説明

画像形成装置

【課題】透明トナー画像が重なっても、有色トナー画像で形成された情報画像や地紋画像が目立たないで済む画像形成装置を提供する。
【解決手段】出力画像の白地部にイエロートナー画像を用いて機番パターン等の情報画像をごく薄い濃度で形成する。情報画像を透明トナー画像が重なる領域と重ならない領域とに分けて、透明トナー画像が重なる領域に対しては、重ならない領域よりも露光の入力信号値を低く付与してトナー載り量を少なくする。露光画像データの段階で透明トナー画像による見かけの濃度上昇を考慮した濃度補正を行うことにより、透明トナー画像が重なる部分と重ならない部分とで情報画像に濃度差を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材上の出力画像に透明トナー画像を重ねて出力可能な画像形成装置、詳しくは、記録材上に目立たないように形成される情報画像又は地紋画像が透明トナー画像に重なって目立つことを防止する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
現像色の異なる複数のトナー像を重ねてフルカラー画像を形成する画像形成装置が広く用いられている。また、フルカラー画像の上に透明トナー画像を重ねて画像全体の光沢差を均一化するために、透明トナー画像のトナー像を形成する透明像形成部を装備したフルカラー画像形成装置も実用化されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、フルカラー画像形成装置は、記録材に対する明度差が小さい有色トナーを用いて、種々の情報画像を記録材上で視覚的な識別が困難になるような薄い濃度で出力する機能を備えている(特許文献2、3、4)。このような機能は、例えば、有価証券や機密書類の複写を自動検出して停止させたり、複写物に画像形成装置の機体番号を目立たないように埋め込んで複写物から解析可能にしたりする用途に使用されている。
【0004】
特許文献2には、画像の白地部に、イエロートナーを用いて数字列又は文字列の情報画像を形成する画像形成装置が示される。ここでは、画像形成条件の変化に伴って情報画像のトナー載り量が変化するため、情報画像の濃度に相当するパッチ画像を形成して光学的な検出を行うことにより、情報画像の濃度を視覚的な識別が困難なレベルに維持している。
【0005】
特許文献3、4には、画像の白地部に、イエロートナーを用いてドットパターンコードの情報画像を形成する画像形成装置が示される。
【0006】
特許文献5には、画像形成された原画像(オリジナル)とその複写画像(コピー)との違いを一目瞭然に表示させるための地紋画像を原画像の白地部に出力する画像形成装置が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−266614号公報
【特許文献2】特開平6−113109号公報
【特許文献3】特開平6−110988号公報
【特許文献4】特開2008−271110号公報
【特許文献5】特開2007−81750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に示されるように、情報画像を記録材上で視覚的な識別が困難になるような薄い濃度で出力しても、その上に透明トナー画像が重なると記録材上で情報画像が目だってしまう。後述するように、透明トナー画像が重なると、情報画像を形成する有色トナー画像の表面の粒子性が減って散乱光が減るため、白色度が下がって見かけの濃度が高まるからである。
【0009】
同様な理由によって、特許文献5に示されるように地紋画像を出力した場合も、本来は目立たない薄いハーフトーン画像であるべき地紋画像の見かけの濃度が高まって目障りになる。
【0010】
画像の光沢度を揃えるために透明トナー画像を画像面全体に一様に重ねる全体透明画像モードの場合も、目立ってはいけない情報画像や地紋画像が目立つようになるため、上述したように問題である。しかし、透明トナー画像がパターン化されて画像面の一部に重ねられる部分透明画像モードでは、さらに深刻な問題となる。透明トナー画像が重なって目立つようになった情報画像や地紋画像が、本来は目立たないはずの透明トナー画像のパターンを周囲から際立たせてしまい、部分透明画像モードの意義を失わせてしまうからである。
【0011】
本発明は、透明トナー画像が重なっても、有色トナー画像で形成された情報画像や地紋画像が目立たないで済む画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成装置は、感光体と、背景色に対する視覚的な識別が困難になるように形成される情報画像が付加された出力画像の露光画像データを用いて前記感光体を露光して静電像を形成する露光装置と、有色トナーを用いて前記静電像を有色トナー画像のトナー像に現像する現像手段と、記録材上で前記有色トナー画像の上に位置する透明トナー画像のトナー像を形成する透明トナー画像形成手段とを備えるものである。そして、前記透明トナー画像が重なる前記情報画像のトナー載り量を、前記透明トナー画像が重ならない前記情報画像のトナー載り量よりも少なくするように前記露光画像データを形成する画像処理手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置では、透明トナー画像が重なる情報画像のトナー載り量を、透明トナー画像が重ならない情報画像のトナー載り量よりも少なくなるように露光画像データを修正する。露光画像データの段階で透明トナー画像による見かけの濃度上昇を考慮した濃度補正を行うことにより、透明トナー画像が重なる部分と重ならない部分とで情報画像に濃度差を設定する。
【0014】
従って、透明トナー画像が重なった情報画像と透明トナー画像が重なっていない情報画像との見かけの濃度差が小さくなって、透明トナー画像が重なっても有色トナー画像で形成された情報画像が目立たない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】イエロー画像形成部の構成の説明図である。
【図3】パッチ画像の画像濃度と反射光量センサの出力の関係の説明図である。
【図4】透明画像モードの説明図である。
【図5】読み取り画像の画像処理の説明図である。
【図6】画像形成装置の固有の識別パターンの説明図である。
【図7】情報画像の分光反射率測定の説明図である。
【図8】透明トナー画像を重ねた有色トナー画像における見かけ濃度の高まりの説明図である。
【図9】実施例1における情報画像の露光変調量の設定の説明図である。
