説明

画像形成装置

【課題】洗浄液の使用量を少なくすることができ、よって装置の小型化に寄与できる液体吐出方式の画像形成装置を提供する。
【解決手段】インク滴を吐出するヘッド11を複数有するヘッドユニット1に対してヘッドユニット1のインク吐出性能を維持・回復するための維持ユニット80が設けられている。維持ユニット80は、各ヘッド11を密接に塞ぐキャップ部材81と、各キャップ部材81の経路を開閉するキャップ開閉弁86と、廃液タンク84と、洗浄液タンク85と、経路を切り換える切換え弁83aと、ポンプ82等を備えている。印字開始時には、ノズル吐出検出手段によって特定された不吐出ヘッドのみを対象としてノズルインクの吸引がなされるとともに、キャップ部材81への洗浄液供給がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルからインク等の液体を吐出して記録を行う画像形成装置に関し、詳しくは、洗浄液タンクからキャップ部材に洗浄液を供給して、ノズル面、キャップ部材内、吸引経路などを洗浄、保湿できるように構成した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置では、画像形成動作(印字動作ないし記録動作の概念を含む)後、吐出ヘッドが空気に晒された状態で放置すると、ノズル孔のインクが乾燥・固化していまい、次回の画像形成時にインク吐出がされないノズルが存在し、欠落画像等の不具合が生じる。
この不具合を解消すべく、非画像形成時には吐出ヘッドのノズル面をキャップ部材で密接に覆い、ノズル孔が外気に直に晒されることによるインクの乾燥・固化を抑制するようになっている。
【0003】
キャップ部材で封止しただけではノズル孔のインクの乾燥・固化防止に対する信頼性は低いため、画像形成を開始するに際し、キャップ部材に接続された吸引手段によりキャップ部材内を負圧にしてノズル孔の増粘インクを吸引して廃液タンクに回収している。
また、吸引されたインクの増粘で吸引経路(チューブ)内が詰まらないように、インク吸引後洗浄液タンクからキャップ部材内に洗浄液を送液するようになっている。したがって、上記ノズル孔のインクの吸引は洗浄液と共に吸引され、廃液タンクにはインクと洗浄液の混合液が回収されることになる。
洗浄液の廃液タンクへの排出は、吸引経路内の残留インクを洗浄することにつながり、残留インクの増粘による吸引経路の目詰まりに起因する吸引不良防止にも寄与する。
【0004】
洗浄液の供給はノズル孔に接触する程度にすれば、ノズル孔のインクが空気に触れないので乾燥・固化を防止できるが、ノズル孔に接触するまで液面を上げなくても、キャップ部材内に洗浄液が存在することによるキャップ部材内湿度の上昇によって、インクの乾燥・固化を抑制できる。
特許文献1には、ノズル開口の目詰まりを防止する目的で、溶解液タンクからキャップ部材とノズルとの封止空間に溶解液を供給し、ノズル開口の目詰まりを直接溶解したり、ノズル開口のインクを保湿するキャッピング装置が開示されている。
特許文献2には、吐出性能を維持する、信頼性を向上させる目的で、キャッピング手段に負圧発生手段、弁手段を設け、弁手段を選択的に制御することで、吸引回復させるノズル列を選択的にする技術が開示されている。
特許文献3には、吸引経路における長期放置時のインク増粘による吸引ポンプ性能低下や吸引経路の目詰まりなどを防止する目的で、印字終了後の動作によってキャップ部材内と排液チューブ内のインクの吸引量を変更する制御が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−234174号公報
【特許文献2】特開2004−42446号公報
【特許文献3】特開2006−142658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、キャップ部材まで供給された洗浄液をインクの吸引動作で廃液タンクに回収する方式であるため、一旦供給された洗浄液は再利用できず、多量の洗浄液が必要であり、洗浄液タンクの大型化を避けられなかった。
一方、洗浄液の分の廃液が増えるので、大きな廃液タンクが必要で、装置の大型化を避けられないという問題も同時に生じていた。
また、従来方式をシリアルプリンタではなくラインプリンタに適用した場合、各ヘッドに対して一律にインクの吸引、洗浄液供給を行うため、多量の洗浄液が必要となり、上記問題は顕著となる。
