説明

画像形成装置

【課題】記録媒体の画像形成面に付着させた粒子の脱離を抑制し、スタッカーブロッキングの発生を抑制する。
【解決手段】定着ドラム184により搬送される用紙122と接触する位置に、用紙122の記録面にマット剤粒子を付与する粒子付与装置200と、粒子付与装置200よりマット剤粒子を付与した後に用紙122の記録面を押圧する押込ローラ220とを設ける。粒子付与装置200は、定着ドラム184上の用紙122の記録面に接触する定着ローラ188と、第1ロッド206と第2ロッド208により支持されて定着ローラ188に接触すると共に、液体中に多数のマット剤粒子が分散された粒子分散液210Lが含浸されたウエブ204と備えている。ウエブ204から定着ローラ188を介して用紙122の記録面に付与されたマット剤粒子210Pは、押込ローラ220により押圧されることで、用紙122に押し込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙等の記録媒体にインクジェット記録ヘッドによりインク滴を吐出する画像形成装置が知られている。
【0003】
この画像形成装置では、記録媒体にインク滴を吐出し、さらに記録媒体上のインク滴を加熱により乾燥、定着した後、記録媒体が排紙部に順次排出されて積載される。このような画像形成装置では、排紙部に記録媒体が積載された際に、上下に重なる記録媒体間でインクが付着するブロッキングという現象(以下、この現象をスタッカーブロッキングと呼ぶ。)が発生する場合がある。特に、高生産性のインクジェット記録装置では、インクの乾燥不足、又は定着不足が生じやすく、スタッカーブロッキングが発生しやすい。
【0004】
下記特許文献1には、印刷直後で乾燥前の印刷物のインク上に粉体を塗布する粉体塗布方法が開示されている。この方法では、回転ローラの外周面に粉体を供給し、粉体を回転ローラの外周面に吸着保持させ、粉体が吸着保持された回転ローラに印刷直後の印刷物を送り入れることで、印刷物の印刷画像面にインクの粘性により粉体を転移する。
【0005】
下記特許文献2には、塗り付けローラの表面に所定間隔で形成された複数の凹部にマット剤を保持させ、印刷物にマット剤を所定間隔で斑点状に塗布する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−011654号公報
【特許文献2】特許4010577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では、回転ローラが一旦印刷物に転写した粉体を拭き取ってしまうために、粉体の転写効率が低く十分な性能を得ることができない。また、印刷物の印刷画像面のインク上に粉体が転写された後で、記録媒体を捌いたり、記録媒体に対してシーズニングのための風を吹き付けたときに、粉体が脱離する可能性がある。
【0008】
上記特許文献2では、塗り付けローラの凹部にインクが徐々に溜まりやすく、良好な塗布性(必要なマット剤付与量の転写性)を維持することが難しい。また、印刷物にマット剤を塗布した後、記録媒体を捌いたり、記録媒体に対してシーズニングのための風を吹き付けたときに、マット剤が脱離する可能性がある。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、記録媒体の画像形成面に付着させた粒子の脱離を抑制し、スタッカーブロッキングの発生を抑制することができる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の画像形成装置は、記録媒体に液滴を吐出して画像を形成する液滴吐出装置と、前記記録媒体を搬送する搬送体と、多数の粒子を前記記録媒体の画像が形成された面に付与する粒子付与手段と、前記粒子付与手段により前記粒子が付与された後で、前記記録媒体の画像が形成された面に付与された粒子に対して圧力を加えることによって前記粒子を前記記録媒体に押し込む押込ローラと、を有するものである。
【0011】
上記の発明によれば、液滴吐出装置により記録媒体に液滴を吐出して画像を形成し、粒子付与手段により記録媒体の画像が形成された面に多数の粒子を付与する。さらに、粒子付与手段により多数の粒子が付与された後で、押込ローラにより記録媒体の画像が形成された面に付与された粒子に対して圧力を加えることによって、粒子が記録媒体に押し込まれる。これによって、記録媒体の画像が形成された面上の粒子の位置が定着される。このため、その後の工程で記録媒体を捌いたり、記録媒体に対してシーズニングのための風を吹き付けたときに、記録媒体の画像形成面に付着させた粒子の脱離が抑制され、スタッカーブロッキングの発生を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の発明において、前記粒子付与手段は、前記搬送体上の前記記録媒体に接触するように配置されると共に前記粒子が供給される付与ローラを備え、前記付与ローラを介して前記記録媒体の画像が形成された面に前記粒子が付与されるものである。
【0013】
上記の発明によれば、粒子付与手段は、搬送体上の記録媒体に接触するように配置される付与ローラを備えており、付与ローラに粒子が供給され、付与ローラの表面に付着した粒子が記録媒体の画像が形成された面に接触することで、粒子が記録媒体の画像が形成された面に付与される。すなわち、付与ローラを介して粒子を記録媒体の画像が形成された面に付与することで、粒子による装置内の汚染を最小限に抑えることができる。
【0014】
請求項3に記載の画像形成装置は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記押込ローラは、前記記録媒体の表面から前記粒子を前記粒子の平均粒径の20〜80%の深さに押し込むものである。
【0015】
上記の発明によれば、押込ローラが、記録媒体の表面から粒子を粒子の平均粒径の20〜80%の深さに押し込むことで、記録媒体の画像が形成された面上の粒子の位置がより確実に定着される。このため、記録媒体を捌いたり、記録媒体に対してシーズニングのための風を吹き付けたときに、記録媒体の画像形成面に付着させた粒子の脱離がより確実に抑制される。
【0016】
請求項4に記載の画像形成装置は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発明において、前記押込ローラの表層は、アスカーC硬度が70°以下で厚さが1mm以上のゴム層と、前記ゴム層に巻き付けられ、厚さが50μm以上200μm以下の表面フィルム層と、を有するものである。
【0017】
上記の発明によれば、押込ローラの表層が、上記ゴム層とこのゴム層に巻き付けられた上記表面フィルム層と、を有することで、押込ローラにより記録媒体の画像が形成された面の粒子に対して圧力を加えたときに、記録媒体に粒子がより効果的に押し込まれ、粒子が記録媒体から押込ローラに転移することが抑制される。
【0018】
