説明

画像形成装置

【課題】接触する部材を設けた場合のように、ベルトやローラへの損傷あるいは耐久性の低下を招くことなく転写特性の低下防止と放電跡などの欠落部の発生防止が可能な構成を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数のローラに掛け回されて移動可能なポリイミド製の転写ベルト11と、複数のローラの一つに対して転写ベルト11を挟んで対峙する転写ローラ5とを有し、像担持体上に形成された可視像を記録媒体に転写する転写装置10を備えた画像形成装置100において、複数のローラのうちで転写ローラ5と対峙するローラ72の近傍には、張力付加用のテンションローラ74が配置されており、該テンションローラ74は、転写ローラ5とこれに対峙するローラ72との中心間を結ぶ直線に対して両ローラの対向位置から伸びる垂線を境にして、転写ローラ5から遠ざかる側に中心が位置決めされていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは、転写装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリンタや複写機あるいはファクシミリ装置や印刷機等の画像形成装置においては、像担持体として用いられる感光体上に形成された静電潜像がトナーを用いて可視像処理され、トナー像が記録紙などの転写媒体に転写された後、定着されて複写出力として得られるようになっている。
感光体に担持されているトナー像を転写するための構成の一つとして、複数のローラに掛け回されて移動可能な転写ベルトを用いる構成が知られており、その転写ベルトには、機械的特性に優れるポリイミド樹脂を用いた構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、転写行程を実行するための構成としては、転写ベルトが掛け回されているローラに対して転写ベルトを挟んで対峙する転写バイアスローラを配置し、前者のローラと転写バイアスローラとで記録材を狭持しながら転写バイアスを印加する転写ニップ部を形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−84913号公報(段落「0003」、「0029」欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベルトを用いる構成には、ベルトのゆるみを防止するための張力を付加するテンションローラを設ける構成が一般に知られており、転写ベルトを用いる場合においてもテンションローラを用いることがある。
【0006】
テンションローラは、転写行程を実行する位置である転写ベルトと転写バイアスローラとの対向位置での張力を安定させる必要から、転写バイアスローラの近傍に配置される場合がある。
【0007】
しかし、テンションローラを転写バイアスローラの近傍に配置した場合、ポリイミド樹脂を転写ベルトに用いて転写を行うと、転写されたトナー像の一部が欠落する現象(ピンホール)が発生することを発明者は確認した。
【0008】
この原因としては、転写バイアスローラとこれに対峙しているローラとで形成される転写ニップの長さにより転写バイアスを受ける範囲が長くなることによる帯電量の増加があり、この増加により転写ニップ部を通過する際の剥離放電が発生しやすくなることが考えられる。
【0009】
そこで、帯電量の増加を抑えるために転写バイアスを低くすることも考えられるが、転写性が悪化するという新たな問題が発生する。
【0010】
一方、転写バイアスを低くする代わりに除電装置を設けて放電現象を抑制する場合も考えられるが、除電装置は被除電部材との接触が前提となることから、接触するベルト側やローラでの耐久性の悪化は否めないという新たな問題が生じる。
【0011】
本発明の目的は、上記従来の転写装置における問題に鑑み、接触する部材を設けた場合のように、ベルトやローラへの損傷あるいは耐久性の低下を招くことなく転写特性の低下防止と放電跡などの欠落部の発生防止が可能な構成を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)複数のローラに掛け回されて移動可能なポリイミド製の転写ベルトと、該複数のローラの一つに対して上記転写ベルトを挟んで対峙する転写ローラとを有し、像担持体上に形成された可視像を記録媒体に転写する転写装置を備えた画像形成装置において、
上記複数のローラのうちで、上記転写ローラと対峙するローラは、少なくとも表面層、中間層および導電性基体の三層構造からなり、表面層および中間層が、
表面層:摩擦係数≧0.3(オイラー法による)、かつ、表面抵抗変化量が0.4LogΩ以下
中間層:表面抵抗変化量が0.05LogΩ以上、かつ0.4LogΩ以下
の特性を設定され、
上記複数のローラのうちで上記転写ローラと対峙するローラの近傍には、張力付加用のテンションローラが配置されており、該テンションローラは、上記転写ローラとこれに対峙するローラとの中心間を結ぶ直線に対して両ローラの対向位置から伸びる垂線を境にして、上記転写ローラから遠ざかる側に中心が位置決めされていることを特徴とする画像形成装置。
【0013】
(2)上記転写ローラと対峙するローラは、上記転写ベルトの駆動ローラに相当させてあることを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
【0014】
(3)上記テンションローラは、上記転写ベルトの回転制御用エンコーダとして用いられることを特徴とする(1)または(2)に記載の画像形成装置。
