説明

画像形成装置

【課題】起動時における現像器内の現像剤の均一な分布状態を可及的に早期に整える画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像剤攪拌搬送スクリュウー51aの前回転をスタートさせ(S1)、EEPROM34に格納している現像部ごとの最終印字時の駆動トルク値t1を呼び出し(S2)、現在の各トルク値t2を参照し(S3)、最終印字時の駆動トルク値t1と現在の駆動トルク値t2を現像部ごとに個々に比較し(S4)、「t1<t2」なら前回転を継続し(S5)、「t1≧t2」なら現在の駆動トルク値t2を最終印字時の駆動トルク値t1としてEEPROM34に格納し(S6)、直ちに前回転処理を終了する(S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起動時における現像器内の現像剤の均一な分布状態を可及的に早期に整える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置には、一成分現像剤(トナー)を用いる方式のものと、二成分現像剤を用いる方式のものとがある。一成分現像剤を用いる方式は、取り扱いと制御が比較的容易であるため、現像剤としては一成分トナーが主流を占めていた。
【0003】
ところが近年のように、印刷(以下、印字ともいう)処理の高速化に対する要望が強まってくると、印刷処理の高速化には二成分現像剤を用いる方式の方がよく対応できるため、二成分現像剤を用いた現像装置(又は現像器)が種々提案されるようになった。
【0004】
このような二成分系現像剤はトナーとキャリアで構成される。キャリアは現像器内で攪拌搬送部材によりトナーと共に混合撹拌される。これにより、トナーには摩擦帯電による所定の電荷が与えられる。電荷を与えられたトナーはキャリアの表面に一時的に付着してキャリアの表面を被覆する。
【0005】
キャリアは磁気を有する現像ローラに吸着されて、電荷を帯びたトナーを感光体上に運ぶ。感光体上には静電潜像が形成されており、この静電潜像にトナーが転移して、静電潜像上にトナー像が現像される。
【0006】
表面のトナーを放出したキャリアは現像ローラ上に残り、再び現像器内に戻って新たなトナーと再び混合撹拌され、トナーに電荷を与え、そのトナーを感光体上に運ぶ、というように繰り返し使用される。
【0007】
このような二成分現像剤を用いた現像方法においては、現像剤のキャリアに対するトナー濃度を一定に維持するために、トナーの消費量に応じて新たなトナーが現像器内に補給される。
【0008】
また、近年、画像の高画質化のために、粒子径の小さいトナーが用いられるようになってきている。そして、このトナーの小粒径化に伴って、キャリアの小粒径化が図られている。このように、粒子径が小さいトナーおよび粒子径が小さいキャリアを用いると画質の高い画像を形成することができる。
【0009】
ところが、小粒径化されたトナーやキャリアで構成された現像剤は、小粒径化される前の現像剤に比べて流動性が低い。したがって、現像器内で現像剤の分布に一旦偏りが生じると、なかなか正規の分布状態にならず、これが画像ムラ、キャリアの現像器外への流出、トナー濃度等の制御に悪影響を与えるなどの不具合が発生していた。
【0010】
このような不具合に対処すべく、現像装置に設けた温度検知手段により現像装置の製造時からユーザー先までの輸送および保管環境にいたるまでの温度を検知し、この検知された温度履歴情報により、画像形成装置に装着されたプロセスカートリッジのトナーホッパ内のトナー攪拌部材の攪拌時間を変更するプロセスカートリッジが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
また、同様に現像剤の不正規な分布によって生じるリングマークや点状欠陥等の異常画像の発生を抑制するために、印字開始前に、湿度センサをチェックして湿度が所定値より高いか否かを判断し、湿度が所定値よりも高い場合は現像器駆動用モータを所定時間駆動し、一定の時間だけ現像剤の攪拌を行う。一方、湿度が所定値以下であれば直ちに通常の印字動作を行う制御方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
また、現像剤分布の偏りなどに伴って生じる現像動作不良を改善するために、現像動作に伴う駆動量が所定以下である低使用現像器が存在した場合、現像剤分布の偏りを均すように低使用現像器に対して所定時間空駆動させ、また、現像剤補給機構の補給駆動量の計測結果に基づいて現像剤補給機構も空駆動させることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−263022号公報
【特許文献2】特開平11−305528号公報
