説明

画像形成装置

【課題】複数の画像形成部においてクリーニング部材の潤滑性不足による画像不良の発生を低減できるようにする。
【解決手段】複数の前記画像形成部Py,Pm,Pc,PBkで用いるトナーについてクリーニング部材6a,6b,6c,6dと像担持体1a,1b,1c,1dとの接触領域Arで前記クリーニング部材に与える潤滑性の異同に応じて少なくとも2つの異なるメルトインデックスを設定しており、第2のトナー供給モードでは、前記メルトインデックスの低いトナーを用いる所定の前記画像形成部から前記メルトインデックスの高いトナーを用いる他の前記画像形成部へ前記メルトインデックスの低いトナーを供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材にカラー画像を形成する電子写真プリンタ、電子写真複写機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を利用して記録材にカラー画像を形成するプリンタや複写機などの画像形成装置として、インライン方式の画像形成装置が知られている。このインライン方式の画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を形成する4つの画像形成部を有している。この4つの画像形成部では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を回転動作中の感光ドラムの外周面(表面)に形成する。そして感光ドラム表面からトナー画像を記録材に転写した後に感光ドラム表面に接触しているクリーニングブレードで感光ドラム表面に残留する転写残トナーを掻き落として回収するようになっている。
【0003】
クリーニングブレードは、一般的にウレタンゴム等の柔軟性のあるものが用いられる。通常、クリーニングブレードは、ゴム硬度、厚さ、弾性率、感光ドラム表面への突き出し量等の諸条件を最適化する必要がある。画像形成時には感光ドラムは回転されるため、感光ドラムとクリーニングブレードとの間の摩擦抵抗が増大する。そのため、低印字の印刷が続く時、小さいサイズの紙での印刷が続く時、高温多湿での印刷が続く時等、次のような問題が発生することがある。クリーニングブレードのめくれ、クリーニングブレードのエッジ部の欠け、クリーニングブレードの感光ドラム表面に対するびびり(スティックスリップ)である。クリーニングブレードがめくれた場合は印刷不能になり、クリーニングブレードにエッジ部の欠けやびびりが発生した場合はトナーがクリーニングブレードを擦り抜け記録材に縦スジ状の画像となって現れる。
【0004】
このような現象に対して、特許文献1には、非画像形成時に現像手段により感光ドラム上にトナーを供給しこのトナーを潤滑剤として用いることによって、クリーニングブレードのめくれ、エッジ部の欠け、びびりを防止する構成が提案されている。特許文献2、特許文献3には、トナーの有効利用と廃トナータンクの満杯防止を目的として、トナーを供給すべき画像形成部や、トナーを回収すべき画像形成部を選択することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−161426公報
【特許文献2】特開2001−175047公報
【特許文献3】特開2002−311670公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の画像形成装置では、複数の画像形成部においてクリーニングブレードの感光ドラム表面に対する潤滑性不足による画像不良の発生を防止することが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、複数の画像形成部においてクリーニング部材の潤滑性不足による画像不良の発生を低減できるようにした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の構成は、記録材にカラー画像を形成する画像形成装置であって、複数の画像形成部と、複数の前記画像形成部に沿って配された回転自在な搬送部材と、を有し、複数の前記画像形成部は、それぞれ、回転自在な像担持体と、画像形成時に前記像担持体に所定の色のトナーを用いトナー像を形成する現像手段と、前記像担持体に形成されたトナー像を前記搬送部材によって搬送される記録材に転写する転写部材と、前記像担持体と接触するクリーニング部材であって、前記像担持体からトナー像が記録材に転写された後に前記像担持体に担持されている不要なトナーを除去するクリーニング部材と、を有する画像形成装置において、制御部を有し、前記制御部は、非画像形成時に所定の画像形成部の前記像担持体に前記現像手段により形成した供給用トナー像を前記像担持体によって前記像担持体と前記クリーニング部材との接触領域に供給する第1のトナー供給モードと、非画像形成時に所定の画像形成部の前記像担持体に前記現像手段により形成した供給用トナー像を前記転写部材によって前記搬送部材に転写し、前記搬送部材により供給用トナー像を所定の前記画像形成部以外の他の画像形成部に搬送し、他の前記画像形成部の前記転写部材により供給用トナー像を前記搬送部材から前記像担持体に転写するとともに前記像担持体によって前記像担持体と前記クリーニング部材との接触領域に供給する第2のトナー供給モードと、を有するとともに、複数の前記画像形成部で用いるトナーについて前記クリーニング部材と前記像担持体との接触領域で前記クリーニング部材に与える潤滑性の異同に応じて少なくとも2つの異なるメルトインデックスを設定しており、前記第2のトナー供給モードでは、前記メルトインデックスの低いトナーを用いる所定の前記画像形成部から前記メルトインデックスの高いトナーを用いる他の前記画像形成部へ前記メルトインデックスの低いトナーを供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の画像形成部においてクリーニング部材の潤滑性不足による画像不良の発生を低減できるようにした画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は第1のトナー供給モードによる画像形成部のトナー供給動作を表す説明図、(b)は(a)に示す画像形成部の動作タイミングチャートである。
【図2】(a)は第2のトナー供給モードによるトナー供給画像形成部のトナー供給動作とトナー回収画像形成部のトナー回収動作を表す図である。(b)は(a)に示すトナー供給画像形成部のトナー供給の動作タイミングチャートとトナー回収画像形成部のトナー回収の動作タイミングチャートである。
【図3】(a)は実施例1に係る画像形成装置の一例の構成模式図、(b)はトナー供給モードを説明するためのハード構成のブロック図
【図4】クリーニングブレードの潤滑性とトナーのMI値との相関を表す図である。
【図5】実施例2の画像形成装置のカートリッジの概略構成図である。
【図6】実施例3の画像形成装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図3において、(a)は本実施例1に係る画像形成装置の一例の構成模式図、(b)はトナー供給モードを説明するためのハード構成のブロック図である。この画像形成装置はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を形成する複数の画像形成部を一列に並設したインライン方式の画像形成装置である。
【0012】
本実施例1に示す画像形成装置100は、画像形成装置100の筐体を構成する画像形成装置本体(不図示)の内部に、第1の画像形成部Pyと、第2の画像形成部Pmと、第3の画像形成部Pcと、第4の画像形成部PBkと、を有している。第1の画像形成部Pyはイエロー(Y)のトナーを用いる画像形成部である。第2の画像形成部Pmはマゼンタ(M)のトナーを用いる画像形成部である。第3の画像形成部Pcはシアン(C)のトナーを用いる画像形成部である。第4の画像形成部PBkはブラック(Bk)のトナーを用いる画像形成部である。10は搬送部材としての回転自在な転写ベルト10である。第1〜第4の画像形成部Py〜PBkは、転写ベルト10の回転方向(矢印方向)上流側(右側)から下流側(左側)にかけて一列に並設されている。そして各画像形成部Py〜PBkで形成した4色の異なる色のトナー画像を転写ベルト10により搬送される記録材P上に順次に転写することによって4色のフルカラー画像を形成する。
【0013】
