説明

画像形成装置

【課題】無駄な電力の消費を抑制し、且つ簡易な構成でありながら、トナー画像の良好な永久定着を可能とした定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱源としてハロゲンランプ122を有したヒートローラ12とプレスローラとにより、記録紙20をニップ搬送し、記録紙に転写されたトナー画像を定着させる定着装置を備え、前記ハロゲンランプは、ランプ管123内に設けられた一本の発熱用導線127上に複数のフィラメント124を直列に接続して構成されるとともに、ニップ搬送される記録紙の通過領域に応じた所定の位置から、ランプ管外に設けられたスイッチ回路130に接続される接続用導線129を導出して構成されており、前記記録紙の紙幅通知信号により、通過領域を判別する通過領域判別手段と、該通過領域判別手段が判別した通過領域が加熱されるよう前記スイッチ回路を制御するスイッチ回路切替手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、プリンタ或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置に関する。更に詳しくは、加熱源としてハロゲンランプを有したヒートローラとプレスローラとにより、記録紙をニップ搬送し、記録紙に転写されたトナー画像を定着させる定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像形成装置としては、記録紙カセット等を備えた記録紙供給部から、1枚ずつ記録紙を繰出し、記録紙搬送路の途中に設置された搬送ローラ対(レジストローラ対等)を経て電子写真記録部で画像記録を行うものが挙げられる。この場合、電子写真記録部を構成する感光体ドラム及び転写ローラのニップ部に搬送及び供給された記録紙に、感光体ドラム表面のトナー画像が転写される。そして、トナー画像が転写された記録紙が、ヒートローラとプレスローラとのニップ部に搬送され加熱及び加圧されて、トナー画像が記録紙に永久画像として定着され、その後排出させるよう構成されている。
【0003】
定着装置におけるヒートローラは、その表面がトナー画像の定着に必要な温度にまで上昇させる立ち上がり時間(ウォームアップタイム)が短いこと、その表面温度が均一に加熱されること、及びヒートローラの表面温度の制御が容易であることが求められる。また近年は、装置全体の小型化及び省電力化の要請に応えたものが求められている。
【0004】
下記特許文献1には、ヒートローラの加熱源として、発熱分布(配熱分布)及び発熱量の異なる2本のハロゲンランプを用いた定着装置が開示されている。該定着装置は、ウォームアップ時に、所定の幅の転写材の通過領域外の領域を加熱するよう設定されているハロゲンランプへの電力供給量を可変電圧電源によって通常よりも高くし、発熱量を上げる制御を行うよう構成されている。よって、これによれば、ウォームアップ時には、可変電圧電源をアイドリングやコピーの場合より高い電圧に制御することにより、ヒートローラのウォームアップタイムを短くできるとされている。
【0005】
また、下記特許文献2にも、発熱分布及び発熱量の異なる2本のハロゲンランプが用いられた定着装置が記載されている。これによれば、単位長さ当たりの発熱量の最大値の約50パーセントとなる加熱部位が重複しないようハロゲンランプの加熱温度を制御することにより、ヒートローラ(加熱ローラ)の表面温度が略均一にできるとされている。
【0006】
更に、下記特許文献3には、一本のハロゲンランプのランプ管内に、軸方向の発熱量分布が互いに異なる第1のフィラメント連続体及び第2のフィラメント連続体で構成された定着装置を備えた画像形成装置が記載されている。これによれば、記録紙(記録体)の印刷幅に応じて、第1、第2のフィラメント連続体の少なくとも一方を選択して発熱させているので、印刷幅外となる領域が無駄に加熱されることがないとされている。
【特許文献1】特開2001−109322号公報
【特許文献2】特開2001−154521号公報
【特許文献3】特開2004−020717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、まず上記特許文献1や上記特許文献2で提案されているものは、ヒートローラ内に2本のハロゲンランプを設ける必要があるので、ハロゲンランプを設置する位置や2本のハロゲンランプの設置間隔など、ヒートローラの製造において難しい面があった。また2本のハロゲンランプを収容するためにヒートローラが大型化する傾向があり、小型化の要請に応えたものとはいえなかった。更に上記特許文献2に記載のものは、トナー画像を定着させる記録紙の紙幅に関係なく、記録紙の通過領域以外も常時加熱されるものであるから、無駄な電力を消費し、省電力化の要請に応えたものではなかった。