【特許文献3】特開2008−233718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、特許文献1の従来技術は温度検知手段により現像装置の製造時からユーザー先までの輸送および保管環境にいたるまでの温度を検知するという大変時間と手数の掛る制御を行っている。特に現像装置の製造時からユーザー先までの輸送および保管環境にいたるまでの温度を検知するためには温度検知手段を長期にわたって駆動する内蔵電源の配設が不可欠となり、経済性に課題がある。
【0015】
また、特許文献2の従来技術は湿度のチェックのみによって、現像器内の現像剤の不正規分布を矯正しようとしているが、現像剤の不正規分布は湿度のみよって生じると限るものではなく、現像剤カートリッジ又は現像装置そのものの交換等による装置全体のガタツキによっても、現像器内における現像剤の不正規分布は発生する。
【0016】
これを、湿度が所定値以下であるからとして、一定時間だけの現像剤の攪拌(現像器の空駆動つまり攪拌部材の前回転)を行わずに印字を実行すると異常画像の発生を抑制することは出来ないという課題が残されている。
【0017】
また、特許文献3の従来技術はもっぱら現像器や現像剤補給機構が低使用であった場合に生じ勝ちな現像剤分布の偏りを改善するものであるが、この場合も、現像剤の不正規分布は現像器や現像剤補給機構の低使用のみによって生じると限るものではない場合に対処できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像装置を備えた画像形成装置において、上記現像装置に設けられ現像用開口を有する現像剤容器と、該現像剤容器内に形成された現像剤循環経路と、該現像剤循環経路内に配設された現像剤攪拌搬送スクリュウーと、該現像剤攪拌搬送スクリュウーの駆動トルクを検出するトルク検出部と、該トルク検出部が検出した上記駆動トルクの値を記憶するトルク値記憶部と、上記現像装置の駆動を制御する制御部と、を有し、上記制御部は、電源投入時に上記トルク検出部により検出された電源投入時の駆動トルク値と、前回最終印字時に上記トルク記憶部に記憶された最終印字時の駆動トルク値とを比較し、該最終印字時の駆動トルク値と上記電源投入時の駆動トルク値との間に変動が在る場合は該変動の差分がほぼ無くなるまで上記現像剤攪拌搬送スクリュウーの前回転を継続し、上記比較の際に上記最終印字時の駆動トルク値と上記電源投入時の駆動トルク値との間に変動が無い場合は直ちに上記前回転を終了して印字実行待機状態に入るように構成される。
【0019】
この画像形成装置において、上記現像装置は、例えば、二成分現像装置である。また、例えば上記現像剤循環経路は、連通路を有する少なくとも2つの経路に分割され、上記現像剤攪拌搬送スクリュウーは分割された各上記経路に配設され、上記トルク検出部は上記現像剤攪拌搬送スクリュウーのいずれか一つの駆動部に設けられる。また、例えば、上記現像装置は、現像剤の色別毎に設けられている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、起動時における現像剤攪拌搬送スクリュウーの前回転の時間つまり現像器の空駆動の時間を可及的に短縮するので、現像剤の均一な分布状態を早期に整えて早期に印字待機状態に入ることができる画像形成装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係るカラー画像形成装置の内部構成を簡略に示す模式的側断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るカラー画像形成装置の制御システムの回路構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係るカラー画像形成装置の画像形成ユニットのみを取り出してその詳細な構成を示す拡大図である。
【図4】(a),(b) は本発明の実施例1に係るカラー画像形成装置の現像部における外側の現像剤循環経路及びその現像剤攪拌搬送スクリュウーの詳細な構成を模式的に示す図である。
【図5】(a) は現像剤循環経路に分布が均一化された現像剤が攪拌搬送されている状態を示す図、(b) は攪拌前または攪拌搬送中の未だ分布が不均一な形状の現像剤の状態を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に係るカラー画像形成装置における前回転の時間を可及的に短縮する前回転制御の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。尚、下記の説明において、上記静電潜像担持体は例えば感光体ドラム7等からなり、上記現像装置は例えば現像キット15等からなり、上記トルク記憶部は例えばEEPROM(electrically erasable programable ROM)34等からなり、上記制御部は例えば制御システム30等からなる。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1に係る画像形成装置の内部構成を簡略に示す模式的側断面図である。尚、同図は、例としてタンデム型のカラー画像形成装置を示している。
