説明

画像形成装置

【課題】 供給ユニットをフレームに対して正確に位置決めすることのできる画像形成装置の提供。
【解決手段】 フランジ付きパイプ200を介して接続された一対の板金フレーム100L,100Rの前端には、前方から後方に向かって切り欠かれたU字形の溝106,107が打ち抜き加工によって形成されている。また、給紙ユニット50の左右側面には、左右方向外側に円筒状に突出して溝106,107にそれぞれ係合するボス61,62が形成されている。ネジ穴57L,57Rを介してネジ穴104にネジを螺合させることによってボス61,62を溝106,107に確実に係合させ、板金フレーム100L,100Rに対して給紙ユニット50を正確に位置決めすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成手段を備え、その画像形成手段によって被記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関し、詳しくは、上記画像形成手段へ向けて被記録媒体を供給する供給ユニットと、上記画像形成手段を支持するフレームとを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙等の被記録媒体に電子写真方式等の適宜の方法で画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置が考えられている。また、この種の画像形成装置では、その画像形成手段を被記録媒体の供給方向左右両側から一対のフレームによって支持することも提案されている。
【0003】
ここで、上記画像形成手段に給紙ローラ等の供給手段を備えた供給ユニットを介して被記録媒体を供給する場合、画像形成手段に対して供給ユニットを正確に位置決めする必要がある。そこで、供給ユニットの一例としての多目的ユニットをフレームに取り付けるため、一対のフレームの端部をそれぞれ折り曲げ、その折り曲げられた面に供給ユニット側の面を当接させることによって供給ユニットをフレームに位置決めすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−154974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記フレームを樹脂で成形した場合は、成形時及び画像形成時に生じる樹脂の熱膨張/収縮により位置決め精度に限界がある。また、上記フレームを金属で成形した場合にも、金属の折り曲げ加工には精度に限界がある。そこで、本発明は、供給ユニットなどの被記録媒体供給系をフレームに対して正確に位置決めすることのできる画像形成装置の提供を目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明に係る画像形成装置は、搬送経路に沿って搬送される被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、記搬送経路へ向け被記録媒体を供給する供給ユニットと、画像形成手段および供給ユニットを支持するフレーム構造体とを備え、フレーム構造体は、被記録媒体の面とほぼ直交しかつその搬送方向とほぼ平行な、搬送経路を挟んで相互に対向する面を有する一対の金属製の板状のフレームと、該一対のフレームを、搬送経路を挟む間隔をおいて相互に連結する複数の連結フレームとからなり、画像形成手段は、複数の連結フレームによって囲まれる空間内に配置されかつ一対のフレーム間を橋渡して該一対のフレームに支持され、供給ユニットは、一対のフレーム間を橋渡して、該一対のフレームにおける搬送経路の供給側端部に、該フレームの面とほぼ平行な方向から固定する固定手段により両端を支持されていることを特徴とする。
また、上記目的を達するためになされた本発明の画像形成装置は、被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、該画像形成手段へ向けて被記録媒体を供給する供給手段を備えた供給ユニットと、上記画像形成手段を、上記被記録媒体の供給方向左右両側から支持する一対の金属製のフレームと、を備え、上記供給ユニットは、上記各フレームに形成された溝に係合する一対のボスを備え、該各ボスを上記各溝に係合させることによって上記各フレームに位置決めされることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明の画像形成装置では、一対の金属製のフレームにそれぞれ形成された溝に、供給ユニットに形成された一対のボスを係合させることによって、その供給ユニットを各フレームに位置決めしている。ここで、上記溝は金属製のフレームに打ち抜き等によって形成することができ、金属製のフレームに折り曲げ加工を施す場合やフレームを樹脂で成形する場合に比べて加工精度が向上する。このため、本発明では、上記溝と上記ボスとの係合によって供給ユニットをフレームに対して正確に位置決めすることができる。