【0007】
本発明は、洗浄液の使用量を少なくすることができ、よって装置の小型化に寄与でき、特にラインプリンタにおいて好適な画像形成装置の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、被記録媒体へ向けてノズルから液体を吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドの各々に対応して設けられ、前記複数のヘッドのノズル面を各々密閉し、ノズル面から液体を吸引するための複数のキャップ部材と、前記複数のキャップ部材の各々に接続され、前記キャップ部材内に負圧を形成する吸引手段と、前記吸引手段により前記複数のキャップ部材から吸引された液体が排出される廃液タンクと、前記複数のキャップ部材の各々と前記吸引手段との経路に各々設けられ、前記複数のキャップ部材を選択的に吸引可能に前記経路を開閉する複数のキャップ開閉弁と、前記複数のキャップ部材の各々に供給される洗浄液を収容する洗浄液タンクと、前記洗浄液タンク内の洗浄液を前記複数のキャップ部材の各々に供給する洗浄液供給手段と、前記複数のキャップ開閉弁に対して前記廃液タンク又は前記洗浄液タンクのいずれか一方を接続し、他方を切断する切換え弁と、
を備え、前記ノズル面から液体を吸引した後に前記キャップ部材まで洗浄液を供給すること特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の画像形成装置において、ノズルから液体が吐出されたか否かを検出するノズル吐出検出手段を有し、吐出していないノズルがあった場合には、該ノズルを有するヘッドに対してのみ前記液体吸引動作と洗浄液供給動作を行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、湿度を検知する湿度検知手段を有し、前記湿度検知手段の検知値に応じて前記複数のキャップ部材内の前記洗浄液の量を可変するように制御することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記複数のヘッドを一体に有するヘッドユニットと、
少なくとも前記キャップ部材と前記キャップ開閉弁とを有し、前記ヘッドの性能を維持・回復する維持ユニットと、を備え、前記ヘッドユニットは被記録媒体の搬送面に対して垂直方向に移動可能で、且つ、前記維持ユニットは前記搬送面に対して平行に移動可能であり、記録動作がなされる際、前記維持ユニットは前記ヘッドユニットに対向するキャッピング位置から、前記ヘッドユニットと離間した状態で前記搬送面に対して平行に移動して待機位置に設定され、前記複数のキャップ部材内の前記洗浄液の液面高さを検知する液面検出手段を有し、前記液面高さが所定値を超える場合には、前記液面を下げた状態で前記維持ユニットの前記待機位置への移動がなされることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記ノズル面から液体を吸引する時に、前記切換え弁を切換えて前記複数のキャップ部材内の洗浄液を前記洗浄液タンク内に戻すように制御し、その後前記ノズル面から液体を吸引し、前記廃液タンク内に前記ノズル面から吸引した前記液体を導くように前記切換え弁を制御することを特徴とする。
請求項6記載の発明では、請求項5記載の画像形成装置において、前記洗浄液タンク内の洗浄液の濃度を検出する手段を有し、前記洗浄液タンク内の洗浄液の濃度が所定値を超える場合には、前記複数のキャップ部材内の洗浄液を前記洗浄液タンク内に戻さずに前記廃液タンクに排出するように前記切換え弁を制御することを特徴とする。
請求項7記載の発明では、請求項5記載の画像形成装置において、前記キャップ開閉弁と前記切換え弁との間の経路に、該経路内の液体の濃度を検出する手段が設けられ、前記経路内の液体の濃度が所定値を超える場合には、前記複数のキャップ内の洗浄液を前記洗浄液タンク内に戻さずに前記廃液タンクに排出するように前記切換え弁を制御することを特徴とする。
請求項8記載の発明では、請求項1〜7のいずれかに記載の画像形成装置において、前記吸引手段が前記洗浄液供給手段を兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄液の使用量を少なくすることができ、よって装置の小型化に寄与できる。
