説明

画像形成装置

【課題】キャリッジの主走査動作に伴う振動を低減、抑制するための構成が複雑で、振動低減が好ましくない場合にまで振動吸収手段が作用する。
【解決手段】装置本体ベース部材1上に印字機構部10が支持され、印字機構部10は、ベース部材1上に、振動を低減する、振動低減特性を制御可能な振動吸収手段11を介して、左右の側板12A、12Bが取付けられ、左右の側板12A、12B間に横架したガイドロッド13及び図示しないスライドレールで記録ヘッドを搭載したキャリッジ14を主走査方向に摺動自在に保持し、キャリッジ14の速度プロファイルに合わせて振動吸収手段11が振動吸収機能を発揮する状態と発揮しない状態とに制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に画像形成手段をキャリッジに搭載して往復移動させる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、洗浄液、保存液、定着処理液なども含まれる。
【0004】
このような画像形成装置として、上述したように、画像形成手段である記録ヘッドとしての液体吐出ヘッドをキャリッジに搭載し、液体吐出ヘッドを主走査方向に移動走査し、媒体を主走査方向と直交する副走査方向に間歇的に移動させながら、液体吐出ヘッドから液滴を吐出させて画像を形成するシリアル型画像形成装置が知られている。なお、以下の説明でも画像形成手段は液体吐出ヘッドである例で説明しているが、画像形成手段としては液体吐出ヘッドに限らず、その他の画像形成手段であっても本発明は同様に適用することができる。
【0005】
ところが、シリアル型画像形成装置においては、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動に伴って装置本体に振動が誘発される。特に、印刷速度向上のため、キャリッジ速度が高速化し、これに伴ってキャリッジ主走査時の加減速が急となり、装置本体の振動が大きなものとなっている。また、画像読取装置(スキャナ)を搭載した複合機においては、プリンタ側で生じる上記振動のため、スキャナキャリッジ走査に振動を与えてしまい、読取り画像の劣化を引き起こすことになる。
【0006】
そのため、従来からキャリッジの振動を低減ないし抑制することが行われている。例えば、特許文献1には、キャリッジの往復運動に伴って生じる振動が本体フレームに伝播することを低減するために、キャリッジ駆動ユニットと本体フレームとの間に振動吸収部材を設けることが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、キャリッジ駆動ベルトのキャリッジ対向位置に制振部材を取り付けることが記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、プリンタ本体に対する衝撃力を検出して、検出された衝撃力に応じてプリンタ支持手段の支持力を制御することが記載されている。
【0009】
また、特許文献4には、駆動力をキャリッジに伝達する伝達部材が振動することを抑制する振動抑制手段を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−349792号公報
【特許文献2】特開2005−081673号公報
【特許文献3】特開2005−212160号公報
【特許文献4】特開2003−237165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、シリアル型画像形成装置においては、キャリッジの往復動作を行い、記録ヘッドから液滴を吐出して画像を形成している状態のときには、キャリッジを移動可能に支持する支持部材(ガイド部材)が装置本体フレームに対して高い剛性で固定保持されている方がキャリッジの振動を低減し、液滴の着弾位置精度を高める上でも好ましい。
【0012】
そのため、特許文献1のようにキャリッジ駆動ユニットと装置本体フレームを振動吸収部材として例えば防振ゴムなどを介して取付けると、キャリッジは常時防振ゴムなどの振動可能な部材によって保持されることになり、却って画像品質が低下するおそれがある。
【0013】
また、特許文献3に記載されているように衝撃力を検出して検出した衝撃力に応じてプリンタ支持手段の支持力を制御する構成にあっては、構成が複雑になるという課題がある。
【0014】
本発明は上記の課題の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、キャリッジの往復移動によって発生する振動が装置本体側などに伝達されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