【0008】
なお、本発明は以下の構成に限定されるものではないが、上記各フレームは、上記各溝と上記各ボスとの係合方向に沿ってネジを螺合可能なネジ受け部を備え、上記供給ユニットは、上記各溝と上記各ボスとの係合方向に沿って上記ネジを挿入可能な一対のネジ穴を備え、上記各ネジ穴を通って上記各ネジ受け部にそれぞれ上記ネジを螺合させることによって上記各ボスが上記各溝に係合され、その係合時に上記各ネジ受け部と上記各ネジ穴との間に隙間が残るように設計されてもよい。
【0009】
この場合、供給ユニットの各ネジ穴を通ってフレームの各ネジ受け部にそれぞれネジを螺合させることによって、上記各ボスが上記各溝に係合される。しかも、その係合時には、上記各ネジ受け部と上記各ネジ穴との間に隙間が残るように設計されているので、上記ネジの締め付けによって上記各ボスを上記各溝にそれぞれ確実に係合させることができる。従って、この場合、供給ユニットをフレームに対して一層正確に位置決めすることができる。なお、上記隙間が残るような設計とは、公差を累積した際に、最悪の場合に上記隙間が0になる設計であってもよい。
【0010】
また、本発明において、上記供給ユニットは、着脱可能に構成されたカセットに収容された被記録媒体を上記画像形成手段へ向けて搬送するものであって、上記カセットの装着位置を規定する位置決め部が形成されてもよい。この場合、カセットを位置決め部によって供給ユニットに対して位置決めすることができ、延いては、そのカセットをフレームに対しても正確に位置決めすることができる。よって、上記カセットに収容された被記録媒体を上記画像形成手段へ向けて安定して搬送することができる。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、該画像形成手段へ向けて被記録媒体を供給する供給手段を備えた供給ユニットと、上記画像形成手段を、上記被記録媒体の供給方向左右両側から支持する一対の金属製のフレームと、を備え、上記供給ユニットは、上記各フレームに対して位置決めされ、着脱可能に構成されたカセットに収容された被記録媒体を上記画像形成手段へ向けて搬送するものであって、上記カセットの装着位置を規定する位置決め部が形成されたものであってもよい。
【0012】
このように構成された本発明の画像形成装置では、金属製のフレームに位置決めされた供給ユニットは、被記録媒体を収容したカセットが着脱可能に構成されている。そして、本発明では、この供給ユニットに対して、上記カセットを、その供給ユニットに形成された位置決め部によって位置決めすることができる。従って、本発明では、被記録媒体供給系の一部を構成する上記カセットを、上記フレームに対して正確に位置決めすることができる。よって、上記カセットに収容された被記録媒体を上記画像形成手段へ向けて安定して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用されたプリンタの構成を表す中央断面図である。
【図2】そのプリンタのフレーム構造を表す斜視図である。
【図3】そのプリンタのフレーム構造を表す分解斜視図である。
【図4】(A)はそのフレームの板金フレームと樹脂フレームとの接続を表す模式図であり、(B)は上記板金フレームと給紙ユニットとの接続を表す模式図である。
【図5】上記フレーム構造の一部を拡大して表す分解斜視図である。
【図6】上記フレーム構造の一部を拡大して表す斜視図及びその要部拡大図である。
【図7】給紙カセットと給紙ユニットとの位置関係を表す側面図であり、(A)は給紙カセットを引き出した状態、(B)は給紙カセットを収納した状態である。
【図8】給紙カセットの樹脂フレームに対する位置決め機構を表す斜視図である。
【図9】その位置決め機構の構成を水平断面で切断して表す断面図である。
【図10】図9の要部を拡大して動作と共に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.プリンタの全体構成
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された画像形成装置の一例としてのプリンタ1の構成を表す中央断面図である。なお、以下の説明において、方向に言及する場合には、図1に示す方向を基準とする。また、左右方向は、図1における紙面垂直方向を指し幅方向と同一方向である。また、図1では、説明の便宜上、プリンタ1の本体ケーシング2等の断面におけるハッチングを省略し、代わりに、供給ユニットの一例としての給紙ユニット50に相当する箇所にハッチングを施した。
