説明

画像形成装置

【課題】加熱部の保護判断の精度を低下させるのを抑制しつつ、異常電源入力に対して加熱部を好適に保護すること。
【解決手段】画像形成装置の電圧変化率検出部は、ゼロクロスタイミングでの交流電源の電圧変化率が許容値以上となる電圧変化率異常を検出する(S125)。判定部は、電圧変化率検出部による電圧変化率異常の検出パターンが所定検出条件に合致するかどうかのエラー判定処理を行う(S152,S155)。通電禁止部は、記判定部が、検出パターンが所定検出条件に合致すると判定した場合、交流電源のエラーが検出されたとして、交流電源から加熱部への通電を禁止する(ステップS165)。検出条件変更部は、所定検出条件を、加熱部の加熱温度を第1温度に制御する画像形成時と加熱温度を第1温度より低い第2温度に制御する待機時とにおいて変更する(S145,S150)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、詳しくは、加熱部を備えた画像形成装置において、電源異常時に加熱部を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源異常時に加熱装置(加熱部)を保護する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。そこでは、外来ノイズ等によってゼロクロス信号が乱れて、電源の周波数検出に異常があった場合に、周波数に依存しない加熱装置の制御を行う技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、ゼロクロス信号が乱れ、電源の周波数検出に異常があった場合であっても加熱装置の動作を継続できるものの、電源異常として電源の波形の変動に対処する開示はされていない。正弦波の交流電源ではなく、例えば、無停電電源装置による矩形波の交流電源が加熱装置に入力された場合、電源波形のゼロクロス点での立ち上がり/立ち下がりが急峻、すなわち、電圧変化率(dv/dt)が大きくなる。そのため、例えば、加熱装置のヒータの通電時間制御にトライアックが使用されている場合、ゼロクロス点での電圧変化率(dv/dt)がデバイスの許容特性値を越えると、電源のゼロクロスに応じてトライアックをオフできない虞があった。その場合、加熱装置のヒータが連続通電され、加熱装置に不具合が生じる虞があった。
【0004】
そこで、本願の出願人は、矩形波が入力されることによる加熱装置の不具合を抑制する画像形成装置について既に開発した(特願2009−269047号)。具体的には、電圧変化率が許容値以上であることが一定期間(エラー判定期間)内に所定回数検出された場合にヒータ(加熱部)への通電が禁止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−84546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記一定期間が長くなりすぎると、加熱装置の温度が上がりすぎてしまう虞がある一方、上記一定期間が短くなりすぎると、例えば電源OFF時にゼロクロス信号がOFFになったことを誤検知し、電源異常ではないのに異常判断してしまう虞がある。すなわち、異常電源入力を判定するエラー判定期間の設定如何によっては、異常加熱によって加熱部の不具合を発生させる虞があるとともに、異常電源入力ではないのに加熱部への通電が禁止されてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、異常電源入力に対する加熱部の保護判断の精度を低下させるのを抑制しつつ、異常電源入力に対して加熱部を好適に保護する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示される画像形成装置は、交流電源の通電に応じて加熱される加熱部と、前記加熱部による加熱温度を検出する温度検出部と、前記加熱部によって被記録媒体に定着される画像を当該被記録媒体に形成する画像形成部と、前記交流電源のゼロクロスタイミングに同期したゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成回路と、前記ゼロクロスタイミングでの前記交流電源の電圧変化率が許容値以上となる電圧変化率異常を検出する電圧変化率検出部と、前記交流電源から前記加熱部への通電のオン・オフを切り替える切替部と、前記交流電源の前記加熱部への通電比率を調整する通電比率調整部と、前記電圧変化率検出部による前記電圧変化率異常の検出パターンが所定検出条件に合致するかどうかのエラー判定処理を行う判定部と、前記判定部が、前記検出パターンが前記所定検出条件に合致すると判定した場合、前記交流電源のエラーが検出されたとして、前記交流電源から前記加熱部への通電を禁止する通電禁止部と、前記所定検出条件を、前記加熱温度を第1温度に制御する画像形成時と前記加熱温度を前記第1温度より低い第2温度に制御する待機時とにおいて変更する検出条件変更部とを備える。
【0009】
また、上記構成において、前記所定検出条件は、前記電圧変化率異常が、前記エラー判定処理を行うためのエラー判定期間内に所定回数以上検出されることであり、前記検出条件変更部は、前記エラー判定期間を、前記画像形成時において、前記待機時より短く設定するようにしてもよい。
【0010】
また、上記構成において、前記所定検出条件は、前記電圧変化率異常が、前記エラー判定処理を行うためのエラー判定期間内に所定回数連続して検出されることであり、前記検出条件変更部は、前記エラー判定期間を、前記画像形成時において、前記待機時より短く設定するとともに、前記所定回数を、前記画像形成時において、前記待機時より少なく設定するようにしてもよい。
【0011】
また、上記構成において、前記エラー判定期間は、前記加熱部が前記通電比率調整部によって通電比率100%で加熱された場合に、前記加熱温度が、目標温度に対する前記加熱部の制御中に該加熱温度が到達し得る目標上限温度に到達してから当該目標上限温度より高い加熱上限温度に到達するまでに要する保安時間未満であるようにしてもよい。
【0012】
また、上記構成において、前記通電禁止部は、前記通電比率調整部の制御をオフ後、前記切替部による通電をオフするものであり、前記エラー判定期間に、前記通電比率調整部の制御がオフされてから前記通電禁止部が前記切替部による通電をオフするまでに要する時間を加えた時間は、前記保安時間未満であるようにしてもよい。