本実施例1の画像形成装置100は、ホストコンピュータなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて制御部200が所定の画像形成制御シーケンスを実行し、この画像形成制御シーケンスに従って所定の画像形成動作を行う。制御部200はCPUとROMやRAMなどのメモリとからなり、メモリには画像形成制御シーケンス、トナー供給制御シーケンス、画像形成に必要な各種プログラムなどが記憶されている。各画像形成部Py〜PBkは、それぞれ、像担持体であるドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)1a,1b,1c,1dを有している。本実施例1では、感光ドラム1a〜1dとして、直径24mmの負帯電特性のOPC(有機光半導体)感光ドラムを用いている。各感光ドラム1a〜1dは、画像形成時に矢印方向に240mm/secの周速度(プロセススピード)で回転される。各感光ドラム1a〜1dの周囲には、感光ドラム1a〜1dの回転方向に沿って帯電部材としての帯電ローラ2a,2b,2c,2dと、露光手段としての露光装置3a,3b,3c,3dと、現像手段としての現像装置4a,4b,4c,4dが配置されている。また各感光ドラム1a〜1dの周囲には、転写部材としての転写ローラ8a,8b,8c,8dと、クリーニング部材としてのクリーニングブレード6a,6b,6c,6dが配設されている。各画像形成部Py〜PBkの感光ドラム1a〜1dに跨るように駆動ローラ7と従動ローラ9とに掛け回した転写ベルト10は、駆動ローラ7の回転によって矢印方向へ各感光ドラム1a〜1dの回転周速度と対応した周速度で回転される。転写ベルト10の内周面(内面)側で転写ベルト10を挟んで感光ドラム1a〜1dと対向するように配されている転写ローラ8a〜8dは転写ベルト10内面と接触している。そして転写ベルト10の外周面(表面)と感光ドラム1a〜1d表面とを所定の間隙を介して対向させることによって転写ベルト10表面と感光ドラム1a〜1d表面との間に転写ニップ部Na,Nb,Nc,Ndを形成している。画像形成部Py〜PBkは、それぞれ、画像形成駆動手段としての画像形成駆動部(以下、駆動部と記す)PyD,PmD,PcD,PBkDを有している。各駆動部PyD〜PBkDは、帯電バイアス電源(不図示)と、レーザダイオード(不図示)及びポリゴンスキャナモータ(不図示)と、駆動モータ(不図示)と、現像バイアス電源(不図示)と、転写バイアス電源(不図示)などを有している。帯電バイアス電源は帯電ローラ2a〜2dに所定の帯電バイアスを印加するためのものである。レーザダイオード及びポリゴンスキャナモータは露光装置3a〜3dを駆動するためのものである。駆動モータは感光ドラム1a〜1dと現像装置4a〜4dの後述する現像スリーブ41を回転するためのものである。現像バイアス電源は現像装置4a〜4dの現像スリーブ41に所定の現像バイアスを印加するためのものである。転写バイアス電源は転写ローラ8a〜8dに所定の転写バイアスを印加するためのものである。図3の(b)において、10Dは転写部材用駆動手段としての転写ベルト駆動部である。転写ベルト駆動部10Dは、吸着バイアス電源(不図示)とベルト駆動モータ(不図示)などを有している。吸着バイアス電源は後述する吸着ローラ11に所定の吸着バイアスを印加するためのものである。ベルト駆動モータは駆動ローラ7を回転するためのものである。
【0014】
本実施例1の画像形成装置100の画像形成動作を説明する。駆動部PyD〜PBkDの駆動モータによって回転された感光ドラム1a〜1dは、感光ドラム1a〜1dの回転過程において感光ドラム1a〜1dの外周面(表面)が帯電ローラ2a〜2dにより所定の極性・電位に一様に帯電処理される。各帯電ローラ2a〜2dは、帯電バイアス電源より−1.0kVのDC電圧が印加された実抵抗1×10Ωの弾性ローラである。そして感光ドラム1a〜1d表面に総圧9.8Nで接触され感光ドラム1a〜1dの回転に追従して回転する。この帯電ローラ2a〜2dにより感光ドラム1a〜1d表面は−400Vに帯電される。次いで感光ドラム1a〜1d表面には、露光装置3a〜3dによる画像露光を受けることによりそれぞれ目的のカラー画像の色成分像(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分像)に対応した静電潜像(静電像)が形成される。各露光装置3a〜3dは、外部装置から出力される画像情報に応じてレーザダイオードが変調したレーザビームをポリゴンスキャナ(不図示)を介して感光ドラム1a〜1d表面上に結像させる。ポリゴンスキャナはポリゴンスキャナモータにより所定の速度で回転されレーザビームを感光ドラム1a〜1d表面の主走査方向(感光ドラム表面において記録材搬送方向と直交する方向)に走査露光する。これにより感光ドラム1a〜1d表面に静電潜像が形成される。このときレーザビームによる感光ドラム1a〜1d表面の露光部の明部電位は−200Vになる。各露光装置3a〜3dによるレーザ露光の書き出しは、感光ドラム1a〜1d表面の主走査方向では、走査ライン毎にポリゴンスキャナ内の位置信号(BD信号)から所定の時間だけ遅延させて行われる。感光ドラム1a〜1d表面の副走査方向(感光ドラム1a〜1d表面において記録材搬送方向と平行な方向)では、記録材搬送路内に設けられている記録材センサ48(図3(b))の記録材検知信号(TOP信号)から所定の時間だけ遅延させて行われる。これによって各画像形成部Py〜PBkにおいて、常に感光ドラム1a〜1d表面上の同じ位置にレーザ露光を行える構成となっている。
【0015】
感光ドラム1a〜1dの静電潜像は現像装置4a〜4dによってトナー画像として現像される。各現像装置4a〜4dは、トナーtを収容する現像容器43を有している。この現像容器43には、現像容器43に設けられた開口部分で現像剤担持体としての現像スリーブ41が感光ドラム1a〜1d表面と対向するように現像容器43に回転自在に支持されている。本実施例1では現像スリーブ41として弾性ローラを用いている。またこの現像容器43には、層規制部材としての層規制ブレード42が現像スリーブ41の回転方向上流側で現像スリーブ41の外周面(表面)と接触した状態に現像容器43に支持されている。各現像装置4a〜4dにおいて、現像スリーブ41は回転しながら現像スリーブ41表面に現像容器43内のトナーtを担持する。そしてこの現像スリーブ41表面に担持したトナーtは層規制ブレード42により一定の厚みのトナー層に規制される。そして現像スリーブ41表面からトナー層のトナーtを対応する感光ドラム1a〜1d表面に静電的に吐き出し感光ドラム1a〜1d表面の静電潜像に静電的に付着させることにより静電潜像をトナー画像として現像する。即ち、現像スリーブ41は感光ドラム1a〜1dに対し順方向に120%の周速度で回転され、この現像スリーブ41に現像バイアス電源から所定の現像バイアス(本実施例1では−350Vの現像バイアス)が印加される。これにより現像スリーブ41表面のトナー層のトナーtは静電潜像に付着し静電潜像がトナー画像として現像される。現像容器43内のトナーは負帯電の非磁性一成分トナーである。そして静電潜像のトナーによる現像は非磁性一成分接触現像方式によって行われる。
【0016】
一方、給送カセット(不図示)から所定の記録材搬送機構(不図示)により転写ベルト10の回転方向最上流側から転写ベルト10の外周面(表面)上に記録材Pが搬送される。転写ベルト10表面上に記録材Pが搬送される位置には転写ベルト10を挟んで駆動ローラ9と対向するように吸着部材としての吸着ローラ11が設けられている。吸着ローラ11には吸着バイアス電源から吸着バイアスとして+1kVの電圧が印加されている。転写ベルト10表面に搬送される記録材Pは吸着ローラ11の外周面(表面)と転写ベルト10表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。そしてこの搬送過程で吸着ローラ11が記録材Pに電荷を与えることにより記録材Pは転写ベルト10表面に静電的に吸着される。転写ベルト10表面に吸着された記録材Pは転写ベルト10の回転に伴い画像形成部Pyの転写ニップ部Naに搬送される。そして転写ローラ8aに転写バイアス電源から所定の転写バイアス(本実施例では+2kVのDCバイアス)が印加されることによって感光ドラム1a表面のイエローのトナー画像は記録材Pに転写される。同様に、転写ベルト10の回転によって記録材Pは画像形成部Pm、画像形成部Pc、画像形成部PBkの順に各画像形成部Pm〜PBkの転写ニップ部Nb,Nc,Ndに搬送される。そして画像形成部Pmの転写ニップ部Nbで感光ドラム1b表面のマゼンタのトナー画像が記録材Pのイエローのトナー画像に重ねて転写される。また画像形成部Pcの転写ニップ部Ncで感光ドラム1b表面のシアンのトナー画像が記録材Pのイエローのトナー画像とマゼンタのトナー画像に重ねて転写される。また画像形成部PBkの転写ニップ部Ndでブラックのトナー画像が記録材Pのイエローのトナー画像とマゼンタのトナー画像とシアンのトナー画像に重ねて転写される。これにより記録材Pは4色のフルカラーの未定着のトナー画像を記録材Pの面上に担持する。
