説明

画像形成装置

【課題】 クリーニングに厳しい条件下であっても、クリーニング不良が無い良好な画質を得ることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 トナー像を担持する感光体ドラム1と、感光体ドラム1上のトナー像を転写する1次転写ローラ10と、板状に形成されたゴム部27aを有し、ゴム部27aの先端が中間転写ベルト13に当接するように配置され、中間転写ベルト13の表面に残留する残トナーtをクリーニングするブレード27と、を備え、ゴム部27aは、電圧が印加されると、ゴム部27a及び感光体ドラム1が接触するニップNの部位では放電せず、ベルト搬送方向LでニップNよりも外側の部位で放電する画像形成装置100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラム又は中間転写ベルトの表面の残トナーをクリーニングするブレード式のクリーニング装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、感光体ドラムの表面に担持されたトナー像を、中間転写ベルトに1次転写させた後に、転写材に2次転写させる構成が知られている。そして、2次転写の終了後に中間転写ベルトの表面の残トナーをクリーニングするために、中間転写ベルトの表面にブレードが接触する構成が知られる。こうしたクリーニング装置に関する発明として特許文献1に記載の発明が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の発明では、ブレードに対して、2次転写終了後の中間転写ベルトに残存するトナー(所謂残トナー)と逆極性のバイアスを印加することで、残トナーの帯電量が弱められ、残トナーが中間転写ベルトに付着する静電付着力が弱められる。その結果、ブレードは残トナーを掻き取り易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2005−24726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ブレードのニップの近傍で、均一に残トナーの帯電量を弱くすることができない場合があった。
【0006】
図5(a)は、比較例1(従来例)に係るブレード127及び中間転写ベルト13のニップNの近傍の残トナーtが帯電される作用を説明する説明図である。ブレード127の表面全体は導電性を有する部材で形成されている。矢印Eは、ブレード127の先端からの放電によって、残トナーtが帯電される様子を表している。このように、ブレード127及びテンションローラ15のニップNの近傍から放電が始まることによって、残トナーtが弱帯電し、残トナーtの静電的な付着力が弱められている。残トナーtが多い場合は、多くの残トナーtが詰まり、全ての残トナーtを均一に帯電することは難しい。すなわち、中間転写ベルト13上で、ニップNの近傍は、残トナーtを帯電させることは容易であっても、ニップNよりもベルト搬送方向Lで上流側の部位に来ている残トナーtを帯電させることは困難であった。
【0007】
図5(b)は、比較例2(従来例)に係るブレード227及び中間転写ベルト13のニップNの近傍の残トナーtが帯電される作用を説明する説明図である。矢印Fは、図5(a)の矢印Eの場合よりも強いバイアスが印加される様子を表している。このように強いバイアスを印加すれば、ニップNの近傍だけでなく広い部分から放電を発生させることができる。こうした構成でブレード227に強いバイアスを印加すると、放電による移動電荷量が多くなるので、残トナーtの帯電極性が逆極性に強く帯電してしまって、中間転写ベルト13との静電付着力が強くなってしまう場合があった。特に残トナーtが少ない場合は、過剰な放電により、残トナーtを逆極性に強く帯電してしまうので、クリーニング性が悪くなってしまう。
【0008】
従って、低温環境下などのクリーニングに厳しい条件下(ブレードが低温下で固化してベルトに追従し難くなる等)では、クリーニング不良を抑制することができなかった。残トナーtがブレードをすり抜けてしまった場合は、ベルト移動方向(像担持体移動方向)と同じ方向にすり抜けるので、転写材にはベルト移動方向に対して同じ縦方向の汚れが発生してしまう。所謂“縦スジ”が発生してしまう場合があった訳である。