請求項5に記載の画像形成装置は、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の発明において、前記付与ローラが前記記録媒体に対して加える圧力Pと、前記押込ローラが前記記録媒体に対して加える圧力Pとの関係が、P≧Pを満たすものである。
【0019】
上記の発明によれば、付与ローラが記録媒体に対して加える圧力Pと、押込ローラが記録媒体に対して加える圧力Pとの関係が、P≧Pを満たすことで、付与ローラによって記録媒体の画像が形成された面に十分に押し込められなかった粒子に対して、押込ローラによって同等かさらに強い圧力を加えることで、記録媒体の画像が形成された面に粒子を十分に押し込むことができる。
【0020】
請求項6に記載の画像形成装置は、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の発明において、前記付与ローラが前記記録媒体に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sと、前記押込ローラが前記記録媒体に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sとの関係が、S≧Sを満たすものである。
【0021】
上記の発明によれば、付与ローラが記録媒体に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sと、押込ローラが記録媒体に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sとの関係が、S≧Sを満たすことで、付与ローラによって記録媒体の画像が形成された面に十分に押し込められなかった粒子に対して、押込ローラによって同等かさらに広い接触幅をもって圧力を加えることで、記録媒体の画像が形成された面に粒子を十分に押し込むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成としたので、記録媒体の画像形成面に付着させた粒子の脱離を抑制し、スタッカーブロッキングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】図2に示す画像形成装置に用いられる粒子付与装置及び押込ローラを示す構成図である。
【図3】図2に示す画像形成装置に用いられる粒子付与装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置に用いられる粒子付与装置を示す構成図である。
【図5】(A)は、付与ローラのみを用いて薄紙の画像形成面に押し込められたマット剤粒子の状態を示す図であり、(B)は、付与ローラと押込ローラを用いて薄紙の画像形成面に押し込められたマット剤粒子の状態を示す図である。
【図6】(A)は、付与ローラのみを用いて厚紙の画像形成面に押し込められたマット剤粒子の状態を示す図であり、(B)は、付与ローラと押込ローラを用いて厚紙の画像形成面に押し込められたマット剤粒子の状態を示す図である。
【図7】付与ローラのみを用いたときの薄紙の画像形成面へのマット剤粒子の埋め込み深さと、付与ローラと押込ローラを用いたときの薄紙の画像形成面へのマット剤粒子の埋め込み深さを示すグラフである。
【図8】付与ローラのみを用いたときの厚紙の画像形成面へのマット剤粒子の埋め込み深さと、付与ローラと押込ローラを用いたときの厚紙の画像形成面へのマット剤粒子の埋め込み深さを示すグラフである。
【図9】押込ローラのゴム層のアスカーC硬度と記録媒体の画像形成面に埋め込まれたマット剤粒子の割合との関係を示すグラフである。
【図10】押込ローラのゴム層の厚さと記録媒体の画像形成面に埋め込まれたマット剤粒子の割合との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置に用いられる粒子付与装置を示す構成図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る画像形成装置に用いられる粒子付与装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の一例について説明する。
【0025】
<全体構成>
以下に、図1を参照して、本発明の第1実施形態の画像形成装置を実施するためのインクジェット式の画像形成装置の構成例を示して説明する。図1は画像形成装置全体を示す概念図(側面)である。
【0026】
インクジェット記録装置1は、描画部114の圧胴(描画ドラム170)に保持された用紙122に液滴吐出装置の一例としてのインクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kから複数色のインク(液滴)を吐出して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの吐出前に記録媒体としての用紙122上に処理液(インク凝集処理液)を付与し、処理液とインクを反応させて用紙122上に画像形成を行なう2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0027】
インクジェット記録装置1は、主として、給紙部110、処理液付与部112、描画部114、乾燥部116、定着部118、及び排紙部120を設けて構成されている。
【0028】
給紙部110は、用紙122を処理液付与部112に供給する機構であり、給紙部110には、枚葉紙である用紙122が積層されている。給紙部110には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から用紙122が一枚ずつ処理液付与部112に給紙される。インクジェット記録装置1では、用紙122として、紙種や大きさ(媒体サイズ)の異なる複数種類の用紙122を使用することができる。なお、本実施形態では、用紙122として、枚葉紙(カット紙)を用いた場合を説明する。
【0029】
処理液付与部112は、用紙122の記録面(画像形成面)に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部114で付与されるインク中の色材を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0030】
図1に示すように、処理液付与部112は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、用紙122を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)を備え、この保持手段の爪と処理液ドラム154の周面の間に用紙122を挟み込むことによって用紙122の先端を保持できるようになっている。
【0031】
処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより用紙122を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
