説明

画像形成装置

【課題】画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合でも、地汚れの発生を抑制することができる。
【解決手段】画像形成装置1は、感光ドラム17と、帯電ローラ12と、現像ローラ17と、トナー供給ローラ20と、トナー量を規制する規制ブレード21と、帯電ローラ12に帯電バイアスを印加する帯電電圧電源28と、現像ローラ17に現像バイアを印加する現像電圧電源29と、規制ブレード21に規制バイアスを印加する規制電圧電源31と、トナー供給ローラ20に供給バイアスを印加する供給電圧電源30と、制御部36とを有している。制御部36により、画像形成の動作を終了する所定時間前に、規制電圧電源31又は供給電圧電源30の少なくとも一方を制御して、規制ブレード21を通過した後の現像ローラ17上のトナー量を画像形成の動作中よりも少なくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンタ等の画像形成装置においては、画像形成動作を開始する時に、感光ドラムの未帯電領域表面に現像剤としてのトナーが移動してしまうことを防止するために、例えば、下記の特許文献1に記載された技術では、感光ドラムの未帯電領域が現像部を通過するまでの間は、トナーの帯電特性とは逆極性のバイアス電圧(以下単に「バイアス」という。)を現像ローラに印加する制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−83608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像形成装置では、次のような課題があった。
画像形成動作を開始する時に、現像ローラへ印加される現像バイアスと、トナー供給ローラへ印加される供給バイアスとのバイアス差が、画像形成動作時における現像バイアスと供給バイアスとのバイアス差よりも大きく、トナーが現像ローラに対して過剰に供給されてしまい、画像濃度の上昇等が発生したり、特に、画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合には、非画像領域にトナーが移ってしまう地汚れ等の画像品質の劣化を生じる課題があった。
【0005】
ここでいう地汚れとは、現像ローラ表面にトナーが過剰に供給された場合や、トナーの帯電が過剰に上昇した場合等に、現像ローラ表面に規制されたトナー層厚の電位が過剰に上昇し、感光ドラム表面の非画像領域にトナーが移動する画像品質の劣化のことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内の第1の発明は、画像信号に基づく静電潜像を担持する回転自在の静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に接触し前記静電潜像担持体を帯電する帯電手段と、前記静電潜像に現像剤を付着させて前記静電潜像を現像する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給部材と、前記現像剤担持体に接触し前記現像剤担持体上の前記現像剤量を規制する規制部材と、前記帯電手段に帯電電圧を印加する帯電電圧印加手段と、前記現像剤担持体に現像電圧を印加する現像電圧印加手段と、前記規制部材に規制電圧を印加する規制電圧印加手段と、前記供給部材に供給電圧を印加する供給電圧印加手段と、を有する画像形成装置であって、画像形成の動作の終了前における所定時間の間、前記規制電圧印加手段又は前記供給電圧印加手段の少なくとも一方を制御して前記規制部材を通過した後の前記現像剤担持体上の前記現像剤量を前記画像形成の動作中よりも少なくする制御手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、前記第1の発明の静電潜像担持体、帯電手段、現像剤担持体、供給部材、規制部材、帯電電圧印加手段、現像電圧印加手段、規制電圧印加手段、及び供給電圧印加手段を有する画像形成装置であって、前記静電潜像担持体が回転停止する時刻よりも所定時間前に、前記規制電圧又は前記供給電圧の少なくとも一方の電圧を、前記現像電圧よりも低い電圧に制御する制御手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、前記第1又は第2の発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記画像形成の動作の開始後における所定時間の間、前記供給電圧と前記現像電圧の差の絶対値が、前記画像形成の動作中における前記供給電圧と前記現像電圧の差の絶対値と等しいか、又は小さくなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内の第1の発明の画像形成装置によれば、制御手段により、画像形成の動作の終了前における所定時間の間、規制電圧印加手段又は供給電圧印加手段の少なくとも一方を制御して規制部材を通過した後の現像剤担持体上の現像剤量を画像形成の動作中よりも少なくするようにしたので、画像形成の動作を開始する時、静電潜像担持体の未帯電領域に現像剤が移動することを防ぐだけでなく、画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合でも、現像剤担持体に過剰に現像剤が供給されることがなく、地汚れの発生を抑制することができる。
【0010】
第2及び第3の発明の画像形成装置によれば、制御手段により、静電潜像担持体が回転停止する時刻よりも所定時間前に、規制電圧又は供給電圧の少なくとも一方の電圧を、現像電圧よりも低い電圧に制御するようにしたので、静電潜像担持体の回転が再開される時に、現像剤担持体上で静電潜像担持体と当接する部分から、規制部材又は供給部材と当接する部分までの間の現像剤の層厚を薄くすることができ、その結果、静電潜像担持体の回転再開時の汚れの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施例1における図2の画像形成装置1中の画像形成部10を示す概略の図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置の全体を示す概略の構成図である。
【図3】図3は図1(a)の画像形成部10における感光ドラム11、帯電ローラ12、現像ローラ17、トナー供給ローラ20及び規制ブレード21の位置関係を示す概略図である。
【図4】図4は図1の現像器14において本実施例1と比較例との電源印加のタイミングを示す図である。
【図5】図5は規制バイアス、供給バイアス及び現像バイアスに対するトナー19の帯電特性を示す図である。
【図6】図6は本発明の実施例1における現像ローラ17上のトナー付着量[mg/cm2]の効果を示す図である。
【図7】図7は本発明の実施例2における画像形成装置1A中の画像形成部10を示す概略の図である。
【図8】図8は図7の現像器14において本実施例2と比較例との電源印加のタイミングを示す図である。