【0015】
プリンタ1は、ダイレクトタンデムタイプのカラーLEDプリンタである。図1に示すように、プリンタ1の、本体ケーシング2内には、感光体の一例としての4つの感光体ドラム3が、前後方向に沿って直列に配列されている。
【0016】
なお、以下の説明では、4つの感光体ドラム3を、トナー像の各色(ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン)に対応して、感光体ドラム3K(ブラック),感光体ドラム3Y(イエロー),感光体ドラム3M(マゼンタ),感光体ドラム3C(シアン)として必要に応じて区別する。各感光体ドラム3には、スコロトロン型帯電器4、LEDユニット5
、及び、現像ローラ6aがそれぞれ対向配置されている。
【0017】
感光体ドラム3は、表面を正帯電性の感光層で被覆されており、その表面がスコロトロン型帯電器4によって一様に正に帯電された後、LEDユニット5から照射される光によって露光される。これにより、感光体ドラム3の表面には、画像データに基づく静電潜像が形成される。その静電潜像は、現像ローラ6aに担持されるトナーによって可視像化され、感光体ドラム3の表面上に、現像剤像の一例としてのトナー像が担持される。
【0018】
すなわち、現像ローラ6aは、内部に正帯電性の非磁性1成分のトナーを収容可能な現像カートリッジ6の下端に回転可能に設けられ、上記収容されたトナーを正に摩擦帯電させながら薄層として表面に担持して、感光体ドラム3に供給する。そして、現像ローラ6aから供給されたトナーは、感光体ドラム3の上記露光によって表面電位が低下した箇所にトナー像として担持される。なお、各色に対応する感光体ドラム3,スコロトロン型帯電器4,現像カートリッジ6は、それぞれ筐体7aに収容されて画像形成手段の一例としてのプロセスカートリッジ7を構成している。プロセスカートリッジ7のうち、感光体ドラム3、スコロトロン型帯電器4、および現像ローラ6aは、連結フレームとなる4本のフランジ付きパイプ200に囲まれる空間内に配置されている。プロセスカートリッジ7は、後方に揺動中心として前方が開閉するように支持された排紙トレイを開放することによって、上方から挿抜して着脱できるように構成されている。ここで、4本のフランジ付きパイプ200のうち上方の2本200Xは、下方の2本200Yに比べて前後方向の距離が長くなっている。これにより、上方の開口長さが広がるため、プロセスカートリッジ7の上方からの挿抜を容易とすることができる。また、図1のように側面からみると4本のフランジ付きパイプ200に囲まれる空間が台形となり前後方向に各フランジ付きパイ
プ200が多少ずれて配置されるため、前後方向に満遍なく強度メンバーが配置されることとなる。よって、板金フレーム100等へ外方から応力が加わったとしても各フランジ付きパイプ200に囲まれる空間へ伝わる応力、ひいてはその空間に配されるプロセスカートリッジ7の固定位置等への影響を抑制することができる。
【0019】
被記録媒体の一例としての用紙Pは、本体ケーシング2の底部に着脱可能に構成されたカセットの一例としての給紙カセット70に収容されている。図1に示すように給紙カセット70は、搬送ベルト8の感光体ドラム3と対向する側の展張面と略平行に配され、用紙Pが補給されるときには前方向に引き出される。給紙カセット70に収容されている用紙Pは、給紙ユニット50に設けられた後述の各種ローラによりほぼU字状に湾曲されて搬送されながら搬送ベルト8に給紙される。搬送ベルト8は、給紙カセット70とプロセスカートリッジ7とが上下方向に重なるように配置されている。搬送ベルト8は、無端ベルトからなり駆動ローラ8Aと従動ローラ8Bとにより張架され、その展張面上方に各感光体ドラム3K,3Y,3M,及び3Cが対向配置されるとともに、それら感光体ドラムに対向する転写ローラ9との間に配置されている。このように給紙カセット70、搬送ベルト8、およびプロセスカートリッジ7とを上下方向に重ねるように配置することによってプリンタの高さを低くすることができる。各感光体ドラム3の表面に担持されたトナー像は、転写ローラ9に印加された転写バイアスによって、搬送ベルト8に搬送される用紙P上に転写され、順次重ね合わされる。
【0020】
4色のトナー像が転写された用紙Pは、定着部10に搬送される。用紙P上に転写されたトナー像は、定着部10で熱定着される。その後、用紙Pは、各種ローラにより、排紙トレイ11に排紙される。
【0021】
2.給紙ユニット及び給紙カセットの内部構造