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑み、クリーニングに厳しい条件下であっても、クリーニング不良が無い良好な画質を得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上のトナー像を転写する転写手段と、板状に形成されたゴムブレードを有し、前記ゴムブレードの先端が前記像担持体に当接するように配置され、前記像担持体の表面に残留する残留トナーをクリーニングするクリーニング手段と、を備え、前記ゴムブレードは、電圧が印加されると、前記ゴムブレード及び前記像担持体が接触するニップの部位では放電せず、像担持体移動方向で前記ニップよりも外側の部位で放電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブレードのバイアスが、残トナーの帯電量を均一に弱くする。従って、残トナーの静電的な付着力が効率的に弱められ、クリーニング性が向上する。その結果、クリーニングに厳しい条件下であっても、クリーニング不良が無い良好な画質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】ブレード、中間転写ベルト、及び、テンションローラの構成を示す拡大断面図等である。
【図3】ブレード、中間転写ベルト、及び、テンションローラの構成を示す拡大断面図等である。
【図4】導電性シートの表面形状を示す平面図等である。
【図5】比較例1に係るブレード、中間転写ベルト、及び、テンションローラの構成を示す断面図等である。
【図6】クリーニング装置及びバイアス電源の配線状況を示す概念図である。
【図7】ブレード、中間転写ベルト、及び、テンションローラの構成を示す拡大断面図等である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した画像形成装置である。図1に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に装置本体という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、画像を形成する画像形成部60が設けられる。画像形成部60は、像担持体である感光体ドラム1、転写装置である1次転写部材としての1次転写ローラ10等を含む。少なくとも感光体ドラム1については、プロセスカートリッジ9に含まれ、プロセスカートリッジ9として装置本体100Aに組み込まれる構成となっている。
【0015】
ここでは、画像形成装置100は、4色のトナーを用いたカラー画像形成装置であり、この動作について以下に説明する。なお、画像形成装置100では、第1ステーションS1をイエロー(Y)、第2ステーションS2をマゼンタ(M)、第3ステーションS3をシアン(C)、第4ステーションS4をブラック(K)としている。
【0016】
第1ステーションS1には、感光体ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニングユニット3a、及び、現像ユニット8aが設けられている。像担持体(第1像担持体)である感光体ドラム1aは、トナー像を担持するものである。帯電手段である帯電ローラ2aは、感光体ドラム1の表面を所定の電位に帯電させるローラである。また、帯電ローラ2aの上方には、露光手段である露光装置11aが配置されている。露光装置11aは、レーザ光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットとして構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光体ドラム1a上に照射する。
【0017】
現像手段である現像ユニット8aは、現像スリーブ4a、及び、現像剤塗布ブレード7aを有しており、その内部には非磁性一成分現像剤(以下、単にトナー5aという)を収容している。クリーニング手段であるクリーニングユニット3aは、感光体ドラム1aの表面の残トナーtをクリーニングするユニットである。これらの感光体ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニングユニット3a、現像ユニット8aは、一体化されてプロセスカートリッジ9aを構成している。
【0018】
次に画像形成動作について説明する。画像形成動作がスタートすると、感光体ドラム1a〜1dや中間転写ベルト13(中間転写体)等は所定のプロセススピードで矢印方向に回転を始める。最初に第1ステーションS1の動作について説明する。感光体ドラム1aは帯電ローラ2aに電源20aから供給されるバイアスによって一様に負極性に帯電され、続いて露光装置11aからの走査ビーム12aによって画像情報に従った静電潜像が形成される。
【0019】
