画像形成装置
【課題】画像形成装置のダウンタイムの増大や消費電力の増加を招かずに、カール癖等によるトナーパッチの検出誤差に起因した画質調整制御の調整精度の悪化を防ぐことを課題とする。
【解決手段】光学センサ69の出力値を用いて画像濃度調整制御を実行する際、各トナーパッチについて、そのトナーパッチに対応する複数のセンサ出力値の最大値と最小値との差が規定値以上であるという所定の異常条件を満たすか否かを判断し、所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチのセンサ出力値については画像濃度調整制御に用いられないよいにする(S10)。
【解決手段】光学センサ69の出力値を用いて画像濃度調整制御を実行する際、各トナーパッチについて、そのトナーパッチに対応する複数のセンサ出力値の最大値と最小値との差が規定値以上であるという所定の異常条件を満たすか否かを判断し、所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチのセンサ出力値については画像濃度調整制御に用いられないよいにする(S10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、使用環境(温度や湿度)の変化あるいは経時変化によって画像濃度が変化するという問題がある。そのため、電子写真方式の画像形成装置の多くは、常に安定した画像濃度を得るために、所定タイミングで画像濃度調整制御を実施する。画像濃度調整制御は、一般に、目標画像濃度が互いに異なる複数のトナーパッチで構成される濃度検知用の階調パターン(トナーパターン)を感光体等の像担持体上に作成し、そのパターンの各パッチ濃度を光学センサにより検出する。そして、各パッチ濃度の検出結果(光学センサの出力値)から各パッチのトナー付着量を算出し、現像ポテンシャルに対するトナー付着量を示す関係式(この関係式の傾きを「現像γ」といい、X軸切片を「現像開始電圧」という。)を求める。その後、求めた現像ポテンシャルとトナー付着量の関係式から、特定の画像濃度で目標とするトナー付着量が得られるように、作像条件(露光パワー、帯電バイアス、現像バイアスなど)を変更する。また、必要に応じて、トナー濃度制御基準値も変更して現像剤中のトナー濃度が適正値となるように調整する。
【0003】
階調パターンを構成する各トナーパッチのトナー付着量を検出するための光学センサは、LEDなどの発光素子と、フォトトランジスタなどの受光素子とで構成されている。この種の光学センサは、正反射光のみを検出するタイプと、拡散反射光のみを検出するタイプと、両者を検出するタイプのいずれかが、一般に用いられている。光学センサを用いて階調パターンを構成する各トナーパッチのトナー付着量を検出する場合、像担持体の表面(検出対象面)に作成された各トナーパッチにLED光を照射し、その反射光(正反射光、拡散反射光)を受光素子で検知して、その検出結果(光学センサの出力値)をトナー付着量に変換することにより、各トナーパッチに付着しているトナー量を得る。
【0004】
このような光学センサにおいては、検出対象(各トナーパッチ)との距離(検出距離)を精度よく一定に維持することが重要である。検出距離が変動するとセンサ特性が変化して検出精度が低下し、画像濃度調整制御に悪影響を及ぼす場合があるからである。
ここで、検出対象であるトナーパッチを担持する像担持体が中間転写ベルトなどの無端ベルト状部材であると、光学センサと各トナーパッチとの距離(検出距離)を精度よく一定に維持することが困難な場合がある。具体的に説明すると、このような無端ベルト状像担持体は、通常、駆動ローラとの間でスリップが生じないように、かなりの張力で複数の支持ローラに張架されている。また、無端ベルト状像担持体は、画像形成装置の小型化のため、支持ローラに対する巻き付け角度が大きく、かつ、支持ローラの径が小さい場合が多いため、支持ローラに巻き付いたベルト部分が大きく急激に曲げられる。そのため、無端ベルト状像担持体の駆動停止状態が継続すると、支持ローラに巻き付いた無端ベルト状像担持体のベルト部分がローラ曲面に沿って変形してしまう場合がある。以下、この変形を「カール癖」という。特に、高湿環境下において停止状態の無端ベルト状像担持体が長時間放置されると、カール癖が顕著に発生する。これは、樹脂等のベルト材料が吸湿して伸び量が増えるためである。このようなカール癖が発生した場合、そのカール癖発生部分に付着したトナーパッチと光学センサとの距離(検出距離)が、カール癖が発生していない平坦なベルト部分の検出距離とは異なるものとなる。その結果、そのカール癖発生部分ではセンサ特性が変化して検出誤差が生じる。このような検出誤差を含んだセンサ出力値に基づいて画像濃度調整制御を行っても、適正な画像濃度には調整できない。
【0005】
また、複数の潜像担持体それぞれに形成した複数のトナー像を互いに重ね合わせて画像形成を行ういわゆるタンデム型の画像形成装置では、使用環境(温度や湿度)の変化あるいは経時変化によって各トナー像の重ね合わせ位置が相対的にずれてしまう色ズレと呼ばれる問題がある。そのため、タンデム型の画像形成装置では、所定タイミングで、色ズレ調整制御を実施する。色ズレ調整制御では、各潜像担持体上に形成したトナーパッチを中間転写体上に転写し、各トナーパッチの位置を光学センサで検出し、各トナーパッチの相対位置が目標相対位置となるように調整する。中間転写体が無端ベルト状部材であり、上述したようなカール癖が発生すると、色ズレ調整制御にも悪影響が出る。具体的には、色ズレ調整制御では、通常、トナーパッチの正反射光を受光することでトナーパッチを検出する。カール癖発生部分では、光学センサの検出領域を通過するときのベルト面の向きが、カール癖が発生していない平坦なベルト部分のベルト面の向きとは異なるものとなる。そのため、カール癖発生部分が光学センサの検出領域を通過したときに、光学センサの受光素子にはベルト面やトナーパッチからの正反射光が受光されず又はその正反射光の受光量が極端に少なくなる場合がある。この場合、例えば、ベルト面からの正反射光の受光量よりもトナーパッチからの正反射光の受光量の方が少ないケースでは、そのカール癖発生部分にトナーパッチが付着していなくても、そのカール癖発生部分にトナーパッチが付着していると誤検出してしまい、色ズレを適正に調整できないおそれがある。
【0006】
特許文献1には、画像形成を行わない待機中に中間転写ベルトを連続もしくは間欠回転させることでカール癖の発生を抑える画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、更に、支持ローラ部近傍の環境水分量を検知する水分量検知手段を備え、カール癖が顕著になる高湿環境下では中間転写ベルトの回転動作を実行する時間間隔が短くなるように制御する。この画像形成装置によれば、画像形成装置が使用されずに長時間放置された場合でも、支持ローラに巻き付いたベルト部分のカール癖の増大を抑えることが可能となる。しかしながら、上記特許文献1に記載の画像形成装置では、画像形成動作中以外でも駆動動作を行うため、消費電力の増加を招くなどの不具合が生じる。
【0007】
特許文献2には、ウォームアップ時あるいは画像形成動作に先んじて中間転写ベルトを所定時間以上回転させることにより、長時間放置されている間に中間転写ベルトに発生したカール癖を復元させてから、画像形成動作を実行するようにした画像形成装置が開示されている。しかしながら、上記特許文献2に記載の画像形成装置では、カール癖の影響がなくなるまで中間転写ベルトを駆動し続け、その間は画像形成動作を行うことができない。そのため、画像形成装置のダウンタイムが増大するという不具合が生じる。また、画像形成動作中以外でも駆動動作を行うため、消費電力の増加を招くなどの不具合も生じる。
【0008】
特許文献3には、中間転写ベルトを停止させる位置を毎回同じ位置になるようにして、中間転写ベルト上に発生するカール癖の位置を固定し、カール癖が生じるベルト部分にはトナーパッチを作成しない画像形成装置が開示されている。この画像形成装置によれば、検出されるトナーパッチはカール癖がないベルト部分に形成されたものとなるので、トナーパッチの誤検出や検出誤差の発生を防ぐことが可能となる。しかしながら、上記特許文献3に記載の画像形成装置では、ベルト停止位置を毎回同じ位置にする制御を実現するために、ベルトの回転位置を検出するためのセンサが必要になるとともに、ベルトの回転位置をセンサで検出するためのマークをベルト上に設ける必要がある。そのため、コストが増大するという不具合が生じる。
【0009】
一方、特許文献4には、カール癖が発生した位置にトナーパッチが形成されているか否かを判断し、カール癖の位置にトナーパッチが形成されている場合には当該トナーパッチを画像濃度調整制御や色ズレ調整制御などの画質調整制御には用いないようにした画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、ベルト駆動開始から時間をカウントし、中間転写ベルトユニットにおける支持ローラと光学センサとの位置関係から、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分が光学センサの検出領域に到達するタイミングを予測する。そして、そのタイミングでは光学センサによるトナーパッチの検出を行わない、もしくは、そのタイミングで得た光学センサの出力値については画質調整制御に使用しないように処理する。
この画像形成装置によれば、画像形成動作中以外に上記特許文献1や上記特許文献2に記載のようなベルト駆動を行う必要がないので、画像形成装置のダウンタイムが増大するという不具合や、消費電力の増加を招くという不具合は生じない。また、この画像形成装置では、ベルトの回転位置を検出する必要がないので、その検出に必要なセンサやマークを設けることによるコスト増大という不具合も生じない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献4に記載の画像形成装置においては、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されるトナーパッチの検出結果(光学センサの出力値)を一律に使用しない。ところが、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分であっても、カール癖が発生しているとは限らない。例えば、ベルト駆動開始前におけるベルト停止時間が非常に短い場合やカール癖が生じ難い使用環境である場合には、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に、トナーパッチの誤検出や検出誤差を生じさせるほどのカール癖が生じない場合がある。画像濃度調整制御や色ズレ調整制御などの画質調整制御に用いるトナーパッチの数が減ることは、その画質調整制御の調整精度の悪化につながるので、誤検出や検出誤差を生じさせないトナーパッチはできるだけ除外せずに使用することが望まれる。ここで、予め余分にトナーパッチを形成しておけば、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されるトナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値を一律に使用しない場合でも、画質調整制御の調整精度の悪化を防ぐことが可能である。しかしながら、トナーパッチを余分に形成することは、トナーを余分に消費することになり、好ましくない。
【0011】
また、中間転写ベルト上に埃があった場合や中間転写ベルトの表面にキズが生じていた場合において、そのベルト部分にトナーパッチが形成されたときも、カール癖が生じているベルト部分にトナーパッチが形成されたときと同様、トナーパッチの誤検出や検出誤差を生じさせる。上記特許文献4には、このような場合に生じるトナーパッチの誤検出や検出誤差に対処可能な別の画像形成装置も開示されている。詳しく説明すると、中間転写ベルト上の埃やキズなどは、カール癖と同様にトナーパッチの誤検出や検出誤差を生じさせる要因ではあるが、カール癖のように支持ローラと光学センサとの位置関係からその発生箇所を特定することができない。そのため、上記特許文献4に記載の上記別の画像形成装置では、トナーパッチを作成する前に、中間転写ベルトを一周させて中間転写ベルトの表面状態を検査する検査処理を行う。そして、この検査処理によって埃やキズが存在するベルト部分を把握し、そのベルト部分に形成されるトナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値は画質調整制御に使用しないように処理している。この画像形成装置では、検査処理を行う時間だけ画像形成装置のダウンタイムが増大し、また、その検査処理において中間転写ベルトを少なくとも一周させる必要があるので消費電力の増加を招くなどの不具合が生じる。
【0012】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、画像形成装置のダウンタイムの増大や消費電力の増加を招かず、像担持体の回転位置検出に必要なセンサやマークを設ける必要がなく、トナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値を無駄に除外せずに、カール癖等によるトナーパッチの検出誤差に起因した画質調整制御の調整精度の悪化を防ぐことが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潜像担持体に対向して配置された現像剤担持体上に担持されている現像剤を該潜像担持体と該現像剤担持体とが対向する現像領域へ搬送し、該現像剤中のトナーを該潜像担持体上の静電潜像に付着させてトナー像を形成し、該トナー像を最終的に記録材へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、少なくとも1つの発光手段と、該発光手段から照射された光の反射光を受光する少なくとも1つの受光手段とを有する光学センサと、複数のトナーパッチを該潜像担持体上に形成し、該潜像担持体上の該複数のトナーパッチ又は該潜像担持体から被転写体上へ転写した後の該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、該光学センサの出力値を用いて画質調整制御を実行する画質調整制御手段とを備えており、上記画質調整制御手段は、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値が所定の異常条件を満たすか否かを判断し、該所定の異常条件を満たすと判断された出力値について所定の異常対応処理を行ってから、上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記光学センサによるトナーパッチの検出時に該トナーパッチを担持する上記潜像担持体又は上記被転写体は、複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記無端ベルト状部材の回転位置情報を用いずに上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの最大出力値と最小出力値との差分値が予め決められた規定差分値以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの出力値の標準偏差が予め決められた規定標準偏差以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項4又は5の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記画質調整制御として、互いに異なる画像濃度となるように形成した複数のトナーパッチを上記潜像担持体上に形成した後に該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値から得られる各トナーパッチのトナー付着量に基づいて画像濃度を調整する画像濃度調整制御を実行するものであり、上記規定差分値又は上記規定標準偏差は、トナーパッチごとに異なる値に設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記複数のトナーパッチの数が10以下であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を上記画質調整制御に用いられないように除外する処理であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を補正し、補正後の出力値が上記画質調整制御に用いられるようにする処理であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、埃やキズあるいはカール癖などの存在により誤検出や検出誤差が生じている光学センサの出力値(センサ出力値)を、各トナーパッチに対応するセンサ出力値が所定の異常条件を満たすか否かによって特定することができる。そして、所定の異常条件を満たすと判断されたセンサ出力値が画質調整制御に用いられないように除外したり、そのセンサ出力値を補正したりする所定の異常対応処理を行った後、画質調整制御が実行される。これにより、光学センサによるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する潜像担持体又は被転写体を、画像形成動作中以外に駆動しなくても、トナーパッチの語検出や検出誤差の画質調整制御への悪影響を抑制できる。よって、画像形成装置のダウンタイムが増大するという不具合や、消費電力の増加を招くという不具合が生じない。また、光学センサによるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する潜像担持体又は被転写体の回転位置を検出する必要がないので、その検出に必要なセンサやマークを設けることによるコスト増大という不具合も生じない。
更に、光学センサによるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する潜像担持体又は被転写体が複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材である場合、そのベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチであっても、誤検出や検出誤差を生じさせるほどのカール癖が生じない場合には、そのトナーパッチに対応するセンサ出力値は、所定の異常条件を満たさず、画質調整制御に用いられる。よって、トナーパッチに対応するセンサ出力値が無駄に除外されることもない。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によれば、画像形成装置のダウンタイムの増大や消費電力の増加を招かず、像担持体の回転位置検出に必要なセンサやマークを設ける必要がなく、トナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値を無駄に除外せずに、カール癖等によるトナーパッチの検出誤差に起因した画質調整制御の調整精度の悪化を防ぐことが可能となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るレーザプリンタの主要部を示す概略構成図である。
【図2】同レーザプリンタに設けられるプロセスユニットのうちのイエローのプロセスユニットの概略構成を示す拡大図である。
【図3】同プロセスユニットに設けられる現像装置内を示す分解斜視図である。
【図4】中間転写ベルトの外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設された光学センサの概略断面図である。
【図5】同レーザプリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。
【図6】プロセスコントロール時の制御フローの概要を示すフローチャートである。
【図7】中間転写ベルト上に形成される各色階調パターンのトナーパッチの位置を説明するための説明図である。
【図8】トナーパッチのトナー付着量と、トナーパッチ検出時のセンサ出力値Vsp及びベルト地肌部検出時のセンサ出力値Vsgとの関係を示すグラフである。
【図9】トナーパッチのトナー付着量と△Vsp及び△Vsgと感度補正係数αとの関係を示すグラフである。
【図10】トナーパッチのトナー付着量と拡散反射成分と正反射成分との関係を示すグラフである。
【図11】正反射光における正反射成分の正規化値と、地肌部変動補正後の拡散光による出力値との関係を示すグラフである。
【図12】現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示すグラフである。
【図13】転写ユニットを高湿環境下に長時間放置し、そのユニットを用いて中間転写ベルトの駆動を行って光学センサによりベルト地肌部の正反射光出力を測定したときのグラフである。
【図14】階調パターンを構成する5つのトナーパッチの1つがカール癖の生じているベルト部分に形成された場合における光学センサの出力値を示す説明図である。
【図15】実施形態1における異常なセンサ出力値を排除する処理のフローチャートである。
【図16】カール癖等による異常なセンサ出力値を除外しない場合に、カール癖等の影響で生じる誤差を説明するためのグラフである。
【図17】カール癖等による異常なセンサ出力値を除外する実施形態1を適用した場合のグラフである。
【図18】現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示すグラフに、現像γ等の算出に用いる有効付着量範囲を示した説明図である。
【図19】実施形態2における異常なセンサ出力値に対応する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のカラーレーザプリンタ(以下、「レーザプリンタ」という。)に適用した一実施形態1(以下、本実施形態1を「実施形態1」という。)について説明する。