【0013】
また、上記構成において、前記判定部は、前記通電禁止部が前記通電比率調整部の制御をオフするとともに前記切替部による通電をオフした後において、前記エラー判定処理を再度実行するようにしてもよい。その際、前記通電比率調整部は、前記エラー判定処理が再度実行される場合の前記加熱温度が前記第1温度または前記第2温度より低い温度となるように、前記通電比率を調整し、前記検出条件変更部は、前記エラー判定処理が再度実行される場合の前記エラー判定期間を前記画像形成時または前記待機時の前記エラー判定期間より長くするようにしてもよい。
【0014】
また、上記構成において、前記通電禁止部は、前記判定部が前記エラー判定処理を再度実行した際に、前記検出パターンが前記所定検出条件に合致しないと判定した場合、前記通電比率調整部を制御して、前記交流電源から前記加熱部への通電を、前記待機時の状態で再開するようにしてもよい。
【0015】
また、上記構成において、前記エラー判定期間は、電源オフ時から電源電圧が所定電圧以下となるまでの時間より大きい時間であるようにしてもよい。
また、上記構成において、前記検出条件変更部は、前記電圧変化率異常が検出された際の前記加熱温度に応じて前記エラー判定期間を変更するようにしてもよい。
【0016】
また、上記構成において、前記所定検出条件は、前記電圧変化率異常が所定回数連続して検出されることであり、前記検出条件変更部は、前記所定回数を、前記画像形成時において、前記待機時より少なく設定するようにしてもよい。
その際、前記検出条件変更部は、前記画像形成時において、前記電圧変化率異常の初回検出時の前記加熱温度に応じて前記所定回数を設定するようにしてもよい。また、前記検出条件変更部は、前記電圧変化率異常の連続検出が中断された場合、前記所定回数および電圧変化率異常の検出回数をリセットするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像形成装置によれば、異常電源入力を検出するための所定検出条件が、加熱部の加熱温度を第1温度に制御する画像形成時と加熱温度を第1温度より低い第2温度に制御する待機時とにおいて変更される。すなわち、通常、待機時は、画像形成時と比べて負荷が少なく、また画像形成時と比べて加熱部の加熱温度は低い。そのため、待機時は、画像形成時と比べて電源オフ時の残留電圧の低下時間が長く、また、画像形成時と比べて加熱部の上限温度に対する余裕が大きい。このような相違を、異常電源入力の所定検出条件に反映させることによって、例えば、異常電源入力の判定期間を、画像形成時において、待機時より短くすることによって、異常電源入力に対する加熱部の保護判断の精度を低下させるのを抑制しつつ、異常電源入力に対して加熱部を好適に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係る画像形成装置の概略構成を示す側断面図
【図2】定着器の加熱に係る構成を概略的に示すブロック図
【図3】定着駆動回路の概略的な構成を示すブロック図
【図4】実施形態1におけるハロゲンヒータの通電制御処理に係るフローチャート
【図5】実施形態1の通電制御処理に係る各信号のタイムチャート
【図6】電源オフ時の各信号のタイムチャート
【図7】実施形態2におけるハロゲンヒータの通電制御処理に係るフローチャート
【図8】実施形態2の通電制御処理に係る各信号のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1について図1から図6を参照して説明する。
【0020】
1.レーザプリンタの構成
図1は、実施形態1のモノクロレーザプリンタ1(「画像形成装置」の一例)の縦断面を概略的に表した図である。なお、画像形成装置はモノクロレーザプリンタに限られず、例えば、カラーレーザプリンタ、カラーLEDプリンタ、複合機等であってもよい。
【0021】
モノクロレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)1では、本体ケーシング2内の下部に配置されたトレイ3またはトレイ4から供給される用紙5に対し、画像形成部6にてトナー像を形成した後、定着器(「加熱部」の一例)7にてそのトナー像を加熱して定着処理を行い、最後にその用紙5を本体ケーシング2内の上部に位置する排紙トレイ8に排紙する。
【0022】
画像形成部6は、スキャナ部10、現像カートリッジ13、感光ドラム17、帯電器18、転写ローラ19等を含む。
【0023】
スキャナ部10は、本体ケーシング2内の上部に配置されており、レーザ発光部(図示せず)、ポリゴンミラー11、複数の反射鏡12及び複数のレンズ(図示せず)等を含む。スキャナ部10では、レーザ発光部から発射されたレーザ光を、ポリゴンミラー11、反射鏡12、レンズを介して一点鎖線で示すように感光ドラム17の表面上に高速走査にて照射させる。
【0024】
現像カートリッジ13は、着脱可能に装着されており、その内部には、トナーが収容されている。また、現像カートリッジ13のトナー供給口には、現像ローラ14、供給ローラ15が互いに対向した状態で設けられ、さらに現像ローラ14は感光ドラム17に対向した状態で配置されている。現像カートリッジ13内のトナーは、供給ローラ15の回転により現像ローラ14に供給され、現像ローラ14に担持される。
【0025】
感光ドラム17の上方には、帯電器18が間隔を隔てて配置されている。また、感光ドラム17の下方には、転写ローラ19が感光ドラム17に対向して配置されている。
【0026】
感光ドラム17の表面は回転されつつ、まず帯電器18によって一様に、例えば、正極性に帯電される。次いで、スキャナ部10からのレーザ光により感光ドラム17上に静電潜像が形成され、その後、感光ドラム17が現像ローラ14と接触して回転するときに、現像ローラ14上に担持されているトナーが感光ドラム17の表面上の静電潜像に供給されて担持されることによってトナー像が形成される。その後、トナー像は、用紙5が感光ドラム17と転写ローラ19との間を通る間に、転写ローラ19に印加される転写バイアスによって、用紙5に転写される。
【0027】