【0024】
同図に示すカラー画像形成装置1は、例えばデスクトップ型のパソコン用ラックに載置可能な程度の大きさの小型のカラー画像形成装置であり、本体基部の底部には用紙カセット2を着脱自在に備えている。用紙カセット2には多枚数の用紙3が載置・収容されている。
【0025】
このカラー画像形成装置1の内部のほぼ中央には、中間転写ベルト4が前後に偏平なループ状に配置されている。中間転写ベルト4は、駆動ローラ5と従動ローラ6に掛け渡されて、図の矢印Aで示す反時計回り方向に循環移動する。そして中間転写ベルト4の上循環部には、4個の感光体ドラム7(7c、7m、7y、7k)が画像搬送方向上流側から下流側(図の右から左方向)に多段式に並設されている。
【0026】
各感光体ドラム7には、その周面を夫々取り囲むようにして(以下、代表的に感光体ドラム7kの周囲装置についてのみ符号を付して示す)、クリーナ8、帯電ローラ9、光書込ヘッド11、画像形成ユニット12の現像ローラ13、及び一次転写ローラ14が配置されている。尚、上記の現像ローラ13はマグネットローラで構成されている。
【0027】
上記4個の光書込ヘッド11は、不図示の支持部材を介して画像形成装置本体フレームに支持されている。また、中間転写ベルト4、駆動ローラ5、従動ローラ6、一次転写ローラ14等は、後述するテンションローラ17及び18と共にベルトユニットを構成している。
【0028】
感光体ドラム7cに対応する画像形成ユニット12から感光体ドラム7kに対応する画像形成ユニット12まで、各画像形成ユニット12の現像キット15のトナー容器16内には、減法混色の三原色であるシアン(c)、マゼンタ(m)及びイエロー(y)の各色トナーと、文字や画像の黒色部分等の印字に専用されるブラック(k)のトナーが夫々収容されている。
【0029】
図1において、中間転写ベルト4は、下流側端部裏面に圧接するテンションローラ17と上流側端部裏面に圧接するテンションローラ18とによって常に外側に付勢されて適度の張力を保っている。この中間転写ベルト4は、トナー像を直接ベルト面に転写(一次転写)されて、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への転写位置まで搬送する。
【0030】
中間転写ベルト4の上流側端部に配置されている上記の従動ローラ6は、中間転写ベルト4の張設保持用ローラと二次転写部の対向ローラを兼ねており、その対向ローラとしての従動ローラ6には、中間転写ベルト4を介して押圧して回転する二次転写ローラ19が対向して配置され、従動ローラ6、中間転写ベルト4、及び二次転写ローラ19により二次転写部20を形成している。
【0031】
また、用紙カセット2の給紙口(図の右方)近傍には、用紙取出ローラ21、給送ローラ22及び捌きローラ23が配置され、給送ローラ22及び捌きローラ23から二次転写部20までの用紙搬送路の途中に待機ローラ対24が配置されている。
【0032】
上記の二次転写部20の下流側(図では上方)にはベルト式定着装置25が配置されている。ベルト式定着装置25の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式定着装置25から搬出する不図示の搬出ローラ対、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー26に排紙する排紙ローラ対27が配設されている。
【0033】
図1に示すように、このカラー画像形成装置1は、従来の用紙に直接トナー像を転写する方式ではなく、待機ローラ対24により二次転写部20まで鉛直方向に搬送される用紙に中間転写ベルト4を介してトナー像を転写する方式となっている。
【0034】
したがって、用紙の搬送路に発生する用紙ジャム等の不具合を回復するメンテナンス処理時には、図1の右側を開放するのみで対処できるようになっている。
【0035】
そして、用紙ジャム等の不具合は画像形成ユニット12等のキット類の配設部では発生しないので、図1の左方に集中するキット類などの消耗品の着脱の操作は、キット類の長手方向に入れ替え操作するだけの小さなスペースで良いように構成されている。
【0036】
これにより、各キット間の寸法は、可及的に縮小されており、装置本体全体の小型化が図られている。また、光書込みヘッド11自体も小型化され、感光体ドラム7に、より近接している構成となっている。