【図9】図9は規制バイアス、供給バイアス及び現像バイアスに対するトナー19の帯電特性を示す図である。
【図10−1】図10−1は本発明の実施例2における現像ローラ17上のトナー付着量[mg/cm2]の効果を示す図である。
【図10−2】図10−2は本発明の実施例2における現像ローラ17上のトナー付着量[mg/cm2]の効果を示す図である。
【図11】図11は図7の現像器14において実施例2の変形例と比較例との電源印加のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0013】
(実施例1の全体構成)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置の全体を示す概略の構成図である。
【0014】
画像形成装置1は、例えば、電子写真方式を用いたカラープリンタであり、この内部の上部には、複数の画像形成部10(例えば、4色のブラック用画像形成部10K、イエロー用画像形成部10Y、マゼンタ用画像形成部10M、及びシアン用画像形成部10C)が、ほぼ等間隔に設けられている。各画像形成部10は、基本的に同一の構成である。
【0015】
複数の画像形成部10の下方には、これに対向して転写装置15が設けられている。転写装置15は、現像された現像剤(例えば、トナー)を記録媒体(例えば、記録用紙)22に転写する無端状の転写ベルト23と、この転写ベルト23に図示しない電源により電圧を印加する複数の転写ローラ24と、転写ベルト24を回転駆動するための動力を伝える駆動ローラ25−1及び従動ローラ25−2とにより構成されている。
【0016】
転写ベルト23の最下流には、この転写ベルト23をクリーニングするためのクリーニングブレード26が配設されている。複数の画像形成部10の下の搬送路における下流側には、定着器27が配設されている。転写装置15の下方には、記録用紙22を格納するための用紙カセット37が着脱自在に装着されている。用紙カセット37の前端部には、ホッピングローラ38が設けられている。
【0017】
ホッピングローラ38は、用紙カセット37から記録用紙22を選択的に取り出すローラであり、この下流側から従動ローラ25−2の間に、複数の搬送ローラ39−1,39−2が配設されている。複数の搬送ローラ39−1,39−2は、ホッピングローラ38から取り出された記録用紙22を従動ローラ25−2側へ搬送するローラである。搬送された記録用紙22は、複数の画像形成部10下の搬送路を経由して定着器27へ送られ、この下流側に設けられた排出ローラ40により外部へ排出される構成になっている。
【0018】
各画像形成部10は、画像信号に基づく静電潜像を担持する静電潜像担持体(例えば、感光ドラム)11を有している。感光ドラム11は、断面略円形状のドラム状回転体であり、表面に有機感光体が形成されている。感光ドラム11の周囲には、帯電手段(例えば、帯電ローラ)12、露光装置13、現像器14、及び転写装置15が配置されている。帯電ローラ12、現像器14、及び転写装置15は、感光ドラム11の表面に対向して、接触もしくは圧接して設けられており、本実施例1では接触して設けられる。更に、感光ドラム11の周囲には、この感光ドラム11の表面に接触してクリーニングブレード16が設けられ、このクリーニングブレード16により、感光ドラム11の表面に残留しているトナー19を掻き取って処理する構成になっている。
【0019】
露光装置13は、画像信号に対応した光を感光ドラム11の表面に照射し、静電潜像を形成するものであり、発光ダイオード(LED)等を用いた発光素子アレイ等により構成されている。現像器14は、印刷時に感光ドラム11に接触し、静電潜像にトナーを付着させてその静電潜像を現像する現像剤担持体(例えば、現像ローラ)17と、トナーカートリッジ18から補充されたトナー19を帯電させて現像ローラ17に供給する供給部材(例えば、トナー供給ローラ)20と、現像ローラ17の表面に接触してトナー供給ローラ20から供給されたトナー19を薄層化する規制部材(例えば、規制ブレード)21とにより構成されている。
【0020】
本実施例1のトナー19は、例えば、結着樹脂としてポリエステル、着色剤としてカーボンブラック、銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue15)、キナクリドン系顔料(C.I.Pigment Red122)、C.I.Pigment Yellow185等を使用している。体積平均粒子径は5.8μmとし、流動化剤及び帯電性をコントロールする目的で各帯電特性を持ったシリカや、帯電制御剤が外添されている。又、定着性の安定化のため、樹脂内部にパラフィン等のワックスを内包している。
【0021】
(実施例1の画像形成部の構成)
図1(a)、(b)は、本発明の実施例1における図2の画像形成装置1中の画像形成部10を示す概略の図であり、同図(a)は画像形成部10の構成を示す図、及び、同図(b)は画像形成部10における回路を示す図である。
【0022】
図2の画像形成装置1には、複数の画像形成部10(=10K,10Y,10M,10C)が設けられているが、これらの各画像形成部10は同様の構成であるため、そのうちの1つについて説明する。
【0023】
感光ドラム11は、例えば、外径約30mmで厚さ約1mmの円筒形状のアルミ素管の表面に、有機感光体が約18μmの厚みをもって塗布されている。アルミ素管において、一方の端部には、樹脂製のフランジが固定して設けられており、他方の端部には、画像形成装置本体からの動力を受けるための樹脂製のギア兼フランジが固定して設けられている。
【0024】
現像ローラ17は、金属製のシャフトの外周に設けられた弾性体で構成されている。例えば、直径10mmの金属製のシャフト上に弾性体として肉厚3mm、ゴム硬度40°(アスカーC)、抵抗値10Ω・cmの導電性のシリコンゴムを用い、表面層には絶縁層として比誘電率4のアクリル樹脂によるコート層を5μmの厚さでコートされている。
【0025】
トナー供給ローラ20は、金属製のシャフトの外周に設けられた発泡体で構成されている。例えば、直径6mmの金属製シャフトの上に、硬度50°(アスカーF)のウレタンゴム発泡体が厚さ4.75mmで成形されている。
【0026】
規制ブレード21は、現像ローラ17のトナー層を所望の量となるように、トナー層厚を規制するものである。例えば、厚さ80μm、自由長12.5mmの曲げ加工によるR形状を有するSUS304板ばねを用い、図1に示すように現像ローラ17に対向して配置されている。
【0027】
画像形成部10に関連する回路としては、パーソナルコンピュータ等の上位装置34に接続された制御手段(例えば、制御部)36を有している。制御部36は、画像形成部全体を制御するものであり、中央処理装置(CPU)等により構成されている。この制御部36には、各種のモータと各種の電源が接続されている。
【0028】