図1に示すように、給紙カセット70内には、用紙Pを積載して支持し、その用紙Pの前端側を持ち上げるように傾動可能な圧板71が設けられている。また、給紙ユニット50の、給紙カセット70の前端上方に対向する位置には、用紙Pを搬送する給紙ローラ51と、その給紙ローラ51による搬送方向下流側に配設された分離ローラ52とが設けられている。分離ローラ52は、給紙ローラ51にて搬送される用紙Pを、給紙カセット70に設けられた分離パッド72との間に挟んで1枚毎に分離するものである。
【0022】
給紙カセット70の最上位の用紙Pは、分離ローラ52によって1枚毎に分離された後、更に、給紙ユニット50に設けられた搬送ローラ53と給紙カセット70に設けられた対向ローラ73との間に挟まれて搬送され、給紙ユニット50に設けられた一対のレジストローラ54,55の間へ送られる。レジストローラ54,55は、上記のように搬送された用紙Pの先端を係止した後、その用紙Pを所定のタイミングで搬送ベルト8上へ送り出す。すなわち、給紙ローラ51、分離ローラ52、搬送ローラ53、及び、レジストローラ54,55が、供給手段に相当する。
【0023】
また、本体ケーシング2の前面の一部は、手差しトレイ19として開放可能に構成されている。使用者によってこの手差しトレイ19を介して直接挿入された用紙Pは、本体ケーシング2の前面の開口部21を通って、レジストローラ54,55の間へ挿入される。このように手差しトレイ19を介して挿入された用紙Pも、レジストローラ54,55によって同様に搬送ベルト8上へ送り出される。
【0024】
3.プリンタのフレーム構造
(1)フレーム構造の概要
図2の斜視図及び図3の分解斜視図に示すように、本体ケーシング2の内部には、幅方向に、プロセスカートリッジ7を橋渡して装着できる間隔を隔てて、フレームの一例とし
ての1対の板金フレーム100が配置され、更にその左右方向外側には、1対の樹脂フレーム300が配置されている。なお、以下の説明において、板金フレーム100は必要に応じて左側を100L,右側を100Rと区別し、樹脂フレーム300は必要に応じて左側を300L,右側を300Rと区別する。
【0025】
図2,図3に示すように、左右1対の板金フレーム100はプロセスカートリッジ7を案内して位置決めするガイド穴101をそれぞれ有し、幅方向に延びる4本のフランジ付きパイプ200によって互いに連結されている。4つのガイド穴101は、4本のフランジ付きパイプ200に囲まれる空間内に配置されている。これにより、4本のフランジ付きパイプ200によって囲まれる剛性を高められた空間に複数のプロセスカートリッジ7が位置決めされるので、各プロセスカートリッジ7の間の間隔を精度良く維持することができ、形成されるカラー画像の色ずれが抑制できる。
フランジ付きパイプ200は、その両端にフランジ201が設けられ、フランジ201を介して板金100にネジ202により固定されている。また、各板金フレーム100の外側には、樹脂フレーム300がビス98によって固定されている。
【0026】
ここで、図4(A)に模式的に示すように、ビス98は、いわゆる段付きネジとして構成され、樹脂フレーム300のネジ穴301は、その段部の径よりも少なくとも前後方向の長さが大きく形成されており、ビス98の先端が板金フレーム100のネジ穴102に螺合している。これにより、樹脂フレーム300と板金フレーム100とは両者が相対的に移動できない程堅く接続されていないため、樹脂フレーム300と板金フレーム100との線膨張率が異なったとしても、温度変化による寸法差を吸収することができる。
【0027】
また、図4(B)に示すように、一対の板金フレーム100の前端下部には、前述の給紙ユニット50が、前述の段付きネジとしてのビス98と、段部を有さない一般のビス99とによって固定される。すなわち、ビス98,99がネジの一例に相当する。給紙ユニット50は、搬送ベルト8に対して、搬送ベルト8、給紙カセット70およびプロセスカートリッジ7との重なり方向となる上下方向に対して略直交する前方に配置されている。給紙ユニット50は、4本のフランジ付きパイプ200に囲まれる空間から外れた位置に配されている。これにより、給紙ユニット50の動作に伴う振動などの影響をプロセスカートリッジ7に及ぼすことを抑制することができる。次に、この給紙ユニット50の固定構造について詳細に説明する。
【0028】
(2)給紙ユニットの固定構造
図5は、図3における一対の板金フレーム100と給紙ユニット50とを拡大して表す斜視図であり、図6(A)は、一対の板金フレーム100に給紙ユニット50を固定した状態を表す斜視図、図6(B)はその要部拡大図である。