一方で、現像ユニット8aの内部のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて現像スリーブ4aに塗布される。そして、現像スリーブ4aには、現像バイアス電源21aよってバイアスが供給され、感光体ドラム1aが回転して感光体ドラム1a上に形成された静電潜像が現像スリーブ4aと対向する位置に到達すると、静電潜像は負極性のトナーによって可視化される。こうして、感光体ドラム1a上には第1色目(本実施例では、Y)のトナー像が形成される。
【0020】
なお、第2〜第4ステーションS2〜S4も第1ステーションS1と同様の構成及び動作をするので、第1ステーションS1の説明を援用するものとし、同一番号の部材の符号の添え字にb、c、dを付して説明を省略する。
【0021】
一方、像担持体(第2像担持体)である中間転写ベルト13(中間転写体)は、4つの感光体ドラム1の表面に対向して配置され、トナー像を担持するベルトである。中間転写ベルト13は、支持ローラ24、駆動ローラ14、テンションローラ15といった3本の張架部材に張架されている。支持ローラ24は、2次転写ローラ25に対向する位置に配置されている。転写手段(2次転写手段)である2次転写ローラ25は、中間転写ベルト13の表面に転写されたトナー像を転写材Pに2次転写するローラである。
【0022】
テンションローラ15の配置によって、中間転写ベルト13には適切なテンションが負荷されている。駆動ローラ14が駆動すると、中間転写ベルト13は感光体ドラム1a〜1dに対して順方向に略同速度で移動する。
【0023】
また、1次転写ローラ10a〜10dの各々は、中間転写ベルト13の内周面側で、感光体ドラム1a〜1dの各々と対向する位置に配置されている。転写手段(1次転写手段)である1次転写ローラ10は、感光体ドラム1の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト13の表面に1次転写するローラである。
【0024】
1次転写ローラ10a〜10dは、電圧供給手段である1次転写電源22a〜22dに接続されている。2次転写ローラ25は2次転写電源26に接続されている。コントローラ50は、各色の1次転写位置の間の距離に応じて、色毎に、一定のタイミングで書き出し信号を遅らせながら送信する。そして、コントローラ50は、露光装置11a〜11dが静電潜像を各々の感光体ドラム1a〜1dの表面に形成するように制御し、1次転写電源22a〜22dを制御して1次転写ローラ10a〜10dにトナーと逆極性の電圧を印加するように制御する。
【0025】
以上の工程により、順に中間転写ベルト13に各々のトナー像が転写され、中間転写ベルト13の表面には多重画像が形成される。
【0026】
その後、露光装置11が静電潜像を作像するタイミングに合わせて、転写材カセット16に積載されている転写材Pは、給送ローラ17によりピックアップされ、不図示の搬送ローラによりレジストローラ18にまで搬送される。そして、転写材Pは中間転写ベルト13上のトナー像に同期してレジストローラ18によって、中間転写ベルト13と2次転写ローラ25とで形成される当接部へ搬送される。その後、2次転写ローラ25には2次転写電源26により、トナーと逆極性の電圧印加を行い、転写材P上に中間転写ベルト13上に担持された4色の多重トナー像は一括して2次転写される。
【0027】
尚、中間転写ベルト13の構成としては、厚さが100μm、体積抵抗率が1010ΩcmのPVDFを用いている。張架部材としての駆動ローラ14は、Al芯金にカーボンを導電剤として分散した体積抵抗率が10Ωcm、肉厚が1.0mmのEPDMゴムを被覆したφ25mmのものを用いている。張架部材としてのテンションローラ15は、φ25mmのAlの金属棒を用いており、テンションは片側が19.6N、総圧が39.2Nとしている。
【0028】
尚、本実施例では、1次転写ローラ10a〜10dは、φ8mmのニッケルメッキ鋼棒に体積抵抗率が10Ωcmで厚みが4mmに調整したNBRの発泡スポンジ体で覆った外径φ16mmのものを用いた。2次転写ローラ25は、φ12mmのニッケルメッキ鋼棒に体積抵抗率が10Ωcmで厚みが4mmに調整したNBRの発泡スポンジ体で覆った外径φ20mmのものを用いた。また、2次転写ローラ25は、中間転写ベルト13に対して、150〜250g/cm程度の線圧で当接させ、且つ中間転写ベルト13が搬送されるベルト搬送方向Lに対して順方向に略等速度で回転する様に配置した。
【0029】
