説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置に搭載されたHDD(ハードディスクドライブ)を振動から保護する。
【解決手段】画像形成装置10の画像形成に係る各部の動作から、制御部48の振動予測部105により、振動が発生するかを予測する。また、振動予測部105は、給紙トレイ18の操作、消耗品の交換などの保守作業中かを監視して、その後の振動発生を予測する。振動が発生する可能性がある場合、HDD50をアンロード制御またはHDD50の駆動モータのオフ制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取得した情報に基づき用紙上に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取得した情報に基づき用紙上に画像を形成する画像形成装置が知られている。情報は、例えば、コンピュータから出力されたデータ、電話回線等より取得されるファクシミリデータ、原稿を光学読み取り装置により読み取ったデータなどが含まれる。また、これらの機能の複数を実現できる画像形成装置も知られている。つまり、コンピュータの出力機器であるプリンタ、ファクシミリの送受信を行うファクシミリ機、原稿の複製を行うコピー機のうち少なくとも二つの装置を一体にした複合機と呼ばれる画像形成装置が知られている。
【0003】
これらの画像形成装置においては、取得した情報を記憶しておくハードディスクドライブ(以下、HDDと記す。)を搭載したものがある(下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−314318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HDDは振動に弱く、HDDにアクセス中に振動が加わると、正常に情報の読み書きができなくなる場合がある。本発明は、画像形成装置に搭載されたHDDの、振動による不具合を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、取得した情報に基づき用紙上に画像を形成する画像形成装置であって、記録媒体に対して情報の読み書きを行う記録ヘッドを有する記憶装置と、前記記憶装置が振動することを予測する振動予測手段と、振動の発生が予測されたとき、前記記憶装置の記録ヘッドを記録媒体から退避させる制御を行う制御部と、を有している。
【0007】
また、前記記憶装置はハードディスクドライブであってよく、制御部の記録ヘッドの退避制御は、記録ヘッドのアンロード制御またはハードディスクドライブの駆動モータのオフ制御であってよい。
【0008】
また、振動予測手段は、予測された振動が画像形成に係る処理に起因する振動か、それ以外の振動かを判定してよく、前記制御部は、予測された振動が、画像形成に係る処理に起因するものの場合、前記アンロード制御を行ってよく、前記それ以外の振動の場合、前記駆動モータのオフ制御を行ってよい。
【0009】
また、記録ヘッドの退避制御がなされた状態で、情報を取得する際に、取得する情報の記憶を行う半導体記憶装置を有してもよい。
【0010】
また、半導体記憶装置に記憶された情報は、記録ヘッドの退避制御が解除された後、ハードディスクドライブに移されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、記録媒体と記録ヘッドを備えた記憶装置に、振動が加わった際の、不具合が防止される。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、HDDに振動が加わった際の、不具合が防止される。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、振動の発生原因に対応した制御が行われる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、HDDへの情報の記録ができないときにも、情報が記録される。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、HDD以外の記憶装置に記録された情報がHDDに記録される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置10の外観を示す斜視図である。画像形成装置10は、原稿の画像を複写するコピー機、コンピュータ等から送られた原稿データを用紙上に印刷して出力するプリンタ、電話回線等の通信回線を介して受信した原稿データを用紙上に印刷して出力するファクシミリ機などの複数の機能を有する装置である。ここで、用紙とは、材質が紙であるものに限定されず、合成樹脂等のフィルムなど、薄く可撓性のある材料の印刷対象となる記録媒体全般を指す。
【0017】
