説明

画像形成装置

【要旨】
【課題】 湿式定着方式の画像形成装置において、トナー像への定着液の付与によりトナー像に乱れが生じるのを防止し、トナー像を記録媒体に効率良く転写定着でき、その際に記録媒体にしわ、カールなどを発生させることがなく、定着液の消費量を低減化する。
【解決手段】 トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、第1の定着液付与手段4と、転写定着手段5と、記録媒体供給手段6と、排出手段7とを含む画像形成装置1において、第1の定着液付与手段4を、中間転写ベルト21の回転駆動方向26において、感光体ドラム11y,11m,11c,11bと中間転写ローラ22y,22m,22c,22bとの圧接部である転写ニップ部よりも上流側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式、静電記録方式などのトナーを用いる画像形成方式を採用する画像形成装置は広く普及し、特に電子写真方式の画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどに多く採用される。電子写真方式の画像形成装置においては、表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像に現像手段からトナーを供給して現像することによりトナー像とし、このトナー像を直接または中間転写媒体を介して紙などの記録媒体に転写し、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させることによって、記録媒体上に画像が形成される。
【0003】
トナー像の記録媒体への定着には、トナー像を加熱する熱定着方式、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液をトナー像に付与する湿式定着方式などが知られる。このうち、湿式定着方式では、定着液の付与により軟化および/または膨潤状態にしたトナー像を記録媒体に付着させ、加圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させる。湿式定着方式は、熱定着方式に比べて消費電力が非常に少ないという利点を有し、多くの提案がなされている。
【0004】
たとえば、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持するトナー像担持体と、トナーを溶解または膨潤させる定着液を、トナー像担持体のトナー像担持面に塗布ローラにより接触塗布する定着液付与手段と、定着液付与手段により溶解または膨潤されるトナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを含み、定着液に対して撥液性を有する材料からなるトナー像担持体を用いる画像形成装置が提案される(たとえば、特許文献1参照)。この画像形成装置においては、定着液とトナーとの親和性およびトナー像担持体の定着液に対する撥液性を利用して、接触塗布される定着液は、トナー像担持体のトナー像担持面におけるトナー付着部分である画像部のみに付着し、トナーが付着しない非画像部には付着しないように構成される。
【0005】
特許文献1には、さらにトナー像担持体に接触する接触ローラを設け、トナー像担持体の非画像部に僅かに付着する定着液を接触ローラにより回収する構成も開示される。
【0006】
特許文献1によれば、前述のような構成を採ることによって、定着液の消費量を必要最小限に抑え、定着液の記録媒体への付着量が多すぎることにより記録媒体に発生するしわ、カールなどを防止している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置によれば、トナー像担持体上のトナー像は静電転写によりトナー像担持体に転写されて付着するのみなので、トナー像担持体とトナー像との結合力が著しく小さい。このため、該トナー像が塗布ローラ、接触ローラなどの部材と直接接触すると、塗布ローラ、接触ローラなどにトナーが付着し、また定着液によりトナー像の一部が流れ、最終的に形成される画像に乱れが生じることがある。
【0008】
したがって、定着液をトナー像に非接触下で塗布するのが望ましいけれども、非接触塗布では非画像部にも定着液が付着するという問題が起こる。定着液の非画像部への付着は、定着液の消費量の増大、記録媒体でのしわ、カールなどの発生につながる。非画像部の定着液を除去するには、たとえば、接触ローラを用いるのが最も現実的である。しかしながら、接触ローラの使用には、前述のように、トナーの接触ローラへの付着、それにともなう画像の乱れの発生という問題がある。また、エアーの吹き付けにより非画像部に付着する定着液を除去する方法も提案されている。しかしながら、この方法では、エアーにより非画像部から除去される定着液の飛翔方向の制御が難しく、画像形成装置内を定着液で汚染する可能性がある。また、画像形成装置内でのエアーの使用により、エアーの乱流が生じ、装置内でトナー飛散を起こし、記録媒体を汚す可能性もある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−109747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、トナー像担持体におけるトナー像に定着液を付与しても画像の乱れを起こすことなく、トナー像の記録媒体への転写効率が高く、高画質画像を長期にわたって安定的に形成できる湿式定着方式の画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
結着樹脂および着色剤を含むトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段上のトナー像が転写され、転写されたトナー像を担持して回転するトナー像担持体と、トナー像担持体上にトナーを軟化および/または膨潤させる定着液を付与する第1の定着液付与手段と、定着液が付与されたトナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含む画像形成装置であって、
第1の定着液付与手段は、トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置よりもトナー像担持体の回転方向上流側に設けられ、
トナー像形成手段によりトナー像をトナー像担持体に転写する前に、トナー像担持体に定着液を付与することを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
また本発明の画像形成装置は、
トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置に電圧を印加する電圧印加手段をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の画像形成装置は、
トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置よりもトナー像担持体の回転方向下流側においてトナー像担持体に接触するように設けられ、
トナー像担持体上のトナー像以外の部分に付着する定着液を除去する定着液吸収手段をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置は、
トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置よりもトナー像担持体の回転方向下流側に設けられ、
トナー像担持体上のトナー像に定着液を付与する第2の定着液付与手段をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の画像形成装置は、
第2の定着液付与手段が、トナー像担持体への接触下にトナー像担持体上のトナー像に定着液を付与し、少なくともその表面層が定着液を保持し得る材料により構成される定着液付与部材を含むことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液付与部材が、その表面に定着液を供給されることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の画像形成装置は、
トナー像形成手段がトナー像形成面を含み、
トナー像形成面の表面温度がトナーのガラス転移点以下であることを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の画像形成装置は、
トナー像担持体を加熱する加熱手段をさらに含み、
加熱手段が、トナー像担持体のトナー像を担持する部分の温度を160℃以下に加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トナー像形成手段と、トナー像担持体と、第1の定着液付与手段と、転写定着手段とを含む湿式定着方式の画像形成装置において、第1の定着手段を、トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置(以後単に「転写ニップ部」と称す)よりもトナー像担持体の回転方向上流側に設け、トナー像がトナー像担持体へ転写される前に、トナー像担持体に定着液を付与する構成を採ることによって、トナー像形成手段上のトナー像がトナー像担持体上に粘着転写され、トナー像を構成するトナー粒子同士の付着力が高まっているので、単なる静電転写に比べてトナー粒子の飛散が著しく減少し、結果的にトナー像に乱れを生じることなくトナー像に定着液を付与して膨潤・軟化させることが可能になり、トナー像の記録媒体への転写効率が大幅に向上する。
【0020】