画像形成手段を搭載した主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジの速度プロファイルを記憶する手段と、
振動を低減する、振動低減特性を制御可能な振動吸収手段と、
前記速度プロファイルに合わせて前記振動吸収手段の振動低減特性を制御する手段と、を備えている
構成とした。
【0016】
ここで、前記画像形成手段が液滴を吐出する記録ヘッドであって、前記キャリッジには前記記録ヘッドに供給するインクを収容したタンクが搭載され、前記タンクのインク残量に基づいて前記振動吸収手段の振動低減特性を制御する構成とできる。
【0017】
また、前記振動吸収手段は前記キャリッジを主走査方向に移動可能に支持する支持手段を取り付けた部材と装置本体のフレーム部材との間に設けられている構成とできる。
【0018】
また、前記振動吸収手段は前記キャリッジを備える装置本体と前記装置本体上に配置された画像読取り装置の支持部との間に設けられている構成とできる。
【0019】
また、前記キャリッジを往復移動させるキャリッジ駆動手段を保持するキャリッジ走査支持部材を有し、前記振動吸収手段は前記キャリッジ走査支持部材と装置本体のフレーム部材との間に設けられている構成とできる。
【0020】
また、前記キャリッジを主走査方向に移動可能に支持する支持手段が前記キャリッジ走査支持部材に保持されている構成とできる。
【0021】
また、前記キャリッジの位置を検知するエンコーダシートが前記装置本体のフレーム部材に保持されている構成とできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、キャリッジの速度プロファイルに合わせて振動吸収手段の振動低減特性を制御するので、簡単な構成で、キャリッジの往復移動によって発生する振動が装置本体側などに伝達されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の画像形成装置の印字機構部の斜視説明図である。
【図2】同印字機構部の支持部分の正面説明図である。
【図3】振動吸収手段の一例を示す模式的説明図である。
【図4】振動吸収手段の他の例を示す模式的説明図である。
【図5】振動吸収手段の制御に関わる制御部の機能ブロック説明図である。
【図6】キャリッジの速度プロファイルの例を示す説明図である。
【図7】振動吸収制御部による振動吸収制御の説明に供するフロー図である。
【図8】本発明の第2実施形態における振動吸収制御部による振動吸収制御の説明に供するフロー図である。
【図9】本発明の第3実施形態の画像形成装置の印字機構部の要部平面説明図である。
【図10】同じくキャリッジの側面説明図である。
【図11】同実施形態における振動吸収制御部による振動吸収制御の説明に供するフロー図である。
【図12】本発明の第4実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図13】本発明の第5実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図14】本発明の第6実施形態の説明に供する模式的平面説明図である。
【図15】同じく要部斜視説明図である。
【図16】同実施形態を適用する装置本体のフレーム構成の一例を示す分解斜視説明図である。
【図17】本発明の第7実施形態の説明に供する模式的平面説明図である。
【図18】同実施形態を適用する装置本体のフレーム構成の一例を示す分解斜視説明図である。
【図19】本発明の第8実施形態の説明に供する模式的平面説明図である。
【図20】本発明の第9実施形態の説明に供する模式的平面説明図である。
【図21】本発明の第10実施形態の説明に供する模式的平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同実施形態の画像形成装置の印字機構部の斜視説明図、図2は同印字機構部の支持部分の正面説明図である。
【0025】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、装置本体ベース部材1上に印字機構部10が支持されている。印字機構部10は、ベース部材1上に、振動を低減する、振動低減特性を制御可能な本発明における振動吸収手段11を介して、左右の側板12A、12B(区別しないときは「側板12」という。)が取り付けられている。
【0026】
そして、左右の側板12A、12B間に横架したガイド部材(支持部材)であるガイドロッド13及び図示しないスライドレールで画像形成手段としての液滴を吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジ14を主走査方向(矢示X方向)に摺動自在に保持し、主走査モータ16によって駆動プーリ17、従動プーリ18及びタイミングベルト19を介して主走査方向に移動走査する。