【0017】
トナー画像転写後に記録材Pに転写されずに感光ドラム1a〜1d表面に残った残留トナー及びその他の残留物は、感光ドラム1a〜1d表面と接触しているクリーニングブレード6a〜6dにより掻き落され除去される。また記録材搬送方向上流側の画像形成部で記録材Pに一旦転写されたものの記録材搬送方向下流側の画像形成部の感光ドラム表面に逆転写されてしまう再転写トナーもクリーニングブレードによって除去される。つまり、記録材搬送方向上流側の画像形成部Pyで記録材Pに一旦転写されたものの記録材搬送方向下流側の画像形成部Pmの感光ドラム1b表面に逆転写されてしまう再転写トナーはクリーニングブレード6bによって除去される。記録材搬送方向上流側の画像形成部Pmで記録材Pに一旦転写されたものの記録材搬送方向下流側の画像形成部Pcの感光ドラム1c表面に逆転写されてしまう再転写トナーはクリーニングブレード6cによって除去される。記録材搬送方向上流側の画像形成部Pcで記録材Pに一旦転写されたものの記録材搬送方向下流側の画像形成部PBkの感光ドラム1d表面に逆転写されてしまう再転写トナーはクリーニングブレード6dによって除去される。上記の残留トナーと再転写トナーを含めて「不要なトナー」と称する。
【0018】
上記のように転写された未定着のフルカラーのトナー画像を担持する記録材Pは転写ベルト10の回転方向最下流側で転写ベルト10表面の曲率によって転写ベルト10表面から分離される。転写ベルト10表面から分離した記録材Pは定着装置(不図示)の有する加熱定着部材と加圧部材との間の定着ニップ部に導入される。この記録材Pは定着ニップ部で加熱定着部材と加圧部材とにより挟持搬送されつつ熱と圧力を受けることによってトナー画像が記録材P上に加熱定着される。そして定着装置の定着ニップ部を出た記録材Pは所定の記録材排出機構(不図示)によって画像形成装置本体の外部に設けられた排出トレイ(不図示)上に排出される。
【0019】
上記の転写ベルト10表面にトナーが残留し付着した場合、記録材Pの裏汚れや画像汚れの原因になる。転写ベルト10表面に残留した残留トナーとしては、ジャムや記録材の非画像部へのかぶりトナーの付着、或いは、色ずれ制御やトナー画像の濃度制御のための色ずれ検知用に感光ドラム表面1a〜1dから転写された色ずれ検出用トナー像等がある。これらの転写ベルト10表面に残留し付着したトナーは搬送部材用クリーニング部材としての転写ベルト用クリーニングブレード12により除去される。
【0020】
(2)トナーの製造方法
本実施例1の画像形成装置で使用されるトナーの製造方法について説明する。先ず、トナー粒子の製造例を説明する。四つ口容器中にイオン交換水720部と0.1モル/リットルのNaPO水溶液940部と1.0モルリットルのHCl水溶液15.0部を添加し、高速撹拌装置TK−ホモミキサーを用いて12,000rpmで撹拌しながら、温度60℃に保持した。ここに1.0モル/リットル−CaCl水溶液80部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca(POを含む水系分散媒体を調製した。
スチレンモノマー 64.0質量部
n−ブチルアクリレート 16.0質量部
銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.50質量部
スチレン系樹脂(Mw=2520、Mw/Mn=1.58) 20質量部
ポリエステル系樹脂 5.0質量部
負荷電性制御剤(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
0.5質量部
負荷電性制御樹脂 0.5質量部
ワックス〔フィシャートロップシュワックス、吸熱メインピーク温度78.2℃〕
10部
上記のスチレンモノマーからワックスまでの単量体を混合した単量体混合物をアトライターで3時間分散させた。そしてこの単量体混合物に重合開始剤である1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート7.2質量部を添加した単量体組成物を水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置の回転数を12,000rpmに維持しつつ5分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた。
【0021】
次いで、容器内を温度80℃に昇温して3時間維持し、その後毎分1℃の冷却速度で徐々に温度30℃まで冷却し、スラリー1を得た。スラリー1を含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去せしめた。更に、ろ別、洗浄、乾燥して重量平均粒径が5.6μm、重量平均分子量が42,000、数平均分子量が7,300の重合体粒子(トナー粒子)を得た。このトナー粒子はシアントナーの原料となる。マゼンタ、イエロー、ブラックなどの他の色のトナーのトナー粒子を製造する為には、顔料である銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3)を別の顔料または、カーボンブラックに置き換えればよい。ある色のトナーのメルトインデックス(MI値)を変更したい場合は、重合開始剤である1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの質量部数を増減させればよい。メルトインデックスについては追って説明する。
【0022】
次に、トナーの製造例を説明する。トナー粒子100部に対し、BET法による比表面積が200m/gである疎水性シリカ1.4部と、BET法による比表面積が100m/gである酸化チタン0.1部をヘンシェルミキサーを用い4000rpmで120秒間混合工程を行なう(混合工程1)。疎水性シリカ1.4部の疎水化度は81である。酸化チタン0.1部の疎水化度は60である。ヘンシェルミキサーは三井鉱山社製である。その後、120秒間の休止工程とる(休止工程1)。120秒間の休止工程後、直ちに混合工程を再開し、140秒間の混合工程を行なう(混合工程2)。その後、120秒間の休止工程とる(休止工程2)。120秒経過後、直ちに混合を再開し、160秒間混合を継続した(混合工程3)。その後、120秒間の休止工程とる(休止工程3)。120秒経過後、直ちに混合を再開し、160秒間混合を継続した(混合工程4)。混合工程と休止工程を繰り返すことにより槽内の最高到達温度は約30℃であった。上記のようにしてトナーが得られた。
【0023】
<メルトインデックスの説明>
クリーニングブレードのめくれ、エッジ部の欠け、びびりなどに起因する画像不良(以下、潤滑性不足による画像不良と記す)はトナーの色によって発生レベルが異なることがわかった。これはトナーの色によってクリーニングブレードに与える潤滑性が異なる為であると考えられる。従って、クリーニングブレードに、めくれ、エッジ部の欠け、びびりなどが起きやすいトナーが多く回収される画像形成部では、トナーがクリーニングブレードに与える潤滑性に応じた対策を講じる必要がある。そこで、本件特許出願の発明者は、トナーの潤滑性の指針となるパラメータとして、メルトインデックス(以下、MI値と記す)を見出した。MI値が小さいほど、より、トナーの粘性が低くクリーニングブレードの潤滑効果が高い。
【0024】
クリーニングブレード6a〜6dの潤滑性を左右するトナーのパラメータであるMI値の測定方法を説明する。MI値とは、所定の温度と荷重における10分間でのトナーの吐出量の測定値である。本実施例1においては以下の条件で測定した値とする。この測定は基本的に<JIS規格K−7210>に準拠している。測定装置としてSemi−automatic 2−A Melt Index(Toyo Seiki Co.Ltd)を使用する。空洞内径2.095mmのオリフィスを入れ、あらかじめ110℃に温調しておき、ここにトナーサンプル3〜8gを秤量して投入する。この時、気泡が入らないように注意しながら金属製ピストンをセットし、5分以上110℃の温度を保つ。その後、ピストンとおもりの合計が98N(10.0kgf)となるような荷重を一定にかけながら測定を行う。測定は任意の時間で行い、10分間のトナーの吐出量に換算しても良い。
【0025】