トナー像のトナー像担持体への粘着転写は、次のようにして行われる。まず、トナー像形成手段上のトナー像のトナー像形成手段に直接接触しない上層部分が、転写ニップ部において、トナー像担持体上の定着液層に接触して膨潤・軟化し、トナー粒子同士が結合して粘着性の高いフィルムが形成される。この粘着性フィルムがトナー像担持体に比較的に強い結合力で付着するとともに、トナー像形成手段上のトナー像のトナー像形成手段に接触する下層部分のトナーが順次粘着性フィルムひいては定着液に触れて膨潤・軟化しながら該粘着性フィルムに付着し、最終的には膨潤・軟化してシート状のトナー像がトナー像担持体上に粘着転写される。このトナー像は、前述のように、定着液によって膨潤・軟化状態にあるので、記録媒体への転写同時定着が容易であり、その際の転写効率も高い。
【0021】
また、トナー像担持体上に付与される定着液を熱風乾燥などにより乾燥させ、定着液中の溶媒成分を揮発させて定着液の有効成分(トナーを膨潤軟化させる成分)の濃度を高めてもよい。これによって、トナー像担持体上で定着液がフィルム化して薄層の粘着シート状となり、トナー像形成手段と接触する際に、トナー像形成手段に付着するのが防止される。
【0022】
本発明によれば、本発明の画像形成装置が、転写ニップ部に電圧を印加する電圧印加手段をさらに含む構成を採ることによって、たとえば、トナー像形成手段上のトナー像の層厚が大きいとき、画像形成速度が高速であるときなどにおいても、トナー粒子の飛散などによるトナー像の乱れを伴うことなく、トナー像形成手段上のトナー像のトナー像担持体への粘着転写が確実に実行され、膨潤・軟化状態にあるシート状トナー像を比較的に高い結合力でトナー像担持体上に付着させ得る。
【0023】
トナー像形成手段上に、色の異なる数種のトナーからなり、層厚の大きいカラートナー像が形成される場合に、粘着転写を行うと、トナー像形成手段に接触しないトナー像上層部のトナーは転写ニップ部においてトナー像担持体上の定着液との接触によりフィルム化されてトナー像担持体上に転写されるけれども、層厚が大きいことによって定着液のトナー像内部への浸透性が低下し、トナー像形成手段の表面に直接接触するトナー像下層部のトナーは完全に転写されずに残留する場合がある。画像形成速度が高速であるときなどにも、同様の残留が発生する。このような残留を防止するために、トナー粒子がマイナス帯電の場合には、転写ニップ部においてトナー像担持体の電位をトナー像形成手段の電位よりも高くなるように電界を印加してトナー像の転写を行うと、トナー像形成手段上にトナー粒子が残留することなく、全てのトナーがトナー像担持体上に転写される。トナーがトナー像担持体へ向かう力を電界から受けることにより、トナー像担持体の定着液が付着する部分にトナーを早く引き寄せることができるので、トナー像形成手段上のトナー像、特に下層部分のトナーを短時間で膨潤、軟化させるとともに、トナー像担持体上に転写することができる。こうして、トナー像の層厚が厚いとき、またはプロセスが高速なときでも、転写効率を向上させ得る。さらに、トナー像担持体に転写されて付着するトナー像は定着液の作用を受けてトナー粒子同士の付着力が高まり、フィルム状のトナー像になるので、トナー粒子の飛散が非常に少ない。
【0024】
本発明によれば、転写ニップ部よりもトナー像担持体の回転方向下流側に、トナー像担持体に接触するように定着液吸収手段を設け、トナー像担持体上のトナー像以外の部分に付着する定着液を除去することによって、トナー像を記録媒体に転写定着する際に、トナー像の転写定着にはほとんど関係のない余分な定着液が記録媒体に付着してしわ、カールなどが発生するのを防止できる。
【0025】
本発明によれば、転写ニップ部よりもトナー像担持体の回転方向下流側に第2の定着液付与手段を設け、トナー像担持体上のトナー像にさらに定着液を付与することによって、トナー像全体に均一に定着液を付与でき、トナー像を構成する全てのトナー粒子を充分に膨潤・軟化できるので、トナー像の記録媒体への転写定着が容易にかつ確実に実施できる。すなわち、トナー像担持体上のトナー像担持体に直接接触するトナー像下層部(トナー像形成手段上ではトナー像上層部)のトナー粒子は、トナー像担持体への転写の際に定着液に直接接触するので、充分に膨潤・軟化するけれども、トナー像が多色トナー像で層厚が大きいとき、画像形成速度が高速であるときなどは、トナー像担持体に直接接触しないトナー像上層部(トナー像形成手段上ではトナー像下層部)は定着液による膨潤・軟化が不充分になりやすい。そこで、トナー像上層部に再度定着液を付与することで、トナー像全体を均一に膨潤・軟化させることができる。
【0026】
本発明によれば、第2の定着液付与手段が、トナー像担持体上のトナー像に接触状態で定着液を付与し、その少なくとも表面層が定着液の保持が可能な材料により構成される定着液付与部材を含むように構成することによって、トナー像担持体上のトナー像の状態に応じて、定着液の付与または除去を容易に行い得る。すなわち、トナー像担持体上のトナー像はトナー粒子が膨潤・軟化してフィルム状の形態を呈するけれども、トナー粒子が溶解して完全に融着しているわけではなく、トナー粒子間には微細な隙間が存在し、その隙間に定着液が毛細管現象で吸収され、トナー像全体としては定着液を浸透させ易い構造になっている。一方、トナー像担持体のトナー像が付着しない部分(非画像部)に存在する定着液は、トナー像の記録媒体への転写定着の際に、記録媒体にしわ、カールなどを発生させる原因になる。そこで、前記のような構造を有する定着液付与部材を用いると、良好な定着液浸透性を有するトナー像にはさらに定着液を付与し、定着液の除去が必要な画像部ではその表面層にて定着液を吸収できる。さらに、非画像部において表面層に吸収される定着液は、トナー像への定着液付与の際に利用されるので、定着液の消費量を低減化できる。
【0027】
なお、定着液付与部材の表面層は、連続気孔体(多孔質体)により構成されるのが好ましい。連続気孔体は液体を多量に保持でき、液体の付与と吸収とを行うことができ、内部における液体の移動が容易である。したがって、多量の液体を高速で付与または吸収できる。多孔質体の気孔率、気孔径、膜厚などを適宜調整すると、所望の付与量および吸収量を得ることができる。また、高速の画像形成速度にも対応可能である。
【0028】
さらに、定着液付与部材は、その内部に定着液を貯留していることが望ましい。定着液付与部材を、その内部に定着液を貯蔵する、カートリッジ形式のローラ部材として形成することによって、定着液付与部材の交換によって定着液の補充を実行できる。この場合には、定着液を液体として取り扱う必要がなく、定着液の飛散などによる画像形成装置内部の汚染を防止できる。また定着液付与部材をローラ部材とすることにより、定着液付与部材の内部に閉空間を形成できるので、定着液を容易に保持できる。
【0029】
本発明によれば、定着液付与部材の表面に定着液を供給することによって、定着液付与部材の内部に定着液を貯留する必要がなくなり、定着液付与部材の小型化を図り得る。また、定着液付与部材の外部に定着液貯留槽を設けると、大量の定着液を貯留することが可能になり、定着液の補充回数を減らすことができる。
【0030】
本発明によれば、トナー像形成手段がトナー像形成面を含み、トナー像形成面の温度を使用トナーのガラス転移点以下に制御することによって、トナー像のトナー像形成面への固着を防止し、トナー像形成手段からトナー像担持体へのトナー像の転写を長期にわたって安定的に実行できる。ガラス転移点を超える温度では、トナー像のトナー像形成手段への固着が発生し易くなり、トナー像の転写を安定的に実行できなくなる。
【0031】
本発明によれば、トナー像担持体において、トナー像を担持する部分の温度を160℃以下に設定することによって、トナー像担持体上でトナーが熱溶融によって凝集するのを防止する。トナーが凝集すると、ベタ画像の中に視認可能な隙間が生じ、濃度が低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の中間転写手段3および第1の定着液付与手段4)の構成を拡大して示す断面図である。なお、図3においては、説明を簡略化するために、作像ユニット10y,10m,10cの図示を省略し、さらに作像ユニット11bについても、感光体ドラム11bのみを図示するものとする。
【0033】
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、第1の定着液付与手段4と、転写定着手段5と、記録媒体供給手段6と、排出手段7とを含んで構成される。
【0034】
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含み、これらは、各色相の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して各色のトナー像を形成する。すなわち、作像ユニット10yはイエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアン色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラック色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
【0035】
作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13と、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含んで構成される。
【0036】