【0027】
一方、キャリッジ14の下側には、図示しない用紙を副走査方向に搬送する搬送手段としての搬送ローラ21、22を保持した搬送ガイド部材23が配置され、搬送ガイド部材23は左右の側板12A、12Bに両端部が固定されている。
【0028】
なお、画像形成装置としては、図示しないが用紙を搬送ローラ21に給紙する給紙手段や、画像が形成された用紙を排紙する排紙手段なども備えている。
【0029】
ここで、振動吸収手段11は、例えば空気圧、油圧など流体を出し入れすることで、あるいは、磁力の切替えによって、振動吸収機能を発揮する状態と振動吸収機能を発揮しない状態との少なくとも2つの状態(振動低減特性)を取り得るものである。
【0030】
例えば、図3に示すように、ケース部材31の開口部に移動ベース部材32が摺動可能に嵌め込まれ、この移動ベース部材32とケース部材31との間にポンプ34によってエアー又は作動油が出し入れされることで伸縮する弾性部材33が収容され、例えばケース部材31は装置本体のベース部材1に、移動ベース部材32には側板12が固定して取付けられる。
【0031】
そして、図3(a)に示す状態では移動ベース部材32がケース部材31の支持部31aで支持されており、この状態から弾性部材33内にエアー又は油圧を供給することで、図3(b)に示すように移動ベース部材32が矢示方向にケース部材31の支持部31aから離間して上昇し、弾性部材33で支持された状態になり、側板12から移動ベース部材32に加わる振動が弾性部材33で吸収される。
【0032】
また、図4に示すように、ケース部材31の開口部に移動ベース部材32が摺動可能に嵌め込まれ、この移動ベース部材32にはマグネット35が固定され、一方ケース部材31内には電磁マグネット36が固定配置され、例えばケース部材31は装置本体のベース部材1に、移動ベース部材32には側板12が固定して取付けられる。
【0033】
そして、図4(a)に示す状態では移動ベース部材32のマグネット35と電磁マグネット36の極性が互いに吸引し合う方向に電磁マグネット36に給電されて、移動ベース部材32がケース部材31の支持部31aで支持されており、この状態から電磁マグネット36にマグネット35と反発し合う方向に給電することで、図4(b)に示すように移動ベース部材32が矢示方向にケース部材31の支持部31aから離間して上昇し、電磁マグネット36から浮遊した状態になり、側板12から移動ベース部材32に加わる振動はマグネット35、36間の反発力で吸収される。
【0034】
次に、振動吸収手段11の制御に関わる制御部ついて図5のブロック図を参照して説明する。
印字制御部41は図示しないパーソナルコンピュータなどの外部情報処理装置などからの画像データを受領して、受領した画像データに応じて記録ヘッド15を駆動制御することで液滴を吐出させる。主走査制御部42は、速度プロファイル格納部43に格納された図6に示すようなキャリッジ14の速度プロファイルと、キャリッジ14の主走査方向位置を検出するリニアエンコーダ44からのエンコーダ出力とに応じて、目標速度に対する現在速度の偏差から制御量(例えばPI制御値)を演算して、モータ駆動部45を介して主走査モータ16を駆動制御し、キャリッジ14を主走査方向に所要のキャリッジ速度で移動走査させる。
【0035】
振動吸収制御部46は、主走査制御部42によってキャリッジ14の主走査移動が行われるときに、速度プロファイル格納部43に格納されたキャリッジ14の速度プロファイルに基づいて、キャリッジ速度の加速及び減速領域では、駆動部47を介して振動吸収手段11が振動を吸収する状態に制御し、キャリッジ速度の等速領域では振動吸収手段11が振動を吸収しない状態に制御する。
【0036】
この振動吸収制御46による制御の一例について図7のフロー図を参照して説明する。
振動吸収制御部46は、キャリッジ14の移動が開始されると、キャリッジ14の移動速度が速度プロファイル上加減速領域であるか否かを判別し、キャリッジ14の速度が加減速領域(加速領域又は減速領域)であれば振動吸収手段11が振動を吸収する状態(振動吸収手段有効)にし、加減速領域でなければ(等速領域であれば)振動吸収手段11が振動を吸収しない状態(振動吸収手段無効)にする。
【0037】
したがって、キャリッジ14を主走査方向に移動走査するとき、キャリッジ14の加速及び減速領域では印字機構部10は振動吸収手段11が振動を吸収する状態でベース部材1に支持される。これに対し、キャリッジ14の等速(定速)領域では印字機構部10は振動吸収手段11が振動を吸収しない状態でベース部材1に支持される、つまり、印字機構部10はベース部材1に固定された状態で支持される。