【0008】
上記特許文献3に記載されているものは、ヒートローラの加熱源が1本のハロゲンランプで構成されているものではあるが、ランプ管内には、発熱分布及び発熱量が異なる2本のフィラメント連続体を設ける必要がある。よってハロゲンランプのランプ管は、2本に並列に構成されたフィラメント連続体が収容できる径を有し、第1、第2のフィラメント連続体の両端部にはそれぞれ外部リードと接続される接続部を備える必要があった。また、この仕様に応じた専用のランプ管を用意する必要があるため、コストアップの懸念がある。更にヒートローラ内に、ハロゲンランプを組み付けることが容易であるとはいえ、ランプ管内の夫々のフィラメント連続体を構成するフィラメントは発熱量の分布が異なるものであるため、部品構成が複雑となり、この点を考えても、依然としてコストアップの懸念があるものであった。
【0009】
本発明は、前記問題を解決するために提案されたもので、その目的は、無駄な電力の消費を抑制し、且つ簡易な構成でありながら、トナー画像の良好な永久定着を可能とした定着装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、加熱源としてハロゲンランプを有したヒートローラとプレスローラとにより、記録紙をニップ搬送し、記録紙に転写されたトナー画像を定着させる定着装置を備えたものであって、前記ハロゲンランプは、ランプ管内に設けられた1本の発熱用導線上に複数のフィラメントを直列に接続して構成されるとともに、ニップ搬送される記録紙の通過領域に応じた所定の位置から、ランプ管外に設けられたスイッチ回路に接続される接続用導線を導出して構成されており、前記記録紙の紙幅通知信号により、通過領域を判別する通過領域判別手段と、該通過領域判別手段が判別した通過領域が加熱されるよう前記スイッチ回路を制御するスイッチ回路切替手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、スイッチ回路は、前記ハロゲンランプに設けられたすべてのフィラメントを導通させる第1の導通接点と、前記ハロゲンランプに設けられた一部のフィラメントを導通させる第2の導通接点とを備え、前記スイッチ回路切替手段は、前記通過領域判別手段の判別結果に応じて、第1の導通接点或いは第2の導通接点のいずれかと導通するよう切替えを行うものとしてもよい。
また、スイッチ回路切替手段は、前記通過領域判別手段によって、記録紙の紙幅が大と判別された場合は、第1の導通接点と導通するよう切替えを行い、前記通過領域判別手段によって、記録紙の紙幅が小と判別された場合は、第2の導通接点と導通するよう切替えを行うものとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る画像形成装置における定着装置のヒートローラは、ハロゲンランプのランプ管内に設けられた1本の発熱用導線上に、複数のフィラメントを直列に接続して構成されている。これによれば、ヒートローラ内の径方向の中央に1本のハロゲンランプを設ければよいので、定着装置が大型化してしまう懸念がない。また加熱源となるハロゲンランプから、ニップ搬送されてくる記録紙までの距離を等しい距離にできる。よって特別に熱の伝達効率の制御を行う必要がなく、ヒートローラの表面を均一に加熱することができ、記録紙に転写されたトナー画像を良好に永久定着することができる。更に1本の発熱用導線上に複数のフィラメントを直列に接続して構成されているので、部品構成が簡易でコストアップの懸念がない。
そして通過領域判別手段の判別結果に応じて、通過領域判別手段が判別した通過領域が加熱されるよう前記スイッチ回路を制御するスイッチ回路切替手段を備えているので、記録紙の通過領域外を無駄に加熱することがなく、省電力化を図ることができる。
本発明に係る画像形成装置における定着装置は、第1の導通接点と導通すれば、すべてのフィラメントが導通するので、紙幅の大きい記録紙に転写されたトナー画像を良好に記録紙に定着させることができる。また第2の導通接点と導通すれば、一部のフィラメントが導通するので、紙幅の小さい記録紙に転写されたトナー画像も無駄な電力を消費することなく、良好に記録紙にトナー画像を定着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る定着装置が適用される画像形成装置の一例を示す概略縦断面図、図2は同画像形成装置における定着装置の要部の拡大図、図3は同定着装置に備えた制御ブロック図、図4、図5は同定着装置におけるハロゲンランプの構成を電気回路図で示した図、図6は同定着装置のハロゲンランプへの給電制御のフローチャート図、図7、図8は第2の実施形態に係る定着装置におけるハロゲンランプの構成を電気回路図で示した図である。