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない円筒状、円柱状または薄膜シート状(好ましくは円筒状)の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。感光体ドラム11yには、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、導電性基体であるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される有機感光層とを含む、GND電位に接続される直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成される。有機感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。有機感光層の層厚は、たとえば、20μmである。また有機感光層と導電性基体との間に下地層を設けてもよい。さらに、有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。有機感光層に代えて、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコーンなどからなる感光層を使用できる。本実施の形態では、感光体ドラム11yは、時計周りの方向に周速度100mm/sで回転駆動する。
【0037】
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンといったコロナ帯電器などが使用できる。本実施の形態では、感光体ドラム11yは−600Vに帯電される。
【0038】
光走査ユニット13は、帯電状態になる感光体ドラム11yの表面にイエロー色の画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11yの表面に、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。レーザ光13yの光源には、半導体レーザなどが用いられる。本実施の形態では、露光電位−70Vの静電潜像が形成される。
【0039】
現像装置14yは、感光体ドラム11y表面に圧接し、図示しない固定磁極を内包しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、イエロー色トナー16yを感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する現像ローラ17yと、現像ローラ17yの表面に当接するように設けられ、現像ローラ17y表面のイエロー色トナー層を均一化(層規制)する現像ブレード18yと、イエロー色トナー16yを貯留するトナー貯留容器19yと、トナー貯留容器19yの内部に、互いに圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられる1対の攪拌ローラ20yであって、一方が現像ローラ17yの表面に圧接しかつ現像ローラ17y表面にイエロー色トナー16yを供給する攪拌ローラ20yとを含んで構成される。現像ローラ17yは、感光体ドラム11yに圧接(接触)する現像ニップ部において、感光体ドラム11yの回転駆動方向と同じ方向に回転駆動する。したがって、軸線回りの回転駆動方向としては、逆方向になる。本実施の形態では、現像ローラ17yの周速度は、たとえば、感光体ドラム11yに対して1.5倍の150mm/sである。また本実施の形態では、現像ローラ11yには、現像電位として−240Vの直流電圧が印加される。トナー貯留容器19y中のイエロー色トナー16yは、攪拌ローラ20yによって現像ローラ17y表面に供給され、現像ブレード18yにより層厚を均一化された後、電位差などを利用して感光体ドラム11y表面の静電潜像にほぼ選択的に供給され、イエロー色の画像情報に対応するトナー像が形成される。なお、本実施の形態では、イエロー色トナー16yと磁性キャリアとを混合した2成分現像剤として用いられる。
【0040】
ドラムクリーナ15yは、後述するように、感光体ドラム11y表面のイエロー色トナー像が中間転写ベルト21に転写された後に、該表面に残存するイエロー色トナー16yおよび感光体ドラム11yに付着する定着液9を除去、回収する。
【0041】
作像ユニット10yによれば、感光体ドラム11yをその軸線回りに回転駆動させながら、まず帯電ローラ12yにより感光体ドラム11yの表面をたとえば−600Vに帯電する。次に、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエロー色の画像情報に対応する信号光を照射し、イエロー色の画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。次いで、感光体ドラム11yの表面に、現像ローラ16y表面に担持されるイエロー色トナー層が接触する。現像ローラ16yには現像電位として−240Vの直流電圧が印加されており、電位差により、静電潜像にイエロー色トナー16yが付着して現像され、感光体ドラム11yの表面にイエロー色のトナー像が形成される。このイエロー色トナー像は、後述するように、感光体ドラム11yの表面に接する中間転写ベルト21に中間転写される。感光体ドラム11yの表面に残留するイエロー色トナー16yはドラムクリーナ15yにより除去され、回収される。以後、同様のイエロー色トナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0042】
作像ユニット10m,10c,10bは、それぞれマゼンタ色トナー16m、シアン色トナー16cまたはブラック色トナー16bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、マゼンタ色を示す「m」、シアン色を示す「c」またはブラック色を示す「b」を付し、説明を省略する。なお、作像ユニット10y,10m,10c,10bは、中間転写ベルト21の移動方向(副操作方向)、すなわち矢符26の方向の上流側からこの順番で一列に配列される。
【0043】
各色トナー16y,16m,16c,16bは、結着樹脂、着色剤および必要に応じて離型剤を含有する。なお、以後特に断らない限り、これらのトナーをトナー16と総称することがある。 結着樹脂としては、後述する定着液9により軟化および/または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は単独または2種以上の組合せで使用できる。これらの中でも、トナー自体の保存性、耐久性、定着液9の付与によるトナーの軟化および/または膨潤制御などの点から、軟化点が100〜150℃かつガラス転移点が50〜80℃である樹脂が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは、入手容易で安価な有機溶剤によって容易に膨潤および/または軟化し、透明になる。これによって、異なる単色のトナー像を重ね合わせたカラートナー像を記録媒体に定着させると、減法混色により充分な発色が得られる。また、前記の軟化点範囲の樹脂よりも軟化点(または分子量)の高い樹脂を用いると、現像時の負荷によるトナーの劣化が防止され、長期間にわたって安定した現像トナー像ひいては高水準で安定した画像が得られる。
【0044】
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術において用いられるトナー用顔料および染料を使用できるけれども、定着液9による滲みを防止するために、定着液9に溶解しない顔料が好ましく、ニグロシン染料などの染料は好ましくない。顔料の具体例としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。
【0045】
離型剤としては、後述する定着液9により軟化および/または膨潤するものであれば特に制限されず、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどのワックス類が挙げられる。これらのワックスの中から、使用する結着樹脂に応じて、該結着樹脂よりもガラス転移点の低いワックスを用いるのが好ましい。ガラス転移点が結着樹脂よりも低いワックスは加熱により容易に軟化するので、トナー自体のガラス転移点よりも低温でも、トナー同士の結合力およびトナーのトナー像担持体、記録媒体などへの付着力が増加するので、定着液付与時にトナーの流れ、凝集などが発生するのを減少させることができる。さらに、ワックスの軟化により、トナー粒子におけるワックスの存在部分からトナー粒子内部に定着液9が浸透するので、定着液9の付与後、短時間でトナー全体が軟化および/または膨潤する。その結果、記録媒体への転写定着時に、充分な定着強度が得られるとともに、トナー像の重ね合わせにより充分な発色を得ることができる。
【0046】
トナーは、必要に応じて、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含むことができる。
【0047】
トナーの体積平均粒径は、特に制限されないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、単位重量当りのトナーの表面積が大きくなり、定着液9との接触面積が増加して定着し易くなる。これによって、定着液9の使用量の低減化を図り得るとともに、トナー像の記録媒体への定着および定着後の乾燥を短時間で実施できる。また、トナーの体積平均粒径が適度に小さい場合には、記録媒体8に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化およびトナー消費量の低減化を達成でき、ひいては定着液9の消費量のさらなる低減化を達成できる。
【0048】
