説明

画像形成装置

【課題】 2次転写残留トナーの過剰な帯電や帯電不足を抑制しつつ、確実に2次転写残留トナーを均一に散らすブラシ部材を用いることで、画像不良の発生を抑制する画像形成装置を提供することを目的にする。
【解決手段】 中間転写ベルト10上の2次転写残留トナーTを帯電させる帯電部材は絶縁部16bと導電部16cを有する複合導電性繊維16aで構成されるブラシ部材16であり、複合導電性繊維16aの外周面の一部が導電部16cである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式又は静電記録方式であって、像担持体上に形成したトナー像を中間転写体に転写した後に転写材に転写する中間転写方式を採用した複写機、レーザプリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やレーザービームプリンターなどの画像形成装置として、中間転写体を使用する構成を有する画像形成装置が知られている。
【0003】
中間転写体を使用する構成を有する画像形成装置は、1次転写工程として、第1の像担持体としての感光ドラム表面に形成されたトナー像を、中間転写体に転写する。その後、この1次転写工程を、複数色のトナー像に関して繰り返し実行することにより、中間転写体表面に複数色のトナー像を形成する。続けて、2次転写工程として、中間転写体表面に形成された複数色のトナー像を、紙などの転写材表面に一括して転写する。一括転写された転写材上の未定着のトナー像は、その後、定着手段により永久定着されることにより、フルカラー画像が形成される。
【0004】
その際、2次転写工程で転写材に転写されず、中間転写体表面にトナー像の一部が残留することがある。この残留トナーを、従来から知られているクリーニング手段で回収することで、次の画像形成を開始することが可能である。
【0005】
特許文献1には、2次転写工程後の中間転写体上の残留トナー(以下、2次転写残留トナーとする)を、帯電手段を用いて中間転写体から回収する画像形成装置が開示されている。帯電手段として用いられるローラに交流電圧を印加して、2次転写残留トナーを現像時のトナー帯電状態とは逆極性に帯電する。その後、逆極性に帯電された2次転写残留トナーは、次回の1次転写工程時に感光ドラムに逆転写され、感光ドラム上のクリーニング手段により回収される、転写同時クリーニング方式が提案されている。以上の構成とすることで、次ページの1次転写と同時に2次転写残留トナーのクリーニングが可能となりプリントスピードを遅くすることなく連続した画像形成が可能となる。
【0006】
特許文献2には、帯電手段としてローラ部材とブラシ部材を用いる方法が提案されている。具体的には、ブラシ部材により中間転写体上の2次転写残留トナーを機械的に略均一に散らし、かつ、略均一に散らした2次転写残留トナーをローラ部材で帯電する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−50167号公報
【特許文献2】特開2009−205012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の画像形成装置の構成においては、ブラシ部材を構成する導電性繊維によって、画像不良を発生させるような放電を引き起こす可能性がある。具体的には、現像時のトナー帯電状態が負極性の画像形成装置で課題を説明する。上述したブラシ部材は、中間転写体と接触することで2次転写残留トナーを機械的に略均一に散らす。さらに、直流電圧が印加されることで、2次転写残留トナーを現像時のトナー帯電状態と逆極性の正極性に帯電させる。図6(a)に示すようにブラシ部材60は中間転写体61対して所定の侵入量を設け、且つ、不図示の正極性の電圧を印加する電圧印加手段に接続されている。そのため、ブラシ部材60を構成する導電性繊維62は中間転写体61表面に対して曲がって接触し、中間転写体601の間に微小ギャップLを形成している。このとき、図6(a)で中間転写体61と導電性繊維62の接触部Sの拡大図である図6(b)に示すように中間転写体62表面と導電性繊維62との間には多数の微小ギャップLが生じている。
【0009】
図7に、ブラシ部材60を構成する導電性繊維62全域に、導電剤が分散されている場合の断面形状を示す。導電性繊維62の全域に導電剤が分散されているため、すべての微小ギャップLにおいて、導電性繊維62の導電部と中間転写体61が対向し放電してしまう。そのため、導電性繊維の本数に応じた数の放電点が存在する。