画像形成装置10の上部には、原稿を読み取るスキャナ部12が設けられ、また、その一部には、操作者が画像形成装置10の操作を行うための操作パネル14が設けられている。本体16は、取得したデータに基づき画像形成を行う画像形成部を内蔵し、また、用紙を蓄え、画像形成部へと供給する用紙供給部を備える。用紙供給部は、用紙を蓄積する給紙トレイ18を含む。この画像形成装置10では、本体16の上部が、画像が形成されて排出された用紙が積み重ねられる排紙トレイ20となっている。また、本体16には、給紙トレイ18から画像形成部を通過して排紙トレイ20へ用紙を送る搬送機構が備えられている。給紙トレイ18は、本体16から引き出すことができ、この状態で用紙をトレイ上に積み置き、トレイを押し込んで用紙の補給がなされる。画像形成装置10の正面には、保守作業ドア22が配置され、このドアを開いて、本体16内部の消耗品の交換、紙詰まりなどの対応が行われる。保守作業ドア22は、装置正面に限らず、必要に応じて他の面に設けられてもよい。また、保守作業ドアは、一辺に設けられたヒンジを軸に回動して開閉する所謂ドア以外にも、本体16の外面のパネル部材の一部がスライド等の移動をして本体内部を開放する部材であってよい。
【0018】
図2は、画像形成装置10の内部の概略構成を示す図である。画像形成部24は、ロータリ現像機26、感光体ドラム28、転写ベルト30を含む。ロータリ現像機26は、4色の現像部32を有している。各色の現像部32には、トナーが収容されるカートリッジ34が着脱可能に装着されている。4色は、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)である。図においては、各色に対応した要素を符号32,34にC,M,Y,Kを付して示している。色を特定する必要がないときには、単に符号32,34を用いて説明する。ロータリ現像機26は、駆動モータ(不図示)により回転駆動される。この回転により、所望の色の現像部32が感光体ドラムに対向する位置に位置決めされる。感光体ドラム28は、転写ベルト30にも対向しており、ここで感光体ドラム上のトナー画像が転写ベルト30に転写される。転写ベルト30は、その一部が、用紙搬送機構36の用紙搬送路38とも対向している。ここで、転写ベルト30上のトナー画像が用紙上に転写される。
【0019】
用紙供給部40は、前述のように給紙トレイ18を含むと共に、用紙を用紙搬送路38に送り出す給紙機構42を含む。給紙機構42は、積み置かれた用紙の端を持ち上げるリフト板44、最上部の用紙を用紙搬送路に送り出す給紙ローラ46を含む。リフト板44は、給紙トレイ18が本体16より引き出された状態では最も下の位置にあり、給紙トレイが押し込まれると、ばね(不図示)等の力により先端(図中左端)が上昇し、積み置かれた用紙を持ち上げて、給紙ローラ46に接触させる。
【0020】
さらに、画像形成装置10は、装置各部の動作の制御を行う制御部48、HDD50を備えている。HDD50は、スキャナ部12により取得された画像に関するデータ、ファクシミリにより受信された画像に関するデータなどを、一時的に記憶する。また、ユーザの固有の設定値等を記憶してもよい。さらに、画像形成装置10は、半導体メモリ52が設けられている。半導体メモリ52は、HDD50にアクセスできないときに、受け取ったデータを記憶するのに用いられる記憶装置である。
【0021】
画像形成に係る動作は、次のようになる。形成対象となる画像データがHDD50に記憶される。この画像データに基づき、露光部54からのビームにより感光体ドラム28が走査され、ドラム上の不要な部分の電荷が除去されて潜像が形成される。ロータリ現像機26の所定の色の現像部32を感光体ドラム28と対向させ、潜像が現像部32のトナーにより現像されて、感光体ドラム28上にトナー画像が形成される。これを転写ベルト30上に転写する。多色画像の場合は、各色について潜像形成、トナーによる現像、トナー画像の転写ベルトへの転写を繰り返し、転写ベルト30上に順次各色のトナー画像が形成され、ここで、多色のトナー画像が形成される。転写ベルト30上にトナー画像が形成されたタイミングで、用紙を搬送し、転写ベルト30から用紙にトナー画像が転写される。用紙上のトナー画像に対し、定着部(不図示)にて加熱、加圧が行われ、トナーが用紙に定着する。そして、用紙が排紙トレイ20に排出される。
【0022】
図3は、画像形成装置10の制御系に係るシステム構成を示す図である。前述の制御部48は、CPU(中央処理装置)101、スキャナI/F(スキャナインターフェイス)102、プリント処理部103、ファクシミリ通信部104、振動予測部105、動作制御部107、HDD制御部108を含む。この制御部48に、前述したHDD50および半導体メモリ52が接続されている。スキャナI/F102は、スキャナ部12との情報の授受を行う。プリント処理部103は、コンピュータ等の外部の機器からの印刷ジョブを解析して、印刷のための画像データを作成する。また、ファクシミリ通信部は、電話回線等の通信回線と接続され、受信されたファクシミリデータに基づき画像データを作成する。動作制御部107は、画像形成装置10の各部、例えば画像形成部24や用紙搬送機構36等の動作の制御を行う。HDD制御部108は、HDD50の動作の制御を行う。