特にラインプリンタへの適用では小型化の度合いが大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図6に基づいて本実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェットプリンタ(ラインプリンタ)の構成の概要を説明する。インクジェットプリンタ100は、図示しない被記録媒体としての用紙を搬送する用紙搬送手段30と、用紙搬送手段30の上面側に配置されたヘッドユニット1と、このヘッドユニット1のインク吐出性能を維持・回復するための維持ユニット80等を備えている。
用紙搬送手段30は、いずれか一方が駆動ローラとなる2つの支持ローラ32、33と、これらのローラ間に掛け回された搬送ベルト31等を有している。
図示しない給紙手段から給紙された用紙Pは、所定のタイミングで搬送ベルト31上を搬送されながら記録位置(図6に示す位置)に位置するヘッドユニット1によりインク画像を形成され、図示しない排紙手段により図示しない排紙トレイへ排出・スタックされる。
【0014】
ヘッドユニット1は、複数のヘッド11と、これらのヘッドを一体に保持するホルダプレート12と、ベースプレート71等を有している。
各ヘッド11は、図8に示すように、インク滴を吐出する複数のノズル11bを有しており、ノズル11bの吐出側はノズル面11aとしてなる。
図6に示すように、ヘッドユニット1は、ヘッドユニット移動手段1a(図3参照)により、搬送ベルト31の用紙搬送面に対して、矢印Vで示す垂直方向(ここでは上下方向)に移動可能で、図6に示す記録位置(画像形成位置ないし印字位置ともいう)と、後述する退避位置とに選択的に設定される。
維持ユニット80は、ヘッド11の数に対応した複数のキャップ部材81と、これらのキャップ部材を支持する支持部材91等を有している。複数のキャップ部材81は支持部材91に対して独立して上下方向に移動可能となっており、上下方向の移動は、後述するキャップ上下手段104a(図3参照)によってなされる。
維持ユニット80は、維持ユニット駆動手段80a(図3参照)により、搬送ベルト31の用紙搬送面に対して矢印Hで示す如く平行な方向(ここでは水平方向)に移動可能で、図6に示す待機位置と、後述するキャッピング位置とに選択的に設定される。
【0015】
図7に基づいて、印字動作終了後の動作を説明する。
印字動作が終了すると、ヘッドユニット1が退避位置へ上昇し(図7(a))、その後維持ユニット80が水平に移動してヘッドユニット1の下面に対向するキャッピング位置に設定される(図7(b))。
この状態では、ヘッドユニット1の各ヘッド11のノズル面11aと維持ユニット80のキャップ部材81との間にはギャップgが存在し、離間(デキャップ)している。
その後、キャップ装置104のキャップ上下手段104a(図3参照)により各キャップ部材81が上昇し、各ノズル面11aが封止される(図7(c))。
印字動作を行う場合には、図7(c)の状態からキャップ部材81がキャップ上下手段104aにより図7(b)に示すデキャップ状態に下げられ、その状態で維持ユニット80が待機位置へ移動し、ヘッドユニット1が記録位置へ下降する。これらの動作の間にインク吸引動作、洗浄液供給動作がなされるが、この点については後述する。
【0016】
インクジェットプリンタ100の動作は、図3に示す制御部(制御手段)100によって制御される。
マイクロコンピュータとしての制御部100は、ROM101、CPU102、RAM103等を有している。CPU102は、画像形成装置本体に設けられた各種センサからの検知信号及びROM101から呼び出された動作プログラムに基づいて、画像形成装置本体の動作を制御する。
ROM101には画像形成装置本体全体の動作プログラムが記憶されており、この動作プログラムはCPU102によって適宜呼び出される。RAM103は、CPU102の計算結果を一時的に記憶する機能、各種センサから設定及び入力されたデータ信号及びオン・オフ信号を随時記憶する機能等を有している。
【0017】
維持ユニット駆動手段80aは、印字開始時には維持ユニット80を、キャップ部材81とノズル面11aとが離間したデキャップ状態でキャッピング位置から、水平方向に移動させて待機位置に移動させる。