図1は、本実施形態1に係るレーザプリンタの主要部を示す概略構成図である。
このレーザプリンタは、画像形成手段として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための4組の作像手段たるプロセスユニット1Y,1M,1C,1K(以下、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の部材であることを示す。)を備えている。このプロセスユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、潜像担持体としてのドラム状の感光体11Y,11M,11C,11Kを有する感光体ユニット10Y,10C,10M,10Kと、現像手段たる現像装置20Y,20M,20C,20Kとを備えている。
【0018】
4色のプロセスユニット1Y,1M,1C,1Kの図中上方には、無端状ベルト部材からなる被転写体としての中間転写ベルト6を張架しながら図中反時計回りに無端移動せしめる転写ユニット50が配設されている。転写手段たる転写ユニット50は、中間転写ベルト6のほかに、ベルトクリーニングユニット51、4つの一次転写ローラ52Y,52M,52C,52K、二次転写バックアップローラ53、駆動ローラ54なども備えている。中間転写ベルト6は、これらローラに張架されながら、駆動ローラ54の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。4つの一次転写ローラ52Y,52C,52M,52Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト6を感光体11Y,11C,11M,11Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト6の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト6は、その無端移動に伴ってY、M、C、K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、その外周面に感光体11Y,11M,11C,11K上のY、M、C、Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト6上に4色重ね合わせトナー像(以下「カラー画像」という。)が形成される。カラー画像は、中間転写ベルト6の回転(表面移動)に伴って二次転写ローラ3との間の二次転写部に搬送される。
【0019】
また、本レーザプリンタは、上記プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kのほか、その下方に図示しない潜像形成手段たる光書込ユニットが配置されており、さらにその下に図示しない給紙カセットが配置されている。図1中の一点鎖線は、記録材としての転写紙の搬送経路を示している。給紙カセットから給送された転写紙は、図示しない搬送ガイドによってガイドされながら搬送ローラで搬送され、レジストローラ5が設けられている一時停止位置に送られる。転写紙は、レジストローラ5により所定のタイミングで二次転写部に供給される。そして、中間転写ベルト6上に形成されたカラー画像が、転写紙上に二次転写され、転写紙上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙は、定着ユニット7でトナー像が定着された後、機外に排出される。
【0020】
図2は、上記プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、イエローのプロセスユニット1Yの概略構成を示す拡大図である。
なお、他のプロセスユニット1M,1C,1Kについてもそれぞれ同じ構成となっているので、それらの説明は省略する。
図2において、プロセスユニット1Yは、上述したように、感光体ユニット10Y及び現像装置20Yを備えている。感光体ユニット10Yは、感光体11Yのほか、その感光体表面をクリーニングするクリーニングブレード13Y、その感光体表面を一様帯電する帯電手段たる帯電ローラ15Y等を備えている。また、感光体表面に潤滑剤を塗布するとともに、感光体表面を除電する機能を有する潤滑剤塗布兼除電ブラシローラ12Yも備えている。この潤滑剤塗布兼除電ブラシローラ12Yは、ブラシ部が導電性繊維で構成され、その芯金部には除電バイアスを印加するための図示しない除電用電源が接続されている。
【0021】
上記構成の感光体ユニット10Yにおいて、感光体11Yの表面は、電圧が印加された帯電ローラ15Yにより一様帯電される。この感光体11Yの表面に図示しない潜像形成手段たる光書込ユニットで変調及び偏向されたレーザ光LYが走査されながら照射されると、感光体11Yの表面に静電潜像が形成される。この感光体11Y上の静電潜像は、後述の現像装置20Yで現像されてイエローのトナー像となる。感光体11Yと中間転写ベルト6とが対向する一次転写部では、感光体11Y上のトナー像が中間転写ベルト6上に転写される。トナー像が転写された後の感光体11Yの表面は、感光体クリーニング手段としてのクリーニングブレード13Yでクリーニングされた後、潤滑剤塗布兼除電ブラシローラ12Yで所定量の潤滑剤が塗布されるとともに除電され、次の静電潜像の形成に備えられる。
【0022】
図3は、現像装置20Y内を示す分解斜視図である。
現像装置20Yは、図2や図3に示すように、現像剤搬送手段としての第1搬送スクリュー24Yが配設された第1剤収容室29Yを有している。また、現像剤搬送手段としての第2搬送スクリュー23Y、現像剤担持体としての現像ローラ22Y、現像剤規制部材としてのドクターブレード25Yなどが配設された第2剤収容室21Yも有している。循環経路を形成しているこれら2つの剤収容室内には、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとからなる二成分現像剤である図示しないY現像剤が内包されている。第1搬送スクリュー24Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動することで、第1剤収容室29Y内のY現像剤をプリンタ本体のリア側(図2中で紙面に直交する方向の奧側)に向けて搬送する。そして、第1搬送スクリュー24Yにより第1剤収容室29Yの端部まで搬送されたY現像剤は、連通口を経て第2剤収容室21Y内に進入する。
【0023】
第2剤収容室21Y内の第2搬送スクリュー23Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動することで、Y現像剤をプリンタ本体のフロント側(図2中で紙面に直交する方向の手前側)に向けて搬送する。このようにしてY現像剤を搬送する第2搬送スクリュー21Yの上方には、現像ローラ22Yが第2搬送スクリュー23Yと平行な姿勢で配設されている。この現像ローラ22Yは、図中時計回り方向に回転駆動する非磁性スリーブからなる現像スリーブ内に固定配置されたマグネットローラを内包した構成となっている。第2搬送スクリュー21Yによって搬送されるY現像剤の一部は、マグネットローラの磁力によって現像スリーブの表面に汲み上げられる。そして、現像スリーブの表面と所定の間隙を保持するように配設されたドクターブレード25Yによってその層厚が規制された後、感光体11Yと対向する現像領域まで搬送され、感光体11Y上のY用の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体11Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像スリーブの回転に伴って第2搬送スクリュー23Y上に戻される。そして、第2搬送スクリュー23Yにより第2剤収容室21Yの端部まで搬送されたY現像剤は、連通口を経て第1剤収容室29Y内に戻る。このようにして、Y現像剤は現像装置内を循環搬送される。
【0024】
現像ケース内の現像剤のトナー濃度は、画像形成に伴うトナー消費により低下するので、トナー濃度センサ26Yの出力値Vtに基づいて、必要により図1に示したトナーカートリッジ30Yから粉体ポンプ27Yによりトナーが補給されることで適正な範囲に制御される。トナー補給制御は、出力値Vtと目標出力値であるトナー濃度制御基準値Vtrefとの差分値Tn(=Vtref−Vt)に基づいて、差分値Tnが+(プラス)の場合はトナー濃度が十分高いと判断してトナーを補給せず、差分値Tnが−(マイナス)の場合は差分値Tnの絶対値が大きいほどトナー補給量を多くするようにして、出力値Vtがトナー濃度制御基準値Vtrefの値に近づくようにして行う。
【0025】
また、4つの感光体11Y,11M,11C,11Kのうち、最下流側にあるブラック用の感光体11Kのみ中間転写ベルト6に常に接触している転写ニップ常接状態であり、残りの感光体11Y,11M,11Cは中間転写ベルト6に対して接離可能となっている。転写紙上にカラー画像を形成する場合、4つの感光体11Y,11M,11C,11Kは、それぞれ中間転写ベルト6に当接する。一方、転写紙上にブラックの単色画像を形成する場合、各カラー用の感光体11Y,11M,11Cを中間転写ベルト6から離間させ、ブラックトナーによるトナー像が形成されるブラック用の感光体11Kのみを中間転写ベルト6に当接させるようにする。
【0026】
図4は、中間転写ベルト6の外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設された光学センサ69の概略断面図である。
トナーパッチ検出手段たる光学センサ69は、二次転写部よりも中間転写ベルト表面移動方向上流側で、中間転写ベルト6の外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。この光学センサ69は、発光手段としての発光素子311と、正反射光を受光するための正反射光受光手段としての正反射受光素子312と、拡散反射光を受光するための拡散反射受光素子313とを有している。各素子311,312,313は、プリント基板314上に実装されている。各素子311,312,313は、黒色の樹脂で成型したケース315に封入されている。発光素子311から発した光を、中間転写ベルト6の表面に向けて出射する。中間転写ベルト6の表面や、その表面に転写されたトナーパッチで正反射した正反射光を正反射受光素子312によって受光して、その受光量に応じた電圧(正反射光出力値)を出力する。更に、中間転写ベルト6の表面や、その表面に転写されたトナーパッチで拡散反射した拡散反射光を拡散反射受光素子313によって受光して、その受光量に応じた電圧(拡散反射光出力値)を出力する。
【0027】
光学センサの発光素子311としては、ピーク発光波長が940[nm]のGaAs発光ダイオード(LED)が用いられている。また、正反射受光素子312及び拡散反射受光素子313としては、ピーク分光感度波長が850[nm]のSiフォトトランジスタとを有したものを使用している。すなわち、この光学センサは、色による反射率に顕著な差のない830[nm]以上の赤外光を検出するものである。このような光学センサを用いることで、一つのセンサで、Y、M、C、Kの全色のトナーパッチを検出することができる。
【0028】
図5は、本レーザプリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。
同図において、制御手段たる制御部100は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)101、データ記憶手段たる不揮発性のRAM(Random Access Memory)102、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)103等を有している。この制御部100には、プロセスユニット1Y,1M,1C,1K、光書込ユニット68、転写ユニット50、光学センサ69などが電気的に接続されている。そして、制御部100は、RAM102やROM103内に記憶している制御プログラムに基づいて、これらの各種機器を制御するようになっている。
【0029】
制御部100は、画像を形成するための画像形成条件の制御も行っている。具体的には、制御部100は、プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kにおける各帯電ローラ15Y,15M,15C,15Kに対して帯電バイアスをそれぞれ個別に印加する制御を実施する。これにより、各色の感光体11Y,11M,11C,11Kが、Y、M、C、K用に個別設定した各目標帯電電位にそれぞれ一様帯電せしめられる。また、制御部100は、光書込ユニット68のプロセスユニット1Y,1M,1C,1Kに対応する4つの半導体レーザのパワーをそれぞれ個別に制御する。また、制御部100は、プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kにおける各現像ローラに、Y、M、C、K用に個別設定した各現像バイアス値の現像バイアスをそれぞれ印加する制御を実施する。これにより、感光体11Y,11M,11C,11Kの静電潜像と現像ローラとの間には、トナーをスリーブ表面側から感光体側に静電移動させる色ごとに適正化された現像ポテンシャルを作用させて、静電潜像を現像することができる。
【0030】
図6は、プロセスコントロール時の制御フローの概要を示すフローチャートである。
制御部100は、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行うたびに、各色の画像濃度を適正化するための画質調整制御としての画像濃度調整制御たるプロセスコントロールを実行する。なお、図6に示すフローチャートは、電源投入時におけるプロセスコントロールの制御フローを例示したものである。
【0031】
まず、電源が投入され、装置が立ち上がったら(S1)、制御部100は、光学センサ69の校正を行う(S2)。具体的には、光学センサ69の正反射受光素子312の出力が予め決められた所定範囲内(例えば4±0.5[V])になるように、発光素子311の発光強度を調整する。具体的には、光学センサ69の校正を開始したら、発光素子311をONして、中間転写ベルト6の地肌部から正反射光出力を得る。そして、この正反射光出力値が4±0.5[V]となるように、発光素子311であるLEDに流す電流値を調整する。本実施形態1では、二分探索法を用いて、正反射光出力値が4「V」に最も近くなる電流値を特定する。二分探索法の結果、正反射光出力値が4±0.5[V]の範囲に入らない場合には、光学センサ69の校正処理は失敗となる。この失敗が連続して3回続いた場合、異常が発生したと判断して本レーザプリンタの動作を停止する。また、本実施形態1では、発光素子311に流す電流値の上限値を30[mA]と定めている。これは、発光素子311が破損しないように設定された値である。正反射光出力値が4±0.5[V]の範囲内に入った場合には、そのときの電流値を本体に保存する。
【0032】
なお、光学センサ69の校正処理には時間がかかるため、前回調整時における電流値を用いて中間転写ベルトの地肌部に対して発光素子311から光を照射し、その正反射光を検出し、検出した正反射光出力の平均値を求めた上で、その平均値が所定範囲内である場合には、光学センサ69の校正処理を行う必要性がないと判断して、光学センサ69の校正を行わなくてもよい。
【0033】
次に、制御部100は、トナー濃度センサ26Yの出力値Vtを取得して(S3)、各色の現像装置内のトナー濃度を把握してから、図7に示すような、階調パターンを中間転写ベルト6上における各光学センサ69に対向する位置を通過するように色ごとに自動形成する(S4)。各色の階調パターンは、設定画像濃度が互いに異なる5個程度のトナーパッチからなり、中間転写ベルト6の移動方向(回転方向)に沿って、パッチ間隔が5.6[mm]で、K色の階調パターン、C色の階調パターン、M色の階調パターン、Y色の階調パターンの順で、中間転写ベルト6上に形成される。各トナーパッチは、主走査線方向(中間転写ベルト6の移動方向に対して直交する方向:ベルト幅方向)の幅が10[mm]、副走査線方向(中間転写ベルト6の移動方向)の幅が14.4[mm]となっている。階調パターンは、帯電、現像バイアス条件をトナーパッチ毎に変更し、露光条件は、予め決められた所定値(感光体が十分除電されるフル露光)で形成される。なお、階調パターンの各トナーパッチの現像バイアス、帯電バイアスの設定については、後述する。
【0034】
ここで、作成する各色の階調パターンの数は、各色の階調パターンの副走査線方向における全長が感光体間ピッチよりも短くなる数とするのが望ましい。なぜなら、作成する各色の階調パターンの全長が感光体間ピッチよりも長い場合、各色の階調パターンの作成を同時に開始したときに、一部のトナーパッチが他の色のトナーパッチと重なってしまうためである。なお、各色の階調パターンの作成開始タイミングをずらせば、トナーパッチが重なってしまうことを防ぐことができるが、この場合、全色の階調パターンを作成するのに要する時間が長くなってしまうので、プロセスコントロールの処理時間が長くなり、ダウンタイムの増大につながるので好ましくない。本実施形態1では、感光体間ピッチが100mmであるので、作成する各色の階調パターンの全長を感光体間ピッチよりも短くなる各色の階調パターンの最大数は、感光体間ピッチ:100[mm]/(1個のトナーパッチの副走査方向長さ:14.4[mm]+パッチ間隔:5.6[mm])より、5個となる。
【0035】
このようにして中間転写ベルト上の各色の階調パターンは、光学センサ69により光学的に検出される(S5)。本実施形態1において、光学センサ69による階調パターンの検出は、4[ms]のサンプリング間隔で検出を行う。この場合、中間転写ベルト6上の1個のトナーパッチが光学センサ69の検出領域を通過する間に、その1個のトナーパッチについて複数の検出結果(センサ出力値)を得ることができる。本実施形態1では、1個のトナーパッチについて得られる複数のセンサ出力値をサンプリング点数で平均化し、その結果を当該トナーパッチの検出結果であるセンサ出力値Vspとする。
【0036】
ここで、階調パターン作成のために露光を開始するタイミングから光学センサ69の検出領域にその階調パターンが到達するまでの時間は、装置レイアウトとプロセス線速によって決まる。そのため、本実施形態1では、ソフトウェアで実現されるタイマーを用い、階調パターンの露光開始タイミングを基準トリガーとしてタイマーをスタートさせ、光学センサ69の検出領域に階調パターンが到達する時間が経過したタイミングで、光学センサ69の出力値をサンプリングし、トナーパッチごとに平均化したセンサ出力値を各トナーパッチの検出結果として取得する。平均化に用いるサンプリング点は、トナーパッチの中央部付近の数点を用いるのが好ましい。これは、トナーパッチのエッジ部分ではエッジ効果によりトナー付着量が多いので、エッジ部分のセンサ出力値を平均値算出に含めると、実際のトナーパッチのトナー付着量よりも多いトナー付着量に対応するセンサ出力値が出てしまうためである。
【0037】
このようにして、各色の階調パターンの各トナーパッチを検出した後、本実施形態1では、中間転写ベルト6のカール癖が生じている部分にトナーパッチが形成されて異常な値が検出されたセンサ出力値や、中間転写ベルト6に付着する埃等の異物あるいはキズの箇所にトナーパッチが形成されて異常な値が検出されたセンサ出力値を排除する処理を行う(S10)。この処理の詳細については後述する。なお、以下の説明において、異常なセンサ出力値が検出される原因となるカール癖、埃等の異物の付着、キズなどを、「カール癖等」という。
【0038】
各色の階調パターンの各トナーパッチを検出して得られた光学センサ69の出力値(平均値)は、トナー付着量とセンサ出力値との関係に基づき構築された付着量算出アルゴリズムを用いて、トナー付着量(画像濃度)へ変換処理される(S6)。本実施形態1においては、特開2006−139180号に記載のように、トナーパッチからの正反射光と拡散反射光の両方を用いてトナー付着量を算出する。正反射光と拡散反射光の両方を用いてトナー付着量を算出することで、正反射光のみを用いてトナー付着量を算出するものに比べて、高トナー付着量の有効検出範囲を広げることができる。また、上記特開2006−139180号に記載のトナー付着量算出アルゴリズムを用いることで、温度変化、経時劣化などにより発光素子や受光素子の出力が変化したり、中間転写ベルト6の経時劣化によって受光素子の出力が変化したりしても、正確なトナー付着量を求めることが可能である。
【0039】
以下に、本実施形態1における付着量算出アルゴリズムについて、具体的に説明する。
なお、以下の説明文中における記号を次のように定義する。
Vsg:転写ベルト地肌部を検知する光学センサからの出力電圧値(地肌部検知電圧)
Vsp:各基準パッチを検知する光学センサからの出力電圧値(パッチ検知電圧)
Voffset:オフセット電圧(LEDをOFFしているときの出力電圧値)
_reg:正反射光出力(Regular Reflectionの略)
_dif:拡散反射光出力(Diffuse Reflectionの略)(cf.JIS Z 8105 色に関する用語)
[n] 要素数:nの配列変数
【0040】
まず、Kトナーの付着量算出アルゴリズムについて説明する。
(i)以下の式を用いて、正反射光からオフセット電圧を減ずる。
ΔVsg_reg[K][n]=Vsg_reg[K][n]−Voffset_reg
ΔVsp_reg[K]=Vsg_reg[K]−Voffset_reg[K]
(ii)正反射データを正規化する。
正規化値Rn[K]=ΔVsg_reg[K][n]/ΔVsp_reg[K]
(iii)LUT(ルックアップテーブル)を用いて、正規化値をトナー付着量に変換する。
正規化値に対応する付着量変換テーブル(LUT)を予め作成しておき、それに対応させてトナー付着量を得る。
【0041】
次に、カラートナーの付着量算出アルゴリズムについて説明する。
カラートナー付着量においては、以下に示すSTEP1〜7という7段階の処理によって演算する。