各種のモータとしては、例えば、感光ドラム11の駆動モータ11aと、転写装置15の駆動モータ15aと、ホッピングローラ38の駆動モータ38aと、搬送ローラ39−1,39−2の駆動モータ39aと、定着器27の駆動モータ27aとを有している。
【0029】
各種の電源としては、帯電ローラ12に帯電電圧である帯電バイアを印加する帯電電圧印加手段(例えば、帯電電圧電源)28と、現像ローラ17に現像電圧である現像バイアスを印加する現像電圧印加手段(例えば、現像電圧電源)29と、トナー供給ローラ20に供給電圧である供給バイアスを印加する供給電圧印加手段(例えば、供給電圧電源)30と、規制ブレード21に規制電圧である規制バイアスを印加する規制電圧印加手段(例えば、規制電圧電源)31とを有している。
【0030】
(実施例1の画像形成部の位置関係)
図3は、図1(a)の画像形成部10における感光ドラム11、帯電ローラ12、現像ローラ17、トナー供給ローラ20、及び規制ブレード21の位置関係を示す概略図である。
【0031】
感光ドラム11の回転中心11bから帯電ローラ12の回転中心12bまでを結ぶ線分と、感光ドラム11の回転中心11bから現像ローラ17の回転中心17bまでを結ぶ線分とがなす、感光ドラム11の回転方向の角度をθ1[rad]とする。
【0032】
現像ローラ17の回転中心17bから、規制ブレード21と現像ローラ17との当接部までを結ぶ線分と、現像ローラ17の回転中心17bから感光ドラム11の回転中心11bまでを結ぶ線分とがなす、現像ローラ17の回転方向の角度をθ2[rad]とする。
【0033】
感光ドラム11と現像ローラ17の半径をそれぞれR[mm]、r[mm]とする。感光ドラム11の表面が移動する速度と現像ローラ17の表面が移動する速度をそれぞれV1[mm/sec]、V2[mm/sec]とする。
【0034】
感光ドラム11と、帯電ローラ12と、現像ローラ17と、規制ブレード21とは、
(R×θ1)≦(V1/V2)×(r×θ2)
となる関係を満足するように設けられている。
【0035】
これは、現像ローラ表面の現像ローラ17と規制ブレード21の当接部が、現像ローラ17の回転に従って感光ドラム11と現像ローラ17の当接部に至るより以前に、感光ドラム表面の感光ドラム11と帯電ローラ12との当接部が、感光ドラム11の回転に従って感光ドラム11と現像ローラ17の当接部を通過する条件を表している。
【0036】
本実施例1では、例えば、
感光ド7ム11の半径R=15.0[mm]
現像ローラ17の半径r=8.0[mm]
感光ドラム11の表面が移動する速度V1=190.4[mm/sec]
現像ローラ17の表面が移動する速度V2=243.7[mm/sec]
であるため、感光ドラム11に対して帯電ローラ12と、現像ローラ17とが、
θ1=1.25[rad]
θ2=3.01[rad]
となるように、それぞれ感光ドラム11に当接して配置されている。
【0037】
(実施例1の全体の動作)
図1及び図2において、制御部36は、上位装置34から印刷命令を受けると、駆動モータ11a,15a,27a,38a,39a等の回転駆動を制御することにより、感光ドラム11、帯電ローラ12、露光装置13、現像ローラ17、トナー供給ローラ20、転写ローラ24、駆動ローラ25−1、定着器27、ホッピングローラ38、搬送ローラ39−1,39−2、及び排出ローラ40、それぞれの駆動を制御する。そして、感光ドラム11の表面に接触もしくは非接触で設けられた帯電ローラ12に対し、帯電電圧電源28によってトナー19の帯電極性と同極性の直流電圧−1000[V]を印加して感光ドラム11の表面を一様均一に帯電させる。
【0038】
次に、露光プロセスでは、露光装置13により、画像信号に対応した光が感光ドラム11に照射されて静電潜像が形成される。
【0039】
トナー供給ローラ20及び規制ブレード21には、供給電圧電源30と規制電圧電源31により、それぞれバイアス−300[V]が印加される。現像ローラ17には、現像電圧電源29により、トナー供給ローラ20と異なるバイアス−200[V]が印加される。現像ローラ17とトナー供給ローラ20との間には、トナー19がトナー供給ローラ20から現像ローラ17に移動する向きに電位差による電界が生じている。本実施例1では、画像形成時におけるトナー供給ローラ20と現像ローラ17のバイアス差は−100[V]である。
【0040】
現像器14内に収容されているトナー19は、トナー供給ローラ20の回転によって摩擦帯電され、トナー供給ローラ20に印加された供給バイアスと現像ローラ17に印加された現像バイアスの電圧差によって生じる電界により、現像ローラ17に供給される。現像ローラ17は、摩擦帯電されたトナー19を吸着して、これを図示矢印方向に搬送し、回転方向下流側に現像ローラ17に接触して配置された規制ブレード21によって均一な厚さのトナー層が形成される。この際にも、トナー19は、規制ブレード21と現像ローラ17と擦られることにより摩擦帯電される。
【0041】
このようにして規制ブレード21を通過したトナー19は、更に現像ローラ17の図示矢印方向への回転運動により運ばれ、感光ドラム11上に形成された静電潜像に対応して現像する。
【0042】
感光ドラム11の表面に現像されたトナー像は、感光ドラム11の回転に従って移動し、転写部である感光ドラム11と転写ベルト23との当接ニップ部に至る。一方、駆動ローラ25−1及び従動ローラ25−2の回転により、転写ベルト23が図示矢印方向に回転し、用紙カセット37から、ホッピングローラ38により供給された記録用紙22が、搬送ローラ39−1,39−2に搬送されて転写ベルト23に至り、この転写ベルト23により転写部へと送られる。転写ローラ24には、図示しない電源によりトナー19と逆極性の転写バイアス+2.6[kV]が印加されているため、感光ドラム11の表面のトナー像は、感光ドラム11の表面から離れて記録用紙22表面に転写される。
【0043】
記録用紙22の表面に転写されたトナー像は、転写ベルト23により記録用紙22と共に搬送され、定着器27によって熱及び圧力によりトナー像を溶融して記録用紙22上に定着され、定着された記録用紙22が排出ローラ40により画像形成装置1の外部へ送出される。
【0044】
ところで、転写後の感光ドラム11には若干のトナー19が残留する場合があるが、この残留トナー19は、クリーニングブレード16によって除去される。このようにして、感光ドラム11は繰り返し利用される。
【0045】
(実施例1の現像器の動作)
図4は、図1の現像器14において本実施例1と比較例との電源印加のタイミングを示す図である。
【0046】
この図4では、帯電電圧電源28、現像電圧電源29、供給電圧電源30、及び規制電圧電源31の印加タイミングと、感光ドラム駆動モータ11aの動作タイミングとが示されている。実線のタイミング波形は本実施例1の制御方法を示す図、破線のタイミング波形は比較例の制御方法を示す図である。横軸の時間軸上における時刻t1(1)は、時刻t2から、所定時間T10前の画像形成動作中であって、規制電圧電源31から印加される規制バイアスが0[V]となるタイミングである。