本実施例1で使用しているクリーニングブレード6a〜6dの受ける潤滑性とトナーのMI値の相関を図4に示す。クリーニングブレード6a〜6dの受ける潤滑性に関しては、クリーニングブレード6a〜6dのびびり現象に対応するパラメータと考える。感光ドラム1a〜1d表面に対してクリーニングブレード6a〜6dがびびる(スティックスリップ)と、クリーニングブレード6a〜6dをトナーがすり抜け帯電ローラ2a〜2d表面を汚染し画像不良を引き起こす。従って、潤滑性の指標として、図4の縦軸に帯電ローラ2a〜2dの表面汚れの画像不良ランクを示した。画像形成装置本体内の温度は30℃である。画像不良ランクは、低印字(約1%)の条件でクリーニングブレード6a〜6dの耐久寿命の末期まで印刷動作を行なった時の画像不良ランクである。画像不良ランクとしては、○:画像不良発生せず、△:軽微に発生、×:発生である。△レベルは画像許容レベルであるが、△レベルを超える画像許容限度のレベルを目指す。実際に画像不良ランクの○、△、×の三水準のMI値のブラックトナーを用意し検討を行なった。図4の横軸に示すMI値は画像不良ランクの○、△、×に対する相対値である。結果、MI値の比と画像不良ランクとの対応が付いた。図4から明らかなようにMI値の低いトナーの方がより高い潤滑性をクリーニングブレード6a〜6dに与えることを実証できた。また本実施例1ではMI値の相対値が1.08を閾値として、画像許容限度のレベルを達成できる。但し、この閾値は画像形成プロセス(帯電、露光、現像、転写の各プロセス)の条件を変更することで変動するため一義的ではない。
【0026】
次に、各画像形成部Py〜PBkのクリーニングブレード6a〜6dの潤滑性不足による画像不良の発生を低減するために、トナーをクリーニングブレード6a〜6dに供給するトナー供給モードについて説明する。制御部200のメモリには二種類のトナー供給モードが記憶されている。1つは、所定の画像形成部のトナーを同じ所定の画像形成部にトナー供給を行うためのトナー供給モード(以下、第1のトナー供給モードと記す)である。この第1のトナー供給モードは、各画像形成部Py〜PBk毎に記憶されている。他の1つは、MI値の低いトナーを用いる所定の画像形成部からMI値の高いトナーを用いる他の画像形成部にトナー供給を行うためのトナー供給モード(以下、第2のトナー供給モードと記す)である。第2のトナー供給モードにおいて、MI値の低いトナーとはクリーニングブレードに高い潤滑性を与えるトナーを指し、MI値の高いトナーとはクリーニングブレードに低い潤滑性を与えるトナーを指す。各画像形成部Py〜PBkに用いられるトナーのMI値の具体的な数値については追って説明する。この第2のトナー供給モードは、4つの画像形成部Py〜PBkのうちMI値の低いトナーを用いる画像形成部とMI値の高いトナーを用いる画像形成部とを組み合わせてなる所定の2つの画像形成部毎に記憶されている。
【0027】
図1の(a)と(b)を参照して、第1のトナー供給モードに係るトナー供給制御シーケンスを説明する。図1では画像形成部Pyに係るトナー供給制御シーケンスを示す。図1の(a)は画像形成部Pyのトナー供給の動作を表す説明図、(b)は(a)に示す画像形成部Pyの動作タイミングチャートである。図1の(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は帯電バイアス電源、露光装置及び現像バイアスのON・OFFを示すとともに転写バイアスの電位を示している。第1のトナー供給モードは画像形成制御シーケンスによる画像形成動作が終了した後の後回転行程(非画像形成時)において行われる。第1のトナー供給モードを説明する都合上、画像形成部Pyの画像形成制御シーケンスによる画像形成動作の前回転行程及び画像形成行程を説明する。前回転行程とは、プリント指令に応じて感光ドラム1aを回転させ帯電ローラ2a、現像ローラ41及び転写ローラ8aに対し所定の画像形成前動作を行わせる期間である。画像形成行程とは、前回転行程が終了した後に、引き続いて回転する感光ドラム1aに対し画像形成プロセスが実行され、トナー画像を担持する記録材が定着装置に搬送され、1枚目の画像形成が行われる期間である。連続して画像形成を行う場合には、画像形成行程が繰り返され所定のプリント枚数分だけ画像形成行程が繰り返し行われる。後回転行程とは、第1のトナー供給モードに切り替えるために、最後のプリント指令の画像形成行程が終了した後も感光ドラム1aを回転させ帯電ローラ2a、露光装置3a、現像ローラ41及び転写ローラ8aに所定の画像形成後動作を行わせる期間である。
【0028】
前回転行程では、先ず帯電バイアス電源をONし1次帯電ローラ2aに帯電バイアスを印加して感光ドラム1a表面の帯電を行う。次に転写バイアス電源から転写ローラ8aに正(+)の転写バイアスを印加した後に現像バイアス電源をONして現像ローラ41に現像バイアス(直流電圧)を印加する。
【0029】
画像形成行程では、露光装置3aをONし露光装置3aにより感光ドラム1a表面に静電潜像を形成して露光装置3aをOFFする。そして露光装置3aによる感光ドラム1a表面への静電潜像の形成と並行してこの静電潜像を現像ローラ41によりトナーを用いてトナー画像として現像する。感光ドラム1a表面のトナー画像は転写ローラ8aに印加されている転写バイアスにより転写べルト10表面に保持されている記録材P上に転写される。これにより記録材P上に未定着のトナー画像が形成される。
【0030】
後回転行程では、前回転行程から引き続き帯電ローラ2aに帯電バイアスが印加されているとともに現像ローラ41に現像バイアスが印加されている。感光ドラム1a表面は帯電バイアスが印加された帯電ローラ2aによって−400Vに帯電される。この状態で転写バイアス電源から転写ローラ8aには画像形成行程で印加した転写バイアスの極性とは異なる0(零)又は負(−)の極性の転写バイアスを印加する。次に露光装置3aをONし露光装置3aにより感光ドラム1a表面の所定の領域にトナー供給用静電潜像(トナー供給用静電像)を形成した後に露光装置3aをOFFする。感光ドラム1a表面のトナー供給用静電潜像は現像バイアスが印加されている現像ローラ41によりトナーtを用いてトナー供給用トナー画像(供給用トナー像)Tとして現像される(図1の(b)参照)。次に帯電バイアス電源をOFFするとともに現像バイアス電源をOFFする。感光ドラム1a表面のトナー画像Tは感光ドラム1aの回転に伴い転写ニップ部Naを通過してクリーニングブレード6aに向けて搬送される。この感光ドラム1a表面のトナー画像Tは、転写ニップ部Naを通過する際に、転写ローラ8aに印加されている0(零)又は負(−)の極性の転写バイアスによって感光ドラム1a表面に付着した状態に維持される。そしてこの感光ドラム1a表面のトナー画像Tは感光ドラム1aの回転に伴い感光ドラム1a表面とクリーニングブレード6aとの間の接触領域(ドラムクリーニングニップ領域)Arに供給される。
【0031】
次に、図2の(a)と(b)を参照して、第2のトナー供給モードに係るトナー供給制御シーケンスを説明する。図2の(a)と(b)では、クリーニングブレードに高い潤滑性を与えるトナーを用いる画像形成部Pmとクリーニングブレードに低い潤滑性を与えるトナーを用いる画像形成部PBkに係るトナー供給制御シーケンスを示す。説明の都合上、クリーニングブレードに高い潤滑性を与えるトナーを用いる画像形成部をトナー供給画像形成部(所定の画像形成部)と記す。クリーニングブレードに低い潤滑性を与えるトナーを用いる画像形成部をトナー回収画像形成部(所定の画像形成部以外の画像形成部)と記す。図2の(a)はトナー供給画像形成部Pmのトナー供給動作と、トナー回収画像形成部PBkのトナー回収動作を表す図である。(b)は(a)に示すトナー供給画像形成部Pmのトナー供給の動作タイミングチャートとトナー回収画像形成部PBkのトナー回収の動作タイミングチャートである。図2の(a)において、横軸は時間を示し、縦軸は帯電バイアス電源、露光装置及び現像バイアスのON・OFFを示すとともに転写バイアスの電位を示している。
【0032】
第2のトナー供給モードは画像形成制御シーケンスによる画像形成プロセスが終了した後の後回転行程(非画像形成時)において行われる。トナー供給画像形成部Pmにおいて、画像形成制御シーケンスによる画像形成プロセスの前回転行程及び画像形成行程は、第1のトナー供給モードの場合と同じであるため、この前回転行程及び画像形成行程の説明は省略する。
【0033】
トナー供給画像形成部Pmの後回転行程では、トナー供給画像形成部Pmの前回転行程から引き続き帯電ローラ2bに帯電バイアスが印加されているとともに現像ローラ41に現像バイアス(直流電圧)が印加されている。またトナー供給画像形成部Pmの前回転行程から引き続き転写バイアス電源から転写ローラ8bに正(+)の極性の転写バイアスが印加されている。先ずトナー供給画像形成部Pmの露光装置3bをONし露光装置3bにより感光ドラム1b表面の所定の領域にトナー供給用静電潜像(トナー供給用静電像)を形成した後に露光装置3bをOFFする。感光ドラム1b表面のトナー供給用静電潜像は現像バイアスが印加されている現像ローラ41によりトナーtを用いてトナー供給用トナー画像(供給用トナー像)Tとして現像される(図2の(b)参照)。次に帯電バイアス電源をOFFするとともに現像バイアス電源をOFFする。感光ドラム1b表面のトナー画像Tは感光ドラム1bの回転に伴い転写ニップ部Nbに向けて搬送される。この感光ドラム1b表面のトナー画像Tは、転写ニップ部Nbにおいて、転写ローラ8bに印加されている正(+)の極性の転写バイアスにより感光ドラム1b表面から転写ベルト10表面に飛翔され転写される。次に転写バイアス電源から転写ローラ8bに0(零)又は負(−)の極性の転写バイアスを印加し感光ドラム1b表面から転写ベルト10表面へのトナー画像Tの転写を停止する。転写ベルト10表面のトナー画像Tは転写ベルト10の回転に伴いトナー供給画像形成部Pmの転写ニップ部Nbからトナー回収画像形成部Pcの転写ニップ部Ncへと搬送される。