【図10】実施例1の制御のフローチャートである。
【図11】実施例2で用いるカラーチャートの説明図である。
【図12】実施例3における情報画像の説明図である。
【図13】実施例4における情報画像の説明図である。
【図14】実施例5における地紋画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、透明トナー画像が重なる有色トナー画像の濃度を低下させるように露光画像データが補正される限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0017】
従って、タンデム型/1ドラム型、中間転写型/直接転写型の区別無く実施できる。透明画像形成部を備えたタンデム型のみならず、独立した透明画像形成部を備えた画像形成装置や、単独の透明画像形成装置をフルカラー画像形成装置の下流側に連結した画像形成システムでも実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0018】
なお、特許文献1〜5に示される画像形成装置、情報画像、地紋画像の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0019】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図2はイエロー画像形成部の構成の説明図である。図3はパッチ画像の画像濃度と反射光量センサの出力の関係の説明図である。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置100は、画像形成部101の上に画像読取部102を重ねて配置する。画像形成装置100は、中間転写ベルト7に沿ってクリア、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd、Peを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0021】
有色トナー画像形成手段の一例である画像形成部Pbでは、感光ドラム1bにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト7に一次転写される。画像形成部Pcでは、感光ドラム1cにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト7上のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部Pd、Peでは、それぞれ感光ドラム1d、1eにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト7上に順次重ねて一次転写される。
【0022】
透明トナー画像形成手段の一例である画像形成部Paは、透明トナー画像を用いる画像モードで使用される。画像形成部Paでは、感光ドラム1aにクリア(透明)トナー像が形成されて、中間転写ベルト7上の最下層に一次転写される。
【0023】
合計五色のトナー像は、中間転写ベルト7の回転に伴って二次転写部T2へ搬送されて、記録材Pへ一括二次転写される。すなわち、記録材カセット47から引き出された記録材Pは、1枚ずつに分離してレジストローラ48へ送り出され、レジストローラ48によって、中間転写ベルト7のトナー像にタイミングを合わせて二次転写部T2へ送り込まれる。
【0024】
合計五色のトナー像が二次転写された記録材Pは、二次転写部T2の下流で中間転写ベルト7から曲率分離して定着装置9へ搬送される。記録材Pは、定着装置9で加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、機体外部へ排出される。
【0025】
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd、Peは、現像装置4a、4b、4c、4d、4eで用いる二成分現像剤のトナーの色が異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、イエローの画像形成部Pbについて説明し、画像形成部Pa、Pc、Pd、Peについては、以下の説明中の構成部材に付した符号末尾のbをa、c、d、eに読み替えて説明されるものとする。
【0026】
図2に示すように、画像形成部Pbは、感光体の一例である感光ドラム1bの周囲に、帯電ローラ2b、露光装置3b、現像装置4b、一次転写ローラ6b、クリーニング装置5b、及び除電露光装置46bを配置している。
【0027】
感光ドラム1bは、アルミニウムシリンダの外周面に帯電極性が負極性の感光層を形成され、所定のプロセススピードで矢印R1方向に回転する。帯電ローラ2bは、電源D3から直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されて、感光ドラム1bの表面を一様な負極性の暗部電位VDに帯電させる。露光装置3bは、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを走査して、帯電した感光ドラム1bの表面に画像の静電像を書き込む。
【0028】
現像装置4bは、イエローの非磁性トナーと磁性キャリアとを混合した二成分現像剤が現像容器40に所定量充填されている。現像容器40内の二成分現像剤は、搬送スクリュー43、44によって紙面と垂直な逆方向に搬送されて現像容器40内を循環する過程で磁性キャリアが正極性、非磁性トナーが負極性に摩擦帯電する。二成分現像剤は、固定マグネット42の周囲で回転する現像スリーブ41に担持されて穂立ち状態で感光ドラム1bを摺擦する。電源D4は、負極性の直流電圧Vdcに交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブ41に印加する。これにより、現像スリーブ41に担持されたトナーが相対的に正極性となった感光ドラム1bの露光部へ移転して静電像が反転現像される。
【0029】
一次転写ローラ6bは、中間転写ベルト7の内側面を押圧して、感光ドラム1bと中間転写ベルト7との間に一次転写部Tbを形成する。電源D1が一次転写ローラ6bに正極性の直流電圧を印加することにより、感光ドラム1bに担持された負極性のトナー像が、一次転写部Tbを通過する中間転写ベルト7に一次転写される。
【0030】
クリーニング装置5bは、感光ドラム1bにクリーニングブレード45を摺擦して一次転写されることなく一次転写部Tbを通過した転写残トナーを除去する。
【0031】
<画像濃度制御>