【0014】
図1の画像形成装置1は、電子写真方式の記録部を備えたプリンタを例に採って示しているが、これに限らず、画像読取装置を備えた複写機或いはこれらの機能を兼ね備えた所謂複合機等であっても良い。図において、画像形成装置1の装置本体10は、記録紙の記録紙供給部2と、電子写真方式の画像記録部3と、記録後の記録紙の排出部4とが、この順序で高さ方向に積み重なるように構成されている。
【0015】
記録紙の記録紙供給部2は、記録紙供給カセット21と、セパレートローラ22と、分離パッド23と、押上板24と、圧縮コイルばね25と、エンドガイド26とよりなる。記録紙供給カセット21は、多数枚の記録紙20を堆積状態で収納し得、抜差し可能に構成されており、図では、該記録紙供給カセット21が上段と下段の2段に構成されたものを示している。記録紙供給カセット21には、夫々にサイズの異なる記録紙が収納されている。尚、本実施形態では、上段の記録紙供給カセット21にはJIS A列4番(以下、A4という)の記録紙20が、下段の記録紙供給カセット21にはJIS B列4番(以下、B4という)の記録紙20が収納されている場合を想定して説明する。しかしながら、記録紙20のサイズは、これらに限定されるものではない。
【0016】
セパレートローラ22は、該記録紙供給カセット21の前端部に設置されており、分離パッド23は、該セパレートローラ22の周面に弾性的に接するよう設けられている。記録紙供給カセット21内には、堆積された記録紙20を押し上げる押上板24が設けられている。押上板24は、圧縮コイルばね25によって常時上向きの弾力が付与され、押上板24上に堆積された記録紙20の前端部が、セパレートローラ22の周面に押し当てられる。エンドガイド26は、堆積された記録紙20が記録紙供給カセット21から記録紙搬送路6へとスムーズに繰出されるよう記録紙20の後端に位置する箇所に設けられている。エンドガイド26は、記録紙供給カセット21内に収容される記録紙20の用紙サイズに応じてスライドして動かせるよう可動式になっている。記録紙供給カセット21には、搬送路6に供給される記録紙20の紙幅を検知する紙幅検知センサ100が設けられている。図1に示す紙幅検知センサ100は概念的に示したものであり、これが設けられる位置は図示に限定されるものではない。紙幅検知センサ100は、例えば記録紙20がフィラー上に載置されるとフィラーが押し下げられてオンとなり、記録紙20がフィラー上にない場合はオフとなる公知のフィラー式光電センサを用いることができる。この場合は、装置本体1に供給される記録紙20の少なくともA4或いは、B4の紙幅が検知できるよう記録紙供給カセット21内の夫々に1個以上設けられている。
セパレートローラ22が回転することにより、該セパレートローラ22と分離パッド23との協働作用によって、堆積された記録紙20がその最上層部より1枚ずつ分離され、後記する記録紙搬送路6に向け繰出される。
尚、記録紙供給カセット21は、2段式のものに限定されるものではなく、また、上記分離パッド23に代えリタードローラとすることも可能である。また紙幅検知センサ100の構成も上述のように限定されるものではなく、赤外線センサなどを用いることもできる。更には紙幅検知センサ100としては、記録紙供給カセット21の挿入方向の奥側に設けた凸部と装置本体10に設けた凹部とが嵌合することにより電気的に接続されて記録紙供給カセット21内に収容される記録紙20の紙幅(用紙サイズ)を検知するものとしてもよい。
【0017】
画像記録部3は、感光体ドラム30の周囲に、プラス(或いはマイナス)帯電方式の帯電器31、LED等からなる露光器32、現像装置33、転写ローラ34及びクリーニング装置35をこの順序で配したプロセス部と、その下流側の定着装置11とより構成される。感光体ドラム30、帯電器31及びクリーニング装置35はドラムユニットとしてユニット化され、また現像装置33は現像器ユニットとしてユニット化され、各ユニットは装置本体10に対して個々に、或いは結合された状態で着脱可能に装着される。これら各ユニットは、図1における紙面の垂直方向に抜差し可能とされている場合の他、装置本体10の上方に取出し可能とされる場合、或いは装置本体10の他の側部より抜差し可能とされる場合もある。
【0018】