【0034】
トナー回収画像形成部PBkの画像形成行程では、トナー供給画像形成部Pmの画像形成行程で帯電バイアス電源をOFFする前に、トナー回収画像形成部PBkの帯電バイアス電源をOFFする。また画像形成行程では、トナー供給画像形成部Pmの露光装置3bをOFFすると同時に、トナー回収画像形成部PBkの露光装置3dをOFFする。後回転行程では、トナー供給画像形成部Pmの後回転行程で現像バイアス電源をOFFする前にトナー回収画像形成部PBkの現像バイアス電源をOFFする。また後回転行程では、トナー供給画像形成部Pmの後回転行程で転写バイアス電源から転写ローラ8bに0(零)又は負(−)の極性の転写バイアスを印加する前に、トナー回収画像形成部PBkの現像バイアス電源をOFFする。またこのトナー回収画像形成部PBkの現像バイアス電源をOFFすると同時に転写バイアス電源から転写ローラ8dに感光ドラム1dの表面電位に対して負(−)の極性の転写バイアスを印加する。これにより転写ベルト10表面のトナー画像Tは転写ニップ部Ndで転写ベルト10表面から感光ドラム1d表面に飛翔され転写されて回収される。転写ローラ8dに印加する転写バイアスは感光ドラム1dの表面電位と同電位であってもある程度の量のトナーを回収することができる。より多くの量のトナーを回収するには感光ドラム1dの表面電位に対して負(−)の極性の転写バイアスを印加することが好ましい。感光ドラム1d表面に転写したトナー画像Tは感光ドラム1dの回転に伴い感光ドラム1d表面とクリーニングブレード6dとの間の接触領域(ドラムクリーニングニップ領域)Arに供給される。上のように第二のトナー供給モードの帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアスの電源と露光装置の切り替えタイミングを示したが、本技術はこのタイミング以外でも実現できる。即ち後回転中にトナー供給画像形成部Pmの供給トナーをトナー回収画像形成部PBkで回収できれば、別のタイミングでもよい。
【0035】
感光ドラム表面にトナー供給用トナー画像を形成するとき、感光ドラム表面の露光部の明部電位と現像バイアスとの現像コントラストが最大となるように現像バイアスを設定することが好ましい。このとき感光ドラム表面に形成されるトナー供給用トナー画像はベタ画像(最大画像濃度のトナー画像)である。本実施例1では、トナー供給用トナー画像として、感光ドラム表面の主走査方向の画像形成領域の全域で感光ドラム表面の副走査方向に短い横帯状のベタ画像を形成する。このベタ画像の感光ドラム表面の副走査方向の寸法は63mmである。
【0036】
本実施例1の画像形成装置は、第1のトナー供給モードと第2のトナー供給モードの二種類のトナー供給モードを制御部200で適宜選択し切り替えるように構成してある。第1のトナー供給モードは各画像形成部Py〜PBkにおいてクリーニングブレード6a〜6dの潤滑性不足による画像不良が発生しやすい場合に選択される。第1のトナー供給モードが選択されると、各画像形成部Py〜PBkにおいて現像装置4a〜4dのトナーを感光ドラム1a〜1dとクリーニングブレード6a〜6dとの間の接触領域Arに供給できる。これによりクリーニングブレード6a〜6dの潤滑性不足による画像不良の発生を未然に防止することができる。第2のトナー供給モードはブラックのトナーを用いる画像形成部PBkのクリーニングブレード6dの潤滑性不足による画像不良が発生しやすい場合に選択される。第2のトナー供給モードが選択されると、画像形成部PBkのクリーニングブレード6dに高い潤滑性を与えるトナーを用いる画像形成部Py,Pm,Pcのトナーを画像形成部PBkの感光ドラムとクリーニングブレードとの間の接触領域Arに供給できる。これにより画像形成部PBkのクリーニングブレード6dの潤滑性不足による画像不良の発生を未然に防止することができる。
【0037】
クリーニングブレードの潤滑性不足による画像不良、特にクリーニングブレードの感光ドラム表面に対するびびりは、低印字(記録材1枚当たり印字率が3%未満)のプリントが続く時や、高温環境下、高湿環境下において発生しやすい。そこで、本実施例1の画像形成装置は、各画像形成部Py〜PBkの画像形成時の平均印字率と画像形成装置本体の内部または外部周辺の温度とに基づいて、第1のトナー供給モード又は第2のトナー供給モードに自動的に切り替える構成としてある。図3の(b)において、45は温度検知部材としての温度センサである。温度センサ45は、画像形成装置本体の内部の温度を検知する。47a,47b,47c,47dは各画像形成部Py,Pm,Pc,PBkに対応して設けられているピクセルカウント部である。各ピクセルカウント部47a〜47dは、プリント指令を受けた画像形成部Py〜PBkが1枚プリントする毎に対応する画像情報に基づいてプリント画像のピクセル数をカウントする。制御部200は、各ピクセルカウント部47a〜47dからピクセル数のカウント値を取り込み1枚当りの印字率(=ピクセルカウント数/枚数)として記憶する。ピクセル数のカウント値は1枚当りの印字率0.1%単位で取り込まれ、1枚毎に少数第二位以下が四捨五入される。そしてこの1枚当りの印字率に基づいて画像形成時の所定期間の平均印字率即ち第1のトナー供給モードと第2のトナー供給モードのうち前回行ったトナー供給モードから次回行うトナー供給モードまでの画像形成時の平均印字率を求める。つまり、前回行ったトナー供給モードのトナー吐き出し時から1枚当りの印字率を積算した値/前回行ったトナー供給モードのトナー吐き出し時からのプリント積算枚数を、平均印字率として求める。各画像形成部Py〜PBkの現像装置4a〜4dの現像容器43には記憶媒体46a,46b,46c,46d(図3の(a))が設けられている。記憶媒体46a〜46dとして2kバイトの記憶容量を持つNV−RAM(Non Volatile−RAM)を用いているが、記憶媒体46a〜46dはこれに限られず磁性記憶媒体や光記憶媒体等の記憶媒体であっても良い。記録媒体46aには画像形成部Pyの閾値本体内温度と閾値平均印字率が記憶されている。記憶媒体46bには画像形成部Pmの閾値本体内温度と閾値平均印字率が記憶されている。記憶媒体46cには画像形成部Pcの閾値温度と閾値平均印字率が記憶されている。記憶媒体46dには画像形成部PBkの閾値本体内温度と閾値平均印字率が記憶されている。各記録媒体46a〜46dに記憶されている閾値本体内温度は19℃、閾値平均印字率は3%である。制御部200では、各画像形成部Py〜PBkでプリント指令による画像形成動作が終了する度に、温度センサ45から画像形成装置本体内部の検知温度(以下、本体内温度と記す)を取り込み、この本体内温度と閾値本体内温度とを比較する。また各画像形成部Py〜PBkでプリント指令による画像形成動作が終了する度に、各画像形成部Py〜PBk毎に上記の平均印字率を求め、この平均印字率とこの平均印字率と対応する画像形成部Py〜PBkの閾値平均印字率とを比較する。そして本体内温度が閾値本体内温度未満または、平均印字率が閾値平均印字率以上の場合に第1のトナー供給モードに切り替える。本体内温度が閾値本体内温度以上で、かつ各画像形成部Py〜PBkの画像形成時の平均印字率のうちブラックのトナーを用いる画像形成部PBkの平均印字率が閾値平均印字率未満の場合に第2のトナー供給モードに切り替える。本体内温度が閾値本体内温度以上で、かつ画像形成部PBkの平均印字率が閾値平均印字率以上の場合には第1のトナー供給モードを選択する。
【0038】
表1に、各画像形成部Py〜PBkについて第1のトナー供給モードに切り替えたときのクリーニングブレード6a〜6dのびびりによるトナーのすり抜け現象の発生程度を○、△、×のランクにて示す。○は発生せず、△は軽微に発生(画像限度レベル)、×は発生を表す。表1からわかるように、ブラック(Bk)トナー、低印字(平均印字率3%未満)、高温下(本体内温度23℃以上)でトナーのすり抜け現象が悪化傾向にある。ランクについては図4と同じ基準で判断した。なお、平均印字率の欄の高印字は記録材1枚当たり印字率が3%以上である。