【0032】
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられている。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニロックスローラと、アニロックスローラと処理液ドラム154上の用紙122に圧接されて計量後の処理液を用紙122に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら用紙122に塗布することができる。処理液塗布装置156よりも用紙122の搬送方向下流側には、用紙122に塗布された処理液を乾燥させる温風ヒータ158とIRヒータ160が設けられている。
【0033】
処理液付与部112で処理液が付与された用紙122は、処理液ドラム154から中間搬送部124(渡し胴130)を介して描画部114の描画ドラム170へ受け渡される。描画部114は、描画ドラム170、及びインクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)を備える。描画ドラム170に固定された用紙122は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kからインクが付与される。
【0034】
インクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kはそれぞれ、用紙122における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kは、用紙122の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0035】
描画ドラム170上に密着保持された用紙122の記録面に向かって各インクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部112で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する顔料、樹脂粒子が凝集し、凝集体が形成される。これにより、用紙122上での顔料流れなどが防止され、用紙122の記録面に画像が形成される。
【0036】
描画部114で画像が形成された用紙122は、描画ドラム170から中間搬送部126を介して乾燥部116の乾燥ドラム176へ受け渡される。乾燥部116は、凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム176と、複数のIR(赤外線)ヒータ178及び各IRヒータ178の間に配置された温風ヒータ180と、を備えている。
【0037】
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)を備え、この保持手段によって用紙122の先端を保持できるようになっている。温風ヒータ180から用紙122に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各IRヒータの温度は温度センサによって検知され、図示しない制御部に温度情報として送られる。この温度情報に基づいて制御部が温風の温度と風量、各IRヒータの温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件が実現される。
【0038】
なお、乾燥ドラム176の表面温度は50℃以上に設定してもよい。用紙122の裏面から加熱を行なうことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。なお、乾燥ドラム176の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム176の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
【0039】
また、乾燥胴温度(乾燥ドラム176の表面温度)が高い(強く乾燥する)方が用紙122の伸縮が少ないことが判明しているので、上記の安全性を損なわない程度に乾燥ドラム176の表面温度は高い方がカックルの影響を少なく抑えることができる。
【0040】
乾燥ドラム176の外周面に、用紙122の記録面が外側を向くように(即ち、用紙122の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、用紙122のシワや浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを防止することができる。
【0041】
乾燥部116で乾燥処理が行なわれた用紙122は、乾燥ドラム176から中間搬送部128を介して定着部118の定着ドラム184へ受け渡される。中間搬送部128の渡し胴130には、用紙122の記録面に温風を吹き付ける温風ヒータ(図示省略)を設けてもよい。中間搬送部128の渡し胴130に温風ヒータを設けることで、インクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kにより用紙122にインクを吐出した直後に、凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させることができる。
【0042】
定着部118は、用紙122を保持して搬送する搬送体の一例としての定着ドラム184、付与ローラの一例としての定着ローラ(加熱ローラ)188、押込ローラ220及びインラインセンサ190で構成されている。
【0043】
定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)を備え、この保持手段によって用紙122の先端を保持できるようになっている。この定着ドラム184の回転により、用紙122は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して定着ローラ188による定着処理とインラインセンサ190による検査が行なわれる。
【0044】
定着ローラ188は、インクを加熱加圧することによって、インク中の樹脂粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)を溶着し、インクを皮膜化させるためのローラ部材であり、用紙122を加熱加圧するように構成される。
【0045】
具体的には、定着ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。定着ローラ188は、用紙122が保持された定着ドラム184の回転に伴って従動回転するように構成されている。これにより、用紙122は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば0.15MPa)でニップされ、定着処理が行なわれる。