有色トナー画像の画像濃度調整は、画像形成部Pb、Pc、Pd、Peで個別に所定の画像形成条件を用いてパッチ画像を形成して中間転写ベルト7に一次転写し、反射光量センサ110でパッチ画像を検出することにより行う。
【0032】
中間転写ベルト7上に一次転写されたパッチ画像にLED111で光を当て、返ってきた光をフォトダイオード112で受けることにより、トナー載り量に応じた反射光量が得られる。LED光源111の出力光は、トナーに反射する特性を有し、中間転写ベルト7には中庸に反射する特性となっているからである。フォトダイオード112からのアナログ信号は、反射光量センサ110に内蔵されたA/D変換器によって図3に示すようにデジタル信号に変換される。
【0033】
プリンタ制御部210は、反射光量センサ110で得られた濃度情報により画像形成条件を調整する。同一の静電像に対するトナー載り量を変更するために、現像装置4bへのトナー補給量を調整してトナーの帯電量が変更される。静電像を変更してトナー載り量を調整するために、帯電ローラ2bに印加される直流電圧、現像スリーブ41に印加される直流電圧、または露光装置3bの露光出力が変更される。
【0034】
<画像形成モード>
図4は透明画像モードの説明図である。画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの有色トナー画像を使って画像形成を行うフルカラーモードと、ブラックの有色トナー画像だけを使うブラック単色モードとを具備する。また、フルカラー画像又はブラック単色画像に透明トナー画像を重ねて画像形成を行う透明画像モードを有する。
【0035】
なお、有色トナー画像の種類としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外のものを組み合わせて用いてもよい。例えば、マゼンタ、シアンと同一色相で濃度の薄いトナーを用い、濃度の濃いトナーと濃度の薄いトナーとの両方を用いて画像形成を行うことにより、ハーフトーン画像の色彩再現性を向上させることができる。
【0036】
図4に示すように、画像形成装置(100:図1)では、次のような3種類の透明画像モードを選択可能である。
(1)全体透明画像モード(全面均一モード):図4の(a)に示すように、記録材Pに出力された有色トナー画像L1の白地部を含む全面に透明トナー画像L2を均一なトナー載り量で重ねて、一様に高光沢な出力画像を得る。
(2)画像平坦化モード:図4の(b)に示すように、定着前のトナーの高さが画像面全体で均一になるように透明トナー画像L2を形成して有色トナー画像L1に重ね合わせる(逆LUTモード)。
(3)部分透明画像モード:図4の(c)に示すように、有色トナー画像が形成された記録材Pの一部分に透明トナー画像L2の図形パターンや文字パターン(図では星型)を載せて光沢を部分的に付与する。
【0037】
上記(3)の部分透明画像モードは、画像形成した出力物(文書)の複写に対してプロテクトする方法としても機能する。具体的には、内容の一部が人間には容易に観察できるが、画像読取部102には検出されないような態様にする。
【0038】
<実施例1>
図5は読み取り画像の画像処理の説明図である。図6は画像形成装置の固有の識別パターンの説明図である。図7は情報画像の分光反射率測定の説明図である。図8は透明トナー画像を重ねた有色トナー画像における見かけ濃度の高まりの説明図である。実施例1では、画像読取装置で階調画像を得て情報画像を重畳する画像処理を説明するが、パソコン等の外部機器から入力された階調画像でも、同様な手順で情報画像の埋め込み処理が可能である。
【0039】
画像形成装置100は、特許文献2に示されるように、画像形成装置100に固有の識別パターンを、イエロートナー画像の一部に付加して記録材Pの背景色に対する視覚的な識別が困難になるように形成する。
【0040】
図1に示すように、コピーモードでは、画像形成部102が原稿載置ガラス200に載置された原稿の画像を読み取る。露光ランプ201は、蛍光灯、ハロゲンランプ、レーザー、LED等のいずれかからなり、その長手方向に対して垂直方向に移動しながら、原稿載置ガラス200上の原稿を照射する。露光ランプ201の照射による原稿からの散乱光は、レンズ207に到達する。
【0041】
原稿の画像は、レンズ207を介して、数千個の受光素子がライン配列されたCCD(ラインセンサ)10の受光部上に結像し、CCD10によって、逐次ライン単位で光電変換される。光電変換された読み取り信号は、リーダ画像処理部209で処理されて読み取り画像データとしてプリンタ制御部210へ出力される。
【0042】
プリンタ制御部210は、読み取り画像に情報画像を付加した出力画像の露光画像データを作成し、露光画像データを展開してPWM変調することにより走査線露光信号を形成する。そして、走査線露光信号を用いて露光装置3bのレーザービーム光源(半導体レーザー)を駆動する。
【0043】
図5に示すように、原稿の画像の輝度信号がCCD10で得られ、輝度信号はA/D変換回路11によってデジタルの輝度信号に変換される。得られた輝度信号は、CCD(ラインセンサ)10の個々のCCD素子の感度バラツキがシェーディング回路12により修正される。修正された輝度信号は、LOG変換回路13により濃度信号に変換する。
【0044】
プリンタ制御部210のLUT(ルックアップテーブル)14は、原稿の画像濃度と出力画像の画像濃度が一致するように、初期設定時のプリンタのγ特性に基づいて画素の濃度を露光条件に変換する。
【0045】
機番パターン発生回路15は、画像形成装置100に固有の識別パターンを発生する。図6に示す数値パターンが、目視での分解能が一番劣るイエローのトナー画像の画像信号に重畳される。なお、機番パターンは、機番を対応させた数字パターンには限られないが、数字や文字に対応するパターンでめだちにくいものを採用するのが好ましい。
【0046】
重畳させるパターンの変調量(露光条件)は、中間転写ベルト7上のパッチ画像の反射光量を測定するセンサ112によって得られた値からCPU18で最適な変調量を演算する。このとき、透明画像モードが選択されている場合には、後述するように、重畳させるパターンの変調量を補正してトナー載り量を少なくするように変調量が演算される。基準パターン発生回路22は、中間転写ベルト7上に基準濃度のパッチ画像を形成する際のハーフトーンデータを発生する回路である。
【0047】
変調量制御回路16は、CPU18で演算された最適な変調量の演算値を用いて機番パターンの変調を行う。変調された機番パターンは、コンパレート回路19により画像信号と合成される。