【0029】
図5に示すように、各板金フレーム100の前端は、下から2分の1程度の部分が左右方向外側に鉛直軸に沿って折り曲げられることにより、フランジ状のネジ受け部103が形成されている。このネジ受け部103には、それぞれ、ビス98または99を前方から後方に向かって螺合可能な雌ネジの切られたネジ穴104が上下に1つずつ形成されている。また、各板金フレーム100の、ネジ受け部103に対して上方,下方に隣接する位置には、前方から後方に向かって切り欠かれたU字形の溝106,107が打ち抜き加工によって形成されている。また、左側の板金フレーム100Lのネジ受け部103の中央近傍には、板金フレーム100Lの大部分と同一平面状に前方へ矩形に突出した突出部108が形成されている。
【0030】
板金フレーム100のこのような構成に対応して、給紙ユニット50は次のような構成を有している。板金フレーム100L,100Rのネジ受け部103と対向する位置には
、フランジ状に突出した固定部56L,56Rが形成されている。固定部56Lには、ビス99の先端を挿入可能なネジ穴57Lが形成され、固定部56Rには、ビス98の段部を挿入可能なネジ穴57Rが形成されている。ネジ穴57Rは、ビス98の段部よりも左右方向に大径に構成されている。また、固定部56Lには、突出部108が左右方向に変位不能に挿入される位置決め穴58が形成されている。このため、給紙ユニット50は、位置決め穴58に突出部108が挿入されることによって左右方向に位置決めされ、左右方向に大径に形成されたネジ穴57Rと段付きのビス98とによって、温度差による寸法差が次のように吸収される。
【0031】
すなわち、図4(B)に示すように、左右方向の位置決めの基準となる側(左側)では、温度差による寸法差が殆どないため、一般のビス99を用いて必要以上に締め過ぎることがあってもなんら支障はない。一方、温度差による寸法差が大きい側(右側)では、段付きのビス98を用いることによって、ビス98の締め付け量が制限されるため、給紙ユニット50が板金フレーム100Rに対して堅く接続されることがなく、左右方向への相対的な変位が許容される。
【0032】
また、給紙ユニット50の左右側面には、左右方向外側に円筒状に突出して溝106,107にそれぞれ係合するボス61,62が形成されている。なお、図5,図6では、左側のボス61,62のみ図示しているが、右側にも同様のボス61,62が形成されている。ここで、給紙ユニット50を一対の板金フレーム100に固定する際には、ボス61,62が溝106,107に係合する。ボス61,62が溝106,107の先端(最も奥)に係合したときには、左右のネジ受け部103と固定部56L,56Rとの間には隙間が残るように設計されており、ビス98,99の締め付けによってボス61,62を溝106,107にそれぞれ確実に係合させることができる。また、溝107の先端は、ボス62の外径とほぼ等しい内径を有し、ボス62を上下方向及び前後方向に位置決めするが、溝106の先端は、ボス61の外径よりも上下方向に広幅に形成され、ボス61を前後方向にのみ位置決めする。
【0033】
図1に(実際には中横断面には表れないが)便宜上図示したように、ボス61はレジストローラ54,55の近傍に、ボス62は分離ローラ52の近傍に、それぞれ設けられている。このため、前述のように、ボス61は前後方向にのみ、ボス62は前後方向及び上下方向に位置決めされることにより、レジストローラ54,55の上下位置よりも分離ローラ52の上下位置の方が優先的に位置決めされる。レジストローラ54,55の上下位置が若干ずれたとしても、用紙Pの搬送経路が若干上下するだけで問題は少ないが、分離ローラ52の上下位置は給紙カセット70に設けられた分離パッド72との分離特性に影響する。従って、上記のように分離ローラ52の上下位置を優先的に位置決めするのが望ましい。
【0034】
また、ボス61,62の双方が上下方向及び前後方向に位置決めされると、給紙ユニット50の熱膨張時等に反り等が発生する可能性があるが、前述のようにボス61は溝106に対して上下に隙間を有してその隙間分だけ移動可能である。このため、給紙ユニット50を構成する樹脂の熱膨張時等にもその給紙ユニット50等に反りが生じない。
【0035】
(3)給紙カセットの位置決め機構
次に、給紙カセット70の位置決め機構について説明する。図7(A)は、給紙カセット70を本体ケーシング2から引き出した状態における給紙ユニット50と給紙カセット70との位置関係を表す側面図であり、図7(B)は、給紙カセット70を本体ケーシング2に収納した状態における両者の位置関係を表す側面図である。図7及び前述の図5に示すように、給紙ユニット50の下端には、位置決め部の一例として、前後方向に垂直な平面状の位置決め面64が前方に向いて形成されている。給紙カセット70には、この位