キャップ装置104のキャップ上下手段104aは、維持ユニット80がキャッピング位置に設定された後、キャップ部材81をノズル面11aに密閉する位置に移動させる。また、デキャップ時にノズル面11aからキャップ部材81を離間させるように駆動する。
ヘッドユニット移動手段1aは、ヘッドユニット1が、キャッピング時に上方に移動して維持ユニット80がその下方に移動し、キャッピング位置をとり、印字時は、デキャップを維持した状態で維持ユニット80が水平移動して待機位置になった後に、ヘッドユニット1は、下方に移動して、印字位置となるように制御される。
本実施形態ではノズル面11aに対するキャップ部材81の接離をキャップ部材81の上下移動により得る構成としているが、ヘッドユニット1を上下させるようにしてもよい。
【0018】
温湿度検出手段105としての温湿度センサ105aは、ヘッドユニット1近傍の温湿度を測定可能であり、測定データを制御部100に送るように構成されている。
【0019】
図1に基づいて維持ユニット80の構成及び機能を詳細に説明する。
上述のように、維持ユニット80は、液体としてのインク滴を吐出する複数のヘッド11の性能を維持回復する維持回復機構としてなる。
維持ユニット80は、ヘッドのノズル面11aを高い密閉性を保って覆うための複数のキャップ部材81、ノズル11bから増粘したインクを吸引して排出するための吸引手段で且つ洗浄液を供給する洗浄液供給手段としてのポンプ82、ポンプ82の吸引経路下流側に接続された切換え弁83a、切換え弁83aの一方に接続された廃液タンク84と、他方に接続された洗浄液タンク85等から構成されている。
廃液タンク84、洗浄液タンク85は、例えばポリエチレンなどの樹脂などで作られていて、密閉されている。また、廃液タンク84、洗浄液タンク85には、大気開放弁84a、85aが設けられている。ポンプ82は正逆転可能なチューブポンプで構成され、正転時は、キャップ部材81から液体を吸引するように動作し、逆転時は、洗浄液タンク85から液体をキャップ部材81に向けて送液できるような構成となっている。
【0020】
図示しないが、ノズル面11aに付着したインクを拭き取って除去するための従来周知のワイパ部材(ワイパ、ワイパブレード)、ワイパ部材を清掃するワイパクリーナ(ワイパ清掃部材)などを備えている。
複数のキャップ部材81の下方には、複数のキャップ部材81の各々の吸引経路87を開閉するキャップ開閉弁86a、86b、86c、86d、86eが設けられていて、複数のキャップ部材81の吸引経路87の開閉を選択的に行うことができるようになっている。
維持ユニット80として、上記構成要素の全体が水平移動するようにしてもよいが、本実施形態では、軟質チューブからなる経路87のフレキシブル性を利用して、キャップ部材81とキャップ開閉弁86からなるユニットのみを水平移動させ、廃液タンク84や洗浄液タンク85は位置固定されている。
【0021】
図2に示すように、切換え弁83aの吸引経路87下流側の廃液タンク84、洗浄液タンク85の供給経路88のそれぞれにポンプ82a、82bを設ける構成としてもよい。但し、図1に示す構成に比べてポンプ82の個数が多いため、コスト高となる。
【0022】
本実施形態における維持ユニット80による維持回復動作を説明する。
[インク排出動作]
図1に示すように、ノズル面11aとキャップ部材81との密閉された空間81aには、ノズル面11aに洗浄液が接触しない程度に、洗浄液が充たされている。
制御部100は、洗浄液が廃液タンク84に流れるように切換え弁83aを駆動し、廃液タンク84に設けられた大気開放弁84aを開放する。切換え弁83a、大気開放弁84aは、電磁弁などで構成される。
その後、キャップ部材81の下流のキャップ開閉弁86aが解放され、ポンプ82が正転駆動されことにより、洗浄液が廃液タンク84に排出される。
【0023】
さらにポンプ82を正転駆動し続けると、キャップ部材81内が負圧となり、ヘッド11のノズル11bからインクを吸引することが可能となる。
ノズル11bから一定量のインクを吸引した後に、ポンプ82を停止させる。その後、キャップ上下手段104aを動作させて、ノズル面11aよりキャップ部材81を離間(デキャップ)させて、再度ポンプ82を正転駆動することにより、キャップ部材81内、吸引経路87に残ったインクを廃液タンク84に排出する。
【0024】
[洗浄液供給動作]