【0010】
その結果、ブラシ部材60が形成する帯電部を通過する2次転写残留トナーは、ブラシ部材60と中間転写体61間に形成された多数の放電点で現像時のトナーの帯電状態と逆極性の正極性に過剰に帯電されて、電荷量が大きくなり過ぎてしまう。過剰に帯電された2次転写残留トナーは、1次転写部で中間転写体から感光ドラムに逆転写する際に、周囲に発生する電界が大きい為、感光ドラム上に現像された負極性のトナーを引き込みながら感光ドラムに逆転写され、画像不良の要因となる。
【0011】
上述の傾向は、ブラシ部材60に突入する前の2次転写残留トナーの帯電極性が現像時の極性と逆極性となりやすい高温高湿環境下で顕著である。高温高湿環境下では、トナー自身が吸湿し抵抗が低く、現像時のトナー帯電量の絶対値が小さいため、2次転写時に受ける正極性電圧の影響で2次転写残留トナーは帯電極性が反転し、正極性のトナーの割合が多くなり上記現象が発生しやすい。
【0012】
一方、2次転写残留トナーの過剰帯電を抑制するためには、ブラシ部材60を構成する導電性繊維62と中間転写体61との間に形成される微小ギャップLの数を減少させると良い。微小ギャップLの数を減らすためには、導電性繊維62の密度を低下させて導電性繊維62の数を減らす方法が考えられる。すなわち、導電性繊維62の密度を低下させることで、2次転写残留トナーと導電性繊維の接触点を減らすことが可能である。
【0013】
しかしながら、この場合には、ブラシ部材60を構成する導電性繊維62と2次転写残留トナーの接触点が減るため、2次転写残留トナーを機械的に散らす効果が低減する。特に、2次転写残留トナーが多い場合は、散らす効果が低減したブラシ部材60では2次転写残留トナーの塊を散らすことができないため、ブラシ部材60により2次転写残留トナーを適正な帯電をすることができない可能性がある。そのため、ブラシ部材60通過後の2次転写残留トナーの電荷量(帯電量)が小さくなりすぎてしまう。その結果、2次転写残留トナーを1次転写部で中間転写体61から感光ドラムに逆転写する際に、帯電不足の2次転写残留トナーが中間転写体61上に残留し、画像不良を発生させやすい。
【0014】
上述の傾向は、ブラシ突入前の2次転写残留トナーの帯電極性が正極性になりにくい低温低湿環境下で顕著である。低温低湿環境下では、トナー自身の抵抗が高く、現像時のトナー帯電量の絶対値が大きいため、2次転写残留トナーが負極性の割合が多く上記現象が発生しやすい。
【0015】
以上のような状況を鑑み、2次転写残留トナーの過剰な帯電や帯電不足を抑制しつつ、確実に2次転写残留トナーを均一に散らすブラシ部材を用いることで、画像不良の発生を抑制する画像形成装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するための本発明は、トナー像を担持する像担持体と、回転可能な無端状の中間転写体と、電圧が印加されて1次転写部において前記像担持体から前記中間転写体へトナー像を1次転写する1次転写部材と、電圧が印加されて2次転写部において前記中間転写体から転写材へトナー像を2次転写する2次転写部材と、前記中間転写体の回転方向において前記1次転写部よりも上流側で、且つ、前記2次転写部よりも下流側に配置され、前記中間転写体上の残留トナーを帯電する帯電部材と、を有する画像形成装置において、前記帯電部材は、絶縁部と導電部を備える複合導電性繊維を有し、前記中間転写体の回転に伴って前記中間転写体の表面を前記複合導電性繊維で摺擦するブラシ部材であり、前記複合導電性繊維の外周面の一部が導電部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、ブラシ部材を構成する複合導電性繊維の外周面の一部を導電部とすることで、ブラシ部材の密度を減らすことなく2次転写残留トナーを均一に散らし、且つ、中間転写ベルト上の2次転写残留トナーの過剰帯電を抑制することが可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の画像形成装置を説明する図
【図2】実施例1おけるクリーニング構成を説明する図
【図3】実施例1おけるブラシ部材を説明する図
【図4】実施例1を説明する図
【図5】実施例2に用いたブラシ部材を説明する図
【図6】従来例を説明する図
【図7】従来例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例1)
