を遂行することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、用紙上に形成された未定着トナー像を、加熱、加圧して用紙に定着させる定着部と、この定着部の用紙搬送方向上流側、及び下流側に設けられた用紙搬送路とを備えた画像形成装置において、前記定着部の前記下流側用紙搬送路を通過する用紙を冷却する冷却手段と、この冷却手段から延びて前記上流側用紙搬送路近傍に続く排熱ダクトと、この排熱ダクトから続き上流側用紙搬送路を通過する用紙を加熱する予備加熱ダクトとを備えることとした。
【0009】
また、上記構成の画像形成装置において、前記予備加熱ダクトは、用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に延びて、前記上流側用紙搬送路を横断するように上流側用紙搬送路近傍に設けられていることとした。
【0010】
また、上記構成の画像形成装置において、前記冷却手段は、冷却ファンであることとした。
【0011】
また、上記構成の画像形成装置において、前記冷却手段は、用紙に接触して用紙の熱を奪い取る冷却ローラであることとした。
【0012】
また、上記構成の画像形成装置において、前記下流側用紙搬送路は、両面印刷用用紙搬送路であることとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、定着部と、この定着部の用紙搬送方向上流側、及び下流側に設けられた用紙搬送路とを備えた画像形成装置において、定着部の下流側用紙搬送路を通過する用紙を冷却する冷却手段と、この冷却手段から延びて上流側用紙搬送路近傍に続く排熱ダクトと、この排熱ダクトから続き上流側用紙搬送路を通過する用紙を加熱する予備加熱ダクトとを備えることとしたので、定着部から排出された用紙から排熱を得て、この熱を定着部の上流側へと移動させ、定着前の用紙を直接加熱することができる。これにより、定着部から排出された用紙自体が高温であること、また用紙からの放熱に起因する画像形成装置内部の温度上昇を回避でき、意図しないトナーの溶融や溶着を防止することが可能となる。さらに、定着部の熱量不足の解消、及び消費電力の低減を図ることができ、高速な定着動作を遂行することが可能な画像形成装置を得ることができる。
【0014】
また、予備加熱ダクトは、用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に延びて、上流側用紙搬送路を横断するように上流側用紙搬送路近傍に設けられていることとしたので、定着後の用紙から得られる排熱で、定着部に入る前の用紙を、容易に加熱することができる。したがって、より簡便な構成で、定着部の熱量不足の解消、及び消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0015】
また、冷却手段は、冷却ファンであることとしたので、冷却ファンによって空気を吸引する、或いは吹き付けることで、用紙、またその周辺領域を強制的に冷却することができる。これにより、用紙、またその周辺領域を急激に冷却することが可能となり、高い冷却効果を得ることが可能である。したがって、定着部から排出された用紙自体が高温であること、また用紙からの放熱に起因する画像形成装置内部の温度上昇を回避する作用を向上させることができる。
【0016】
また、冷却手段は、用紙に接触して用紙の熱を奪い取る冷却ローラであることとしたので、冷却ファンといった電装部材を設けることなく、強制的に用紙を冷却できる。したがって、定着部から排出された用紙自体が高温であること、また用紙からの放熱に起因する画像形成装置内部の温度上昇を回避する作用を、安価で簡便な構成によって向上させることができるのとともに、それを低騒音で遂行することが可能となる。
【0017】
また、下流側用紙搬送路は、両面印刷用用紙搬送路であることとしたので、用紙の一方の面のトナー像を定着させた後、他方の面に対する画像形成動作に移行する前、すなわち両面印刷のための用紙搬送の過程で、用紙を冷却することができる。したがって、定着部から排出された高温の用紙により、直接画像形成部、特に現像器周辺が温度上昇することを防止でき、用紙に形成される画像に不良が発生するのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づき説明する。
【0019】
最初に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図1を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す模型的垂直断面正面図である。なお、図中の実線矢印は用紙の搬送経路、及び搬送方向を示す。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の下部には、カセット式給紙部20が配置されている。カセット式給紙部20には、通常の汎用用紙カセット21、及び大容量用紙カセット22が備えられている。大容量用紙カセット22は、同容量のものが水平方向に同じ高さで2個並べられ、上流側大容量用紙カセット22A、及び下流側大容量用紙カセット22Bとされている。これらの用紙カセットには、印刷前のカットペーパー等の用紙Pが積載して収容され、ここから1枚ずつ分離して用紙Pが送り出される。