置決め面64に当接可能な位置決め面74が後方に向いて形成され、給紙カセット70の収納時には、図7(B)に示すように、位置決め面64,74の当接によって給紙カセット70が前後方向に位置決めされる。
【0036】
なお、給紙カセット70は、樹脂フレーム300L,300Rの下端縁から左右方向内側に突出成形された支持部370(図2,図3参照)によって上記のように引き出し/収納可能に支持されている。図2,図3では、樹脂フレーム300Rの支持部370のみを図示したが、支持部370は樹脂フレーム300Lにも同様に形成されている。
【0037】
また、図7及び図8(A)の斜視図に示すように、給紙カセット70の前端近傍の下部には、左右側面に、左右方向外側に突出した円筒状のボス75(図7,図8(A)では左側のみ図示)が形成されている。このボス75に対応して、樹脂フレーム300L,300Rの前端下部には、図8(B),(C)に示すように前方から凹に形成された受入部375が形成されている。給紙カセット70に左右から突出したボス75が、左右の樹脂フレーム300L,300Rの受入部375に嵌合することにより、給紙カセット70の前端が上下方向に位置決めされる。
【0038】
更に、図7,図8(A)に示すように、給紙カセット70の後方寄りの左右側面には、水平断面「ヘ」の字状に突出した突起76が形成されている。図9は、給紙カセット70及び樹脂フレーム300L,300Rを、前述のボス75,突起76を通る水平断面で切断した断面図である。なお、図9(A)は給紙カセット70を本体ケーシング2から引き出した状態を、図9(B)は給紙カセット70を本体ケーシング2に収納した状態を、それぞれ表している。
【0039】
図9(A),(B)に示すように、左右の樹脂フレーム300L,300Rの左右方向内側には、圧縮コイルバネ81によって左右方向内側に向けて付勢された係合部材80がそれぞれ設けられている。給紙カセット70が本体ケーシング2に収納される際には、前述の突起76がこの係合部材80を乗り越えることによって、給紙カセット70が振動等によって引き出されてしまうのを抑制することができる。
【0040】
図10に拡大して示すように、係合部材80は、樹脂フレーム300L,300Rに鉛直方向に設けられた軸82を中心に揺動可能に構成され、その係合部材80の先端部80aと樹脂フレーム300L,300Rとの間に圧縮コイルバネ81が弾発状に嵌装されている。なお、図10では、樹脂フレーム300L側の係合部材80を図示したが、樹脂フレーム300R側の係合部材80も同様に構成されている。
【0041】
また、図10に示すように、係合部材80には、先端部80aに隣接して、樹脂フレーム300L,300Rの鉛直な壁面に係合して先端部80aの左右方向内側への突出を規制する係合部80bが設けられている。このため、係合部80bが樹脂フレーム300L,300Rに係合した時点で、係合部材80はそれ以上左右方向内側へ突出しないように圧縮コイルバネ81の付勢力に抗して支持される。
【0042】
図10(A)に矢印で示すように、給紙カセット70が本体ケーシング2に収納される際には、係合部材80を左右方向外側へ押圧しながら突起76が先端部80aを乗り越える。そして、前述のように、位置決め面64,74が当接することによって給紙カセット70が位置決めされるのであるが、この時点では、図10(B)に示すように、係合部材80の先端部80aは突起76の前側の斜面に当接し、係合部80bも樹脂フレーム300L,300Rに係合していない。このため、圧縮コイルバネ81の付勢力が係合部材80を介して突起76の前側斜面に伝達されることによって、給紙カセット70は後方に付勢される。しかも、突起76の前側斜面は後側斜面よりも急になっており、給紙カセット
70を良好に後方に付勢することができる。従って、位置決め面64,74が良好に当接し、給紙カセット70を前後方向に良好に位置決めすることができる。
【0043】
4.本実施の形態の効果及びその変形例
このように、本実施の形態のプリンタ1では、一対の板金フレーム100にそれぞれ形成された溝106,107に、給紙ユニット50に形成された一対のボス61,62を係合させることによって、その給紙ユニット50を各板金フレーム100に位置決めしている。ここで、溝104,106は板金フレーム100に打ち抜き等によって形成することができ、板金フレーム100に折り曲げ加工を施して位置決めを行う場合や樹脂フレーム300に溝を形成する場合に比べて加工精度が向上する。しかも、本実施の形態では、前述のようにビス98,99の締め付けによって、ボス61,62を溝106,107にそれぞれ確実に係合させることができる。