トナーの体積平均粒径が2μm未満では、トナーの流動性が低下し、現像動作の際に、トナーの供給、攪拌および帯電が不充分になり、トナー量の不足、逆極トナーの増加などが起こり、高画質の画像が得られないおそれがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで軟化および/または膨潤し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、画像の記録媒体への定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOPフィルムへの定着の場合には、画像が暗くなる。
【0049】
トナー自体の軟化点およびガラス転移点は特に制限されないけれども、軟化点が100〜130℃、ガラス転移点が50〜80℃であることが好ましい。このような軟化点の高いトナーは、現像時の負荷に対する耐久性は高いけれども、熱定着方式では充分に定着および発色しない。ところが、本発明では、定着液9を用いて化学的にトナーを軟化および/または膨潤させるので、定着および発色が充分で、高品位な画像が得られる。
【0050】
トナーは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、結着樹脂に着色剤、離型剤などを分散して粉砕する方法、結着樹脂のモノマー溶液中に着色剤、離型剤などを分散させ、その後結着樹脂のモノマーを重合させる方法などが挙げられる。いずれの方法においても、トナーの表面積を大きくするために、トナーの形状が球形よりも不定形になるように調整するのが好ましい。これによって、定着液9と接触し易くなるので、定着液9の使用量を減らし、トナー像の定着および乾燥を短時間で実施できる。
【0051】
本実施の形態で用いられる各色トナー16y,16m,16c,16bは、顔料以外は次に示す同じ構成を有する。このトナーは結着樹脂、着色剤および離型剤を含み、体積平均粒径6μm、ガラス転移点60℃、軟化点120℃、顔料含有量がトナー全量の12重量%、離型剤としてのワックス含有量がトナー全量の7重量%および残部が結着樹脂である、負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。結着樹脂は、ガラス転移点60℃および軟化点120℃のポリエステルである。ワックスは、ガラス転移点50℃および軟化点70℃の低分子ポリエチレンワックスである。このトナーを用いて、所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るのに必要な単位面積当りのトナー量は0.5mg/cmである。
【0052】
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ23,24,25とを含んで構成される。
【0053】
中間転写ベルト21は、支持ローラ23,24,25との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状のトナー像担持体であり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ速度で矢符26の方向に回転する。
【0054】
中間転写ベルト21のトナー像担持面21aには、作像ユニット10y,10m,10c,10bよりも中間転写ベルト21の回転駆動方向(矢符26の方向)上流側に設けられる後述の第1の定着液付与手段4により定着液9を付与される。したがって、中間転写ベルト21としてはこの分野で常用されるものの中から、定着液9に対して撥液性を有するものを選択して使用するのが好ましい。さらにその中でも、少なくともそのトナー像担持面21aの定着液滴に対する接触角が50°以上であるものが好ましく、50°〜120°であるものか特に好ましい。接触角が50°未満では、定着液9を付与されたトナー像の中間転写ベルト21からの剥離性が不充分になり、トナー像の記録媒体への転写定着が円滑に進行せず、良好な画像が形成されないおそれがある。接触角が50°未満の材料には、たとえば、ポリイミド、ポリカーボネートなどが挙げられ、これらの樹脂は湿式定着方式の画像形成装置における中間転写ベルト21の表面材料には適しない。ただし、中間転写ベルト21の基材としては好適に使用できる。
【0055】
定着液滴に対する接触角が50°以上である材料としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素樹脂などが挙げられる。フッ素樹脂としては公知のものを使用でき、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)などが挙げられる。本実施の形態では、厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコーンゴム層を積層したものを用いる。この定着液滴に対する接触角は54°である。また厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコーン層、および、PTFEとPFAとを8:2(重量比)で混合したフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面コート層をこの順番で積層したものを用いても良い。この表面コート層の定着液滴に対する接触角は74°である。
【0056】
中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色相のトナー像の中間転写位置(転写ニップ部)である。トナー像担持体である中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向する位置に、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bが配置される。
【0057】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21におけるトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含んで構成されるローラ部材である。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属により形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電材を含むEPDM(エチレンプロピレン)、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。
【0058】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと感光体ドラム11y,11m,11c,11bとの圧接部である転写ニップ部に、トナー像担持面21aに定着液9が付与された中間転写ベルト21が進入すると、まず感光体ドラム11y上のトナー像と定着液9とが接触し、感光体ドラム11yを基準にしてトナー像上層から下層にかけてトナーが順次膨潤軟化してイエロー色トナー16yのフィルム(以後「イエロー色フィルム」と称す)が形成される。このとき、感光体ドラム11yを基準とするトナー像上層のトナー16yは最初にトナー像担持面21aひいては定着液9に接触し、膨潤軟化の度合が進み、強い粘着力でトナー像担持面21aに付着する。このため、イエロー色フィルムはトナー像担持面21aから剥離し難くなり、トナー像の粘着転写が確実に実行される。次に、感光体ドラム11m上のトナー像も、イエロー色フィルム上に付着し、定着液9に接触して膨潤軟化し、イエロー色フィルムの上にマゼンタ色フィルムが形成される。このようにして感光体ドラム11c,11b上のトナー像も順次フィルム化して粘着転写される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー色、マゼンタ色、シアン色およびブラック色の各色相のトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。このとき、定着液9の作用により、トナー16同士の付着力が高まるので、従来の静電転写に比べてトナー16の飛散が少ない。また、形成される多色トナー像は、フィルム化しつつも膨潤軟化状態にあることに変わりはないので、後述の転写定着手段5において容易に記録媒体8への転写同時定着が可能である。
【0059】
支持ローラ23,24,25は、図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能にまたは他の支持ローラの回転駆動に従動可能に支持されるローラ部材であり、中間転写ベルト21を支持しながら回転駆動させる。支持ローラ23,24,25には、たとえば、直径30mmで、肉厚が1mmのアルミニウム製円筒体が用いられる。
【0060】
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上の各色トナー像が、中間転写ベルト21上に予め付与される定着液9の作用により膨潤軟化してフィルム化しながら、トナー像担持面21aの所定位置に重ね合わされて粘着転写され、膨潤軟化状態にある多色トナー像が形成される。
【0061】
第1の定着液付与手段4は、中間転写ベルト21の回転駆動方向である矢符26の方向において、トナー像形成手段2により形成されるトナー像の中間転写ベルト21への転写位置である転写ニップ部よりも上流側に設けられ、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上にトナー像が転写される前に、トナー像担持面21aに定着液9を付与する。
【0062】
第1の定着液付与手段4は、定着液付与ローラ28と、定着液供給ローラ29と、定着液槽30とを含んで構成される。