図1は、画像形成装置の概略図であり、図1を用いて本実施形態の画像形成装置の構成及び動作を説明する。尚、本実施形態の画像形成装置は、a,b,c,dの4つの画像形成ステーションより構成されている。第1の画像形成ステーションはイエロー(Y)、第2の画像形成ステーションはマゼンタ(M)、第3の画像形成ステーションはシアン(C)、第4の画像形成ステーションはブラック(Bk)に対応している。画像形成動作は第1ステーション(Y)を用いて説明する。
【0020】
(画像形成装置の動作)
画像形成装置は、ドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)1を備え、この感光ドラム1は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光ドラム1は、トナー像を担持する像担持体である。感光ドラム1aはこの回転過程で、帯電ローラ2aにより所定の極性電位に一様に帯電処理され、次いで像露光手段3aにより像露光を受ける。これにより、目的のカラー画像のイエロー色成分像に対応した静電潜像が感光ドラム1aに形成される。次いで、その静電潜像は現像位置において第1の現像器(イエロー現像器)4aにより現像され、イエロートナー像として可視化される。
【0021】
回転可能な中間転写体10は、張架部材11、12、13とで張架される無端状の中間転写ベルトである。感光ドラム1と略同一の周速度で回転移動する。感光ドラム1a上に形成されたイエロートナー像は、感光ドラム1aと中間転写ベルト10との当接部(以下、1次転写部と称す)を通過する過程で、中間転写ベルト10の上に転写される(1次転写)。その際、1次転写部材である1次転写ローラ14aに1次転写電源15aより1次転写電圧が印加されている。感光ドラム1表面に残留した1次転写残留トナーは、クリーニング装置5aにより清掃、除去された後、帯電以下の画像形成プロセスに供せられる。
【0022】
以下、同様にして、各画像形成ステーションで、第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写されて、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像が得られる。
【0023】
中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、中間転写ベルト10と2次転写部材である2次転写ローラ20との2次転写部を通過する過程で、給紙手段50により給紙された転写材Pの表面に一括転写される(2次転写)。その際、2次転写ローラ20に2次転写電源21により2次転写電圧が印加されている。その後、4色のトナー像を担持した転写材Pは定着器30に導入され、そこで加熱および加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して転写材Pに固定される。以上の動作により、フルカラーのプリント画像が形成される。
【0024】
また、2次転写後に中間転写ベルト10表面に残留した2次転写残留トナーTは、帯電手段により、中間転写ベルト上(中間転写体上)に均一に散らされ、且つ、均一に帯電される。帯電手段は、2次転写ニップよりも中間転写ベルトの回転方向における下流側、且つ、1次転写ニップよりも上流側に配置されている。
【0025】
帯電手段は、中間転写ベルトの回転方向における上流側に配置される第1の帯電部材である帯電ブラシ16と、下流側に配置される第2の帯電部材である帯電ローラ17を有する。2次転写残留トナーは、転写材に転写されたトナー像のパターンによって、中間転写ベルト上にまばらに残留している。2次転写残留トナーを効率良く帯電するには、中間転写ベルト上で略一層に散らした状態で、帯電部材によって帯電したほうが良い。
【0026】
本実施例では、2次転写残留トナーTを帯電ブラシ16によって、均一に中間転写ベルト上に散らし、かつ、帯電する。その後、帯電ローラ17により、帯電された2次転写残留トナーは、次の画像に対する1次転写時に感光ドラム1aに逆転写される。この際、感光ドラム1aに付着した2次転写残留トナーTは1次転写残留トナーと共に感光体クリーニング装置5aによって除去される。
【0027】
(転写構成)