【0023】
振動予測部105は、画像形成装置10の動作に基づき、その後発生する振動の予測を行う。例えば、給紙トレイ18から用紙搬送路38に用紙を送り出すとき、また現像する色を変えるためにロータリ現像機26が回転するときに発生する振動を予測する。用紙の送り出しのタイミング、ロータリ現像機26が回転するタイミングなどは、画像形成にかかる各部の動作が制御部48により制御されているため、前もって知ることができ、これらの動作に起因して生じる装置の振動は予測することができる。
【0024】
また、操作者の操作に起因して振動が生じる場合がある。例えば、給紙トレイ18の出し入れ、トナーのカートリッジ34の交換や紙詰まりの際の保守作業ドア22の開閉、また詰まった用紙の取り出しなどの際にも振動が生じる。これらの振動も、その発生を予測しえる。給紙トレイ18の出し入れに伴う振動は、給紙トレイ18が引き出された状態にある場合、その後トレイが押し入れられて、発生すると予測される。これは、給紙トレイ18が押し込まれた正規の位置にあることを検知するトレイセンサの出力に基づき、予測する。トレイセンサにより、給紙トレイ18が引き出されたことが検知されると、次に、トレイが押し入れられ、そのときに振動が発生することが予測される。給紙トレイ18が正規の位置に戻れば、振動はもう発生しない。また、カートリッジ34を交換する際や、紙詰まりの対応においては、保守作業ドア22が開閉される。この開閉をセンサにより検知することで、振動の発生を予測する。保守作業ドア22が開いている間は、カートリッジ34の装着時の振動、詰まった用紙を引き抜くことによる振動等が発生する可能性がある。また、保守作業ドア22を閉めるときにも振動が発生する可能性がある。保守作業ドア22を閉めた後には、これらの振動は発生しない。振動予測部105は、上記の各センサにより、給紙トレイおよび保守作業ドアの開閉状態を検出し、振動の発生を予測する。
【0025】
上記の振動により、HDD50がアクセスエラーを起こすことがある。そこで、画像形成装置10においては、振動の発生が予測される期間、HDD50を、その記録ヘッドが、ディスク面から退避したアンロード状態に制御するか、またはHDD50の駆動モータをオフに制御する。駆動モータをオフ制御すると、記録ヘッドもディスク面より退避する。この制御は、HDD制御部108が実行する。
【0026】
前述の画像形成装置10の画像形成動作に起因する振動は、発生するタイミング、振動の大きさに関し予測の精度が良い。したがって、HDD50の振動対応に係る制御は、短期間でよく、また直ちに動作状態に復帰できることが望ましい。このため、記録ヘッドをアンロード状態とする振動対応が実行される。画像形成動作による振動以外の要因は、人為的な要因であり、これは画像形成動作による振動の場合に比べ、振動発生のタイミング、その大きさに関する予測の精度が悪い。例えば、給紙トレイ18が引き出されていれば、この後、いつかはトレイが押し入れられ振動が発生することが予測されるが、それが何時なのかの予測は難しい。また、給紙トレイ18の入れ方も、まちまちであり、発生する振動の大きさもまちまちである。したがって、この場合は、HDD50の振動対応として、駆動モータをオフに制御する。なお、人為的な要因による場合であっても、振動発生が予測される状態が継続している時間が所定時間内であれば、記録ヘッドのアンロード制御を行い、所定時間を超えるとモータをオフする制御としてもよい。さらに、人為的要因による場合において、アンロード制御しているときに、HDD50のアクセス要求がなされた場合、一旦記録ヘッドをロード状態とし、処理終了後直ちにアンロードするように制御してもよい。
【0027】
図4は、HDD50の振動対応に係る制御に関するフローチャートである。画像形成装置10の電源がオンの状態(201)で、HDD50がアクセス状態か監視される(202)。これは、HDDの記録ヘッドがディスクの記録面に対向する位置にあるかを監視するものである。他のコマンドにより記録ヘッドがディスク記録面より退避していれば、以下の制御を行う必要はない。HDD50の状態は、HDD制御部108のコマンドに基づき判断する。
【0028】
HDD50がアクセス状態にあると、振動発生の予測を行う(203)。振動の発生の予測は、前述のように、画像形成過程の各部の動作、また給紙トレイ18の引き出し動作、保守作業ドア22の開放などに基づき行われる。画像形成に係る各部の動作は、動作制御部107の送出するコマンド等に基づき検出する。また、給紙トレイ18、保守作業ドア22の動きは、それぞれに備えられたセンサの出力に基づき検出する。振動が発生すると予測される場合、その振動は短期間の内に発生するもの、すなわち画像形成処理における各部の動作に起因するものであるかが判断される(204)。
【0029】