【0039】
【表1】


【0040】
ここで、本件出願の発明者は、第2のトナー供給モードにおいて、ブラック(Bk)のトナーを用いる第4の画像形成部PBkへ第1〜第3の画像形成部Py,Pm,Pcのうち所定の1つの画像形成部のトナーを供給する検討を行なった。その結果を表2に示す。表2に示すように、イエローのトナーのMI値は1.00である。マゼンターのトナーのMI値は0.86である。シアンのトナーのMI値は0.93である。ブラックのトナーのMI値は1.29である。つまり、イエロー、マゼンター、シアン、ブラックの各トナーは対応する画像形成部Py,Pm,Pc,PBkのクリーニングブレード6a,6b,6c,6dに与える潤滑性に高低の差がある。表2において、モードの欄のAは第1のトナー供給モードであり、Bは第2のトナー供給モードである。表2に示すように、ブラックのトナーは、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーに比べてMI値が高い。ブラックのトナーのMI値をイエロー、マゼンタ、シアンの各トナーのMI値と同程度にすると、ブラックのトナーの定着性が下がり画像不良を起こす。従って、ブラックのトナーを改良することは困難であるが、イエロー、マゼンタ、シアンのような各トナーのMI値の高いトナーを利用することでPBkにおけるクリーニング部材の潤滑性不足を補うことができる。従って、表2に示すブラックのトナーの現状のMI値が第2のトナー供給モード(表2のモードB)を実施できる最小の値である。また、イエロー、マゼンタ、シアンの各トナーのMI値は何れも1.0以下である。このイエロー、マゼンタ、シアンの各トナーのMI値は、図4で求めたMI値の閾値の1.08を下回っている。このため、イエローのトナーを用いる画像形成部Pyと、マゼンタのトナーを用いる画像形成部Pmと、シアンのトナーを用いる画像形成部Pcにおいて、十分な潤滑性をクリーニングブレード6a,6b,6cに与えることができる。検討した結果、クリーニングブレードの潤滑性が低い(MI値の高い)ブラックのトナーを用いる画像形成部PBkにクリーニングブレードの潤滑性が高い(MI値の低い)他の色のトナーを用いる画像形成部Py,Pm,Pcのトナーを供給した。すると、ブラックのトナーを用いる画像形成部PBkにおいてクリーニングブレード6dの潤滑性を向上させトナーのすり抜け現象の良化が見られた。このことによりMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkへMI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,Pcのトナーを供給することが効果的であることが実証された。またMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkに供給するトナーは画像形成部Py,Pm,Pcのどのトナーであっても同様の効果を得ることも確かめた。
【0041】
【表2】


【0042】
以上の結果から本実施例1の画像形成装置では、表3のように、各記憶媒体46a〜46dの閾値本体内温度を19℃に設定するとともに、閾値平均印字率を3%に設定している。制御部200は、各画像形成部Py〜PBkでプリント指令による画像形成動作が終了する度に温度センサ45から取り込んだ本体内温度と記憶媒体46a〜46dの閾値本体内温度とを比較する。本体内温度が閾値本体内温度未満の場合には、各画像形成部Py〜PBkの画像形成時の平均印字率と各記憶媒体46a〜46dの閾値平均印字率との比較結果に拘わらず第1のトナー供給モードを選択する。そして各画像形成部Py〜PBkに対し第1のトナー供給モードに切り替えるように駆動部PyD〜PBkDの帯電バイアス電源、レーザダイオード及びポリゴンスキャナモータ、駆動モータ、現像バイアス電源、転写バイアス電源などを制御する。本体内温度が記憶媒体46a〜46dの閾値本体内温度以上で、かつ各画像形成部Py〜PBkの画像形成時の平均印字率のうちブラックのトナーを用いる画像形成部PBkの平均印字率が閾値平均印字率未満の場合には、第2のトナー供給モードを選択する。そして画像形成部Py,Pm,Pcのうち最もMI値の低いマゼンタのトナーを用いる画像形成部Pmとブラックのトナーを用いる画像形成部PBkに対し第2のトナー供給モードに切り替えるように駆動部PmD,PBkDを制御する。つまり、駆動部PmD,PBkDの帯電バイアス電源、レーザダイオード及びポリゴンスキャナモータ、駆動モータ、現像バイアス電源、転写バイアス電源などを制御する。第2のトナー供給モードにおいて、画像形成部PBkへのトナーの供給は画像形成部Pmに限られない。画像形成部Pmのトナーの消費を考慮し、この画像形成部Pm以外の他の2つの画像形成部Py,Pcのうちトナー残量に余裕のある1つ又は2つの画像形成部から画像形成部PBkにトナーを供給するようにしてもよい。また3つの画像形成部Py,Pm,Pcのそれぞれからトナーを一定量ずつ画像形成部PBkに供給するようにしてもよい。本体内温度が閾値本体内温度以上でかつ画像形成部PBkの平均印字率が閾値平均印字率以上の場合には第1のトナー供給モードを選択する。本実施例ではブラックトナーの潤滑性が低い為、画像形成部PBkの平均印字率を参照したが、画像形成部PBkに限らず、トナーの潤滑性の足りない画像形成部の平均印字率を参照することができる。
【0043】
【表3】


【0044】
本実施例1の画像形成装置は、第1のトナー供給モードに切り替えることで各画像形成部において感光ドラム表面とクリーニングブレードとの間の接触領域にトナーを供給できる。これによって各画像形成部においてクリーニング部材の潤滑性不足による画像不良の発生を低減できる。また第2のトナー供給モードに切り替えることで潤滑性の高いトナー(MI値の低いトナー)を用いる画像形成部から潤滑性の低いトナー(MI値の高いトナー)を用いる画像形成部の感光ドラム表面とクリーニングブレードとの間の接触領域にトナーを供給できる。これによって潤滑性の低いトナーを用いる画像形成部においてクリーニング部材の潤滑性不足による画像不良の発生を低減できる。
【0045】
[実施例2]
画像形成装置の他の例を説明する。本実施例2の画像形成装置では、実施例1の画像形成装置と同じ部材・部分に同一の符号を付して再度の説明を省略する。図5は本実施例2の画像形成装置のカートリッジの概略構成図である。本実施例2に示す画像形成装置は、下記のように構成した点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。
各画像形成部Py〜PBkにおいて、感光ドラム1a〜1dと帯電ローラ2a〜2dと現像装置4a〜4dとクリーニングブレード6a〜6dは枠部材50を介してプロセスカートリッジ51a,51b,51c,51dとして一体化されている。つまり、枠部材50の内部の所定の位置に感光ドラム1a〜1dと帯電ローラ2a〜2dと現像装置4a〜4dとクリーニングブレード6a〜6dとを収容し一体化することによってプロセスカートリッジ51a〜51dとしている。以下、プロセスカートリッジをカートリッジと記す。また枠部材50の外周面のうち所定の位置には記憶媒体46a〜46dが設けられている。そしてこのカートリッジ51a〜51dは画像形成装置本体に取り外し可能に装着される。本実施例2では、カートリッジ51a〜51dの枠部材50の外側面に突部(不図示)を設け、この突部を保持する凹部(不図示)を画像形成装置本体に設けている。カートリッジ51a〜51dを画像形成装置本体に装着する場合には、カートリッジ51a〜51dの突部を画像形成装置本体の凹部に保持させつつカートリッジを画像形成装置本体の内部に押し込む。これによりカートリッジ51a〜51dは画像形成装置本体の所定のプリント動作位置に装着される。カートリッジ51a〜51dを画像形成装置本体から取り外す場合には、カートリッジ51a〜51dの突部を画像形成装置本体の凹部に保持させつつカートリッジ51a〜51dをプリント動作位置から画像形成装置本体の外部に引き出す。
【0046】
本実施例2の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と同様、各画像形成部Py〜PBkでプリント指令による画像形成動作が終了する度に温度センサ45から取り込んだ本体内温度と記憶媒体46a〜46dの閾値本体内温度とを比較している。この本体内温度と閾値本体内温度との比較はこれに限られずカートリッジ51a〜51dを画像形成装置本体に装着したときに行うようにしてもよい。また、平均印字率に関して、カートリッジに記憶媒体46a〜46dを設けることで、脱着した際にもカートリッジ固有の平均印字率の履歴を利用することができる為、より精度高くトナー供給モードを選択することができる。