【0021】
本体2の右側面上部の外部には、手差し給紙部3が備えられている。手差し給紙部3には、カセット式給紙部20に入っていないサイズの用紙Pや、OHPシートのように1枚ずつ送り込みたいものが載置される。
【0022】
画像形成装置1は、その内部に垂直搬送部4を備えている。垂直搬送部4は、カセット式給紙部20に関して言えば、その給紙方向である右方に位置し、手差し給紙部3に関して言えば、その左方に位置する。カセット式給紙部20から送り出された用紙Pは垂直搬送部4により本体2の側面に沿って垂直上方に、手差し給紙部3から送り出された用紙Pは水平左方に搬送される。2個の大容量用紙カセット22のうち、左側の上流側大容量用紙カセット22Aから送り出された用紙Pは、右側の下流側大容量用紙カセット22Bのすぐ上方を水平に右方に送られた後、本体2の側面に沿って垂直上方に搬送される。
【0023】
垂直搬送部4の用紙搬送方向下流端であって、転写部10のすぐ上流側には、レジストローラ5が備えられている。レジストローラ5は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、後述する画像形成部9で形成されるトナー像と同期をとって、転写部10に向けて用紙Pを送り出す。
【0024】
一方、画像形成装置1の本体2の上面には原稿送り部6が、その下方には光学部7が備えられている。原稿送り部6の前方には、使用者が外部から表示を確認したり、ボタンを押して操作をしたりできる位置に操作パネル8が備えられている。使用者が原稿の複写を行う場合には、原稿送り部6に文字や図形、模様等の画像が描かれた原稿を積載し、操作パネル8に印刷条件等を入力して印刷を開始する。原稿送り部6では1枚ずつ分離して原稿が送り出され、光学部7によってその画像データが読み取られる。
【0025】
レジストローラ5の用紙搬送方向下流側であって、光学部7の下方には、画像形成部9、及び転写部10が備えられている。画像形成部9では、光学部7によって読み取られた画像データに基づいて、原稿画像の静電潜像が作られる。この静電潜像からトナー像が形成され、トナー像は、前記レジストローラ5によって同期をとって送られてきた印刷前の用紙Pに、転写部10にて転写される。
【0026】
転写部10の下流側には、定着部30が備えられている。転写部10にて未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着部30へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0027】
定着部30の下流側であって、本体2の左側面の近傍には、分岐部40が備えられている。定着部30から排出された用紙Pは、両面印刷を行わない場合には、分岐部40から機外の用紙排出部である用紙受けトレイ11に排出される。
【0028】
画像形成部9から分岐部40にかけての部分の下方であって、カセット式給紙部20の上方には、両面印刷部50が備えられている。両面印刷を行う場合には、定着部30から排出された用紙Pが、分岐部40を通って両面印刷部50へと送られる。両面印刷部50へ送られた用紙Pは、続いて搬送方向が切り替えられ、再度垂直搬送部4、レジストローラ5を介して転写部10へと送られる。
【0029】
続いて、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の、定着部、分岐部、及び両面印刷部周辺の詳細な構成について、図1に加えて、図2、及び図3を用いて説明する。図2は定着部、分岐部、及び両面印刷部周辺を示す模型的垂直断面部分拡大正面図、図3は定着部、及び両面印刷部周辺を示す模型的垂直断面部分拡大右側面図である。これらの図中の白抜き矢印は、空気が流れる方向を示す。
【0030】
定着部30は、図2に示すように、定着ローラ31、ハロゲンランプ32、加圧ローラ33、ハウジング34、及び用紙進入ガイド35を備えている。
【0031】
定着ローラ31は、鉄またはアルミニウム等の金属からなる芯金の外側に、シリコンゴムまたはスポンジからなる弾性部材層が設けられている。弾性部材層の外側であって、定着ローラ31の表面には、離型層を設けてトナーの離型性を高めている。離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン−パー−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素系樹脂が用いられ、吹き付けによるコーティングやチューブを被せることによって設けられる。定着ローラ31は、図示しない駆動装置によって、その周速度が用紙Pの搬送速度と同じになるように回転せしめられている。
【0032】