【0037】
図2は、上記構成のカラー画像形成装置1における制御システムの回路構成を示すブロック図である。同図に示すように制御システム30は、プリンタコントローラ部31を中心にして、このプリンタコントローラ部31に、それぞれデータバスを介してI/F(インターフェイス)コントローラ部32及びヘッドコントローラ部33が接続されている。
【0038】
さらにプリンタコントローラ部31には、他のデータバスを介してEEPROM(electrically erasable programable ROM)34及びROM(read only memory)35が接続され、更にそれぞれの信号線を介して、高圧ユニット36、各モータ部37、トルク検出部38、濃度センサ39、レジストセンサ41、トナーセンサ(CMYK)42、温湿度センサ43が接続されている。
【0039】
また、I/Fコントローラ部32には図1には図示を省略した操作パネル44が接続されている。また、I/Fコントローラ部32は、4個に分割されたイメージ展開領域を有するフレームメモリ45を備えている。
【0040】
また、ヘッドコントローラ部33には、図1に示した各感光体ドラム7(7c、7m、7y、7k)に対向して配置された光書込ヘッド11(11c、11m、11y、11k)が接続されている。
【0041】
上記のプリンタコントローラ部31は、ROM43から読み出した制御プログラムに基づいて、上記の各部を駆動制御しながら、高圧ユニット36〜温湿度センサ43の各部から送られてくる出力信号を、監視すると共に必要に応じてEEPROM34に格納して保存する。
【0042】
I/Fコントローラ部32は、インターネット経由でダウンロードした又は不図示のホスト機器(PC:パーソナルコンピュータ)から送られてくる印刷データRGB信号(又はCMYK信号)を入力し、その印刷データの中の画像データを色毎にフレームメモリ45の4個に分割されたイメージ展開領域K、C、M及びYにイメージ展開する。
【0043】
そして、そのイメージ展開した画像データをヘッドコントローラ部33に出力し、印刷データの中のコマンドをプリンタコントローラ部31に出力する。プリンタコントローラ部31は前述の制御プログラムと上記のコマンドとに基づいて各部を駆動制御する。
【0044】
ヘッドコントローラ部33は、I/Fコントローラ部32から送信されてくるイメージ展開された画像データに基づいて、各光書込ヘッド11(11c、11m、11y、11k)を制御し、各感光体ドラム7(7c、7m、7y、7k)に、それぞれの静電潜像を形成する。
【0045】
高圧ユニット36は、プリンタコントローラ部31からの制御の下に帯電ローラ9、現像ローラ13、一次転写ローラ14、二次転写ローラ19等に所定のバイアス電圧を供給するプラス又はマイナスの高圧電源を備えている。
【0046】
各モータ部37は、プリンタコントローラ部31からの制御の下に、感光体ドラム7、駆動ローラ5、用紙取出ローラ21、給送ローラ22、捌きローラ23、待機ローラ対24、ベルト式定着装置25、排紙ローラ対27等の各駆動ギアに連結する駆動系の駆動源モータの回転タイミング等を制御する。
【0047】
トルク検出部38は、詳しくは後述するが、現像器の現像剤循環経路に配置された現像剤攪拌搬送スクリュウーの回転トルクを検出し、その検出した回転トルク情報を示す信号をプリンタコントローラ部31に出力する。
【0048】
濃度センサ39は、図1には図示を省略しているが、中間転写ベルト4の表面に近接した適宜の場所に配置され、必要に応じて中間転写ベルト4上に形成された所定のパターンのトナー像の濃度を検出し、その検出した濃度情報を示す信号をプリンタコントローラ部31に出力する。
【0049】
レジストセンサ41は、用紙カセット2から給送されて待機ローラ対24の把持部に進入してくる用紙3の先端の状態を検出して用紙3の搬送姿勢の正否を検出し、正であれば斜行矯正後の搬送タイミング情報を、否であれば用紙ジャム情報をプリンタコントローラ部31に出力する。
【0050】
トナーセンサ(CMYK)42は、詳しくは後述するが、各画像形成ユニット12の現像器底部に配設され、現像器内におけるトナー濃度(キャリアとトナーの混合比)を検出し、その検出したトナー濃度情報を示す信号をプリンタコントローラ部31に出力する。
【0051】
温湿度センサ43は、カラー画像記録装置1の適宜の箇所に配置されている。温湿度センサ43はカラー画像記録装置1内部の温湿度を検出して、その検出した温湿度を示す信号をプリンタコントローラ部31に出力する。
【0052】