所定時間T10=(r×θ2)/V2
但し、r;現像ローラ17の半径[mm]
θ2;現像ローラ17の回転方向の角度[rad]
V2;現像ローラ17の表面が移動する速度[mm/sec]
時刻t2は、画像形成動作中から画像形成動作終了に移行する際、制御部36から感光ドラム11の駆動モータ11aに駆動信号オフが発信されるタイミングである。時刻t3は、画像形成動作開始時、制御部36から感光ドラム11の駆動モータ11aに駆動信号オンが発信されるタイミングである。時刻t4は、時刻t3から所定時間T20の経過後であって、現像電圧電源29、供給電圧電源30及び規制電圧電源31からそれぞれ、通常画像形成動作中の現像バイアス、供給バイアス及び規制バイアスの各出力が開始されるタイミングである。
所定時間T20=(R×θ1)/V1
但し、R;感光ドラム11の半径[mm]
θ1;感光ドラム11の回転方向の角度[rad]
V1;感光ドラム11の表面が移動する速度[mm/sec]
【0047】
比較例の制御方法では、例えば、画像形成動作を開始する時刻t3の時に、感光ドラム11の未帯電領域表面にトナー19が移動してしまうことを防止するために、感光ドラム11の未帯電領域が現像ローラ17を通過するまでの間(即ち、時刻t3〜t4までの所定時間T20の間)は、現像電圧電源29から現像ローラ17に、トナー19の帯電特性とは逆極性の現像バイアス+150[V]を印加する制御を行っている。画像形成動作を終了する時刻t2では、現像電圧電源29からの現像バイアス−200[V]と規制電圧電源31からの規制バイアス−300[V]とを同一タイミングで停止している。
【0048】
ところが、比較例の制御方法では、画像形成動作を開始する時刻t3〜t4の時に、現像ローラ17へ印加される現像バイアス+150[V]と、トナー供給ローラ20へ印加される供給バイアス0[V]とのバイアス差150[V]が、画像形成動作時における現像バイアス−200[V]と供給バイアス−300[V]とのバイアス差100[V]よりも大きく、トナー19が現像ローラ17に対して過剰に供給されてしまい、画像濃度の上昇等が発生したり、あるいは非画像領域にトナー19が移ってしまう地汚れ等の画像品質の劣化を生じる欠点がある。
【0049】
これを解決するために、本実施例1では、図1の現像器14において、制御部36により次のような制御を行っている。
【0050】
制御部36は、画像形成動作を終了するとき、感光ドラム駆動モータ11aの駆動を止めるオフ信号を発信する時刻t2から所定時間T10前の時刻t1(1)において、規制電圧電源31を制御して規制ブレード21に印加する規制バイアスを0[V]にする。
【0051】
ここでいう所定時間T10とは、現像ローラ表面の現像ローラ17と規制ブレード21の当接部が、現像ローラ17の回転に従って感光ドラム11と現像ローラ17の当接部に至るまでの所要の時間であって、(r×θ2)/V2[sec]に等しい。
【0052】
この間、図4に示すように、現像ローラ17と規制ブレード21との間に生じる電界の向きは、画像形成時における電界の向きとは逆方向になり、トナー19が現像ローラ17から規制ブレード21に向かつて移動する方向となる。従って、現像ローラ17上のトナー19が規制ブレード21を通過する際、規制ブレード21の方向に移動する量が多くなり、規制ブレード21を通過して形成されたトナー層厚は、画像形成時のトナー層厚よりも小さくなる。
【0053】
本実施例1では、感光ドラム駆動モータ11aが停止した時の、現像ローラ17表面の規制ブレード21当接部から感光ドラム11当接部までの間のトナー層厚は、1平方センチメートル当たり0.25[mg]であった。画像形成の動作時におけるトナー層厚は、1平方センチメートル当たり0.53[mg]であるため、本実施例1における制御により、画像形成の終了時(時刻t2)のトナー層厚は、画像形成の動作時におけるトナー層厚よりも小さくなる。
【0054】
時刻t3において画像形成動作を再開すると、制御部36は、感光ドラム駆動モータ11aを駆動し、帯電電圧電源28及び現像電圧電源29を制御して帯電バイアスを帯電ローラ12に印加すると共に現像バイアスを現像ローラ17に印加するが、時刻t3で画像形成動作を再開してから所定時間T20の間、現像ローラ17に印加する現像バイアスは、供給バイアスと現像バイアスのバイアス差が、画像形成動作中の供給バイアスと現像バイアスのバイアス差を越えないように印加する。
【0055】
ここでいう所定時間T20とは、感光ドラム表面の感光ドラム11と帯電ローラ12の当接部が、感光ドラム11の回転に従って感光ドラム11と現像ローラ17の当接部に至るまでの所要の時間であって、(R×θ1)/V1[sec]に等しい。そしてこの間、制御部36は、トナー供給ローラ20と規制ブレード21とに印加されるバイアスが0[V]となるように制御する。本実施例1では、現像バイアスは+50[V]とした。
【0056】
時刻t3から所定時間T20が経過した時刻t4後に画像形成動作を開始するために、制御部36は、現像電圧電源29、供給電圧電源30及び規制電圧電源31を制御し、現像ローラ17に現像バイアス−200[V]、トナー供給ローラ20に供給バイアス−300[V]、及び規制ブレード21に規制バイアス−300[V]をそれぞれ印加する
【0057】
本実施例1のような制御では、時刻t2における画像形成の終了時の現像ローラ表面のトナー層厚が、時刻t2以前における画像形成の動作時のトナー層厚よりも小さくなるため、時刻t3において画像形成の動作を再開する時、現像ローラ17に印加されるトナー19とは逆極性のバイアス+50[V]を小さくすることができる。その結果、供給バイアス0[V]と現像バイアス+50[V]のバイアス差50[V]を、画像形成動作中のバイアス差100[V]と等しいか、あるいはそれ以下にすることが可能となる。
【0058】
(所定時間T10において現像ローラ17のトナー付着量が減少する理由)
図5は、規制バイアス、供給バイアス及び現像バイアスに対するトナー19の帯電特性を示す図である。
【0059】
図5において、本実施例1で使用するトナー19の帯電特性は、負帯電特性である。図5の縦軸の電圧0[V]は、図4の所定時間T10における規制バイアス値、電圧−200[V]は、画像形成開始後から図4の時刻t1(1)まで、及び、所定時間T10における現像バイアス値、電圧−300[V]は、画像形成開始後から時刻t1(1)までの規制バイアス値及び供給バイアス値である。図5中の上向きの太線矢印は、トナー19である負帯電粒子が受ける電界からの力の向きを表している。
【0060】
図5に示すように、電界によって負帯電トナー19が受ける力の向きは、画像形成開始後から時刻t1(1)までの間では、規制ブレード21から現像ローラ17に向かう向きであり、所定時間T10の間では、現像ローラ17から規制ブレード21に向かう向きである。そのため、所定時間T10の間は、現像ローラ17に対するトナー付着量が減少する。以下この理由を説明する。
【0061】