定着手段である定着装置19は、転写材Pの表面に転写されたトナー像を定着する装置である。2次転写終了後の転写材Pは定着装置19へと搬送され、トナー像の定着を受けて画像形成物(所謂プリント、コピー)として装置本体100Aの外部へと排出される。
【0030】
2次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留した転写残トナーと、転写材Pが搬送されることによって発生する紙粉は、以下のようになる。すなわち、中間転写ベルト13に当接配置されたベルトクリーニング装置(以下、単にクリーニング装置927という)により、その表面から除去・回収される。尚、本実施例の画像形成装置100ではクリーニング装置927としてウレタンゴムで形成された弾性を有するクリーニングブレード(以下、単にブレード27という)を用いた。
【0031】
図2(a)は、ブレード27、中間転写ベルト13、及び、テンションローラ15の構成を示す拡大断面図である。図2(a)に示されるように、クリーニング装置927は、クリーニングブレード(以下、単にブレード27という)を有する。クリーニング手段であるブレード27は、板状に形成されたゴムブレードであるゴム部27aを有し、ゴム部27aの先端が中間転写ベルト13に当接するように配置されている。ブレード27は、2次転写ローラ25がトナー像を転写した後に中間転写ベルト13の表面に残留する残留トナーである残トナーtをクリーニングする部材である。
【0032】
ブレード27は、金属板金(以下、単に板金部27bという)と、板金部27bの先端に一定の食い込み量で保持した前述のゴム部27aと、を有する。ゴム部27aは、ウォーレス硬度69度のポリウレタンゴムで成形されている。
【0033】
ブレード27は、中間転写ベルト13を張架するテンションローラ15に対して所定の設定角α=22°、侵入量β=0.2mmを満たすように固定されている。設定角αは、ゴム部27aの先端部が変形せずに感光体ドラム1に侵入したと仮定したときの、ゴム部27aの先端面とテンションローラ15との交点と接する、テンションローラ15の接線とゴム部27aの側面とのなす角度である。侵入量βは、ゴム部27aの先端面とテンションローラ15との交点J1とゴム部27aのテンションローラ15への侵入側の縁部J2との間の距離である。
【0034】
この場合、実際にはゴム部27aは、中間転写ベルト13に対する一定の当接圧、中間転写ベルト13との当接部位の一定のニップ長及び、ゴム部27aの先端面と中間転写ベルト13との当接部の接線方向との一定の角度を保って安定化している。
【0035】
図2(b)は、ゴム部27a及び中間転写ベルト13で形成されるニップNを示す拡大断面図である。図2(b)に示されるように、ブレード27のゴム部27aの先端は、中間転写ベルト13に対して撓んで当接している。ゴム部27aは、エッジ頂点27cの近傍で、中間転写ベルト13と当接するようになっている。そして、テンションローラ15の周方向でニップNが形成されている。
【0036】
図3(a)は、ブレード27、中間転写ベルト13、及び、テンションローラ15の構成を示す拡大断面図である。図3(b)は、図3(a)の点線部分を拡大したブレード27のゴム部27aの構成を拡大した拡大図である。この図3(b)を参照しつつ、ブレード27のゴム部27aにおけるニップNの近傍の形状に関して説明する。
【0037】
ニップNの位置は、ブレード27の部品交差や、耐久によるゴムの摩耗で多少変わるものの、エッジ頂点27cで形成される。ゴム部27aには、エッジ頂点27cから左斜め下方向へ所定の距離27dだけ離れた箇所から厚さ200μmの導電性シート27i−1、27h−1が順に接着されている。また、ゴム部27aには、エッジ頂点27cから左斜め上方向へ所定の距離27eだけ離れた箇所から厚さ200μmの導電性シート27i−2、27h−2が順に接着されている。
【0038】
即ち、ゴム部27aの表面では、ゴム部27a及び感光体ドラム1が接触するニップN(エッジ頂点27cを含む)よりも外側の部位には、導電性を有する導電性部材である導電性シート27iが接着されて設けられている。そして、導電性シート27iの表面には、凹凸である凹部27y及び凸部27x(図4参照)が形成されている。また、ニップNの部位(所定の距離27d、27eの部位)は、導電性を有しない。
【0039】
すなわち、ニップNから所定の距離27d、27eの部位は、絶縁されている。導電性シート27h、27iの材質は、超高分子ポリエチレンにカーボンブラックの導電粒子を分散させて体積抵抗率を1×10 (Ω・cm)以下としたものを使用した。こうした構成によって、後述するが、ゴム部27aは、電圧が印加されると、ゴム部27a及び中間転写ベルト13が接触するニップNの部位では放電せず、ニップNよりも像担持体移動方向であるベルト搬送方向Lの外側の部位で放電する。
