説明

画像形成装置

【課題】画像形成の生産性の低下を最小限に留めながら、安定した画像を形成することが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】トナー消費のためのトナー像であるパッチを形成することにより消費されるべきトナー量を算出する第1のトナー量算出手段と、第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量と、予め決められたパッチ形成可能領域において予め決められたトナー濃度でパッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量とを比較する第1のトナー量比較手段と、を有し、第1のトナー量比較手段の比較により、第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量が、予め決められたパッチ形成可能領域において予め決められたトナー濃度でパッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量より多い場合、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成させるように、制御手段が画像形成手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いて用紙に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙に画像を形成する画像形成装置としては、感光体を一様に帯電させ、帯電された感光体にレーザ光等の光を照射することで静電潜像を形成し、形成された静電潜像に対して帯電されたトナーを引き合わせることで感光体にトナー像を形成し、形成されたトナー像を静電気力により用紙に転写し、用紙に転写されたトナー像を熱と圧力とを用いて定着することで画像を形成する電子写真方式を採用した画像形成装置が広く知られている。
【0003】
このような電子写真方式を採用した画像形成装置では、トナーを供給する現像部において一部のトナーが劣化し、帯電性が低下する或いは所望の極性と反対の極性に帯電してしまうという現象が生じる。帯電性が低下した或いは所望の極性と反対の極性に帯電したトナーは、正常に静電潜像に載らなくなってしまう。そして、現像部において劣化したトナーの割合が大きくなると、正常に静電潜像に載らなくなるトナーの割合が大きくなり、画像の安定性が低下してしまうという問題が生じていた。
【0004】
上記のトナーが劣化する現象が生じる原因としては、現像部内のある領域に一部のトナーが滞留し、滞留したトナーが長期間現像部内に留まり続けることによるトナーの形状の変化やトナーが受ける摩擦等のストレスの増大等が考えられている。
【0005】
そこで、劣化したトナーに起因する画像の安定性の低下という問題に対して、現像部における劣化したトナーの増加を防いで安定した画像を形成することが可能な技術が知られている。その技術は、所定のタイミングにおいて現像部内のトナーを所定量だけ強制的に消費させることで現像部内のトナーの滞留状態を解消し、現像部における劣化したトナーの増加を防ぐ技術である。
【0006】
現像部内のトナーを強制的に消費させる方法としては、感光体上にトナー消費用のトナー像(パッチ)を形成する方法が一般的に用いられている。
【0007】
従来、上記のようなパッチ形成によるトナーの強制消費は、用紙に対する画像形成動作の開始前に、或いは用紙に対する画像形成動作中に画像形成動作を中断した上で行われていた。しかしながらこのような場合、パッチ形成完了までの待機時間或いは画像形成動作の中断時間の分だけ、画像形成の生産性が低下するという問題が生じる。
【0008】
そこで、感光体上における、用紙に転写されるトナー像が形成される領域以外の領域にパッチを形成することで、画像形成動作を停止させないままトナーを強制的に消費し、画像形成の生産性を低下させることなく安定した画像を形成することが可能な技術が提案されている。
【0009】
特許文献1には、原稿1枚分の露光の終了毎にトナーを強制的に消費するリフレッシュ動作を行うか否かを判断し、リフレッシュ動作を行うと判断された場合に、感光体上における、先行の用紙に転写されるトナー像が形成される領域と後続の用紙に転写される領域との間の紙間領域に、トナー消費用の静電潜像を書き込みリフレッシュ動作を実行することで、画像形成の生産性を落とすことなく安定した画像を形成することが可能な画像形成装置が記載されている。
【0010】
特許文献2には、環境状況に応じて濃度補正のために形成する濃度検知用のトナー像の必要数を算出し、算出された濃度検知用のトナー像の必要数に応じて出力画像の出力間隔を決定することで、生産性の低下を抑えながら環境状況に応じた濃度補正が可能な画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−216601号公報
【特許文献2】特開2002−258573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら特許文献1に記載の画像形成装置においては、紙間領域の大きさが固定されているため、紙間領域にトナー消費用のトナー像を書き込みリフレッシュ動作を実行したとしても、用紙に形成される画像の安定化のために消費すべき量のトナーを消費し切れない場合がある。このような場合はリフレッシュ動作が充分ではないために、上述したような劣化したトナーに起因する画像の安定性の低下が起こる可能性があるという問題が生じる。
【0013】
また、特許文献2に記載の画像形成装置においては、多数の濃度検知用トナー像を形成すべき場合は、その濃度検知用トナー像の数に応じた広い出力画像の出力間隔を確保するよう制御されるため、後続の用紙に対する画像形成動作の開始が遅れ、生産性が低下するという問題が生じる。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、画像形成の生産性の低下を最小限に留めながら、安定した画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0016】
1.像担持体にトナー像を形成し、形成されたトナー像を用紙に転写することで用紙に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段を制御する制御手段と、
前記像担持体に、トナーを消費するためのトナー像であるパッチを形成すべきか否かを判断するパッチ形成判断手段と、を有し、
前記パッチ形成判断手段により前記パッチを形成すべきと判断された場合に、前記制御手段が、前記像担持体における予め決められたパッチ形成可能領域に、予め決められたトナー濃度で前記パッチを形成させるよう前記画像形成手段を制御する画像形成装置において、
前記パッチ形成判断手段により前記パッチを形成すべきと判断された場合に、前記パッチを形成することにより消費されるべきトナー量を算出する第1のトナー量算出手段と、
前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量と、前記予め決められたパッチ形成可能領域において前記予め決められたトナー濃度で前記パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量とを比較する第1のトナー量比較手段と、を有し、
前記第1のトナー量比較手段の比較により、前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量が、前記予め決められたパッチ形成可能領域において前記予め決められたトナー濃度で前記パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量より多い場合、前記制御手段は、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成させるよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【0017】
2.前記予め決められたパッチ形成可能領域は、前記像担持体における、先行の用紙に転写されるトナー像と後続の用紙に転写されるトナー像との間の領域内にある画像形成装置であって、
前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量と、前記予め決められたパッチ形成可能領域において最大のトナー濃度のパッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量とを比較する第2のトナー量比較手段を有し、
前記第2のトナー量比較手段の比較により、前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量が、前記予め決められたパッチ形成可能領域において前記最大のトナー濃度のパッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量より多い場合、前記制御手段は、前記先行の用紙に転写されるトナー像と前記後続の用紙に転写されるトナー像との間隔を広げるよう制御することで、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成可能な領域を、前記予め決められたパッチ形成可能領域より大きくし、さらに前記制御手段は、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度であり且つ前記予め決められたパッチ形成可能領域より大きいパッチを形成させるよう制御することを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0018】