【0048】
機番パターンを重畳した画像信号は、その後、パルス巾変調回路20によって、濃度信号に比例したレーザー発光時間になるようにPWM変調される。PWM変調された走査線露光信号がレーザードライバー回路21に送られ、レーザービームが濃度階調を面積階調表現することにより、階調画像を形成する。
【0049】
図6の(b)に示すように、記録材Pに形成された機番パターンKpは、(a)に示すように小さな露光変調量dinで形成されて、イエローのごく薄い濃度に形成されている。機番パターンKpは、記録材Pの白地部に溶け込んで目では見えないが、フルカラー画像形成された後に、350nmのシャープバンドフィルターを通して観察することにより、イエローの信号だけを分離して判読できる。特許文献2に示されるように、コピーが禁じられた文書等の複写が行われた場合、複写物から機番パターンKpを判読して、どの画像形成装置で行なわれたのかを、特定することが可能である。
【0050】
ところで、写真やパンフレット等の鑑賞を主目的とする画像は、透明トナー画像を重ねて画像全体の光沢度を揃え、高グロスで画像の奥行き感や気品を感じさせるような画像とするのが好ましい。そのため、上記(1)の全面均一モード又は上記(2)の画像平坦化モードが選択される。
【0051】
しかし、情報画像に透明トナー画像が重ねられると、情報画像のトナー載り量は変化しないにもかかわらず、情報画像の見かけの濃度が高まってしまう。その結果、本来は背景色に対する視覚的な識別が困難になるように形成されていた情報画像が視覚的な識別が容易なものとなる。
【0052】
例えば、図4の(c)に示すように、記録材Pに、情報画像Jgが目立たないレベルのトナー載り量で形成されているとする。このとき、情報画像Jgの一部に透明トナー画像L2が重ねられると、重ねられた部分と重ねられない部分とで情報画像Jgの見かけの濃度が違ってくる。このため、記録材Pの地色に溶け込んで視覚的に識別できないはずの情報画像Jgが明確に識別されるようになって、出力画像の品質が損なわれる。
【0053】
ここで、有色トナー画像の上に透明トナー画像を載せた時、透明トナー画像を載せない場合に比べて反射濃度が上がるメカニズムを説明する。図7に示すように、45度入射光、垂直方向測定で情報画像の分光反射率を測定したとき、反射濃度Drは、分光反射率Rを用いて以下の式で表される。
Dr=−Log R
【0054】
つまり、反射濃度Drは、図7で示した測定において、分光反射量Rが多いと反射濃度が低くなる。すなわち、測定試料Sの表面が荒れていて、散乱光が多くなると反射濃度Drは低下する。一方、測定試料Sの表面が鏡面状で、入射光が全反射すると、分光反射量Rが殆ど無く、反射濃度Drは高くなる。
【0055】
有色トナー画像の上に透明トナー画像を載せると、有色トナー画像のみより定着画像の光沢度(グロス)が上がる。これは、合計のトナー載り量が増えることにより定着画像の表面層のトナーが均一に溶けて広がり、表面の平滑度が上がって光沢度を高めているのである。
【0056】
図8の(a)に示すように、有色トナー画像のみで画像形成した場合、トナー粒子の合間から記録材上の白地部分の地肌が見えていたりして、定着画像Saの表面形状が荒れている。そのため、入射光が散乱して、散乱光成分が増え、定着画像Saの反射濃度Drが低くなっている。
【0057】
図8の(b)に示すように、有色トナー画像に透明トナー画像を重ねて画像形成した場合、合計のトナー量が多いので、記録材上の白地部分の地肌が見えていなく、定着画像Sbの表面形状が平滑になっている。そのため、入射光が散乱せず、散乱光成分が減って、定着画像Sbの反射濃度Drが高くなっている。
【0058】
そして、有色トナー画像に透明トナー画像を重ねて出力された定着画像を画像形成装置100でコピーした場合、有色トナー画像のみの定着画像をコピーした場合よりも出力された定着画像における各色の反射濃度は高くなる。その理由は以下である。
【0059】
コピーする場合、図1に示すように画像読取部102が原稿の画像を読み取るとき、有色トナー画像に透明トナー画像を重ねた定着画像は、表面が平滑でグロスが高いため、散乱光成分は少ない。また、有色トナー画像のみの定着画像は、表面が平滑でないため、散乱光成分は多い。そして、散乱光成分が少ないと、散乱光成分が多い場合よりも反射濃度Drが高く検出されて、画像形成部101は、高濃度の画像を出力することになる。
【0060】
例えば、散乱光成分が発生しない鏡等をカラーコピーした場合、画像形成部101は、鏡の部分に対して各色ベタ画像を形成して、4色ベタブラックの画像が出力されてしまう。
【0061】
以上のことより、有色トナー画像に透明トナー画像を重ねた定着画像をコピーした場合、有色トナー画像のみの定着画像をコピーした場合よりも情報画像の機番パターンが濃く強調されて高濃度にコピー出力されてしまう。画像読取部102は、情報画像を読み取ってコピー禁止等の動作を行うために情報画像の濃度のイエロートナー画像を検出可能である。しかし、所定の閾値濃度以下のイエロー画像を読み取り画像から取り除いて、情報画像をコピーしないようにしている。この閾値濃度を超えるために、透明トナー画像を重ねた情報画像はコピーされてしまう。
【0062】
<実施例1の制御>
図9は実施例1における情報画像の露光変調量の設定の説明図である。図10は実施例1の制御のフローチャートである。
【0063】
図9に示すように、画像形成装置100のトータルの階調特性が4限チャートで表され、4限チャートに従って画像濃度の階調が再現される。図9中、第I象限は、原稿濃度を濃度信号に変換するリーダ特性を示す。第II象限は濃度信号をレーザー出力信号に変換するためのLUTを示す。第III象限はレーザー出力信号から出力濃度に変換するプリンタ特性を示す。第IV象限は原稿濃度から出力濃度の関係を示す。濃度の階調数は8bitのデジタル信号で処理しているので、256階調である。
【0064】
第III象限のプリンタ特性は、感光ドラム1bの感光特性、レーザースポット径や現像特性等の条件により様々な形になることが知られているが、ここでは、S字特性のプリンタ特性の場合で説明する。
【0065】
第IV象限の原稿濃度(Y軸)と出力濃度(X軸)の関係を示すトータルの階調特性をリニアにすることが忠実にフルカラー画像を再現する上で、重要なことである。そのためには、第III象限のLUTをS字に曲げる必要がある。
【0066】
有色トナー画像のみのプリンタ特性は、第III象限のAのようになる。そのときの第IV象限のトータル特性はCに対応し、階調のリニアリティは保存される。