【0046】
また、定着ローラ188は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。
【0047】
これらの加熱ローラで用紙122を加熱することによって、インクに含まれる樹脂粒子のTg(ガラス転移温度)以上の熱エネルギーが付与され、樹脂粒子が溶融されることにより、用紙122の凹凸に押し込み定着が行なわれるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢が得られる。
【0048】
また、定着ドラム184と対向する位置には、多数の粒子の一例としてのマット剤粒子を付与する粒子付与手段の一例としての粒子付与装置200が配設されている。粒子付与装置200は、定着ドラム184に保持されて搬送される用紙122の記録面(画像形成面)に接触する付与ローラの一例としての定着ローラ188と、定着ローラ188が用紙122と接触する位置よりも定着ローラ188の回転方向上流側に配置されて定着ローラ188にマット剤粒子を供給する供給ユニット202と、を備えている。この粒子付与装置200では、供給ユニット202からマット剤粒子が定着ローラ188の表面に供給され、定着ローラ188が回転することで、用紙122の記録面(画像形成面)にマット剤粒子が付与されるようになっている。この粒子付与装置200については後述する。
【0049】
定着ローラ188より用紙搬送方向下流側には、用紙122の記録面(画像形成面)を押圧する押込ローラ220が配置されており、用紙122の記録面(画像形成面)に付与されたマット剤粒子が押込ローラ220により用紙122に押し込まれるようになっている。この押込ローラ220についても後述する。
【0050】
インラインセンサ190は、用紙122に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0051】
定着部118によれば、乾燥部116で形成された薄層の画像層内の樹脂粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、用紙122に定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度は50℃以上に設定され、定着ドラム184の外周面に保持された用紙122を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができると共に、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
【0052】
図1に示すように、定着部118の記録媒体搬送方向の下流側には排紙部120が設けられている。排紙部120は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部118の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。用紙122は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。
【0053】
また、排出トレイ192に冷風噴出ノズル199が併設されており、冷風噴出ノズル199から冷風を送風することにより用紙122の冷却が行なえるようになっている。
【0054】
また、図1には図示しないが、インクジェット記録装置1には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kにインクを供給するインク貯留タンク、処理液付与部112に対して処理液を供給する手段を備えると共に、各インクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行なうヘッドメンテナンス部や、媒体搬送路上における用紙122の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0055】
図1に示すインクジェット記録装置1では、排出トレイ192に用いるシーズニング装置を複数台備えるとともに、各シーズニング装置を排紙部120と給紙部110との間で移動できる構成としてもよい。
【0056】
<粒子付与装置200及び押込ローラ220の詳細>
図2には、粒子付与装置200の詳細が示されている。
前述したように、粒子付与装置200は、付与ローラの一例としての定着ローラ188と、定着ローラ188が用紙122と接触する位置よりも定着ローラ188の回転方向上流側に配置された供給ユニット202と、を備えている。供給ユニット202は、多数のマット剤粒子を液体中に分散した粒子分散液を含浸させた帯状のウエブ204と、ウエブ204を背面側から定着ローラ188の表面に接触させるように支持する第1ロッド206と、ウエブ204の背面側が巻き掛けられると共にウエブ204に対してテンションをかけるための第2ロッド208と、を備えている。
【0057】
ウエブ204は、背面側から第1ロッド206で支持されて定着ローラ188と接触すると共に、定着ローラ188と接触しない第2ロッド208によりテンションがかけられており、定着ローラ188の周方向に対して幅を持って面接触している。ウエブ204は、定着ローラ188の用紙接触面の幅方向のほぼ全長に配置されている。
【0058】
ウエブ204は幅方向と直交する方向に移動する構成とされている。例えば、図3に示されるように、第1ロッド206よりもウエブ204の移動方向上流側に配置されてウエブ204を送り出す送出しローラ212と、第2ロッド208よりもウエブ204の移動方向下流側に配置されてウエブ204を巻き取る巻取りローラ214と、を備えている。これによって、ウエブ204が定着ローラ188と接触する位置で定着ローラ188の回転方向と逆方向(矢印方向)に移動する。本実施形態では、所定の通紙枚数毎にウエブ204を矢印方向に所定量移動させ、ウエブ204と定着ローラ188との接触面を更新するようになっている。
【0059】
その際、第1ロッド206よりも定着ローラ188の回転方向上流側のウエブ204と定着ローラ188との間に粒子分散液210Lによるビードが形成され、定着ローラ188にマット剤粒子210Pを安定的に供給することができる。
【0060】
ウエブ204としては、粒子分散液(多数のマット剤粒子が分散された液体)を含浸させることが可能な布材などが用いられている。布材としては、不織布などが用いられる。
【0061】
粒子分散液に用いられる粒子(マット剤粒子)としては、例えば、プラスチック(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン)などが好ましい。粒子分散液に用いられる液体としては、例えば、シリコーンオイルなどの離型剤が好ましい。粒子の粒径としては、10〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、15〜30μmがさらに好ましくい。また、液体として、シリコーンオイルを用いることで、用紙122の記録面(画像形成面)に付与されたときに、画像の光沢度を確保することができると共に、画像の定着ローラ188へのオフセットを抑制することができる。