定着装置11の下流側には、切替ゲート41、排出ローラ対42及び排出トレイ43が設けられ、これらによって記録紙の排出部4が構成される。上記プロセス部の上流側近傍には、レジストローラ対5が設置され、上記記録紙供給カセット21から、セパレートローラ22及び分離パッド23の作用により1枚ずつ分離され繰出された記録紙20は、該レジストローラ対5によりレジストされて、前記感光体ドラム30と転写ローラ34とのニップ部に導入される。感光体ドラム30は、図1の矢印方向に回転しながら、帯電器31によりその表面が一様にプラス帯電(或いはマイナス帯電)され、画像情報に基づく光学画像が露光器32によって感光体ドラム30の表面に照射され、感光体ドラム30の表面には静電潜像が形成される。この静電潜像は、感光体ドラム30の表面の光導電体の特性に基づき、光の照射部分と非照射部分で生じる電位の差により形成されるものである。
【0019】
上記静電潜像は、現像装置33で逐次現像されてトナー画像とされ、このトナー画像は感光体ドラム30の回転に伴い、転写ローラ34とのニップ部に至る。上記レジストローラ対5は、感光体ドラム30の表面におけるトナー画像の移動に同期して記録紙20が上記ニップ部に導入されるようレジスト制御されて回転駆動される。転写ローラ34は、感光体ドラム30に接し且つ矢印方向(感光体ドラム30とウイズ方向)に回転駆動されながら記録紙をニップして搬送し、この間感光体ドラム30の表面のトナー像が記録紙に転写される。トナー像が転写された記録紙20は、定着装置11に導入され、永久画像として定着された後、切替ゲート41を押し上げ、排出ローラ対42を経て排出トレイ43上に排出される。この一連の記録紙20の搬送は、記録紙供給カセット21からの繰出し直後に略垂直(鉛直)に立ち上がり、排出ローラ対42では記録紙供給カセット21からの繰出し方向とは略180度の方向にUターンするような記録紙搬送路(以下、主搬送路と言う)6に沿ってなされ、記録紙20は主搬送パスライン201を描いて排出トレイ43に排出される。このようなレイアウト構成により、装置全体のコンパクト化が図られる。尚、定着装置11の構成については、後に更に詳述する。
【0020】
現像装置33は、2成分現像剤を用いる方式の現像器であって、樹脂成型されたケーシングの内部にトナーとキャリアからなる現像剤を貯留する現像剤貯留室を備えている。該貯留室内には、2本の攪拌搬送スクリュー331と、供給ローラ332と、バイアス印加される現像ローラ333とが設けられている。貯留室内のこれら機構部331,332,333は、現像装置33を装置本体10内の所定部位に装着した際、装置本体10内の駆動伝達機構(不図示)に連結され、その回転駆動が可能な状態とされる。また、現像ローラ333は、バイアス印加電源(不図示)に電気的に接続される。現像剤貯留室から離間した位置には、トナータンク334及びトナーホッパー335が設置され、現像剤貯留室内のトナー濃度が低下すれば、トナーホッパー335よりスクリューコンベア(パイプスクリュー)336を介してトナーが現像剤貯留室内に補給される。トナータンク334は廃トナータンク337と一体とされて、装置本体10に対して着脱可能に装着されるトナーカートリッジ330として構成されている。前記クリーニング装置35で感光体ドラム30の表面より除去された転写残トナーは、スクリュー338を介して廃トナータンク337に回収される。
尚、現像装置33としては、2成分現像剤を用いる方式のものに限らず、一成分方式、その他の方式のものも採用可能である。
【0021】
図例の画像形成装置1は、両面記録機能を備えている。上記主搬送路6の切替ゲート41の取付け位置から、前記レジストローラ対5の上流側で上記主搬送路6に循環して合流する反転記録紙搬送路(以下、反転搬送路と言う)7が形成されている。この反転搬送路7に沿って2対の搬送ローラ対71,72が設けられている。片面記録がされ主搬送路6に沿って搬送された記録紙20は、その後端が排出ローラ対42に至ると、該排出ローラ対42の逆転により反転搬送路7に供給される。反転搬送路7に供給された記録紙20は、引き続き、搬送ローラ対71,72によって反転搬送路7に沿って搬送され、反転搬送パスライン202を描いて主搬送路6に合流し、レジストローラ対5に至る。その後、再度感光体ドラム30と転写ローラ34とのニップ部に導入されてその裏面の記録がなされる。両面記録された記録紙20は、上記同様主搬送路6に沿って排出トレイ43上に排出される。図中、6´は下段の記録紙供給カセット21からの記録紙の搬送路を示しており、主搬送路6の一部を構成するものである。よって下段の記録紙供給カセット21から繰出された記録紙20は搬送路6´を通過し、主搬送路6に至る。
【0022】
また、装置本体の側面には手差し供給トレイ80が開閉自在に設けられている。この手差し供給トレイ80にセットされた記録紙20は、セパレートローラ81と分離パッド82との作用により1枚ずつ分離されて装置本体10内に供給される。これらにより手差記録紙供給部8が構成される。分離及び供給された記録紙20は、手差記録紙搬送路(以下、手差搬送路と言う)9を経て、手差搬送パスライン203を描き主搬送路6に合流し、レジストローラ対5によって感光体ドラム30と転写ローラ34のニップ部に導入される。従って、手差記録紙20に対して、上記同様に画像情報に基づく記録がなされる。