【0040】
図4(a)は、導電性シート27iの表面形状を示す平面図である。図4のA−A線は、図3(b)の紙面と直交する方向(ブレード27の長手方向)に対応している。図4のB−B線は、図3(b)の紙面に沿う方向(ブレード27の基端から先端へと向かう方向)に対応している。図4(a)に示されるように、導電性シート27iの表面には、複数の凸部27x及び凹部27yが形成されている。そして、凸部27x及び凹部27yは、ベルト搬送方向Lに対して不連続になるように配置されている。このようにすることで、ニップNの長手方向に対して、様々な位置から残トナーtを帯電できるようになるので、残トナーtの長手方向の帯電を均一にすることができるようになる。
【0041】
図4(b)は、図4(a)のA−A線に沿う断面図である。図4(b)中で、寸法E1は、凸部27xの中心位置同士の間隔で、寸法E2は、凹部27yの中心位置同士の間隔である。また、図4(b)中で、寸法D1は凹部27yの上側同士の間隔で、寸法D2は凹部27yの下側同士の間隔である。また、図4(b)中で、寸法hは、凸部27xの高さである。
【0042】
クリーニングに効果的な凹凸形状を検討したところ、寸法E1、E2は50μmから100μmが良かった。この距離は、離れすぎると、放電ポイントが少なくなってしまう為に残トナーtを均一に弱帯電することができない。一方、近すぎると、放電ポイントである凸部27xの部分に電界が集中しなくなるので、均一な放電がし難くなる。従って本実施例では、寸法E1、E2は80μmとした。
【0043】
また寸法E1と寸法D1の差つまり、凸部27xの幅は、20μm以下が良好であった。凸部27xの幅は小さければ、放電ポイントである凸部27xに電界が集中しやすくなるからである。本実施例では、成形可能な範囲で、かつ効果的なクリーニングが得られる形状として寸法D1を70μmとし、寸法E1と寸法D1の差が10μmとなるようにした。
【0044】
また凸部27xの高さhについては、30μm以上で良好であった。凸部27xの高さhが高いと、凸部27xと凹部27yの電界の差が生じて、凸部27xに放電が集中しやすくなるからである。本実施例では、成形可能な範囲で、かつ効果的なクリーニングが得られる形状として寸法hの高さを40μmとした。
【0045】
このようにニップNの近傍以外の表面に導電性の凹凸部を設けて、ニップ近傍の表面を絶縁性とすることで、ニップNから離れたところの凸部27xに電界を集中させることができるので、低い電界強度で、ニップNから遠いところだけに、放電することがきる。従って、ニップNの遠い位置で、残トナーtの帯電量を均一に小さくすることができる。
【0046】
図5(a)は、比較例1に係るブレード127、中間転写ベルト13、及び、テンションローラ15の構成を示す断面図である。図5(a)に示されるように、比較例1(従来例に相当する)の構成では、ブレード127の表面全体が導電性であって、ニップNの近傍も導電性であったので、主に、ニップNの近傍で残トナーtを帯電させる構成であった。従って、残トナーtが多い場合は、多くの残トナーtが詰まることになるので、全ての残トナーtを均一に帯電することは難しい。特に中間転写ベルト13におけるニップNよりもベルト搬送方向Lの上流側にある残トナーtを帯電させることが困難であった。
【0047】
図5(b)は、比較例2に係るブレード227、中間転写ベルト13、及び、テンションローラ15の構成を示す断面図である。図5(b)に示されるように、比較例2(従来例に相当する)の構成では、より強いバイアスを印加すれば、ニップNの近傍だけでなく広い部分から放電を発生させることができる。しかし、ブレード227に強いバイアスを印加すると、放電による移動電荷量が多くなるので、残トナーtの帯電極性が逆極性に強く帯電してしまって、中間転写ベルト13との静電付着力が強くなってしまう場合があった。特に残トナーtが少ない場合は、過剰な放電により、残トナーtを逆極性に強く帯電してしまうので、クリーニング性が悪くなってしまったわけである。
【0048】
本実施例では、凸部27xの頂点は平らである(図4(b)参照)が、より放電をしやすいように針状であってもよい。導電性シート27h、27iには、画像形成装置100の残トナーtが正規に帯電される極性と逆極性でかつ直流の、+1500Vを印加するようになっている。+1500Vにした理由は後述する。バイアスは、板金部27bから給電される。バイアス印加は、中間転写ベルト13が駆動回転されるのと同時に給電されるようになっている。