図3は上記の構成におけるカラー画像形成装置1の画像形成ユニット12のみを取り出してその詳細な構成を示す拡大図である。同図に示すように、図1にも示した感光体ドラム7と一次転写ローラ14が中間転写ベルト4を挟んで対向配置され、感光体ドラム7と中間転写ベルト4との間の図面手前から向こう側までの接触線によって一次転写部50が形成されている。
【0053】
また、画像形成ユニット12の現像キット15には、トナー容器16の下方に現像部46が形成されている。現像部46は、現像用開口47を有し、この現像用開口47に前述した現像ローラ13を備えている。
【0054】
現像ローラ13の斜め下方には、隔壁48で仕切られた2つの現像剤循環経路49(49a、49b)が、現像ローラ13の軸に平行に且つ水平に2列に並んで形成されている。その外側の現像剤循環経路49aの底部には、前述したトナーセンサ42が配置されている。
【0055】
これら2つの現像剤循環経路49(49a、49b)には、予め所定量のキャリアが収容されており、このキャリアにトナーが混入されて現像剤を構成している。すなわち、本例の現像キット15は二成分現像装置である。
【0056】
上記2つの現像剤循環経路49には、それぞれ現像剤攪拌搬送スクリュウー51(51a、51b)が配設されている。トナー容器16から現像部46に補給されるトナーは先ず、現像ローラ13から遠い位置の、つまり2つ在るうちの外側の現像剤循環経路49aに補給されるようになっている。
【0057】
次に上記構成の本例のカラー画像形成装置1の動作を簡単に説明する。先ず、図2の操作パネル44から画像形成の指示が入力操作される、またはインターネット経由でダウンロードした、またはホスト機器(PC)から送られてくる印刷データが入力される。
【0058】
そこで、プリンタコントローラ部31はI/Fコントローラ部32及びヘッドコントローラ部33の駆動制御を開始すると共に、一方では高圧ユニット36や各モータ部37の駆動制御を開始し、他方ではトルク検出部38を始めとする各センサの出力を監視する。
【0059】
これにより、先ず、各モータ部37により、各感光体ドラム7が回転駆動され、クリーナ8によって均一に清掃された感光体ドラム7の表面が、高圧ユニット36と帯電ローラ9によって一様に初期化帯電される。
【0060】
ヘッドコントローラ部33は、I/Fコントローラ部32から送信されてくるイメージ展開された印刷データに基づき各光書込ヘッド11を発光駆動して、各画像形成ユニット12の感光体ドラム7に、それぞれに対応する静電潜像を形成する。
【0061】
一方、画像形成ユニット12の現像キット15では、トナーセンサ42のトナー濃度検出情報に基づき必要に応じてトナー容器16から現像部46の外側の現像剤循環経路49aにトナーが補給される。
【0062】
現像剤循環経路49aの現像剤攪拌搬送スクリュウー51aは、現像剤を攪拌搬送しながら現像剤を水平方向に凹凸のない均一な分布状態として、隔壁51の一方の端部(図3の図面奥行き方向の向こう側の端部)に形成されている連通路(送出口)から隣の現像剤循環経路49bに送出する。
【0063】
現像剤循環経路49bの現像剤攪拌搬送スクリュウー49bは、隔壁51の送出口から現像剤循環経路49bに送り込まれて来る現像剤を、隔壁51の他方の端部(図3の図面奥行き方向の手前側の端部)に形成されている連通路(返送口)まで現像剤を攪拌搬送しながら、現像ローラ13の回転する周面に現像剤を供給し、供給した残余の現像剤を返送口から現像剤循環経路49aに送り戻す。
【0064】
現像剤循環経路49bの現像剤攪拌搬送スクリュウー49bからトナーを供給された現像ローラ13は、高圧ユニット36から印加されるバイアス電圧による感光体ドラム7との電位差により、現像剤のトナーを感光体ドラム7の周面の静電潜像に転移させ、静電潜像をトナー像化(現像)する。
【0065】
感光体ドラム7上に現像されたトナー像は、感光体ドラム7の回転に伴って、一次転写部50まで回転搬送される。一次転写部50では、高圧ユニット36から一次転写ローラ14に印加されるバイアス電圧により、感光体ドラム7上のトナー像が画像イメージとして中間転写ベルト4に一次転写される。
【0066】
中間転写ベルト4には、4個の感光体ドラム7c、7m、7y、及び7kから、それぞれの色の画像イメージのトナー画像が順次重ねて転写されてフルカラーのトナー画像が形成される。中間転写ベルト4に一次転写されたフルカラーのトナー画像は、中間転写ベルト4の循環移動により、二次転写部20へと搬送される。
【0067】
これに先立って、各モータ部37の駆動制御により、用紙取出ローラ21、給送ローラ22、捌きローラ23が駆動されて、用紙カセット2から用紙3が1枚ごと取り出され、最初の用紙3の先端が待機ローラ対24に制止されて送出のタイミングを待機する。
【0068】