【0023】
次に、本実施形態に係る定着装置11について図2に基づいて詳説する。
定着装置11は、上述のドラムユニット(図1参照)の下流側に配設され、樹脂成型された定着装置ハウジング110内に、互いに接するように設けられたヒートローラ12とプレスローラ13とを備えている。
定着装置ハウジング110の記録紙搬送方向上流側(紙面下方)には、主搬送路6に沿って搬送される記録紙20を受入れる上流側開口111が開設され、記録紙20の搬送方向の下流側(紙面上方)には、トナー画像が定着された記録紙20を排出部4に向けて排出する下流側開口112が開設されている。
装置本体10に装着された状態で定着装置11は、図1に示すように、ヒートローラ12とプレスローラ13とのニップ部14が主搬送路6に沿うように配置される。
【0024】
また、定着装置ハウジング110には、搬送される記録紙20をヒートローラ12から剥離するための剥離爪113と記録紙20の搬送をガイドするガイドリブ114がローラ軸方向に沿って複数箇所に配設されている。剥離爪113は、その基端部が軸支されて揺動自在に構成され、トーションバネなどにより常にヒートローラ12の外表面に、その先端が接するように支持されている。
【0025】
ヒートローラ12は、中空に成型されたアルミニウム円筒121と、そのアルミニウム円筒121の内部に収容した熱源としてのハロゲンランプ122とで構成されている。
アルミニウム円筒121は、記録紙20通過領域の外周面にフッ素系樹脂のコーティング層(不図示)が形成され、その両端部の非通過領域外周面には、アルミニウムが露出して導電面(不図示)が形成されている。
ハロゲンランプ122への給電制御は、後記する記録紙20の通過領域に応じた制御がなされるの他、上記温度センサ15から出力された計測温度に基づいて、外表面が所定の定着温度に維持されるようにハロゲンランプ122への通電(ON/OFF)の制御もなされる。
【0026】
プレスローラ13は、鉄鋼材等の金属材料で形成されたプレスローラ軸130と、該プレスローラ軸130に外装された円筒状弾性部材131とからなる。円筒状弾性部材131は、シリコーン、ウレタン等のゴム体或いはスポンジ体からなり、プレスローラ軸130に接着剤等を介して固着されている。
プレスローラ軸130は、その両端が軸受体17により回転自在に支持され、定着装置ハウジング110に対してスライド自在に設けられており、定着装置ハウジング110に固定されたコイルバネ等からなるローラ支持部16により支持されている。
このローラ支持部16により、プレスローラ13は、ヒートローラ12に向けて接して設けられ、ニップ部14が形成されている。
【0027】
次に、図3乃至図6に基づいて、第1の実施形態に係るヒートローラ12の構成と、ヒートローラ12の加熱源であるハロゲンランプ122への給電制御について詳説する。図4、図5は、定着時の記録紙20の合わせ位置がヒートローラ12の中央で合わせる例を示している。またここでは、記録紙供給カセット21に収納されたA4とB4の紙幅に応じて給電が制御される例について説明する。
上述のとおり、ヒートローラ12は、中空に成型されたアルミニウム円筒121と、そのアルミニウム円筒121の内部に収容した熱源としてのハロゲンランプ122とで構成されている。アルミニウム円筒121は、その両端がベアリング(不図示)等で定着装置ハウジング110内に回転自在に支持されており、ギア(不図示)が取付けられ、モータ等の駆動手段(不図示)により駆動されて、回転駆動がなされる。そしてヒートローラ12の回転駆動により、プレスローラ13が従動回転して、ニップ部14に導入された記録紙20をニップして搬送され、ニップ部14を記録紙20が通過する間に、転写されたトナー画像が熱により定着される。
【0028】
ハロゲンランプ122は、ガラス等で構成される細長のランプ管123と、フィラメント(電熱線)124と、フィラメント124へ電力を供給する電源126とからなる。
ランプ管123内には、1本の発熱用導線127上に複数のフィラメント124が直列に接続されて構成されている。図4及び図5の例では説明のため、発熱用導線127上に発熱量を同じくするフィラメント124を4つ構成し、図中ではそのフィラメント124を抵抗として示している。またフィラメント124の発熱量は、各々が異なるものとしてもよいが、発熱分布は、後記するように記録紙20の通過領域に応じて制御できるので、同じ発熱量のものを用いることができる。これによればフィラメント124の発熱量を同じくしたものを用いることができるので、フィラメント124の取付けまちがいが生じることがなく、ハロゲンランプ122のフィラメント124を簡易に構成することができる。