1次転写ローラ14a〜14dは、外径6mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗率10Ω・cm、厚み3mmに調整したNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体で覆った外径12mmのものを用いている。中間転写ベルト10を介して感光ドラム1a〜1dに対し、9.8Nの加圧力で当接させ、中間転写ベルト10の回転に伴い、従動して回転する。また、感光ドラム1a〜1dのトナーを1次転写している時には、1次転写電圧として、1500Vの電圧が印加されている。
【0028】
中間転写ベルト10は、厚さ100μmで、カーボンブラックを導電剤として混合することにより体積抵抗率を1010Ω・cmに調整したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いている。中間転写ベルト10は、駆動ローラ11、テンションローラ12、2次転写対向ローラ13の3軸で張架され、テンションローラ12により総圧60Nの張力で張架されている。
【0029】
2次転写ローラ20は外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗10Ω・cm、厚み5mmに調整したNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体で覆った外径18mmのものを用いている。また、2次転写ローラ20は、中間転写ベルト10に対して、50Nの加圧力で当接させ、中間転写ベルト10に対して従動回転する。また、中間転写ベルト10上のトナーを紙等の転写材に2次転写している時には、2次転写ローラ20には2次転写電源21より2次転写電圧として2500Vの電圧が印加されている。
【0030】
2次転写残留トナーTの帯電手段として、ブラシ部材16とローラ部材17を用いている。ブラシ部材16は、導電性を有する繊維で構成されている。ブラシ部材16には、高圧電源60から、1000Vの電圧が印加され、2次転写残留トナーTを帯電する構成となっている。本実施例の特徴であるブラシ部材16の構成については、後述する。
【0031】
ローラ部材である帯電ローラ17(導電性ローラ)としては、体積抵抗率10Ω・cmのウレタンゴムを主成分とする弾性ローラを用いた。導電性ローラ17は、中間転写ベルト10を介して2次転写対向ローラ13に対し総圧9.8Nで不図示のバネにより加圧され、中間転写ベルト10の回転に伴い、同方向に従動して回転する。また、導電性ローラ17には、高圧電源70から、1500Vの電圧が印加され、2次転写残留トナーTを帯電する構成となっている。尚、本実施例では導電性ローラ17としてウレタンゴムを用いたが特に限定されるものではなく、NBR、EPDM、エピクロルヒドリンなどであっても良い。
【0032】
(中間転写ベルトクリーニング方法)
以上説明した構成において、中間転写ベルト10のクリーニング方法について図2を用いて説明する。
【0033】
本実施例において、上述したように現像器4a〜dでトナーは負極性に帯電された後、感光ドラム1a〜1dに現像される。感光ドラムに現像されたトナーは、1次転写電源15a〜dにより正極性の電圧を印加された1次転写ローラ14a〜dにより中間転写ベルト10に1次転写される。2次転写電源21より正極性の電圧を印加された2次転写ローラ20により、中間転写ベルト10から紙等の転写材Pにトナーは転写される。
【0034】
図2に示すように、2次転写後に中間転写ベルト10上に残留した2次転写残留トナーTには、2次転写ローラ20に印加した正極性の電圧の影響により正、負両方の極性のトナーが混在する。また、転写材P表面の凹凸の影響を受け、2次転写残留トナーTは局所的に複数層に重なって中間転写ベルト10上に残留する(図2中A)。複数層になっている2次転写残留トナーは、一層の2次転写残留トナーより帯電し難い。そこで、本実施例では、ブラシ部材16を設けている。
【0035】
中間転写ベルト10上に残留した2次転写残留トナーTに対して中間転写ベルト10の回転方向に対し上流側に位置するブラシ部材16は、回転移動する中間転写ベルト10に対して固定配置され、且つ、中間転写ベルト10に対して所定の侵入量で配置されている。ブラシ部材16は、中間転写ベルトの回転に伴って中間転写ベルトの表面を摺擦する。そのため、中間転写ベルト10上に複数層に堆積していた2次転写残留トナーTは、ブラシ部材16と回転移動する中間転写ベルト10の速度差により機械的に略一層の高さに散らされる(図2中B)。
【0036】
