説明

画像形成装置

【課題】操作パネルの姿勢や位置を多様に変更でき、しかも自動的かつ安全に姿勢や位置を変更できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】操作パネルを、揺動アーム、第1ヒンジ軸、第2ヒンジ軸を含む2軸ヒンジ構造のパネル支持構造で支持する。揺動アームおよび操作パネルを揺動操作する駆動機構を揺動アームに設ける。駆動機構は、揺動アームを揺動操作するアーム駆動系と、操作パネルを揺動操作するパネル駆動系と、両駆動系に回転動力を出力する1個のモーターなどで構成する。アーム駆動系は、第1固定ギヤと、モーター動力を第1固定ギヤへ伝動するギヤトレインなどで構成する。パネル駆動系は、第2固定ギヤと、モーター動力を第2固定ギヤへ伝動するギヤトレインなどで構成する。アーム駆動系およびパネル駆動系は、揺動アームの内部に集約した状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やファクシミリ機に代表される画像形成装置、なかでも、操作パネルを通常の基本使用位置からユーザーの見やすい位置へ自動的に変位できるようにした画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作パネルを基本使用位置からユーザーの見やすい位置へ変位することは、例えば特許文献1に公知である。そこでは、ユーザーが取っ手を掴んで基本使用位置から引き出し操作することにより、操作パネルを機体の前方へ突出させ、同時に斜め下方へ下降させて、前下がり状に傾斜させることができる。したがって、車椅子に座った状態のユーザーであっても、操作パネルのボタン操作や、液晶表示部の内容の確認を容易に行なうことができる。なお、操作パネルと機体との間には、操作パネルを機体の前方へ突出させながら傾斜させるためのギヤ機構が設けてある。
【0003】
同様のパネル支持構造は特許文献2、3にも開示されている。特許文献2では、画像読取部を機体に対して前後へ移動できるように支持し、画像読取部が機体の前方へ進出するのに連動して、操作パネルを斜め下向きに傾斜できるようにしている。操作パネルはその後端が機体に対して揺動可能に連結され、さらにパネル前端が屈曲できる一対のリンクを介して機体に連結してある。屈曲するリンクの連結軸にはローラーが軸支してあり、ローラーを機体に設けた傾斜面に沿って下降させることにより、操作パネルを基本使用位置よりも前下がり状に傾斜できる。
【0004】
特許文献3のパネル支持構造においては、L字状に循環する一対のベルトを変位要素にして、その水平部と垂直部とで操作パネルの前端の左右と後側の左右を支持している。ベルトを循環させると、操作パネルを概ね水平の基本使用位置から、垂直に起立する位置へと変位できる。ベルトはガイドプーリーのひとつに固定した調節つまみを回動操作して循環させる。
【0005】
上記のパネル支持構造は、いずれも手動で操作パネルを変位操作するが、操作パネルをモーター動力で自動的に操作するパネル支持構造が提案されている(特許文献4)。そこでは、操作パネルを含む画像読取部を、支持テーブルで垂直軸の回りに回転できるように支持している。また支持テーブルを、機体上面の基本使用位置から、機体の前方へ旋回できるようにしている。機体、または操作パネルに設けた操作ボタンをオン操作すると、操作パネルおよび画像読取部を機体の前面で、基本使用位置より低い位置に変位させることができる。さらに、機体の前方において、操作パネルおよび画像読取部を回転させて、操作パネルをユーザーの使い勝手のよい側へ水平に回転できるようにしている。操作パネルおよび画像読取部は、3個のステップモーターを駆動源とする駆動機構で駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−035752号公報(段落番号0014、図3)
【特許文献2】特開2004−191826号公報(段落番号0029、図3)
【特許文献3】特開2007−206157号公報(段落番号0021、図2)