【0062】
多数のマット剤粒子が分散された粒子分散液を用いることで、粉体粒子(パウダー)を定着ローラ188、用紙122の記録面に直接供給する場合に比べて、インクジェット記録装置1内に粉体粒子が舞うことがないため、インクジェット記録装置1内の汚染が低減される。
【0063】
また、粒子分散液として、オイルのような分散媒を用紙122の記録面に過剰に付与してしまうと、光沢ムラや濃度ムラ(処理剤やインクはじき起因)が問題となるが、粒子分散液を含浸させたウエブ204を接触させて定着ローラ188に供給することで、粒子を濃縮した状態で定着ローラ188に供給することが可能となる。他の塗布ローラやブレードによる供給と比較し、分散媒量を減らすことができる。また、粒子分散液を直接塗布する方式だと定着ローラ188上で液がはじかれてしまい、均一塗布が難しいが、粒子分散液を含浸させたウエブ204を接触させることで、分散媒量を減らし、粒子が濃縮される効果もあいまって、定着ローラ188へのマット剤粒子のほぼ均一な塗布が可能となる。
【0064】
この粒子付与装置200では、マット剤粒子を液体中に分散させた粒子分散液210Lを含浸させたウエブ204を定着ローラ188に接触させることによって、ウエブ204から定着ローラ188にマット剤粒子210Pが付与(第1転写)され、その後、定着ローラ188に供給されたマット剤粒子210Pは、定着ローラ188の回転により、定着ドラム184上の用紙122の記録面(画像形成面)に転写付与(第2転写)される。
【0065】
用紙122の画像部はインク膜の粘着力により定着ローラ188からマット剤粒子210Pが転写されやすいのに対し、用紙122の非画像部は定着ローラ188からマット剤粒子210Pが転写されにくいため、用紙122の画像部に選択的にマット剤粒子210Pが付与される。
【0066】
図4に示されるように、粒子付与装置200に代えて、本発明の第2実施形態の粒子付与装置230を用いてもよい。粒子付与装置230は、ウエブ204の巻取りローラ214(図3参照)による送り量を少なくすることで、ウエブ204の交換頻度減少を図る目的で、ウエブ204の背面側における定着ローラ188と反対側の第1ロッド206と第2ロッド208の間に、粒子分散液をウエブ204に供給する分散液供給ヘッド232を配置してもよい。分散液供給ヘッド232は、粒子分散液を吐出する複数の吐出孔が形成された吐出面を備えており、この吐出面をウエブ204の背面に近接又は接触させるように配置することで、複数の吐出孔からウエブ204に粒子分散液が供給される。
【0067】
また、図示を省略するが、分散液供給ヘッド232を定着ローラ188にウエブ204を介さずに対向配置し、分散液供給ヘッド232から定着ローラ188に直接マット剤粒子分散液を供給するようにしてもよい。
【0068】
これら分散液供給ヘッド232を用いる方式の場合、用紙(印刷用紙)122の紙種あるいはインク付与量によって必要とされるマット剤粒子数が異なるため、紙種やインク付与量に応じて粒子分散液の送液量を可変させるように制御してもよい。印刷ジョブ初期ほど用紙122の積束の下部に位置することから、上部の用紙122の重量の影響を受けてスタッカーブロッキングは悪化しやすい。よって、必要とされるマット剤粒子数は印刷ジョブ初期ほど多くなるため、印刷ジョブ初期に粒子分散液の送液量が多くなるように制御することが好ましい。
【0069】
上記マット剤粒子を粒子分散液の状態で定着ローラ188を介して用紙122に付与する方式では、転写付与を効率よく実施するために、定着ローラ(付与ローラ)188の表面は粗面化されている必要がある。第1には、定着ローラ188表面の粗面化により表面積を大きくすることで粒子分散液の濡れ性を向上させることによって、定着ローラ188表面に多くのマット剤粒子を供給することができる。
【0070】
すなわち、粒子分散液の表面張力γ、定着ローラ188の表面張力γ、粒子分散液と定着ローラ188の界面張力γSLに関して、平滑ローラでの粒子分散液の接触角θに関してはヤングの式
γ=γSL+γcosθ または cosθ=(γ−γSL)/γ
が成立するところ、定着ローラ188の表面の微細な凹凸構造によって表面積がR倍(R>1)大きくなったとすると、接触角θについてはヤングの式中の定着ローラの表面張力γと粒子分散液と定着ローラの界面張力γSLにRを乗じたウェンツェルの式
Rγ=RγSL+γcosθ または cosθ=Rcosθ
が成立し、分散液の濡れるローラ表面(θ<90°)はより濡れるようになる。
【0071】
第2には、ウエブ204を介して定着ローラ188に粒子分散液を付与する方式では、定着ローラ188表面を粗面化することで、ウエブ204を粗面化ローラの周方向に沿って幅をもって接触させた際に、マット剤粒子を掻き出して保持する効果により、定着ローラ188表面への転写付与性能を向上させることができる。
【0072】
また、粗面化された定着ローラ188では、マット剤粒子が定着ローラ188表面の凹部をすり抜けて用紙122の表面に好適に残留することができ、用紙122表面への転写性能を向上させることも期待できる。定着ローラ188は、シリコーンゴム等からなるゴム層と、その周囲に粗面化処理されたPFAなどの樹脂からなる表面フィルムが巻かれている構成であることが好ましい。
【0073】
ウエブ204の移動方向と定着ローラ188の回転方向は、逆にする方が好ましい。これにより、ウエブ204からマット剤粒子を定着ローラ188が掻き取る効果が得られる。なお、ウエブ204の移動方向と定着ローラ188の回転方向は、同方向としてもよい。
【0074】
次に、押込ローラ220について説明する。
スタッカーブロッキングはコート層を持つ用紙122で顕著に生じる現象であるから、ここでは用紙122がコート紙であるものとする。
図2に示されるように、定着ドラム184上の用紙122に接触する定着ローラ188より用紙搬送方向下流側に、定着ドラム184上の用紙122に接触するように押込ローラ220が配設されている。押込ローラ220は、定着ドラム184上の用紙122に所定の圧力で押圧されており、定着ドラム184上の用紙122の移動に伴って同方向に回転する。押込ローラ220の幅(軸方向の長さ)は、定着ドラム184に保持される用紙122の最大幅以上に設定されている。
【0075】
定着ローラ188によって用紙122の記録面(画像形成面)に付与されたマット剤粒子210Pを押込ローラ220が押圧することで、マット剤粒子210Pを用紙122のコート層(図示省略)へ埋め込むことによって、マット剤粒子210Pと用紙122との密着度合いを強化する。これによって、印刷後の用紙122を捌いたり、シーズニングを掛けたりする(送風により調湿する)ことによるマット剤粒子の脱離を抑制する。