【0042】
[STEP1]
STEP1では、データサンプリングを行って、ΔVspやΔVsgを算出する。
まず、正反射光出力,拡散反射光出力ともに、全トナーパッチ[n]個についてオフセット電圧との差分を計算する。これは、最終的に、センサ出力の増分をカラートナーの付着量による増分のみで表したいためである。
【0043】
正反射光出力の増分については、次の数1に示す式より求める。
【数1】
また、拡散反射光出力の増分については、次の数2に示す式より求める。
【数2】
但し、オフセット出力電圧値(Voffset_reg、Voffset_dif)が無視できるほど十分に小さい値となるOPアンプを用いた場合、このような差分処理は省略しても構わない。
このようなSTEP1により、図8に示す特性曲線を得る。
【0044】
[STEP2]
STEP2では、感度補正係数αを算出する。
まず、STEP1にて求めたΔVsp_reg[n]やΔVsp_dif[n]から、トナーパッチごとに、(ΔVsp_reg[n]/ΔVsp_dif[n])を算出する。そして、後述するSTEP3で正反射光出力の成分分解を行う際に、拡散反射光出力(ΔVsp_dif[n])に乗ずるための感度補正係数αを、次の数3に示す式より算出する。
【数3】
このようなSTEP2により、図9に示すような特性曲線を得る。なお、感度補正係数αをΔVsp_reg[n]とVsp_Dif[n]との最小値としたのは、正反射光出力の正反射成分の最小値がほぼゼロであり、かつ正の値となることが予めわかっているからである。
【0045】
[STEP3]
STEP3では、正反射光の成分分解を行う。
正反射光出力の拡散反射光成分については、次の数4に示す式より求める。
【数4】
また、正反射光出力の正反射成分については、次の数5に示す式より求める。
【数5】
このようにして成分分解を行うと、感度補正係数αが求まるパッチ検出電圧にて、正反射光出力の正反射成分がゼロとなる。そして、図10に示すように、正反射光出力が正反射光成分と拡散反射光成分とに成分分解される。
【0046】
[STEP4]
STEP4では、正反射光出力の正反射成分を正規化する。
すなわち、次の数6に示す式より、各パッチ検出電圧における地肌検出電圧との比(中間転写ベルト6の地肌部露出率)を求めて、0〜1までの正規化値へ変換する。
【数6】
【0047】
[STEP5]
また、STEP5では、拡散反射光出力の地肌部変動補正を行う。
すなわち、次の数7に示す式より、ベルト地肌部からの拡散反射光出力成分を、拡散反射光出力電圧から除去する。
【数7】
【0048】
[STEP6]
STEP6では、拡散反射光出力の感度を補正する。
具体的には、図11に示すように、正反射光出力の正反射成分の正規化値に対し、地肌部変動補正後の拡散反射光出力をプロットし、そのプロット線を近似することで、拡散反射光出力の感度を求め、この感度があらかじめ定めた狙いの感度となるように補正を行う。具体的には、正反射光の正反射成分の正規化値に対し、地肌部変動補正後の拡散反射光出力をプロットしたプロット線を多項式近似(本実施形態1では二次式近似とする。)して、感度補正係数ηを算出する。
【0049】
まず、プロット線を二次近似式(y=ξ1・x2+ξ2・x+ξ3)で近似し、下記の数8に示す式(1)〜(3)を用いて、最小二乗法によって係数ξ1、ξ2、ξ3を求める。なお、式(1)〜(3)中における「m」はデータ数であり、「x[i]」は正反射光出力の正反射成分の正規化値であり、「y[i]」は地肌部変動補正後の拡散反射光出力である。なお、計算に用いるxの範囲は0.1≦x≦1.0である。
【数8】
【0050】
上記式(1)〜(3)の連立方程式を解くことで、係数ξ1、ξ2、ξ3を求めることができる。こうして近似されたプロット線から計算される正規化値aが所定値bとなるような感度補正係数ηを求める。
【数9】
【0051】
STEP5で求めた地肌部変動補正後の拡散反射光出力ΔVsp_dif’[n]に対し、STEP6で求めた感度補正係数ηを乗じることで、付着量と拡散反射光出力との関係が予め定められた関係となるように補正する。すなわち、この補正後の拡散反射光出力ΔVsp_dif’’は、下記の数10に示す式より得られる。
【数10】
【0052】
[STEP7]
STEP7では、センサ出力値をトナー付着量に変換する。
STEP6までの処理により、発光素子(LED)311の光量低下などによって生ずる拡散反射光出力の経時的な変動に対する補正処理がすべて行われたため、最後に、センサ出力値をトナー付着量変換テーブルに基づいてトナー付着量に変換するのである。
以上が、カラートナーの付着量算出アルゴリズムである。
【0053】
上述したトナー付着量算出アルゴリズムを用いて各トナーパッチのトナー付着量を算出したら、各トナーパッチのトナー付着量と各トナーパッチを作成したときの各現像ポテンシャルとの関係から、図12に示すように、最小二乗法により線形近似した現像性能直線たる現像ポテンシャル−トナー付着量直線(y=ax+b)を、色ごとに求める。この現像ポテンシャル−トナー付着量直線から、現像γ(傾きa)および現像開始電圧Vk(x軸切片b)を色ごとに算出する(S7)。
【0054】
次に、制御部100は、目標トナー付着量を得るのに必要な現像バイアスVbを求める(S8)。 具体的には、上記現像ポテンシャル−トナー付着量直線に基づき、目標付着量(縦軸)に対応する現像ポテンシャル(横軸)を求める。目標付着量は、最高濃度を得るのに必要な値に決められている。この値は、トナー顔料の着色度合いとトナー粒径で決まるが、一般的には0.4〜0.6[mg/cm2]程度である。次に、以下の式より、求めた現像ポテンシャルを現像バイアスVbに変換する。
現像バイアスVb[−V] = 現像ポテンシャル + 露光部電位:Vl[−V]
【0055】
なお、帯電バイアスVcは、キャリアが感光体に飛翔しない程度の値であらかじめ決定されている。一般には、現像バイアスVbが400〜750[−V]程度であるとき、帯電バイアスVcは、現像バイアスVb[−V]に100〜200[−V]程度を加算した値に設定される。このようにして求めた現像バイアスVbと帯電バイアスVcを作像時のバイアスとして設定する。
【0056】
制御部100は、現像バイアスVbを算出したら、現像γと上記S3で取得したトナー濃度センサ26の出力値Vtとを用いて、トナー濃度制御基準値Vtrefを補正する(S9)。まず、目標現像γと、算出した現像γとの差分値Δγ(Δr=算出した現像γ−目標現像γ)を算出する。目標現像γは、例えば、1.0[mg/cm2/kV]とする。この値は、現像開始電圧Vkが0[V]、現像ポテンシャルが1[kV]のときに、トナー付着量が1.0[mg/cm2]となる値である。すなわち、現像開始電圧Vk=0Vで、目標付着量が0.5[mg/cm2]、露光後の感光体電位Vlが50Vであれば、目標現像γから算出される現像バイアスVbは、550Vとなる。
【0057】
制御部100は、算出したΔγが所定範囲外のときは、次回の現像バイアス調整時に、算出される現像バイアスVbが、上述の設定範囲を超える可能性がある。よって、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正を行って、次のプロセスコントロールまでに、現像γを目標現像γに近づける補正を行う。なお、現像γを目標現像γに近づけるようトナー濃度制御基準値Vtrefを補正すると、算出した現像バイアスで作像しても規定の画像濃度が得られなくなってしまう。しかし、いきなり現像装置内のトナー濃度が、目標のトナー濃度になるわけではなく、徐々に現像装置内のトナー濃度が目標のトナー濃度となるようにトナー補給制御を行うので、現像γが急激に変化するわけではない。よって、トナー濃度制御基準値Vtrefを補正しても、始めのうちは、算出した現像バイアスで、所定の画像濃度を得ることができる。そして、徐々に規定の画像濃度から離れていく。しかし、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正量は、算出した現像バイアスで作像しても画像濃度が、規定の画像濃度から大幅にかけ離れるような補正量には設定しない。よって、画像が大きく劣化することはない。ただし、階調パターン作成時のトナー濃度センサ26の出力値Vtが、トナー濃度制御基準値Vtrefから大幅に異なっている場合において、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正をしてしまうと、逆に、目標の現像γから外れてしまうおそれがある。このため、階調パターン作成時のトナー濃度センサ26の出力値Vtと、階調パターン作成時のトナー濃度センサ26の出力値Vtとの関係性も考慮にいれて、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正を行うか否かを決める。
【0058】
具体的な一例を示すと、Δγ≧0.30[mg/cm2/kV]、かつ、Vt−Vtref≧−0.2[V]のとき、トナー濃度制御基準値Vtrefを0.2[V]下げて、現時点よりもトナー濃度を下げる補正を行う。また、Δγ≦−0.30[mg/cm2/kV]、かつ、Vt−Vtref≧0.2[V]のときは、トナー濃度制御基準値Vtrefを0.2[V]上げて、現時点よりもトナー濃度を上げる補正を行う。また、−0.30[mg/cm2/kV]<Δγ<0.30[mg/cm2/kV]のときは、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正は行わない。
以上が、プロセスコントロールの制御フローである。
【0059】
次に、本実施形態1の特徴的部分に関わるカール癖による光学センサ69の出力値への影響について説明する。
図13は、転写ユニット50を高湿環境下に長時間放置し、そのユニットを用いて中間転写ベルト6の駆動を行って光学センサ69によりベルト地肌部の正反射光出力を測定したグラフである。
図13からわかるように、一部でセンサ出力値が大きく変動していることが分かる。このセンサ出力値が大きく変動している部分が、カール癖の生じている箇所に対応する箇所である。このように、中間転写ベルト6にカール癖が生じると、その影響により光学センサ69と検出対象(ここではベルト地肌部)との距離に変動が生じる。その結果として、正反射光出力値が変化するのである。これは、カール癖の生じているベルト部分に形成されたトナーパッチを光学センサ69で検出する場合には、正反射光出力値の誤差や拡散反射光出力値の誤差となって現れ、安定した画像濃度制御の妨げとなる。
【0060】
図14は、階調パターンを構成する5つのトナーパッチの1つがカール癖の生じているベルト部分に形成された場合における光学センサ69の出力値を示す説明図である。この説明図は、階調パターンの1つ目のトナーパッチ(最も濃度が低いトナーパッチ)がカール癖の生じているベルト部分に重なった様子を図中上部に示し、これに対応するように光学センサ69の正反射光出力値を図中下部に示したものである。
図14に示すように、カール癖の生じているベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値は、図13に示したベルト地肌部のセンサ出力値のものと同様、大きく変動していることがわかる。そのため、図6に示したプロセスコントロールのフローチャートにおける上記S5のように、1つのトナーパッチについての複数のセンサ出力値を平均化したものを当該トナーパッチのセンサ出力値として用いる場合には、本来の検出結果(すなわち、カール癖の生じていないベルト部分に形成された場合の検出結果)からズレが生じることになる。例えば、図14に示すように、カール癖によってセンサ出力値が平均して低下している場合、その平均化した結果は本来の結果よりも小さいセンサ出力値となる。そのため、図6に示したプロセスコントロールのフローチャートにおける上記S6で算出される当該トナーパッチのトナー付着量に誤差が生じることになり、上記S7において算出される現像γ等に誤差が生じることになる。その結果、目標付着量を得るための作像条件にズレが生じ、狙いの画像濃度を得ることができなくなる。
【0061】
また、カール癖の生じているベルト部分にトナーパッチが形成される場合と同様に、中間転写ベルト6に付着する埃等の異物あるいはキズの箇所にトナーパッチが形成される場合にも、異常なセンサ出力値が検出される。
【0062】
そこで、本実施形態1においては、カール癖等によるセンサ出力変動に起因した付着量誤検出を防ぐために、以下の方法を用いて制御を行う。要するに、トナーパッチを検出したセンサ出力値のデータから、そのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けているか否かの判定を行い、カール癖等の影響があると判定した場合には、そのセンサ出力値を除去して、各トナーパッチのトナー付着量と現像γ等の算出を行う。
【0063】
図14に示すように、トナーパッチの正常なセンサ出力値はほぼ一定の値である。これは、本実施形態1では作成する1つのトナーパターン内では、トナー付着量が一様であるためである。しかしながら、カール癖等の影響を受けているトナーパッチ内でのセンサ出力値は大きく変動する。そのため、単一のトナーパッチ内でセンサ出力値の変動が検出された場合には、そのトナーパッチがカール癖等の影響を受けていると判断することが可能である。そして、この方法でカール癖等の影響を受けているトナーパッチが検出された場合、そのトナーパッチについてのセンサ出力値を使用しないようにすれば、付着量誤検出による現像γ等の算出精度の低下を防ぐことができる。
【0064】
特に、最近ではトナー消費量低減の点から、プロセスコントロール時に作成する階調パターンのトナーパッチ数を低減することが求められている。本実施形態1においても各色5階調パターンとし、そのトナーパッチ数が少ない。このように少ないトナーパッチ数で現像γ等を算出する場合、現像γ等の算出精度に対するトナーパッチ1つの重みは大きい。そのため、カール癖等の影響によって1つのトナーパッチについて付着量検出の誤差が生じると、現像γ等の算出精度に与える影響が大きく、目標付着量を得るための現像ポテンシャルが本来の値から大きくずれて設定され、結果として画像濃度のズレが顕著となる。よって、カール癖等の影響があるトナーパッチについてのセンサ出力値を現像γ等の算出に使用しないようにすることで、当該トナーパッチの付着量誤検出による現像ポテンシャル設定値のズレを低減でき、安定した画像濃度を得ることが可能となる。
【0065】
一方で、本実施形態1では、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分であっても、そのベルト部分にカール癖等が生じてない場合には、そのベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値は現像γ等の算出精度に使用される。上述したように、最近ではトナー消費量低減の点から、プロセスコントロール時に作成する階調パターンのトナーパッチ数を少なくすると、現像γ等の算出精度に対するトナーパッチ1つの重みが大きくなる。よって、現像γ等の算出に用いるトナーパッチが1つ減った場合に、現像γ等の算出精度が悪化する程度は比較的大きい。この場合の現像γ等の算出精度の悪化の程度は、付着量の誤検出を生じさせるトナーパッチをそのまま用いる場合の現像γ等の算出精度の悪化ほどではないが、センサ出力値が正常なトナーパッチについてはできるだけ除外せずに現像γ等の算出精度に使用することが望まれる。ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチの検出結果を一律に除外するような従来の方法では、そのベルト部分にカール癖等が生じてない場合のようにカール癖等の影響が出ていないトナーパッチについての正常なセンサ出力値も除外されてしまう。これに対し、本実施形態1においては、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチであっても、そのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けていない場合には、除外されずに、現像γ等の算出に用いられる。
【0066】
次に、中間転写ベルト6のカール癖等が生じている部分にトナーパッチが形成されて異常な値が検出されたセンサ出力値を排除する具体的な手順について説明する。
図15は、本実施形態1における異常なセンサ出力値を排除する処理のフローチャートである。
まず、トナーパッチごとに、サンプリングした複数のセンサ出力値の最大値と最小値を抽出する(S11)。次に、各トナーパッチのセンサ出力値の変動幅として、トナーパッチごとに最大値と最小値の差分値を算出する(S12)。そして、この差分値が予め設定された規定値未満であるか否かを判断し(S13)、規定値以上であると判断したら、当該トナーパッチのセンサ出力値については、後の処理(S6以降の処理)に用いられないように除外する処理を行う(S14)。
【0067】
上記S13において用いる規定値は、判定対象のトナーパッチの目標濃度に応じて変更してもよい。トナー付着量が高いトナーパッチの場合、カール癖等の影響がセンサ出力値に出にくい。この場合には、トナー付着量が低い低濃度のトナーパッチの規定値は大きくし、トナー付着量が高い高濃度のトナーパッチの規定値は小さくように設定するとよい。このように設定すれば、低濃度のトナーパッチから高濃度のトナーパッチにかけて、センサ出力値がカール癖等の影響を受けているか否かを適切に判定することができる。
【0068】
ここで、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の変動幅(最大値−最小値)を用いて、各トナーパッチの異常判定を行う理由は、各トナーパッチのセンサ出力値の絶対値に依存せずにカール癖等の影響を判断できるからである。つまり、トナーパッチに付着しているトナーの量が異なっていても、同じ規定値により安定して異常判定を行うことができる。そのため、現像剤の現像能力が使用環境や放置時間などによって変化し、トナーパッチに付着するトナー量が変動しても、安定して確実にカール癖等による影響を受けた異常なセンサ出力値を検出することが可能である。
【0069】
例えば、比較例として、各トナーパッチについてのセンサ出力値の平均値に対して異常判定を行う場合を考える。この場合、予め、各トナーパッチの正常なセンサ出力値を測定しておき、それの平均値を基準値として保持しておく。そして、プロセスコントロールの際に検出した各トナーパッチについてのセンサ出力値の平均値と当該基準値との差分値を求め、その差分値が規定値以上の場合に当該トナーパッチのセンサ出力値が異常であると判定するという方法が考えられる。しかしながら、作成するトナーパッチに付着するトナー付着量は、毎回常に一定になるとは限らない。言い換えると、トナーパッチのセンサ出力値の絶対値は常に一定になるわけではない。なぜなら、階調パターンを作成するときの作像条件(現像バイアス、帯電バイアス、露光パワー等)を一定に設定したとしても、現像剤の現像能力等に応じて、作成されるトナーパッチに付着するトナー付着量は変化するためである。その結果、トナーパッチのセンサ出力値も変化することになる。このとき、現像能力の変動を考慮して、極端にセンサ出力値にズレが生じた場合のみ、そのトナーパッチのセンサ出力値を異常と判定するように設定すると、カール癖等の影響を受けている異常なセンサ出力値が異常と判定さないケースができくるという不具合が生じる。また、単一トナーパッチ内の複数のセンサ出力値が大小に振れ、その平均値がたまたま基準値に近い結果となった場合、カール癖等の影響を受けている異常なセンサ出力値であっても異常と判定さないという不具合も生じる。
以上の理由から、本実施形態1では、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の変動幅(最大値−最小値)を用いて、各トナーパッチの異常判定を行うこととしている。
【0070】
また、本実施形態1とは別の方法としては、例えば、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の標準偏差を用いて、各トナーパッチの異常判定を行ってもよい。上述したように、各トナーパッチの正常なセンサ出力値は、単一のトナーパッチ内ではほぼ一定値をとるので、その標準偏差は0に近い小さな値となる。一方、カール癖等の生じているベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値は、上下に大きく変動するため、その標準偏差は大きな値となる。よって、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の標準偏差が規定値より大きい場合には、カール癖等による影響を受けた異常なセンサ出力値であると判定することが可能である。この方法も、各トナーパッチのセンサ出力値の絶対値に依存せずにカール癖等の影響を判断できる。
【0071】
さらに、上述した最大値と最小値の差分値による異常判定と、上述した標準偏差による異常判定との両方の条件を満たす場合にのみ、異常と判定する方法を採用してもよい。例えば、中間転写ベルト6上に存在する細かいキズによって単一トナーパッチ内の1つのセンサ出力値だけが影響を受けて変動し、そのトナーパッチについての最大値と最小値の差分値が規定値以上となったとする。この場合、当該トナーパッチ内の他のセンサ出力値はほとんど変動していない正常値であるので、トナーパッチのサイズが大きく、1つのトナーパッチ内で多数のサンプリングが行える場合には、上述した平均化処理を行うことで、異常値を示す1つのセンサ出力値の影響をほとんど無視できる。そのため、最大値と最小値との差分値による異常判定だけで、そのトナーパッチのセンサ出力値を排除すると、カール癖等の影響を受けていないトナーパッチのセンサ出力値が排除されてしまう場合がある。このような場合でも、上述した標準偏差による異常判定によれば、そのトナーパッチのセンサ出力値の標準偏差は小さい値となるので、この場合でも当該トナーパッチのセンサ出力値が排除されない。