【0044】
このため、本実施の形態では、給紙ユニット50を板金フレーム100に対して正確に位置決めすることができる。また、この板金フレーム100には、前述のようにプロセスカートリッジ7が位置決めされるので、本実施の形態では、プロセスカートリッジ7と給紙ユニット50の位置関係を正確に規定して良好な画像を形成することができる。しかも、プロセスカートリッジ7を位置決めするガイド穴101と前述の溝106,107との間の板金フレーム100は、折り曲げ加工部を有さず同一平面状に構成されているので、上記位置関係を一層良好に規定して一層正確な画像を形成することができる。更に、給紙ユニット50に対して給紙カセット70も位置決めされるので、用紙Pを安定して搬送して画像形成に呈することができる。
【0045】
また、上記一対の板金フレーム100L,100Rは、冶具を用いてフランジ付きパイプ200を固定することにより正確に組み付けることができるが、本実施の形態では、板金フレーム100L,100Rを左右に隔離することなく前方から給紙ユニット50が装着できる。このため、冶具によって板金フレーム100L,100Rを組み付けた後からでも容易に給紙ユニット50が装着でき、プリンタ1の全体としての寸法精度を一層向上させることができる。
【0046】
なお、給紙カセット70が直接位置決めされない板金フレーム100に対して給紙ユニット50を位置決めすると、給紙ユニット50と給紙カセット70との双方を樹脂フレーム300に対して位置決めする場合に比べて給紙ユニット50と給紙カセット70との位置精度が低下する可能性があるが、本実施の形態では、前述のように給紙ユニット50に対して給紙カセット70が位置決めされるので、そのような課題も生じない。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、給紙ユニット50の位置決め面64と給紙カセット70の位置決め面74との当接によって給紙カセット70を前後方向に位置決めしているが、給紙カセット70を給紙ユニット50によって上下方向にも位置決めしてもよい。例えば、板金フレーム100に対する給紙ユニット50の位置決めと同様に、U字形の溝とボスとの係合によって位置決めを行ってもよい。この場合、給紙を一層安定して実行することができる。
【0048】
また、上記実施の形態では、2対のU字形の溝106,107に2対の円筒状のボス61,62を係合させているが、溝はコの字形の溝であってもよく、ボスも角柱状であってもよく、溝やボスの個数も3つ以上あったり左右1個ずつであったり左右で不均等であってもよい。また更に、本発明の画像形成装置は、モノクロの画像形成装置やインクジェットプリンタや、複写機,ファクシミリ装置等にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…プリンタ 2…本体ケーシング 3…感光体ドラム
4…スコロトロン型帯電器 5…LEDユニット 6…現像カートリッジ
6a…現像ローラ 7…プロセスカートリッジ 50…給紙ユニット
51…給紙ローラ 52…分離ローラ 53…搬送ローラ
54,55…レジストローラ 56…固定部 57,102,104…ネジ穴
58…位置決め穴 61,62,75…ボス 64,74…位置決め面
70…給紙カセット 71…圧板 72…分離パッド
73…対向ローラ 76…突起 80…係合部材
98,99…ビス 100…板金フレーム 101…ガイド穴
103…ネジ受け部 106,107…溝 108…突出部
200…フランジ付きパイプ 300…樹脂フレーム 370…支持部
375…受入部 P…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って搬送される被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記搬送経路へ向け前記被記録媒体を供給する供給ユニットと、
前記画像形成手段および前記供給ユニットを支持するフレーム構造体と
を備え、
前記フレーム構造体は、前記被記録媒体の面とほぼ直交しかつその搬送方向とほぼ平行な、前記搬送経路を挟んで相互に対向する面を有する一対の金属製の板状のフレームと、該一対のフレームを、前記搬送経路を挟む間隔をおいて相互に連結する複数の連結フレームとからなり、
前記画像形成手段は、前記複数の連結フレームによって囲まれる空間内に配置されかつ前記一対のフレーム間を橋渡して該一対のフレームに支持され、