【0015】
(4)上記転写ベルトは、体積抵抗率が7.5LogΩ・cm以上、かつ、10.0LogΩ・cm以下に設定されていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【0016】
(5)上記転写ローラおよびこれに対峙するローラの合成抵抗が、6.5LogΩ・cm以上、かつ、9.0LogΩcm以下であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転写ベルトが掛け回されている複数のローラのうちで、転写ローラと対峙するローラの近傍に配置されているテンションローラを、転写ローラとこれに対峙するローラとの中心間を結んで得られる直線からの垂線を坂にして転写ローラから離れる側に位置決めしたことにより、転写ローラ周面での転写ベルトの巻き掛け角が小さくされ、転写ニップ部が減少する。これにより、転写ニップ部の拡大によって引き起こされる記録媒体での帯電量増加による放電現象を抑制してピンホールの抑制および抑制の際には転写バイアス値を低下させることなく行えることにより転写効率の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面により本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態である画像形成装置の一例を示す模式図であり、同図に示した画像形成装置100は、複数色の画像形成が可能なレーザープリンタを示している。なお、本発明は、画像形成装置としてプリンタに限らず、複写機やファクシミリ装置あるいは印刷機さらにはこれら各機能を複合させた装置を含むものである。
【0019】
図1において、画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20M、20C、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
【0020】
図1に示す構成の画像形成装置100は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Bkに形成された可視像が、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、中間転写ベルトという)11に対して1次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写され、その後、記録シートなどが用いられる転写紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
【0021】
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されており、図1においてイエロー(Y)画像形成を行う感光体ドラム20Yを対象として説明すると、感光体ドラム20Yの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Y,現像装置40Y、1次転写ローラ12Yおよびクリーニング装置50Yが配置されている。
帯電後に行われる書き込みは、後述する光走査装置8が用いられる。なお、感光体ドラム12Yには、これに対向してクリーニング装置50Yによる残留トナーの除去後に除電を行う除電装置(図示されず)も設けられている。
【0022】
図1に示す構成において、イエロー画像の形成を対象とする位置に配置されている感光体ドラム20Yおよびこれに対峙する帯電装置30Y,現像スリーブ40Y1を備えた現像装置40Yおよびクリーニング装置50Yは、プロセスカートリッジに纏めて収納されており、プロセスカートリッジは画像形成装置100に対して着脱可能に設けられることにより一括して消耗部品を交換できる構成とされている。なお、図1において、書き込み装置8から出射される書き込みレーザ光は一点鎖線で示されている。
【0023】
中間転写ベルト11に対する重畳転写は、中間転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Bkに形成された可視像が、中間転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12M、12C、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0024】
各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20M、20C、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20M、20C、20Bkは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションを構成するプロセスカートリッジに備えられている。
【0025】
画像形成装置100は、各色毎の画像形成処理を行う4つの作像ステーションと、各感光体ドラム20Y,20M,20C,20Bkの上方に対向して配設されると共に中間転写ベルト11および1次転写ローラ12Y、12M、12C、12Bkを備えた転写ベルトユニット10と、中間転写ベルト11に対向して配設され中間転写ベルト11に従動し、連れ回りする2次転写手段としての転写ローラである2次転写ローラ5と、中間転写ベルト11に対向して配設され中間転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置13と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光走査装置8とを有している。