【0076】
押込ローラ220によって、マット剤粒子210Pの一部が用紙122のコート層の中まで埋め込まれ、コート層の剛性やマット剤粒子とコート層との摩擦力によって保持されることが好ましい。用紙122の表面インク層の膜厚は平均的に1〜2μm程度で、コート層の厚さは紙種にもよるが、5〜20μmである。例えば、粒径10〜30μmのマット剤粒子の場合、20%以上埋込むことで、確実にコート層にまで到達する。
【0077】
マット剤粒子の埋り込み深さがこれより浅いと、印刷後に用紙122を捌いたり、シーズニングを掛けたり、加工したりする工程でマット剤粒子が用紙122から脱離してしまう。両面印刷をする場合、最初の記録面(画像形成面)に付与したマット剤粒子が脱離した場合、その分を最後の記録面を印刷する際に余分に補う必要があるため、装置設定が複雑になり、ランニングコストも高くなる。また最後の記録面を印刷する際に、最初の記録面に付着したマット剤粒子が脱離して装置内の汚染を引き起こす懸念もある。
【0078】
粒径が10〜30μmのマット剤粒子の場合、80%以上埋込まれることによってスタッカーブロッキング抑止効果が用紙122とその上に積まれた用紙122の間にマット剤粒子が存在することでスタッカーブロッキングを抑止する効果が弱くなる。用紙122へのマット剤粒子の押し込み量は、20〜80%が好ましく、20〜50%がより好ましく、30〜50%がさらに好ましくい。
【0079】
押込ローラ220によるマット剤粒子の押込みは、用紙122の記録面がインクによって柔軟になっている状態で行うのが効果的であるから、押込ローラ220は、粒子付与装置200の直後に配置されているのが好適である。
【0080】
押込ローラ220は、用紙122の記録面に付与されたマット剤粒子の大きさに対して適度に変形するのが好ましい。本実施形態では、押込ローラ220の表層は、表面付近に設けられたゴム層と、ゴム層の外側に巻き付けられた表面フィルム層と、を備えている。表面フィルム層は、ゴム層よりも硬い樹脂(例えばPFAなど)により形成されている。押込ローラ220は、表層の内側に回転軸の周囲に形成された芯部が設けられている。表面フィルム層の厚さは、50μm以上200μm以下が好ましい。表面フィルム層の厚さが50μmより小さいと、表面フィルム層が変形し、用紙122上の粒子を掻き取ってしまい、また、表面フィルム層の厚さが200μmより大きいと、押込ローラ220の表面が変形しにくく、マット剤粒子を押し込みにくくなるからである。
【0081】
また、押込ローラ220の表面が粗面化されていると、用紙122上の粒子を掻き取ってしまったり、粒子が凹凸をすり抜けてしっかりと押込まれなかったりするため、押込ローラ220の表面は滑らかで良い。但し、押込ローラ220の表面は粗面化されていてもよい。
【0082】
図9は、粒子付与装置200によって用紙122に付与したマット剤粒子の数密度n個/mmに対して、その後押込ローラ220によってマット剤粒子を押込んだ際に押込みに成功した(=押込ローラ220によって用紙122から取り除かれ脱離しなかった)マット剤粒子の数密度n個/mmの割合n/nを、押込ローラ220のゴム層のアスカーC硬度を30〜70°と変化させてプロットしたグラフである。押込ローラ220のゴム層の厚さは、4mmに設定している。ここで、アスカーC硬度の測定は、高分子計器社製のアスカーC硬度計を用い、押込ローラ220のゴム層に対し、荷重1kgの条件で計測を行った時の値である。このグラフに示されるように、押込ローラ220のゴム層のアスカーC硬度が小さい(=弾性率が小さい)ほど、押込ローラ220により押込むことができた粒子数の割合が大きい。
【0083】
特に、粒子付与装置200として定着ローラ(付与ローラ)188を用いる場合には、マット剤粒子を付与すると同時に押込む目的で定着ローラ188と用紙122の間の圧力を大きくしたり、接触面積を大きくしたりすることによって、用紙122上の画像が定着ローラ188に対して転写(オフセット)したり、用紙122に生じたカールやカックルが寄せられてシワが発生したりするという欠点がある。定着ローラ188を用紙122に接触させた後で、別の押込ローラ220によってマット剤粒子を埋め込むことによって、この欠点を克服することができる。
【0084】
押込ローラ220の弾性率が小さいと、押込ローラ220と用紙122との接触面積が大きくなり、オフセットやシワが発生しやすい。この観点から、押込ローラ220は、アスカーC硬度が30°以上のゴムローラを用いるのが好適である。
【0085】
マット剤粒子の付与数の効率の向上と装置内汚染の減少のためには、押込ローラ220によってマット剤粒子が用紙122から取り除かれ脱離する割合を少なくしたほうが良い。この観点から、押込ローラ220は、アスカーC硬度が70°以下のゴムローラが好適に用いられる。
【0086】
押込ローラ220のゴム層の厚みは、マット剤粒子の大きさに対して変形し易いほうが良く、厚いほうが良い。
【0087】
図10は、粒子付与装置200によって用紙122に付与したマット剤粒子の数密度n個/mmに対して、その後押込ローラ220によってマット剤粒子を押込んだ際に押込みに成功した(=押込ローラ220によって用紙122から取り除かれ脱離しなかった)マット剤粒子の数密度n個/mmの割合n/nを、押込ローラ220のゴム層の厚さを1〜8mmと変化させてプロットしたグラフである。ここでは、押込ローラ220のゴム層のアスカーC硬度は、70°と30°に設定している。このグラフに示されるように、押込ローラ220のゴム層の厚さが厚いほど、押込むことができたマット剤粒子数の割合が大きい。押込ローラ220のゴム層の厚さは、1mm以上が好ましい。押込ローラ220のゴム層の厚さが1mmより小さいと、押込むことができたマット剤粒子数の割合が少なくなるからである。
【0088】
定着ローラ188が用紙122に対して掛ける圧力Pを強化することによってマット剤粒子の埋め込み効果を高めようとした場合、定着ローラ188に対する用紙122上の画像転写(画像オフセット)が発生し易くなるが、押込ローラ220を用いることでこのリスクを低減することができる。
【0089】
図5及び図6には、定着ローラ188が用紙122に対して加える圧力P(例えば、約0.15MPa)を強化しないまま、押込ローラ220が用紙122に対して加える圧力Pを圧力Pと同じ(P=P)にした場合に、株式会社キーエンスのレーザーマイクロスコープVK−9600で計測した平均粒径20μmのマット剤粒子が用紙122表面に付与し押込まれている様子が示されている。図5(A)には、用紙122として薄紙(本例ではOKトップコート157gsm)を使用し、付与ローラ(定着ローラ188)のみを用いた場合に用紙122表面にマット剤粒子が押込まれている様子が示されており、図5(B)には、用紙122として薄紙を使用し、付与ローラ(定着ローラ188)と押込ローラ220を用いた場合に用紙122表面にマット剤粒子が押込まれている様子が示されている。図6(A)には、用紙122として厚紙(本例ではアイベスト310gsm)を使用し、付与ローラ(定着ローラ188)のみを用いた場合に用紙122表面にマット剤粒子が押込まれている様子が示されており、図6(B)には、用紙122として厚紙を使用し、付与ローラ(定着ローラ188)と押込ローラ220を用いた場合に用紙122表面にマット剤粒子が押込まれている様子が示されている。なお、図5及び図6では、用紙122のコート層、表面インク層は省略している。