定着器7は、画像形成部6に対して用紙搬送方向の下流側に配置され、定着ローラ22、定着ローラ22を押圧する加圧ローラ23、および定着ローラ22を加熱するハロゲンヒータ33(「加熱部」の一例)等を含む。ハロゲンヒータ33は回路基板25に接続され、回路基板25からの信号によって通電制御される。また、ハロゲンヒータ33の近傍には、ハロゲンヒータ33による加熱温度を検出する、例えばサーミスタ等で構成される温度センサ38が設けられている。
【0028】
2.ヒータ加熱に係る電気的構成
次に、図2および図3を参照して、定着器7のハロゲンヒータ33の加熱に係る電気的構成(以下、加熱装置という)を説明する。図2は加熱装置の概略的なブロック図である。図3は加熱装置の定着駆動回路の概略的な構成を示すブロック図である。
【0029】
加熱装置30は、低圧電源回路(AC−DCコンバータ)31、定着リレー(「切替部」の一例)32、ハロゲンヒータ33、ASIC(特定用途向け集積回路)34、ゼロクロス検出回路(「ゼロクロス信号生成回路」の一例)40、および定着駆動回路(「通電比率調整部」の一例)50等を含む。
【0030】
図2に示されるように、交流電源ACは、定着リレー32の手前から低圧電源回路31に供給され、定着リレー32とハロゲンヒータ33との間からゼロクロス検出回路40に供給される。すなわち、定着リレー32がオンしないと、ゼロクロス検出回路40に交流電源ACは供給されない。なお、これに限られず、定着リレー32の手前からゼロクロス検出回路40に交流電源ACが供給されるようにしてもよい。
【0031】
低圧電源回路31は、周知のAC−DCコンバータであり、例えば、100Vの交流電圧を24Vおよび3.3Vの直流電圧に変換し、直流電圧を各部に供給する。なお、低圧電源回路31は、プリンタ電源のオフ時、直流電圧が低下して所定電圧以下になると、ASIC34の動作を無効にするリセット信号Srsを生成する(図6参照)。なお、リセット信号Srsは、低圧電源回路31によって生成されることに限られず、別途、リセット信号Srsを生成する回路を設けるようにしてもよい。
【0032】
ゼロクロス検出回路40は、全波整流ブリッジ回路および比較器等を含む周知のゼロクロス検出回路であり、交流電源ACのゼロクロスタイミングに同期したゼロクロス信号Szcを生成する(図5参照)。
【0033】
定着駆動回路50は、交流電源ACのハロゲンヒータ33への通電比率(導通角)を調整する。定着駆動回路50は、例えば、図3に示されるように、トライアック52、フォトトライアックカプラ53および駆動トランジスタ54等を含む。フォトトライアックカプラ53は、例えばゼロクロス信号Szcの立ち下がりを基準として生成されるトリガ信号Stgに応じて、駆動トランジスタ54によってオンされる。フォトトライアックカプラ53のオンに応じてトライアック52がオンされ、交流電源ACが所定の通電時間、ハロゲンヒータ33に通電される。所定の通電時間は、例えば、トリガ信号Stgの立ち上がりタイミングから、交流電源ACのゼロクロスタイミングまでである。すなわち、交流電源ACの周期に対する、ゼロクロス信号Szcの立ち下がりタイミングからトリガ信号Stgの立ち上がりタイミングまでの時間(通電比率)を調整して、ハロゲンヒータ33による定着器7の温度制御が行われる。
【0034】
定着リレー32は、交流電源ACとハロゲンヒータ33との間に設けられ、交流電源ACとハロゲンヒータ33との接続をオン・オフする。なお、切替部はリレーには限られず、例えば、半導体素子によって構成されてもよい。
【0035】
ASIC(「判定部」、「電圧変化率検出部」、「通電禁止部」および「検出条件変更部」の一例)34は、タイマ35、カウンタ36、メモリ37等を含み、ハロゲンヒータ33の通電制御を行う。タイマ35は、定着器7の通電制御および画像形成に係る時間を計測する。カウンタ36は、定着器7の通電制御に係る回数、例えば、後述する電圧変化率異常の検出回数のカウントに利用される。また、カウンタ36は、後述する電源エラーの発生回数をカウントする電源エラーカウンタを含む。メモリ37は、ROMおよびRAMを含む。
【0036】
ASIC(電圧変化率検出部)34は、ゼロクロスタイミングでの時間に対する交流電源ACの電圧変化率(以下「dv/dt」と記す)が許容値以上か否かを検出する。ASIC34は、dv/dtが許容値以上の場合、電圧変化率異常を検出する。なお、実施形態1では、dv/dtが許容値以上か否かの検出、すなわち、電圧変化率異常の検出は、dv/dtを直接検出するのではなく、ゼロクロス信号Szcのパルス幅(以下「ゼロクロス幅」という)が規定値以下か否かに基づいて行われる。ゼロクロス幅の規定値は、例えば、0.1ミリ秒(ms)とされる。すなわち、実施形態1においては、ゼロクロス幅が0.1ms以下の場合、交流電源ACの波形異常が疑われる、電圧変化率異常が検出される。
【0037】
なお、これに限られず、ゼロクロスタイミングにおける交流電源ACのdv/dtが許容値以上か否かの検出を、例えば、ゼロクロスタイミング近傍の交流電源ACの波形をサンプリングして取得し、交流電源ACの波形から直接行うようにしてもよい。
【0038】
また、ASIC(判定部)34は、dv/dtが許容値以上であることすなわち、ゼロクロス幅が規定値(0.1ms)以下であることが、所定検出条件に合致して検出されたかどうかの判定処理を行う。すなわち、ASIC(判定部、通電禁止部)34は、電圧変化率異常の検出パターンが所定検出条件に合致するかどうかのエラー判定処理を行う。そして、エラー判定処理において、dv/dtが許容値以上であること(「電圧変化率異常の検出パターン」の一例)が所定検出条件に合致して検出されたと判定した場合、ASIC(通電禁止部)34は、交流電源ACの波形異常である電源エラーを検出したとして、定着リレー32を制御して、交流電源ACからハロゲンヒータ33への通電を禁止する。
【0039】
なお、ここでは、ASIC34は、所定時間内にゼロクロス信号Szcが検出されないことによっても電源エラーを検出する。ゼロクロス信号Szcが検出されない場合、ASIC34は、「極めて急峻な(電圧変化率が極めて高い)波形が入力された」と認識して、電源エラーと判定する。
【0040】