【0038】
すなわち、キャリッジ14を主走査方向に移動走査するときの装置本体の振動はキャリッジ14の加速時及び減速時の慣性力によって発生する。このキャリッジ14の加減速及び等速(定速)領域はキャリッジの速度プロファイルによって定まることになる。
【0039】
そこで、速度プロファイルから得られる加速及び減速領域では振動吸収手段11の振動吸収機能を発揮させて装置本体のベース部材1に支持することで、装置本体が振動することを防止する。これに対し、キャリッジ14の定速領域では記録ヘッド15から液滴を吐出して画像形成を行っているので、この間は振動吸収手段11の振動吸収機能を無効にして装置本体のベース部材1に固定支持することで、キャリッジ14の振動を抑制し、印字機構部10全体が揺れて液滴と用紙との着弾位置精度が低下することを防止している。
【0040】
このように、キャリッジの速度プロファイルに合わせて振動吸収手段の振動低減特性を制御することで、キャリッジ移動による振動の大きさを検出する手段が不要になり、簡単な構成で、キャリッジの往復移動によって発生する振動が装置本体側などに伝達されないようにすることができるとともに、振動吸収作用がむしろ弊害になる場合には振動吸収を行わないようにすることができる。なお、上記の例では加減速領域で振動吸収を行うようにしているが、加速時のみ、あるいは、減速時のみ振動吸収を行うようにすることもできる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態について図8をも参照して説明する。本実施形態は、印刷モードに応じて振動吸収手段を制御する形態である。
上述した画像形成装置において、前述した図6に示すように、印刷速度と印刷品質(画像品質)との関係で、キャリッジ移動速度を高画質印刷時よりも相対的に高く(速く)して印刷を行う通常印刷(ドラフト)モードと、ドラフトモードよりもキャリッジ速度を相対的に低く(遅く)して印刷を行う高画質モードとを、印刷モードとして有する場合がある。
【0042】
この場合、キャリッジ速度プロファイルは、図6に示すように、印刷モードによって異なることになり、例えば高画質モード(印刷速度が遅い)では低速、ドラフト時(印刷速度が速い)などは高速となる。そのため、キャリッジ14の加速時及び減速時の加速度がモードによって異なることになる。
【0043】
そこで、図8に示すように、振動吸収制御部46は、通常印刷モードであれば、前述した第1実施形態と同様にキャリッジの速度プロファイルに合わせて加減速領域では振動吸収手段11による振動吸収を有効とし、等速領域では振動吸収手段11による振動吸収を無効とする処理を行う。これに対し、高画質印刷モードであれば、加減速領域を含めてキャリッジ14の移動中も振動吸収手段11による振動吸収を無効とする処理を行う。
【0044】
つまり、キャリッジ速度が速く加速時及び減速時の振動が発生し易いドラフトモードでは前述したように振動吸収手段11による振動吸収を行わせ、キャリッジ速度が遅く加速時や減速時の振動が発生し難く、あるいは発生しても小さな振動である高画質モードでは前述したように振動吸収手段11による振動吸収を行わないように制御する。
【0045】
このように、印刷モードに合わせて振動吸収手段を制御することによって、効率的な制御を行うことができる。
【0046】
次に、本発明の第3実施形態について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は同実施形態の画像形成装置の印字機構部の要部平面説明図、図10は同じくキャリッジの側面説明図である。
【0047】
この画像形成装置もシリアル型画像形成装置であり、印字機構部100は、前述した第1実施形態と同様に図示しない装置本体ベース部材上に振動吸収手段を介して支持された左右の側板102A、102B(区別しないときは「側板112」という。)を有し、これらの側板102A、102B間に横架したガイド部材(支持部材)である主ガイドロッド103及び従ガイドロッド104で画像形成手段としての液滴を吐出する記録ヘッド115を搭載したキャリッジ114を主走査方向(矢示X方向)に摺動自在に保持し、主走査駆動力伝達機構を構成する主走査モータ106によって駆動プーリ107、従動プーリ108及びタイミングベルト109を介して主走査方向に移動走査する。
【0048】