インク排出動作終了後、廃液タンク84の大気開放弁84aは、廃液タンク84内のインクが乾燥・固化しないように閉じられる。制御部100によって、切換え弁83aは洗浄液タンク85と連通するように駆動される。洗浄液タンク85に設けられた大気開放弁85aが開放され、ポンプ82が逆転駆動されることにより、洗浄液タンク84内の洗浄液が吸上げられ、供給経路88、切換え弁83a、吸引経路87を通って、キャップ部材81内に供給される。
洗浄液の供給が終わると、維持ユニット80は待機位置へ水平移動され、ヘッドユニット1が記録位置へ下降して印字動作が開始される。
印字動作が終了して、制御部100がキャッピングの指令を出すと、上述したキャッピング動作がなされる。
吸引経路87における切換え弁83aからキャップ部材81側の経路は、供給経路88として共用されている。
【0025】
本実施形態では洗浄液の使用量をできるだけ少なくするために、目詰まりがあるノズルを特定し、そのノズルを有するヘッドのみに対してインク吸引動作及び洗浄液供給動作を実施するようにしている。
目詰まりノズルの特定はノズル吐出検出手段106(図3参照)によってなされる。
図11に示すように、ノズル吐出検出手段106は、ノズル吐出検出センサ106aからなり、例えば、レーザー光線LBを発生可能なレーザー光源106a−1と、このレーザー光を受光するレーザー受光素子106a−2とからなっている。本実施形態ではノズル吐出検出手段106はヘッドユニット1のベースプレート71に設けられているが、維持ユニット80側に設けることもできる。
【0026】
ノズルの目詰まりチェックは、吸引前にノズル面11aとキャップ部材81とを離間させた状態(図7(b)のデキャップを含む)で空吐出を行うことによりなされる。
ノズル106aから空吐出を行う際に、レーザー光線をノズル11bから吐出されるインク滴に照射する。インク滴を吐出していないノズルがあるとレーザー光線がインク滴に当たらないので、レーザー受光素子106a−2にレーザー光線が受光されてレーザー受光素子106a−2からの検出信号のレベルが変化する。このレベル変化によって、ノズル11bの目詰まりを検出できる。これを複数のヘッド11で実施することにより、目詰まりをしているヘッド11が特定できる。
ノズルチェックパターンを印字して対象ヘッドを特定しても良い。
【0027】
吸引回復は、目詰まりを起こしているヘッド11のみ実施すれば良く、対象ヘッドのみのキャップ開閉弁86を開放することにより、対象ヘッドのみ吸引回復動作が行われる。このことにより、使用する洗浄液の量が少なくなる。すなわち、廃液量も少なくなる。
上記吸引回復の制御フローを図10に示す。図10では表示していないが、廃液タンクへの排出後は、上述のようにインク吸引をしたヘッドに対応するキャップ部材81への洗浄液の供給がなされる。
【0028】
図9に基づいて、キャップ部材81への洗浄液の供給量の可変制御について説明する。
洗浄液の供給量は、温湿度検出手段105(図3参照)からの情報に基づき決定される。画像形成装置周囲の雰囲気湿度が所定値(閾値)Hmより低い場合は、キャップ部材81内の洗浄液の液面90(図8参照)が高くなるように設定され、逆に雰囲気湿度が高い場合は、液面90が低くなるように設定される。
これは、雰囲気湿度が低い場合は、ノズル11bのインク表面が乾燥し易く、正常な吐出にならない可能性が高いからである。正常な吐出状態を維持するための洗浄液の量を調整することにより、一律に満杯状態とするのに比べて廃液タンク84へ排出する洗浄液を少なくすることが可能である。
【0029】
図6に示したような画像形成装置では、上述のように、維持ユニット80がキャッピング位置、待機位置に水平移動するようになっている。キャップ部材81内の液面90が高い状態で維持ユニット80が移動すると、移動に伴う衝撃で、キャップ部材81内の洗浄液が外に漏れだす可能性がある。
そのため、各キャップ部材81内に設けられている液面検出手段107(図3参照)としての液面検出センサ107aがONの場合は、ポンプ82を正転駆動させて、液面が下がる程度に洗浄液を排出することにより、移動の衝撃でもキャップ81内の洗浄液が漏れ出すことはない。移動時に全量抜く場合に比べて洗浄液の使用量を少なくできる。
図4に液面調整制御のフローを示す。
【0030】