【0072】
また、5つのトナーパッチから構成される階調パターンの範囲内にカール癖等の生じているベルト部分が存在する場合でも、そのカール癖等の生じているベルト部分がトナーパッチ間に位置するときには、カール癖等の影響がトナーパッチのセンサ出力値に出ない可能性が高い。ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチの検出結果を一律に除外するような従来の方法では、そのカール癖等の生じているベルト部分がトナーパッチ間に位置するときには、そのベルト部分に隣接する箇所に形成される2つのトナーパッチのセンサ出力値が除外されることがある。しかしながら、本実施形態1では、この場合でも、トナーパッチのセンサ出力値が異常でなければ、そのトナーパッチが除外されることはない。よって、現像γ等の算出に用いるトナーパッチ数が無駄に減少することはない。
【0073】
また、本実施形態1では、予めベルト地肌部一周の検出結果などを見てカール癖等の生じているベルト部分を把握するための前処理が必要ないので、このような前処理を行う場合よりもダウンタイムを少なくできる。
また、本実施形態1においては、中間転写ベルト6のベルト回転位置を把握する必要がないので、ベルト回転位置を検知するためのセンサやマークなどの部材が不要であり、低コスト化が可能である。
【0074】
また、本実施形態1では、異常なセンサ出力値であると判定されたトナーパッチについては、そのトナー付着量の算出処理(S6)からも除外される。上述したプロセスコントロールの付着量算出アルゴリズムで説明したように、本実施形態1では、トナーパッチのセンサ出力値を用いて光学センサ69の感度補正を行っている。そのため、このトナー付着量の算出処理においてカール癖等による異常なセンサ出力値を使用すると、感度補正係数の算出結果にズレが生じ、トナー付着量の算出結果に誤差が生じることが考えられるからである。
【0075】
次に、カール癖等による異常なセンサ出力値が検出される場合に、本実施形態1を適用したときの効果について説明する。
図16は、カール癖等による異常なセンサ出力値を除外しない場合に、カール癖等の影響で生じる誤差を説明するためのグラフである。
このグラフは、カール癖等の生じているベルト部分には階調パターンを構成するいずれのトナーパッチも形成されていない場合(カール癖無し)に算出された現像ポテンシャル−トナー付着量直線(図中△でプロットされた点の近似直線)と、1つ目のトナーパッチがカール癖等の生じているベルト部分に形成されている場合(カール癖有り)に算出された現像ポテンシャル−トナー付着量直線(図中○でプロットされた点の近似直線)とを重ねて表示したものである。
【0076】
図16に示すように、カール癖有りの場合における当該1つ目のトナーパッチの付着量は、カール癖無しの場合(正常な場合)よりも高い値を示している。そのため、カール癖有りの場合に、当該1つ目のトナーパッチの異常なセンサ出力値を含めて得られる現像ポテンシャル−トナー付着量直線は、カール癖無しの正常な場合における現像ポテンシャル−トナー付着量直線とはズレが生じる。図示の例では、現像γ(傾き)が低下するので、目標付着量を得るための現像ポテンシャルが、カール癖無しの正常な場合からズレてしまう。
【0077】
図17は、カール癖等による異常なセンサ出力値を除外する本実施形態1を適用した場合のグラフである。
本実施形態1の場合、1つ目のトナーパッチがカール癖等の生じているベルト部分に形成されている場合(カール癖有り)、当該1つ目のトナーパッチのセンサ出力値は除外される。よって、この場合の現像ポテンシャル−トナー付着量直線(図中□でプロットされた点の近似直線)は、残りの4つのトナーパッチだけから求められる。その結果、当該1つ目のトナーパッチによる異常なセンサ出力値によって、現像ポテンシャル−トナー付着量直線の算出に誤差が生じることはない。よって、図17に示すように、カール癖有りの場合でも、カール癖無しの正常な場合における現像ポテンシャル−トナー付着量直線とほぼ一致する現像ポテンシャル−トナー付着量直線を得ることができる。
【0078】
また、上述したように、本実施形態1は、カール癖の生じているベルト部分にトナーパッチが形成されて異常なセンサ出力値が検出される場合だけでなく、中間転写ベルト6上に存在するキズ傷や埃等の異物の箇所にトナーパッチが形成されて異常なセンサ出力値が検出される場合にも、適切な異常判定を行うことができる。よって、カール癖が発生しにくい材質のベルトを採用している場合でも、本発明を適用することで、現像γの算出精度を向上させることが可能である。
【0079】
〔実施形態2〕
次に、本発明を、上記実施形態1と同様にレーザプリンタに適用した他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について説明する。
上述した実施形態1では、センサ出力値が異常であると判定されたトナーパッチのセンサ出力値は、トナー付着量の算出や現像γ等の算出に使用されないように除外される。これに対し、本実施形態2では、センサ出力値が異常であると判定されたトナーパッチのセンサ出力値についても補正して使用する。なお、本実施形態2においては、トナーパッチのセンサ出力値で異常と判定された場合の処理方法が異なる以外は上記実施形態1と同様であるため、以下、上記実施形態1とは異なる点について説明する。
【0080】
現像γ等を算出する際、光学センサ69がトナーパッチのトナー付着量を正確に測定できる範囲に応じて、図18に示すように、現像γ等の算出に用いる有効付着量範囲を設定するのが一般的である。この場合、作成したトナーパッチのセンサ出力値が上記有効付着量範囲外のトナー付着量を示すものであったとき、そのトナーパッチのセンサ出力値は、たとえ正常な値であっても、現像γ等の算出には使用されず、有効付着量範囲内に属する残りのトナーパッチの検出結果から現像γ等の算出が行われる。そのため、環境変動や長時間放置を行った場合など、現像剤の帯電量が大きく変動した場合に、作成した階調パターンを構成するトナーパッチの多くが有効付着量範囲外のトナー付着量をもつ可能性がある。有効付着量範囲外のトナー付着量をもつトナーパッチが増えると、その分だけ現像γ等の算出に用いられるトナーパッチの数が減るので、現像γ等の算出精度が悪化する。このような場合に、更に、有効付着量範囲内のトナー付着量をもつトナーパッチのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けて除外されると、現像γ等の算出に用いられるトナーパッチの数が更に減ることになる。よって、カール等の影響による現像γ等の算出精度の悪化は防げても、使用するトナーパッチ数の減少による現像γ等の算出精度の悪化は避けられない場合がある。また、現像γ等の算出には最低でも有効付着量範囲内のトナー付着量をもつ2つのトナーパッチが必要である。そのため、図18に示すように、現像剤の帯電量の変動などにより有効付着量範囲内のトナー付着量をもつトナーパッチの数が2つしか存在しない場合において、そのうちの一方がカール癖等の影響を受けていて除外されると、現像γ等の算出に用いられるトナーパッチの数が2つ未満となり、プロセスコントロールを実行できない。特に、作成する階調パターンのトナーパッチ数が少ない場合には、このようなことが起こりやすい。
【0081】
そこで、本実施形態2では、トナーパッチのセンサ出力値にカール癖等の影響がある場合でも、直ちに当該トナーパッチのセンサ出力値を除外するのではなく、そのセンサ出力値を補正し、補正後のセンサ出力値が異常でないと判断されたときは、その補正後のセンサ出力値を現像γ等の算出に使用する。
【0082】
図19は、本実施形態2における異常なセンサ出力値に対応する処理のフローチャートである。
まず、トナーパッチごとに、サンプリングした複数のセンサ出力値の最大値と最小値を抽出する(S11)。次に、各トナーパッチのセンサ出力値の変動幅として、トナーパッチごとに最大値と最小値の差分値を算出する(S12)。そして、この差分値が予め設定された規定値未満であるか否かを判断し(S13)、規定値以上であると判断したら、当該トナーパッチのセンサ出力値が異常であると判定する。ここまでは、上述した実施形態1と同様である。
【0083】
本実施形態2では、センサ出力値が異常であると判定されたトナーパッチについては(S13のNo)、そのセンサ出力値の補正処理を行う(S21)。この補正処理では、まず、当該トナーパッチについて検出された複数のセンサ出力値の中から、上記S11で抽出した最大値と最小値を除去する処理を行う。この段階で除去される最大値と最小値を、第1最大値と第1最小値とし、これらの差分値を第1差分値とする。次に、第1最大値と第1最小値を除いた残りのセンサ出力値の中から、再度、最大値と最小値を抽出し、その差分値を算出する。ここで抽出される最大値と最小値を、第2最大値と第2最小値とし、これらの差分値を第2差分値とする。そして、この第2差分値が予め設定された規定値未満であるか否かを判断する(S22)。
【0084】
この判断において、第2差分値が規定値未満であると判断された場合(S22のYes)、そのトナーパッチについての補正後のセンサ出力値(第1最大値と第1最小値が除外された残りのセンサ出力値)は、トナー付着量の算出や現像γ等の算出に用いられる。このように変動が大きいセンサ出力値が除去される結果、残りのセンサ出力値から得られる平均値は、除去前の平均値よりも、本来の値に近いものとなり、ズレの程度が抑制される。一方、この判断において第2差分値が規定値以上であると判断された場合には(S22のNo)、そのトナーパッチのセンサ出力値はトナー付着量の算出や現像γ等の算出に使用されないように除外される(S14)。
【0085】
なお、第2差分値と比較する上記S22の規定値は、第1差分値と比較する上記S13の規定値と同じ値でもよいが、変動が大きい第1最大値と第1最小値を除いた後のセンサ出力値に対する判定であることを考慮して、上記S13の規定値よりも小さい値とし、判定条件を厳しくしてもよい。
【0086】
本実施形態2によれば、カール癖等の影響により異常なセンサ出力値を示したトナーパッチであっても、これを補正して補正後の有効なセンサ出力値を用いて現像γ等の算出を行うので、現像γ等の算出に用いるトナーパッチ数が減ることによる現像γ等の算出精度の悪化を防ぐことができる。
なお、本実施形態2における補正処理では、変動が大きい第1最大値と第1最小値を除く場合について説明したが、例えば、更に、次に変動が大きい第2最大値と第2最小値を除くようにしてもよい。変動が大きいセンサ出力値をいくつ除外するかは、残りのセンサ出力値の数がトナーパッチのトナー付着量を精度良く得るのに十分な数となる範囲で決定するのがよい。
【0087】
以上、本実施形態1及び2に係るレーザプリンタは、潜像担持体としての感光体11に対向して配置された現像剤担持体としての現像ローラ22上に担持されている現像剤を感光体11と現像ローラ22とが対向する現像領域へ搬送し、現像剤中のトナーを感光体11上の静電潜像に付着させてトナー像を形成し、トナー像を最終的に記録材としての転写紙へ転移させることで転写紙上に画像を形成する画像形成装置であり、発光手段としての発光素子311と、発光素子311から照射された光の反射光を受光する2つの受光手段である正反射受光素子312及び拡散反射受光素子313とを有する光学センサ69と、階調パターンを構成する複数のトナーパッチを感光体11上に形成し、感光体11から被転写体としての中間転写体である中間転写ベルト6上へ転写した後の複数のトナーパッチを光学センサ69で検出し、光学センサ69の出力値を用いて画質調整制御としての画像濃度調整制御を実行する画質調整制御手段としての制御部とを備えている。そして、制御部は、各トナーパッチに対応する光学センサ69の出力値が所定の異常条件を満たすか否かを判断し、所定の異常条件を満たすと判断されたセンサ出力値について、そのセンサ出力値に対応するトナーパッチのセンサ出力値が画像濃度調整制御に用いられないよいにする処理や、そのセンサ出力値に対応するトナーパッチのセンサ出力値を補正し、補正後のセンサ出力値が画像濃度調整制御に用いられるようにする処理などの所定の異常対応処理を行ってから、画像濃度調整制御を実行する。このような画像形成装置であれば、埃等の異物やキズあるいはカール癖などの存在により誤検出や検出誤差が生じているセンサ出力値を、そのセンサ出力値が所定の異常条件を満たすか否かによって判定することができる。よって、中間転写ベルト6を駆動させる前処理が不要であり、前処理が必要な構成と比較して画像形成装置のダウンタイムが少なく、消費電力も抑制できる。
【0088】
また、本実施形態1及び2においては、光学センサ69によるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する中間転写ベルト6は、複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材であるので、トナーパッチのセンサ出力値にカール癖の影響が出る可能性がある。本実施形態1及び2によれば、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチであっても、誤検出や検出誤差を生じさせるほどのカール癖が生じない場合、そのトナーパッチに対応するセンサ出力値は画質調整制御に用いられる。よって、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値を一律に除外する場合よりも、画像濃度調整制御に用いるトナーパッチ数の減少を抑制できる。したがって、画像濃度調整制御に用いるトナーパッチ数の減少によって調整精度が悪化する事態が抑制される。
特に、本実施形態1及び2においては、中間転写ベルト6の回転位置情報を用いずに画像濃度調整制御を実行するので、光学センサ69によるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する中間転写ベルト6の回転位置を検出する必要がない。そのため、その検出に必要なセンサやマークを設けることによるコスト増大という不具合が生じない。
【0089】
また、本実施形態1及び2においては、光学センサ69の出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する光学センサ69の最大出力値と最小出力値との差分値が予め決められた規定差分値以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めている。カール癖等の影響は、センサ出力値の変動となって現れるので、本実施形態1及び2によれば、カール癖等の影響を受けているトナーパッチのセンサ出力値を適切に特定することができる。
【0090】
また、本実施形態1及び2においては、上述したように、光学センサ69の出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する光学センサ69の出力値の標準偏差が予め決められた規定標準偏差以上であるという条件を所定の異常条件に含めてもよい。この場合も、センサ出力値の変動となって現れるカール癖等の影響を受けているトナーパッチのセンサ出力値を適切に特定することができる。
【0091】
また、本実施形態1及び2においては、画質調整制御として、互いに異なる画像濃度となるように形成した複数のトナーパッチを感光体11上に形成した後にこれらのトナーパッチを光学センサ69で検出し、各トナーパッチに対応する光学センサ69の出力値から得られる各トナーパッチのトナー付着量に基づいて画像濃度を調整する画像濃度調整制御を実行しており、上記規定差分値又は上記規定標準偏差がトナーパッチごとに異なる値に設定されている。これにより、低濃度のトナーパッチから高濃度のトナーパッチにかけて、センサ出力値がカール癖等の影響を受けているか否かを適切に判定することが可能となる。
【0092】
また、本実施形態1及び2におけるレーザプリンタは、作成する階調パターンのトナーパッチ数が10以下であるので、画像濃度調整制御に用いるトナーパッチ数が比較的少ない画像形成装置である。このような画像形成装置においては、1つのトナーパッチのセンサ出力値の誤差が画像濃度調整制御の調整精度に与える影響が大きい。よって、カール等の影響を受けた誤差のあるセンサ出力値を排除したり補正したりしてから画像濃度調整制御を実行することによって、画像濃度調整制御の調整精度の悪化を防止できるという本実施形態1及び2の効果は、このような画像形成装置において特に有益である。
【0093】
また、本実施形態1においては、上記所定の異常対応処理が、所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチについてのセンサ出力値を画像濃度調整制御に用いられないように除外する処理であるので、画像濃度調整制御の調整精度の悪化を安定して防止できる。
また、本実施形態2においては、上記所定の異常対応処理が、所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチについてのセンサ出力値を補正し、補正後のセンサ出力値が画像濃度調整制御に用いられるようにする処理であるので、画像濃度調整制御の調整精度の悪化を安定して防止できるだけでなく、次のような効果も得られる。すなわち、画像濃度調整制御に用いられるトナーパッチ数がもともと少ない場合に更に、そのトナーパッチのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けて除外されると、画像濃度調整制御に用いられるトナーパッチ数の減少による調整精度の悪化が懸念される。また、トナーパッチのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けて除外されたときに、画像濃度調整制御に必要なトナーパッチ数を下回ると、画像濃度調整制御が実行できない事態も起こり得る。本実施形態2のように一旦は所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチでも、そのセンサ出力値を補正して画像濃度調整制御に用いられるようにすることで、画像濃度調整制御に用いられるトナーパッチ数の減少による調整精度の悪化を抑制でき、また、画像濃度調整制御が実行できない事態の発生も抑制できる。
【0094】
なお、以上の説明では、中間転写ベルト6上でトナーパッチを検出する場合について説明したが、各感光体11Y,11M,11C,11K上でトナーパッチを検出する場合でも同様である。
また、以上の説明では、画質調整制御が画像濃度調整制御である場合について説明したが、色ズレ調整制御である場合でも同様である。なお、色ズレ調整制御の場合、中間転写ベルト6上に形成する複数のトナーパッチは、同じ濃度のものでよい。
【符号の説明】
【0095】
6 中間転写ベルト
11 感光体
20 現像装置
22 現像ローラ
68 光書込ユニット
69 光学センサ
100 制御部
311 発光素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【特許文献1】特開2005−338700号公報
【特許文献2】特開2001−318538号公報
【特許文献3】特開2007−310010号公報
【特許文献4】特開2010−217796号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、使用環境(温度や湿度)の変化あるいは経時変化によって画像濃度が変化するという問題がある。そのため、電子写真方式の画像形成装置の多くは、常に安定した画像濃度を得るために、所定タイミングで画像濃度調整制御を実施する。画像濃度調整制御は、一般に、目標画像濃度が互いに異なる複数のトナーパッチで構成される濃度検知用の階調パターン(トナーパターン)を感光体等の像担持体上に作成し、そのパターンの各パッチ濃度を光学センサにより検出する。そして、各パッチ濃度の検出結果(光学センサの出力値)から各パッチのトナー付着量を算出し、現像ポテンシャルに対するトナー付着量を示す関係式(この関係式の傾きを「現像γ」といい、X軸切片を「現像開始電圧」という。)を求める。その後、求めた現像ポテンシャルとトナー付着量の関係式から、特定の画像濃度で目標とするトナー付着量が得られるように、作像条件(露光パワー、帯電バイアス、現像バイアスなど)を変更する。また、必要に応じて、トナー濃度制御基準値も変更して現像剤中のトナー濃度が適正値となるように調整する。
【0003】
階調パターンを構成する各トナーパッチのトナー付着量を検出するための光学センサは、LEDなどの発光素子と、フォトトランジスタなどの受光素子とで構成されている。この種の光学センサは、正反射光のみを検出するタイプと、拡散反射光のみを検出するタイプと、両者を検出するタイプのいずれかが、一般に用いられている。光学センサを用いて階調パターンを構成する各トナーパッチのトナー付着量を検出する場合、像担持体の表面(検出対象面)に作成された各トナーパッチにLED光を照射し、その反射光(正反射光、拡散反射光)を受光素子で検知して、その検出結果(光学センサの出力値)をトナー付着量に変換することにより、各トナーパッチに付着しているトナー量を得る。
【0004】
このような光学センサにおいては、検出対象(各トナーパッチ)との距離(検出距離)を精度よく一定に維持することが重要である。検出距離が変動するとセンサ特性が変化して検出精度が低下し、画像濃度調整制御に悪影響を及ぼす場合があるからである。