【0063】
定着液付与ローラ28は、図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に支持され、中間転写ベルト21を介して支持ローラ23に圧接するように設けられ、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに定着液9を付与する。定着液付与ローラ28には、たとえば、金属製芯金の表面に、弾性層および親水性処理を施した多孔質層を順次積層してなるローラ部材、金属製芯金の表面に、弾性および親液性を有する材料からなる被覆層を設けたローラ部材などを使用できる。弾性および親液性を有する材料としては、たとえば、アルミニウムなどの金属材料、親水性樹脂、EPDMなどのゴム材料などが挙げられる。本実施の形態では、硬度20度(JIS−A)のシリコーンゴムからなる厚さ3mmの被覆層を有する外径20mmのローラ部材を用いる。また本実施の形態では、定着液付与ローラ28は、中間転写ベルト21に1N/cmの押圧力で圧接し、中間転写ベルト21の回転速度とほぼ等速度で回転駆動する。
【0064】
定着液供給ローラ29は、図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に支持され、定着液付与ロー28に圧接し、その一部が定着液槽30の下部に貯留される定着液9中に浸漬するように設けられ、定着液付与ローラ28に接触下に定着液9を供給する。定着液供給ローラ29には、たとえば、金属製ローラが用いられる。本実施の形態では、外径12mmのステンレス鋼製ローラである。
【0065】
定着液槽30は、定着液付与ローラ28および定着液供給ローラ29を内蔵し、その下部に定着液9を貯留し、中間転写ベルト21に対向する側面に形成される開口部30aから定着液付与ローラ28の一部を外方に向けて露出させ、中間転写ベルト21に圧接させる。
【0066】
第1の定着液付与手段4は、さらに、図示しない定着液補給手段および定着液補給制御手段を含み、定着液9の消費状況に応じて、定着液槽30のおける定着液9の液面高さが一定になるように、定着液槽30に定着液9が補充供給される。
【0067】
ここで使用される定着液9は、トナー16を軟化および/または膨潤させる液状物であり、たとえば、トナー16を軟化および/または膨潤させる作用を有する有機化合物と水とを含む組成物である。前記有機化合物としては、トナーを軟化および/または膨潤させる作用を有し、かつ水に分散または溶解可能なものであれば特に制限されず、たとえば、高級グリコールエーテル、エチレングリコールモノエーテル、ジエチレングリコールモノエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブエチルカルビトール、脂肪族二塩基酸エステルおよび不飽和二塩基酸エステル(たとえば、DBE、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル)、多塩基酸エステル(たとえば、トリメリット酸エステル)、エステル系高沸点混合溶媒などが挙げられる。これらは1種または2種以上を使用できる。このような有機化合物の含有量は、有機化合物自体の種類、トナー成分などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液9全量の10〜30重量%である。
【0068】
定着液9には、界面活性剤を添加できる。界面活性剤の具体例としては、たとえば、脂肪酸誘導体硫酸エステル、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミン、アミン化合物などの陽イオン界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸、スルホベタインなどの両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。界面活性剤の含有量は、併用する有機化合物の種類および含有量、トナー成分、界面活性剤そのものの種類などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液9全量の1〜10重量%である。
【0069】
本実施の形態では、高級グリコールエーテル(有機化合物)20重量%およびスルホン酸型界面活性剤(界面活性剤)5重量%を含有し、残部が水である定着液9を使用する。
【0070】
第1の定着液付与手段4によれば、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上に定着液9が付与される。
【0071】
本実施の形態では、第1の定着液付与手段4は中間転写ベルト21に常時接触する構成を採るけれども、それに限定されず、第1の定着液付与手段4全体または定着液付与ローラ28を中間転写ベルト21に対して離接可能にする図示しない離接手段を設け、画像形成動作の休止時などに中間転写ベルト21から離反する構成を採ることもできる。また、接触式の第1の定着液付与手段4に代えて、非接触で定着液9を付与する図示しない定着液非接触付与手段を用いてもよい。
【0072】
転写定着手段5は、支持ローラ24と、中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接し、かつ図示しない駆動手段により軸線方向に回転駆動可能に支持される転写定着ローラ27とを含んで構成される。転写定着ローラ27にはこの分野で常用されるものを使用できるけれども、本実施の形態では、芯金と、芯金表面に形成され、硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴムからなる厚さ3mmの弾性層と、弾性層表面に形成され、PFAからなる厚さ20μmの表層とを含み、外径30mmのローラ部材が用いられる。また本実施の形態では、転写定着ローラ27は、8N/cmの線圧で中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接される。
【0073】
転写定着手段5における、支持ローラ24と転写定着ローラ27との圧接部を、転写定着ニップ部と呼ぶ。転写定着ニップ部に、定着液9との接触により膨潤軟化状態にあるトナー像が中間転写ベルト21の回転駆動により搬送されると、これに同期して、後述する記録媒体供給手段6から記録媒体8が送給され、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体8の表面に押圧により転写され、定着される。このとき、記録媒体8が紙類である場合には、トナー像が記録媒体8に押圧されると、トナー粒子が紙繊維に強く入り込むのと同時に、トナー粒子同士が融合し、記録媒体8に転写された画像の表面が均一になる。これによって、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れた高品位のカラー画像が得られる。
【0074】
記録媒体供給手段6は、記録媒体8を貯留する記録媒体カセット31と、記録媒体8を搬送路Pに1枚ずつ送給するピックアップローラ32と、中間転写ベルト21上の多色トナー像が転写定着ニップ部に搬送されるのに同期して、該転写定着ニップ部に記録媒体8を送給する1対のレジストローラ33a,33bとを含んで構成される。
【0075】
記録媒体供給手段6によれば、記録媒体カセット31内に貯留される記録媒体8が、ピックアップローラ32により1枚ずつ搬送路Pに送給され、さらに、レジストローラ33a,33bにより、転写定着ローラ27と支持ローラ24との圧接部に送給される。
【0076】
排出手段7は、搬送ベルト34と、駆動ローラ35と、テンションローラ36と、排紙ローラ37とを含んで構成される。
【0077】
搬送ベルト34は、駆動ローラ35とテンションローラ36との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトであり、転写定着手段6により画像が形成された記録媒体8を排紙ローラ37に搬送する。搬送ベルト34には、たとえば、導電剤を添加して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも記録媒体搬送面46aに、PTFEからなる厚さ10μmの被覆層を設けたものを使用できる。
【0078】
駆動ローラ35は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ35には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ローラを使用できる。
【0079】
テンションローラ36は、搬送ベルト34が弛まないように、搬送ベルト34に所定の張力を付与する。テンションローラ36には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成される。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。金属製軸体の材料には、たとえば、ステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。
【0080】
排紙ローラ37は、図示しない駆動手段により軸線方向に回転駆動可能に支持され、かつ互いに圧接する1対のローラ部材であり、搬送ベルト34により搬送される記録媒体8を画像形成装置1の外部側面に設けられる排紙トレイ38に排出する。
【0081】
画像形成装置1によれば、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに定着液9が付与された後、トナー像形成手段2により形成されるトナー像が粘着転写され、トナー像担持面21a上に膨潤軟化状態にあるトナー像が形成される。このトナー像は転写定着ニップ部に搬送され、記録媒体9上に転写定着され、画像が形成される。