このキャリッジ114には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液滴を吐出する画像形成手段としての液体吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド115及びこの記録ヘッド115にフィルユニット116を介してインクを供給するサブタンク117とが搭載され、記録ヘッド115を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0049】
そして、キャリッジ114の主走査方向に沿ってエンコーダスケール118を配置し、キャリッジ114の背面側にはエンコーダスケール118の目盛り(スケール:位置識別部)を読み取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ119を取り付け、これらのエンコーダスケール118とエンコーダセンサ119とで位置検出装置としてのリニアエンコーダ120(前述したリニアエンコーダ44に相当する。)を構成している。
【0050】
また、キャリッジ114のサブタンク117には図示しない装置本体に着脱自在に装着される各色のメインタンク(インクカートリッジ)121からインクチューブ122を介してインクが補充供給される。
【0051】
一方、キャリッジ114の下側には、図示しない用紙を副走査方向に搬送する搬送手段としての搬送ベルト131が配置されている。この搬送ベルト131は、無端状ベルトであり、サブ側板130A、130Bに回転自在に保持された図示しない搬送ローラとテンションローラとの間に掛け渡されて、図示しない副走査モータによって搬送ローラが回転駆動されることによって矢示Y方向(副走査方向)に周回移動される。また、搬送ベルト131の下流側には画像が形成された用紙を排出する排紙コロ132が配置されている。なお、画像形成装置は、図示しないが用紙を搬送ベルト131に給紙する給紙手段なども備えている。
【0052】
また、キャリッジ114の主走査方向の一方の非画像形成領域には記録ヘッド114の維持回復を行う維持回復機構141が配置され、この維持回復機構141は記録ヘッド115からインクを吸引すると共にノズル面を保湿する吸引キャップ142とノズル面を保湿する保湿キャップ143、ノズル面を払拭するワイパブレード144、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出によって生じる液滴を受ける空吐出受け145などを備えている。
【0053】
また、キャリッジ113の主走査方向の他方の非画像形成領域にも画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出によって生じる液滴を受ける空吐出受け146を備えている。
【0054】
この画像形成装置においても、図示しない給紙手段から給紙された用紙を搬送ベルト131で間歇的に搬送し、キャリッジ114を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド115を駆動することにより、停止している用紙に液滴を吐出して1行分を記録し、用紙を所定量搬送後、次の行の記録を行なう動作を繰り返して用紙上に画像を形成し、画像形成後用紙を排紙する。
【0055】
ここで、サブタンク117に収容されるインク量は常に一定ではなく、印字毎に消費されて、サブタンク117が空になる前にメインタンク121からインクが補充されるが、インク満タン時と空の時の質量差は大きく、慣性力は質量によって決まるため、サブタンク117のインク量によってキャリッジ114の加速時及び減速時の振動特性も変化することになる。
【0056】
そこで、この画像形成装置では、図11に示すように、振動吸収制御部46は、サブタンク117のインク残量が所定値以上であれば、前述した第1実施形態と同様にキャリッジの速度プロファイルに合わせて加減速領域では振動吸収手段11による振動吸収を有効とし、等速領域では振動吸収手段11による振動吸収を無効とする処理を行う。これに対し、インク残量が所定量以上でなければ、加減速領域を含めてキャリッジ14の移動中も振動吸収手段11による振動吸収を無効とする処理を行う。
【0057】
このように、サブタンク117のインク量に応じて振動吸収手段の振動低減特性を変化させることで、効率的な振動吸収を行うことができる。なお、サブタンク117のインク量は、吐出された滴数及び滴量から消費インク量をカウントし、サブタンク117が満タンのときのインク量(予め判明している)から消費インク量を差し引くことで得られる。
【0058】
また、メインタンク121からサブタンク117へのインク供給を行う供給チューブ122を介して行っているが、この供給チューブ122の剛性は環境によって大きく変化する。特に、低温時に剛性が上がり、キャリッジ114の加速時及び減速時の負荷に大きく影響を与え、負荷が大きくなれば加速時及び減速時の負荷も変化し、振動の大きさも変化することになる。