ここで、検出対象であるトナーパッチを担持する像担持体が中間転写ベルトなどの無端ベルト状部材であると、光学センサと各トナーパッチとの距離(検出距離)を精度よく一定に維持することが困難な場合がある。具体的に説明すると、このような無端ベルト状像担持体は、通常、駆動ローラとの間でスリップが生じないように、かなりの張力で複数の支持ローラに張架されている。また、無端ベルト状像担持体は、画像形成装置の小型化のため、支持ローラに対する巻き付け角度が大きく、かつ、支持ローラの径が小さい場合が多いため、支持ローラに巻き付いたベルト部分が大きく急激に曲げられる。そのため、無端ベルト状像担持体の駆動停止状態が継続すると、支持ローラに巻き付いた無端ベルト状像担持体のベルト部分がローラ曲面に沿って変形してしまう場合がある。以下、この変形を「カール癖」という。特に、高湿環境下において停止状態の無端ベルト状像担持体が長時間放置されると、カール癖が顕著に発生する。これは、樹脂等のベルト材料が吸湿して伸び量が増えるためである。このようなカール癖が発生した場合、そのカール癖発生部分に付着したトナーパッチと光学センサとの距離(検出距離)が、カール癖が発生していない平坦なベルト部分の検出距離とは異なるものとなる。その結果、そのカール癖発生部分ではセンサ特性が変化して検出誤差が生じる。このような検出誤差を含んだセンサ出力値に基づいて画像濃度調整制御を行っても、適正な画像濃度には調整できない。
【0005】
また、複数の潜像担持体それぞれに形成した複数のトナー像を互いに重ね合わせて画像形成を行ういわゆるタンデム型の画像形成装置では、使用環境(温度や湿度)の変化あるいは経時変化によって各トナー像の重ね合わせ位置が相対的にずれてしまう色ズレと呼ばれる問題がある。そのため、タンデム型の画像形成装置では、所定タイミングで、色ズレ調整制御を実施する。色ズレ調整制御では、各潜像担持体上に形成したトナーパッチを中間転写体上に転写し、各トナーパッチの位置を光学センサで検出し、各トナーパッチの相対位置が目標相対位置となるように調整する。中間転写体が無端ベルト状部材であり、上述したようなカール癖が発生すると、色ズレ調整制御にも悪影響が出る。具体的には、色ズレ調整制御では、通常、トナーパッチの正反射光を受光することでトナーパッチを検出する。カール癖発生部分では、光学センサの検出領域を通過するときのベルト面の向きが、カール癖が発生していない平坦なベルト部分のベルト面の向きとは異なるものとなる。そのため、カール癖発生部分が光学センサの検出領域を通過したときに、光学センサの受光素子にはベルト面やトナーパッチからの正反射光が受光されず又はその正反射光の受光量が極端に少なくなる場合がある。この場合、例えば、ベルト面からの正反射光の受光量よりもトナーパッチからの正反射光の受光量の方が少ないケースでは、そのカール癖発生部分にトナーパッチが付着していなくても、そのカール癖発生部分にトナーパッチが付着していると誤検出してしまい、色ズレを適正に調整できないおそれがある。
【0006】
特許文献1には、画像形成を行わない待機中に中間転写ベルトを連続もしくは間欠回転させることでカール癖の発生を抑える画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、更に、支持ローラ部近傍の環境水分量を検知する水分量検知手段を備え、カール癖が顕著になる高湿環境下では中間転写ベルトの回転動作を実行する時間間隔が短くなるように制御する。この画像形成装置によれば、画像形成装置が使用されずに長時間放置された場合でも、支持ローラに巻き付いたベルト部分のカール癖の増大を抑えることが可能となる。しかしながら、上記特許文献1に記載の画像形成装置では、画像形成動作中以外でも駆動動作を行うため、消費電力の増加を招くなどの不具合が生じる。
【0007】
特許文献2には、ウォームアップ時あるいは画像形成動作に先んじて中間転写ベルトを所定時間以上回転させることにより、長時間放置されている間に中間転写ベルトに発生したカール癖を復元させてから、画像形成動作を実行するようにした画像形成装置が開示されている。しかしながら、上記特許文献2に記載の画像形成装置では、カール癖の影響がなくなるまで中間転写ベルトを駆動し続け、その間は画像形成動作を行うことができない。そのため、画像形成装置のダウンタイムが増大するという不具合が生じる。また、画像形成動作中以外でも駆動動作を行うため、消費電力の増加を招くなどの不具合も生じる。
【0008】
特許文献3には、中間転写ベルトを停止させる位置を毎回同じ位置になるようにして、中間転写ベルト上に発生するカール癖の位置を固定し、カール癖が生じるベルト部分にはトナーパッチを作成しない画像形成装置が開示されている。この画像形成装置によれば、検出されるトナーパッチはカール癖がないベルト部分に形成されたものとなるので、トナーパッチの誤検出や検出誤差の発生を防ぐことが可能となる。しかしながら、上記特許文献3に記載の画像形成装置では、ベルト停止位置を毎回同じ位置にする制御を実現するために、ベルトの回転位置を検出するためのセンサが必要になるとともに、ベルトの回転位置をセンサで検出するためのマークをベルト上に設ける必要がある。そのため、コストが増大するという不具合が生じる。
【0009】
一方、特許文献4には、カール癖が発生した位置にトナーパッチが形成されているか否かを判断し、カール癖の位置にトナーパッチが形成されている場合には当該トナーパッチを画像濃度調整制御や色ズレ調整制御などの画質調整制御には用いないようにした画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、ベルト駆動開始から時間をカウントし、中間転写ベルトユニットにおける支持ローラと光学センサとの位置関係から、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分が光学センサの検出領域に到達するタイミングを予測する。そして、そのタイミングでは光学センサによるトナーパッチの検出を行わない、もしくは、そのタイミングで得た光学センサの出力値については画質調整制御に使用しないように処理する。
この画像形成装置によれば、画像形成動作中以外に上記特許文献1や上記特許文献2に記載のようなベルト駆動を行う必要がないので、画像形成装置のダウンタイムが増大するという不具合や、消費電力の増加を招くという不具合は生じない。また、この画像形成装置では、ベルトの回転位置を検出する必要がないので、その検出に必要なセンサやマークを設けることによるコスト増大という不具合も生じない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献4に記載の画像形成装置においては、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されるトナーパッチの検出結果(光学センサの出力値)を一律に使用しない。ところが、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分であっても、カール癖が発生しているとは限らない。例えば、ベルト駆動開始前におけるベルト停止時間が非常に短い場合やカール癖が生じ難い使用環境である場合には、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に、トナーパッチの誤検出や検出誤差を生じさせるほどのカール癖が生じない場合がある。画像濃度調整制御や色ズレ調整制御などの画質調整制御に用いるトナーパッチの数が減ることは、その画質調整制御の調整精度の悪化につながるので、誤検出や検出誤差を生じさせないトナーパッチはできるだけ除外せずに使用することが望まれる。ここで、予め余分にトナーパッチを形成しておけば、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されるトナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値を一律に使用しない場合でも、画質調整制御の調整精度の悪化を防ぐことが可能である。しかしながら、トナーパッチを余分に形成することは、トナーを余分に消費することになり、好ましくない。
【0011】
また、中間転写ベルト上に埃があった場合や中間転写ベルトの表面にキズが生じていた場合において、そのベルト部分にトナーパッチが形成されたときも、カール癖が生じているベルト部分にトナーパッチが形成されたときと同様、トナーパッチの誤検出や検出誤差を生じさせる。上記特許文献4には、このような場合に生じるトナーパッチの誤検出や検出誤差に対処可能な別の画像形成装置も開示されている。詳しく説明すると、中間転写ベルト上の埃やキズなどは、カール癖と同様にトナーパッチの誤検出や検出誤差を生じさせる要因ではあるが、カール癖のように支持ローラと光学センサとの位置関係からその発生箇所を特定することができない。そのため、上記特許文献4に記載の上記別の画像形成装置では、トナーパッチを作成する前に、中間転写ベルトを一周させて中間転写ベルトの表面状態を検査する検査処理を行う。そして、この検査処理によって埃やキズが存在するベルト部分を把握し、そのベルト部分に形成されるトナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値は画質調整制御に使用しないように処理している。この画像形成装置では、検査処理を行う時間だけ画像形成装置のダウンタイムが増大し、また、その検査処理において中間転写ベルトを少なくとも一周させる必要があるので消費電力の増加を招くなどの不具合が生じる。
【0012】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、画像形成装置のダウンタイムの増大や消費電力の増加を招かず、像担持体の回転位置検出に必要なセンサやマークを設ける必要がなく、トナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値を無駄に除外せずに、カール癖等によるトナーパッチの検出誤差に起因した画質調整制御の調整精度の悪化を防ぐことが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潜像担持体に対向して配置された現像剤担持体上に担持されている現像剤を該潜像担持体と該現像剤担持体とが対向する現像領域へ搬送し、該現像剤中のトナーを該潜像担持体上の静電潜像に付着させてトナー像を形成し、該トナー像を最終的に記録材へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、少なくとも1つの発光手段と、該発光手段から照射された光の反射光を受光する少なくとも1つの受光手段とを有する光学センサと、複数のトナーパッチを該潜像担持体上に形成し、該潜像担持体上の該複数のトナーパッチ又は該潜像担持体から被転写体上へ転写した後の該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、該光学センサの出力値を用いて画質調整制御を実行する画質調整制御手段とを備えており、上記画質調整制御手段は、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値が所定の異常条件を満たすか否かを判断し、該所定の異常条件を満たすと判断された出力値について所定の異常対応処理を行ってから、上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記光学センサによるトナーパッチの検出時に該トナーパッチを担持する上記潜像担持体又は上記被転写体は、複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記無端ベルト状部材の回転位置情報を用いずに上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの最大出力値と最小出力値との差分値が予め決められた規定差分値以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの出力値の標準偏差が予め決められた規定標準偏差以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項4又は5の画像形成装置において、上記画質調整制御手段は、上記画質調整制御として、互いに異なる画像濃度となるように形成した複数のトナーパッチを上記潜像担持体上に形成した後に該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値から得られる各トナーパッチのトナー付着量に基づいて画像濃度を調整する画像濃度調整制御を実行するものであり、上記規定差分値又は上記規定標準偏差は、トナーパッチごとに異なる値に設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の画像形成装置において、上記複数のトナーパッチの数が10以下であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を上記画質調整制御に用いられないように除外する処理であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を補正し、補正後の出力値が上記画質調整制御に用いられるようにする処理であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、埃やキズあるいはカール癖などの存在により誤検出や検出誤差が生じている光学センサの出力値(センサ出力値)を、各トナーパッチに対応するセンサ出力値が所定の異常条件を満たすか否かによって特定することができる。そして、所定の異常条件を満たすと判断されたセンサ出力値が画質調整制御に用いられないように除外したり、そのセンサ出力値を補正したりする所定の異常対応処理を行った後、画質調整制御が実行される。これにより、光学センサによるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する潜像担持体又は被転写体を、画像形成動作中以外に駆動しなくても、トナーパッチの語検出や検出誤差の画質調整制御への悪影響を抑制できる。よって、画像形成装置のダウンタイムが増大するという不具合や、消費電力の増加を招くという不具合が生じない。また、光学センサによるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する潜像担持体又は被転写体の回転位置を検出する必要がないので、その検出に必要なセンサやマークを設けることによるコスト増大という不具合も生じない。
更に、光学センサによるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する潜像担持体又は被転写体が複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材である場合、そのベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチであっても、誤検出や検出誤差を生じさせるほどのカール癖が生じない場合には、そのトナーパッチに対応するセンサ出力値は、所定の異常条件を満たさず、画質調整制御に用いられる。よって、トナーパッチに対応するセンサ出力値が無駄に除外されることもない。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によれば、画像形成装置のダウンタイムの増大や消費電力の増加を招かず、像担持体の回転位置検出に必要なセンサやマークを設ける必要がなく、トナーパッチの検出結果に係る光学センサの出力値を無駄に除外せずに、カール癖等によるトナーパッチの検出誤差に起因した画質調整制御の調整精度の悪化を防ぐことが可能となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るレーザプリンタの主要部を示す概略構成図である。
【図2】同レーザプリンタに設けられるプロセスユニットのうちのイエローのプロセスユニットの概略構成を示す拡大図である。
【図3】同プロセスユニットに設けられる現像装置内を示す分解斜視図である。
【図4】中間転写ベルトの外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設された光学センサの概略断面図である。
【図5】同レーザプリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。
【図6】プロセスコントロール時の制御フローの概要を示すフローチャートである。
【図7】中間転写ベルト上に形成される各色階調パターンのトナーパッチの位置を説明するための説明図である。
【図8】トナーパッチのトナー付着量と、トナーパッチ検出時のセンサ出力値Vsp及びベルト地肌部検出時のセンサ出力値Vsgとの関係を示すグラフである。
【図9】トナーパッチのトナー付着量と△Vsp及び△Vsgと感度補正係数αとの関係を示すグラフである。
【図10】トナーパッチのトナー付着量と拡散反射成分と正反射成分との関係を示すグラフである。
【図11】正反射光における正反射成分の正規化値と、地肌部変動補正後の拡散光による出力値との関係を示すグラフである。
【図12】現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示すグラフである。
【図13】転写ユニットを高湿環境下に長時間放置し、そのユニットを用いて中間転写ベルトの駆動を行って光学センサによりベルト地肌部の正反射光出力を測定したときのグラフである。
【図14】階調パターンを構成する5つのトナーパッチの1つがカール癖の生じているベルト部分に形成された場合における光学センサの出力値を示す説明図である。
【図15】実施形態1における異常なセンサ出力値を排除する処理のフローチャートである。
【図16】カール癖等による異常なセンサ出力値を除外しない場合に、カール癖等の影響で生じる誤差を説明するためのグラフである。
【図17】カール癖等による異常なセンサ出力値を除外する実施形態1を適用した場合のグラフである。
【図18】現像ポテンシャルとトナー付着量との関係を示すグラフに、現像γ等の算出に用いる有効付着量範囲を示した説明図である。
【図19】実施形態2における異常なセンサ出力値に対応する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のカラーレーザプリンタ(以下、「レーザプリンタ」という。)に適用した一実施形態1(以下、本実施形態1を「実施形態1」という。)について説明する。
図1は、本実施形態1に係るレーザプリンタの主要部を示す概略構成図である。
このレーザプリンタは、画像形成手段として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための4組の作像手段たるプロセスユニット1Y,1M,1C,1K(以下、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の部材であることを示す。)を備えている。このプロセスユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、潜像担持体としてのドラム状の感光体11Y,11M,11C,11Kを有する感光体ユニット10Y,10C,10M,10Kと、現像手段たる現像装置20Y,20M,20C,20Kとを備えている。
【0018】
4色のプロセスユニット1Y,1M,1C,1Kの図中上方には、無端状ベルト部材からなる被転写体としての中間転写ベルト6を張架しながら図中反時計回りに無端移動せしめる転写ユニット50が配設されている。転写手段たる転写ユニット50は、中間転写ベルト6のほかに、ベルトクリーニングユニット51、4つの一次転写ローラ52Y,52M,52C,52K、二次転写バックアップローラ53、駆動ローラ54なども備えている。中間転写ベルト6は、これらローラに張架されながら、駆動ローラ54の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。4つの一次転写ローラ52Y,52C,52M,52Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト6を感光体11Y,11C,11M,11Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト6の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト6は、その無端移動に伴ってY、M、C、K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、その外周面に感光体11Y,11M,11C,11K上のY、M、C、Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト6上に4色重ね合わせトナー像(以下「カラー画像」という。)が形成される。カラー画像は、中間転写ベルト6の回転(表面移動)に伴って二次転写ローラ3との間の二次転写部に搬送される。
【0019】
また、本レーザプリンタは、上記プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kのほか、その下方に図示しない潜像形成手段たる光書込ユニットが配置されており、さらにその下に図示しない給紙カセットが配置されている。図1中の一点鎖線は、記録材としての転写紙の搬送経路を示している。給紙カセットから給送された転写紙は、図示しない搬送ガイドによってガイドされながら搬送ローラで搬送され、レジストローラ5が設けられている一時停止位置に送られる。転写紙は、レジストローラ5により所定のタイミングで二次転写部に供給される。そして、中間転写ベルト6上に形成されたカラー画像が、転写紙上に二次転写され、転写紙上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙は、定着ユニット7でトナー像が定着された後、機外に排出される。
【0020】
図2は、上記プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、イエローのプロセスユニット1Yの概略構成を示す拡大図である。
なお、他のプロセスユニット1M,1C,1Kについてもそれぞれ同じ構成となっているので、それらの説明は省略する。