3.画像形成の生産性を優先する様に設定可能な生産性優先設定手段を有し、
前記生産性優先設定手段により前記画像形成の生産性を優先する様に設定されている場合に、前記制御手段は、前記先行の用紙に転写されるトナー像と前記後続の用紙に転写されるトナー像との間隔を広げる制御を行わないことを特徴とする前記2に記載の画像形成装置。
【0019】
4.前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成する際に、前記制御手段は、画像形成条件を前記予め決められたトナー濃度に対応する条件から変更することで前記パッチのトナー濃度を大きくするよう前記画像形成手段を制御するものであって、
前記制御手段は、前記画像形成条件の変更開始時点に対応する所定のタイミングから前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチの形成を開始させるよう制御することを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0020】
5.前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成する際に、前記制御手段は、画像形成条件を前記予め決められたトナー濃度に対応する条件から変更することで前記パッチのトナー濃度を大きくするよう前記画像形成手段を制御するものであって、
前記制御手段は、前記変更された画像形成条件から前記予め決められたトナー濃度に対応する条件への復帰が完了した時点に対応する所定のタイミングにおいて、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチの形成を完了させるよう制御することを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0021】
6.複数の異なる色に対応する複数の前記画像形成手段を有し、
前記制御手段は、複数の前記画像形成手段を前記複数の異なる色毎に制御することを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、消費されるべきトナー量が、予め決められたパッチ形成可能領域内において予め決められたトナー濃度でパッチを形成することにより消費可能なトナー量より多い場合、制御手段が、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成させるよう画像形成手段を制御するので、画像形成の生産性の低下を抑えながら消費すべき量のトナーを確実に消費し、安定した画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における画像形成装置全体の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像形成装置全体の電気的構成を示す図である。
【図3】トナー消費用パッチのレイアウトの一例を示す図(1/3)である。
【図4】トナー消費用パッチのレイアウトの一例を示す図(2/3)である。
【図5】トナー消費用パッチのレイアウトの一例を示す図(3/3)である。
【図6】トナー消費用パッチのレイアウトの他の一例を示す図(1/2)である。
【図7】トナー消費用パッチのレイアウトの他の一例を示す図(2/2)である。
【図8】紙間領域にパッチを形成させる場合の制御手順のメインルーチンを示したフローチャートである。
【図9】図8のステップS9(トナー消費用パッチ演算サブルーチン)を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明に係る画像形成装置の実施の形態について説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略することがある。
【0025】
図1は、本実施の形態における画像形成装置全体の構成を示す断面図である。
【0026】
画像形成装置1は、像担持体に相当する円筒状の感光体ドラム22a〜22dが縦列に配置されたタンデム型と呼ばれるカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、画像読取部10、画像形成部20、用紙給紙部30、操作入力部40から構成されている。
【0027】
画像読取部10は、原稿載置部11、光学系12、CCDイメージセンサ13等から構成されている。
【0028】
本発明における画像形成手段としての機能を果たす画像形成部20は、四種類の異なる色である、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応したトナー像をそれぞれ形成する画像形成ユニット21a、21b、21c、21dや、各画像形成ユニットにおいて形成されたトナー像が転写される中間転写ベルト201、中間転写ベルト201上のトナー像を用紙に転写する二次転写部202、用紙に転写されたトナー像を熱と圧力とを用いて用紙に定着する定着部204等から構成されている。
【0029】
用紙給紙部30は、それぞれ様々なサイズ或いは種類の用紙が収容される複数の給紙トレイ31〜33等から構成されている。
【0030】
操作入力部40は、ユーザが指等で触れることで操作が可能なタッチパネル方式の操作パネル41、数値入力等を行うテンキー42、画像形成の実行の指示等をするためのスタートキー43等から構成されている。操作入力部40からは、画像形成の条件等の入力とともに、後に説明するパッチ形成の条件の入力もなされ、本発明における生産性優先設定手段としての機能も果たす。この機能についての詳細は後述する。
【0031】
図2は、本実施の形態における画像形成装置1の電気的構成を示したブロック図である。図1と同様の機能を有する構成に対しては、図1において付された符号と同一の符号を付している。画像形成装置1は、操作入力部40、全体制御部50、エンジン部60等から構成されている。
【0032】
操作入力部40は、操作パネル制御部44、紙間パッチ条件設定部45等から構成されている。操作パネル制御部44は、操作パネル41において入力された画像形成に関する設定や、紙間パッチ条件設定部45において設定されたパッチの形成条件設定等の設定情報を全体制御部50のシステム制御部51へ送信する。また操作パネル制御部44は、システム制御部51から受信した情報に基づいて、操作パネル41に適切な表示をさせるよう制御する。
【0033】
全体制御部50は、システム制御部51、画像描画処理部52、黒化面積取得・通知処理部53、パッチ作成・描画処理部54等から構成されている。
【0034】
画像描画処理部52は、形成される画像の情報を基に画像形成部20、用紙給紙部30の動作条件を決定する処理を行う。黒化面積取得・通知処理部53は、形成される画像の情報を基に、色毎に用紙1枚に対して形成されるトナー像の面積を取得する。パッチ作成・描画処理部54は、紙間パッチ条件設定部45において設定されたパッチの形成条件の情報に基づいて、パッチ形成時の画像形成部20、用紙給紙部30の動作条件を決定する処理を行う。
【0035】
システム制御部51は、操作パネル制御部44或いはエンジン制御部61から送信された情報に基づいて、画像描画処理部52、黒化面積取得・通知処理部53、パッチ作成・描画処理部54の各部に対して上記の処理を行うよう制御をする。また画像描画処理部52、黒化面積取得・通知処理部53、パッチ作成・描画処理部54の各部において行われた処理結果の情報を、操作パネル制御部44或いはエンジン制御部61へ送信する。
【0036】
システム制御部51は、本発明における制御手段、第1のトナー量算出手段、第1のトナー量比較手段、第2のトナー量算出手段、そして第2のトナー量比較手段としての役割を果たす。
【0037】
エンジン部60は、エンジン制御部61、紙搬送制御部62、画像作像処理部63、カバレッジデータ処理部64、紙間パッチ作成判断処理部65、紙間パッチ作像処理部66等から構成されている。
【0038】
紙搬送制御部62は、用紙を適切なタイミングで給紙、搬送させるよう用紙給紙部30及び画像形成装置1内の搬送ローラ等を制御する。画像作像処理部63は、画像描画処理部52において決定された動作条件の通りに画像形成部20を動作させ、画像を形成させる処理を行う。カバレッジデータ処理部64は、黒化面積取得・通知処理部53より通知された各色の黒化面積のデータを基に、用紙1枚の面積に対する黒化面積の割合であるカバレッジを算出する処理を行う。紙間パッチ作成判断処理部65は、後に説明するトナー消費用パッチ或いは補正パッチを形成すべきか否かを判断する処理を行う。紙間パッチ作成判断処理部65は、本発明におけるパッチ形成判断手段としての役割を果たす。紙間パッチ作像処理部66は、パッチ形成の際に、パッチ作成・描画処理部54において決定された動作条件の通りに画像形成部20を動作させる処理を行う。
【0039】
エンジン制御部61は、システム制御部51からの指示に基づいて、紙搬送制御部62、画像作像処理部63、カバレッジデータ処理部64、紙間パッチ作成判断処理部65、紙間パッチ作像処理部66の各部に対して上記の処理を行うよう指示をする。
【0040】
次に、図1及び図2を参照しながら、用紙に対して画像を形成する際の画像形成装置1の動作の詳細について説明する。
【0041】
操作入力部40において用紙に対する画像形成の条件等が入力され、スタートキー43が押下されると、原稿載置部11に予め載置された原稿に対して、図示しない光源により原稿に照射され、照射された光の反射光が光学系12を介してCCDイメージセンサ13により読み取られる。