【0059】
そこで、キャリッジ114の周辺温度或いは画像形成装置内の温度を検出する温度検出手段を備え、検出された温度に応じて振動吸収手段の振動低減特性を変化させるようにすることで、キャリッジ114の負荷変動に応じた装置本体の振動低減、抑制を行うことができる。
【0060】
次に、本発明の第4実施形態について図12を参照して説明する。なお、図12は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
この画像形成装置は、プロッタ部となる印字機構部10上方に画像読取り装置(スキャナ)200を配置した複合機構成の画像形成装置である。装置本体のベース部材1上にスキャナ支持フレーム部材201を介してスキャナ200を支持し、スキャナ支持フレーム部材201とベース部材1との間に振動吸収手段11を配置している。
【0061】
つまり、スキャナ200はシート(原稿)を自動送りしながら画像を読取るため、画像形成装置本体が振動すると、スキャナ200内部の読み取りキャリッジが振動して、読み取り画像の劣化を招くことになる。この場合、スキャン動作(読取り動作)とプロッタ動作(記録動作)を切り離し、スキャン動作中はプロッタ動作を行わない(プロッタ部の記録用キャリッジが走査しない)ようにすることもできるが、このような構成にすると、コピーの生産性が著しく低下することになる。
【0062】
そこで、スキャン支持フレーム部材201とベース部材1との間に振動吸収手段11を介在させて、装置本体のベース部材1に振動が伝わったとしても、当該振動がスキャナ200まで伝播しないようにしてスキャナ200の振動を低減・抑制し、プロッタ部を動作中であっても高品質の読み取りを行えるようにしている。これにより、生産性良くコピーを行うことができる。
【0063】
また、複合機の場合、コピーを行う場合の複数の印刷モード(コピーモード)が設定されており(例えば、キャリッジ速度が遅い高画質モード、キャリッジ速度が速い高速モードなど)、コピーモード(品質)によって振動吸収手段11の振動吸収特性を変化させることもできる。また、連続コピー時などには、スキャナ200の読取りキャリッジが走査していない場合もあり、この場合は振動がスキャナ200に伝播しても不具合はないので、スキャナ200の読取りキャリッジの動作に応じて、振動吸収手段11による振動吸収作用(機能)を有効にするか否かを選択するようにすることもできる。
【0064】
上述したような振動吸収手段の振動吸収特性の切替制御には、制御部への負荷を与えることになるので、必要時のみ振動吸収特性の制御を行うことが好ましい。消費電力の観点からも不必要な場合には制御せず、必要な時に必要な制御をすることが好ましい。さらに、ユーザに振動抑制制御を行うか否かを選択できるようにすることもできる。
【0065】
次に、本発明の第5実施形態について図13を参照して説明する。なお、図13は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
この実施形態では、装置本体のフレーム部材をベース部材301及びこのベース部材301の左右に立設したメイン側板302、302で構成し、印字機構部10の側板2とベース部材301との間、及び、印字機構部10の側板2とメイン側板302との間にそれぞれ振動吸収手段11を介装している。
【0066】
これにより、印字機構部10の上下方向への振動及び左右方向(主走査方向への振動)を低減、抑制することができる。
【0067】
次に、本発明の第6実施形態について図14及び図15を参照して説明する。なお、図14は同実施形態の要部平面説明図、図15は同じく要部斜視説明図である。また、図中の符号については図9及び図10と同様な部分は同じ符号を用いる。
この実施形態では、キャリッジ114を主走査方向に移動走査(往復移動)させるキャリッジ走査機構を構成する、駆動手段である主走査モータ106、駆動プーリ107、従動プーリ108及びタイミングベルト109を保持するキャリッジ走査支持部材301を備えている。そして、キャリッジ走査支持部材301を装置本体のフレーム部材である側板102A、102Bに振動吸収手段11を介して保持している。
【0068】
このように構成することで、前記第1実施形態の効果に加えて、振動吸収手段の小型化を図ることができる。
【0069】