図4及び図5において、現像電圧電源29から現像ローラ17へ印加する現像バイアスが−200[V]である場合、供給電圧電源30からトナー供給ローラ20へ印加する供給バイアスが−300[V]であれば、トナー19はトナー供給ローラ20→現像ローラ17へと移動し、現像ローラ17上にトナー19が供給される。これに対し、トナー供給ローラ20へ印加する供給バイアスが0[V]であれば、トナー19は現像ローラ17→トナー供給ローラ20へと移動し、現像ローラ17上のトナー19がトナー供給ローラ20側へ回収され、現像ローラ17上のトナー層の厚さが薄くなる。
【0062】
現像ローラ17へ印加する現像バイアスが−200[V]である場合、規制ブレード21へ印加する規制バイアスが−300[V]であれば、トナー19は規制ブレード21にて負の電荷が注入され、現像ローラ17上のトナー19の帯電量が増加し、現像ローラ17上のトナー層の電位は高められる。しかし、規制ブレード21へ印加する規制バイアスが0[V]であれば、トナー19は規制ブレード21にて負の電荷が注入されないため、現像ローラ17上のトナー19の帯電量が増加しないので、現像ローラ17上のトナー層の電位は高められない。更に、トナー19は現像ローラ17→規制ブレード21へと移動し、現像ローラ17上のトナー19が規制ブレード21側へ回収され、現像ローラ17上のトナー層の厚さが薄くなる。
【0063】
(最適な規制(又は供給)バイアスの範囲)
最適な規制(供給)バイアスの範囲を検討すると、電界の向きが現像ローラ17から規制ブレード21やトナー供給ローラ20へ向かう方向であればよいので、
0[V]≦|規制(又は供給)バイアスSB|≦|画像形成動作中の現像バイアス|
であればよい。即ち、規制バイアスと供給バイアスの少なくとも一方の絶対値は、現像バイアスの絶対値以下であればよい。従って、本実施例1の場合、規制バイアスを印加する規制電圧電源31と供給バイアスを印加する供給電圧電源30とが、正電圧出力を想定していないので、
−200[V]≦規制(又は供給)バイアスSB≦0[V]
となる。以下、この理由を説明する。
【0064】
図4の所定時間T10において、規制バイアスが0[V]にされている。規制バイアス(又は供給バイアス)は、原理的には通常の現像バイアスよりも絶対値で低い電圧であればよいといえる。そこで、通常の現像バイアスよりも絶対値で低いバイアスとして、どの程度のバイアスの範囲であるかについて検討する。
【0065】
トナー供給ローラ20へ印加する供給バイアスが−200[V]の時には現像ローラ17に対して、更にトナー19を供給することがないので、現像ローラ17上のトナー19の付着量は増加しない。そのため、通常時(=画像形成時で現像バイアス−200[V]/供給バイアス−300[V])に比べ、現像ローラ17上のトナー量は少なくなる。
【0066】
トナー供給ローラ20へ印加する供給バイアスが−200[V]未満の時は現像ローラ17に対して、トナー19を回収する作用が生じる(これは前述した電界の向きによる。)。そのため、通常時(=画像形成時で現像バイアス−200[V]/供給バイアス−300[V])に比べ、現像ローラ17上のトナー量は更に少なくなる。
【0067】
規制ブレード21へ印加する規制バイアスが−200[V]の時には現像ローラ17と同電位であるため、現像ローラ17上のトナー19に対して電荷の注入がされない。そのため、現像ローラ17上のトナー層の電位が通常時(=画像形成時で現像バイアス−200[V]/規制バイアス−300[V])に比べ、トナー層の電位が高くならない。従って、汚れが発生しない。
【0068】
ここで、「汚れ」とは、正常に帯電したトナーに対して、帯電量が高いトナー(所謂、過剰帯電トナー)により画像の背景部や潜像の形成されない部分(即ち、非画像部)にトナーが付着することをいう。この「汚れ」を引き起こす過剰帯電トナーを「汚れトナー」という。
【0069】
規制ブレード21へ印加する規制バイアスが−200[V]未満の時には、現像ローラ17上のトナー19に対して電荷の注入がされないので、現像ローラ17上のトナー層の電位が通常時(=画像形成時で現像電圧−200[V]/規制電圧−300[V])に比べ、トナー層の電位が高くならない。又、現像ローラ17に対して規制ブレード21は卜ナー19を引き付ける電位のため、規制ブレード21で現像ローラ17上のトナー19を回収する作用が生じる(これは前述した電界の向きによる。)。従って、通常時(=画像形成時で現像バイアス−200[V]/規制バイアス−300[V])に比べ、現像ローラ17上のトナー量は少なくなる。従って、汚れが発生しない。
【0070】
(実施例1の効果)
図6は、本発明の実施例1における現像ローラ17上のトナー付着量[mg/cm2]の効果を示す図である。
【0071】
この図6では、現像ローラ17表面の1平方センチメートル当たりのトナー層厚について、画像形成の動作中と、画像形成の終了時と、画像形成の動作と終了を繰り返し10回行ったときにおける、比較例の制御を行った結果と本実施例1による制御を行った結果の比較が示されている。
【0072】
図6に示すように、本実施例1による制御を行えば、画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合、即ち、トナー19の消費が極端に少ない印刷が継続して、トナー19が現像ローラ17上に過剰に供給されやすい状態になったとしても、過剰に供給されることを防ぐことができる。従って、画像形成の動作を再開するとき、感光ドラム11の未帯電領域にトナー19が移動することを防ぐだけでなく、画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合でも、現像ローラ17に過剰にトナー19が供給されることがなく、画像濃度の上昇や、地汚れの発生を抑制することができる。
【0073】
以上のように、本実施例1の画像形成装置1によれば、制御部36の制御により、感光ドラム11が回転停止する時刻t2より前の所定時間T10の間、規制バイアスの絶対値を、現像バイアスの絶対値よりも小さい電圧に制御するようにしたので、感光ドラム11の回転が再開される時に、現像ローラ17上で感光ドラム11と当接する部分から、規制ブレード21又はトナー供給ローラ20と当接する部分までの間のトナー層厚を薄くすることができ、その結果、感光ドラム11の回転再開時の汚れの発生を防止できる。具体的には、画像形成の動作を開始する時、感光ドラム11の未帯電領域にトナー19が移動することを防ぐだけでなく、画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合でも、現像ローラ17に過剰にトナー19が供給されることがなく、地汚れの発生を抑制することができる。
【実施例2】
【0074】
(実施例2の構成)
図7(a)、(b)は、本発明の実施例2における画像形成装置1A中の画像形成部10を示す概略の図であり、同図(a)は画像形成部10の構成を示す図、及び、同図(b)は画像形成部10における回路を示す図である。この図7において、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0075】