【特許文献4】特開2007−124364号公報(段落番号0007、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、操作パネルの姿勢を手動で変更できる特許文献1、2、3のパネル支持構造によれば、操作パネルを基本使用位置からユーザーの見やすい位置へと変位させて、操作パネルの操作性と視認性とを向上できる。しかし、操作パネルの姿勢を変更できる範囲が機体の前面側に限定され、自由度が低い。また、操作パネルの姿勢を変更するのに手間が掛かる。
【0008】
その点、特許文献4のように、操作パネルの姿勢をモーター動力で自動的に変更できるようにすると、操作パネルの姿勢を変更するための手間を大幅に省くことができる。しかし、操作パネルを重量が大きな画像読取部ごと変位するので、操作パネルの姿勢を変更するための構造が大掛かりで複雑になるのを避けられない。操作パネルと画像読取部を駆動機構で本来の位置に戻す際に、衣服の一部や手指を挟むおそれがあり、充分な安全対策を施す必要がある。加えて3個のステップモーターを駆動源にして駆動機構を構成するのでコストが嵩むのを避けられない。駆動機構を配置するためのスペースを新たに確保する必要もある。
【0009】
本発明の目的は、操作パネルの姿勢や位置を多様に変更でき、しかも自動的かつ安全に姿勢や位置を変更できる画像形成装置を提供することにある。本発明の目的は、2軸ヒンジ構造のパネル支持構造で操作パネルを支持して、操作パネルの姿勢を多様に変更できるにもかかわらず、操作パネルの姿勢を変更するための構造の簡素化と低コスト化を実現できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、機体の一側に設けた操作パネルが、パネル支持構造で変位可能に支持してある。パネル支持構造は、揺動アームと、第1ヒンジ軸と、第2ヒンジ軸を含んで2軸ヒンジ構造に構成する。揺動アームおよび操作パネルを揺動操作する駆動機構を、揺動アームに設ける。駆動機構は、揺動アームを揺動操作するアーム駆動系と、操作パネルを揺動操作するパネル駆動系と、両駆動系に回転動力を出力する1個のモーターを含んで構成する。
【0011】
アーム駆動系は、第1ヒンジ軸の軸中心と同心状に配置した第1固定ギヤと、モーターの回転動力を前記第1固定ギヤへ伝動する第1伝動構造とで構成する。パネル駆動系は、第2ヒンジ軸の軸中心と同心状に配置した第2固定ギヤと、モーターの回転動力を第2固定ギヤへ伝動する第2伝動構造とで構成する。アーム駆動系およびパネル駆動系は、揺動アームの内部に配置する。
【0012】
第1伝動構造および第2伝動構造のそれぞれに、動力を伝動する状態と、動力を遮断する状態とに切り換えることができる動力断続手段を組み込む。
【0013】
動力断続手段は、電磁クラッチ、トルクリミッタ、ワンウェイクラッチのいずれかひとつで構成する。
【0014】
第1伝動構造および第2伝動構造のそれぞれを、ギヤトレインと、ワンウェイクラッチと、終段ギヤとで構成する。以て、モーターが正転方向へ駆動される状態でのみモーター動力を終段ギヤに伝動して、揺動アームおよび操作パネルを基本使用位置から離れる向きに揺動できるようにする。
【0015】
第1ヒンジ軸および第2ヒンジ軸のそれぞれに、摩擦抵抗付与手段を組み付ける。以て、揺動アームおよび操作パネルのそれぞれを、任意の揺動位置において摩擦抵抗付与手段で位置保持できるようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像形成装置においては、揺動アームと、第1ヒンジ軸と、第2ヒンジ軸を含む2軸ヒンジ構造のパネル支持構造で操作パネルを変位可能に支持した。また、アーム駆動系とパネル駆動系と、両駆動系を駆動する1個のモーターなどからなる駆動機構を揺動アームに設けて、揺動アームと操作パネルを駆動機構で揺動操作できるようにした。このように、駆動機構を備えた2軸ヒンジ構造のパネル支持構造で操作パネルを支持すると、モーターを駆動することにより、揺動アームと操作パネルを揺動操作して、操作パネルの姿勢を自動的に、しかもユーザーの好みに応じて多様に変更することができる。また、揺動アームと操作パネルを操作対象にして、これら両者を1個のモーターで揺動操作するので、操作パネルを画像読取部ごと変位する従来装置に比べて、操作パネルの位置および姿勢を変更するための構造を大幅に簡素化して全体コストを削減できる。
【0017】