本実施例における光走査装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、ミラーおよび回転多面鏡などを装備しており、各感光体ドラム20Y,20M,20C,20Bkに対して色毎に対応した書き込み光(図1において、前述したように一点鎖線で示す部分)を出射して感光体ドラム20Y,20M,20C,20Bkに静電潜像を形成する構成とされている。
【0026】
画像形成装置100には、感光体ドラム20Y,20M,20C,20Bkと中間転写ベルト11との間に向けて搬送される転写紙Sを積載した給紙カセットを有するシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録紙Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラム20Y,20M,20C,20Bkと中間転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4と、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとが設けられている。
【0027】
画像形成装置100には、トナー像が転写された転写紙Sにトナー像を定着させるための熱ローラ定着方式の定着ユニットとしての定着装置6と、定着済みの転写紙Sを画像形成装置100の本体外部に排出する排紙ローラ7と、画像形成装置100の本体上部に配設され排出ローラ7により画像形成装置100の本体外部に排出された転写紙Sを積載する排紙トレイ17と、排紙トレイ17の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9M、9C、9Bkとが備えられている。
【0028】
転写ベルトユニット10は、中間転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12Bkの他に、中間転写ベルト11が掛け回されている懸架ローラに相当している2次転写バックアップローラ72,クリーニングバックアップローラ73およびテンションローラ74を有している。
【0029】
クリーニングバックアップローラ73およびテンションローラ74は、中間転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、これらローラには、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12Bkと、2次転写ローラ5と、クリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
【0030】
シート給送装置61は、画像形成装置100の本体下部に配設されており、最上位の転写紙Sの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の転写紙Sをレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。
【0031】
定着装置6は、熱源を内部に有する定着ローラ62と、定着ローラ62に圧接された加圧ローラ63とを有しており、トナー像を担持した転写紙Sを定着ローラ62と加圧ローラ63との圧接部である定着部に通すことで、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を転写紙Sの表面に定着するようになっている。
【0032】
転写装置71に装備されているクリーニング装置13は、詳細な図示を省略するが、中間転写ベルト11に対向当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有しており、中間転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、中間転写ベルト11をクリーニングするようになっている。クリーニング装置13はまた中間転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための図示しない排出手段を有している。
【0033】
転写ベルトユニット10は、前述したように、中間転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12Bkの他に、中間転写ベルト11が掛け回されている懸架ローラに相当している2次転写バックアップローラ72,クリーニングバックアップローラ73およびテンションローラ74を備えた構成であるが、本実施形態においては、中間転写ベルト11を挟んで2次転写ローラ5と対峙している2次転写バックアップローラ72とこれら両ローラによって形成される2次転写ニップでの中間転写ベルト11の弛みを防止するテンションローラ74との配置構成に特徴を有している。
つまり、本実施形態においては、図2に示すように、テンションローラ74の配置位置として、2次転写ローラ5と2次転写バックアップローラ72との中心間を結ぶ直線L1に対して2次転写ローラ5と2次転写バックアップローラ72との対向位置から延長される垂線を境にして2次転写ローラ5から遠ざかる位置が配置位置とされている。
【0034】