【0047】
本実施例1の画像形成装置においても、第1のトナー供給モードに切り替えることで各画像形成部において感光ドラム表面とクリーニングブレードとの間の接触領域にトナー供給用トナー画像を供給できる。また第2のトナー供給モードに切り替えることで潤滑性の高いトナー(MI値の低いトナー)を用いる画像形成部から潤滑性の低いトナー(MI値の高いトナー)を用いる画像形成部の感光ドラム表面とクリーニングブレードとの間の接触領域にトナーを供給できる。従って、実施例1の画像形成装置と同じ作用効果を得ることができる。
【0048】
[実施例3]
画像形成装置の他の例を説明する。本実施例3の画像形成装置では、実施例1の画像形成装置と同じ部材・部分に同一の符号を付して再度の説明を省略する。図6は本実施例3の画像形成装置の概略構成図である。本実施例3に示す画像形成装置は、実施例1の画像形成装置の転写ベルト10に代えて中間転写ベルト10Aを用いている。中間転写ベルト10Aは第1〜第4の画像形成部Py〜PBkに沿って配されている。そして第1〜第4の画像形成部Py〜PBkは、中間転写ベルト10Aの回転方向(矢印方向)の上流側(右側)から下流側(左側)にかけて一列に並設されている。そして各画像形成部Py〜PBkで形成した4色の異なる色のトナー画像を中間転写ベルト10Aの外周面(表面)上に順次に転写することによって4色のフルカラー画像を中間転写ベルト10A表面上に形成する。中間転写ベルト10Aは、各画像形成部Py〜PBkの感光ドラム1a〜1dに跨るように駆動ローラ7と従動ローラ9と二次転写対向ローラ13とに掛け回してある。この中間転写ベルト10Aは、駆動ローラ7の回転によって矢印方向へ各感光ドラム1a〜1dの回転周速度と対応した周速度で回転される。中間転写ベルト10Aの内周面(内面)側で中間転写ベルト10Aを挟んで感光ドラム1a〜1dと対向するように配されている第1の転写部材としての転写ローラ8a〜8dは中間転写ベルト10A内面と接触している。そして中間転写ベルト10Aの外周面(表面)と感光ドラム1a〜1d表面とを所定の間隙を介して対向させることによって中間転写ベルト10A表面と感光ドラム1a〜1d表面との間に第1の転写ニップ部Na,Nb,Nc,Ndを形成している。また本実施例3に示す画像形成装置は、二次転写対向ローラ13と対向するように中間転写ベルト10Aを挟んで第2の転写部材としての二次転写ローラ14を配置している。そしてこの二次転写ローラ14の外周面(表面)と中間転写ベルト10A表面との間に第2の転写ニップ部Ntを形成している。
【0049】
本実施例3の画像形成装置の画像形成動作を説明する。本実施例3の画像形成装置においても、実施例1の画像形成装置と同様、各画像形成部Py〜PBkの感光ドラム1a〜1d表面にトナー画像が形成される。そして各画像形成部Py〜PBkの感光ドラム1a〜1d表面の形成されたトナー画像は感光ドラム1a〜1dの回転周速度と対応した周速度で回転されている中間転写ベルト10Aの外周面(表面)に転写される。即ち、画像形成部Pyの転写ニップ部Naでは、転写ローラ8aに転写バイアス電源から所定の転写バイアスが印加されることによって感光ドラム1a表面のイエローのトナー画像は中間転写ベルト10A表面に転写される。同様に、第2の画像形成部Pmの転写ニップ部Nbでは、転写ローラ8bに転写バイアス電源から所定の転写バイアスが印加されることによって感光ドラム1b表面のマゼンタのトナー画像は中間転写ベルト10A表面のイエローのトナー画像に重ねて転写される。第3の画像形成部Pcの転写ニップ部Ncでは、転写ローラ8cに転写バイアス電源から所定の転写バイアスが印加される。これにより感光ドラム1c表面のシアンのトナー画像は中間転写ベルト10A表面のイエローのトナー画像とマゼンタのトナー画像に重ねて転写される。第4の画像形成部PBkの転写ニップ部Ndでは、転写ローラ8dに転写バイアス電源から所定の転写バイアスが印加される。これにより感光ドラム1c表面のブラックのトナー画像は中間転写ベルト10A表面のイエローのトナー画像とマゼンタのトナー画像とシアンのトナー画像に重ねて転写される。これによって中間転写ベルト10A表面上には4色のフルカラーの未定着のトナー画像が担持される。そして中間転写ベルト10A表面に担持されたトナー画像は中間転写ベルト10Aの回転に伴い転写ニップ部Ntに搬送される。この転写ニップ部Ntには、給送カセット(不図示)から所定の記録材搬送機構(不図示)により記録材Pが搬送される。この記録材Pは転写ニップ部Ntで中間転写ベルト10A表面と転写ローラ14の外周面(表面)とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。そして転写ニップ部Ntにおいて転写ローラ14に転写バイアス電源(不図示)から所定の転写バイアスが印加されることにより中間転写ベルト10A表面のトナー画像は記録材P上に転写される。このトナー画像を担持する記録材Pは中間転写ベルト10A表面の曲率によって中間転写ベルト10A表面から分離される。中間転写ベルト10表面から分離した記録材Pは定着装置(不図示)の有する加熱定着部材と加圧部材との間の定着ニップ部に導入される。そしてこの記録材Pは定着ニップ部で挟持搬送されつつ熱と圧力を受けることによってトナー画像は記録材P上に加熱定着される。そして所定の記録材排出機構(不図示)により記録材Pは画像形成装置本体の外部に設けられた排出トレイ(不図示)上に排出される。
【0050】
本実施例3の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と同様、各画像形成部Py〜PBkでプリント指令による画像形成動作が終了する度に温度センサ45から取り込んだ本体内温度と記憶媒体46a〜46dの閾値本体内温度とを比較する。また各画像形成部Py〜PBkにおいて感光ドラム1a〜1dと帯電ローラ2a〜2dと現像装置4a〜4dとクリーニングブレード6a〜6dは枠部材50を介してプロセスカートリッジ51a,51b,51c,51dとして一体化されていてもよい。
【0051】
本実施例3の画像形成装置においても、第1のトナー供給モードを選択することで各画像形成部において感光ドラム表面とクリーニングブレードとの間の接触領域にトナーを供給できる。また第2のトナー供給モードを選択することで潤滑性の高いトナー(MI値の低いトナー)を用いる画像形成部から潤滑性の低いトナー(MI値の高いトナー)を用いる画像形成部の感光ドラム表面とクリーニングブレードとの間の接触領域にトナーを供給できる。従って、実施例1の画像形成装置と同じ作用効果を得ることができる。
【0052】
[その他の実施例]
実施例1乃至実施例3の画像形成装置100では、第1〜第4の画像形成部で用いるトナーについて感光ドラム表面とクリーニングブレードとの接触領域でクリーニングブレードに与える潤滑性の異同に応じて4つのMI値を設定している。MI値は4つに限られず少なくとも2つ設定してあれば当初の目的を達成することができる。また、実施例1乃至実施例3の画像形成装置では、MI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,Pcに対してMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkが記録材搬送方向の下流側(転写ベルト及び中間転写ベルトの回転方向下流側)に配設してある。この場合には、転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aを画像形成時の転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aの回転方向と同じ方向に回転させる。これによって、MI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,PcからMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkにトナーを供給することができる。ここで、記録材搬送方向とは、画像形成時の転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aの回転方向をいう。また、記録材搬送方向の下流側とは、転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aの回転方向下流側をいう。MI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,Pcに対してMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkが記録材搬送方向の上流側に配設してある場合には、転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aを記録材搬送方向とは反対方向に回転させる。