第1固定ギヤと第1伝動構造とでアーム駆動系を構成し、第2固定ギヤと第2伝動構造とでパネル駆動系を構成し、これらの駆動系を揺動アームの内部に配置すると、モーターやギヤなどの、駆動機構を構成する部材の殆どを揺動アームの内部に集約できる。したがって、駆動機構を配置するためのスペースを別途確保する必要がなく、操作パネルの位置や姿勢を自動的に変更できる機能を備えているにもかかわらず、画像形成装置が占めるスペースを従来装置と同等にできる。また、モーターやギヤなどの可動部分を揺動アームの内部に収容できるので、操作パネルの位置や姿勢を変更する際に、モーターやギヤなどの可動部分にユーザーが接触するのを防いで安全性を確保できる。
【0018】
第1伝動構造および第2伝動構造のそれぞれに動力断続手段を組み込むと、両伝動構造の伝動状態を必要に応じて断続し、あるいはモーター動力を正逆のいずれか一方に限って伝動することができる。したがって、モーターの制御と動力断続手段の断続状態の制御とを組み合わせることにより、操作パネルの姿勢および位置の変更や、基本使用位置への復帰動作などを多様化できる。例えば、アーム駆動系とパネル駆動系を同時に駆動し、あるいは個別に駆動して、操作パネルの位置および姿勢を変更することができる。また、操作パネルを基本使用位置から所望する操作位置へ姿勢変更する動作のみを、モーター動力で自動的に行なうなどの駆動形態を選択できる。
【0019】
動力断続手段は電磁クラッチ、トルクリミッタ、ワンウェイクラッチのいずれかひとつで構成でき、いずれの場合にも市販品の中から適合する機能を備えた機種を選定するだけで、目的とする駆動機構を構成できる。例えば、操作パネルの位置や姿勢を変更する時の動作仕様や、操作パネルの重量などに違いに応じて、適合する機能を備えた機種を選定すればよい。
【0020】
第1・第2の両伝動構造をギヤトレイン、ワンウェイクラッチ、終段ギヤで構成し、モーターの正転動力のみを終段ギヤに伝動する駆動機構によれば、揺動アームおよび操作パネルを基本使用位置から離れる向きに限って揺動駆動できる。そのため、駆動機構が作動する状態において、ユーザーが操作パネルや揺動アームに触っていたとしても、安全上の問題を考慮する必要がない。因みに、操作パネルを基本使用位置へ戻す動作を駆動機構で自動的に行なう場合には、衣服の一部や手指などが揺動アームや操作パネルで挟まれるおそれがあり、安全確保のための手段を別途設ける必要がある。使用位置へ変位操作した操作パネルは手動で基本使用位置へ戻すが、このときの逆転動力はワンウェイクラッチで遮断できるので、操作パネルの基本使用位置への復帰操作を軽快に行なうことができる。
【0021】
第1ヒンジ軸および第2ヒンジ軸のそれぞれに摩擦抵抗付与手段を組み付けて、揺動アームおよび操作パネルを任意の揺動位置で位置保持すると、操作パネルが自重で、あるいは複写条件の入力時等に動いて、その位置や姿勢が変わるのを確実に防止できる。また、2軸ヒンジ構造に組み込んだ摩擦抵抗付与手段で、操作パネルの姿勢および位置を保持するので、駆動機構の側に位置保持のための構造を設ける必要がなく、駆動機構が複雑になるのを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】操作パネルの駆動機構を示す縦断側面図である。
【図2】画像形成装置の斜視図である。
【図3】パネル支持構造の一部破断側面図である。
【図4】パネル支持構造の一部破断平面図である。
【図5】操作パネルの駆動機構を示す平面図である。
【図6】図5におけるA−A線断面図である。
【図7】操作パネルの姿勢変更例を示す側面図である。
【図8】駆動機構におけるモーター動力の伝動形態を示す動作説明図である。
【図9】駆動機構の別の実施例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例) 図1ないし図8は、本発明に係る画像形成装置をコピー機とファクシミリ機能を備えた複合機に適用した実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2に示す交差矢印と前後、左右、上下の表記に従う。図2において画像形成装置は、機体の大半の部分を占める記録部1と、記録部1上方に配置される画像読取部2などで構成する。記録部1は、画像記録装置や定着装置などで構成する。画像読取部2の上面には、原稿読取面を開閉するプラテンカバー3と、プラテンカバー3に設けられて画像読取部2に原稿を送る自動原稿読取部(ADF)4が配置してある。。画像読取部2の前面の一側には、パネル支持台5が設けられ、その上面に操作パネル6が配置してある。