また、ASIC(検出条件変更部)34は、所定検出条件を、加熱温度Tkを第1温度Tk1に制御するプリント時(画像形成時の一例)と、加熱温度Tkを第1温度より低い第2温度Tk2に制御するスタンバイ時(待機時に相当)とにおいて変更する。実施形態1において、所定検出条件は、例えば、dv/dtが許容値以上であることが、交流電源ACの電源エラーを判定するためのエラー判定期間Kd内に規定回数(所定回数に相当)Nd連続して検出されることである。その際、ASIC34は、エラー判定期間Kdを、加熱温度Tkを第1温度Tk1に制御するプリント時において、加熱温度Tkを第1温度Tk1より低い第2温度Tk2に制御するスタンバイ時より短く設定する。
なお、所定検出条件は、上記条件に限られず、dv/dtが許容値以上であることが、エラー判定期間Kd内に規定回数(所定回数に相当)以上検出されることであってもよい。この場合、dv/dtが許容値以上であることが連続して検出されなくてもよい。
【0041】
また、ASIC34は、画像形成部6に接続され、ハロゲンヒータ33の通電制御の他に、画像形成に係る様々な処理も行う。
【0042】
3.ハロゲンヒータの通電制御
次に、図4〜図6を参照して、実施形態1におけるハロゲンヒータ33の通電制御を説明する。図4はハロゲンヒータ33の通電制御に係る各処理の手順を概略的に示すフローチャートであり、図5は、ハロゲンヒータの通電制御に係る信号の概略的なタイムチャートである。なお、図5においては、プリント時のタイムチャートが示される。図6は、プリンタ電源OFF時の各信号波形を示すタイムチャートである。なお、図6において、「ヒータ加熱」ONは、ハロゲンヒータ33への通電制御がオンされている期間、すなわちトリガ信号Stgが生成されている期間に相当し、「ヒータ加熱」OFFは、ハロゲンヒータ33への通電制御がオフされている期間、すなわちトリガ信号Stgが生成されていない期間に相当する。また、ハロゲンヒータ33の通電制御処理は、例えば、プリンタ1の電源ACがオンされると、所定周期で、所定のプログラムにしたがってASIC34によって行われる。
【0043】
電源ACがオンされ、プログラムがスタートすると、ASIC34は、ハロゲンヒータ33による加熱温度Tkを上昇させるために、定着リレー32をオンするとともに定着駆動回路50を制御して、所定の通電比率でハロゲンヒータ33に通電する(ステップS110)。
【0044】
次いで、ゼロクロス検出回路40からのゼロクロス信号Szcを読み込み(ステップS120)、ゼロクロス信号Szcのパルス幅、すなわち、ゼロクロス幅を、カウンタ36を用いてカウントし、ゼロクロス幅が規定値(0.1ms)以下であるかどうかを判定する(ステップS125)。
【0045】
ゼロクロス幅が規定値以下と判定した場合(ステップS125:YES)、ゼロクロス信号検出回数Nzcを更新する、すなわち、電圧変化率異常の検出回数Nzcをカウントアップする(ステップS130)。次いで、ASIC34は、エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndは設定済みかどうか判定する(ステップS135)。エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndが設定済みである場合(ステップS135:YES)、ステップS152に移行する。一方、エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndが設定済みでない場合(ステップS135:NO)、現在のプリンタ1の状態がプリント時かどうかを判定する(ステップS140)。
【0046】
現在、プリンタ1がプリント時であると判定した場合(ステップS140:YES)、エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndをプリント時のエラー判定期間Kdpおよび規定回数Ndpに設定する(ステップS145)。
【0047】
ここで、エラー判定期間Kdpは、図5に示されるように、電圧変化率異常が最初に検出される図5の時刻t1から図5の時刻t3までの期間に相当し、保安時間K1未満とされる。なお、エラー判定期間Kdpはこれに限られない。例えば、上記したように、所定検出条件が、エラー判定期間Kd内に規定回数以上検出されることとされる場合、エラー判定期間Kdpは、図5の時刻t1から図5の時刻t4までの期間とされてもよい。
【0048】
また、保安時間K1は、ハロゲンヒータ33が定着駆動回路50によって通電比率100%で加熱された場合に、加熱温度Tkが、目標温度に対するハロゲンヒータ33の制御中に該加熱温度Tkが到達し得る目標上限温度Toupに到達して(図5の時刻t2に相当)から、当該目標上限温度Toupより高い加熱上限温度Tkupに到達する(図5の時刻t5に相当)までに要する期間とされる(図5の点線の温度曲線を参照)。すなわち、Kdp<K1の関係がある。なお、ここで、加熱上限温度Tkupは、ハロゲンヒータ33の通電制御において超えてはならない最大の加熱温度Tkであり、例えば、ハロゲンヒータ33の加熱によって定着ローラ22に何らかの損傷が発生する虞のある温度とされる。
【0049】
このようにエラー判定期間Kdpが保安時間K1未満とされることによって、電圧変化率が許容値以上であることが所定回数検出された以後においてハロゲンヒータ33への通電禁止処理を行った場合であっても、加熱温度Tkが加熱上限温度Tkupに到達するのを好適に抑制できる。すなわち、たとえ、矩形波の交流電源ACが入力される電源エラーが発生して、定着駆動回路50のトライアック52による通電比率の制御に不都合が生じ、通電比率100%で加熱される状態が継続される場合であっても、加熱温度Tkが加熱上限温度Tkupに到達する前に電源エラーを検出してハロゲンヒータ33への通電禁止処理を行うので、加熱温度Tkが加熱上限温度Tkupに到達するのを好適に抑制できる。
【0050】
また、エラー判定期間Kdpは、図6に示されるように、電源オフ時(図6の時刻toffに相当)から電源電圧3.3Vが所定電圧以下となる(図6の時刻trsに相当)までの電圧保持期間K2より長い期間とされる。なお、図6において、時刻toffにおいてプリンタ1の電源がオフされ、ゼロクロス信号Szcが検出されなくなる。また、時刻trsにおいて電源電圧3.3Vが所定電圧以下となり、リセット信号Srsが0Vとなって、ASIC34の動作が停止される。ここで、低圧電源回路31は、所定電圧の検出によって、0Vのリセット信号Srsを生成する。
【0051】