定着ローラ31の内部には、加熱手段であるハロゲンランプ32が備えられている。ハロゲンランプ32は、定着ローラ31の軸線方向、すなわち用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に延び、内側から定着ローラ31を加熱する。このハロゲンランプ32は、定着ニップに通紙可能な最大サイズの用紙Pの幅よりも長い用紙幅方向長さを有する。
【0033】
加圧ローラ33は、ステンレス鋼等の金属からなる芯金の外側に、シリコンゴムまたはスポンジからなる弾性部材層が設けられている。この加圧ローラ33が、定着ローラ31に圧接することにより、用紙を挿通させる定着ニップを形成する。加圧ローラ33は、駆動装置を持たず、定着ローラ31に圧接することにより、定着ローラ31の回転に従って回転せしめられる。なお、用紙Pは、定着ニップ、すなわち定着ローラ31、及び加圧ローラ33の用紙幅方向中央部に通紙される。
【0034】
上記定着ローラ31、及び加圧ローラ33は、ハウジング34の内側に収められている。そして、定着ローラ31と加圧ローラ33とが圧接して形成される定着ニップに向かって用紙Pが進入してくる箇所には、用紙進入ガイド35が設けられている。定着部30の上流側に、転写部10から続く上流側用紙搬送路である定着部進入搬送路12を通過する用紙Pは、用紙進入ガイド35上を滑るようにして、図2において右方から左方へと移動して定着ニップに到達する。
【0035】
分岐部40は、図2に示すように、可動ガイド41、搬送ローラ対42、及び43を備えている。
【0036】
可動ガイド41は、定着部30の下流側から続く定着部排出搬送路13が、用紙受けトレイ11に続く外部排出搬送路14と、両面印刷部50に続く両面印刷用用紙搬送路である両面印刷部進入搬送路15とに分岐する箇所に設けられている。可動ガイド41は、これらの用紙搬送路とほぼ同じ用紙幅方向長さを有する。可動ガイド41は、用紙Pを振り分け易くするために、定着部30の方を向いた先端部分の、用紙搬送方向と直角をなす正面形状がくさび形をなしている。そして、可動ガイド41は、用紙幅方向に延びる支軸41aを備え、この支軸41aにより本体2に回転自在に支持されている。可動ガイド41は、支軸41aを中心として垂直面内で回転することにより、外部排出搬送路14を通して用紙Pを搬送するための姿勢と、両面印刷部進入搬送路15を通して用紙Pを搬送するための姿勢(図2参照)との姿勢変更が可能である。
【0037】
搬送ローラ対42は定着部排出搬送路13に、搬送ローラ43は両面印刷部進入搬送路15に設けられている。搬送ローラ対42、及び43は、互いに圧接して用紙を挿通させる搬送ニップを形成するペアローラで構成され、図示しない駆動装置によって回転せしめられる。分岐部40を通過する用紙Pは、前記のようにして可動ガイド41によってその搬送方向をガイドされつつ、搬送ローラ対42、及び43によって搬送される。
【0038】
両面印刷部50は、図2に示すように、反転ローラ対51、中間トレイ52、搬送ローラ対53、及び54を備えている。
【0039】
反転ローラ対51は、分岐部40から続く両面印刷部進入搬送路15が、両面印刷部排出搬送路16に分岐する箇所のすぐ下流側に設けられている。反転ローラ対51は、反転ローラ51aと従動ローラ51bとのペアローラで構成されている。反転ローラ51aは、図示しないモータにより回転せしめられ、図2において時計方向と半時計方向とに回転方向を切り替えることにより用紙Pの搬送方向を切り替える。従動ローラ51bは、上方から反転ローラ51aに圧接し、反転ローラ51aの回転に従って回転する。反転ローラ51aと従動ローラ51bとが圧接することにより、用紙Pが挿通されるニップが形成される。
【0040】
中間トレイ52は、両面印刷部進入搬送路15上において、反転ローラ対51のさらに下流側に設けられている。中間トレイ52は、一方の面が印刷された用紙Pを一旦収容する一時収容部である(図1参照)。反転ローラ対51は、用紙Pを中間トレイ52に一旦収容した後、スイッチバックさせてその搬送方向を切り替えるものである。
【0041】
搬送ローラ対53は両面印刷部進入搬送路15に、搬送ローラ54は両面印刷部排出搬送路16に設けられている。搬送ローラ対53、及び54は、互いに圧接して用紙を挿通させる搬送ニップを形成するペアローラで構成され、図示しない駆動装置によって回転せしめられる。両面印刷部50にて搬送方向が切り替えられた用紙Pは、両面印刷部排出搬送路16を通り、垂直搬送部4を経て、転写部10に到達する(図1参照)。
【0042】
図2、及び図3に示すように、定着部30に対して、下流側の用紙搬送路である両面印刷部進入搬送路15上において、両面印刷部50の中間トレイ52の上方には、用紙Pの冷却手段である冷却ファン60が備えられている。冷却ファン60は、中間トレイ52の上方の上側ガイド55に設けられた吸気口61を通して、中間トレイ52上の空気を上方に吸引する。すなわち、定着部30から排出された用紙自体、また用紙Pからの放熱により熱がこもる中間トレイ52を、冷却ファン60を駆動し、中間トレイ52の上方に排熱を吸い出して逃がすことにより、冷却することが可能である。
【0043】