【0067】
これに対して、有色トナー画像の階調の上に透明トナー画像を一定量載せた場合のプリンタ特性は、第III象限のBのようになる。そのときの第IV象限のトータル特性はDに対応し、階調のリニアリティは保存される。
【0068】
なお、第III象限のBは、イエロー単色で複数の階調のパッチ画像に最大濃度のベタ画像の透明トナー画像を重ね合わせて画像形成し(図11参照)、定着画像を反射濃度計で読み取って作成した。反射濃度計はX−Rite社製503分光濃度計を用い、操作パネル211を通じて測定値を手入力した。プリンタ制御部210が測定値に基づいてトナー載り量と反射濃度の関係を算出して、所望の特性(濃度リニア、明度リニアなど)が得られるように一次元LUT(階調補正テーブル)を作成した。
【0069】
機番パターンの変調信号は、第III象限に基づいて決定される。ここでは、機番パターンの変調信号は、定着画像のプリント出力濃度が30(H)レベルになるように決定した。
【0070】
有色トナー画像のみで画像作成する場合、階調Aにおける出力後の信号レベルが30Hになる時の入力信号値dinA(濃度段差レベル)が機番パターンに付与される濃度の変調信号となる。
【0071】
これに対して、有色トナー画像に透明トナー画像を重ねて画像形成する場合、階調Bにおける出力後の信号レベルが30Hになる時の入力信号値dinB(濃度段差レベル)が機番パターンに付与される濃度の変調信号となる。
【0072】
すなわち、図1に示すように、イエロートナー像のみの定着画像とイエロートナー像に透明トナー像を重ねた定着画像とが、画像読取部102において、同じ信号レベル=30Hで読み取られるように、機番パターンの露光の入力信号値を設定した。その結果、それぞれの機番パターンの露光濃度でパッチ画像を形成した場合、イエロートナーのトナー載り量は、イエロートナー像に透明トナー像を重ねた定着画像のほうがイエロートナー像のみの定着画像よりも少なくなる。パッチ画像を中間転写ベルト7に一次転写して反射光量センサ110で検出したときに、入力信号値dinA、dinBに対応した信号が検出される(Y軸マイナス方向)。
【0073】
有色トナー画像のみの場合には、入力信号値dinAで機番パターンを露光するが、有色トナー画像に透明トナー画像を重ねる場合には、入力信号値dinBで機番パターンを露光する。これにより、定着後の画像濃度は、見かけ上もほぼ同じになり、透明トナー画像が重なった部分でも機番パターンが目立たなくなり、コピー画像に機番パターンが目立つこともなくなった。
【0074】
図2を参照して図10に示すように、プリンタ制御部210は、メイン電源をオンしてから、ウォームアップ終了後に機番パターンの露光変調量(din)を決める制御を自動的に起動して実行する。
【0075】
プリンタ制御部210は、まず、情報画像として機番パターンを形成する(S11)。そして、出力画像に対して透明トナー画像を重ねない通常モード(S12のNo)の場合、入力信号値dinA(濃度段差レベル)で機番パターンを作成する(S18)。濃度段差レベルは、読み取りのSN比を確保しつつ確実に見えなくするため、記録材Pの地色のイエロー濃度に対する差分として設定される。
【0076】
有色トナー画像に透明トナー画像を重ねる透明画像モードの場合(S12のYes)、プリンタ制御部210は、透明トナー画像が、画像形成領域全面に作像されるか否かを判断する(S13)。プリンタ制御部210は、操作パネル211を通じた操作又は外部から送信されてくるプリント情報から、通常モード、(1)全面均一モード、(2)画像平坦化モード、(3)部分透明画像モードの区別を判別する。プリンタ制御部210は、この判別結果に基いて、プリント出力の場合、透明トナー画像を全面に作像するか、または一部に作像するかを決める。ただし、画像読取部102で原稿画像を読み取って行うコピー出力の場合、透明トナー画像は、自動的に(1)全面均一モードによって作像される。
【0077】
(1)全面均一モード又は(2)画像平坦化モードの場合(S13の全面)、プリンタ制御部210は、一様に入力信号値dinBで機番パターンを作成する(S17)。
【0078】
しかし、上記の(3)部分透明画像モードの場合(S13の一部)、プリンタ制御部210は、透明トナー画像が重なっている機番パターンの箇所と重なっていない箇所とを分ける(S14)。そして、重なっている箇所(S15)は、入力信号値dinBで作成する(S17)。そして、透明トナー画像が重なっていない箇所(S16)は、入力信号値dinAで作成する(S18)。
【0079】
図4の(c)に示すように、透明トナー画像L2を記録材Pに対して星形の部分だけ使用する画像形成では、星形の内側と外側とで入力信号値dinA、dinBを異ならせた複数種類の機番パターン(Jg)の打ち方を持つ。星形の透明トナー画像L2に重なる情報画像Jgと重ならない情報画像Jgとに対して異なる露光変調量(din)を付与する。
【0080】
入力信号値dinAで露光した場合は、入力信号値dinBで露光した場合よりプリンタ出力後の1画素中のトナー載り量は多くなっている。入力信号値dinA、dinBを用いた露光装置3bの制御は、レーザーパワーの出力レベルを変えても良いし、パルス長さで変えても良い。実施例1では、レーザー光量一定でパルス長さを階調に応じて変調するPWM変調を使用した。
【0081】
以上の操作を通じて機番パターンの場所ごとの入力信号値dinA、dinBが設定された情報画像データが出力画像データに合成される(S19)。出力画像の白地部に該当する情報画像データのみが出力画像データに合成され、出力画像の有色トナー画像に重なる部分の情報画像データは捨てられる。
【0082】
実施例1では、有色トナー画像のみの画像形成では、階調Aの特性に基づいて機番パターンに入力信号値dinAが付与される。これに対して、有色トナー画像に透明トナー画像を重ねる画像では階調Bの特性に基づいて機番パターンに入力信号値dinBが付与される。このため、透明トナー画像を有色トナー画像の上に載せた場合に機番パターンが濃くて目立つということがなくなる。
【0083】
また、プリンタの出力レベルを30Hとして、透明トナー画像の有り無しで同じとしたため、機番パターンの打ち方を変化させても、機番パターンを画像読取部102で問題無く検出できた。
【0084】
なお、機番パターンの露光変調量(din)を決める制御は、ジョブを受信するごとの前回転時や、ジョブ終了後の後回転時に実行してもよい。また、画像形成装置100は、透明トナー画像を作像する画像形成部が、有色トナー画像を作像する画像形成部から切り離しされた画像形成システムとしても良い。