【0042】
CCDイメージセンサ13により読み取られた原稿画像の信号は、画像描画処理部52において所定の処理が施された後、システム制御部51からエンジン制御部61、画像作像処理部63を介して画像形成ユニット21a〜21dの露光部24a〜24dに通知される。
【0043】
原稿の画像を読み取り画像形成を行う以外に、予め画像形成装置1内に画像データ等を記憶させておき、記憶されていた画像データを基に画像形成を行うように構成することも可能である。
【0044】
画像形成ユニット21a〜21dは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応したトナー像を形成し、中間転写ベルト201に転写する機能を果たす。画像形成ユニット21a〜21dはそれぞれ同等の構成を備えているので、ここではイエロー色に対応した画像形成ユニット21aの動作について説明し、画像形成ユニット21b〜21dの動作に関する詳細な説明は省略する。
【0045】
イエロー色に対応した画像形成ユニット21aにおいては、露光部24aに所定の処理が施された画像信号が通知されるとともに、感光体ドラム22aが図示しない駆動手段により反時計方向に回転される。
【0046】
そして、帯電部23aにより感光体ドラム22aの表面が一様に帯電される。一様に帯電された感光体ドラム22aに対して、露光部24aが、通知されたイエロー色に対応した画像信号に基づいてレーザ光を照射し、感光体ドラム22aに静電潜像を形成する。
【0047】
そして、静電潜像が形成された感光体ドラム22aに対して、現像部25aが、帯電されたイエロー色のトナーを供給し、感光体ドラム22aにイエロー色のトナー像を形成する。形成されたイエロー色のトナー像は、1次転写ローラ26aによって、時計方向に回転されている無端状のベルトである中間転写ベルト201に静電気力により転写される。中間転写ベルト201に転写され切れずに感光体ドラム22aに残存したトナーは、クリーニング部27aにより取り除かれる。
【0048】
画像形成ユニット21b、21c、21dにおいても、画像形成ユニット21aと同様に、CCDイメージセンサ13により読み取られた原稿画像の信号に基づいて感光体ドラム22b、22c、22dにそれぞれマゼンタ色、シアン色、ブラック色のトナー像が形成される。そして、各1次転写ローラ26b、26c、26dによってそれぞれ画像の先頭部分が重なるタイミングで中間転写ベルト201に各トナー像を転写することで、中間転写ベルト201上にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重なったカラートナー像が形成される。
【0049】
中間転写ベルト201上に形成されたカラートナー像は、2次転写部202において、カラートナー像の先頭部分と用紙の先頭部分とが重なるタイミングで用紙給紙部30の給紙トレイ31、32、又は33から給紙、搬送されてきた用紙に転写される。2次転写部202において転写され切れずに中間転写ベルト201に残存したトナーは、中間転写ベルトクリーニング部203において取り除かれる。
【0050】
2次転写部202においてカラートナー像が転写された用紙は、定着部204へ向けて搬送され、定着部204において熱と圧力とを加えられることによってカラートナー像が用紙に定着され、画像が形成される。
【0051】
用紙の片面のみに画像を形成するとの設定が予めなされている場合は、片面の画像が形成された用紙は分岐部205により排出ローラ対206方向へ搬送され、排出ローラ対206から画像形成装置1の装置外へ排出される。
【0052】
一方、用紙の両面に画像を形成するとの設定がなされている場合は、片面の画像が形成された用紙は分岐部205により反転経路207方向へ搬送され、反転ローラ対208の正逆転の反転によりスイッチバックされ、用紙の後端を先頭として2次転写部202方向へ搬送される。
【0053】
そして、上述した方法で画像の後端を先頭として中間転写ベルト201に形成された4色のカラートナー像が2次転写部202に進入してくるとともに、タイミングを合わせて後端を先頭とした用紙が2次転写部202に進入してくる。2次転写部202において用紙の裏面にカラートナー像が転写され、定着部204において裏面の画像が用紙に定着され、両面の画像形成が完了する。
【0054】
両面の画像形成が完了した用紙は、分岐部205により排出ローラ対206方向へ搬送され、排出ローラ対206から画像形成装置1の装置外へ排出される。
【0055】
以上が、画像形成装置1が用紙に対して画像を形成する際の動作の詳細である。ここで、各色のトナーを供給する現像部25a〜25dでは、用紙に画像を形成し続けると、各現像部内の領域において次第にトナーが滞留した状態となり、滞留状態となったトナーが長期間現像部内に留まることにより劣化するという現象が起こる。この劣化したトナーは、画像の安定性を低下させる要因となるので、安定した画像を形成するために現像部内の全トナーに対する劣化したトナーの割合を低減させる必要が生じる。
【0056】
そこで、所定のタイミングにおいて現像部内のトナーを強制的に消費させることで、現像部内のトナーの滞留状態を解消し、劣化トナーの割合を低減させる動作が行われている。
【0057】
本実施の形態においては、上記のトナーの強制消費は、用紙に対する画像形成の生産性を低下させないために、画像形成動作中の、先行の用紙に転写されるトナー像と後続の用紙に転写されるトナー像との間の予め決められたパッチ形成可能領域にトナー消費用のトナー像であるトナー消費用パッチを形成することにより行われている。
【0058】
上記現像部内のトナーの滞留状態は、用紙に対する画像形成に用いられるトナー量が少ないほど生じやすいことが判っている。そこで本実施の形態では、用紙1枚の画像形成毎に消費すべきトナー量として、カバレッジの形でユーザが操作入力部40において設定できるようにしている。
【0059】
ユーザは、操作入力部40に表示される図示しない画面において、用紙1枚の画像形成毎に消費すべきトナー量として、用紙の面積に対するトナー像の面積の割合を例えば0%、2.5%、5%、10%の4種類の中から選択することができる。
【0060】
ユーザは所望の画質を得るために上記4種類の用紙の面積に対するトナー像の面積の割合の中から1種類を選択する。用紙の面積に対するトナー像の面積の割合が大きいほど、即ち用紙1枚の画像形成毎に消費されるトナー量が多いほど、現像部内の劣化したトナーがより多く消費されるため、用紙に対してより高画質の画像を形成することが可能となる。
【0061】
そして、上記のように設定された用紙1枚の画像形成毎に消費すべきトナー量と用紙に対する画像形成によって消費されるトナー量とを比較することで、消費すべきトナー量が用紙に対する画像形成によって消費されるか否かを用紙1枚の画像形成毎に判断する。
【0062】
消費すべきトナー量が消費されない場合、即ち用紙1枚の画像形成毎に消費すべきトナー量が用紙に対する画像形成によって消費されるトナー量より多いと判断された場合に、図3〜図7に示すように先行の用紙Saに転写されるトナー像と、後続の用紙に転写されるトナー像との間の領域である紙間領域内にトナー消費用のトナー像であるトナー消費用パッチを形成し、消費不足分のトナーを消費するようにしている。
【0063】
また、ユーザは上記4種類の割合のうち0%を選択することにより、トナーを節約しつつ用紙に画像を形成させることも可能となっている。ユーザにより0%が選択された場合をトナー節約モードと呼ぶこととする。
【0064】
イエロー色のトナー消費用パッチを形成する場合は、感光体ドラム22aにおける、先行の用紙に転写される画像に対応するトナー像が形成される領域と、後続の用紙に転写される画像に対応するトナー像が形成される領域との間の紙間領域内の予め決められたパッチ形成可能領域にトナー消費用パッチを形成する。
【0065】
具体的には、後に説明する方法で用紙1枚毎に形成されるべきトナー消費用パッチのトナー濃度、大きさを決定し、予め決められたパッチ形成可能領域内において、決定された大きさの分だけ露光部24aにより露光がなされる。そして、現像部25aよりイエロー色のトナーが露光された領域に供給され、トナー消費用パッチが形成される。
【0066】
トナー消費用パッチを形成する際には、決定されたトナー濃度に応じて画像形成ユニット21aを構成する各部のうち1つ以上の部について、その動作条件を変化させることでトナー消費用パッチのトナー濃度を適切に変化させることが可能である。
【0067】
トナー像を形成する際における、画像形成ユニット21aを構成する各部の動作条件にはそれぞれ、予め最適化された基準の動作条件が存在する。この基準の動作条件の下で、感光体ドラム22a上の領域を露光することにより、感光体ドラム22a上に形成されたトナー像のトナー濃度を、本発明における予め決められたトナー濃度とする。
【0068】
本実施の形態では、トナー消費用パッチのトナー濃度を予め決められたトナー濃度より大きくする必要がある場合に、上記動作条件として、現像部25aの現像DCバイアスと帯電部23aのグリッド電圧とを、基準の条件から変化させることで、トナー消費用パッチが適切なトナー濃度で形成されるようにしている。
【0069】
感光体ドラム22a上に形成されたイエロー色のトナー消費用パッチは、1次転写ローラ26aにより中間転写ベルト201に転写される。2次転写部202へは用紙に転写されるトナー像とのタイミングを合わせて用紙が給紙され、搬送されてくるため、中間転写ベルト201に転写されたトナー消費用パッチは、2次転写部202において用紙には転写されずに、2次転写ローラ202bに巻き回された無端状のベルト209に転写される。