冷却ファン60の、熱風の移動方向下流側には、冷却ファン60に連結して、排熱ダクト62が備えられている。この排熱ダクト62は、冷却ファン60から延びて、画像形成装置1の本体2の前面側を、定着部30の上流側用紙搬送路である定着部進入搬送路12の近傍まで続いている。
【0044】
定着部進入搬送路12のすぐ下方に設けられた用紙進入ガイド35のさらに下方には、用紙進入ガイド35に隣接して、予備加熱ダクト63が備えられている。予備加熱ダクト63は、用紙幅方向に延びて、定着部進入搬送路12を横断するように設けられている。冷却ファン60から延びる排熱ダクト62は、本体2の前面側で、予備加熱ダクト63に連結している。したがって、冷却ファン60で中間トレイ52から吸引された排熱により、予備加熱ダクト63、及び用紙進入ガイド35が暖められる。そして、この用紙進入ガイド35の熱により、定着部進入搬送路12を通過して定着部30に進入する用紙Pが加熱される。
【0045】
図3に示すように、予備加熱ダクト63の背面側には、画像形成装置1の本体2の背面パネル17に排気口64が設けられている。予備加熱ダクト63、及び用紙進入ガイド35を暖めた熱風は、排気口64から画像形成装置1の外部へと排出される。
【0046】
このようにして、定着部30と、この定着部30の用紙搬送方向上流側、及び下流側に設けられた用紙搬送路とを備えた画像形成装置1において、定着部30の下流側用紙搬送路である両面印刷部進入搬送路15を通過する用紙Pを冷却する冷却手段である冷却ファン60と、この冷却ファン60から延びて上流側用紙搬送路である定着部進入搬送路12近傍に続く排熱ダクト62と、この排熱ダクト62から続き定着部進入搬送路12を通過する用紙Pを加熱する予備加熱ダクト63とを備えるので、定着部30から排出された用紙Pから排熱を得て、この熱を定着部30の上流側へと移動させ、定着前の用紙Pを直接加熱することができる。これにより、定着部30から排出された用紙自体が高温であること、また用紙Pからの放熱に起因する画像形成装置1内部の温度上昇を回避でき、意図しないトナーの溶融や溶着を防止することが可能となる。さらに、定着部30の熱量不足の解消、及び消費電力の低減を図ることができ、高速な定着動作を遂行することが可能な画像形成装置1を得ることができる。
【0047】
また、予備加熱ダクト63は、用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に延びて、上流側用紙搬送路である定着部進入搬送路12を横断するように定着部進入搬送路12近傍に設けられているので、定着後の用紙Pから得られる排熱で、定着部30に入る前の用紙Pを、容易に加熱することができる。したがって、より簡便な構成で、定着部30の熱量不足の解消、及び消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0048】
また、冷却手段は、冷却ファン60であるので、冷却ファン60によって空気を吸引することで、用紙P、またその周辺領域である中間トレイ52を強制的に冷却することができる。これにより、用紙P、また中間トレイ52を急激に冷却することが可能となり、高い冷却効果を得ることが可能である。したがって、定着部30から排出された用紙自体が高温であること、また用紙Pからの放熱に起因する画像形成装置1内部の温度上昇を回避する作用を向上させることができる。
【0049】
そして、定着部30の下流側用紙搬送路は、両面印刷部進入搬送路15という両面印刷用用紙搬送路であるので、用紙Pの一方の面のトナー像を定着させた後、他方の面に対する画像形成動作に移行する前、すなわち両面印刷のための用紙搬送の過程で、用紙Pを冷却することができる。したがって、定着部30から排出された高温の用紙Pにより、直接画像形成部9、特に現像器周辺が温度上昇することを防止でき、用紙Pに形成される画像に不良が発生するのを防止することが可能となる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の、定着部、分岐部、及び両面印刷部周辺の詳細な構成について、図4、及び図5を用いて説明する。図4は定着部、分岐部、及び両面印刷部周辺を示す模型的垂直断面部分拡大正面図、図5は定着部、及び分岐部周辺を示す模型的水平断面部分拡大上面図である。これらの図中の白抜き矢印は、空気が流れる方向を示す。なお、この実施形態の基本的な構成は、前記図1〜図3を用いて説明した第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成要素には前と同じ符号を付し、説明は省略するものとする。
【0051】
第2の実施形態においては、図4に示すように、定着部30のすぐ下流側の定着部排出搬送路13に設けられた搬送ローラ対42の上方のローラが、冷却ローラ65となっている。冷却ローラ65は、熱伝導率が高い材料、例えばアルミニウム合金で構成されている。冷却ローラ65は、搬送ローラ対42の搬送ニップを通過する用紙Pに接触して、用紙Pの熱を奪い取る冷却手段である。用紙Pより熱を奪うことにより、冷却ローラ65の内側の空間に熱が伝達することとなる。