【0024】
記録部1の内部には、給紙カセット9から画像記録装置および定着装置を経て、排紙空間10に至る用紙搬送経路が設けてある。記録部1は、給紙カセット9が組み付けられる四角箱状のハウジング11と、該ハウジング11の右側端から上方へ連接されるサイドハウジング12とを有し、ハウジング11と画像読取部2との間に排紙空間10が形成してある。排紙空間10は、機体の前面と左側面において開口しており、その右側面はサイドハウジング12によって、さらに後面側はハウジング12に連続する筐体構造によって塞がれている。ハウジング11とサイドハウジング12の前面には化粧パネル13が装着してある。化粧パネル13の前面で、給紙カセット9よりも上側に、上開き揺動可能な前カバー14が設けてある。記録部1、画像読取部2、前記両ハウジング11・12などで画像形成装置の機体を構成している。
【0025】
パネル支持台5は、サイドハウジング12の前部上面に設けてあり、その左右寸法はサイドハウジング12の左右幅より大きく設定してある。パネル支持台5の上面は、機体の前方へ向かって下り傾斜しており、したがって、パネル支持台5の上面で受け止めた状態の操作パネル6は、その上面が下り傾斜する(図2参照)。以下、操作パネル6がパネル支持台5の上面で受け止められた状態と位置を、それぞれ基本使用状態および基本使用位置と言う。
【0026】
操作パネル6は、扁平な四角箱状のパネルカバー15の上面に、タッチパネル式のディスプレイ16と、一群の入力ボタン17などを配置して構成する。ディスプレイ16、および入力ボタン17を操作することにより、複写条件やファクシミリ条件などを入力し、あるいは入力データーを表示することができる。
【0027】
操作パネル6の姿勢や位置を変更するために、操作パネル6と機体との間にパネル支持構造を設ける。図3においてパネル支持構造は、第1・第2の揺動軸24・25を備えた2軸ヒンジ構造からなる。詳しくは、揺動アーム21と、基端ブラケット22および先端ブラケット23と、揺動アーム21の基端および先端を各ブラケット22・23に連結する第1・第2の揺動軸24・25と、ヒンジカバー26などでパネル支持構造を構成する。
【0028】
揺動アーム21は、前後端が丸められた左右一対の側壁30と、これら側壁の下縁を繋ぐ底壁31とを一体に備えたプレス成形品からなる。図3および図4に示すように、パネル支持台5に臨む機体の前面には、ブラケットベース32が固定してあり、その前壁の中央と左右2個所とに、平板状の3個の基端ブラケット22が前向きに突設してある。左右方向の両端に位置する基端ブラケット22には、揺動アーム21の側壁30の基端が左右一対の第1揺動軸24で上下方向へ揺動可能に連結してある。中央の基端ブラケット22には、後述する第1固定ギヤ49がビスで固定してある。第1固定ギヤ49の中心は、左右の第1揺動軸24・24の中心線上に位置している。
【0029】
先端ブラケット23はL字状のプレス金具からなり、基端ブラケット22と同様に3個設けてある。先端ブラケット23の一方の壁面は、それぞれディスプレイ16の裏面にビスで締結してある。左右方向の両端に位置する先端ブラケット23には、揺動アーム21の側壁30・30の先端が左右一対の第2揺動軸25で上下方向へ揺動可能に連結してある。中央の先端ブラケット23には、後述する第2固定ギヤ55がビスで固定してある。第2固定ギヤ55の中心は、左右の第2揺動軸25・25の中心線上に位置している。
【0030】
上記のパネル支持構造で操作パネル6を支持することにより、揺動アーム21は、図3に示す基本使用位置と、アーム全体が垂直に起立する起立位置(図1に示す状態)との間を揺動できる。また、操作パネル6は、図3に示す基本使用位置から、第2揺動軸25を中心にして図3に向かって反時計回転方向へ揺動して、揺動アーム21の下面側へ反転する反転位置との間を揺動できる。したがって、揺動アーム21と操作パネル6を手動で個別に揺動操作すると、操作パネル6の姿勢および位置を多様に変更することができる。基本使用位置にあるときの揺動アーム21の前部の下面には、操作パネル6を受け止める支持面27が斜めに形成してある。