【0070】
ベルト209に転写されたトナー消費用パッチは、ベルトクリーニング部210により取り除かれる。
【0071】
トナー消費用パッチについては、感光体ドラム22a上に形成されたトナー消費用パッチを全て中間転写ベルト201上に転写させるようにしても良いが、トナー像転写のために1次転写ローラ26aに対して掛けるバイアスを、感光体ドラム22a上の用紙に転写されるトナー像を中間転写ベルト201に転写させるときに掛けるバイアスより小さくし、感光体ドラム22a上に形成されたトナー消費用パッチのうち一部を感光体ドラム22a上に残存させるようにしても良い。
【0072】
この場合、感光体ドラム22a上に残存した一部のトナー消費用パッチは、クリーニング部27aによって取り除かれる。
【0073】
同様に2次転写部202においても、中間転写ベルト201上のトナー消費用パッチを全てベルト209に転写させるようにしても良いが、トナー像転写のために2次転写ローラ202bに対して掛けるバイアスを、中間転写ベルト201上の用紙に転写されるべきトナー像を用紙に転写させるときに掛けるバイアスより小さくし、中間転写ベルト201上のトナー消費用パッチのうち一部を中間転写ベルト201上に残存させるようにしても良い。
【0074】
この場合、中間転写ベルト201上に残存した一部のトナー消費用パッチは、中間転写ベルトクリーニング部203により取り除かれる。
【0075】
上記のように、全てのトナー消費用パッチをベルトクリーニング部210の1箇所のクリーニング部により除去せずに、トナー消費用パッチを分散させ複数のクリーニング部で除去させることが可能である。全てのトナー消費用パッチを1箇所のクリーニング部によって除去する構成の場合は、トナー量が多く、トナー消費用パッチの全てを除去し切れずに後続の用紙に対する画像形成に影響が生じる可能性がある。
【0076】
一方、上記のようにトナー消費用パッチを分散させ複数のクリーニング部で除去を行うようにすることで、各クリーニング部において確実にトナーを除去し、後続の用紙に対する画像形成に影響が出ないようにすることが可能である。
【0077】
ここまでイエロー色のトナー消費用パッチの形成について述べたが、他のマゼンタ色、シアン色、ブラック色についても上述のような方法でトナー消費用パッチを形成する。
【0078】
図3〜図5は、ベルト209上に転写されたトナー消費用パッチのレイアウトを示す図である。本実施の形態においては、各感光体ドラム上における、先行の用紙Saに転写されるトナー像と後続の用紙Sbに転写されるトナー像との間の紙間領域内に、トナー消費用パッチが形成される。
【0079】
そして、各感光体ドラム上に形成されたトナー消費用パッチは、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、ブラック色の順番に、その先頭を合わせて重なり合う状態で中間転写ベルト201上に転写される。中間転写ベルト201上に転写された各色のトナー消費用パッチは、2次転写部202においてベルト209に転写される。ベルト209に転写された各色のトナー消費用パッチは、図3に示すように、下層から順に、ブラック色パッチPK1、シアン色パッチPC1、マゼンタ色パッチPM1、イエロー色パッチPY1となっている。
【0080】
図3及び後に説明する図4、図5、図6、図7においては、各色のパッチを区別することができるように、各色のパッチをそれぞれ、矢印で図示する用紙搬送方向に直交する方向(図の上下方向)にずらして表示しているが、実際にパッチを形成する場合には各色のパッチをそれぞれ用紙搬送方向に直交する方向にずらして形成することは行っていない。
【0081】
本実施の形態においては、先行の用紙Saに転写されるトナー像と後続の用紙Sbに転写されるトナー像との間の領域である紙間領域の用紙搬送方向の長さは図3に示すように84mmである。また、予め決められたパッチ形成可能領域の用紙搬送方向の長さは図3に示す通り60mm、用紙搬送方向に直交する方向の長さは各感光体ドラムの主走査方向の長さとなっている。
【0082】
本実施の形態においては、各色のトナー消費用パッチは、各感光体ドラム上における、各色の先行の用紙Saに転写されるトナー像の後端から15mmだけ離れた位置からそれぞれ形成が開始される。後に説明する制御方法によって算出されるパッチ形成に必要な領域に基づいて、色毎に必要な分だけそれぞれトナー消費用パッチが形成される。
【0083】
図3は、後述する制御により、予め決められたパッチ形成可能領域内に予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成した場合に、トナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量が消費可能である、と判断された場合に形成されるトナー消費用パッチのレイアウトの一例を示す図である。
【0084】
図3の下部にはトナー消費用パッチ形成の際の現像DCバイアス251と、グリッド電圧231との出力の様子がそれぞれ示してある。図3はベルト209上の様子を示した図であるが、便宜上現像DCバイアス251とグリッド電圧231との出力の様子とを、ベルト209上を示す図に重ねて表示している。
【0085】
予め決められたパッチ形成可能領域内に予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成した場合に、トナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量が消費可能である、と判断された場合は、図3の例のように、トナー消費用パッチ形成の際に、現像DCバイアス251とグリッド電圧231を予め決められたトナー濃度に対応する基準の値から変化させることなく、予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成させる。
【0086】
図4は、後述する制御により、予め決められたパッチ形成可能領域内に予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成した場合に、トナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量を消費しきれない、と判断された場合に形成されるトナー消費用パッチのレイアウトの一例を示す図である。
【0087】
図4においても図3と同様に、トナー消費用パッチが下層から順に、ブラック色パッチPK2、シアン色パッチPC2、マゼンタ色パッチPM2、イエロー色パッチPY2となった状態でベルト209に転写されている。
【0088】
後述の制御により、予め決められたパッチ形成可能領域内に予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成した場合に、トナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量を消費しきれない、と判断された色に関しては、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量を消費するようにしている。
【0089】
図4においては、マゼンタ色パッチPM2のトナー濃度が、上記のように予め決められたトナー濃度より大きくなる例を示している。
【0090】
図4の下部に示すように、トナー消費用パッチのトナー濃度を上昇させるために、マゼンタ色に対応する画像形成ユニット21bにおける現像DCバイアス252とグリッド電圧232とがそれぞれ所定のタイミングで変化している。現像DCバイアス252とグリッド電圧232とを、それぞれ予め決められたトナー濃度に対応する基準の値から1段階変化させることで、最大のトナー濃度でマゼンタ色のトナー消費用パッチが形成されている。
【0091】
現像DCバイアス252については、先行の用紙Saに転写されるトナー像の後端部から12mmだけ離れた位置に対応するタイミングで出力が変化している。これは、対応する色(マゼンタ色)の感光体ドラム上における、現像部によってトナーが供給される位置を基準とした出力の様子である。つまり、対応する色(マゼンタ色)の現像部によって感光体ドラム上に先行の用紙Saに転写されるトナー像が形成され、感光体ドラム上の該トナー像の後端部が、感光体ドラム上における現像部によってトナーが供給される位置から12mmだけ離れた位置まで進んだタイミングで、現像DCバイアス252を変化させるということである。
【0092】
同じくグリッド電圧232については、先行の用紙Saに転写されるトナー像の後端部から7mmだけ離れた位置に対応するタイミングで出力が変化している。これは、対応する色(マゼンタ色)の感光体ドラム上における、帯電部によって帯電がなされる位置を基準とした出力の様子である。つまり、対応する色(マゼンタ色)の帯電部によって感光体ドラム上における先行の用紙Saに転写されるトナー像が形成される領域が帯電され、感光体ドラム上の該領域の後端部が、感光体ドラム上における帯電部によって帯電がなされる位置から7mmだけ離れた位置まで進んだタイミングで、グリッド電圧232を変化させるということである。
【0093】
現像DCバイアスやグリッド電圧を上昇させる場合は、上昇開始から上昇後の所望の出力が安定するまでにそれぞれ所定の時間を要する。この、上昇開始から出力安定までに要する時間のことを立ち上がり時間と呼ぶ。
【0094】
この立ち上がり時間を考慮して、図4に示すように、現像DCバイアス252やグリッド電圧232の変化のタイミングは、トナー消費用パッチの形成開始位置に対応するタイミングよりそれぞれ早いタイミングとなっている。これは、各条件の上昇後の出力が安定している状況でトナー消費用パッチを形成するためである。