図2において、プロセスユニット1Yは、上述したように、感光体ユニット10Y及び現像装置20Yを備えている。感光体ユニット10Yは、感光体11Yのほか、その感光体表面をクリーニングするクリーニングブレード13Y、その感光体表面を一様帯電する帯電手段たる帯電ローラ15Y等を備えている。また、感光体表面に潤滑剤を塗布するとともに、感光体表面を除電する機能を有する潤滑剤塗布兼除電ブラシローラ12Yも備えている。この潤滑剤塗布兼除電ブラシローラ12Yは、ブラシ部が導電性繊維で構成され、その芯金部には除電バイアスを印加するための図示しない除電用電源が接続されている。
【0021】
上記構成の感光体ユニット10Yにおいて、感光体11Yの表面は、電圧が印加された帯電ローラ15Yにより一様帯電される。この感光体11Yの表面に図示しない潜像形成手段たる光書込ユニットで変調及び偏向されたレーザ光LYが走査されながら照射されると、感光体11Yの表面に静電潜像が形成される。この感光体11Y上の静電潜像は、後述の現像装置20Yで現像されてイエローのトナー像となる。感光体11Yと中間転写ベルト6とが対向する一次転写部では、感光体11Y上のトナー像が中間転写ベルト6上に転写される。トナー像が転写された後の感光体11Yの表面は、感光体クリーニング手段としてのクリーニングブレード13Yでクリーニングされた後、潤滑剤塗布兼除電ブラシローラ12Yで所定量の潤滑剤が塗布されるとともに除電され、次の静電潜像の形成に備えられる。
【0022】
図3は、現像装置20Y内を示す分解斜視図である。
現像装置20Yは、図2や図3に示すように、現像剤搬送手段としての第1搬送スクリュー24Yが配設された第1剤収容室29Yを有している。また、現像剤搬送手段としての第2搬送スクリュー23Y、現像剤担持体としての現像ローラ22Y、現像剤規制部材としてのドクターブレード25Yなどが配設された第2剤収容室21Yも有している。循環経路を形成しているこれら2つの剤収容室内には、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとからなる二成分現像剤である図示しないY現像剤が内包されている。第1搬送スクリュー24Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動することで、第1剤収容室29Y内のY現像剤をプリンタ本体のリア側(図2中で紙面に直交する方向の奧側)に向けて搬送する。そして、第1搬送スクリュー24Yにより第1剤収容室29Yの端部まで搬送されたY現像剤は、連通口を経て第2剤収容室21Y内に進入する。
【0023】
第2剤収容室21Y内の第2搬送スクリュー23Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動することで、Y現像剤をプリンタ本体のフロント側(図2中で紙面に直交する方向の手前側)に向けて搬送する。このようにしてY現像剤を搬送する第2搬送スクリュー21Yの上方には、現像ローラ22Yが第2搬送スクリュー23Yと平行な姿勢で配設されている。この現像ローラ22Yは、図中時計回り方向に回転駆動する非磁性スリーブからなる現像スリーブ内に固定配置されたマグネットローラを内包した構成となっている。第2搬送スクリュー21Yによって搬送されるY現像剤の一部は、マグネットローラの磁力によって現像スリーブの表面に汲み上げられる。そして、現像スリーブの表面と所定の間隙を保持するように配設されたドクターブレード25Yによってその層厚が規制された後、感光体11Yと対向する現像領域まで搬送され、感光体11Y上のY用の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体11Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像スリーブの回転に伴って第2搬送スクリュー23Y上に戻される。そして、第2搬送スクリュー23Yにより第2剤収容室21Yの端部まで搬送されたY現像剤は、連通口を経て第1剤収容室29Y内に戻る。このようにして、Y現像剤は現像装置内を循環搬送される。
【0024】
現像ケース内の現像剤のトナー濃度は、画像形成に伴うトナー消費により低下するので、トナー濃度センサ26Yの出力値Vtに基づいて、必要により図1に示したトナーカートリッジ30Yから粉体ポンプ27Yによりトナーが補給されることで適正な範囲に制御される。トナー補給制御は、出力値Vtと目標出力値であるトナー濃度制御基準値Vtrefとの差分値Tn(=Vtref−Vt)に基づいて、差分値Tnが+(プラス)の場合はトナー濃度が十分高いと判断してトナーを補給せず、差分値Tnが−(マイナス)の場合は差分値Tnの絶対値が大きいほどトナー補給量を多くするようにして、出力値Vtがトナー濃度制御基準値Vtrefの値に近づくようにして行う。
【0025】
また、4つの感光体11Y,11M,11C,11Kのうち、最下流側にあるブラック用の感光体11Kのみ中間転写ベルト6に常に接触している転写ニップ常接状態であり、残りの感光体11Y,11M,11Cは中間転写ベルト6に対して接離可能となっている。転写紙上にカラー画像を形成する場合、4つの感光体11Y,11M,11C,11Kは、それぞれ中間転写ベルト6に当接する。一方、転写紙上にブラックの単色画像を形成する場合、各カラー用の感光体11Y,11M,11Cを中間転写ベルト6から離間させ、ブラックトナーによるトナー像が形成されるブラック用の感光体11Kのみを中間転写ベルト6に当接させるようにする。
【0026】
図4は、中間転写ベルト6の外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設された光学センサ69の概略断面図である。
トナーパッチ検出手段たる光学センサ69は、二次転写部よりも中間転写ベルト表面移動方向上流側で、中間転写ベルト6の外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。この光学センサ69は、発光手段としての発光素子311と、正反射光を受光するための正反射光受光手段としての正反射受光素子312と、拡散反射光を受光するための拡散反射受光素子313とを有している。各素子311,312,313は、プリント基板314上に実装されている。各素子311,312,313は、黒色の樹脂で成型したケース315に封入されている。発光素子311から発した光を、中間転写ベルト6の表面に向けて出射する。中間転写ベルト6の表面や、その表面に転写されたトナーパッチで正反射した正反射光を正反射受光素子312によって受光して、その受光量に応じた電圧(正反射光出力値)を出力する。更に、中間転写ベルト6の表面や、その表面に転写されたトナーパッチで拡散反射した拡散反射光を拡散反射受光素子313によって受光して、その受光量に応じた電圧(拡散反射光出力値)を出力する。
【0027】
光学センサの発光素子311としては、ピーク発光波長が940[nm]のGaAs発光ダイオード(LED)が用いられている。また、正反射受光素子312及び拡散反射受光素子313としては、ピーク分光感度波長が850[nm]のSiフォトトランジスタとを有したものを使用している。すなわち、この光学センサは、色による反射率に顕著な差のない830[nm]以上の赤外光を検出するものである。このような光学センサを用いることで、一つのセンサで、Y、M、C、Kの全色のトナーパッチを検出することができる。
【0028】
図5は、本レーザプリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。
同図において、制御手段たる制御部100は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)101、データ記憶手段たる不揮発性のRAM(Random Access Memory)102、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)103等を有している。この制御部100には、プロセスユニット1Y,1M,1C,1K、光書込ユニット68、転写ユニット50、光学センサ69などが電気的に接続されている。そして、制御部100は、RAM102やROM103内に記憶している制御プログラムに基づいて、これらの各種機器を制御するようになっている。
【0029】
制御部100は、画像を形成するための画像形成条件の制御も行っている。具体的には、制御部100は、プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kにおける各帯電ローラ15Y,15M,15C,15Kに対して帯電バイアスをそれぞれ個別に印加する制御を実施する。これにより、各色の感光体11Y,11M,11C,11Kが、Y、M、C、K用に個別設定した各目標帯電電位にそれぞれ一様帯電せしめられる。また、制御部100は、光書込ユニット68のプロセスユニット1Y,1M,1C,1Kに対応する4つの半導体レーザのパワーをそれぞれ個別に制御する。また、制御部100は、プロセスユニット1Y,1M,1C,1Kにおける各現像ローラに、Y、M、C、K用に個別設定した各現像バイアス値の現像バイアスをそれぞれ印加する制御を実施する。これにより、感光体11Y,11M,11C,11Kの静電潜像と現像ローラとの間には、トナーをスリーブ表面側から感光体側に静電移動させる色ごとに適正化された現像ポテンシャルを作用させて、静電潜像を現像することができる。
【0030】
図6は、プロセスコントロール時の制御フローの概要を示すフローチャートである。
制御部100は、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行うたびに、各色の画像濃度を適正化するための画質調整制御としての画像濃度調整制御たるプロセスコントロールを実行する。なお、図6に示すフローチャートは、電源投入時におけるプロセスコントロールの制御フローを例示したものである。
【0031】
まず、電源が投入され、装置が立ち上がったら(S1)、制御部100は、光学センサ69の校正を行う(S2)。具体的には、光学センサ69の正反射受光素子312の出力が予め決められた所定範囲内(例えば4±0.5[V])になるように、発光素子311の発光強度を調整する。具体的には、光学センサ69の校正を開始したら、発光素子311をONして、中間転写ベルト6の地肌部から正反射光出力を得る。そして、この正反射光出力値が4±0.5[V]となるように、発光素子311であるLEDに流す電流値を調整する。本実施形態1では、二分探索法を用いて、正反射光出力値が4「V」に最も近くなる電流値を特定する。二分探索法の結果、正反射光出力値が4±0.5[V]の範囲に入らない場合には、光学センサ69の校正処理は失敗となる。この失敗が連続して3回続いた場合、異常が発生したと判断して本レーザプリンタの動作を停止する。また、本実施形態1では、発光素子311に流す電流値の上限値を30[mA]と定めている。これは、発光素子311が破損しないように設定された値である。正反射光出力値が4±0.5[V]の範囲内に入った場合には、そのときの電流値を本体に保存する。
【0032】
なお、光学センサ69の校正処理には時間がかかるため、前回調整時における電流値を用いて中間転写ベルトの地肌部に対して発光素子311から光を照射し、その正反射光を検出し、検出した正反射光出力の平均値を求めた上で、その平均値が所定範囲内である場合には、光学センサ69の校正処理を行う必要性がないと判断して、光学センサ69の校正を行わなくてもよい。
【0033】
次に、制御部100は、トナー濃度センサ26Yの出力値Vtを取得して(S3)、各色の現像装置内のトナー濃度を把握してから、図7に示すような、階調パターンを中間転写ベルト6上における各光学センサ69に対向する位置を通過するように色ごとに自動形成する(S4)。各色の階調パターンは、設定画像濃度が互いに異なる5個程度のトナーパッチからなり、中間転写ベルト6の移動方向(回転方向)に沿って、パッチ間隔が5.6[mm]で、K色の階調パターン、C色の階調パターン、M色の階調パターン、Y色の階調パターンの順で、中間転写ベルト6上に形成される。各トナーパッチは、主走査線方向(中間転写ベルト6の移動方向に対して直交する方向:ベルト幅方向)の幅が10[mm]、副走査線方向(中間転写ベルト6の移動方向)の幅が14.4[mm]となっている。階調パターンは、帯電、現像バイアス条件をトナーパッチ毎に変更し、露光条件は、予め決められた所定値(感光体が十分除電されるフル露光)で形成される。なお、階調パターンの各トナーパッチの現像バイアス、帯電バイアスの設定については、後述する。
【0034】
ここで、作成する各色の階調パターンの数は、各色の階調パターンの副走査線方向における全長が感光体間ピッチよりも短くなる数とするのが望ましい。なぜなら、作成する各色の階調パターンの全長が感光体間ピッチよりも長い場合、各色の階調パターンの作成を同時に開始したときに、一部のトナーパッチが他の色のトナーパッチと重なってしまうためである。なお、各色の階調パターンの作成開始タイミングをずらせば、トナーパッチが重なってしまうことを防ぐことができるが、この場合、全色の階調パターンを作成するのに要する時間が長くなってしまうので、プロセスコントロールの処理時間が長くなり、ダウンタイムの増大につながるので好ましくない。本実施形態1では、感光体間ピッチが100mmであるので、作成する各色の階調パターンの全長を感光体間ピッチよりも短くなる各色の階調パターンの最大数は、感光体間ピッチ:100[mm]/(1個のトナーパッチの副走査方向長さ:14.4[mm]+パッチ間隔:5.6[mm])より、5個となる。
【0035】
このようにして中間転写ベルト上の各色の階調パターンは、光学センサ69により光学的に検出される(S5)。本実施形態1において、光学センサ69による階調パターンの検出は、4[ms]のサンプリング間隔で検出を行う。この場合、中間転写ベルト6上の1個のトナーパッチが光学センサ69の検出領域を通過する間に、その1個のトナーパッチについて複数の検出結果(センサ出力値)を得ることができる。本実施形態1では、1個のトナーパッチについて得られる複数のセンサ出力値をサンプリング点数で平均化し、その結果を当該トナーパッチの検出結果であるセンサ出力値Vspとする。
【0036】
ここで、階調パターン作成のために露光を開始するタイミングから光学センサ69の検出領域にその階調パターンが到達するまでの時間は、装置レイアウトとプロセス線速によって決まる。そのため、本実施形態1では、ソフトウェアで実現されるタイマーを用い、階調パターンの露光開始タイミングを基準トリガーとしてタイマーをスタートさせ、光学センサ69の検出領域に階調パターンが到達する時間が経過したタイミングで、光学センサ69の出力値をサンプリングし、トナーパッチごとに平均化したセンサ出力値を各トナーパッチの検出結果として取得する。平均化に用いるサンプリング点は、トナーパッチの中央部付近の数点を用いるのが好ましい。これは、トナーパッチのエッジ部分ではエッジ効果によりトナー付着量が多いので、エッジ部分のセンサ出力値を平均値算出に含めると、実際のトナーパッチのトナー付着量よりも多いトナー付着量に対応するセンサ出力値が出てしまうためである。
【0037】
このようにして、各色の階調パターンの各トナーパッチを検出した後、本実施形態1では、中間転写ベルト6のカール癖が生じている部分にトナーパッチが形成されて異常な値が検出されたセンサ出力値や、中間転写ベルト6に付着する埃等の異物あるいはキズの箇所にトナーパッチが形成されて異常な値が検出されたセンサ出力値を排除する処理を行う(S10)。この処理の詳細については後述する。なお、以下の説明において、異常なセンサ出力値が検出される原因となるカール癖、埃等の異物の付着、キズなどを、「カール癖等」という。
【0038】
各色の階調パターンの各トナーパッチを検出して得られた光学センサ69の出力値(平均値)は、トナー付着量とセンサ出力値との関係に基づき構築された付着量算出アルゴリズムを用いて、トナー付着量(画像濃度)へ変換処理される(S6)。本実施形態1においては、特開2006−139180号に記載のように、トナーパッチからの正反射光と拡散反射光の両方を用いてトナー付着量を算出する。正反射光と拡散反射光の両方を用いてトナー付着量を算出することで、正反射光のみを用いてトナー付着量を算出するものに比べて、高トナー付着量の有効検出範囲を広げることができる。また、上記特開2006−139180号に記載のトナー付着量算出アルゴリズムを用いることで、温度変化、経時劣化などにより発光素子や受光素子の出力が変化したり、中間転写ベルト6の経時劣化によって受光素子の出力が変化したりしても、正確なトナー付着量を求めることが可能である。
【0039】
以下に、本実施形態1における付着量算出アルゴリズムについて、具体的に説明する。
なお、以下の説明文中における記号を次のように定義する。
Vsg:転写ベルト地肌部を検知する光学センサからの出力電圧値(地肌部検知電圧)
Vsp:各基準パッチを検知する光学センサからの出力電圧値(パッチ検知電圧)
Voffset:オフセット電圧(LEDをOFFしているときの出力電圧値)
_reg:正反射光出力(Regular Reflectionの略)
_dif:拡散反射光出力(Diffuse Reflectionの略)(cf.JIS Z 8105 色に関する用語)
[n] 要素数:nの配列変数
【0040】
まず、Kトナーの付着量算出アルゴリズムについて説明する。
(i)以下の式を用いて、正反射光からオフセット電圧を減ずる。
ΔVsg_reg[K][n]=Vsg_reg[K][n]−Voffset_reg
ΔVsp_reg[K]=Vsg_reg[K]−Voffset_reg[K]
(ii)正反射データを正規化する。
正規化値Rn[K]=ΔVsg_reg[K][n]/ΔVsp_reg[K]
(iii)LUT(ルックアップテーブル)を用いて、正規化値をトナー付着量に変換する。
正規化値に対応する付着量変換テーブル(LUT)を予め作成しておき、それに対応させてトナー付着量を得る。
【0041】
次に、カラートナーの付着量算出アルゴリズムについて説明する。
カラートナー付着量においては、以下に示すSTEP1〜7という7段階の処理によって演算する。
【0042】
[STEP1]
STEP1では、データサンプリングを行って、ΔVspやΔVsgを算出する。
まず、正反射光出力,拡散反射光出力ともに、全トナーパッチ[n]個についてオフセット電圧との差分を計算する。これは、最終的に、センサ出力の増分をカラートナーの付着量による増分のみで表したいためである。
【0043】
正反射光出力の増分については、次の数1に示す式より求める。
【数1】
また、拡散反射光出力の増分については、次の数2に示す式より求める。
【数2】
但し、オフセット出力電圧値(Voffset_reg、Voffset_dif)が無視できるほど十分に小さい値となるOPアンプを用いた場合、このような差分処理は省略しても構わない。
このようなSTEP1により、図8に示す特性曲線を得る。
【0044】
[STEP2]
STEP2では、感度補正係数αを算出する。
まず、STEP1にて求めたΔVsp_reg[n]やΔVsp_dif[n]から、トナーパッチごとに、(ΔVsp_reg[n]/ΔVsp_dif[n])を算出する。そして、後述するSTEP3で正反射光出力の成分分解を行う際に、拡散反射光出力(ΔVsp_dif[n])に乗ずるための感度補正係数αを、次の数3に示す式より算出する。
【数3】
このようなSTEP2により、図9に示すような特性曲線を得る。なお、感度補正係数αをΔVsp_reg[n]とVsp_Dif[n]との最小値としたのは、正反射光出力の正反射成分の最小値がほぼゼロであり、かつ正の値となることが予めわかっているからである。
【0045】
[STEP3]
STEP3では、正反射光の成分分解を行う。
正反射光出力の拡散反射光成分については、次の数4に示す式より求める。
【数4】
また、正反射光出力の正反射成分については、次の数5に示す式より求める。
【数5】
このようにして成分分解を行うと、感度補正係数αが求まるパッチ検出電圧にて、正反射光出力の正反射成分がゼロとなる。そして、図10に示すように、正反射光出力が正反射光成分と拡散反射光成分とに成分分解される。
【0046】
[STEP4]
STEP4では、正反射光出力の正反射成分を正規化する。
すなわち、次の数6に示す式より、各パッチ検出電圧における地肌検出電圧との比(中間転写ベルト6の地肌部露出率)を求めて、0〜1までの正規化値へ変換する。
【数6】
【0047】
[STEP5]
また、STEP5では、拡散反射光出力の地肌部変動補正を行う。
すなわち、次の数7に示す式より、ベルト地肌部からの拡散反射光出力成分を、拡散反射光出力電圧から除去する。
【数7】
【0048】
[STEP6]
STEP6では、拡散反射光出力の感度を補正する。
具体的には、図11に示すように、正反射光出力の正反射成分の正規化値に対し、地肌部変動補正後の拡散反射光出力をプロットし、そのプロット線を近似することで、拡散反射光出力の感度を求め、この感度があらかじめ定めた狙いの感度となるように補正を行う。具体的には、正反射光の正反射成分の正規化値に対し、地肌部変動補正後の拡散反射光出力をプロットしたプロット線を多項式近似(本実施形態1では二次式近似とする。)して、感度補正係数ηを算出する。
【0049】
まず、プロット線を二次近似式(y=ξ1・x2+ξ2・x+ξ3)で近似し、下記の数8に示す式(1)〜(3)を用いて、最小二乗法によって係数ξ1、ξ2、ξ3を求める。なお、式(1)〜(3)中における「m」はデータ数であり、「x[i]」は正反射光出力の正反射成分の正規化値であり、「y[i]」は地肌部変動補正後の拡散反射光出力である。なお、計算に用いるxの範囲は0.1≦x≦1.0である。
【数8】
【0050】
上記式(1)〜(3)の連立方程式を解くことで、係数ξ1、ξ2、ξ3を求めることができる。こうして近似されたプロット線から計算される正規化値aが所定値bとなるような感度補正係数ηを求める。
【数9】
【0051】
STEP5で求めた地肌部変動補正後の拡散反射光出力ΔVsp_dif’[n]に対し、STEP6で求めた感度補正係数ηを乗じることで、付着量と拡散反射光出力との関係が予め定められた関係となるように補正する。すなわち、この補正後の拡散反射光出力ΔVsp_dif’’は、下記の数10に示す式より得られる。