換言すれば、2次転写ローラ5と2次転写バックアップローラ72との対向位置を基端とした場合にテンションローラ74の位置を揺動端とすると、揺動端の位置が上記垂線よりも時計回りに移動した場合に相当する位置(図2においてθ>90°)に設定された状態とされ、2次転写ローラ5と2次転写バックアップローラ72と対向する位置での転写ニップの幅Sが垂線上に沿って転写ベルト11の展張面が位置する場合に比べて狭くなる関係とされている。
【0035】
本実施形態は以上のような構成を備えることにより、転写ニップの幅が小さくできる。これにより転写バイアスが印加された場合には、帯電量域が少なくなることで過剰な帯電状態が解消され、剥離放電などが起こりにくくなることで放電跡の発生が抑制されることになる。
【0036】
本発明者は、テンションローラ74の位置を上記垂線を境にしてθ≧90°の場合と、θ<90°の場合とで、転写画像でのピンホールの発生状況およびベタ画像形成時での転写再現性に関して実験したところ、図3に示す結果を得た。なお、図3に示す結果を得る際の転写バイアスは、ベタ画像の転写が可能な値が用いられる。また、図3においては、θの値が上記垂線を挟んで90°以上の場合にはベルト内側に向けた角度が表示され、90°以下の場合にはベルト外側に向けた角度がそれぞれ表示されている。
【0037】
図3の結果からも明らかなように、テンションローラ74の位置が上記垂線を境にして2次転写ローラ5から遠ざかる位置に設定される場合の方が、これとは逆の配置構成の場合に比べて転写画像の欠落およびベタ画像の転写性能がよいことが判る。この結果が得られる理由は、上述したように、転写ニップの幅が影響する過剰帯電現象が抑制されることにあり、さらに、過剰な帯電状態が起こらないことにより、ベタ画像の転写を行った場合でも過不足のないトナーの付着が得られる。
【0038】
一方、テンションローラ74により張力を負荷される転写ベルト11は、ポリイミド樹脂により構成されて体積抵抗率が7.5LogΩ・cm以上でかつ10.0LogΩ・cm以下に設定されている。これは、中間転写ベルト11での転写電流が流れやすくなることによる転写電流増大による電源のコストアップを防止することおよび、漏洩電流増加による転写電界形成が困難となるのを防止することが下限値の設定理由であり、上限値設定の理由は、ベルトでのチャージアップ(電位上昇)が起こりやすくなることで静電履歴による画像劣化を防止するためである。
【0039】
さらに、中間転写ベルト11を用いた2次転写を実行するために用いられる2次転写バックアップローラ72は、2次転写ローラ5とともに中間転写ベルト11を挟持して転写ニップを形成するための部材であり、その構成が図4に示されている。
【0040】
図4において2次転写バックアップローラ72は、(A)に示す従来構造のような金属などを用いた導電性基体72Aの表面にゴムなどの表面層72Bを配置した構成と違って、導電性基体72A、中間層72Cおよび表面層72Bを備えた3層構造に形成されている。
【0041】
2次転写バックアップローラ72は上記3層を構成する部材のうちで、表面層72Bおよび中間層72Cの特性として次の条件が設定されている。
表面層:摩擦係数≧0.3(オイラー法による)、かつ、表面抵抗変化量が0.4LogΩ以下
中間層:表面抵抗変化量が0.05LogΩ以上、かつ0.4LogΩ以下
である。
【0042】
表面層72Bでの摩擦係数は、転写ベルト11を移動させるため、あるいは転写ベルト11に追随して回転させるための摩擦力を生起させるに必要な条件であり、中間層72Cでの表面抵抗変化量は、その下限がピンホール放電跡の抑制のため、そして上限がチャージアップ(残留電位上昇)による転写性の劣化発生具合により決定される条件である。
【0043】
表面層72Bでの摩擦係数は、図5に示すように、オイラーベルト式(日本機械学会 機械工学便覧 基礎編A3力学・機械力学 P35(1986年発行))と称される測定方式によるものであり、この方式において例えば、重り(W)=100gを吊し、μ=In(F/100)/(π/2))で求める。
【0044】
また、中間層72Cでの表面抵抗変化量は、図6に示すように、導電性基体72Aの表面に中間層72Cを設け、中間層72Cへの電圧印加を継続しながら電流の変化を計測する。
【0045】
本発明者は、上記構成、特に、中間層72Cを設けた2次転写バックアップローラ72を用いてピンホール放電跡の発生状態を実験したところ、次の結果を得た。
この実験に用いた各部材の特性は次の通りである。
中間転写ベルト11:ポリイミド樹脂単層構造、80μm厚
2次転写ローラ5:導電性発泡ゴム製、外径φ17.5 軸芯φ12
2次転写バックアップローラ72
表面層72B:EPゴム、0.5mm厚、表面摩擦係数0.3以上
中間層72C:フッ素含有アクリル樹脂、20μm厚、(カーボン含有量で抵抗値調整)、外径φ17.75(アルミ中空ミツヤ管+中間層+表面層)
2次転写バイアスは、図7に示す模式図のように、定電流制御として2次転写バックアップローラ72に印加し、2次転写ローラ5の軸心を接地する。
ピンホール放電跡は、2次転写バイアスに依存性が流、2次転写バイアス電流が高いほど発生しやすい。そこで、2次転写電流を低減することでピンホール放電跡の発生が抑えられることになるが、逆にベタ画像の転写再現性がれかしてしまうことになるので、実際に2次転写電流を設定する場合には、ベタ画像の転写再現性とピンホール放電跡の解消とを両立させることができる電流が適正範囲ということになる。
【0046】
このような前提に基づき、2次転写バックアップローラ72に付加する中間層72Cの表面抵抗変化量、中間転写ベルト11の体積抵抗率および2次転写ローラ5の合成抵抗をパラメータとした場合の転写性評価結果は表1〜3に示す通りである。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