つまり、前記第1実施形態において、振動吸収手段はキャリッジ走査に関わる構成要素を含んだ部分を支持しているために、大きな質量を支える必要があり、その結果、振動吸収手段そのものが大型化し、コストも高くなる。ここで、キャリッジ走査の加速時及び減速時の慣性力によって装置本体の振動が発生するのは、キャリッジ慣性力がキャリッジ駆動用のタイミングベルトなどを介してキャリッジ走査用の駆動モータ(主走査モータ)に伝わり、主走査モータが装置本体のフレーム部材に取り付けられているためである。また、タイミングベルトは、ベルト張力を与えるための従動プーリに掛け回され、従動プーリも装置本体のフレーム部材に取り付けられているため、ここからも振動が伝播される。
【0070】
そこで、この実施形態では、これらの主走査モータや従動プーリなどのキャリッジ主走査用の駆動力伝達機構を装置本体のフレーム部材から切り離すことによって、キャリッジ慣性力による本体振動を抑制している。このとき、キャリッジ主走査用の駆動力伝達機構の質量は相対的に小さいので、振動吸収手段も小型化することができる。
【0071】
ここで、この実施形態を適用する装置本体のフレーム構成の一例について図16の分解斜視説明図を参照して説明する
このフレーム構成では、左右の側板(メイン側板)102A、102Bと、搬送手段を保持するサブ側板130A、130Bと、前ステー151と、後ステー152と、キャリッジ114の上端部を引っ掛けてキャリッジ114を摺動自在に支持するガイドレール153とを有し、後ステー152をキャリッジ走査支持部材301としてメイン側板102A、102Bとの間に振動吸収手段11を介装して取付ける。
【0072】
次に、本発明の第7実施形態について図17を参照して説明する。なお、図17は同実施形態の要部平面説明図である。
この実施形態も、前記第6実施形態と同様にキャリッジ走査支持部材301を有し、キャリッジ走査支持部材301の背面側を、振動吸収手段11を介して装置本体のフレーム部材である側板102A、102Bに取り付けている。
【0073】
ここで、この実施形態を適用する装置本体のフレーム構成の一例について図18の分解斜視説明図を参照して説明する
このフレーム構成では、樹脂一体成型された一体フレーム161と、後ステー162と、駆動側板163とを有し、後ステー162をキャリッジ走査支持部材301として一体フレーム161との間に振動吸収手段11を介装して取付ける。
【0074】
次に、本発明の第8実施形態について図19を参照して説明する。なお、図19は同実施形態の要部平面説明図である。
この実施形態は、前記第6実施形態において、キャリッジ114の位置、速度などを検出するためのエンコーダを構成するエンコーダシート118を装置本体のフレーム部材を構成する側板102A、102B間に保持したものである。
【0075】
このように構成することで、キャリッジ114の位置制御の精度が低下することが防止されて画質の劣化を防止できる。
【0076】
つまり、キャリッジ114の位置制御は、エンコーダシート118をキャリッジ114のエンコーダセンサ119(図10参照)で読み取り、フィードバック制御で行っている。このとき、エンコーダシート118をキャリッジ走査支持部材301で保持すると、装置本体のフレーム部材に対してエンコーダシート118が振動することになり、キャリッジ位置を制御精度が低下して画質劣化を招くことになる。そこで、エンコーダシート118についてはキャリッジ走査支持部材301ではなく装置本体のフレーム部材(側板102A、102B間)に保持することによって、エンコーダシート118が振動することが防止され、キャリッジ位置の制御精度の低下、画質劣化を防止できる。
【0077】
次に、本発明の第9実施形態について図20を参照して説明する。なお、図20は同実施形態の要部平面説明図である。
この実施形態は、前記第6実施形態において、キャリッジ114を摺動自在に支持する支持手段である主ガイドロッド103をキャリッジ走査支持部材301に設けた側板部301a、301b間にて保持している。
【0078】
このように構成することで、キャリッジ114の往復移動による振動が装置本体側に伝播することをより低減することができる。
【0079】
つまり、キャリッジ114は主ガイドロッド103上を摺動して往復移動するが、このとき、キャリッジ114と主ガイドロッド103との摺動負荷が大きいと、キャリッジ114の加速時及び減速時の慣性力によって生じる振動が主ガイドロッド103を介して装置本体側に伝播することになる。そこで、主ガイドロッドなどのキャリッジを移動可能に支持する支持部材もキャリッジ走査支持部材に保持することで、支持手段を介した振動の伝播を低減することができる。
【0080】
次に、本発明の第10実施形態について図21を参照して説明する。なお、図21は同実施形態の要部平面説明図である。