【数10】
【0052】
[STEP7]
STEP7では、センサ出力値をトナー付着量に変換する。
STEP6までの処理により、発光素子(LED)311の光量低下などによって生ずる拡散反射光出力の経時的な変動に対する補正処理がすべて行われたため、最後に、センサ出力値をトナー付着量変換テーブルに基づいてトナー付着量に変換するのである。
以上が、カラートナーの付着量算出アルゴリズムである。
【0053】
上述したトナー付着量算出アルゴリズムを用いて各トナーパッチのトナー付着量を算出したら、各トナーパッチのトナー付着量と各トナーパッチを作成したときの各現像ポテンシャルとの関係から、図12に示すように、最小二乗法により線形近似した現像性能直線たる現像ポテンシャル−トナー付着量直線(y=ax+b)を、色ごとに求める。この現像ポテンシャル−トナー付着量直線から、現像γ(傾きa)および現像開始電圧Vk(x軸切片b)を色ごとに算出する(S7)。
【0054】
次に、制御部100は、目標トナー付着量を得るのに必要な現像バイアスVbを求める(S8)。 具体的には、上記現像ポテンシャル−トナー付着量直線に基づき、目標付着量(縦軸)に対応する現像ポテンシャル(横軸)を求める。目標付着量は、最高濃度を得るのに必要な値に決められている。この値は、トナー顔料の着色度合いとトナー粒径で決まるが、一般的には0.4〜0.6[mg/cm2]程度である。次に、以下の式より、求めた現像ポテンシャルを現像バイアスVbに変換する。
現像バイアスVb[−V] = 現像ポテンシャル + 露光部電位:Vl[−V]
【0055】
なお、帯電バイアスVcは、キャリアが感光体に飛翔しない程度の値であらかじめ決定されている。一般には、現像バイアスVbが400〜750[−V]程度であるとき、帯電バイアスVcは、現像バイアスVb[−V]に100〜200[−V]程度を加算した値に設定される。このようにして求めた現像バイアスVbと帯電バイアスVcを作像時のバイアスとして設定する。
【0056】
制御部100は、現像バイアスVbを算出したら、現像γと上記S3で取得したトナー濃度センサ26の出力値Vtとを用いて、トナー濃度制御基準値Vtrefを補正する(S9)。まず、目標現像γと、算出した現像γとの差分値Δγ(Δr=算出した現像γ−目標現像γ)を算出する。目標現像γは、例えば、1.0[mg/cm2/kV]とする。この値は、現像開始電圧Vkが0[V]、現像ポテンシャルが1[kV]のときに、トナー付着量が1.0[mg/cm2]となる値である。すなわち、現像開始電圧Vk=0Vで、目標付着量が0.5[mg/cm2]、露光後の感光体電位Vlが50Vであれば、目標現像γから算出される現像バイアスVbは、550Vとなる。
【0057】
制御部100は、算出したΔγが所定範囲外のときは、次回の現像バイアス調整時に、算出される現像バイアスVbが、上述の設定範囲を超える可能性がある。よって、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正を行って、次のプロセスコントロールまでに、現像γを目標現像γに近づける補正を行う。なお、現像γを目標現像γに近づけるようトナー濃度制御基準値Vtrefを補正すると、算出した現像バイアスで作像しても規定の画像濃度が得られなくなってしまう。しかし、いきなり現像装置内のトナー濃度が、目標のトナー濃度になるわけではなく、徐々に現像装置内のトナー濃度が目標のトナー濃度となるようにトナー補給制御を行うので、現像γが急激に変化するわけではない。よって、トナー濃度制御基準値Vtrefを補正しても、始めのうちは、算出した現像バイアスで、所定の画像濃度を得ることができる。そして、徐々に規定の画像濃度から離れていく。しかし、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正量は、算出した現像バイアスで作像しても画像濃度が、規定の画像濃度から大幅にかけ離れるような補正量には設定しない。よって、画像が大きく劣化することはない。ただし、階調パターン作成時のトナー濃度センサ26の出力値Vtが、トナー濃度制御基準値Vtrefから大幅に異なっている場合において、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正をしてしまうと、逆に、目標の現像γから外れてしまうおそれがある。このため、階調パターン作成時のトナー濃度センサ26の出力値Vtと、階調パターン作成時のトナー濃度センサ26の出力値Vtとの関係性も考慮にいれて、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正を行うか否かを決める。
【0058】
具体的な一例を示すと、Δγ≧0.30[mg/cm2/kV]、かつ、Vt−Vtref≧−0.2[V]のとき、トナー濃度制御基準値Vtrefを0.2[V]下げて、現時点よりもトナー濃度を下げる補正を行う。また、Δγ≦−0.30[mg/cm2/kV]、かつ、Vt−Vtref≧0.2[V]のときは、トナー濃度制御基準値Vtrefを0.2[V]上げて、現時点よりもトナー濃度を上げる補正を行う。また、−0.30[mg/cm2/kV]<Δγ<0.30[mg/cm2/kV]のときは、トナー濃度制御基準値Vtrefの補正は行わない。
以上が、プロセスコントロールの制御フローである。
【0059】
次に、本実施形態1の特徴的部分に関わるカール癖による光学センサ69の出力値への影響について説明する。
図13は、転写ユニット50を高湿環境下に長時間放置し、そのユニットを用いて中間転写ベルト6の駆動を行って光学センサ69によりベルト地肌部の正反射光出力を測定したグラフである。
図13からわかるように、一部でセンサ出力値が大きく変動していることが分かる。このセンサ出力値が大きく変動している部分が、カール癖の生じている箇所に対応する箇所である。このように、中間転写ベルト6にカール癖が生じると、その影響により光学センサ69と検出対象(ここではベルト地肌部)との距離に変動が生じる。その結果として、正反射光出力値が変化するのである。これは、カール癖の生じているベルト部分に形成されたトナーパッチを光学センサ69で検出する場合には、正反射光出力値の誤差や拡散反射光出力値の誤差となって現れ、安定した画像濃度制御の妨げとなる。
【0060】
図14は、階調パターンを構成する5つのトナーパッチの1つがカール癖の生じているベルト部分に形成された場合における光学センサ69の出力値を示す説明図である。この説明図は、階調パターンの1つ目のトナーパッチ(最も濃度が低いトナーパッチ)がカール癖の生じているベルト部分に重なった様子を図中上部に示し、これに対応するように光学センサ69の正反射光出力値を図中下部に示したものである。
図14に示すように、カール癖の生じているベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値は、図13に示したベルト地肌部のセンサ出力値のものと同様、大きく変動していることがわかる。そのため、図6に示したプロセスコントロールのフローチャートにおける上記S5のように、1つのトナーパッチについての複数のセンサ出力値を平均化したものを当該トナーパッチのセンサ出力値として用いる場合には、本来の検出結果(すなわち、カール癖の生じていないベルト部分に形成された場合の検出結果)からズレが生じることになる。例えば、図14に示すように、カール癖によってセンサ出力値が平均して低下している場合、その平均化した結果は本来の結果よりも小さいセンサ出力値となる。そのため、図6に示したプロセスコントロールのフローチャートにおける上記S6で算出される当該トナーパッチのトナー付着量に誤差が生じることになり、上記S7において算出される現像γ等に誤差が生じることになる。その結果、目標付着量を得るための作像条件にズレが生じ、狙いの画像濃度を得ることができなくなる。
【0061】
また、カール癖の生じているベルト部分にトナーパッチが形成される場合と同様に、中間転写ベルト6に付着する埃等の異物あるいはキズの箇所にトナーパッチが形成される場合にも、異常なセンサ出力値が検出される。
【0062】
そこで、本実施形態1においては、カール癖等によるセンサ出力変動に起因した付着量誤検出を防ぐために、以下の方法を用いて制御を行う。要するに、トナーパッチを検出したセンサ出力値のデータから、そのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けているか否かの判定を行い、カール癖等の影響があると判定した場合には、そのセンサ出力値を除去して、各トナーパッチのトナー付着量と現像γ等の算出を行う。
【0063】
図14に示すように、トナーパッチの正常なセンサ出力値はほぼ一定の値である。これは、本実施形態1では作成する1つのトナーパターン内では、トナー付着量が一様であるためである。しかしながら、カール癖等の影響を受けているトナーパッチ内でのセンサ出力値は大きく変動する。そのため、単一のトナーパッチ内でセンサ出力値の変動が検出された場合には、そのトナーパッチがカール癖等の影響を受けていると判断することが可能である。そして、この方法でカール癖等の影響を受けているトナーパッチが検出された場合、そのトナーパッチについてのセンサ出力値を使用しないようにすれば、付着量誤検出による現像γ等の算出精度の低下を防ぐことができる。
【0064】
特に、最近ではトナー消費量低減の点から、プロセスコントロール時に作成する階調パターンのトナーパッチ数を低減することが求められている。本実施形態1においても各色5階調パターンとし、そのトナーパッチ数が少ない。このように少ないトナーパッチ数で現像γ等を算出する場合、現像γ等の算出精度に対するトナーパッチ1つの重みは大きい。そのため、カール癖等の影響によって1つのトナーパッチについて付着量検出の誤差が生じると、現像γ等の算出精度に与える影響が大きく、目標付着量を得るための現像ポテンシャルが本来の値から大きくずれて設定され、結果として画像濃度のズレが顕著となる。よって、カール癖等の影響があるトナーパッチについてのセンサ出力値を現像γ等の算出に使用しないようにすることで、当該トナーパッチの付着量誤検出による現像ポテンシャル設定値のズレを低減でき、安定した画像濃度を得ることが可能となる。
【0065】
一方で、本実施形態1では、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分であっても、そのベルト部分にカール癖等が生じてない場合には、そのベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値は現像γ等の算出精度に使用される。上述したように、最近ではトナー消費量低減の点から、プロセスコントロール時に作成する階調パターンのトナーパッチ数を少なくすると、現像γ等の算出精度に対するトナーパッチ1つの重みが大きくなる。よって、現像γ等の算出に用いるトナーパッチが1つ減った場合に、現像γ等の算出精度が悪化する程度は比較的大きい。この場合の現像γ等の算出精度の悪化の程度は、付着量の誤検出を生じさせるトナーパッチをそのまま用いる場合の現像γ等の算出精度の悪化ほどではないが、センサ出力値が正常なトナーパッチについてはできるだけ除外せずに現像γ等の算出精度に使用することが望まれる。ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチの検出結果を一律に除外するような従来の方法では、そのベルト部分にカール癖等が生じてない場合のようにカール癖等の影響が出ていないトナーパッチについての正常なセンサ出力値も除外されてしまう。これに対し、本実施形態1においては、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチであっても、そのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けていない場合には、除外されずに、現像γ等の算出に用いられる。
【0066】
次に、中間転写ベルト6のカール癖等が生じている部分にトナーパッチが形成されて異常な値が検出されたセンサ出力値を排除する具体的な手順について説明する。
図15は、本実施形態1における異常なセンサ出力値を排除する処理のフローチャートである。
まず、トナーパッチごとに、サンプリングした複数のセンサ出力値の最大値と最小値を抽出する(S11)。次に、各トナーパッチのセンサ出力値の変動幅として、トナーパッチごとに最大値と最小値の差分値を算出する(S12)。そして、この差分値が予め設定された規定値未満であるか否かを判断し(S13)、規定値以上であると判断したら、当該トナーパッチのセンサ出力値については、後の処理(S6以降の処理)に用いられないように除外する処理を行う(S14)。
【0067】
上記S13において用いる規定値は、判定対象のトナーパッチの目標濃度に応じて変更してもよい。トナー付着量が高いトナーパッチの場合、カール癖等の影響がセンサ出力値に出にくい。この場合には、トナー付着量が低い低濃度のトナーパッチの規定値は大きくし、トナー付着量が高い高濃度のトナーパッチの規定値は小さくように設定するとよい。このように設定すれば、低濃度のトナーパッチから高濃度のトナーパッチにかけて、センサ出力値がカール癖等の影響を受けているか否かを適切に判定することができる。
【0068】
ここで、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の変動幅(最大値−最小値)を用いて、各トナーパッチの異常判定を行う理由は、各トナーパッチのセンサ出力値の絶対値に依存せずにカール癖等の影響を判断できるからである。つまり、トナーパッチに付着しているトナーの量が異なっていても、同じ規定値により安定して異常判定を行うことができる。そのため、現像剤の現像能力が使用環境や放置時間などによって変化し、トナーパッチに付着するトナー量が変動しても、安定して確実にカール癖等による影響を受けた異常なセンサ出力値を検出することが可能である。
【0069】
例えば、比較例として、各トナーパッチについてのセンサ出力値の平均値に対して異常判定を行う場合を考える。この場合、予め、各トナーパッチの正常なセンサ出力値を測定しておき、それの平均値を基準値として保持しておく。そして、プロセスコントロールの際に検出した各トナーパッチについてのセンサ出力値の平均値と当該基準値との差分値を求め、その差分値が規定値以上の場合に当該トナーパッチのセンサ出力値が異常であると判定するという方法が考えられる。しかしながら、作成するトナーパッチに付着するトナー付着量は、毎回常に一定になるとは限らない。言い換えると、トナーパッチのセンサ出力値の絶対値は常に一定になるわけではない。なぜなら、階調パターンを作成するときの作像条件(現像バイアス、帯電バイアス、露光パワー等)を一定に設定したとしても、現像剤の現像能力等に応じて、作成されるトナーパッチに付着するトナー付着量は変化するためである。その結果、トナーパッチのセンサ出力値も変化することになる。このとき、現像能力の変動を考慮して、極端にセンサ出力値にズレが生じた場合のみ、そのトナーパッチのセンサ出力値を異常と判定するように設定すると、カール癖等の影響を受けている異常なセンサ出力値が異常と判定さないケースができくるという不具合が生じる。また、単一トナーパッチ内の複数のセンサ出力値が大小に振れ、その平均値がたまたま基準値に近い結果となった場合、カール癖等の影響を受けている異常なセンサ出力値であっても異常と判定さないという不具合も生じる。
以上の理由から、本実施形態1では、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の変動幅(最大値−最小値)を用いて、各トナーパッチの異常判定を行うこととしている。
【0070】
また、本実施形態1とは別の方法としては、例えば、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の標準偏差を用いて、各トナーパッチの異常判定を行ってもよい。上述したように、各トナーパッチの正常なセンサ出力値は、単一のトナーパッチ内ではほぼ一定値をとるので、その標準偏差は0に近い小さな値となる。一方、カール癖等の生じているベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値は、上下に大きく変動するため、その標準偏差は大きな値となる。よって、各トナーパッチにおけるセンサ出力値の標準偏差が規定値より大きい場合には、カール癖等による影響を受けた異常なセンサ出力値であると判定することが可能である。この方法も、各トナーパッチのセンサ出力値の絶対値に依存せずにカール癖等の影響を判断できる。
【0071】
さらに、上述した最大値と最小値の差分値による異常判定と、上述した標準偏差による異常判定との両方の条件を満たす場合にのみ、異常と判定する方法を採用してもよい。例えば、中間転写ベルト6上に存在する細かいキズによって単一トナーパッチ内の1つのセンサ出力値だけが影響を受けて変動し、そのトナーパッチについての最大値と最小値の差分値が規定値以上となったとする。この場合、当該トナーパッチ内の他のセンサ出力値はほとんど変動していない正常値であるので、トナーパッチのサイズが大きく、1つのトナーパッチ内で多数のサンプリングが行える場合には、上述した平均化処理を行うことで、異常値を示す1つのセンサ出力値の影響をほとんど無視できる。そのため、最大値と最小値との差分値による異常判定だけで、そのトナーパッチのセンサ出力値を排除すると、カール癖等の影響を受けていないトナーパッチのセンサ出力値が排除されてしまう場合がある。このような場合でも、上述した標準偏差による異常判定によれば、そのトナーパッチのセンサ出力値の標準偏差は小さい値となるので、この場合でも当該トナーパッチのセンサ出力値が排除されない。
【0072】
また、5つのトナーパッチから構成される階調パターンの範囲内にカール癖等の生じているベルト部分が存在する場合でも、そのカール癖等の生じているベルト部分がトナーパッチ間に位置するときには、カール癖等の影響がトナーパッチのセンサ出力値に出ない可能性が高い。ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチの検出結果を一律に除外するような従来の方法では、そのカール癖等の生じているベルト部分がトナーパッチ間に位置するときには、そのベルト部分に隣接する箇所に形成される2つのトナーパッチのセンサ出力値が除外されることがある。しかしながら、本実施形態1では、この場合でも、トナーパッチのセンサ出力値が異常でなければ、そのトナーパッチが除外されることはない。よって、現像γ等の算出に用いるトナーパッチ数が無駄に減少することはない。
【0073】
また、本実施形態1では、予めベルト地肌部一周の検出結果などを見てカール癖等の生じているベルト部分を把握するための前処理が必要ないので、このような前処理を行う場合よりもダウンタイムを少なくできる。
また、本実施形態1においては、中間転写ベルト6のベルト回転位置を把握する必要がないので、ベルト回転位置を検知するためのセンサやマークなどの部材が不要であり、低コスト化が可能である。
【0074】
また、本実施形態1では、異常なセンサ出力値であると判定されたトナーパッチについては、そのトナー付着量の算出処理(S6)からも除外される。上述したプロセスコントロールの付着量算出アルゴリズムで説明したように、本実施形態1では、トナーパッチのセンサ出力値を用いて光学センサ69の感度補正を行っている。そのため、このトナー付着量の算出処理においてカール癖等による異常なセンサ出力値を使用すると、感度補正係数の算出結果にズレが生じ、トナー付着量の算出結果に誤差が生じることが考えられるからである。
【0075】
次に、カール癖等による異常なセンサ出力値が検出される場合に、本実施形態1を適用したときの効果について説明する。
図16は、カール癖等による異常なセンサ出力値を除外しない場合に、カール癖等の影響で生じる誤差を説明するためのグラフである。
このグラフは、カール癖等の生じているベルト部分には階調パターンを構成するいずれのトナーパッチも形成されていない場合(カール癖無し)に算出された現像ポテンシャル−トナー付着量直線(図中△でプロットされた点の近似直線)と、1つ目のトナーパッチがカール癖等の生じているベルト部分に形成されている場合(カール癖有り)に算出された現像ポテンシャル−トナー付着量直線(図中○でプロットされた点の近似直線)とを重ねて表示したものである。
【0076】
図16に示すように、カール癖有りの場合における当該1つ目のトナーパッチの付着量は、カール癖無しの場合(正常な場合)よりも高い値を示している。そのため、カール癖有りの場合に、当該1つ目のトナーパッチの異常なセンサ出力値を含めて得られる現像ポテンシャル−トナー付着量直線は、カール癖無しの正常な場合における現像ポテンシャル−トナー付着量直線とはズレが生じる。図示の例では、現像γ(傾き)が低下するので、目標付着量を得るための現像ポテンシャルが、カール癖無しの正常な場合からズレてしまう。
【0077】
図17は、カール癖等による異常なセンサ出力値を除外する本実施形態1を適用した場合のグラフである。
本実施形態1の場合、1つ目のトナーパッチがカール癖等の生じているベルト部分に形成されている場合(カール癖有り)、当該1つ目のトナーパッチのセンサ出力値は除外される。よって、この場合の現像ポテンシャル−トナー付着量直線(図中□でプロットされた点の近似直線)は、残りの4つのトナーパッチだけから求められる。その結果、当該1つ目のトナーパッチによる異常なセンサ出力値によって、現像ポテンシャル−トナー付着量直線の算出に誤差が生じることはない。よって、図17に示すように、カール癖有りの場合でも、カール癖無しの正常な場合における現像ポテンシャル−トナー付着量直線とほぼ一致する現像ポテンシャル−トナー付着量直線を得ることができる。
【0078】