【0090】
また、図7には、用紙122として薄紙(本例ではOKトップコート157gsm)を使用したときのマット剤粒子の埋込深さの平均値(測定回数3回)が示されており、図8には、用紙122として厚紙(本例ではアイベスト310gsm)を使用したときのマット剤粒子の埋込深さの平均値(測定回数3回)が示されている。
【0091】
図5〜図8に示されるように、圧力P(例えば、約0.15MPa)を強化しないまま、押込ローラ220が用紙122に対して加える圧力Pを圧力Pと同じ(P=P)にした場合であっても、マット剤粒子の付与から押込みまでに圧力を加えるトータルの時間を稼ぐことによってマット剤粒子が確実に押込まれていることが確認される。したがって、P≧Pの関係を満たすことが好適である。
【0092】
同様に、付与ローラ(定着ローラ188)が用紙122に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sと、押込ローラ220が用紙122に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sとの関係が、S≧Sを満たすことによって、付与から押込みまでにより多くの時間を掛けることができ、粒子を押込むことができる。
このS≧Sの関係は、定着ローラ188と押込ローラ220の径をほぼ同じに設定し、P≧Pとすることによって達成してもよいが、押込ローラ220の径を定着ローラ188の径よりも大きくすることで、接触面積Sを大きくするようにしてもよい。
【0093】
<作用・効果>
図1に示されるように、給紙部110から給紙された用紙122は、回転する給紙胴152及び処理液ドラム154の外周面に沿って搬送される。処理液付与部112では、処理液塗布装置156が、処理液ドラム154の外周面に沿って搬送される用紙122の記録面(画像形成面)に処理液を塗布する。
【0094】
さらに、処理液が塗布された用紙122は、中間搬送部124を介して描画ドラム170の外周面に沿って搬送される。描画部114では、各色のインクジェットヘッド172C、172M、172Y、172Kが、描画ドラム170によって搬送される用紙122の記録面に液滴(インク)を吐出して用紙122に画像を形成する。その際、処理液付与部112で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する顔料、樹脂粒子が凝集し、凝集体が形成される。これにより、用紙122上での顔料流れなどが防止され、用紙122の記録面に画像が形成される。
【0095】
また、記録面に画像が形成された用紙122は、中間搬送部126を介して乾燥ドラム176の外周面に沿って搬送される。乾燥部116では、IRヒータ178の熱及び温風ヒータ180から噴き出される温風により、インク吐出後に乾燥ドラム176により搬送される用紙122に含まれる水分を乾燥する(凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を減少させる)。
【0096】
さらに、用紙122は、中間搬送部128を介して定着ドラム184の外周面に沿って搬送される。中間搬送部128では、用紙122の記録面に温風ヒータ(図示省略)から温風が吹き付けられることで、インク吐出後に用紙122に含まれる水分を乾燥する(凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を減少させる)。
【0097】
定着部118では、定着ドラム184と定着ローラ188に圧接することで用紙122に形成された画像を用紙122に定着する。
【0098】
定着部118には、粒子付与装置200が設けられており、図2及び図3に示されるように、ウエブ204が第1ロッド206により定着ローラ188に接触するように支持されると共に、第2ロッド208によりウエブ204にテンションがかけられている。この状態で、ウエブ204が送出しローラ212により送り出され、巻取りローラ214により巻き取られることにより、ウエブ204が矢印方向に移動している。
【0099】
この粒子付与装置200では、マット剤粒子を液体中に分散させた粒子分散液210Lが含浸されたウエブ204を定着ローラ188に接触させることによって、ウエブ204から定着ローラ188にマット剤粒子210Pが付与(第1転写)され、その後、定着ローラ188に供給されたマット剤粒子210Pは、定着ローラ188の回転により、定着ドラム184上の用紙122の記録面(画像形成面)に転写付与(第2転写)される。
【0100】
用紙122の画像部はインク膜の粘着力により定着ローラ188からマット剤粒子210Pが転写されやすいのに対し、用紙122の非画像部は定着ローラ188からマット剤粒子210Pが転写されにくいため、用紙122の画像部に選択的にマット剤粒子210Pが付与される。なお、図2では、マット剤粒子210Pが用紙122の画像部に付与されているが、マット剤粒子210Pは、粉体粒子のみからなるマット剤粒子ではなく、液体も付着している。
【0101】
その後、定着ドラム184上の用紙122の記録面に付与されたマット剤粒子210Pは、押込ローラ220により押圧されることで、マット剤粒子が用紙122のコート層へ埋め込まれる。
【0102】
さらに、図1に示されるように、定着部118では、定着ドラム184に保持された用紙122はインラインセンサ190の対向部を通過し、通過する用紙122上のチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度等が計測される。
【0103】
また、インラインセンサ190によって計測された用紙122は、渡し胴194及び搬送ベルト196により搬送され、排出トレイ192に排出される。
【0104】
このようなインクジェット記録装置1では、粒子付与装置200によって、定着ドラム184に保持された用紙122の記録面にマット剤粒子を付着させた後、押込ローラ220により用紙122の記録面が押圧されることで、マット剤粒子が用紙122のコート層へ埋め込まれ、マット剤粒子と用紙122との密着度合いが強化される。これによって、印刷後の用紙122を捌いたり、シーズニングを掛けたりする(送風により調湿する)ことによるマット剤粒子の脱離が抑制される。このため、用紙122が排出トレイ192等の積載部に積載されたときに、スタッカーブロッキングの発生を抑制することができる。
【0105】