【0031】
揺動アーム21および操作パネル6を任意の揺動位置で位置保持するために、第1・第2の両揺動軸24・25のそれぞれにフリーストップ構造が組み付けてある。図5に示すようにフリーストップ構造は、複数個の皿ばね34と、これら皿ばね34の両側端に配置される平座金35とからなる。皿ばね34および平座金35は、各揺動軸24・25に外嵌する状態で装着されて、各揺動軸24・25にねじ込んだナット36で扁平状に締め込まれて摩擦抵抗を生じる。これにより、揺動アーム21および操作パネル6は、先の摩擦抵抗を越える力が加わった状態でのみ揺動でき、常態においては摩擦抵抗によって任意の揺動位置を保持し続けることができる。
【0032】
操作パネル6および揺動アーム21の姿勢や位置を自動的に変更するために、揺動アーム21の両側壁30・30と底壁31、およびヒンジカバー26で囲まれる空間に駆動機構を配置している。図5に示すように駆動機構は、揺動アーム21を駆動するアーム駆動系38と、操作パネル6を駆動するパネル駆動系39と、これらの駆動系38・39の駆動源となる1個のモーター(ステップモーター)40などで構成する。
【0033】
モーター40は、機体の内部に設けた制御回路43(図5参照)で駆動状態が制御され、操作パネル6の側面に設けた起動スイッチ44(図3参照)がオン状態に切り換えられたとき起動する。モーター40の出力軸には原動ギヤ41が固定してあり、この原動ギヤ41でアーム駆動系38とパネル駆動系39とを同時に駆動する。両駆動系38・39およびモーター40は駆動ベース42に組み込まれて、駆動機構の全体がユニット化してある。駆動ベース42は揺動アーム21の底壁31にビスで固定してある。
【0034】
アーム駆動系38は、原動ギヤ41の回転動力を減速しながら伝動する3軸構造のギヤトレイン45と、第3軸46に設けられる終段ギヤ47と、終段ギヤ47の入力端側に配置されるトルクリミッター(動力断続手段)48と、終段ギヤ47と噛み合う第1固定ギヤ49などで構成する。トルクリミッター48はワンウェイクラッチ機能を備えた市販品であり、図5において矢印Nで示すように、モーター40が正転方向へ回転する時の動力のみを終段ギヤ53に伝動する。また、第3軸46から終段ギヤ47へ伝動される動力のトルク値が所定値を越えると、動力の伝動を遮断して空回りする。本発明で言う第1伝動構造は、ギヤトレイン45と、トルクリミッター48と、終段ギヤ47とで構成される。
【0035】
パネル駆動系39は、原動ギヤ41の回転動力を減速しながら伝動する3軸構造のギヤトレイン51と、第3軸52に設けられる終段ギヤ53と、終段ギヤ53の入力端側に配置されるトルクリミッター(動力断続手段)54と、終段ギヤ53と噛み合う第2固定ギヤ55などで構成する。トルクリミッター54はワンウェイクラッチ機能を備えた市販品であり、アーム駆動系38と同様に、矢印Nで示すモーター40の正転方向の動力のみを終段ギヤ53に伝動する。また、第3軸52から終段ギヤ53へ伝動される動力のトルク値が所定値を越えると、動力の伝動を遮断して空回りする。本発明で言う第2伝動構造は、ギヤトレイン51と、トルクリミッター54と、終段ギヤ53とで構成される。
【0036】
図5において原動ギヤ41が矢印Nで示す正転方向へ回転するとき、アーム駆動系38の終段ギヤ47は、原動ギヤ41とは逆向きに回転しながら、第1固定ギヤ49の回りに公転する。その結果、揺動アーム21は図8に示すように基本使用位置から起立位置へ向かって第1揺動軸24を中心にして揺動する。揺動アーム21が揺動するときの終段ギヤ47における回転トルクは、先に説明したフリーストップ構造の摩擦抵抗より大きく設定してある。揺動アーム21が起立位置へ揺動するときの限界は、モーター40が回転するときのステップ数を計数することにより知ることができ、ステップ数が所定の値になった時点でモーター40への通電が全て停止される。この状態の揺動アーム21は、フリーストップ構造の摩擦力で位置保持される。
【0037】