また図4及び図5に示すスイッチ回路130の2点鎖線は、スイッチ回路130がオフになっている状態を示しており、この状態では、ハロゲンランプ122のフィラメント124は導通せずオフの状態となる。
【0029】
ニップ搬送される記録紙20の通過領域に応じた所定の位置からは、ランプ管123外に設けられたスイッチ回路130に接続される接続用導線129が導出されている。ランプ管123の表面には、接続用導線129を導出させるための孔部128が2箇所形成されている。孔部128は接続用導線129が通る程度の孔を溶融などして形成し、その孔部128に接続用導線129を通して、ランプ管123外に設けられたスイッチ回路130と電気的に接続する。該孔部128は、孔内に接続用導線129を通した後、ランプ管123内に充填されるハロゲンガスが漏れることがないよう密閉状態とする。
【0030】
スイッチ回路130は、2箇所の孔部128から導出された2本の接続用導線129の夫々を電源126と電気的に接続できるよう2つ設けられ、発熱用導線127の端部に設けられた接合部125を介して導線132とも電気的に接続されている。スイッチ回路130は第1の導通接点1301と第2の導通接点1302とを備えており、記録紙20の通過領域に応じて発熱幅が切替えられる。第1の導通接点1301と導通することにより、電源126はスイッチ回路130を介して導線132を通じ、接合部125を介して発熱用導線127に接続されているすべてのフィラメント124に給電を行う。そして、すべてのフィラメント124が発熱し、ヒートローラ122の全面が加熱される。第2の導通接点1302が導通することにより、電源126はスイッチ回路130を介して接続用導線129を通じ、発熱用導線に接続されている一部のフィラメント124のみに給電を行う。そして、一部のフィラメント124が発熱し、ヒートローラ122の一部が加熱される。
【0031】
ここでヒートローラ12は、少なくとも記録紙20の通過領域が加熱されていれば、良好なトナー画像の永久定着が行えるため、A4の記録紙20に印刷を行う場合は、ヒートローラ12の中央部から夫々両端に向かって、A4幅(縦:210mm)が加熱されていればよいこととなる。よって、接続用導線129が導出される位置は、ヒートローラ12の中央部から夫々両端に向かってA4幅、すなわち、ニップ部14を通過する記録紙20の両端より軸方向外側付近となる。この位置から接続用導線129がスイッチ回路130に向けて導出され、A4幅に応じた通過領域のみの加熱がなされる。
ここに、記録紙20の通過領域とは、ヒートローラ12とヒートローラ13とのニップ部14に搬送される最大サイズ(幅)、例えばA4の記録紙20が、少なくとも接触する領域を指す(図4参照)。すなわち、各ローラの長手方向に沿って見た場合に、記録紙20が通過し、搬送される領域が通過領域である。
【0032】
図4は、A4の記録紙20がニップ部14を通過している状態を示しており、スイッチ回路130は第2の導通接点1302と導通している。よって電源126から供給される電力はスイッチ回路130を通じ、接続用導線129を介して、軸方向内側の2つのフィラメント124に給電される。そして、接続用導線129を介して接続されている2つのフィラメント124のみが発熱し、ヒートローラ122においてはA4の記録紙20の通過領域のみが均一に加熱されることになる。図中、白抜矢印は記録紙20の搬送方向を示している。
図5は、B4の記録紙20がニップ部14を通過している状態を示しており、スイッチ回路130は第1の導通接点1301と導通している。よって電源126から供給される電力はスイッチ回路130を通じ、導線132を介して発熱用導線127に接続されているすべてのフィラメント124に給電される。そしてすべてのフィラメント124が発熱し、ヒートローラ122において全面が均一に加熱され、B4の記録紙20の通過領域全域が良好に加熱されることになる。図中、白抜矢印は記録紙20の搬送方向を示している。
【0033】
図3に示すように、画像形成装置1は、画像形成を行うため各部、各手段を制御するCPU101と、通過領域判別手段102と、スイッチ回路切替手段103とを少なくとも備えている。通過領域判別手段102は、上述の紙幅検知センサ100より送出される紙幅通知信号に基づいて通過領域の判別を行っている。スイッチ回路切替手段103は、該通過領域判別手段102が判別した通過領域が加熱されるようスイッチ回路130の制御を行っている。
【0034】