この実施形態は、前記第9実施形態において、キャリッジ走査支持部材301の装置本体のフレーム部材に対する相対位置変位を検知する検知手段であるセンサ302を、キャリッジ走査支持部材301に取り付けている。
【0081】
このように構成することで、特にエンコーダ120を用いてキャリッジ114の速度を検出する場合の検出精度を向上することができる。
【0082】
つまり、キャリッジ114の走査制御は、前述したようにエンコーダ120を用いて行っているが、この場合、キャリッジ114の位置を検出して制御する構成と、キャリッジ114の速度を検出して制御する構成を採用することができる。ここで、後者のキャリッジ114の速度を検出して制御する場合、キャリッジ走査支持部材301が装置本体のフレーム部材に対して変位している(振動している)と、用紙に対する位置にズレが生じることになる。そこで、装置本体のフレーム部材とキャリッジ走査支持フレーム301との相対変位を検知し、その変位量をキャリッジ走査制御にフィードバックすることで、用紙に対するキャリッジ位置ズレを補正することで、画像劣化を防止できる。
【0083】
この装置本体のフレーム部材とキャリッジ走査支持フレーム301の相対位置検知に装置本体のフレーム部材に取り付けられた既存のエンコーダシート118を利用することで、構成を簡単にでき、コスト上昇を抑えることができる。
【0084】
また、装置本体のフレーム部材とキャリッジ走査支持フレーム301の相対位置の検知によって得られたキャリッジ走査支持部材301の変位量に応じて振動吸収手段11の振動吸収特性を制御することもできる。振動吸収特性を制御することで、装置本体のフレーム部材とキャリッジ走査支持フレーム301の相対位置を制御することができ、画像劣化をより確実に防ぐことができる。
【0085】
なお、上記実施形態では主にプリンタ構成の画像形成装置に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、また、インク以外の液体である記録液や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…装置本体のベース部材
10…印字機構部
11…振動吸収手段
12A、12B…側板
13…ガイドロッド
14…キャリッジ
15…記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成手段を搭載した主走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジの速度プロファイルを記憶する手段と、
振動を低減する、振動低減特性を制御可能な振動吸収手段と、
前記速度プロファイルに合わせて前記振動吸収手段の振動低減特性を制御する手段と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成手段が液滴を吐出する記録ヘッドであって、前記キャリッジには前記記録ヘッドに供給するインクを収容したタンクが搭載され、前記タンクのインク残量に基づいて前記振動吸収手段の振動低減特性を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記振動吸収手段は前記キャリッジを主走査方向に移動可能に支持する支持手段を取り付けた部材と装置本体のフレーム部材との間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記振動吸収手段は前記キャリッジを備える装置本体と前記装置本体上に配置された画像読取り装置の支持部との間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記キャリッジを往復移動させるキャリッジ駆動手段を保持するキャリッジ走査支持部材を有し、前記振動吸収手段は前記キャリッジ走査支持部材と装置本体のフレーム部材との間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記キャリッジを主走査方向に移動可能に支持する支持手段が前記キャリッジ走査支持部材に保持されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記キャリッジの位置を検知するエンコーダシートが前記装置本体のフレーム部材に保持されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−52417(P2010−52417A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41467(P2009−41467)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】