【0095】
図5は、図4に示す例のように予め決められたパッチ形成可能領域内に予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度でトナー消費用パッチを形成したとしても、トナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量を消費し切れない、と判断された場合に形成されるトナー消費用パッチのレイアウトの一例を示す図である。
【0096】
図5においても図3、図4と同様に、トナー消費用パッチが下層から順に、ブラック色パッチPK3、シアン色パッチPC3、マゼンタ色パッチPM3、イエロー色パッチPY3となった状態でベルト209に転写されている。
【0097】
紙間領域は図3、図4と比較して広げられており、その用紙搬送方向の長さは104mmとなっている。それに伴いパッチ形成可能領域も広げられており、その用紙搬送方向の長さは80mmとなっている。
【0098】
後述の制御により、予め決められたパッチ形成可能領域内に予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度でトナー消費用パッチを形成したとしても、トナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量を消費し切れない、と判断された色に関しては、パッチを形成可能な領域を、紙間領域を広げることで大きくし、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度で、且つ予め決められたパッチ形成可能領域より大きいトナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量を消費するようにしている。
【0099】
図5においては、マゼンタ色パッチPM3について、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度で、且つ予め決められたパッチ形成可能領域より大きいトナー消費用パッチが形成された例を示している。
【0100】
図5の下部に示すように、マゼンタ色のトナー消費用パッチのトナー濃度を上昇させるために、マゼンタ色に対応する画像形成ユニット21bにおける現像DCバイアス253とグリッド電圧233とがそれぞれ所定のタイミングで変化している。現像DCバイアス253とグリッド電圧233とをそれぞれ、予め決められたトナー濃度に対応する基準の値から1段階変化させることで、最大のトナー濃度でマゼンタ色のトナー消費用パッチが形成されている。
【0101】
現像DCバイアス253とグリッド電圧233との出力変化のタイミングは、それぞれ図4において説明した場合と同様であり、立ち上がり時間を考慮して、各条件の上昇後の出力が安定している状況でトナー消費用パッチを形成している。
【0102】
図6は、予め決められたパッチ形成可能領域内に予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度でトナー消費用パッチを形成したとしても、トナー消費用パッチを形成することで消費すべきトナー量を消費し切れない、との判断がなされた場合における、ベルト209上に転写されたトナー消費用パッチのレイアウトの他の一例を示す図である。
【0103】
図6においても、トナー消費用パッチが下層から順に、ブラック色パッチPK4、シアン色パッチPC4、マゼンタ色パッチPM4、イエロー色パッチPY4となった状態でベルト209に転写されている。紙間領域は図3、図4と比較して広げられており、その用紙搬送方向の長さは104mmである。それに伴い、パッチ形成可能領域も広げられており、その用紙搬送方向の長さは83mmとなっている。
【0104】
図6では、マゼンタ色パッチPM4について、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度で、且つ予め決められたパッチ形成可能領域より大きいトナー消費用パッチが形成された例を示している。
【0105】
図6に示す例においては、現像DCバイアス254の変化のタイミングとトナー消費用パッチの形成開始に対応するタイミングとが一致している。即ち、濃度を大きくすべき色(マゼンタ色)に対応した現像部において現像DCバイアス254を切り替え、その切り替え開始と同じタイミングで、現像DCバイアス254の出力の安定化を待たずに、感光体ドラム上へのトナーの供給を開始しトナー消費用パッチを形成するようにしている。
【0106】
上記のように現像DCバイアス254の切り替え開始と同じタイミングでトナー消費用パッチを形成するようにすると、形成されたトナー消費用パッチにおける現像DCバイアス254の出力が安定していない期間に対応する部分については、ムラが発生する等の可能性がある。しかしながらトナー消費用パッチを形成する目的はトナーを消費することであるため、必ずしもトナー消費用パッチが均一な濃度分布で形成されなくても良い。
【0107】
図6に示す例のように、現像DCバイアス254の出力が安定し切れない期間に対応する感光体ドラム上の領域も利用してトナー消費用パッチを形成することで、図5に示す例と比較して、同じ紙間領域においてより大きいトナー消費用パッチを形成し、より多くのトナーを消費することが可能となり、画像の安定性をより確実に保つことが可能となる。
【0108】
図6においては、現像DCバイアス254の立ち上がり時間を利用して、現像DCバイアス254の出力の安定化を待ってトナー消費用パッチを形成する場合より多くのトナーを消費する例を示したが、現像DCバイアスの出力が予め決められたトナー濃度に対応する基準の出力に復帰する(立ち下がる)際にも、同様のことが言える。
【0109】
図6に示す例においては、引き上げられた現像DCバイアス254の出力から、予め決められたトナー濃度に対応する基準の出力への復帰が開始するタイミングと同じタイミングで、マゼンタ色パッチPM4の形成が完了している。しかしながら実際には、引き上げられた出力から予め決められたトナー濃度に対応する基準の出力への復帰が開始してから完了するまでに所定の時間を要する。この時間のことを立ち下がり時間と呼ぶ。
【0110】
図7に示すように、現像DCバイアス255の立ち下がり時間を利用し、予め決められたトナー濃度に対応する基準の出力への復帰完了と同じタイミングで、マゼンタ色パッチPM5の形成を完了させるようにすることもできる。その結果、図6と比較して、マゼンタ色パッチPM5の用紙搬送方向の長さが3mm増加している。
【0111】
現像DCバイアス255の立ち下がり時間を利用してトナー消費用パッチを形成することで、図6と比較して、同じ紙間領域においてさらに大きいトナー消費用パッチを形成し、より多くのトナーを消費することが可能となり、画像の安定性をより確実に保つことが可能となる。
【0112】
次に、用紙に対する画像形成動作中にトナー消費用パッチを形成しトナーを強制的に消費する場合における、画像形成装置1の各部の動作の詳細について図1から図9を参照しながら説明する。図8は、システム制御部51による制御手順のメインルーチンを示したフローチャートである。図9は、図8のステップS9(トナー消費用パッチ演算サブルーチン)を示したフローチャートである。
【0113】
図8に示すフローチャートにおいて、システム制御部51は、まず上述したように画像形成ユニット21a〜21dに対して先行の用紙に形成される画像に対応したトナー像をそれぞれ形成させる(ステップS1)。次に、用紙に転写される各色のトナー像の面積を示す黒化面積のデータを黒化面積取得・通知処理部53より受信する(ステップS2)。
【0114】
システム制御部51は、受信した各色の黒化面積のデータを基に、カバレッジを算出する処理をカバレッジデータ処理部64に行わせるようエンジン制御部61に対して指示する(ステップS3)。
【0115】
システム制御部51は、予め操作入力部40において、用紙1枚の画像形成毎に消費すべきトナー量として0%が設定されているか否か、即ちトナー節約モードが設定されているか否かを判断することで、紙間にパッチを形成させるか否かを決定する(ステップS4)。トナー節約モードが設定されていると判断すると(ステップS4:No)、紙間にパッチは形成させずに処理を終了する。
【0116】
ステップS4においてトナー節約モードが設定されていないと判断した場合は(ステップS4:Yes)、システム制御部51は次に、紙間パッチ作成判断処理部65に対して紙間に形成すべきパッチの種類を判断させるよう指示する(ステップS5)。
【0117】
パッチの種類にはトナー消費用パッチの他に、トナーの濃度変化等を検知させ、検知されたデータに基づき画像形成条件を修正して画像の安定性を維持するための補正パッチと呼ばれるパッチも存在する。本実施の形態において補正パッチは、所定枚数の用紙に対して画像形成を行う毎に形成されるよう予め設定されており、トナー消費用パッチより優先して形成される。尚、本発明におけるパッチとは、トナー消費用パッチのことを指す。
【0118】
ステップS6では、紙間パッチ作成判断処理部65による判断に基づいて、形成すべきパッチがトナー消費用パッチであるか補正パッチであるかが決定される。ステップS6において補正パッチを形成すべきと判断された場合は(ステップS6:No)、システム制御部51は、補正パッチを形成するためのステップS7(補正パッチ作成サブルーチン)を実行する。ステップS7についての説明は省略する。
【0119】