また、ブラシ部材16は、ブラシ高圧電源60より正極性の電圧(本実施例では1000V)が印加され、2次転写残留トナーTは、ブラシ部材16が形成する帯電部を通過時に現像時のトナー極性と逆極性である正極性に帯電される。正極性に帯電しきれなかった負極性トナーは、ブラシ部材16に一部回収される。その後、ブラシ部材16を通過した2次転写残留トナーTは、中間転写ベルト10の回転方向に移動し、導電性ローラ17に到達する。導電性ローラ17には、ローラ高圧電源70により正極性の電圧(本実施例では1500V)が印加されている。ブラシ部材16を通過し、正極性に帯電された2次転写残留トナーTは、導電性ローラ17が形成する帯電部を通過時に更に帯電され、転写同時クリーニングを実現させるために最適な正電荷を付与される(図2中C)。
【0037】
最適な電荷が付与された2次転写残留トナーTは、1次転写部において1次転写ローラ14aに印加された正極性の電圧により感光ドラム1aに逆転写され、感光ドラム1a上に配置されたクリーニング装置5aへ回収される。
【0038】
尚、本実施例ではブラシ部材16の中間転写ベルト10の回転方向下流側に導電性ローラ17を配置している。その目的は、2次転写残留トナーTのブラシ部材16通過後の帯電量を、より均一にすることである。従って、導電性ローラ17が無くても、2次転写残留トナーTの帯電量が所定の範囲内であれば、ブラシ部材16のみで2次転写残留トナーTは帯電することができる。2次転写残留トナーTの帯電量は、2次転写時の温度湿度などの環境、中間転写ベルト10上のトナー帯電量、紙等の転写材種類などで変化することが多く、導電性ローラ17を用いることで、前述の2次転写残留トナーTの帯電量のバラツキに対応することができる。
【0039】
次に、ブラシ部材16の構成について、図3(a)、(b)を用いて説明する。中間転写ベルト10上の2次転写残留トナーTを帯電させる帯電部材は、絶縁部16bと導電部16cを有する複合導電性繊維16aで構成されるブラシ部材16であり、複合導電性繊維16aの外周面の一部が導電部16cであることを特徴とする。
【0040】
具体的には、ブラシ部材16を構成する複合導電性繊維16aの断面図である図3(a)を用いて説明する。複合導電性繊維16aの絶縁部16b及び導電部16cはナイロンを主成分とし、導電部16cを絶縁部16bが挟み込む構成となっており、複合導電性繊維16aの外周面において、導電部16cは2箇所露出している。外周面全体を100%とした場合の露出部の比率は、合計10%程度である。
【0041】
また、複合導電性繊維16aの1本の単位長さあたり抵抗値は10Ω/cmである。図3(b)は、複合導電性繊維16aの集合体として構成されるブラシ部材16を説明する図である。図3(b)に示すように、ブラシ部材16は絶縁性ポリエステルで構成される基布16dに複合導電性繊維16aを織り込みブラシを構成し、厚さ1mmのSUS板金16e上に基布16dを導電性接着剤で接着している。さらに、ブラシ部材16は、バータイプの固定部材である。
【0042】
ブラシ部材16の単糸繊度5dtex、密度100kF/inchであり、複合導電性繊維16aの長さAは5mmであり、中間転写ベルト10回転方向に5列が植毛されている。本実施例では、ナイロンを主成分とする複合導電性繊維16aを用いてブラシ部材16を構成しているが、特に限定されるものではなく、ポリエステル、アクリルなどでも良い。
【0043】
また、2次転写残留トナーTを帯電するには複合導電性繊維16aの導電部16bの露出量は、合計5〜30%程度が好ましい。2次転写残留トナーTの塊を略一層の高さに散らすには複合導電性繊維16aの密度は、20kF/inch〜300kF/inchが好ましい。また、ブラシ部材16の先端位置は、中間転写ベルト10表面に対して、約1.0mmの侵入量で固定配置されている。
【0044】
次に本実施例の作用について説明をする。上述したブラシ部材16は2次転写残留トナーTを機械的に散らす機能をもつため、中間転写ベルト10に所定の侵入量を設けて使用している。図4(a)に示すように複合導電性繊維16aは、中間転写ベルト10の回転方向に曲がって接触している。そのため、複合導電性繊維16aと中間転写ベルト10表面には多数の微小ギャップLが生じている。本実施例の構成においては、複合導電性繊維16aの外周面の一部のみが導電部16cであるため、ブラシ部材16と中間転写ベルト10で構成されるすべての微小ギャップLで放電が生じるわけではない。
【0045】