このようにエラー判定期間Kdpを電圧保持期間K2より大きくすることによって、ゼロクロス信号Szcがエラー判定期間Kdp検出されないことによっても電源エラーを検出する場合において、電源オフ時における、充電素子等に起因する電源電圧の残留電圧による電源エラーの誤検出を防止できる。具体的には、所定電圧は例えば2.8Vとされる。また、電圧保持期間K2は、プリント時(K2p)は、例えば負荷容量によって0.5秒とされ、スタンバイ時(K2s)は、例えば起動負荷によって2秒とされる(図7のステップS220、225参照)。
【0052】
すなわち、実施形態1において、エラー判定期間Kdpは、
K2<Kdp<K1
の値に設定される。具体的に、エラー判定期間Kdpは、図5の時刻t1から時刻t4の期間に相当し、例えば1秒、規定回数Ndpは、エラー判定期間Kdpに検出される回数として、例えば、120回(電源周波数が60Hzの場合)に設定される。なお、所定検出条件が、エラー判定期間Kd内に規定回数以上検出されることとされる場合には、規定回数Ndpは、エラー判定期間Kdp内に検出される回数として、例えば、100回に設定される。
【0053】
一方、ステップS140において、現在、プリンタ1がプリント時でないと判定した場合、すなわち、現在、プリンタ1がスタンバイ時(待機時)であると判定した場合(ステップS140:NO)、エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndをスタンバイ時のエラー判定期間Kdsおよび規定回数Ndsに設定する(ステップS150)。ここでは、エラー判定期間Kdsは、例えば2.5秒、規定回数Ndsは、例えば、300回(電源周波数が60Hzの場合)に設定される。なお、所定検出条件が、エラー判定期間Kd内に規定回数以上検出されることとされる場合には、規定回数Ndsは、エラー判定期間Kdp内に検出される回数として、例えば、250回に設定される。
【0054】
このように、スタンバイ時のエラー判定期間Kdsはプリント時のエラー判定期間Kdpより長く、またスタンバイ時の規定回数Ndsはプリント時の規定回数Ndpより多い。すなわち、通常、加熱温度Tkがスタンバイ時より高温であるプリント時において、エラー判定期間Kdが、スタンバイ時より短くされる。このように、プリント時におけるエラー判定期間Kdをスタンバイ時より短くすることにより、仮にエラー判定期間Kd中に、矩形波入力によってトライアック52の制御が効かなくなった場合であっても、ハロゲンヒータ33への供給電力量を低減できる。そのため、好適に、ハロゲンヒータ33の保安を図ることができる。また、スタンバイ時のエラー判定期間Kdsをプリント時のエラー判定期間Kdpより長くすることにより、矩形波入力に対するハロゲンヒータ33の保護判断の精度を低下させるのを抑制することができる。すなわち、矩形波入力に対するハロゲンヒータ33の保護判断の精度を低下させることを抑制しつつ、好適に、ハロゲンヒータ33の保安を図ることができる。
【0055】
次いで、ステップS152において、ASIC34は、時刻t1からエラー判定期間Kd(KdpまたはKds)が経過したがどうか判定する。エラー判定期間Kdが経過したと判定した場合(ステップS152:YES)、ASIC34は、ゼロクロス幅が規定値以下であるゼロクロス信号Szcの検出回数Nzc、すなわち、電圧変化率異常の検出回数Nzcが規定回数Nd(NdpまたはNds)に達したかどうか判定する(ステップS155)。
【0056】
電圧変化率異常の検出回数Nzcが、規定回数Ndpあるいは規定回数Ndsに達していない場合(ステップS155:NO)、電源エラーの検出を新たに開始するために、エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndpをリセットして(ステップS157)、ステップS120に戻る。すなわち、エラー判定期間Kdが終了したにもかかわらず検出回数Nzcが、規定回数Ndpあるいは規定回数Ndsに達していないのは、電圧変化率異常が連続して発生していなかったとして、今回の検出データをリセットする。
【0057】
一方、電圧変化率異常の検出回数Nzcが、規定回数Ndpあるいは規定回数Ndsに達した場合(ステップS155:YES)、電源エラーが発生したとして、ASIC34は、定着駆動回路50によるハロゲンヒータ33への通電制御を停止させる(ステップS160)。具体的には、ASIC34は、トライアック52の導通角制御を停止させる。また、定着駆動回路50によるハロゲンヒータ33への通電制御を停止するのに並行して、定着リレー32をオフしてハロゲンヒータ33へ通電をオフする(図5の時刻t3に相当する:ステップS165)。次いで、新たに電源エラーを検出するために、エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndpをリセットする(ステップS167)。
【0058】
なお、電圧変化率異常の検出回数Nzcが、規定回数Ndpあるいは規定回数Ndsに達した場合に、ハロゲンヒータ33への通電制御の停止と定着リレー32のオフとを並行して行うことには限られない。図5の点線で示すように、加熱温度Tkが目標上限温度Toupに達した場合にハロゲンヒータ33への通電制御を停止し(図5の時刻t2参照)、電圧変化率異常の検出回数Nzcが、規定回数Ndpあるいは規定回数Ndsに達した場合に定着リレー32のオフするようにしてもよい。
【0059】
次いで、ASIC34は、ハロゲンヒータ33への通電制御を停止させ、定着リレー32をオフさせたことによって、プリンタ動作エラーを伴うエラー(プリントエラー)、例えば、用紙のジャムが発生しているかどうかを判定する(ステップS170)。この判定は、通常、画像形成処理中のエラーの発生に伴って生成されるエラー検出情報に基づいて、判定される。
【0060】
プリンタ動作エラーを伴うエラーが発生していないと判定された場合(ステップS170:NO)、電源エラーの再判定を行うために、定着リレー32をオンさせるとともに、ハロゲンヒータ33への通電制御を再開し(ステップS175:図5の時刻t6に相当)、ハロゲンヒータ33を加熱して、加熱温度Tkを検出する(ステップS180)。
【0061】