そして、中間転写ベルト4に一次転写されている最初のトナー像の先端が二次転写部20に搬送されて来るタイミングで、その二次転写部20に用紙3の画像形成領域の先頭が対応するように、待機中の用紙3が待機ローラ対24から送り出される。
【0069】
待機ローラ対24から送り出された用紙3は、二次転写部20において、高圧ユニット36から二次転写ローラ19に印加されるバイアス電圧により、フルカラーのトナー画像を中間転写ベルト4から転写される。
【0070】
トナー画像を転写された用紙3は、ベルト式定着装置25を通過しながら、トナー画像を紙面に定着され、排紙ローラ対27により搬出されて、排紙トレー26上に順次積載される。
【0071】
図4(a),(b) は、上記のように動作するカラー画像形成装置1の画像形成ユニット12において、現像キット15における現像部46の現像剤循環経路49a及びその現像剤攪拌搬送スクリュウー51aの詳細な構成を模式的に示す図である。
【0072】
尚、図4(a),(b) は、図3の矢印Cの方向に現像剤循環経路49aの内部を見た図である。また、図4(a),(b) には、図3と同一の構成部分には図3と同一の番号を付与して示している。
【0073】
図4(a) に示すように、隔壁48によって図3に示す現像剤循環経路49bから仕切られている現像剤循環経路49aの内部には、回転軸52と、この回転軸52に固設されたフィン53からなる現像剤攪拌搬送スクリュウー51aが配設されている。
【0074】
回転軸52の一方の端部(図の右端)には、図4(b) に示すように駆動部54が係合している。この駆動部54には、図2に示したトルク検出部38が配設されている。尚、駆動部54又はトルク検出部38は、2つの現像剤攪拌搬送スクリュウー51a又は51bのいずれか一つの回転軸又は駆動部に設けられる。
【0075】
図4(b) に示すトルク検出部38は、駆動部54が現像剤攪拌搬送スクリュウー51aを回転駆動する際の駆動トルクを常時検出して制御システム30のプリンタコントローラ部31に通知する。
【0076】
プリンタコントローラ部31は、最終印字の際に、トルク検出部38から通知された印字終了直前の駆動トルクの値を、最終印字時の駆動トルク値としてEEPROM34に格納して保存する。
【0077】
また、プリンタコントローラ部31は、電源投入時に実行される現像部46の前回転(現像無しの空駆動)の際に、トルク検出部38から通知される駆動トルクを電源投入時駆動トルクとして、トルク検出部38から通知されるつど最終印字時駆動トルクと比較し、その比較結果に基づいて、詳しくは後述するように前回転の継続時間を制御する。
【0078】
また、上記の現像剤攪拌搬送スクリュウー51aには、一方の端部(図4(a),(b) では右端部、図3では図面奥行き方向向こう側)に、フィン形状の変化点55が形成されている。
【0079】
隔壁48のフィン形状の変化点55に対応する位置には、図4(a),(b) では図示を省略されているが、現像剤循環経路49aから現像剤循環経路49bへ分布の均一化された現像剤を送り出す送出口として連通路が形成されている。
【0080】
また、隔壁48のフィン形状の変化点55とは反対側の端部56には、これも図4(a),(b) では図示を省略されているが、現像剤循環経路49bから現像剤循環経路49aへ、トナー濃度の変動したキャリアが入り混じった現像剤を送り戻す返送口としての連通路が形成されている。
【0081】
図5(a) は、上記の現像剤循環経路49aに、分布が均一化された現像剤57が攪拌搬送されている状態を示し、同図(b) は、攪拌前または攪拌搬送中の未だ分布が不均一な形状の現像剤57の状態を示している。
【0082】
図5(a) の状態は、印字中であるか、印字開始時の前回転が十分に行われた直後の状態を示し、このように分布が均一な状態で、現像剤循環経路49aから現像剤循環経路49bへ現像剤57が送り出されると、現像剤循環経路49bから現像ローラ13に現像剤57が均一な層となって吸着され、感光体ドラム7に、むらの無い現像を行うことができ、用紙3に高画質の画像を形成することができる。
【0083】
一方、図5(b) の状態は、工場出荷時に現像部46に現像剤57が充填されていて、搬送中や開梱時に装置ががたついて現像剤57の分布が不均一になった状態、又は、画像形成ユニット12、現像キット15、トナー容器16等の交換で、装置ががたついて現像剤57の分布が不均一になった状態を示している。
【0084】
図5(b) の状態のままで印字を開始すると、現像剤循環経路49aから現像剤循環経路49bへ分布が不均一な状態の現像剤57が送り出されることになり、現像剤循環経路49bから現像ローラ13に吸着される現像剤57の量にむらが生じ、感光体ドラム7に現像されるトナー画像に濃淡その他の不具合が発生する。