本実施例2の画像形成装置1Aは、実施例1の画像形成装置1に対して全体の構成が同様であるが、本実施例2では、現像器14等を制御する実施例1の制御部36に代えて、これとは制御内容の異なる制御部36Aが設けられている。
【0076】
本実施例2の制御部36Aでは、画像形成動作を終了する時、感光ドラム駆動モータ11aの駆動を止めるオフ信号を発信する所定の時間前に、供給電圧電源30を制御する構成になっている。又、本実施例2では、現像ローラ17の回転中心17bからトナー供給ローラ20の回転中心20bまでを結ぶ線分と、現像ローラ17の回転中心17bから感光ドラム11の回転中心11bまでを結ぶ線分とがなす、現像ローラ17の回転方向の角度をθ3[rad]として、例えば、θ3=4.05[rad]となるようにトナー供給ローラ20が現像ローラ17に当接して配置されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0077】
(実施例2の現像器の動作)
図8は、図7の現像器14において本実施例2と比較例との電源印加のタイミングを示す図であり、実施例1を示す図4中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0078】
図8には、実施例1の図4と同様に、帯電電圧電源28、現像電圧電源29、供給電圧電源30、及び規制電圧電源31の印加タイミングと、感光ドラム駆動モータ11aの動作タイミングとが示されている。実線のタイミング波形は本実施例2の制御方法を示す図、破線のタイミング波形は比較例の制御方法を示す図である。
【0079】
図8において、横軸の時間軸上における時刻t1(2)は、実施例1の図4中の時刻t1(1)に対応しており、画像形成動作終了時の時刻t2から、所定時間T11前の画像形成動作中であって、供給電圧電源30から印加される供給バイアスが0[V]となるタイミングである。
所定時間T11=(r×θ3)/V2
但し、r;現像ローラ17の半径[mm]
θ3;現像ローラ17の回転方向の角度[rad]
V2;現像ローラ17の表面が移動する速度[mm/sec]
【0080】
その他の画像形成動作終了の時刻t2、画像形成動作開始の時刻t3、画像形成動作開始から所定時間T20後の時刻t4は、実施例1の図4中の時刻及び時間と同様である。
【0081】
以下、実施例1と同様の動作説明は省略し、主として実施例1とは異なる現像器14の動作を図8を参照しつつ説明する。
【0082】
図8に示すように、制御部36Aは、時刻t2において画像形成動作を終了する場合、感光ドラム駆動モータ11aの駆動を止めるオフ信号を発信する所定時間T11前に、時刻t1(2)において供給電圧電源30を制御してトナー供給ローラ20に印加する供給バイアスを0[V]にする。ここでいう所定時間T11とは、現像ローラ表面の現像ローラ17とトナー供給ローラ20の当接部が、現像ローラ17の回転に従って感光ドラム11と現像ローラ17の当接部に至るまでの所要の時間であって、(r×θ3)/V2[sec]に等しい。
【0083】
この間、図8に示すように、現像ローラ17とトナー供給ローラ20との間に生じる電界の向きは、画像形成時における電界の向きとは逆方向になり、トナー19が現像ローラ17からトナー供給ローラ20に向かつて移動する方向となる。従って、現像ローラ17とトナー供給ローラ20の当接部で摩擦帯電されたトナー19は、現像ローラ17とトナー供給トラー20との摺擦による供給により現像ローラ17表面に付着するのみで、多くはトナー供給ロート20に向かつて移動する。このため、現像ローラ17の回転に従って規制ブレード21を通過して形成されたトナー層厚は、画像形成時のトナー層厚よりも小さくなる。
【0084】
本実施例2では、時刻t3において感光ドラム駆動モータ11aが停止した時の、現像ローラ17表面の規制ブレード21当接部から感光ドラム11当接部までの間のトナー層厚は、1平方センチメートル当たり0.21[mg]であった。画像形成の動作時におけるトナー層厚は、1平方センチメートル当たり0.53[mg]であるため、本実施例2における制御により、時刻t2における画像形成終了時のトナー層厚は、時刻t1(2)における画像形成動作時におけるトナー層厚よりも小さくなる。
【0085】
時刻t3において画像形成動作を再開すると、制御部36Aは、実施例1と同様に感光ドラム駆動モータ11aを駆動し、帯電電圧電源28及び現像電圧電源29を制御して、帯電バイアスを帯電ローラ12に印加すると共に現像バイアスを現像ローラ17に印加するが、時刻t3において画像形成動作を再開してから所定時間T20の間、現像ローラ17に印加する現像バイアスは、供給バイアスと現像バイアスのバイアス差が、画像形成動作中の供給バイアス−300[V]と現像バイアス−200[V]のバイアス差100[V]を越えないように印加する。ここでいう所定時間T20とは、感光ドラム表面の感光ドラム11と帯電ローラ12の当接部が、感光ドラム11の回転に従って感光ドラム11と現像ローラ17の当接部に至るまでの所要の時間であって、(R×θ1)/V1[sec]に等しい。そしてこの間、制御部36Aは、トナー供給ローラ20と規制ブレード21とに印加する供給バイアス及び規制バイアスを0[V]となるように制御する。本実施例では、現像バイアスは+30[V]とした。
【0086】
時刻t3で画像形成動作が再開されてから所定時間T20経過後の時刻t4において、制御部36Aは、画像形成動作を開始するために現像電圧電源29、供給電圧電源30及び規制電圧電源31を制御し、現像ローラ17に現像バイアス−200[V]、トナー供給ローラ20に供給バイアス−300[V]、及び規制ブレード21に規制バイアス−300[V]をそれぞれ印加する。
【0087】
本実施例2のような制御では、時刻t2における画像形成の終了時の現像ローラ17表面のトナー層厚は、時刻t1(2)における画像形成の動作時のトナー層厚よりも小さくなるため、時刻t3において画像形成の動作を再開する時、現像ローラ17に印加されるトナー19とは逆極性のバイアス電圧を、実施例1と比較して更に小さくすることができる。その結果、供給バイアス0[V]と現像バイアス+30[V]のバイアス差30[V]を、画像形成動作中のバイアス差100[V]と等しいか、あるいはそれ以下にすることが可能となる。
【0088】
(所定時間T11において現像ローラ17のトナー付着量が減少する理由)
図9は、規制バイアス、供給バイアス及び現像バイアスに対するトナー19の帯電特性を示す図であり、実施例1を示す図5に対応している。
【0089】
実施例1と同様に、図9において、本実施例2で使用するトナー19の帯電特性は、負帯電特性である。図9の縦軸の電圧0[V]は、図8の所定時間T11における供給バイアス値、電圧−200[V]は、画像形成開始後から図8の時刻t1(2)まで、及び、所定時間T11における現像バイアス値、電圧−300[V]は、画像形成開始後から時刻t1(2)までの規制バイアス値及び供給バイアス値である。図8中の上向きの太線矢印は、トナー19である負帯電粒子が受ける電界からの力の向きを表している。