通常、吸引経路87は、樹脂製のチューブなどが用いられる。吸引時は、吸引経路87内のインクを全て吸引していることにより、チューブの内壁に付着したインクのみが残る。そこで、キャップ部材81内、吸引経路87内に残存しているインクは少量なので、この残量インクと洗浄液との混合液を再度洗浄液として使用することは差し支えない。
そこで、本実施形態では、インク吸引動作において、まず切換え弁83aを洗浄液タンク85側に切換えて、チューブ内の残量インクと洗浄液との混合液を洗浄液タンク85内に戻し、その後、切換え弁83aを廃液タンク84側に切換えて、ノズル11bからインクを吸引して、廃液タンク84側にインクを排出するようにしている。これにより、洗浄液の量を少なく(節約)することが可能である。
【0031】
図1に示すように、洗浄液タンク内85には廃液濃度検出手段108としての濃度センサ108aが設けられている。洗浄液タンク85内の洗浄液が、洗浄効果が無くならないように洗浄液タンク85内の洗浄液の濃度を濃度センサ108aで検出して、所定値(閾値)N以下の場合は、切換え弁83aを洗浄液タンク85側に切換えて、洗浄液を戻し、閾値を超えている場合は、切換え弁83aを廃液タンク84側に切換えて、洗浄液を廃液タンク84側に戻すように制御する。この制御フローを図5に示す。
このようにすることにより、洗浄効果があるうちは、洗浄液を繰り返し使用することで洗浄液の量を少なくすることができる。すなわち、廃液の量を少なくすることができる。この効果は、従来のように全てのヘッドに対してインクの吸引・洗浄液供給を行う場合でも得ることができる。
濃度センサ108aは、例えば、光学式の反射型センサで構成されており、洗浄液の濃度が変化すると反射する信号が変化することにより、そのレベルで、洗浄効果が残っているか判断すれば良い。
【0032】
本実施形態では濃度センサ108aを洗浄液タンク85内に設ける構成としたが、図1に示すように、吸引経路87中、詳しくは切換え手段83aの上流側(キャップ部材81側)に濃度センサ108bを設けるようにしてもよい。図1では濃度センサ108aと濃度センサ108bを同時に表示しているが、いずれか一方が設けられる。
洗浄液の濃度が閾値以下の場合は、洗浄液を洗浄液タンク85に戻し、閾値を超えている場合は、切換え弁83aを廃液タンク84側に切換えて、洗浄液を廃液タンク84側に排出するように制御する。
濃度センサ108aを洗浄液タンク85内に設ける構成に比較して、濃度が高い洗浄液を洗浄液タンク85に戻すことが無くなり、洗浄液の寿命を長くすることが可能になる。よって洗浄液の交換サイクルを長くすることができる。この効果は、従来のように全てのヘッドに対してインクの吸引・洗浄液供給を行う場合でも得ることができる。
濃度センサ108bは、吸引経路87を透明の樹脂チューブで構成し、光学式の反射型センサを用いても良いが、透過型の光学式センサなどでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置のヘッドユニットに対する維持ユニットの構成を示す図である。
【図2】維持ユニットの変形例を示す図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】維持ユニットを移動させる場合の液面調整の制御のフローチャートである。
【図5】廃液濃度の値に応じて廃液経路を変更する制御のフローチャートである。
【図6】画像形成装置の要部を示す概要図である。
【図7】キャッピング動作を示す工程図である。
【図8】キャッピング状態におけるヘッドとキャップ部材との断面図である。
【図9】湿度の値に応じてキャップ部材内の液面を変更する制御のフローチャートである。
【図10】不吐出ノズルを有するヘッドのみを対象としてインクの吸引・洗浄液供給を行う場合のフローチャートである。
【図11】ノズル吐出検出手段の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ヘッドユニット
11 ヘッド
11a ノズル面
11b ノズル
80 維持ユニット
81 キャップ部材
82 吸引手段、洗浄液供給手段としてのポンプ
83a 切換え弁
84 廃液タンク
85 洗浄液タンク
86 キャップ開閉弁
105 湿度検知手段としての温湿度検出手段
106 ノズル吐出検出手段
107 液面検出手段
108a 洗浄液タンク内の洗浄液の濃度を検出する手段
108b 経路内の液体の濃度を検出する手段