【0052】
冷却ローラ65の前方には、図5に示すように、冷却ローラ65の内径とほぼ同じ内径の吸気口66aを有する排熱ダクト66が備えられている。この排熱ダクト66は、冷却ローラ65の前方から延びて、画像形成装置1の本体2の前面側を、定着部進入搬送路12の近傍まで続いている。そして、排熱ダクト66は、予備加熱ダクト63に連結している。
【0053】
予備加熱ダクト63の背面側には、画像形成装置1の本体2の背面パネル17に排気ファン67が設けられている。これにより、冷却ローラ65が奪った用紙Pの熱は、熱風となり、冷却ローラ65の内側、排熱ダクト66、及び予備加熱ダクト63を経て、排気ファン67により画像形成装置1の外部へと排出される。したがって、冷却ローラ65で定着部30から排出された用紙Pより奪った排熱により、予備加熱ダクト63、及び用紙進入ガイド35が暖められ、定着部進入搬送路12を通過して定着部30に進入する用紙Pが加熱される。
【0054】
このようにして、冷却手段は、用紙Pに接触して用紙Pの熱を奪い取る冷却ローラ65であるので、冷却ファンといった電装部材を設けることなく、強制的に用紙Pを冷却できる。したがって、定着部30から排出された用紙自体が高温であること、また用紙Pからの放熱に起因する画像形成装置1内部の温度上昇を回避する作用を、安価で簡便な構成によって向上させることができるのとともに、それを低騒音で遂行することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0056】
例えば、定着部30から排出された用紙Pを冷却する箇所は、定着部30のすぐ下流側の定着部排出搬送路13や、両面印刷部進入搬送路15に限定されるわけではなく、定着部30の下流側にあれば他の用紙搬送路であっても構わない。また、冷却ファン60は、吸引することにより用紙P、及び中間トレイ52を冷却するものであるが、空気を吹き付けることにより冷却するものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、画像形成装置全般において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の定着部、分岐部、及び両面印刷部周辺を示す模型的垂直断面部分拡大正面図である。
【図3】図2に示す定着部、及び両面印刷部周辺の模型的垂直断面部分拡大右側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の定着部、分岐部、及び両面印刷部周辺を示す模型的垂直断面部分拡大正面図である。
【図5】図4に示す定着部、及び分岐部周辺の模型的水平断面部分拡大上面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 画像形成装置
2 本体
12 定着部進入搬送路(定着部上流側用紙搬送路)
13 定着部排出搬送路(定着部下流側用紙搬送路)
15 両面印刷部進入搬送路(定着部下流側用紙搬送路)
30 定着部
35 用紙進入ガイド
40 分岐部
42 搬送ローラ対
50 両面印刷部
52 中間トレイ
55 上側ガイド
60 冷却ファン(冷却手段)
62、66 排熱ダクト
63 予備加熱ダクト
65 冷却ローラ(冷却手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に形成された未定着トナー像を、加熱、加圧して用紙に定着させる定着部と、この定着部の用紙搬送方向上流側、及び下流側に設けられた用紙搬送路とを備えた画像形成装置において、
前記定着部の前記下流側用紙搬送路を通過する用紙を冷却する冷却手段と、この冷却手段から延びて前記上流側用紙搬送路近傍に続く排熱ダクトと、この排熱ダクトから続き上流側用紙搬送路を通過する用紙を加熱する予備加熱ダクトとを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記予備加熱ダクトは、用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に延びて、前記上流側用紙搬送路を横断するように上流側用紙搬送路近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、冷却ファンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、用紙に接触して用紙の熱を奪い取る冷却ローラであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記下流側用紙搬送路は、両面印刷用用紙搬送路であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−33954(P2007−33954A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218200(P2005−218200)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】