なお、ASIC34は、エラー判定処理を再度実行する際に、すなわち、電源エラーの再判定を行う場合に、加熱温度Tkが第1温度Tk1または第2温度Tk2より低い温度となるように、通電比率を調整し、また、エラー判定期間Kdp,Kdsを、最初に設定されたエラー判定期間Kdp,Kdsよりそれぞれ長くすることが好ましい。この場合、エラー判定条件(所定検出条件)が緩和されることとなるため、エラー再判定処理の信頼性を向上できる。
【0062】
次いで、ASIC34は、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲内であるかどうかを判定する(ステップS185)。ここでは、規定の温度上昇範囲は、例えば、図5に示すプリント時の目標下限値から目標上限温度Toupまでとされる。加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲内であると判定した場合(ステップS185:YES)は、電源エラーは解消された、あるいは電源エラーはノイズ等による誤判定であったとして、ステップS115の処理に戻る。一方、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲内でないと判定した場合(ステップS185:NO)は、電源エラーは解消されておらず、電源エラーが確かに発生したとして、電源エラーカウンタのカウント値をカウントアップして一旦処理を終了する(ステップS190)。
【0063】
なお、ステップS170〜ステップS185のエラー再判定に係る処理は省略されてもよい。すなわち、電源エラーが発生したとして、ステップS165において定着リレー32をオフした後、ステップS190の処理に移行してもよい。
【0064】
また、ASIC34は、電源エラー判定処理を再度実行した際に、電圧変化率異常が所定検出条件に合致して検出されたと判定しない場合(ステップS155:NO)、ステップS157を介してステップS120から処理を再開する際、定着駆動回路50を制御して、交流電源ACからハロゲンヒータ33への通電を、スタンバイ時の温度制御のもとで、すなわち、スタンバイ時のトライアック52の導通角制御のもとに再開するようにしてもよい。この場合、再判定によって通電を再開する場合において、スタンバイ時の状態で行われるので、再開時の保安を図ることができる。
【0065】
また、交流電源ACの周波数が一定であって、規定回数Ndが電圧変化率異常の連続発生回数である場合、エラー判定期間Kdと規定回数Ndとは比例関係にある。そのため、ステップS145およびステップS150において、規定回数Ndp、Ndsのみが設定され、ステップS152およびステップS157の処理を省略するようにしてもよい。
【0066】
4.実施形態1の効果
ハロゲンヒータ33の加熱温度Tkを第1温度Tk1に制御するプリント時と、加熱温度Tkを第1温度Tk1より低い第2温度Tk2に制御するスタンバイ時とでは、所定期間における加熱総熱量は、プリント時の方が大きい。そのため、実施形態1では、電源波形の異常(矩形波入力)をゼロクロス検出信号Szcのパルス幅によって検出する際の検出条件である、エラー判定期間Kdおよびゼロクロス幅が規定値以下であるゼロクロス信号Szcの検出回数である規定回数Ndが、プリント時とスタンバイ時とにおいて変更される。それによって、定着駆動回路50のトライアック52が矩形波入力によって制御不能に陥った場合であっても、エラー判定期間Kdおよび規定回数Ndをプリンタ1の使用状態に応じて適宜変更することにより、ハロゲンヒータ33が好適に保護される。
【0067】
具体的には、プリント時におけるエラー判定期間Kdpをスタンバイ時(Kds)より短くすることにより、仮にエラー判定期間Kdp中に、矩形波入力によってトライアック52の制御が効かなくなった場合であっても、ハロゲンヒータ33への供給電力量を低減できる。そのため、好適に、ハロゲンヒータ33の保安を図ることができる。また、スタンバイ時のエラー判定期間Kdsをプリント時のエラー判定期間Kdpより長くすることにより、矩形波入力に対するハロゲンヒータ33の保護判断の精度を低下させるのを抑制することができる。すなわち、矩形波入力に対するハロゲンヒータ33の保護判断の精度を低下させることを抑制しつつ、好適に、ハロゲンヒータ33の保安を図ることができる。
【0068】
また、エラー判定期間Kdは、電源オフ時から電源電圧が所定電圧以下となるまでの時間K2より長い期間とされる。そのため、電源オフ時における、充電素子等に起因する電源電圧の残留電圧による電源エラーの誤検出を防止できる。
【0069】
また、エラー再判定が行われるため、交流電源ACにノイズが乗ったことによる電源エラーの誤判定を抑制できる。
【0070】
<実施形態2>
次に、図7および図8を参照して、本発明における実施形態2を説明する。図7は実施形態2におけるハロゲンヒータの通電制御に係る各処理の手順を概略的に示すフローチャートである。図8は、実施形態2におけるハロゲンヒータの通電制御に係る信号の概略的なタイムチャートである。なお、図7において実施形態1の図5に示す処理と同一に処理には同一のステップ番号で示し、説明を省略する。また、図8においては、プリント時のタイムチャートが示される。
【0071】
以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。実施形態2においては、規定回数Ndが電源エラー検出時の加熱温度Tkに基づいて算出される点が、実施形態1と異なる。また、規定回数Ndは電圧変化率異常が所定回数連続して検出される連続回数であり、エラー判定条件としてエラー判定期間Kdが用いられない。
【0072】
すなわち、図7のステップS135Aにおいて、規定回数Nd(NdpまたはNds)が設定されているかどうかが判定される。規定回数Ndが設定されていない場合(ステップS135A:NO)、ASIC34は、ゼロクロス幅が規定値以下であるゼロクロス信号Szcが最初に検出された時(図8の時刻t1に相当)の、現状の加熱温度Tkを読込み、加熱温度Tkに基づいて、規定回数NdpあるいはNdsを算出する(ステップS215)。
規定回数Ndpの算出は、例えば(Tkup−Tk)/0.5>Ndpのように行われる。また、規定回数Ndsの算出は、例えば(Tkup−Tk)/0.3>Ndsのように行われる。
【0073】
次いで、現在のプリンタ1の状態がプリント時であると判定された場合(ステップS140:YES)、プリント時の電圧保持期間K2pを例えば負荷容量によって規定する(ステップS220)。一方、現在のプリンタ1の状態がスタンバイ時であると判定された場合(ステップS140:No)、スタンバイ時の電圧保持期間K2sを例えば起動負荷によって規定する(ステップS225)。