【0090】
図8に示すように、電界によって負帯電トナー19が受ける力の向きは、画像形成開始後から時刻t1(2)までの間では、トナー供給ローラ20から現像ローラ17に向かう向きであり、所定時間T11の間では、現像ローラ17からトナー供給ローラ20に向かう向きである。そのため、所定時間T11の間は、現像ローラ17に対するトナー付着量が減少する。
【0091】
(実施例2の効果)
図10−1及び図10−2は、本発明の実施例2における現像ローラ17上のトナー付着量[mg/cm2]の効果を示す図であり、実施例1を示す図6に対応している。
【0092】
この図10−1及び図10−2では、環境温湿度が温度23℃で相対湿度45%と、温度10℃で湿度20%の環境下において、現像ローラ17表面の1平方センチメートル当たりのトナー層厚について、画像形成の動作中と、画像形成の終了時と、画像形成の動作と終了を繰り返し10回行ったときにおける、比較例の制御及び実施例1の制御を行った結果と本実施例2による制御を行った結果の比較が示されている。
【0093】
図10−1及び図10−2に示すように、本実施例2による制御を行えば、画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合、即ちトナー19の消費が極端に少ない印刷が継続して、トナー19が現像ローラ17上に過剰に供給されやすい状態になったとしても、過剰に供給されることを防ぐことができることを示している。特に、一般にトナー帯電が上昇しやすい低温度と低湿度の環境では、トナー19が過剰に供給されることなく画像形成動作を行える。これは、現像ローラ17表面に供給されるトナー量が、規制ブレード21と現像ローラ17とのバイアス差による供給よりも、トナー供給ローラ20による摩擦帯電と摺擦により、トナー供給ローラ20と現像ローラ17とのバイアス差による供給の寄与が大きいということで理解できる。
【0094】
以上のように、本実施例2の画像形成装置1Aによれば、制御部36Aの制御により、感光ドラム11が回転停止する時刻t2より前の所定時間T11の間、供給バイアスの絶対値を、現像バイアスの絶対値よりも小さい電圧に制御するようにしたので、感光ドラム11の回転が再開される時に、現像ローラ17上で感光ドラム11と当接する部分から、規制ブレード21又はトナー供給ローラ20と当接する部分までの間のトナー層厚を薄くすることができ、その結果、感光ドラム11の回転再開時の汚れの発生を防止できる。
【0095】
即ち、前記実施例1及び本実施例2によれば、制御部36,36Aの制御により、感光ドラム11が回転停止する時刻t2より前の所定時間T10,T11の間、規制バイアス又は供給バイアスの少なくとも一方の電圧の絶対値を、現像バイアスの絶対値よりも小さい電圧に制御することにより、前記の効果が得られることになる。
【0096】
更に、本実施例2によれば、画像形成の動作を再開するとき、感光ドラム11の未帯電領域にトナー19が移動することを防ぐだけでなく、トナー19の帯電が上昇しやすい環境で画像形成動作を行う場合や、画像形成の動作と終了を繰り返し行った場合でも、現像ローラ17に過剰にトナー19が供給されることがなく、画像濃度の上昇や、地汚れの発生を抑制することができる。
【0097】
(実施例2の変形例)
図11は、図7の現像器14において実施例2の変形例と比較例との電源印加のタイミングを示す図であり、実施例2を示す図8中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0098】
図11には、図8と同様に、帯電電圧電源28、現像電圧電源29、供給電圧電源30、及び規制電圧電源31の印加タイミングと、感光ドラム駆動モータ11aの動作タイミングとが示されているが、図8と図11とでは、画像形成終了時における時刻t1(2),t1(3),t1(4),t2のタイミング波形が異なる。実線のタイミング波形は実施例2の変形例の制御方法を示す図、破線のタイミング波形は比較例の制御方法を示す図である。
【0099】
図11において、横軸の時間軸上における時刻t1(3)は、実施例1の図4中の時刻t1(1)と同様であり、時刻t1(4)は、実施例2の図8中の時刻t1(2)と同様である。その他の時刻t2,t3,t4及び所定時間T20は、実施例2の図8中の時刻及び時間と同様である。
【0100】
図11に示すように、時刻t1(3),t1(4),t2において、画像形成動作を終了する時、制御部36Aにより、感光ドラム駆動モータ11aの駆動を止めるオフ信号を発信する所定時間T11前の時刻t1(3)において、供給電圧電源30を制御してトナー供給ローラ20に印加する供給バイアスを0[V]にし、且つ、感光ドラム駆動モータ11bの駆動を止めるオフ信号を発信する所定時間T10前の時刻t1(4)において、規制電圧電源31を制御して規制ブレード21に印加する規制バイアスを0[V]にするような、供給電圧電源30と規制電圧電源31を両方同時に制御するようにしても、図8と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0101】
(実施例1、2の他の変形例)
本発明は、上記実施例1、2やその変形例に限定されず、更に他の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0102】
(a) 実施例では、トナー19の帯電特性が負帯電特性である場合について説明したが、正帯電特性のトナーをした場合にも本発明を適用できる。この場合は、現像バイアス、供給バイアス、及び規制バイアス等の極性を実施例とは逆の極性にすればよい。
【0103】
(b) 図1〜図3、図7に示す画像形成装置1,1Aは、図示以外の他の構成に変更してもよい。
【0104】
(c) 本発明は、電子写真方式のカラープリンタ以外のモノクロプリンタに適用したり、あるいは、転写手段として中間転写方式を適用した画像形成装置にも適用が可能である。更に、プリンタ以外の複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP)等の他の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1,1A 画像形成装置
10,10k,10Y,10M,10C 画像形成部
11 感光ドラム
11a 感光ドラム駆動モータ
12 帯電ローラ
17 現像ローラ
19 トナー
20 トナー供給ローラ
21 規制ブレード
28 帯電電圧電源
29 現像電圧電源
30 供給電圧電源
31 規制電圧電源
36,36A 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に基づく静電潜像を担持する回転自在の静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体に接触し前記静電潜像担持体を帯電する帯電手段と、