【0085】
この不具合を防止するため、印字開始前に図5(a) に示すような分布の均一な現像剤57の状態とするために、従来、前回転(又は空駆動ともいう)という準備動作を行っていたことは前述した。
【0086】
そして、不均一状態の解消のために要する経済性の問題、不均一状態解消の湿度のみに依存した不十分な対処方法の問題、低使用の場合のみに限定した他の不均一状態に対処できない問題等、従来の方法では残された課題が山積していることも前述した。
【0087】
本例の現像部46においては、現像剤57の上記いずれの状態における不均一分布の場合でも、起動時における現像剤攪拌搬送スクリュウー51aの前回転による現像剤57の均一な分布状態を早期に整えて、前回転の時間を可及的に短縮し、早期に印字待機状態に入ることができるようにする。
【0088】
図6は、前回転の時間を可及的に短縮するための本例の制御システム30のプリンタコントローラ部31による前回転制御の処理動作を示すフローチャートである。尚、この処理では、前述した最終印字の際にトルク検出部38により検出され、EEPROM34に格納保存されている最終印字時の駆動トルク値が判断用のデータとして使用される。
【0089】
先ず、カラー画像記録装置1に電源が投入されると、又はメンテナンス等のために本体装置の扉が開閉されると、I/Fコントローラ部32は、前回転をスタートさせる(ステップS1)。この処理は、駆動部54により現像剤攪拌搬送スクリュウー51aを回転駆動させる処理である。
【0090】
次に、プリンタコントローラ部31は、最終印字時のトルク値t1を呼び出す(ステップS2)。この処理では、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)及びブラック(k)の現像剤を収容した4個の各現像キット15の現像部46に対応してEEPROM34に格納されている最終印字時の駆動トルク値Ct1、Mt1、Yt1、及びKt1がプリンタコントローラ部31により読み出される。
【0091】
続いて、プリンタコントローラ部31は、現在のトルク値t2を測定する(ステップS3)。この処理では、各現像キット15の現像部46のトルク検出部38から通知されてくる現在の駆動トルク値Ct2、Mt2、Yt2、及びKt2が参照される。
【0092】
そして、プリンタコントローラ部31は、最終印字時の駆動トルク値Ct1、Mt1、Yt1、及びKt1と、現在の駆動トルク値Ct2、Mt2、Yt2、及びKt2とを個々に比較する(ステップS4)。
【0093】
この比較処理で、プリンタコントローラ部31は、CMYKのうち1個でも最終印字時の駆動トルク値t1よりも現在の駆動トルク値t2の方が大きい、すなわち「t1<t2」の場合は、現像剤57の分布が偏っていると判断し、分布を均一化するために前回転を継続する(ステップS5)。
【0094】
そして、プリンタコントローラ部31は、ステップS3の処理に戻り、再び各現像キット15の現像部46のトルク検出部38から通知されてくる現在の駆動トルク値Ct2、Mt2、Yt2、及びKt2を参照し、ステップS4で、最終印字時の4個の駆動トルク値t1と、現在の4個の駆動トルク値t2とを個々に比較する、ということを繰り返す。
【0095】
そして、ステップS4の判別で、CMYKの全てにおいて、現在の駆動トルク値t2が最終印字時の駆動トルク値t1以下、すなわち「t1≧t2」の場合は、プリンタコントローラ部31は、現像剤57の分布が均一になったと判断する。
【0096】
そして、それら現在の駆動トルク値Ct2、Mt2、Yt2、及びKt2を、最終印字時の駆動トルク値Ct1、Mt1、Yt1、及びKt1としてEEPROM34に格納する(ステップS6)。そして前回転処理を終了する(ステップS7)。
【0097】
尚、本例の現像キット15は二成分現像装置であり、トナー濃度が低下すると直ちにトナー容器16からトナーが現像剤循環経路49aに補給されて総量不変のキャリアと混合されるので、一旦分布が均一化された現像剤57のトナーが現像剤循環経路49aにおける上面位置はほとんど変わることがない。
【0098】
したがって、印字終了時まで現在の駆動トルク値t2の値が変動することは殆どない。このことが、分布が均一化された後の現在の駆動トルク値t2の値を最終印字時の駆動トルク値t1としてEEPROM34に格納する理由である。
【0099】
また、上記処理動作の最初のステップS4の判別で「t1≧t2」の場合も、直ちにステップS6及びS7の処理が行われる。これにより、前回転時間が大幅に短縮又はほとんど前回転無しの状態で印字待機状態に入ることになる。
【0100】