【0074】
次いで、ASIC34は、算出された規定回数Ndp,Ndsおよび規定されたK2p,K2sに基づいて、K2<Kdの関係を満たすように、各規定回数Ndp,Ndsを設定する(ステップS230)。次いで、ゼロクロス幅が規定値以下であるゼロクロス信号Szcの連続検出回数Nzc、すなわち、電圧変化率異常の連続検出回数Nzcが規定回数Ndに達したと判定された場合(ステップS155:YES、図8の時刻t3に相当)、ハロゲンヒータ33への通電制御を停止する(ステップS160:図8の時刻t3に相当)。
【0075】
次いで、ASIC34は、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲内であるかどうかを判定する(ステップS235)。ここで、規定の温度上昇範囲は、例えば、図8に示すプリント時の目標下限値から上限閾値Tthまでとされる。上限閾値Tth、例えば、加熱上限温度Tkupより所定温度、低い温度とされる(図8参照)。加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲内であると判定した場合、すなわち、上限閾値Tth以下であると判定した場合(ステップS235:YES)、ステップS120の処理に戻る。すなわち、電圧変化率異常の連続検出回数が、規定回数Nd(NdpまたはNds)に達したものの、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲内であるため、定着リレー32をオフさせることなく、ハロゲンヒータの通電制御に係る処理が継続される。
【0076】
そして、例えば、図8の時刻t7において電源エラーが解消され、正常なゼロクロス幅を有するゼロクロス信号Szcが検出されるとする。すると、正常なゼロクロス信号Szcの検出に応じてハロゲンヒータ33への通電制御が再開される(図8の時刻t8に相当)。この場合、定着リレー32がオフされることなく、ハロゲンヒータ33への通電が継続される。
【0077】
一方、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲内でないと判定した場合、すなわち、加熱温度Tkが上限閾値Tthまで上昇した場合(ステップS235:NO、図8の点線の温度曲線参照)、定着リレー32をオフさせる(ステップS240:図8の時刻t5に相当;破線参照)。これによって、時刻t5以後、破線で示されるように、加熱温度Tkは下降する。そして、電源エラーが発生したとして、電源エラーカウンタのカウント値をカウントアップして一旦処理を終了する(ステップS190)。
【0078】
なお、ASIC34は、電圧変化率異常の連続検出が中断された場合(ステップS125:NO)、所定連続回数Ndおよび電圧変化率異常の検出回数Nzcをリセットする(ステップS205)。これによって、電圧変化率異常の連続検出中に発生したノイズ等による影響を除去して、電圧変化率異常の連続検出を正確に行うことができる。
【0079】
なお、実施形態2のようにハロゲンヒータ33への通電制御がオフされた後において定着リレー32の通電がオフされる場合にあっては、図8に示されるように、エラー判定期間Kdpに、ハロゲンヒータ33への通電制御を停止された時刻t3から定着リレー32の通電をオフする時刻t5までの時間(Koff)を加えた時間(Kdp+Koff)を、保安時間K1(時刻t2〜t6)未満とすることが好ましい。すなわち、Kdp+Koff<K1とすることが好ましい。この場合、ハロゲンヒータ33への通電制御がオフされたにもかかわらず、すなわち、トライアック52によるハロゲンヒータ33への通電をオフさせる制御がなされたにもかかわらず、電源エラーによってトライアック52をオフさせることができなかった場合であっても、定着器7を好適に保護できる。なお、上記したように、所定検出条件が、エラー判定期間Kd内に規定回数以上検出されることとされる場合、エラー判定期間Kdpは、図8の時刻t1から時刻t4までの期間とされてもよい。
【0080】
また、上記したように、規定回数Ndが連続回数である場合、規定回数Ndとエラー判定期間Kdとは比例関係にあるため、実施形態2において、規定回数Ndに代えてエラー判定期間Kdとしてもよい。
【0081】
4.実施形態2の効果
プリント時において、電圧変化率異常が最初に検出された時の加熱温度Tkに応じて規定回数Ndp(連続所定回数)が設定される。そのため、加熱温度Tkが高いほど規定回数Ndpを減らすようにすること、すなわち、エラー判定期間を短くすることによって、加熱温度Tkの許容範囲において電源エラー検出が好適に行える。
【0082】
電圧変化率異常の検出回数が規定回数Ndpに達して、ハロゲンヒータ33への通電制御を停止した場合であっても、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲にある場合には、定着リレー32がオフされず、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲を超えるまでは電圧変化率異常の検出が継続される。そのため、ハロゲンヒータ33への通電制御を停止した場合であっても、加熱温度Tkが規定の温度上昇範囲を超えない場合には定着リレー32はオフされず、定着リレー32をオフさせる回数を低減することができる。その結果、定着リレー32の劣化を抑制しつつ、加熱温度Tkが加熱上限温度Tkupに到達するのを確実に抑制できる。
【0083】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
(1)実施形態1においても、ASIC34(検出条件変更部)は、電圧変化率異常が検出された際の加熱温度Tkに応じてエラー判定期間Kdを算出し、エラー判定期間Kdを設定変更するようにしてもよい。この場合、電圧変化率異常が検出された際の加熱温度Tkに応じて、エラー判定期間Kdがリアルタイムで設定変更されるため、その時々の加熱温度Tkに対応して的確に電源エラー判定処理が行えるとともに、電源エラーが発生した場合に的確にハロゲンヒータ33を保護することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…モノクロレーザプリンタ、3…用紙、6…画像形成部、7…定着器、32…定着リレー、33…ハロゲンヒータ、34…ASIC、38…温度センサ、40…ゼロクロス検出回路、50…定着駆動回路、52…トライアック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の通電に応じて加熱される加熱部と、