【0085】
<実施例2>
図11は実施例2で用いるカラーチャートの説明図である。実施例1では、機番パターンのプリント出力濃度に記録材Pの背景色に対する30(H)レベルの濃度差を持たせる例を説明したが、このレベルはプリンタの特性変動に合わせて、最適なレベルに設定することが望ましい。
【0086】
特許文献2には、画像形成条件の経時変化に対応するために、定期的に、情報画像の濃度相当のパッチ画像を形成して反射光量センサでトナー載り量を測定することにより、情報画像の濃度を定期的に設定し直す制御が示される。
【0087】
これに対して、実施例2では、図2に示すように、操作パネル211を通じて手動設定モードを実行させて、情報画像に適用する露光の入力信号値dinA、dinBを手入力で設定する。実施例1と同様に、露光の入力信号値dinAは、透明トナー画像が重ならない領域で情報画像に適用され、露光の入力信号値dinBは、透明トナー画像が重なる領域で情報画像に適用される。
【0088】
操作パネル211を通じて手動設定モードを選択すると図11に示すカラーチャートChが出力される。カラーチャートChには、記録材Pに階調を4/256ずつ異ならせてPWM変調の露光を行った出力階調16〜64の13個のパッチ画像L1〜L13が配置され、半分の領域が最大出力階調(ベタ画像)の透明トナー画像L2で覆われている。パッチ画像L1〜L13には、それぞれ識別番号が付されている。
【0089】
操作者は、出力されたカラーチャートChのパッチ画像L1〜L13について、それぞれ透明トナー画像L2に覆われていない部分と覆われている部分とで反射濃度を測定する。そして、情報画像のために規定された反射濃度に合致するパッチ画像の識別番号を、透明トナー画像が重ならない場合と重なる場合とについて、領域操作パネル211に手入力する。入力されたパッチ画像の識別番号に基づいてプリンタ制御部210は、透明トナー画像が重ならない場合の露光の入力信号値dinAと、透明トナー画像が重なる場合の露光の入力信号値dinBを設定する。
【0090】
実施例2では、反射濃度計はX−Rite社製503分光濃度計を用い、透明トナー画像が重ならない場合と透明トナー画像が重なる場合とで反射濃度差が0.05以内となるように設定を行った。
【0091】
そして、手動設定後は、中間転写ベルト7上に一次転写されたパッチ画像のトナー載り量を反射光量センサ110で読み取って、機番パターンが設定時のトナー載り量で再現されるように、露光の入力信号値dinBが自動調整される。プリンタ制御部210は、設定した露光の入力信号値dinBでパッチ画像を形成し、反射光量センサ110で読み取って、反射光量値を、トナー載り量の判断の基準値として取り込む。そして、定期的に入力信号値dinBでパッチ画像を形成して反射光量を測定し、反射光量が基準値に収束するように、入力信号値dinBを調整する。このようにして、機番パターンの画像濃度は、目立たないで、しかも読み取りのSN比が十分に確保できるレベルに保たれる。
【0092】
なお、画像読取部102を用いてカラーチャートChのパッチ画像L1〜L13を読み取って実施例2の制御を自動的に実行することも可能である。画像読取部102は、情報画像を読み取ってコピー禁止等の動作を行うことができるように、30(H)レベルのイエロートナー画像で形成された情報画像を読み取り可能である。
【0093】
しかし、上述したように、記録材の白地を背景とする30(H)レベルの濃度差のイエロートナー画像に対して、画像読取部102では、パッチ画像L1〜L13の微妙な濃度差を正確に測定できない。
【0094】
従って、反射濃度計の代わりに画像読取部102を用いる場合には、地色が青の記録材を用いてカラーチャートChを形成することで、イエローの濃度コントラストを際立たせてもよい。あるいは、画像読取部102の露光ランプ201の出力光量を一時的に高めてイエローの濃度コントラストを高くした状態で読み取りを行わせてもよい。
【0095】
<実施例3>
図12は実施例3における情報画像の説明図である。実施例3は、実施例1と同様に、画像形成装置100においてイエロートナー画像を用いて目立たないように情報画像を画像の白地部にプリントする。そして、実施例1と同様に、透明トナー画像が重ねられる情報画像と重ねられない情報画像とでイエロートナー画像のトナー載り量を異ならせて、透明トナー画像が重なっても情報画像を目立たせない。しかし、情報画像は機番パターンではなく、特許文献2に示されるように、ドットパターンを用いたコード情報にして画面全体に分散させている。
【0096】
画像形成装置100の全体構成、制御、情報画像と透明トナー画像の重なり検出、重なりの有無に応じた情報画像に対する露光の入力信号値dinA、dinBの付与等は実施例1と同様に行うため、説明を省略する。
【0097】
図12の(a)に示すように、イエロートナー画像で形成されたアドオンライン501〜510は、それぞれ4画素の幅であり、副走査方向にd2=16画素の略一定周期で並んでいる。1本のアドオンラインには4ビツトの数値データが埋め込まれているため、8本のアドオンライン502〜509は一組で、4×8=32ビツトの数値データを記録できる。アドオンライン501〜510は、記録材の副走査方向に繰返し形成され、アドオンライン501とアドオンライン509には同一の数値データが埋め込まれている。
【0098】
図12の(b)に示すように、アドオンライン502とアドオンライン503とは副走査方向に隣合っている。アドオンライン502には、アドオンライン503に埋め込まれた数値データを読み込む際のクロック(目印)となる単位ドット502a、502bが一定距離d2=32画素で繰り返し形成されている。
【0099】
アドオンライン503には、数値データを表すための単位ドット503aが単位ドット502a、502bの間隔に1個だけ配置される。単位ドット502aから単位ドット503aまでの距離に応じて4ビットの数値データが読み取られる。
【0100】
単位ドット502aと単位ドット503aとによって表される数値データは、図中に0〜Fで示される単位ドット502aと単位ドット503aの位相差によって決定される。単位ドット503aは数値データ‘2’を表している。仮に、0〜Fのポジション中、単位ドット503aが最左端にあればデータ‘0’を、単位ドット503aが最右端にあればデータ‘F’を表すことになる。
【0101】