また、上述したように、本実施形態1は、カール癖の生じているベルト部分にトナーパッチが形成されて異常なセンサ出力値が検出される場合だけでなく、中間転写ベルト6上に存在するキズ傷や埃等の異物の箇所にトナーパッチが形成されて異常なセンサ出力値が検出される場合にも、適切な異常判定を行うことができる。よって、カール癖が発生しにくい材質のベルトを採用している場合でも、本発明を適用することで、現像γの算出精度を向上させることが可能である。
【0079】
〔実施形態2〕
次に、本発明を、上記実施形態1と同様にレーザプリンタに適用した他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について説明する。
上述した実施形態1では、センサ出力値が異常であると判定されたトナーパッチのセンサ出力値は、トナー付着量の算出や現像γ等の算出に使用されないように除外される。これに対し、本実施形態2では、センサ出力値が異常であると判定されたトナーパッチのセンサ出力値についても補正して使用する。なお、本実施形態2においては、トナーパッチのセンサ出力値で異常と判定された場合の処理方法が異なる以外は上記実施形態1と同様であるため、以下、上記実施形態1とは異なる点について説明する。
【0080】
現像γ等を算出する際、光学センサ69がトナーパッチのトナー付着量を正確に測定できる範囲に応じて、図18に示すように、現像γ等の算出に用いる有効付着量範囲を設定するのが一般的である。この場合、作成したトナーパッチのセンサ出力値が上記有効付着量範囲外のトナー付着量を示すものであったとき、そのトナーパッチのセンサ出力値は、たとえ正常な値であっても、現像γ等の算出には使用されず、有効付着量範囲内に属する残りのトナーパッチの検出結果から現像γ等の算出が行われる。そのため、環境変動や長時間放置を行った場合など、現像剤の帯電量が大きく変動した場合に、作成した階調パターンを構成するトナーパッチの多くが有効付着量範囲外のトナー付着量をもつ可能性がある。有効付着量範囲外のトナー付着量をもつトナーパッチが増えると、その分だけ現像γ等の算出に用いられるトナーパッチの数が減るので、現像γ等の算出精度が悪化する。このような場合に、更に、有効付着量範囲内のトナー付着量をもつトナーパッチのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けて除外されると、現像γ等の算出に用いられるトナーパッチの数が更に減ることになる。よって、カール等の影響による現像γ等の算出精度の悪化は防げても、使用するトナーパッチ数の減少による現像γ等の算出精度の悪化は避けられない場合がある。また、現像γ等の算出には最低でも有効付着量範囲内のトナー付着量をもつ2つのトナーパッチが必要である。そのため、図18に示すように、現像剤の帯電量の変動などにより有効付着量範囲内のトナー付着量をもつトナーパッチの数が2つしか存在しない場合において、そのうちの一方がカール癖等の影響を受けていて除外されると、現像γ等の算出に用いられるトナーパッチの数が2つ未満となり、プロセスコントロールを実行できない。特に、作成する階調パターンのトナーパッチ数が少ない場合には、このようなことが起こりやすい。
【0081】
そこで、本実施形態2では、トナーパッチのセンサ出力値にカール癖等の影響がある場合でも、直ちに当該トナーパッチのセンサ出力値を除外するのではなく、そのセンサ出力値を補正し、補正後のセンサ出力値が異常でないと判断されたときは、その補正後のセンサ出力値を現像γ等の算出に使用する。
【0082】
図19は、本実施形態2における異常なセンサ出力値に対応する処理のフローチャートである。
まず、トナーパッチごとに、サンプリングした複数のセンサ出力値の最大値と最小値を抽出する(S11)。次に、各トナーパッチのセンサ出力値の変動幅として、トナーパッチごとに最大値と最小値の差分値を算出する(S12)。そして、この差分値が予め設定された規定値未満であるか否かを判断し(S13)、規定値以上であると判断したら、当該トナーパッチのセンサ出力値が異常であると判定する。ここまでは、上述した実施形態1と同様である。
【0083】
本実施形態2では、センサ出力値が異常であると判定されたトナーパッチについては(S13のNo)、そのセンサ出力値の補正処理を行う(S21)。この補正処理では、まず、当該トナーパッチについて検出された複数のセンサ出力値の中から、上記S11で抽出した最大値と最小値を除去する処理を行う。この段階で除去される最大値と最小値を、第1最大値と第1最小値とし、これらの差分値を第1差分値とする。次に、第1最大値と第1最小値を除いた残りのセンサ出力値の中から、再度、最大値と最小値を抽出し、その差分値を算出する。ここで抽出される最大値と最小値を、第2最大値と第2最小値とし、これらの差分値を第2差分値とする。そして、この第2差分値が予め設定された規定値未満であるか否かを判断する(S22)。
【0084】
この判断において、第2差分値が規定値未満であると判断された場合(S22のYes)、そのトナーパッチについての補正後のセンサ出力値(第1最大値と第1最小値が除外された残りのセンサ出力値)は、トナー付着量の算出や現像γ等の算出に用いられる。このように変動が大きいセンサ出力値が除去される結果、残りのセンサ出力値から得られる平均値は、除去前の平均値よりも、本来の値に近いものとなり、ズレの程度が抑制される。一方、この判断において第2差分値が規定値以上であると判断された場合には(S22のNo)、そのトナーパッチのセンサ出力値はトナー付着量の算出や現像γ等の算出に使用されないように除外される(S14)。
【0085】
なお、第2差分値と比較する上記S22の規定値は、第1差分値と比較する上記S13の規定値と同じ値でもよいが、変動が大きい第1最大値と第1最小値を除いた後のセンサ出力値に対する判定であることを考慮して、上記S13の規定値よりも小さい値とし、判定条件を厳しくしてもよい。
【0086】
本実施形態2によれば、カール癖等の影響により異常なセンサ出力値を示したトナーパッチであっても、これを補正して補正後の有効なセンサ出力値を用いて現像γ等の算出を行うので、現像γ等の算出に用いるトナーパッチ数が減ることによる現像γ等の算出精度の悪化を防ぐことができる。
なお、本実施形態2における補正処理では、変動が大きい第1最大値と第1最小値を除く場合について説明したが、例えば、更に、次に変動が大きい第2最大値と第2最小値を除くようにしてもよい。変動が大きいセンサ出力値をいくつ除外するかは、残りのセンサ出力値の数がトナーパッチのトナー付着量を精度良く得るのに十分な数となる範囲で決定するのがよい。
【0087】
以上、本実施形態1及び2に係るレーザプリンタは、潜像担持体としての感光体11に対向して配置された現像剤担持体としての現像ローラ22上に担持されている現像剤を感光体11と現像ローラ22とが対向する現像領域へ搬送し、現像剤中のトナーを感光体11上の静電潜像に付着させてトナー像を形成し、トナー像を最終的に記録材としての転写紙へ転移させることで転写紙上に画像を形成する画像形成装置であり、発光手段としての発光素子311と、発光素子311から照射された光の反射光を受光する2つの受光手段である正反射受光素子312及び拡散反射受光素子313とを有する光学センサ69と、階調パターンを構成する複数のトナーパッチを感光体11上に形成し、感光体11から被転写体としての中間転写体である中間転写ベルト6上へ転写した後の複数のトナーパッチを光学センサ69で検出し、光学センサ69の出力値を用いて画質調整制御としての画像濃度調整制御を実行する画質調整制御手段としての制御部とを備えている。そして、制御部は、各トナーパッチに対応する光学センサ69の出力値が所定の異常条件を満たすか否かを判断し、所定の異常条件を満たすと判断されたセンサ出力値について、そのセンサ出力値に対応するトナーパッチのセンサ出力値が画像濃度調整制御に用いられないよいにする処理や、そのセンサ出力値に対応するトナーパッチのセンサ出力値を補正し、補正後のセンサ出力値が画像濃度調整制御に用いられるようにする処理などの所定の異常対応処理を行ってから、画像濃度調整制御を実行する。このような画像形成装置であれば、埃等の異物やキズあるいはカール癖などの存在により誤検出や検出誤差が生じているセンサ出力値を、そのセンサ出力値が所定の異常条件を満たすか否かによって判定することができる。よって、中間転写ベルト6を駆動させる前処理が不要であり、前処理が必要な構成と比較して画像形成装置のダウンタイムが少なく、消費電力も抑制できる。
【0088】
また、本実施形態1及び2においては、光学センサ69によるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する中間転写ベルト6は、複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材であるので、トナーパッチのセンサ出力値にカール癖の影響が出る可能性がある。本実施形態1及び2によれば、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチであっても、誤検出や検出誤差を生じさせるほどのカール癖が生じない場合、そのトナーパッチに対応するセンサ出力値は画質調整制御に用いられる。よって、ベルト駆動開始前に支持ローラに巻き付いていたベルト部分に形成されたトナーパッチのセンサ出力値を一律に除外する場合よりも、画像濃度調整制御に用いるトナーパッチ数の減少を抑制できる。したがって、画像濃度調整制御に用いるトナーパッチ数の減少によって調整精度が悪化する事態が抑制される。
特に、本実施形態1及び2においては、中間転写ベルト6の回転位置情報を用いずに画像濃度調整制御を実行するので、光学センサ69によるトナーパッチの検出時にトナーパッチを担持する中間転写ベルト6の回転位置を検出する必要がない。そのため、その検出に必要なセンサやマークを設けることによるコスト増大という不具合が生じない。
【0089】
また、本実施形態1及び2においては、光学センサ69の出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する光学センサ69の最大出力値と最小出力値との差分値が予め決められた規定差分値以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めている。カール癖等の影響は、センサ出力値の変動となって現れるので、本実施形態1及び2によれば、カール癖等の影響を受けているトナーパッチのセンサ出力値を適切に特定することができる。
【0090】
また、本実施形態1及び2においては、上述したように、光学センサ69の出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する光学センサ69の出力値の標準偏差が予め決められた規定標準偏差以上であるという条件を所定の異常条件に含めてもよい。この場合も、センサ出力値の変動となって現れるカール癖等の影響を受けているトナーパッチのセンサ出力値を適切に特定することができる。
【0091】
また、本実施形態1及び2においては、画質調整制御として、互いに異なる画像濃度となるように形成した複数のトナーパッチを感光体11上に形成した後にこれらのトナーパッチを光学センサ69で検出し、各トナーパッチに対応する光学センサ69の出力値から得られる各トナーパッチのトナー付着量に基づいて画像濃度を調整する画像濃度調整制御を実行しており、上記規定差分値又は上記規定標準偏差がトナーパッチごとに異なる値に設定されている。これにより、低濃度のトナーパッチから高濃度のトナーパッチにかけて、センサ出力値がカール癖等の影響を受けているか否かを適切に判定することが可能となる。
【0092】
また、本実施形態1及び2におけるレーザプリンタは、作成する階調パターンのトナーパッチ数が10以下であるので、画像濃度調整制御に用いるトナーパッチ数が比較的少ない画像形成装置である。このような画像形成装置においては、1つのトナーパッチのセンサ出力値の誤差が画像濃度調整制御の調整精度に与える影響が大きい。よって、カール等の影響を受けた誤差のあるセンサ出力値を排除したり補正したりしてから画像濃度調整制御を実行することによって、画像濃度調整制御の調整精度の悪化を防止できるという本実施形態1及び2の効果は、このような画像形成装置において特に有益である。
【0093】
また、本実施形態1においては、上記所定の異常対応処理が、所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチについてのセンサ出力値を画像濃度調整制御に用いられないように除外する処理であるので、画像濃度調整制御の調整精度の悪化を安定して防止できる。
また、本実施形態2においては、上記所定の異常対応処理が、所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチについてのセンサ出力値を補正し、補正後のセンサ出力値が画像濃度調整制御に用いられるようにする処理であるので、画像濃度調整制御の調整精度の悪化を安定して防止できるだけでなく、次のような効果も得られる。すなわち、画像濃度調整制御に用いられるトナーパッチ数がもともと少ない場合に更に、そのトナーパッチのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けて除外されると、画像濃度調整制御に用いられるトナーパッチ数の減少による調整精度の悪化が懸念される。また、トナーパッチのセンサ出力値がカール癖等の影響を受けて除外されたときに、画像濃度調整制御に必要なトナーパッチ数を下回ると、画像濃度調整制御が実行できない事態も起こり得る。本実施形態2のように一旦は所定の異常条件を満たすと判断されたトナーパッチでも、そのセンサ出力値を補正して画像濃度調整制御に用いられるようにすることで、画像濃度調整制御に用いられるトナーパッチ数の減少による調整精度の悪化を抑制でき、また、画像濃度調整制御が実行できない事態の発生も抑制できる。
【0094】
なお、以上の説明では、中間転写ベルト6上でトナーパッチを検出する場合について説明したが、各感光体11Y,11M,11C,11K上でトナーパッチを検出する場合でも同様である。
また、以上の説明では、画質調整制御が画像濃度調整制御である場合について説明したが、色ズレ調整制御である場合でも同様である。なお、色ズレ調整制御の場合、中間転写ベルト6上に形成する複数のトナーパッチは、同じ濃度のものでよい。
【符号の説明】
【0095】
6 中間転写ベルト
11 感光体
20 現像装置
22 現像ローラ
68 光書込ユニット
69 光学センサ
100 制御部
311 発光素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【特許文献1】特開2005−338700号公報
【特許文献2】特開2001−318538号公報
【特許文献3】特開2007−310010号公報
【特許文献4】特開2010−217796号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体に対向して配置された現像剤担持体上に担持されている現像剤を該潜像担持体と該現像剤担持体とが対向する現像領域へ搬送し、該現像剤中のトナーを該潜像担持体上の静電潜像に付着させてトナー像を形成し、該トナー像を最終的に記録材へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
少なくとも1つの発光手段と、該発光手段から照射された光の反射光を受光する少なくとも1つの受光手段とを有する光学センサと、
複数のトナーパッチを該潜像担持体上に形成し、該潜像担持体上の該複数のトナーパッチ又は該潜像担持体から被転写体上へ転写した後の該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、該光学センサの出力値を用いて画質調整制御を実行する画質調整制御手段とを備えており、
上記画質調整制御手段は、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値が所定の異常条件を満たすか否かを判断し、該所定の異常条件を満たすと判断された出力値について所定の異常対応処理を行ってから、上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記光学センサによるトナーパッチの検出時に該トナーパッチを担持する上記潜像担持体又は上記被転写体は、複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記無端ベルト状部材の回転位置情報を用いずに上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの最大出力値と最小出力値との差分値が予め決められた規定差分値以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの出力値の標準偏差が予め決められた規定標準偏差以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4又は5の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記画質調整制御として、互いに異なる画像濃度となるように形成した複数のトナーパッチを上記潜像担持体上に形成した後に該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値から得られる各トナーパッチのトナー付着量に基づいて画像濃度を調整する画像濃度調整制御を実行するものであり、
上記規定差分値又は上記規定標準偏差は、トナーパッチごとに異なる値に設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記複数のトナーパッチの数が10以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を上記画質調整制御に用いられないように除外する処理であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を補正し、補正後の出力値が上記画質調整制御に用いられるようにする処理であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
潜像担持体に対向して配置された現像剤担持体上に担持されている現像剤を該潜像担持体と該現像剤担持体とが対向する現像領域へ搬送し、該現像剤中のトナーを該潜像担持体上の静電潜像に付着させてトナー像を形成し、該トナー像を最終的に記録材へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
少なくとも1つの発光手段と、該発光手段から照射された光の反射光を受光する少なくとも1つの受光手段とを有する光学センサと、
複数のトナーパッチを該潜像担持体上に形成し、該潜像担持体上の該複数のトナーパッチ又は該潜像担持体から被転写体上へ転写した後の該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、該光学センサの出力値を用いて画質調整制御を実行する画質調整制御手段とを備えており、
上記画質調整制御手段は、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値が所定の異常条件を満たすか否かを判断し、該所定の異常条件を満たすと判断された出力値について所定の異常対応処理を行ってから、上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記光学センサによるトナーパッチの検出時に該トナーパッチを担持する上記潜像担持体又は上記被転写体は、複数の支持ローラに張架された無端ベルト状部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記無端ベルト状部材の回転位置情報を用いずに上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの最大出力値と最小出力値との差分値が予め決められた規定差分値以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記光学センサの出力値を1つのトナーパッチについて複数取得し、1つのトナーパッチに対応する該光学センサの出力値の標準偏差が予め決められた規定標準偏差以上であるという条件を上記所定の異常条件に含めて、上記画質調整制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4又は5の画像形成装置において、
上記画質調整制御手段は、上記画質調整制御として、互いに異なる画像濃度となるように形成した複数のトナーパッチを上記潜像担持体上に形成した後に該複数のトナーパッチを上記光学センサで検出し、各トナーパッチに対応する光学センサの出力値から得られる各トナーパッチのトナー付着量に基づいて画像濃度を調整する画像濃度調整制御を実行するものであり、
上記規定差分値又は上記規定標準偏差は、トナーパッチごとに異なる値に設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
上記複数のトナーパッチの数が10以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を上記画質調整制御に用いられないように除外する処理であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記所定の異常対応処理は、上記所定の異常条件を満たすと判断された上記光学センサの出力値を補正し、補正後の出力値が上記画質調整制御に用いられるようにする処理であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−226232(P2012−226232A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95716(P2011−95716)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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