また、粒子付与装置200では、元々インクジェット記録装置1に使用されている定着ローラ188を用いて用紙122の記録面にマット剤粒子を付与することで、部品点数を削減できると共に、用紙122への定着性能を確保することができる。
【0106】
図11には、本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられる粒子付与装置250が示されている。なお、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0107】
図11に示されるように、粒子付与装置250は、付与ローラを使用せず、液体中にマット剤粒子が分散された粒子分散液を含浸させたウエブ204を定着ドラム184上の用紙122に直接接触させることで、用紙122の記録面(画像形成面)にマット剤粒子を付与している。この粒子付与装置250は、第1ロッド206と第2ロッド208により、ウエブ204を定着ドラム184上の用紙122に定着ドラム184の周方向に幅を持たせて接触させている。また、ウエブ204の移動方向は、定着ドラム184上の用紙122との接触部で、定着ドラム184上の用紙122の搬送方向と逆方向となるように設定されている。
【0108】
用紙122の記録面(画像形成面)に付与されたマット剤粒子は、押込ローラ220により押圧されることで、マット剤粒子が用紙122のコート層へ埋め込まれる。これによって、印刷後の用紙122を捌いたり、シーズニングを掛けたりする(送風により調湿する)ことによるマット剤粒子の脱離が抑制され、スタッカーブロッキングの発生を抑制することができる。
【0109】
図12には、本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられる粒子付与装置260が示されている。なお、前述した第1実施形態〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0110】
図12に示されるように、粒子付与装置260は、付与ローラを使用せず、粒子分散液を含浸させたウエブ204を第1ロッド206と第2ロッド208により定着ドラム184上の用紙122に直接接触させると共に、第1ロッド206と第2ロッド208との間に分散液供給ヘッド232が配置されている。分散液供給ヘッド232は、吐出面に形成された複数の吐出孔から粒子分散液を吐出させることで、ウエブ204の裏面側に粒子分散液を供給する。
【0111】
このような構成でも、ウエブ204を定着ドラム184上の用紙122に直接接触させることで、用紙122の記録面(画像形成面)にマット剤粒子が付与され、その後、押込ローラ220により押圧されることで、マット剤粒子が用紙122のコート層へ埋め込まれる。これによって、印刷後の用紙122を捌いたり、シーズニングを掛けたりする(送風により調湿する)ことによるマット剤粒子の脱離が抑制され、スタッカーブロッキングの発生を抑制することができる。
【0112】
<その他>
以上、本発明の実施形態について記述したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0113】
上述した実施形態の粒子付与装置は、付与ローラの一例として定着ローラ188が用いられているが、これに限定されず、専用の付与ローラを用いてもよい。また、ウエブ204を送り出す送出しローラ212と、ウエブ204を巻き取る巻取りローラ214などは、上述した実施形態の構成に限定されず、変更可能である。
【0114】
また、例えば上記実施形態では水を溶媒として使用する水性インクを用いたインクジェット方式の画像形成装置を例に挙げたが、吐出される液は画像記録・文字印刷用などのインクに限定されず、記録媒体に染み込む溶媒あるいは分散媒を使用している液体であれば種々の吐出液に応用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 インクジェット記録装置(画像形成装置)
122 用紙(記録媒体)
172C、172M、172Y、172K インクジェットヘッド(液滴吐出装置)
184 定着ドラム(搬送体)
188 定着ローラ(付与ローラ)
200 粒子付与装置(粒子付与手段)
204 ウエブ
210P マット剤粒子
210L 粒子分散液
220 押込ローラ
230 粒子付与装置(粒子付与手段)
232 分散液供給ヘッド
250 粒子付与装置(粒子付与手段)
260 粒子付与装置(粒子付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を吐出して画像を形成する液滴吐出装置と、
前記記録媒体を搬送する搬送体と、
多数の粒子を前記記録媒体の画像が形成された面に付与する粒子付与手段と、
前記粒子付与手段により前記粒子が付与された後で、前記記録媒体の画像が形成された面に付与された粒子に対して圧力を加えることによって前記粒子を前記記録媒体に押し込む押込ローラと、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記粒子付与手段は、前記搬送体上の前記記録媒体に接触するように配置されると共に前記粒子が供給される付与ローラを備え、前記付与ローラを介して前記記録媒体の画像が形成された面に前記粒子が付与される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押込ローラは、前記記録媒体の表面から前記粒子を前記粒子の平均粒径の20〜80%の深さに押し込む請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記押込ローラの表層は、
アスカーC硬度が70°以下で厚さが1mm以上のゴム層と、
前記ゴム層に巻き付けられ、厚さが50μm以上200μm以下の表面フィルム層と、
を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記付与ローラが前記記録媒体に対して加える圧力Pと、前記押込ローラが前記記録媒体に対して加える圧力Pとの関係が、
≧Pを満たす請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記付与ローラが前記記録媒体に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sと、前記押込ローラが前記記録媒体に対して圧力を加えることによって生じる接触面積Sとの関係が、
≧Sを満たす請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−179737(P2012−179737A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42598(P2011−42598)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】