図12の(c)に示すように、単位ドット502a、502b、503aは、アドオンライン上の4画素の幅で8画素の長さを持たせてある。単位ドットは、8×4画素で形成され、前後に2画素幅の隙間を持たせた主走査方向の長さが4画素のドットパターンである。8×4画素を単位ドットとする理由は、濃度が低くて読み取りのSN比が低いため、これ以下の解像度で形成すると単位ドット503aを読み取り難い場合があるためである。
【0102】
アドオンライン501〜510は、人間の目がYのトナーで描かれたパターンに対しては識別能力が低いことを利用して、イエロートナーのみで付加される。アドオンライン501〜510の主走査方向のドット間隔と、副走査方向の記録情報の繰返間隔とは、対象とする特定原稿において、単位ドットが確実に識別されて全情報が解読されるように定めてある。
【0103】
アドオンライン501〜510には、複写機固有の製造番号、または同製造番号を符号化あるいは記号化したものを、記録している。このため、不正複写が行われた場合には、不正複写物を鑑定してアドオンライン501〜510から付加情報を読み出すことによって、不正複写に使用された複写機を特定できる。
【0104】
なお、出力画像にアドオンライン501〜510を付加する際に、相補的な画像信号変調を小領域で組合わせて、全体として濃度を保存することで、色味の変化をなくして画質劣化を低減してもよい。相補的な画像信号変調によって、ミクロ視する場合は、付加パターンを見付け易くなり、付加情報の解読がより確実となる利点もある。
【0105】
<実施例4>
図13は実施例4における情報画像の説明図である。実施例4は、実施例1と同様に、画像形成装置100においてイエロートナー画像を用いて目立たないように情報画像を画像の白地部にプリントする。そして、実施例1と同様に、透明トナー画像が重ねられる情報画像と重ねられない情報画像とでイエロートナー画像のトナー載り量を異ならせて、透明トナー画像が重なっても情報画像を目立たせない。しかし、情報画像は機番パターンではなく、特許文献4に示されるように、LVBC(Low Visibility BarCodes:低可視バーコード)である。
【0106】
低可視バーコードは、実施例1の機番パターンや実施例3のアドオンラインに比較して十分な情報量のデータ埋め込みを実現できる。また、埋め込まれた情報が後にデジタル情報として確実に抽出可能である。また、複写に際して、原稿の回転、拡大、縮小、部分的削除、複写による信号の鈍り、汚れなどの情報抽出を妨げる要因に対するある程度の耐性がある。さらに、複写禁止原稿の複写を防止するために、複写時に抽出可能なリアルタイム性、あるいはそれに準ずる高速性がある。
【0107】
画像形成装置100の全体構成、制御、情報画像と透明トナー画像の重なり検出、重なりの有無に応じた情報画像に対する入力信号値dinA、dinBの付与等は実施例1と同様に行うため、説明を省略する。
【0108】
図13の(a)に示すように、プリント出力物の画像面全体に多数のLVBCが埋め込まれている。プリント出力物に本来描画されるイメージの他に、一見ランダムに埋め込まれた多数のLVBCのドットが見え、このLVBCのドットの1つ1つに付加情報の数値データが埋め込まれている。付加情報は、利用のされかたによって特性の異なる2種類の領域に分けられ、個々に抽出可能な形で埋め込まれる。
【0109】
図13の(b)に示すように、第1の領域2901は、複写禁止を示す情報を含み、画像読取部102を用いたコピー処理時に高速で抽出して利用される情報が格納される。複写禁止情報の抽出処理は、どのような原稿をコピーする際にも必ず実施されるため、抽出処理の遅延は複写速度全体に影響する。よって、画像読取部102のスキャン処理と同程度の解析速度が要求される。
【0110】
第1の領域2901は、小さな四角の領域で、第2の領域2902の大きな四角の領域の中に周期的に埋め込まれているが、いずれも同じデータが格納されている。第1の領域2901を繰り返し何度も埋め込むことにより、冗長性を増し、ノイズや誤差に対する信頼性を向上している。
【0111】
第2の領域2902は、追跡情報が埋め込まれる。追跡情報は、画像形成装置100に複写履歴として保存され、情報漏えい発覚時に管理者によって解析処理が行われる際に抽出処理が行われる。このため、通常の複写操作時の動作には必要がなく、リアルタイム性を保障しなくても複写速度全体に影響せず、ある程度の速度低下は許容される。
【0112】
追跡情報として埋め込む情報は、原稿を作成したユーザの個人名や組織名、プリントジョブの送信元アドレス、MACアドレス、設置場所、印刷日時、印刷時刻といった情報を含むため、データサイズが大きい。
【0113】
第2の領域2902にも同様に同じ四角の領域が周期的に埋め込まれている。第1の領域2901には第2の領域の埋め込み情報が書き込まれることはなく、それぞれ排他的に書き込まれる。2903は第1の領域2901は、サイズ2904を持たせて形成され、第2の領域2902は、サイズ2905を持たせて形成される。
【0114】
LVBCでは、付加情報を埋め込むためにグリッド(格子)と呼ばれるドットパターンが印刷される。
【0115】
図13の(c)に示すように、縦横の仮想線3901の各交点にドット重心3902が配置されてグリッドを構成する。それぞれのドット重心3902を中心としてドットポジション0〜7が設定され、付加情報としての3ビット数値データをドットポジション0〜7に対応させてドット3903が1個配置される。
【0116】
従って、グリッドそのものは縦横等間隔に離れたドットの集合体である。グリッドに置かれた各ドット間の最短距離を仮想的な線(ガイドライン)で結ぶと、一定の間隔で縦横に引かれた仮想的な格子模様が出現する。付加情報は、グリッドに配置されたドットに対して上下左右8方向に変位することによって埋め込まれる。重心3902にはドットを置かない。実際には、重心3902から離れた位置にドット3903を変位させて配置する。
【0117】
例えば、010111110011Bという二値情報を埋め込む場合、010111110011Bは、3ビットずつ分解されて、010,111,110,011に分けられる。各3ビットに対してデシマル変換を行って、2,7,6,3が得られ、グリッドを構成する各ドットは、2,7,6,3の位置に変位して配置される。このような処理の繰り返しによって、LVBCでは、2000バイト程度の付加情報を画像面に埋め込むことが可能である。さらに、付加情報を定期的に繰り返して何度も埋め込むことによって冗長性が増し、画像イメージとの誤認識やシートに対する汚れ、しわ、部分的破壊に対して信頼性を向上できる。
【0118】
<実施例5>