前記加熱部による加熱温度を検出する温度検出部と、
前記加熱部によって被記録媒体に定着される画像を当該被記録媒体に形成する画像形成部と、
前記交流電源のゼロクロスタイミングに同期したゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成回路と、
前記ゼロクロスタイミングでの前記交流電源の電圧変化率が許容値以上となる電圧変化率異常を検出する電圧変化率検出部と、
前記交流電源から前記加熱部への通電のオン・オフを切り替える切替部と、
前記交流電源の前記加熱部への通電比率を調整する通電比率調整部と、
前記電圧変化率検出部による前記電圧変化率異常の検出パターンが所定検出条件に合致するかどうかのエラー判定処理を行う判定部と、
前記判定部が、前記検出パターンが前記所定検出条件に合致すると判定した場合、前記交流電源のエラーが検出されたとして、前記交流電源から前記加熱部への通電を禁止する通電禁止部と、
前記所定検出条件を、前記加熱温度を第1温度に制御する画像形成時と前記加熱温度を前記第1温度より低い第2温度に制御する待機時とにおいて変更する検出条件変更部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記所定検出条件は、前記電圧変化率異常が、前記エラー判定処理を行うためのエラー判定期間内に所定回数以上検出されることであり、
前記検出条件変更部は、前記エラー判定期間を、前記画像形成時において、前記待機時より短く設定する、画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記所定検出条件は、前記電圧変化率異常が、前記エラー判定処理を行うためのエラー判定期間内に所定回数連続して検出されることであり、
前記検出条件変更部は、
前記エラー判定期間を、前記画像形成時において、前記待機時より短く設定するとともに、前記所定回数を、前記画像形成時において、前記待機時より少なく設定する、画像形成装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像形成装置において、
前記エラー判定期間は、前記加熱部が前記通電比率調整部によって通電比率100%で加熱された場合に、前記加熱温度が、目標温度に対する前記加熱部の制御中に該加熱温度が到達し得る目標上限温度に到達してから当該目標上限温度より高い加熱上限温度に到達するまでに要する保安時間未満である、画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記通電禁止部は、前記通電比率調整部の制御をオフ後、前記切替部による通電をオフするものであり、
前記エラー判定期間に、前記通電比率調整部の制御がオフされてから前記通電禁止部が前記切替部による通電をオフするまでに要する時間を加えた時間は、前記保安時間未満である、画像形成装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記判定部は、前記通電禁止部が前記通電比率調整部の制御をオフするとともに前記切替部による通電をオフした後において、前記エラー判定処理を再度実行する、画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記通電比率調整部は、前記エラー判定処理が再度実行される場合の前記加熱温度が前記第1温度または前記第2温度より低い温度となるように、前記通電比率を調整し、
前記検出条件変更部は、前記エラー判定処理が再度実行される場合の前記エラー判定期間を前記画像形成時または前記待機時の前記エラー判定期間より長くする、画像形成装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の画像形成装置において、
前記通電禁止部は、前記判定部が前記エラー判定処理を再度実行した際に、前記検出パターンが前記所定検出条件に合致しないと判定した場合、前記通電比率調整部を制御して、前記交流電源から前記加熱部への通電を、前記待機時の状態で再開する、画像形成装置。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記エラー判定期間は、電源オフ時から電源電圧が所定電圧以下となるまでの時間より大きい時間である、画像形成装置。
【請求項10】
請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記検出条件変更部は、前記電圧変化率異常が検出された際の前記加熱温度に応じて前記エラー判定期間を変更する、画像形成装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記所定検出条件は、前記電圧変化率異常が所定回数連続して検出されることであり、
前記検出条件変更部は、前記所定回数を、前記画像形成時において、前記待機時より少なく設定する、画像形成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成装置において、
前記検出条件変更部は、前記画像形成時において、前記電圧変化率異常の初回検出時の前記加熱温度に応じて前記所定回数を設定する、画像形成装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の画像形成装置において、
前記検出条件変更部は、前記電圧変化率異常の連続検出が中断された場合、前記所定回数および電圧変化率異常の検出回数をリセットする、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−233981(P2012−233981A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101303(P2011−101303)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】