【0082】
図4は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置42の要部の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置42は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付してまたは図示を省略して、説明を省略する。
【0083】
画像形成装置42は、転写ニップ部に電圧を印加する電圧印加手段43を含むことを特徴とする。電圧印加手段43は、感光体ドラム11bおよび中間転写ローラ22bに電気的に接続される電源44bを含む。なお、図4ではブラック色のトナー像の形成および転写に関与する感光体ドラム11bおよび中間転写ローラ22bのみを図示し、それ以外の感光体ドラム11y,11m,11cおよび中間転写ローラ22y,22m,22cについては図示を省略するけれども、それぞれが図示しない電源44y,44m,44cに電気的に接続され、これらの電源も電圧印加手段43に含まれる。電源44bは、トナー16bの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスを中間転写ベルト21に印加する。さらに具体的には、感光体ドラム11bと中間転写ベルト21との転写ニップ部において、中間転写ベルト21の電位を感光体ドラム11bの電位よりも高くなるように電界を印加する。他の電源も同じ動作を実行する。
【0084】
中間転写ローラ22bには、感光体ドラム11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに予め定着液9が付与される。感光体ドラム11b上のトナー16bが中間転写ベルト21上の定着液9に接触すると、トナー16bは膨潤軟化してフィルム化する。トナー16bのフィルム化は、定着液9が予め付与されている中間転写ベルト21上から始まり、感光体ドラム11bを基準にして、感光体ドラム11b上のトナー像の上層から下層に向けてトナー16bが順次フィルム化し、先にフィルム化したトナーに付着してゆく。トナー像上層のトナーは中間転写ベルト21ひいては定着液9に最も早く接触して膨潤軟化が進行し、強い粘着力を示すので、中間転写ベルト21から離反しにくいフィルムが形成される。このフィルムの上に順次トナー16bが付着し、定着液9と接触してフィルム化するので、トナー像全体が感光体ドラム11bから中間転写ベルト21へ粘着転写される。
【0085】
ところが、感光体ドラム11b上のトナー像の層厚が大きいとき、画像形成速度が高速であるときなどは、感光体ドラム11bを基準にして感光体ドラム11b上のトナー像における下層のトナーに定着液9が浸透しにくくなり、感光体ドラム11b上にトナーが残存するおそれがある。
【0086】
そこで、感光体ドラム11b上のトナー像を中間転写ベルト21上に確実に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが電源44bからの定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11bから見て下層のトナー16bに定着液9が浸透しにくい場合でも、電界によってトナー16bが中間転写ベルト21側へ向かう力を受けるので、中間転写ベルト21上の定着液9が浸透する部分にトナー16bを早く引き寄せることができる。その結果、感光体ドラム11b側の下層のトナーを短時間で膨潤、軟化させることが可能となる。こうして、トナー層が厚いとき、またはプロセスが高速なときでも、感光体ドラム11b上にトナー16bが残留することなく、転写効率を向上させ得る。
【0087】
このようにして、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー色、マゼンタ色、シアン色およびブラック色の各色相のトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。この多色トナー像は膨潤軟化状態にあるので、転写定着手段5において記録媒体8上に転写同時定着され、記録媒体8上に画像が記録される。
【0088】
本実施の形態では、中間転写ベルト21には、厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコーン層を積層したシート状部材を用いる。該部材の定着液滴に対する接触角は54°である。また、厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコーン層、および、PTFEとPFAとを8:2(重量比)で混合したフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面コート層をこの順番で積層したものを用いても良い。この表面コート層の定着液滴に対する接触角は74°である。なお、ポリイミド製基材および表面コート層には、中間転写ベルトとしての電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材を配合できる。
【0089】
図5は、本発明の実施の第3形態である画像形成装置45の要部の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置45は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付してまたは図示を省略して、説明を省略する。
【0090】
画像形成装置45は、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に圧接するように設けられ、中間転写ベルト21上の非画像部に付着する定着液9を除去・回収する定着液吸収手段46を含むことを特徴とする。
【0091】
定着液吸収手段46は、定着液吸収ローラ47を含む。
定着液吸収ローラ47は、図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に支持され、芯金と、芯金表面に形成される吸液層とを含むローラ部材である。ここで、芯金には、ステンレス鋼などのこの分野でロール部材に常用される金属からなる芯金を使用できる。吸液層は、吸水材料、吸油材料などの吸液性材料を含む。吸液性材料にはたとえば、天然木材パルプの繊維、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなどの合成樹脂を原料とする不織布、フェルトなどを使用できる。また、繊維を束ねて樹脂加工したもの、繊維を束ねたもの、フィルムで巻いたもの、押し出し樹脂でチュービングしたもの、低融点繊維を熱融着させたものなども使用できる。また、ポリエチレンの粉体を焼結成型したしたもの、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの連続気孔体、連続気孔を有するフッ素樹脂製の多孔質シートなどが挙げられる。さらに、吸液層は弾性を有するのが好ましい。吸液層が弾性を示すと、定着液吸収ローラ47の中間転写ベルト21への接触圧が低下し、定着液吸収ローラ47にトナー像が付着するのを防止できる。また、定着液吸収ローラ47へのトナー像の付着を防止するという観点からは、定着液吸収ローラ47は中間転写ベルト21と等速で回転するのが望ましい。定着液吸収手段47と中間転写ベルト21との間に速度差があると、トナー層が削られて定着液吸収手段47にトナーが付着する恐れがある。
【0092】
本実施の形態では、ステンレス鋼製の芯金に、ポリウレタンの連続気孔体からなる厚さ10mmの発泡スポンジ層を形成した径30mmのローラ部材を用いる。
【0093】
本実施の形態では、ローラ形状の定着液吸収ローラ47を用いるけれども、それに限定されず、巻き取りシート状部材、ブレード状部材などを用いることもできる。
【0094】
定着液吸収ローラ47は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aにおいて、トナー像が転写されない部分(非画像部)に付着する定着液9を吸収して除去する。一方、トナー像が付着する部分(画像部)では、定着液9がトナー像に浸透し、トナー16を膨潤軟化させているので、定着液9が吸収されることはほとんどない。このようにして、中間転写ベルト21上には、膨潤軟化状態にあるトナー像のみが存在し、トナー16が付着しない非画像部には定着液9がほとんど存在しなくなる。したがって、次工程の転写定着行程においてトナー像の転写定着が円滑に進行し、記録媒体8に定着液9の付着を原因とするしわ、カールなどが発生するのを防止できる。
【0095】
図6は、本発明の実施の第4形態である画像形成装置50の要部の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置50は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付してまたは図示を省略して、説明を省略する。
【0096】
画像形成装置50は、中間転写ベルト21の回転駆動方向である矢符26の方向において、転写ニップ部の下流側に設けられる第2の定着液付与手段4aを含むことを特徴とする。
【0097】
第2の定着液付与手段4aは、定着液付与ローラ28が、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に圧接するように設けられ、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上に担持されるトナー像に定着液9を接触付与する以外は、第1の定着液付与手段4と全く同じ構成を有する。