短期間の内に発生するものであれば、HDD50の記録ヘッドをアンロードする制御をHDD制御部108が実行する(205)。そして、実際に振動の発生する可能性がなくなったかが監視される(206)。つまり、画像形成の各部の動作で、振動を発生させる動作が終了したかが判断される。まだ、振動が生じる可能性がある時に、HDD50にアクセス要求があった場合(301(図5参照))、HDD50への記録に替えて、図5に示すように半導体メモリ52に記録を行う(302)。図4に戻り、振動が生じる可能性がなくなると、HDD50の記録ヘッドをロード状態とする(207)。
【0030】
ステップの204で、短期間内に発生する振動ではないと判断されると、HDD50のモータを停止する制御をHDD制御部108が実行する(208)。そして、実際に振動の発生する可能性がなくなったかが監視される(209)。振動が発生する可能性がある状況で、ファクシミリが受信されると(401(図6参照))、HDD50への記録に替えて、図6に示すように、半導体メモリ52にそのデータの記録を行う(402)。ファクシミリは、何時送信されてくるか予測がつかず、保守作業等の間にも受信する可能性がある。このとき、半導体メモリ52に記録することにより、受信エラーを防止する。振動が発生する可能性がなくなれば、HDD50のモータをオンとする(210)。
【0031】
HDD50がアクセス状態に復帰すると、半導体メモリ52に退避されたデータがあるかが判断され(211)、データがあれば、このデータをHDD50に移動させる(221)。以下、これを繰り返す。
【0032】
本実施形態においては、ロータリ現像機を有する画像形成装置を示したが、各色の現像機が転写ベルト等の転写体に常に対向しているよう固定された形式、例えばタンデム式現像機を備えた画像形成装置、また単色の画像形成装置にも本発明を適用してよい。また、振動から保護すべき記憶装置としてHDDを示したが、記録媒体と記録ヘッドが相対的に運動し、媒体に順次データの読み書きを行う装置であれば、本発明を適用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】画像形成装置10の外観を示す斜視図である。
【図2】画像形成装置10の内部の概略構成を示す図である。
【図3】画像形成装置10の制御系に係るシステム構成を示す図である。
【図4】画像形成装置10の動作を示すフローチャートである。
【図5】画像形成装置10の動作を示すフローチャートである。
【図6】画像形成装置10の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
10 画像形成装置、12 スキャナ部、16 本体、18 給紙トレイ、22 保守作業ドア、24 画像形成部、26 ロータリ現像機、28 感光体ドラム、30 転写ベルト、32 現像部、34 カートリッジ、36 用紙搬送機構、38 用紙搬送路、40 用紙供給部、42 給紙機構、48 制御部、50 HDD(ハードディスクドライブ)、52 半導体メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得した情報に基づき用紙上に画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体に対して情報の読み書きを行う記録ヘッドを有する記憶装置と、
前記記憶装置が振動することを予測する振動予測手段と、
振動の発生が予測されたとき、前記記憶装置の記録ヘッドを記録媒体から退避させる制御を行う制御部と、
を有する、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記記憶装置はハードディスクドライブであり、
制御部の記録ヘッドの退避制御は、記録ヘッドのアンロード制御またはハードディスクドライブの駆動モータのオフ制御である、
画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
振動予測手段は、予測された振動が、画像形成に係る処理に起因する振動か、それ以外の振動かを判定し、
前記制御部は、予測された振動が、画像形成に係る処理に起因するものの場合、前記アンロード制御を行い、前記それ以外の振動の場合、前記駆動モータのオフ制御を行う、
画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、記録ヘッドの退避制御がなされた状態で、情報を取得する際に、その取得する情報の記憶を行う半導体記憶装置を有する、画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置であって、半導体記憶装置に記憶された情報は、記録ヘッドの退避制御が解除された後、ハードディスクドライブに移される、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−117931(P2009−117931A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285754(P2007−285754)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】