図4(a)において複合導電繊維16aと中間転写ベルト10の接触状態を模式的に表した拡大図が図4(b)である。図4(b)によると導電部16bと中間転写ベルト10が対向している微小ギャップL1では、放電が生じるものの、絶縁部16cと中間転写ベルト10が対向している微小ギャップL2では放電は発生しない。そのため、ブラシ部材16を構成する複合導電性繊維16aと中間転写ベルト10間に形成される微小ギャップLで発生する放電点は、複合導電性繊維16aと中間転写ベルト10の接触点の数より少なくなる。
【0046】
従って、本実施例のブラシ部材16は、複合導電性繊維16aの密度を減らすことなく、放電点の数を減少させることが可能である。さらに、密度を減らす必要がないので複合導電性繊維16aと2次転写残留トナーTと接触点を十分に確保することができ、ブラシ部材16は、2次転写残留トナーTを機械的に散らすことができる。
【0047】
具体的に、本実施例のブラシ部材16を構成する複合導電性繊維16aは、上述したように導電部16bの露出量は外周面の10%程度である。そのため、導電部16bが中間転写ベルト10と接触し、且つ、放電点を作る導電性繊維16aは、全体の約10%程度の本数となる。つまり、本実施例のブラシ部材16の密度で換算すると100kF/inchの内10%である10kF/inchの複合導電性繊維16aで導電部16bが中間転写ベルト10と接触している。また、本実施例のブラシ部材16において、本出願人らの検討によるとブラシ部材16が2次転写残留トナーTを散らすことができる密度は、20kF/inch以上であった。本実施例の構成の複合導電性繊維16aを用いることで放電点を有効に減らすことができ、且つ、十分な2次転写残留トナーTを散らす効果を得ることができた。
【0048】
以上説明したように、本実施例によると、中間転写ベルト10上の2次転写残留トナーTを帯電させる帯電部材は絶縁部16bと導電部16cを有する複合導電性繊維16aで構成されるブラシ部材16である。複合導電性繊維16a表面の一部のみが、導電部16bであることを特徴とすることで、中間転写ベルト10上の2次転写残留トナーTを、塊をつくることなく散らし、かつ2次転写残留トナーTの過帯電を防止することができる。これにより、2次転写残留トナーTが、適正な電荷量に帯電されるため、転写不良の発生しない転写同時クリーニングを達成する画像形成装置を提供することができる。
【0049】
尚、本実施例では、クリーニングブラシとして、バータイプの固定部材を用いたが、上述した複合導電繊維16aを用いるものであれば、例えばファーブラシタイプのローラであっても、中間転写ベルトと周速度差を設けて回転させれば同様の効果を得ることが出来る。
【0050】
また、本実施例のブラシ部材16は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に親水性高分子を分散させることでイオン導電性の抵抗特性を有するような中間転写ベルト10によって、より効果的に使用できる。イオン導電性の抵抗特性を示す中間転写ベルト10は、イオンを介在して電気導電を行うため、カーボンを分散させた電子導電性の中間転写ベルト10より、中間転写ベルト10の抵抗値が中間転写ベルトの面内で均一である。これは、中間転写ベルト10は、導電剤として親水性高分子を用いている場合には水イオンの移動により電気伝導を行っているため、絶対水分量に応じて抵抗値は変化するものの、中間転写ベルト10の抵抗値は場所に寄らず安定すると考えられる。一方、電子導電性の物質はカーボンなどの導電性フィラー間をトンネル効果によって電子がホッピングしながら移動することによって起きるものであるため、導電性フィラーの分散状態に抵抗値が依存する。
【0051】
そのため、中間転写ベルト10の抵抗値は、ブラシ部材16との接触箇所に寄らず安定しており、中間転写ベルト10の特定の箇所に放電が集中することがなくなる。従って、複合導電性繊維16aと中間転写ベルト10間で発生する放電を安定し、2次転写残留トナーTをより均一に帯電することができる。
【0052】
つまり、イオン導電性の中間転写ベルト10では面内の抵抗均一性が高いため複合導電性繊維16aと中間点者ベルト10間で発生する放電が安定し易い。そのため、イオン導電性の中間転写ベルト10の方は、電子導電性の中間転写ベルト10に比べ製造上の抵抗値ムラに対する許容範囲が大きい。
【0053】
(実施例2)