上記実験結果から、次に挙げる各部での抵抗範囲においてピンホール放電跡の解消とベタ画像の転写再現性確保とが両立できることが判明した。
中間層72Cの表面抵抗変化量:0.05〜0.4LogΩ
中間転写ベルト11の体積抵抗率:7.5〜10.0LogΩ・cm
2次転写ローラ5と2次転写バックアップローラ72との合成抵抗:6.5〜9.0LogΩ
次に、本実施形態における要部の変形例について説明する。
図8は、別の実施形態を説明するための図2相当の図であり、同図に示す形態は、2次転写バックアップローラ72を中間転写ベルト11の移動を司る駆動ローラとして用いることを特徴としている。
この構成においては、中間転写ベルト11の駆動ローラを敢えて設けることなく、張架用のローラを駆動ローラとして兼用させることでローラ本数の数を低減することができ、中間転写ベルトの占有スペースを小さくすることが可能となる。
【0051】
一方、中間転写ベルト11に張力を付加する機能を有したテンションローラ74は、中間転写ベルト11に対して密接した接触状態にあることから、中間転写ベルト11と連動関係を持たせることができる。このため本実施形態においては、テンションローラ74をエンコーダ検出用のローラとすることが可能である。この構成においては、中間転写ベルト11との接触関係が密な状態であるので、中間転写ベルト11の移動速度を検出しやすいことになり、テンションローラ74でのエンコード処理により中間転写ベルト11の移動制御の精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態による画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられる転写ベルトユニットの要部構成を示す図である。
【図3】図2に示した転写ベルトユニットを用いた場合のピンホール放電跡の発生とベタ画像の転写再現性とを実験した結果を示す表図である。
【図4】図2に示した転写ベルトユニットに用いられる2次転写バックアップローラの構成を説明するための図であり、(A)は従来構造を、(B)は本実施形態による構造をそれぞれ示している。
【図5】図2に示した転写ベルトユニットに用いられる2次転写バックアップローラの表面層に設定される摩擦係数の計測構造を説明するための図である。
【図6】図2に示した転写ベルトユニットに用いられる2次転写バックアップローラにおける中間層での抵抗変化量を計測するための構成を説明する図である。
【図7】図2に示した転写ベルトユニットに用いられる2次転写バックアップローラおよび2次転写ローラの合成抵抗を計測するための構成を説明するための図である。
【図8】図2に示した転写ベルトユニットの要部に関する変形例を説明するための図2相当の図である。
【符号の説明】
【0053】
5 2次転写ローラ
10 転写ベルトユニット
11 中間転写ベルト
72 2次転写バックアップローラ
72A 導電性基体
72B 表面層
72C 中間層
74 テンションローラ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラに掛け回されて移動可能なポリイミド製の転写ベルトと、該複数のローラの一つに対して上記転写ベルトを挟んで対峙する転写ローラとを有し、像担持体上に形成された可視像を記録媒体に転写する転写装置を備えた画像形成装置において、
上記複数のローラのうちで、上記転写ローラと対峙するローラは、少なくとも表面層、中間層および導電性基体の三層構造からなり、表面層および中間層が、
表面層:摩擦係数≧0.3(オイラー法による)、かつ、表面抵抗変化量が0.4LogΩ以下
中間層:表面抵抗変化量が0.05LogΩ以上、かつ0.4LogΩ以下
の特性を設定され、
上記複数のローラのうちで上記転写ローラと対峙するローラの近傍には、張力付加用のテンションローラが配置されており、該テンションローラは、上記転写ローラとこれに対峙するローラとの中心間を結ぶ直線に対して両ローラの対向位置から伸びる垂線を境にして、上記転写ローラから遠ざかる側に中心が位置決めされていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記転写ローラと対峙するローラは、上記転写ベルトの駆動ローラに相当させてあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記テンションローラは、上記転写ベルトの回転制御用エンコーダとして用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記転写ベルトは、堆積抵抗率が7.5LogΩ・cm以上、かつ、10.0LogΩ・cm以下に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記転写ローラおよびこれに対峙するローラの剛性抵抗が、6.5LogΩ・cm以上、かつ、9.0LogΩcm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−20508(P2008−20508A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190051(P2006−190051)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】