前記静電潜像に現像剤を付着させて前記静電潜像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給部材と、
前記現像剤担持体に接触し前記現像剤担持体上の前記現像剤量を規制する規制部材と、
前記帯電手段に帯電電圧を印加する帯電電圧印加手段と、
前記現像剤担持体に現像電圧を印加する現像電圧印加手段と、
前記規制部材に規制電圧を印加する規制電圧印加手段と、
前記供給部材に供給電圧を印加する供給電圧印加手段と、
を有する画像形成装置であって、
画像形成の動作の終了前における所定時間の間、前記規制電圧印加手段又は前記供給電圧印加手段の少なくとも一方を制御して前記規制部材を通過した後の前記現像剤担持体上の前記現像剤量を前記画像形成の動作中よりも少なくする制御手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定時間の間、前記規制電圧印加手段が印加する前記規制電圧を前記画像形成の動作中よりも小さくするように制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記所定時間の間、前記供給電圧印加手段が印加する前記供給電圧を前記画像形成の動作中よりも小さくするように制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記所定時間の間、前記規制電圧印加手段が印加する前記規制電圧と前記供給電圧印加手段が印加する前記供給電圧とを前記画像形成の動作中よりも小さくするように制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記静電潜像担持体及び前記現像剤担持体は、断面略円形状の回転体であり
前記静電潜像担持体及び前記現像剤担持体の半径をそれぞれR、rとし、
前記静電潜像担持体の回転中心と、前記帯電手段により帯電される前記静電潜像担持体上の位置と、を結んだ線に対する前記静電潜像担持体の回転方向の角度であって、前記静電潜像担持体の回転中心と前記現像剤担持体の回転中心とを結んだ線までの角度をθ1とし、
前記現像剤担持体の回転中心と、前記規制部材が前記現像剤担持体に当接する位置とを結んだ線に対する前記現像剤担持体の回転方向の角度であって、前記現像剤担持体の回転中心と前記静電潜像担持体の回転中心とを結んだ線までの角度をθ2とし、
前記静電潜像担持体及び前記現像剤担持体の表面の移動速度をそれぞれV1、V2とした場合に、
(R×θ1)≦(V1/V2)×(r×θ2)
を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記所定時間は、
(r×θ2)/V2
であることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像剤担持体の回転中心と、前記供給部材が前記現像剤担持体に当接する位置とを結んだ線に対する前記現像剤担持体の回転方向の角度であって、前記現像剤担持体の回転中心と前記静電潜像担持体の回転中心とを結んだ線までの角度をθ3とした場合に、
前記所定時間は、
(r×θ3)/V2
であることを特徴とする請求項5の記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像信号に基づく静電潜像を担持する回転自在の静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体に接触し前記静電潜像担持体を帯電する帯電手段と、
前記静電潜像に現像剤を付着させて前記静電潜像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給部材と、
前記現像剤担持体に接触し前記現像剤担持体上の前記現像剤量を規制する規制部材と、
前記帯電手段に帯電電圧を印加する帯電電圧印加手段と、
前記現像剤担持体に現像電圧を印加する現像電圧印加手段と、
前記規制部材に規制電圧を印加する規制電圧印加手段と、
前記供給部材に供給電圧を印加する供給電圧印加手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記静電潜像担持体が回転停止する時刻よりも所定時間前に、前記規制電圧又は前記供給電圧の少なくとも一方の電圧を、前記現像電圧よりも低い電圧に制御する制御手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記所定時間前に、前記規制電圧又は前記供給電圧の少なくとも一方の電圧の絶対値を、前記現像電圧の絶対値以下に制御することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記静電潜像担持体及び前記現像剤担持体は、断面略円形状の回転体であり
前記静電潜像担持体及び前記現像剤担持体の半径をそれぞれR、rとし、
前記静電潜像担持体の回転中心と、前記帯電手段により帯電される前記静電潜像担持体上の位置と、を結んだ線に対する前記静電潜像担持体の回転方向の角度であって、前記静電潜像担持体の回転中心と前記現像剤担持体の回転中心とを結んだ線までの角度をθ1とし、
前記現像剤担持体の回転中心と、前記規制部材が前記現像剤担持体に当接する位置とを結んだ線に対する前記現像剤担持体の回転方向の角度であって、前記現像剤担持体の回転中心と前記静電潜像担持体の回転中心とを結んだ線までの角度をθ2とし、
前記静電潜像担持体及び前記現像剤担持体の表面の移動速度をそれぞれV1、V2とした場合に、
(R×θ1)≦(V1/V2)×(r×θ2)
を満たすことを特徴とする請求項8又は9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記所定時間は、
(r×θ2)/V2
であることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記現像剤担持体の回転中心と、前記供給部材が前記現像剤担持体に当接する位置とを結んだ線に対する前記現像剤担持体の回転方向の角度であって、前記現像剤担持体の回転中心と前記静電潜像担持体の回転中心とを結んだ線までの角度をθ3とした場合に、
前記所定時間は、
(r×θ3)/V2
であることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記画像形成の動作の開始後における所定時間の間、前記供給電圧と前記現像電圧の差の絶対値が、前記画像形成の動作中における前記供給電圧と前記現像電圧の差の絶対値と等しいか、又は小さくなるように制御することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−145449(P2011−145449A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5673(P2010−5673)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】