【0098】
第2の定着液付与手段4aによれば、中間転写ベルト21上のトナー像に、さらに定着液9が接触付与される。
【0099】
中間転写ベルト21上のトナー像において、中間転写ベルト21を基準にして、中間転写ベルト21に直接接触するトナー像下層部のトナーは、トナー像の転写時に定着液9に最も早く接触するので、充分な膨潤軟化状態にある。これに対し、トナー像上層部のトナーは、下層部のトナーを介して定着液9に接触するので、トナー像の層厚が大きいとき、画像形成速度が高速であるときなどは、定着液9による膨潤軟化が不充分になることがある。このトナー像上層部のトナーは、次工程である転写定着工程において記録媒体8に最先で接触する部分であり、その膨潤軟化が不充分であると、転写同時定着が困難になるかまたは転写同時定着は実行できても画像(トナー像)の記録媒体8に対する定着強度が不充分になり、長期的には画像の欠落などが生じるおそれがある。そこで、転写ニップ部の下流側に第2の定着液付与手段4aを設け、上層部のトナー層に再度定着液9を付与することで、中間転写ベルト21上のトナー層の上層から下層まで、トナー16を均一にかつ充分に膨潤軟化し、トナー像の記録媒体8への転写同時定着を容易に実行できる。
【0100】
図7は、本発明の実施の第5形態である画像形成装置51の要部の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置51は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付してまたは図示を省略して、説明を省略する。
【0101】
画像形成装置51は、中間転写ベルト21の回転駆動方向である矢符26の方向において、転写ニップ部の下流側に設けられる第2の定着液付与手段52を含むことを特徴とする。
【0102】
第2の定着液付与手段52は、定着液付与ローラ53を含む。
定着液付与ローラ53は、図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に支持され、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に圧接するように設けられるローラ部材である。定着液付与ローラ53には、たとえば、芯金54と、芯金54の表面に形成される定着液貯留層55と、定着液貯留層55の表面に形成される表層56とを含むローラ部材が用いられる。ここで、定着液貯留層55は、定着液9の保持貯留が可能な材料により形成される。このような材料としては、たとえば、不織布、フェルト、多孔質体、発泡体、吸液性高分子材料などが挙げられる。表層56には、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの表面状態に応じて、定着液9の吸収またはトナー像担持面21a上への付与が可能であり、さらに定着液9の保持貯留が可能な材料により形成される。このような材料としては、たとえば、天然木材パルプの繊維、PP、PET、ナイロンなどを原料とする不織布、フェルト、繊維を束ねたもの、繊維を束ねて樹脂加工したもの(フィルムで巻いたもの、押し出し樹脂でチュービングしたもの、低融点繊維を熱融着させたもの)、ポリエチレンの粉体を焼結成型したしたもの、連続気孔を有するPVA、PU、PVCなどの多孔質体、連続気孔を有するフッ素樹脂製の多孔質シートなどが挙げられる。連続気孔体が好ましい。連続気孔体は液体を多量に保持でき、液体の付与と吸収とを同時に行うことができ、その内部における液体の移動が容易である。したがって、多量の定着液9を高速で付与または吸収することができる。連続気孔体の気孔率、気孔径、膜厚を調整することにより、定着液9の付与量および吸収量を適宜調整でき、画像形成速度が高速である場合にも対応できる。
【0103】
本実施の形態では、定着液付与ローラ53には、径10mmのステンレス鋼製金属ローラである芯金と、芯金の表面に形成されるフェルトからなる厚さ10mmの定着液貯留層と、定着液貯留層の表面に形成される連続気孔を有するポリウレタン製スポンジからなる厚さ5mmの表層とを含む径40mmのローラ部材が用いられる。
【0104】
定着液付与ローラ53によれば、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの表面状態に応じて、定着液9の付与および吸収のいずれかを適宜選択して実行する。すなわち、中間転写ベルト21上のトナー像には定着液9を付与し、トナー像が付着しない非画像部ではその部分に付着する定着液9を吸収する。その結果、トナー像の膨潤軟化が進行し、次工程での転写同時定着が確実に行われ、画像(トナー像)が高い定着強度で記録媒体8に定着し、長期的な耐久性の高い高品位画像が形成される。それとともに、非画像部の定着液9が吸収されるので、記録媒体8への余分な定着液9の付着、定着液9の記録媒体8への付着によるしわ、カールなどの発生を防止できる。さらに、非画像部から吸収される定着液9はトナー像へ付与されて有効利用されるので、定着液9の余分な消費を減らし、利用効率を向上させ得る。
【0105】
また、定着液付与ローラ53は、その内部に定着液9を貯留するので、定着液付与ローラを交換することによって定着液9を補充できる。したがって、液体である定着液9の取り扱い性の悪さを考慮する必要がなくなる。具体的には、定着液9を溢したり、飛散させたりすることを防止できる。また、定着液付与ローラ53はローラ部材であり、その内部に閉空間を容易に形成できるので、定着液9を容易に保持できる。
【0106】
図8は、本発明の実施の第6形態である画像形成装置57の要部の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置57は、画像形成装置50に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付してまたは図示を省略して、説明を省略する。
【0107】
画像形成装置57は、表層61が定着液9を付与または吸収可能な材料で形成される定着液付与ローラ59を備える第2の定着液付与手段58を含むことを特徴とし、それ以外の構成は画像形成装置50と同様である。
【0108】
第2の定着液付与手段58は、定着液付与ローラ59を用いる以外は、画像形成装置50における第2の定着液付与手段4aと同様の構成を有する。
【0109】
定着液付与ローラ59は、図示しない駆動手段により回転駆動可能に支持され、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に圧接するように設けられるローラ部材であり、前述の定着液付与ローラ53における定着液貯留層55を有しない以外は、定着液付与ローラ53と同様の構成を有する。本実施の形態では、定着液付与ローラ59には、ステンレス鋼製の径10mmの金属ローラ(芯金)と、該金属ローラ表面に形成される連続気泡を有するポリウレタン発泡体からなる径5mmの表層とを含み、ローラ径20mmのローラ部材が用いられる。また本実施の形態では、定着液供給ローラ29には、径10mmの芯金に、速続気泡を有するポリウレタン発泡体からなる厚さ5mmの表層を積層したスポンジローラを用いる。
【0110】
第2の定着液付与手段58では、定着液付与ローラ59の外周面(表層56)に定着液9が供給されるので、定着液付与ローラ59の内部に定着液9を保持貯留する必要がなくなり、定着液付与ローラ59を小型化することが可能である。また、定着液9が定着液付与ローラ59の外部に貯蔵されるので、定着液9の大量貯蔵が可能になり、定着液9の補充回数を減らすことができる。
【0111】
画像形成装置57によれば、画像形成装置51と同様に、中間転写ベルト21上のトナー像には定着液9を付与し、トナー像が付着しない非画像部に付着する定着液9を吸収できるので、次工程において転写同時定着を確実に実行できるとともに、しわ、カールなどがなく、画像(トナー像)の記録媒体8への定着強度が高く、画像の画質品位の高い印刷物が得られる。
【0112】
図9は、本発明の実施の第7形態である画像形成装置60の要部の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置60は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付してまたは図示を省略して、説明を省略する。
【0113】
画像形成装置60は、転写定着手段5aが、内部に加熱手段61を有する支持ローラ24aと、転写定着ローラ27とを含むことを特徴とする。すなわち、画像形成装置1において、転写定着ローラ27に中間転写ベルト21を介して圧接する支持ローラ24に代えて、内部に加熱手段61を備える支持ローラ24aを用いる以外は、画像形成装置1と同様の構成を有する。
【0114】
支持ローラ24aは、その内部に加熱手段61を有する。加熱手段61には、ヒータなどが用いられる。支持ローラ24aは、定着液9の作用により膨潤軟化状態にあるトナー像が中間転写ベルト21の回転駆動により転写定着ニップ部に搬送されると、トナー像を加熱する。これによって、トナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aから剥離し易くなり、トナー像の記録媒体8への転写定着を一層確実に実行できる。また、転写定着ニップ部でトナー像を加熱することによって、第1の定着液付与手段4によって中間転写ベルト21上に付与される定着液9の量を減らすことが可能になり、定着液9の消費量を低減化できる。たとえば、トナー量0.5mg/cm、画像形成速度100mm/sのとき、加熱なしではトナー量と同量の定着液9が必要であるけれども、100℃に加熱した場合は、トナー量の1/2の定着液9を用いれば、転写同時定着が確実に実行される。