一方、紙間パッチ作成判断処理部65によって紙間に形成すべきパッチが補正パッチではないと判断された場合は、システム制御部51は、紙間に形成すべきパッチはトナー消費用パッチであると決定し(ステップS6:Yes)、用紙1枚の画像形成において目標となるトナー消費量を決定し(ステップS8)、ステップS9(トナー消費用パッチ演算サブルーチン)に進む。
【0120】
具体的には、ステップS8では、予め操作入力部40において設定された用紙1枚の画像形成毎に消費すべきトナー量が用紙の面積に対して何%であったかを参照することで決定する。
【0121】
ステップS8で用紙1枚毎に目標となるトナー消費量を決定すると、図9に示すトナー消費用パッチ演算サブルーチンにおいて、システム制御部51は、1つの色に関してトナー消費用パッチを形成することにより消費すべきトナー量を算出する(ステップS91)。
【0122】
具体的には、ステップS8で決定されたトナー量から、ステップS3で得られたカバレッジに基づくトナー量を減算することで、1つの色に関してトナー消費用パッチを形成することにより消費すべきトナー量を決定する。
【0123】
1つの色に関してトナー消費用パッチを形成することにより消費すべきトナー量を決定すると、システム制御部51は、紙間内の予め決められたパッチ形成可能領域においてトナー消費用パッチを形成することにより、ステップS91において算出されたトナー量が消費可能か否かを判断する(ステップS92)。
【0124】
具体的には、予め決められたパッチ形成可能領域に予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量と、ステップS91において算出されたトナー量とを比較し、予め決められたパッチ形成可能領域に予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量がステップS91において算出されたトナー量以上であれば、ステップS91において算出されたトナー量は消費可能であると判断する。
【0125】
パッチを形成することにより消費すべきトナー量が消費可能であると判断すると(ステップS92:No)、システム制御部51は、トナー消費用パッチ形成のために必要な領域を決定し(ステップS93)、図8のメインルーチンに戻る。具体的には、予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成する際にステップS91で算出されたトナー量を消費するために必要な領域を算出する。
【0126】
さらに具体的には、ステップS93において決定される領域の用紙搬送方向に直交する方向の長さは各色の感光体ドラムの主走査方向の長さである。従って、ステップS93においては、システム制御部51は、消費すべきトナー量を消費するために必要な領域を決定するために、感光体ドラムの主走査方向の長さと、ステップS91において算出された消費すべきトナー量と、予め決められたトナー濃度と、を考慮してパッチが形成される領域の用紙搬送方向の長さを算出する。
【0127】
一方、パッチを形成することにより消費すべきトナー量が消費不可能であると判断すると(ステップS92:Yes)、システム制御部51は、トナー消費用パッチのトナー濃度を大きくした場合に、予め決められたパッチ形成可能領域内において、上記パッチを形成することにより消費すべきトナー量が消費可能であるか否かを判断する(ステップS94)。
【0128】
具体的には、予め決められたパッチ形成可能領域に最大のトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量と、ステップS91において決定されたトナー量とを比較し、予め決められたパッチ形成可能領域に最大のトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量が、ステップS91において算出されたトナー量以上であれば、ステップS91において算出されたトナー量は消費可能であると判断する。
【0129】
予め決められたパッチ形成可能領域内にトナー濃度を大きくしたトナー消費用パッチを形成することにより、消費すべきトナー量が消費可能であると判断した場合は(ステップS94:Yes)、システム制御部51は、トナー消費用パッチ形成のために必要な領域を決定し(ステップS95)、図8のメインルーチンに戻る。具体的には、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度でパッチを形成することによって消費すべきトナー量を消費するために必要な領域を算出する。
【0130】
さらに具体的には、ステップS95において決定される領域の用紙搬送方向に直交する方向の長さは各色の感光体ドラムの主走査方向の長さである。従って、ステップS95においては、システム制御部51は、消費すべきトナー量を消費するために必要な領域を決定するために、感光体ドラムの主走査方向の長さと、ステップS91において算出された消費すべきトナー量と、を考慮して、形成されるトナー消費用パッチのトナー濃度と、トナー消費用パッチが形成される領域の用紙搬送方向の長さとを決定する。
【0131】
ここで、形成されるトナー消費用パッチのトナー濃度は、予め決められたトナー濃度より大きく且つ最大のトナー濃度以下の範囲内で、適宜設定される。但し、予め決められたトナー濃度より大きく且つ最大のトナー濃度以下の範囲内であっても、ステップS91において算出された消費すべきトナー量を消費するために形成されるトナー消費用パッチの大きさが、予め決められたパッチ形成可能領域より大きくなってしまうようなトナー濃度が設定されることはない。
【0132】
本実施の形態においては、図4、図5、図6及び図7に示すように、トナー消費用パッチのトナー濃度を大きくすべき場合は、画像形成の条件である現像DCバイアスとグリッド電圧とをそれぞれ、予め決められたトナー濃度に対応する基準の値から1段階引き上げており、画像形成条件を1段階引き上げることでトナー消費用パッチのトナー濃度を最大のトナー濃度まで引き上げトナー消費用パッチを形成している。
【0133】
ステップS94において、予め決められたパッチ形成可能領域内にトナー濃度を大きくしたパッチを形成しても消費すべきトナー量が消費不可能であると判断した場合は(ステップS94:No)、システム制御部51は、紙間を広げることでパッチを形成可能な領域を予め決められたパッチ形成可能領域より大きくするか否かを決定する(ステップS96)。具体的には、予め操作入力部40において生産性を優先する様に設定がなされているか否かを判断する。
【0134】
ユーザは、予め操作入力部40の図示しない画面において、生産性を優先する様に設定することが可能である。予め生産性を優先する様に設定がなされている場合は、後に説明するように、紙間領域を広げる動作を禁止し、予め決められた紙間領域内の予め決められたパッチ形成領域内においてトナー消費用パッチを形成させるようにすることで、画像の安定性よりも生産性の確保が優先される。
【0135】
一方、予め生産性を優先するように設定がなされていない場合は、後に説明するように、状況に応じて紙間領域を広げる動作を許可し、消費すべきトナー量を確実に消費させるようにすることで、生産性の確保よりも画像の安定性の確保が優先される。
【0136】
予め操作入力部40において生産性を優先するように設定がなされていないと判断した場合は(ステップS96:Yes)、システム制御部51は、トナー消費用パッチ形成のために必要な領域を決定し(ステップS97)、図8のメインルーチンに戻る。具体的には、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することによって消費すべきトナー量を消費するために必要な領域を算出する。
【0137】
さらに具体的には、ステップS97において決定される領域の用紙搬送方向に直交する方向の長さは各色の感光体ドラムの主走査方向の長さである。従って、ステップS97においては、システム制御部51は、消費すべきトナー量を消費するために必要な領域を決定するために、感光体ドラムの主走査方向の長さと、消費すべきトナー量と、を考慮して、形成されるトナー消費用パッチのトナー濃度と、トナー消費用パッチが形成される領域の用紙搬送方向の長さとを決定する。このとき、算出される領域は、予め決められたパッチ形成可能領域より大きい領域である。
【0138】
ここで、形成されるトナー消費用パッチのトナー濃度は、予め決められたトナー濃度より大きく且つ最大のトナー濃度以下の範囲内で、適宜設定される。しかしながら、ステップS97のような紙間領域を広げる場合においては、形成されるトナー消費用パッチのトナー濃度は出来る限り大きくすることが好ましい。なぜなら、トナー消費用パッチのトナー濃度が大きいほどトナー消費用パッチが形成される領域が小さくなり、結果として広げられる分の紙間領域の大きさもより小さくなるため、紙間領域を広げることによる生産性の低下を小さく留めることができるからである。
【0139】
ステップS96において、予め操作入力部40において生産性を優先するように設定がなされていると判断した場合は(ステップS96:No)、システム制御部51は、トナー消費用パッチ形成のために必要な領域を決定し(ステップS98)、図8のメインルーチンに戻る。具体的には、決定されるパッチ形成のために必要な領域は、予め決められたパッチ形成可能領域全域である。
【0140】
ステップS9のS93、S95、S97、S98の何れか1つのステップにおいて、1つの色についてパッチ形成のために必要な領域を決定すると、図8のメインルーチンに戻って、システム制御部51は、トナー消費用パッチ形成のために必要な領域が全ての色について決定されたか否かを判断する(ステップS10)。
【0141】