次に、図6を参照して、上記構成の画像形成装置1におけるヒートローラ12の加熱源であるハロゲンランプ122への給電制御の基本動作を説明する。
電源がオンされ、プリントトリガが入力されると、記録紙20の供給を行う記録紙供給カセット21に備えた紙幅検知センサ100により、紙幅通知信号を送出される。通過領域判別手段102は、紙幅通知信号を受信することにより(ステップS1)、これに基づいて通過領域の判別を行う。そのとき紙幅が小、すなわちA4であると判別した場合(ステップS2)、スイッチ回路切替手段103は、第2の導通接点1302が電源126と導通するようスイッチ回路130を切替える(ステップS3、図4参照)。そして一部のフィラメント124、すなわち図4でいえば、軸方向内側の2つのフィラメント124が電源126と導通し、発熱する(ステップS4)。その後、ヒートローラ12の表面において記録紙20の通過領域が加熱され、ニップ搬送されてきた記録紙20に、転写されたトナー画像が永久定着される。
通過領域判別手段102が紙幅通知信号に基づいて、紙幅が小ではない、すなわち大(B4)であると判別した場合は(ステップS2)、スイッチ回路切替手段103は、第1の導通接点1301が電源126と導通するようスイッチ回路130を切替える(ステップS6)。そしてすべてのフィラメント124、すなわち図5でいえば、すべてのフィラメント124が電源126と導通し、発熱する(ステップS7)。その後、ヒートローラ12の表面全域が加熱され、ニップ搬送されてきた記録紙20に、転写されたトナー画像が永久定着される。
【0035】
以上によれば、ヒートローラ12内の径方向の中央に1本のハロゲンランプ122を設ければよいので、定着装置11が大型化してしまう懸念がない。また加熱源となるハロゲンランプ122から、ニップ搬送されてくる記録紙20までの距離を等しい距離にできる。よって特別に熱の伝達効率の制御を行う必要がなく、ヒートローラ12の表面を均一に加熱することができ、記録紙20に転写されたトナー画像を良好に永久定着することができる。更に1本の発熱用導線127上に複数のフィラメント124を直列に接続して構成されているので、部品構成が簡易でコストアップの懸念がない。
そして通過領域判別手段102の判別結果に応じて、通過領域判別手段102が判別した通過領域が加熱されるよう前記スイッチ回路130を制御するスイッチ回路切替手段103を備えているので、記録紙20の通過領域外を無駄に加熱することがなく、省電力化を図ることができる。
【0036】
次に、記録紙20の合わせ位置が上述の第1の実施形態とは異なる実施形態(第2の実施形態)について説明する。尚、上述の例と同様の箇所には同一の符号を付し、共通する部分の説明は割愛する。
図7、図8は、第2の実施形態に係る定着装置におけるハロゲンランプの構成を電気回路図で示した図であり、図中の白抜矢印は記録紙20の搬送方向を示している。
第2の実施形態は、上述のように定着時の記録紙20の合わせ位置が、ヒートローラ12の中央ではなく、ヒートローラ12のいずれか片側に合わせる例を示している。ここでは記録紙20が通過する合わせ位置となっている端部に設けられた接合部125を第1の接合部1251とし、もう片側(紙面右側)の端部に設けられた接合部125を第2の接合部1252として説明する。
スイッチ回路130は、1箇所の孔部128から導出された1本の接続用導線129が第2の導通接点1302を通じて電源126と電気的に接続されるよう1つ設けられている。またスイッチ回路130は、第2の接合部1252から導出された導線132が第1の導通接点1301を通じて電源126と電気的に接続されるよう構成されている。そして第1の接合部1251から導出された導線132はスイッチ回路130を介することなく、電源126に直接接続されている。スイッチ回路130は上述のとおり、第1の導通接点1301と第2の導通接点1302とを備えており、記録紙20の通過領域に応じて切替えられる。
【0037】
ハロゲンランプ122の給電制御は、上述の実施形態と同じである。すなわち、上述の実施形態と同様に、紙幅検知センサ100からの紙幅通知信号に基づいて、通過領域判別手段102がニップ搬送される記録紙20の紙幅を判別する。そして該通過領域判別手段102が判別した通過領域が加熱されるようスイッチ回路切替手段103がスイッチ回路130の制御を行う。詳しくは、通過領域判別手段102によって紙幅が小(A4)と判別されると、スイッチ回路切替手段103により、第2の導通接点1302が導通する。第2の導通接点1302が導通することにより、電源126はスイッチ回路130を介して接続用導線129を通じ、発熱用導線127に接続され、第1の接合部1251側の一部のフィラメント124のみに給電を行う。そして、2つのフィラメント124が発熱し(図7参照)、ヒートローラ122の一部が加熱される。