原動ギヤ41が矢印Nで示す正転方向へ回転するとき、パネル駆動系39の終段ギヤ53は、原動ギヤ41とは逆向きに回転する。その結果、操作パネル6と一体の第2固定ギヤ55は、図8に示すように基本使用位置から反転する位置へ向かって第2揺動軸25を中心にして揺動し、やがてその裏面が基本使用位置において下面側にあった支持面27で受け止められる。操作パネル6が揺動するときの終段ギヤ53における回転トルクは、先に説明したフリーストップ構造の摩擦抵抗より大きく設定してある。
【0038】
操作パネル6が反転位置まで揺動するときの角度範囲は、揺動アーム21が起立位置まで揺動するときの角度範囲に比べて大きい。このような角度範囲の違いを調整して、揺動アーム21と操作パネル6を同時に揺動限界まで揺動させるために、アーム駆動系38の3軸構造のギヤトレイン45の減速比を、パネル駆動系39の3軸構造のギヤトレイン51の減速比より大きく設定している。このように、両ギヤトレイン45・51の減速比を調整して好適化すると、揺動アーム21が起立位置まで揺動したとき、操作パネル6を反転位置まで揺動させて、図1に示すように機体の斜め前方を指向させることができる。
【0039】
以上のように構成したパネル支持構造は、常態において操作パネル6を基本使用位置に格納して、その下面をパネル支持台5で受け止めた状態で使用する。この状態で、起動スイッチ44をオン操作するとモーター40が起動して、その回転動力がアーム駆動系38およびパネル駆動系39に同時に伝動される。これにより、揺動アーム21は起立する側へ揺動して図7の起立姿勢になる。同時に、操作パネル6は反転する側へ揺動して、図7のように揺動アーム21の支持面27で受け止められる。
【0040】
図7に示す状態の操作パネル6の姿勢は手動で調整でき、例えば操作パネル6を第2揺動軸25の回りに、図7に向かって時計回転方向へ傾動することにより、ディスプレイ16の表示面を上向きに指向させることができる。同様に、揺動アーム21を第1揺動軸24の回りに図7に向かって反時計回転方向へ傾動することにより、揺動アーム21の傾動角度を調整することができる。複写作業、あるいはファクシミリ作業が終了した後は、操作パネル6および揺動アーム21を手動で折りたたみ収納操作して基本使用位置へ戻すことができる。このとき、終段ギヤ47・53は、第1固定ギヤ49および第2固定ギヤ55に沿って公転しながら回動するが、この回転力はトルクリッミッター48・54に組み込まれたワンウェイクラッチで遮断される。そのため、ギヤトレイン45・51は回動せず、したがって操作パネル6および揺動アーム21を簡単かつ速やかに基本使用位置へ戻すことができる。
【0041】
上記の駆動機構は、その一部を以下のように変更して実施することができる。例えば、ワンウェイクラッチ機能が省略されたトルクリッミッター48・54を使用して、モーター40を逆転させて操作パネル6および揺動アーム21を基本使用位置へ自動的に戻すことができる。その場合には、起動スイッチ44を、オフ位置を挟んで正転オン位置と、逆転オン位置に切り換え可能な切り換えスイッチで構成し、起動スイッチ44を逆転オン位置に切り換えることにより、モーター40を逆転させるようにする。
【0042】
また、起動スイッチ44を押しボタンスイッチで構成して、起動スイッチ44がオン操作されている間のみモーター40を駆動して、操作パネル6および揺動アーム21を好みの揺動位置まで変位することができる。その場合の起動スイッチ44は、操作パネル6の近傍に位置する機体の固定壁に設けておくことが好ましい。
【0043】
図9に示すように、アーム駆動系38のギヤトレイン45を構成する第1軸61に電磁クラッチ(動力断続手段)48を配置する。同様にパネル駆動系39のギヤトレイン51の第1軸62に電磁クラッチ(動力断続手段)54を配置する。この場合には、各電磁クラッチ48・54を同時に伝動可能な状態にして、アーム駆動系38とパネル駆動系39とを同時にモーター40の正転動力で駆動し、あるいはモーター40の逆転動力で同時に駆動することができる。
【0044】
さらに、いずれか一方の電磁クラッチ48・54を伝動可能な状態にして、アーム駆動系38とパネル駆動系39を択一的に駆動することができる。例えば、アーム駆動系38とパネル駆動系39を個別に駆動して、操作パネル6の高さおよび前後の傾動姿勢を好みの状態に調整することができる。また、基本使用位置から、パネル駆動系39のみを駆動して、操作パネル6の表示面を斜め下向きに反転することができる。その場合の起動スイッチ44は、複数組のスイッチ接点を備えた複合スイッチや、複数個のスイッチで構成するとよい。