【0115】
なお、トナー像の加熱温度は、好ましくは160℃以下、さらに好ましくは100〜160℃、特に好ましくは100℃以上、160℃未満である。加熱温度が160℃を超えると、トナー16の溶融によるトナー16同士の凝集が顕著になる。この凝集によって、特にベタ画像の場合、画像中に微細な隙間が発生し、画像濃度が低下する。
【0116】
得られる濃度は、トナー量0.5mg/cm、プロセス速度100mm/sのとき、加熱なし:ID=1.4、100℃加熱:ID=1.45、150℃加熱:ID=1.4、160℃加熱:ID=1.3となり、160℃に加熱すると画像濃度の低下が顕著になることがわかる。画像濃度の測定は、X−Rite社製310による反射濃度測定値を用いた。
【0117】
なお、トナー像の加熱温度の制御は、たとえば、支持ローラ24aの表面近傍に図示しない温度センサを設け、支持ローラ24aの表面温度を温度センサにより検知し、その検知結果に応じて、画像形成装置60の全動作を制御するCPUが、加熱手段61に電気的に接続される図示しない電源に制御信号を送り、電源から加熱手段61に送られる電気量を調節することにより行われる。
【0118】
また、このような支持ローラ24aを用いる画像形成プロセスにおいては、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面温度は、トナー16のガラス転移点以下の温度であることが望ましい。感光体ドラム11y,11m,11c,11b上のトナー16がガラス転移点を超える温度で加熱されると、トナー16が固着しやすくなり、中間転写ベルト21上への粘着転写が困難になるからである。
【0119】
画像形成装置60によれば、トナー像の記録媒体8への転写同時定着を一層確実に実行できるか、または定着液9の使用量を低減化できる。
【0120】
図10は、本発明の実施の第8形態である画像形成装置62の要部の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置62は、画像形成装置60に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付してまたは図示を省略して、説明を省略する。
【0121】
画像形成装置62は、支持ローラ24aがその内部に加熱手段61を有し、支持ローラ23と支持ローラ24aとの間に加熱ローラ63が設けられ、さらに定着液付与手段4の定着液付与ローラ28が中間転写ベルト21を介して加熱ローラ63に当接するように定着液付与手段4が設けられることを特徴とする。
【0122】
加熱ローラ63は、図示しない駆動手段により軸線方向に回転駆動可能に設けられ、たとえば、芯金64と、芯金64の内部に設けられる加熱手段61とを含んで構成される。加熱手段61には、たとえば、ヒータなどが用いられる。
【0123】
加熱ローラ63と定着液付与ローラ28とが中間転写ベルト21を介して圧接することによって、定着液付与ローラ28から中間転写ベルト21に付与される定着液9が加熱ローラ63により加熱され、定着液9が転写ニップ部に搬送されるまでに定着液9の溶媒成分の乾燥が進み、トナー16の膨潤軟化に必要な成分の濃度が高まり、定着液9がフィルム化する。これによって、転写ニップ部において感光体ドラム11y,11m,11c,11bと接するときに、定着液9が感光体ドラム11y,11m,11c,11bに付着し難くなり、感光体ドラムの定着液9による汚染が防止されるとともに、トナー像の粘着転写を一層確実に実行できる。
【0124】
本実施の形態では、加熱ローラ63は中間転写ベルト21を介して定着液付与手段4の定着液付与ローラ28に圧接する位置に設けられるけれども、それに限定されず、定着液付与ローラ28よりも中間転写ベルト21の回転駆動方向26における下流側に配置することができる。
【0125】
また本実施の形態では、中間転写ベルト21に接触下に加熱を行う加熱ローラ63を用いるけれども、それに限定されず、中間転写ベルト21に熱風を吹き付けて定着液9の溶媒成分を蒸発させる熱風乾燥手段を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の第1形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の実施の第2形態である画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の実施の第3形態である画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の実施の第4形態である画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の実施の第5形態である画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の実施の第6形態である画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の実施の第7形態である画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図10】本発明の実施の第8形態である画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0127】
1,42,45,50,51,57,60,62 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3 中間転写手段
4 第1の定着液付与手段
4a,58 第2の定着液付与手段
5,5a 転写定着手段
6 記録媒体供給手段
7 排出手段
8 記録媒体
9 定着液
10y,10m,10c,10b 作像ユニット
16,16y,16m,16c,16b トナー
21 中間転写ベルト
21a トナー像担持面
22y,22m,22c,22b 中間転写ローラ
23,24,24a,25 支持ローラ
27 転写定着ローラ
28,53,59 定着液付与ローラ
29 定着液供給ローラ
30 定着液槽
31 記録媒体カセット
32 ピックアップローラ
33a,33b レジストローラ
34 搬送ベルト
35 駆動ローラ
36 テンションローラ
37 排紙ローラ
38 排紙トレイ
43 電圧印加手段
46 定着液吸収手段
47 定着液吸収ローラ
61 加熱手段
63 加熱ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含むトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段上のトナー像が転写され、転写されたトナー像を担持して回転するトナー像担持体と、トナー像担持体上にトナーを軟化および/または膨潤させる定着液を付与する第1の定着液付与手段と、定着液が付与されたトナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含む画像形成装置であって、
第1の定着液付与手段は、トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置よりもトナー像担持体の回転方向上流側に設けられ、
トナー像形成手段によりトナー像をトナー像担持体に転写する前に、トナー像担持体に定着液を付与することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置に電圧を印加する電圧印加手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置よりもトナー像担持体の回転方向下流側においてトナー像担持体に接触するように設けられ、
トナー像担持体上のトナー像以外の部分に付着する定着液を除去する定着液吸収手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像形成手段によるトナー像担持体へのトナー像転写位置よりもトナー像担持体の回転方向下流側に設けられ、
トナー像担持体上のトナー像に定着液を付与する第2の定着液付与手段をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
第2の定着液付与手段は、
トナー像担持体への接触下にトナー像担持体上のトナー像に定着液を付与し、少なくともその表面層が定着液を保持し得る材料により構成される定着液付与部材を含むことを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
定着液付与部材は、
その表面に定着液が供給されることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
トナー像形成手段は、
トナー像形成面を含み、
トナー像形成面の表面温度がトナーのガラス転移点以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像担持体を加熱する加熱手段をさらに含み、
加熱手段は、
トナー像担持体のトナー像を担持する部分の温度を160℃以下に加熱することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−65094(P2007−65094A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248457(P2005−248457)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】