パッチ形成のために必要な領域が全ての色について決定されていないと判断すると(ステップS10:No)、システム制御部51は、ステップS9に戻り、未だパッチ形成のために必要な領域が決定されていない色についてその領域を決定するために上述した制御を行う。
【0142】
システム制御部51は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色全てについてパッチ形成のために必要な領域が決定されるまでステップS9およびステップS10の制御を繰り返す。パッチ形成のために必要な領域の決定についてはどの色から行っても良い。
【0143】
ステップS10において、全ての色についてパッチ形成のために必要な領域が決定されたと判断すると(ステップS10:Yes)、システム制御部51は、決定された全ての色に関するパッチ形成のために必要な領域を考慮し、必要となる紙間の大きさを決定する(ステップS11)。
【0144】
具体的に説明すると、システム制御部51はまず、ステップS93、S95、S97、S98の何れか1つのステップにおいて決定された各色のパッチ形成のために必要な領域の中で、最大の領域を認識する。
【0145】
次に、先行の用紙Saに転写されるトナー像の後端部と、認識した最大の領域の用紙搬送方向先端部との間に設ける領域の用紙搬送方向の長さを決定する。本実施の形態においては、図3、図4、図5の例のように、グリッド電圧の立ち上がり時間を利用せずにトナー消費用パッチを形成するとの設定の場合は、当該領域の用紙搬送方向の長さは15mmとしている。
【0146】
一方、図6、図7の例のように、グリッド電圧の立ち上がり時間を利用してトナー消費用パッチを形成するとの設定の場合は、当該領域の用紙搬送方向の長さは12mmとしている。
【0147】
次に、パッチ形成のために必要な最大の領域の用紙搬送方向後端部と、後続の用紙Sbに転写されるトナー像の先端部との間に設ける領域の用紙搬送方向の長さを決定する。本実施の形態においては、図3、図4、図5、図6の例のように、グリッド電圧の立ち下がり時間を利用せずにトナー消費用パッチを形成するとの設定の場合は、当該領域の用紙搬送方向の長さは9mmとしている。
【0148】
一方、図7の例のように、グリッド電圧の立ち下がり時間を利用してトナー消費用パッチを形成するとの設定の場合は、当該領域の用紙搬送方向の長さは6mmとしている。
【0149】
そして、パッチ形成のために必要な最大の領域に、その最大の領域の用紙搬送方向の前後に設けられる領域を加えた領域が必要となる紙間領域である、と決定する。
【0150】
例えば図3に示す例のように、各色のパッチ形成のために必要な領域の中で、最大の領域が予め決められたパッチ形成可能領域(用紙搬送方向の長さが60mm)より小さい場合は、予め決められたパッチ形成可能領域(用紙搬送方向の長さが60mm)と、その前後の所定の領域(用紙搬送方向の長さがそれぞれ15mm、9mm)とを加えた領域(用紙搬送方向の長さが84mm)が必要となる紙間領域であると決定する。
【0151】
パッチ形成のために必要な領域の前後にそれぞれ所定の領域を設けるのは、パッチ形成に用いられるトナーが、用紙に転写されるトナー像と干渉し用紙に転写されるトナー像の画質が低下するという不具合を防止するためである。よって、パッチ形成のために必要な領域の前後に設けられる領域の大きさは、上記説明した具体的な大きさに限られず、適宜設定することができる。
【0152】
必要とされる紙間の大きさが決定されると、システム制御部51は、紙搬送制御部62に対して、決定された紙間の大きさを通知するとともに、通知した紙間の大きさに応じた適切なタイミングで用紙を給紙、搬送させるよう指示する(ステップS12)。
【0153】
紙搬送制御部62に対して紙間の大きさが通知されると、システム制御部51は、紙間パッチ作像処理部66に対して、上記制御で決定されたパッチを形成させるように要求する(ステップS13)。
【0154】
そして、各色のトナー像を形成する画像形成ユニット21a〜21dによって各感光体ドラム22a〜22dにそれぞれ用紙に転写されるトナー像が形成される。用紙に転写されるトナー像の形成が完了してから所定の時間が経過すると、画像形成ユニット21a〜21dによって上述した制御により決定されたトナー濃度、大きさのパッチの形成が開始される。上述した制御により決定されたパッチ形成の条件によっては、画像形成のプロセス条件を切り替えることでパッチのトナー濃度を上昇させる必要がある。
【0155】
画像形成のプロセス条件を切り替える必要があると判断すると(ステップS14:Yes)、システム制御部51は、紙間パッチ作像処理部66に対して、画像形成のプロセス条件として、対応する色の現像部における現像DCバイアスと対応する色の帯電部におけるグリッド電圧とをそれぞれ図3、図4、図5、図6及び図7に示す何れかのタイミングで切り替えさせるよう指示をする(ステップS15)。
【0156】
画像形成のプロセス条件を切り替える必要がないと判断した場合は(ステップS14:No)、システム制御部51は、紙間パッチ作像処理部66に対して画像形成のプロセス条件を切り替えさせる指示はせずに処理を終了する。
【0157】
以上が用紙に対する画像形成動作中にトナー消費用パッチを形成しトナーを強制的に消費する場合における、画像形成装置1の各部の動作の詳細である。
【0158】
本発明に係る画像形成装置によれば、用紙1枚の画像形成毎に消費されるべきトナー量が、予め決められたパッチ形成領域内において予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することにより消費可能な最大のトナー量より多い場合、システム制御部51が、予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のトナー消費用パッチを形成させるよう画像形成部20を制御するので、画像形成の生産性の低下を抑えながら消費すべき量のトナーを確実に消費し、安定した画像を形成することが可能となる。
【0159】
また、用紙1枚の画像形成毎に消費されるべきトナー量が、予め決められたパッチ形成可能領域内において、最大のトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することにより消費可能な最大のトナー量より多い場合、システム制御部51は、紙間領域を広げることでトナー消費用パッチが形成可能な領域を大きくし、予め決められたパッチ形成可能領域より大きなトナー消費用パッチを形成するよう画像形成部20を制御するので、確実に消費すべきトナー量を消費することができ、安定した画像を形成することが可能となる。
【0160】
また、予め操作入力部40において生産性を優先する様に設定がなされている場合は、システム制御部51は、紙間領域を広げる制御を行わないように画像形成部20を制御するので、生産性を落とすことなく画像形成を行うことが可能となる。
【0161】
また、トナー消費用パッチのトナー濃度を大きくする際に画像形成条件を変更する場合に、システム制御部51は、画像形成条件の変更開始時点に対応するタイミングでトナー消費用パッチの形成を開始させるよう画像形成部20を制御するので、変更後の画像形成条件の安定を待ってトナー消費用パッチの形成を開始させる場合より多くの量のトナーを消費することができ、安定した画像を形成することが可能となる。
【0162】
同じく、トナー消費用パッチのトナー濃度を大きくする際に画像形成条件を変更する場合に、システム制御部51は、変更された画像形成条件から予め決められたトナー濃度に対応する基準の条件への復帰が完了した時点に対応するタイミングでトナー消費用パッチの形成を完了させるよう制御するので、画像形成条件が安定している期間に対応してトナー消費用パッチを形成する場合より多くの量のトナーを消費することができ、安定した画像を形成することが可能となる。
【0163】
また、本実施の形態においては、システム制御部51が、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、ブラック色の複数の色にそれぞれ対応する画像形成ユニット21a〜21dに対して、色毎に制御を行う例を説明した。しかしながら、本発明は1つの色に対応する1つの画像形成手段を有する画像形成装置、例えばモノクロ画像を形成する画像形成装置、においても適用可能であることは言うまでもない。
【0164】
本実施の形態においては、トナー消費用パッチを形成する際に、各色の画像形成ユニットが、先行の用紙に転写されるトナー像と後続の用紙に転写されるトナー像との間の紙間領域にトナー消費用パッチを形成するようにしているが、これに限定されるものではない。
【0165】
画像形成動作を停止或いは中断させない範囲であれば、用紙に転写されるトナー像が形成される領域以外の領域であって、且つ紙間領域以外の領域に本発明における予め決められたパッチ形成可能領域を設け、トナー消費用パッチを形成するようにしても良い。
【0166】
また、本実施の形態においては、システム制御部51が本発明における制御手段、第1のトナー量算出手段、第1のトナー量比較手段、第2のトナー量算出手段、第2のトナー量比較手段、としての役割を果たす場合について説明したが、上記各手段の役割を果たす構成をそれぞれ別個に設けても良い。
【0167】
また、本実施の形態においては、トナー消費用パッチのトナー濃度を大きくする場合に、現像部の現像DCバイアスと帯電部のグリッド電圧を基準の条件から変化させることでトナー濃度を大きくしていたが、これに限定されるものではない。例えば露光の際の露光量等、他の画像形成条件を変化させることでも、トナー濃度を大きくすることができ、本発明を実施することが可能である。
【0168】