【0045】
図9で説明した駆動機構の電磁クラッチ48・54は、いずれか一方を省略することができる。例えば、パネル駆動系39の電磁クラッチ54を省略して、操作パネル6を起立する向きへ常に駆動可能とし、必要に応じて揺動アーム21を起立する向きへ揺動操作することができる。また、アーム駆動系38の電磁クラッチ48を省略して、揺動アーム21を起立する向きへ常に駆動可能とし、操作パネル6を所望の高さにしてから、その姿勢を所望する角度に揺動操作することができる。
【0046】
上記の実施例では、ギヤトレイン45・51を伝動要素にして第1伝動構造および第2伝動構造を構成したがその必要はない。例えば、遊星歯車機構と巻き掛け伝動機構とで第1・第2の各伝動構造を構成することができる。第4軸46および第3軸52に配置されるトルクリッミッターに換えて、ワンウェイクラッチ(動力断続手段)48・54を使用することができる。その場合には、モーター40の正転動力のみを各終段ギヤ47・53に伝動できる。
【符号の説明】
【0047】
6 操作パネル
21 揺動アーム
24 第1揺動軸
25 第2揺動軸
38 アーム駆動系
39 パネル駆動系
40 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の一側に設けた操作パネルが、パネル支持構造で変位可能に支持されており、
前記パネル支持構造は、揺動アームと、第1ヒンジ軸と、第2ヒンジ軸を含んで2軸ヒンジ構造に構成されており、
前記揺動アームおよび前記操作パネルを揺動操作する駆動機構が、前記揺動アームに設けられており、
前記駆動機構が、前記揺動アームを揺動操作するアーム駆動系と、前記操作パネルを揺動操作するパネル駆動系と、前記両駆動系に回転動力を出力する1個のモーターを含んで構成してある画像形成装置。
【請求項2】
前記アーム駆動系が、第1ヒンジ軸の軸中心と同心状に配置した第1固定ギヤと、前記モーターの回転動力を前記第1固定ギヤへ伝動する第1伝動構造とで構成されており、
前記パネル駆動系が、第2ヒンジ軸の軸中心と同心状に配置した第2固定ギヤと、前記モーターの回転動力を前記第2固定ギヤへ伝動する第2伝動構造とで構成されており、
前記アーム駆動系および前記パネル駆動系が、前記揺動アームの内部に配置してある請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1伝動構造および前記第2伝動構造のそれぞれに、動力を伝動する状態と、動力を遮断する状態とに切り換えることができる動力断続手段が組み込まれている請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記動力断続手段が、電磁クラッチ、トルクリミッタ、ワンウェイクラッチのいずれかひとつで構成してある請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1伝動構造、および前記第2伝動構造のそれぞれが、ギヤトレインと、ワンウェイクラッチと、終段ギヤとで構成されており、
モーターが正転方向へ駆動される状態でのみモーター動力を終段ギヤに伝動して、揺動アームおよび操作パネルを基本使用位置から離れる向きに揺動できる請求項2、3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1ヒンジ軸および前記第2ヒンジ軸のそれぞれに、摩擦抵抗付与手段が組み付けられており、
前記揺動アーム、および前記操作パネルのそれぞれを、任意の揺動位置において前記摩擦抵抗付与手段で位置保持できる請求項2から5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−256570(P2010−256570A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105684(P2009−105684)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】