図14は実施例5における地紋画像の説明図である。実施例5は、画像形成装置100において、ハーフトーン画像を用いて目立たないように地紋画像を画像の白地部にプリントする。地紋画像は、実施例1の情報画像とは異なるハーフトーンの一様な濃度の画像であるが、透明トナー画像が重ねられると、透明トナー画像が重なった部分と重ならない部分とで見かけの濃度が違ってくる。このため、透明トナー画像が重なった部分が重ならない部分よりも高濃度のハーフトーンに見えて全体が一様なハーフトーンではなくなり、透明トナー画像が重なった部分が際立ってしまう。そこで、実施例5では、実施例1と同様に、透明トナー画像が重ねられる地紋画像と重ねられない地紋画像とでトナー載り量を異ならせて、全体の地紋画像が一様な濃度に見えるようにする。
【0119】
画像形成装置100の全体構成、制御、情報画像と透明トナー画像の重なり検出、重なりの有無に応じた情報画像に対する入力信号値dinA、dinBの付与等は実施例1と同様に行うため、説明を省略する。
【0120】
図1に示す画像形成装置100は、地紋画像モードが設定されると、図14の(a)に示すように、記録材Pに形成された画像の白地部に、ブラックトナー画像を用いてハーフトーンの地紋画像Gm1、Gm2を出力する。
【0121】
地紋画像Gm1は、リーダ画像処理部209でノイズ点として無視される大きさのドットを用いて形成される。地紋画像Gm2は、COPYというメッセージのアウトラインの内側を占めて形成され、リーダ画像処理部209で孤立点として読み取られるる大きさのドットを用いて形成される。
【0122】
地紋画像Gm1、Gm2は、それぞれ異なる大きさのドットで形成されるが、ドットの密度を異ならせて見かけ上、同一の濃度階調となっている。地紋画像Gm1は、地紋画像Gm2よりもドット密度を高めて形成されているので、両者の見かけのハーフトーン濃度は等しく形成されている。
【0123】
このように形成されたオリジナル画像を画像形成装置100でコピーすると、図14の(b)に示すように、画像読取部102が地紋画像Gm1を読み取らないため、地紋画像Gm2のみがコピーされる。その結果、解像度の低い地紋画像で形成されたCOPYというメッセージが出現する。
【0124】
そして、地紋画像Gm1は、地紋画像Gm2についても、図4の(c)に示すように、透明トナー画像が重ねられると、透明トナー画像が重ねられない部分との間に濃度差が観察されてハーフトーンの均一さが損なわれて地紋画像の画像品質が低下する。見かけの濃度が高くなって地紋画像が目立ったり、画像面の明るさが暗くなったりする。
【0125】
このため、実施例1と同様に、透明トナー画像が重ねられる領域を抽出して、その内側でだけトナー載り量を低くした地紋画像を形成する必要がある。
【0126】
なお、地紋画像Gm1、Gm2は、ドットの大きさを異ならせる他、特許文献5に示されるように、面積階調に変調されたメッシュパターンのラインの細さを異ならせて形成してもよい。
【符号の説明】
【0127】
1a、1b 感光ドラム、2a、2b 帯電ローラ
3a、3b 露光装置、4a、4b 現像装置
5a、5b クリーニング装置、6a、6b 一次転写ローラ
7 中間転写ベルト、8 二次転写ローラ
9 定着装置、10 CCD
209 リーダ画像処理部、210 プリンタ制御部
211 操作パネル、P 記録材、Pa、Pb 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、背景色に対する視覚的な識別が困難になるように形成される情報画像が付加された出力画像の露光画像データを用いて前記感光体を露光して静電像を形成する露光装置と、有色トナーを用いて前記静電像を有色トナー画像のトナー像に現像する現像手段と、記録材上で前記有色トナー画像の上に位置する透明トナー画像のトナー像を形成する透明トナー画像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記透明トナー画像が重なる前記情報画像のトナー載り量を、前記透明トナー画像が重ならない前記情報画像のトナー載り量よりも少なくするように前記露光画像データを形成する画像処理手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記有色トナー画像の全体に前記透明トナー画像を重ねて出力する全体透明画像モードを選択可能であって、
前記画像処理手段は、前記全体透明画像モードが選択された場合には、前記情報画像のトナー載り量を、前記全体透明画像モードが選択されない場合よりも少なくなるように前記露光画像データを形成することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記有色トナー画像の一部分に前記透明トナー画像を重ねて出力する部分透明画像モードを選択可能であって、
前記画像処理手段は、前記部分透明画像モードが選択された場合には、前記情報画像における前記透明トナー画像が重なる部分のトナー載り量を、前記透明トナー画像が重ならない部分よりも少なくなるように前記露光画像データを形成することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記情報画像は、前記有色トナー画像に重ならない白地部分にイエロートナーを用いて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項5】
感光体と、部分的にドットの大きさが異なっても視覚的に全体が一様な濃度に識別される地紋画像が付加された出力画像の露光画像データを用いて前記感光体を露光して静電像を形成する露光装置と、有色トナーを用いて前記静電像を有色トナー画像のトナー像に現像する現像手段と、記録材上で前記有色トナー画像の上に位置する透明トナー画像のトナー像を形成する透明トナー画像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記透明トナー画像が重なる前記地紋画像のトナー載り量を、前記透明トナー画像が重ならない前記地紋画像のトナー載り量よりも少なくなるように前記露光画像データを形成する画像処理手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−99934(P2011−99934A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253357(P2009−253357)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】