つまり、転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aを画像形成時の転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aの回転方向とは反対方向に回転させる。ここで、記録材搬送方向の上流側とは、転写ベルト10及び中間転写ベルト10Aの回転方向上流側をいう。これによって、MI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,PcからMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkにトナーを供給することができる。従ってMI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,PcはMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkの記録材搬送方向上流側に配設してあることが好ましい。実施例1乃至実施例3の画像形成装置100において、MI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,Pcに対してMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkが記録材搬送方向の最上流側に配設してあってもよい。この場合、転写ベルト用クリーニング12による転写ベルト10表面のクリーニングを行わないように転写ベルト用クリーニング12を転写ベルト10表面から離すとともに転写ベルト10を記録材搬送方向とは反対方向に回転させるように構成すればよい。これによってMI値の低いトナーを用いる画像形成部Py,Pm,PcからMI値の高いトナーを用いる画像形成部PBkにトナーを供給することができる。
【0053】
温度センサは画像形成装置本体の内部(画像形成装置内部)に限られず画像形成装置本体の周辺(画像形成装置周辺)に設けてもよい。この場合、温度センサが検知した本体周辺温度と閾値本体内温度とを比較し、この結果に応じて第1のトナー供給モード又は第2のトナー供給モードに切り替えるように構成してもよい。また温度センサに代えて湿度センサを用いてもよい。この場合、各記憶媒体46a〜46dには閾値本体内温度に代えて所定の閾値本体内湿度が記憶される。そして湿度センサが検知した本体内湿度又は本体周辺湿度と閾値本体内湿度とを比較し、この結果に応じて第1のトナー供給モード又は第2のトナー供給モードに切り替えるように構成してもよい。また温度センサと湿度センサを併用してもよい。この場合には、各記憶媒体46a〜46dには閾値本体内温度と所定の閾値本体内湿度が記憶される。そして温度センサが検知した本体内温度又は本体周辺温度と本体周辺温度とを比較するとともに、本体内湿度又は本体周辺湿度と閾値本体内湿度とを比較し、この結果に応じて第1のトナー供給モード又は第2のトナー供給モードに切り替えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1a,1b,1c,1d:感光ドラム、2a,2b,2c,2d:帯電ローラ、3a,3b,3c,3d:露光装置、4a,4b,4c,4d:現像装置、6a,6b,6c,6d:クリーニングブレード、8a,8b,8c,8d:転写ローラ、10:転写ベルト、10A:中間転写ベルト、45:温度センサ、50:枠部材、51a,51b,51c,51d:カートリッジ、200:制御部、Ar:感光ドラムとクリーニングブレードとの接触領域、P:記録材、T:トナー供給用トナー画像、t:トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にカラー画像を形成する画像形成装置であって、複数の画像形成部と、複数の前記画像形成部に沿って配された回転自在な搬送部材と、を有し、複数の前記画像形成部は、それぞれ、回転自在な像担持体と、画像形成時に前記像担持体に所定の色のトナーを用いトナー像を形成する現像手段と、前記像担持体に形成されたトナー像を前記搬送部材によって搬送される記録材に転写する転写部材と、前記像担持体と接触するクリーニング部材であって、前記像担持体からトナー像が記録材に転写された後に前記像担持体に担持されている不要なトナーを除去するクリーニング部材と、を有する画像形成装置において、
制御部を有し、前記制御部は、非画像形成時に所定の画像形成部の前記像担持体に前記現像手段により形成した供給用トナー像を前記像担持体によって前記像担持体と前記クリーニング部材との接触領域に供給する第1のトナー供給モードと、非画像形成時に所定の画像形成部の前記像担持体に前記現像手段により形成した供給用トナー像を前記転写部材によって前記搬送部材に転写し、前記搬送部材により供給用トナー像を所定の前記画像形成部以外の他の画像形成部に搬送し、他の前記画像形成部の前記転写部材により供給用トナー像を前記搬送部材から前記像担持体に転写するとともに前記像担持体によって前記像担持体と前記クリーニング部材との接触領域に供給する第2のトナー供給モードと、を有するとともに、複数の前記画像形成部で用いるトナーについて前記クリーニング部材と前記像担持体との接触領域で前記クリーニング部材に与える潤滑性の異同に応じて少なくとも2つの異なるメルトインデックスを設定しており、前記第2のトナー供給モードでは、前記メルトインデックスの低いトナーを用いる所定の前記画像形成部から前記メルトインデックスの高いトナーを用いる他の前記画像形成部へ前記メルトインデックスの低いトナーを供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置内部または前記画像形成装置周辺の温度と湿度を検知する検知部材を有しており、前記制御部は、前記検知部材で検知した温度、湿度または温度と湿度に基づいて前記第2のトナー供給モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置内部または前記画像形成装置周辺の温度と湿度を検知する検知部材を有しており、前記制御部は、前記検知部材で検知した温度、湿度または温度と湿度と、画像形成時の記録材に対するトナー像の印字率を用いて求めた平均印字率とに基づいて前記第2のトナー供給モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
複数の前記画像形成部のうち前記メルトインデックスの低いトナーを用いる所定の前記画像形成部に対して前記メルトインデックスの高いトナーを用いる他の前記画像形成部が画像形成時の前記搬送部材の回転方向上流側に配設されている場合、前記第2のトナー供給モードにおいて前記搬送部材を画像形成時の前記搬送部材の回転方向とは反対方向に回転することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
複数の前記画像形成部のうち前記メルトインデックスの低いトナーを用いる所定の前記画像形成部に対して前記メルトインデックスの高いトナーを用いる他の前記画像形成部が画像形成時の前記搬送部材の回転方向下流側に配設されている場合、前記第2のトナー供給モードにおいて前記搬送部材は画像形成時の前記搬送部材の回転方向と同じ方向に回転することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写部材は、画像形成時に前記像担持体が担持するトナー像を前記搬送部材で搬送される記録材に転写する際に、記録材と前記像担持体との間に所定の極性の転写バイアスを印加し、非画像形成時に所定の画像形成部において前記像担持体に前記現像手段により形成したトナー像を前記転写部材で前記搬送部材に転写する際に、前記搬送部材と前記像担持体との間に所定の前記転写バイアスの極性とは異なる所定の極性の転写バイアスを印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
複数の前記画像形成部において、前記像担持体と前記現像手段と前記クリーニング部材は枠部材を介してプロセスカートリッジとして一体化され、前記プロセスカートリッジは前記画像形成装置の画像形成装置本体に取り外し可能に装着されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−186276(P2011−186276A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52771(P2010−52771)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】