この後、操作パネル44から又はインターネット経由で又は不図示のホスト機器(PC:パーソナルコンピュータ)から印字データと共に印字開始の指示が入力されると、プリンタコントローラ部31は、印字処理を実行する。
【0101】
このように。本実施例によれば、どのような状態から発生した現像剤の分布不均一の場合でも、経済性の問題もなく、湿度のみに依存した不十分な対処方法の問題もなく、低使用の場合のみに限定した他の不均一状態に対処できないという問題もなく、単に起動時における現像剤攪拌搬送スクリュウーの前回転のトルク値を参照するだけで、現像剤の均一な分布状態を早期に整えることができる。
【0102】
これにより、前回転の時間を可及的に短縮し、早期に印字待機状態に入ることができるカラー画像記録装置を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、起動時における現像器内の現像剤の均一な分布状態を可及的に早期に整える画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 カラー画像形成装置
2 用紙カセット
3 用紙
4 中間転写ベルト
5 駆動ローラ
6 従動ローラ(転写対向ローラ)
7(7c、7m、7y、7k) 感光体ドラム
8 クリーナ
9 帯電ローラ
11(11c、11m、11y、11k) 光書込ヘッド
12 画像形成ユニット
13 現像ローラ
14 一次転写ローラ
15 現像キット
16 トナー容器
17、18 テンションローラ
19 二次転写ローラ(転写押圧ローラ)
20 二次転写部
21 用紙取出ローラ
22 給送ローラ
23 捌きローラ
24 待機ローラ対
25 ベルト式定着装置
26 排紙トレー
27 排紙ローラ対
30 制御システム
31 プリンタコントローラ部
32 I/F(インターフェイス)コントローラ部
33 ヘッドコントローラ部
34 EEPROM(electrically erasable programable ROM)
35 ROM(read only memory)
36 高圧ユニット
37 各モータ部
38 トルク検出部
39 濃度センサ
41 レジストセンサ
42 トナーセンサ(CMYK)
43 温湿度センサ
44 操作パネル
45 フレームメモリ
46 現像部
47 現像用開口
48 隔壁
49(49a、49b) 現像剤循環経路
50 一次転写部
51(51a、51b) 現像剤攪拌搬送スクリュウー
52 回転軸
53 フィン
54 駆動部
55 フィン形状の変化点
56 端部
57 現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像装置を備えた画像形成装置において、
前記現像装置に設けられ現像用開口を有する現像部と、
該現像部内に形成された現像剤循環経路と、
該現像剤循環経路内に配設された現像剤攪拌搬送スクリュウーと、
該現像剤攪拌搬送スクリュウーの駆動トルクを検出するトルク検出部と、
該トルク検出部が検出した前記駆動トルクの値を記憶するトルク値記憶部と、
前記現像装置の駆動を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
電源投入時に前記トルク検出部により検出された電源投入時の駆動トルク値と、前回最終印字時に前記トルク記憶部に記憶された最終印字時の駆動トルク値とを比較し、
該最終印字時の駆動トルク値と前記電源投入時の駆動トルク値との間に変動が在る場合は該変動の差分がほぼ無くなるまで前記現像剤攪拌搬送スクリュウーの前回転を継続し、
前記比較の際に前記最終印字時の駆動トルク値と前記電源投入時の駆動トルク値との間に変動が無い場合は直ちに前記前回転を終了して印字実行待機状態に入る、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像装置は、二成分現像装置である、ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像剤循環経路は、連通路を有する少なくとも2つの経路に分割され、前記現像剤攪拌搬送スクリュウーは分割された各前記経路に配設され、前記トルク検出部は前記現像剤攪拌搬送スクリュウーのいずれか一つの駆動部に設けられる、ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像装置は、現像剤の色別毎に設けられている、ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64883(P2011−64883A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214470(P2009−214470)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】