本実施例で適用する画像形成装置の構成において、前記実施例1と同様のものには、同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。2次転写残留トナーTの帯電手段として、用いているブラシ部材16と導電性ローラ17は、寸法、配置は実施例1と同様である。
【0054】
本実施例は、複合導電性繊維16fが、実施例1の複合導電性繊維16aと相異し、ポリエステルを主成分とし、図5に示すように断面形状が導電部16cと絶縁部16bが交互となる構成となっている。複合導電性繊維16fの導電部16bは、外周面において3箇所露出しており、外周面全体を100%とした場合の露出部の比率は合計15%である。また、複合導電性繊維16fの1本での単位長さあたり抵抗値は10Ω/cmである。
【0055】
複合導電性繊維16fの集合体として構成されるブラシ部材16は、絶縁性ナイロンで構成される基布16dに複合導電性繊維16aを織り込みブラシを構成し、厚さ1mmのSUS板金16e上に基布16dを導電性接着剤で接着している。ブラシ部材16は複合導電性繊維16fの単糸繊度3dtex、密度70kF/inchであり、複合導電性繊維16aの長さAは5mmであり、中間転写ベルト10回転方向に5列が植毛されている。
【0056】
尚、本実施例ではポリエステルを主成分とする複合導電性繊維16fを用いてブラシ部材16を構成しているものの、特に限定されるものではなく、ナイロン、アクリルなどでも良い。また、ブラシ部材16の先端位置は、中間転写ベルト10表面に対して、約1.0mmの侵入量で固定配置され、ブラシ部材16と中間転写ベルト10は周速度差が生じている。
【0057】
本実施例のように複合導電性繊維16aの導電部16cの露出が3箇所のものは、2箇所のものと比べ中間転写ベルト10と導電部16cが対向する放電点が増えるため、2次転写残留トナーTに対する帯電性能が向上する。特に、2次転写残留トナーTの帯電極性が負極性のものが多い場合は、複合導電性繊維16fを用いることで2次転写残留トナーTを適正な電荷量に帯電し画像不良を発生させることなく、転写同時クリーニングを実行可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 像露光手段
4 現像器
5 クリーニング装置
10 中間転写ベルト
14 1次転写ローラ
15 1次転写電源
16 ブラシ部材
16a 複合導電繊維
16b 絶縁部
16c 導電部
17 導電性ローラ
18 補助ローラ
20 2次転写ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、回転可能な無端状の中間転写体と、電圧が印加されて1次転写部において前記像担持体から前記中間転写体へトナー像を1次転写する1次転写部材と、電圧が印加されて2次転写部において前記中間転写体から転写材へトナー像を2次転写する2次転写部材と、前記中間転写体の回転方向において前記1次転写部よりも上流側で、且つ、前記2次転写部よりも下流側に配置され、前記中間転写体上の残留トナーを帯電する帯電部材と、を有する画像形成装置において、
前記帯電部材は、絶縁部と導電部を備える複合導電性繊維を有し、前記中間転写体の回転に伴って前記中間転写体の表面を前記複合導電性繊維で摺擦するブラシ部材であり、前記複合導電性繊維の外周面の一部が導電部であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写体は、イオン導電性の抵抗特性を備える中間転写体であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ブラシ部材は、所定の侵入量で前記中間転写体と当接することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写体の回転方向において前記1次転写部よりも上流側で、且つ、前記ブラシ部材よりも下流側に配置され、前記中間転写体と接触するともに前記中間転写体と同方向に回転する帯電ローラを有し、前記帯電ローラは前記ブラシ部材によって帯電された残留トナーを帯電することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−128380(P2011−128380A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286886(P2009−286886)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】