P 被記録媒体としての用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体へ向けてノズルから液体を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドの各々に対応して設けられ、前記複数のヘッドのノズル面を各々密閉し、ノズル面から液体を吸引するための複数のキャップ部材と、
前記複数のキャップ部材の各々に接続され、前記キャップ部材内に負圧を形成する吸引手段と、
前記吸引手段により前記複数のキャップ部材から吸引された液体が排出される廃液タンクと、
前記複数のキャップ部材の各々と前記吸引手段との経路に各々設けられ、前記複数のキャップ部材を選択的に吸引可能に前記経路を開閉する複数のキャップ開閉弁と、
前記複数のキャップ部材の各々に供給される洗浄液を収容する洗浄液タンクと、
前記洗浄液タンク内の洗浄液を前記複数のキャップ部材の各々に供給する洗浄液供給手段と、
前記複数のキャップ開閉弁に対して前記廃液タンク又は前記洗浄液タンクのいずれか一方を接続し、他方を切断する切換え弁と、
を備え、前記ノズル面から液体を吸引した後に前記キャップ部材まで洗浄液を供給すること特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
ノズルから液体が吐出されたか否かを検出するノズル吐出検出手段を有し、吐出していないノズルがあった場合には、該ノズルを有するヘッドに対してのみ前記液体吸引動作と洗浄液供給動作を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
湿度を検知する湿度検知手段を有し、前記湿度検知手段の検知値に応じて前記複数のキャップ部材内の前記洗浄液の量を可変するように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記複数のヘッドを一体に有するヘッドユニットと、
少なくとも前記キャップ部材と前記キャップ開閉弁とを有し、前記ヘッドの性能を維持・回復する維持ユニットと、を備え、
前記ヘッドユニットは被記録媒体の搬送面に対して垂直方向に移動可能で、且つ、前記維持ユニットは前記搬送面に対して平行に移動可能であり、
記録動作がなされる際、前記維持ユニットは前記ヘッドユニットに対向するキャッピング位置から、前記ヘッドユニットと離間した状態で前記搬送面に対して平行に移動して待機位置に設定され、
前記複数のキャップ部材内の前記洗浄液の液面高さを検知する液面検出手段を有し、
前記液面高さが所定値を超える場合には、前記液面を下げた状態で前記維持ユニットの前記待機位置への移動がなされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記ノズル面から液体を吸引する時に、前記切換え弁を切換えて前記複数のキャップ部材内の洗浄液を前記洗浄液タンク内に戻すように制御し、その後前記ノズル面から液体を吸引し、前記廃液タンク内に前記ノズル面から吸引した前記液体を導くように前記切換え弁を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記洗浄液タンク内の洗浄液の濃度を検出する手段を有し、
前記洗浄液タンク内の洗浄液の濃度が所定値を超える場合には、前記複数のキャップ部材内の洗浄液を前記洗浄液タンク内に戻さずに前記廃液タンクに排出するように前記切換え弁を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記キャップ開閉弁と前記切換え弁との間の経路に、該経路内の液体の濃度を検出する手段が設けられ、
前記経路内の液体の濃度が所定値を超える場合には、前記複数のキャップ内の洗浄液を前記洗浄液タンク内に戻さずに前記廃液タンクに排出するように前記切換え弁を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記吸引手段が前記洗浄液供給手段を兼ねることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−120266(P2010−120266A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296019(P2008−296019)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】