一方、通過領域判別手段102によって紙幅が大(B4)と判別されると、スイッチ回路切替手段103により、第1の導通接点1301が導通する。第1の導通接点1301が導通することにより、電源126はスイッチ回路130を介して導線132を通じ、第1の接合部1251側と第2の接合部125側2とが導通して、発熱用導線127に接続されているすべてのフィラメント124に給電を行う(図8参照)。そして、すべてのフィラメント124が発熱し、ヒートローラ122の全面が加熱される。
【0038】
以上によれば、上述の実施形態と同様の効果が得られるとともに、本実施形態ではスイッチ回路130に導出される接続用導線129は1本なので、ランプ管123に形成する孔部128もスイッチ回路130も1つ設ければよい。よって構成がより簡易なものとなり、コストアップの低減を図ることができる。
【0039】
尚、上記実施形態では、フィラメント124を4つ構成した例を説明しているが、これに限定されるものではない。また記録紙20のサイズもA4、B4について説明したが、これ以外のものにも適用可能であることはいうまでもない。更に、記録紙供給カセット21から供給される記録紙20だけでなく、手差し供給トレイ80から供給される記録紙20にも、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る定着装置が適用される画像形成装置の一例を示す概略縦断面図である。
【図2】同画像形成装置における定着装置の要部の拡大図である。
【図3】同定着装置に備えた制御ブロック図である。
【図4】同定着装置におけるハロゲンランプの構成を電気回路図で示した図である。
【図5】同定着装置におけるハロゲンランプの構成を電気回路図で示した図である。
【図6】同定着装置のハロゲンランプへの給電制御のフローチャート図である。
【図7】他の実施形態に係る定着装置におけるハロゲンランプの構成を電気回路図で示した図である。
【図8】他の実施形態に係る定着装置におけるハロゲンランプの構成を電気回路図で示した図である。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成装置
11 定着装置
12 ヒートローラ
122 ハロゲンランプ
123 ランプ管
124 フィラメント
127 発熱用導線
129 接続用導線
130 スイッチ回路
13 プレスローラ
100 紙幅検知センサ
102 通過領域判別手段
103 スイッチ回路切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源としてハロゲンランプを有したヒートローラとプレスローラとにより、記録紙をニップ搬送し、記録紙に転写されたトナー画像を定着させる定着装置を備えた画像形成装置であって、
前記ハロゲンランプは、ランプ管内に設けられた1本の発熱用導線上に複数のフィラメントを直列に接続して構成されるとともに、ニップ搬送される記録紙の通過領域に応じた所定の位置から、ランプ管外に設けられたスイッチ回路に接続される接続用導線を導出して構成されており、
前記記録紙の紙幅通知信号により、通過領域を判別する通過領域判別手段と、該通過領域判別手段が判別した通過領域が加熱されるよう前記スイッチ回路を制御するスイッチ回路切替手段とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スイッチ回路は、前記ハロゲンランプに設けられたすべてのフィラメントを導通させる第1の導通接点と、前記ハロゲンランプに設けられた一部のフィラメントを導通させる第2の導通接点とを備え、
前記スイッチ回路切替手段は、前記通過領域判別手段の判別結果に応じて、第1の導通接点或いは第2の導通接点のいずれかと導通するよう切替えを行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記スイッチ回路切替手段は、前記通過領域判別手段によって、記録紙の紙幅が大と判別された場合は、第1の導通接点と導通するよう切替えを行い、
前記通過領域判別手段によって、記録紙の紙幅が小と判別された場合は、第2の導通接点と導通するよう切替えを行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−122500(P2009−122500A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297817(P2007−297817)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】