前記供給ユニットは、前記一対のフレーム間を橋渡して、該一対のフレームにおける前記搬送経路の供給側端部に、該フレームの面とほぼ平行な方向から固定する固定手段により両端を支持されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成手段と、
前記被記録媒体を前記画像形成手段を通り前記搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記被記録媒体を収容し該被記録媒体を前記供給ユニットを介して前記搬送手段へ供給する被記録媒体収容部と
が重なる状態に配置され、
前記供給ユニットは、前記搬送手段に対して、前記重なり方向とほぼ直交する方向に配置され、前記被記録媒体収容部から前記被記録媒体をほぼU字状に湾曲させて前記搬送手段に供給することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成手段は、前記搬送経路に沿って複数個配置され、
前記搬送手段は、前記搬送経路に沿って移動するベルトを有し、
前記被記録媒体収容部は、前記被記録媒体を載置する給紙カセットであり、前記ベルトとほぼ平行に配置され、
前記供給ユニットは、前記給紙カセットから前記用紙を送り出すローラと、該ローラより送り出された前記用紙を前記ベルト上に供給するローラとを有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記一対のフレームは、前記画像形成手段を位置決めするガイド穴を前記複数の連結フレームによって囲まれる空間内にそれぞれ有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記一対のフレームは、前記搬送経路の供給側端部近傍から前記固定手段による固定方向とほぼ平行に該各フレームの面に沿って切り込まれた切欠部を、前記ガイド穴と同一面上にそれぞれ有し、
前記供給ユニットは、前記切欠部に嵌合するように突出したボスを有することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記一対のフレームは、前記搬送経路の供給側端部近傍から前記固定手段による固定方向とほぼ平行に該各フレームの面に沿って切り込まれた切欠部をそれぞれ有し、
前記供給ユニットは、前記一対のフレーム間に位置する主部分と、該主部分から前記各フレームにおける前記面とほぼ直交する端部と対向するように突出したフランジと、前記主部分から前記切欠部に嵌合するように突出したボスとを有し、
前記フランジを前記各フレームにおける前記面とほぼ直交する端部と対向させた状態でその両者が前記固定手段により固定されたとき、該固定手段による固定方向における前記
切欠部の奥端に前記ボスが当接し、前記フランジと前記各フレームにおける前記面とほぼ直交する端部との間に隙間を残していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置
【請求項7】
前記一対のフレームは、前記面とほぼ直交する端部に、前記面とほぼ直交する方向に折曲されたフランジ部をそれぞれ有し、該フランジ部に、前記供給ユニットのフランジが対向して前記固定手段により固定されることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記被記録媒体収容部は、前記被記録媒体としての用紙を載置する給紙カセットであり、前記搬送手段と対向した位置と該位置から引き出された位置とに移動可能に設けられ、
前記供給ユニットは、前記給紙カセットから前記用紙を前記搬送手段に送り出すものであり、前記給紙カセットが前者位置にあるとき、その位置を規制する位置決め部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記連結フレームは、パイプからなる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成手段は、上方から挿抜自在であり、
前記複数の連結フレームは、上方の2つとそれより下方の2つを有し、
前記上方の二つの連結フレームは、前記下方の二つの連結フレームに対して、前記フレームの面とほぼ平行な方向における距離が長くなるように配されている
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−52423(P2010−52423A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135859(P2009−135859)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】