さらに、本実施の形態においては、上記画像形成条件の変化として、図3〜図7に示すように上記画像形成条件を1段階引き上げることでトナー消費用パッチのトナー濃度を最大のトナー濃度まで大きくし、予め決められたパッチ形成可能領域において引き上げられたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成することで消費される最大のトナー量と消費すべきトナー量との比較を行う例を説明した。
【0169】
しかしながら、トナー消費用パッチのトナー濃度を大きくする場合に、画像形成条件の変化に複数の段階を持たせても良い。
【0170】
この場合の制御手順の一例を説明する。図9のステップS92において、予め決められたパッチ形成可能領域内において、予め決められたトナー濃度でトナー消費用パッチを形成しても、ステップS91において算出された消費すべきトナー量を消費し切れない、と判断された場合に、システム制御部51はまず、予め決められたトナー濃度から1段階トナー濃度を引き上げたときに、予め決められたパッチ形成可能領域内において、ステップS91において算出された消費すべきトナー量が消費可能か否かを判断する。
【0171】
1段階トナー濃度を引き上げただけでは消費すべきトナー量を消費し切れないと判断された場合は、もう1段階トナー濃度を引き上げたときに、予め決められたパッチ形成可能領域内において、ステップS91において算出された消費すべきトナー量が消費可能か否かを判断する。
【0172】
以下同様の制御を繰り返し、予め決められたパッチ形成可能領域内において、ステップS91において算出された消費すべきトナー量が消費可能であると判断されたところでその段階のトナー濃度でトナー消費用パッチを形成させるようにすれば良い。
【0173】
システム制御部51は、1段階ずつトナー濃度を引き上げたときに、消費すべきトナー量が消費可能か否かを判断し、最終的に最大のトナー濃度まで引き上げても、予め決められたパッチ形成可能領域内において、ステップS91において算出された消費すべきトナー量を消費し切れないと判断された場合は、上述のように、図9のステップS96へ進み、紙間領域を広げるか否かの決定をするようにする。
【0174】
トナー消費用パッチのトナー濃度を引き上げるときに、常に最大のトナー濃度でトナー消費用パッチを形成させるような場合は、形成されたトナー消費用パッチを除去し切れずにトナーが各色に対応した感光体ドラム、中間転写ベルト201、或いはベルト209に残存し、後続の画像形成に影響を及ぼす可能性が高くなるという問題点がある。
【0175】
しかしながら上記のように、特にトナー消費用パッチのトナー濃度を引き上げることで、予め決められたパッチ形成可能領域内において、ステップS91において算出された消費すべきトナー量が消費可能である場合に、トナー濃度の引き上げを必要最小限にとどめるような制御を行うことで、形成されたトナー消費用パッチが除去されず残存する可能性を低減させることが可能となる。
【0176】
その他、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない限りにおいて異なる実施形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0177】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 画像形成部
21a、21b、21c、21d 画像形成ユニット
22a、22b、22c、22d 感光体ドラム
23a、23b、23c、23d 帯電部
24a、24b、24c、24d 露光部
25a、25b、25c、25d 現像部
26a、26b、26c、26d 1次転写ローラ
201 中間転写ベルト
202 2次転写部
209 ベルト
30 用紙給紙部
40 操作入力部
44 操作パネル制御部
50 全体制御部
51 システム制御部
60 エンジン部
61 エンジン制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体にトナー像を形成し、形成されたトナー像を用紙に転写することで用紙に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段を制御する制御手段と、
前記像担持体に、トナーを消費するためのトナー像であるパッチを形成すべきか否かを判断するパッチ形成判断手段と、を有し、
前記パッチ形成判断手段により前記パッチを形成すべきと判断された場合に、前記制御手段が、前記像担持体における予め決められたパッチ形成可能領域に、予め決められたトナー濃度で前記パッチを形成させるよう前記画像形成手段を制御する画像形成装置において、
前記パッチ形成判断手段により前記パッチを形成すべきと判断された場合に、前記パッチを形成することにより消費されるべきトナー量を算出する第1のトナー量算出手段と、
前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量と、前記予め決められたパッチ形成可能領域において前記予め決められたトナー濃度で前記パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量とを比較する第1のトナー量比較手段と、を有し、
前記第1のトナー量比較手段の比較により、前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量が、前記予め決められたパッチ形成可能領域において前記予め決められたトナー濃度で前記パッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量より多い場合、前記制御手段は、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成させるよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記予め決められたパッチ形成可能領域は、前記像担持体における、先行の用紙に転写されるトナー像と後続の用紙に転写されるトナー像との間の領域内にある画像形成装置であって、
前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量と、前記予め決められたパッチ形成可能領域において最大のトナー濃度のパッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量とを比較する第2のトナー量比較手段を有し、
前記第2のトナー量比較手段の比較により、前記第1のトナー量算出手段により算出されたトナー量が、前記予め決められたパッチ形成可能領域において前記最大のトナー濃度のパッチを形成することにより消費され得る最大のトナー量より多い場合、前記制御手段は、前記先行の用紙に転写されるトナー像と前記後続の用紙に転写されるトナー像との間隔を広げるよう制御することで、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成可能な領域を、前記予め決められたパッチ形成可能領域より大きくし、さらに前記制御手段は、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度であり且つ前記予め決められたパッチ形成可能領域より大きいパッチを形成させるよう制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
画像形成の生産性を優先する様に設定可能な生産性優先設定手段を有し、
前記生産性優先設定手段により前記画像形成の生産性を優先する様に設定されている場合に、前記制御手段は、前記先行の用紙に転写されるトナー像と前記後続の用紙に転写されるトナー像との間隔を広げる制御を行わないことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成する際に、前記制御手段は、画像形成条件を前記予め決められたトナー濃度に対応する条件から変更することで前記パッチのトナー濃度を大きくするよう前記画像形成手段を制御するものであって、
前記制御手段は、前記画像形成条件の変更開始時点に対応する所定のタイミングから前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチの形成を開始させるよう制御することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチを形成する際に、前記制御手段は、画像形成条件を前記予め決められたトナー濃度に対応する条件から変更することで前記パッチのトナー濃度を大きくするよう前記画像形成手段を制御するものであって、
前記制御手段は、前記変更された画像形成条件から前記予め決められたトナー濃度に対応する条件への復帰が完了した時点に対応する所定のタイミングにおいて、前記予め決められたトナー濃度より大きいトナー濃度のパッチの形成を完了させるよう制御することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数の異なる色に対応する複数の前記画像形成手段を有し、
前記制御手段は、複数の前記画像形成手段を前記複数の異なる色毎に制御することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−189663(P2012−189663A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51136(P2011−51136)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】