【0049】
図6は、クリーニング装置927及びバイアス電源27gの配線状況を示す概念図である。この図6を参照しつつ、ブレード27にバイアスを印加した時に、バイアスによって残トナーtの帯電挙動とクリーニングの関係を説明する。
【0050】
バイアス電源27gからブレード27の板金部27bを通じてゴム部27aの表面に印加されたバイアスによって、残トナー51は、ニップNの上流で+極性側に帯電する放電を受ける。残トナー52は、ブレード27の先端から供給されるバイアスによって、−極性であったものが、弱−極性または、弱+極性に帯電される。これにより、中間転写ベルト13の付着力が弱まることになる。このように、残トナー52は、中間転写ベルト13との静電付着力が弱まった状態で、ブレード27のニップNの位置に到達するので、容易にブレード27で掻きとることができるようになるわけである。
【0051】
図7(a)は、ブレード27、中間転写ベルト13、及び、テンションローラ15の構成を示す拡大断面図である。この図7(a)を参照しつつ、本実施例の効果を説明する為に、ニップNの近傍の残トナーtが帯電される作用を、比較例1、2(従来例)の構成と比較して説明する。
【0052】
図7(a)に示されるように、ブレード27のニップNから離れたところから放電して、弱いバイアスでも残トナーtの帯電量を小さくすることができる。ニップNから離れたところは、ニップNの近傍のように残トナーtが詰まってないので、弱いバイアスでも安定して残トナーtを帯電することができ。弱いバイアスで放電させるので、強+極性に残トナーtがなることもない。以上のように、残トナーtに対して安定して放電することができるので、残トナーtと中間転写ベルト13の付着力が弱まることができて、容易にブレード27で掻きとることができる。
【0053】
図7(b)は、実施例の構成におけるクリーニング性能、及び、比較例の構成におけるクリーニング性能を比較した表である。比較例(従来例)の構成としては、ブレードとして、ニップを含めた表面全域に導電性のコーティングを施したものを使用した。
【0054】
評価条件としては、クリーニングに厳しい15℃の低温環境に画像形成装置100を設置して行った。評価パターンとしては、残トナーtが多い場合と、少ない場合のパターンを評価した。残トナーtが多い場合として、カラーのマゼンダ色とシアン色による2次色の全面ベタ画像をプリントして評価した。残トナーtが少ない場合として、マゼンダ色のハーフトーンパターンをプリントして評価した。全面ベタの画像は、紙に対して、隙間なく全面プリントするパターンを使用したのに対して、ハーフトーンパターンは、紙に対してトナーを形成する面積がおおよそ10%になるように、紙全面にトナーを散りばめたパターンを使用した。
【0055】
この2種類のパターンを用いて、クリーニングブレードに印加する電圧の水準を変えて、A4サイズの画像を連続して100枚プリントした時に、プリント画像上に“縦スジ”が発生する具合を客観的に評価した結果である。
【0056】
図中の記号は、“縦スジ”のレベルを示すものである。○は、“縦スジ”の発生が100枚プリントしても、まったく発生していなかったことを示す。△は、“縦スジ”の発生が微かに発生する場合であって、そのレベルは目を凝らして見ないとわからない極軽微なものも含めて発生頻度が100枚プリントした中で、10枚以下であった場合を示す。×は、“縦スジ”の発生が微かに発生する場合であって、そのレベルは目を凝らして見ないとわからない極軽微なものも含めて100枚プリントした中で、10枚を超えて発生した場合を示す。
【0057】
表の結果で示しているように、従来の構成においては、残トナーの多い2次色ベタパターンでは、転写バイアスを上げればよくなる。一方で、残トナーの少ないハーフトーンパターンでは、2次色ベタパターンでよくなるまでバイアスを上げてしまうと、返ってクリーニングが悪くなってしまう。これは、残トナーが少ない時には、トナーに与える放電量が多くなる為に、トナーの極性が反転して逆に強い静電付着力を生じてしまう事になってしまうからである。このように、従来の構成においては、クリーニングに厳しい低温環境で、残トナーtが多いときと少ないときとの両方で、クリーニング性を両立するバイアス条件がなかった。
【0058】
一方、本実施例の構成においては、クリーニングに厳しい低温環境で、残トナーtが多いときと少ないときとの両方で、クリーニング性を両立するバイアスのマージンが増えている。ブレード27のニップNから離れたところだけで、残トナーtの帯電量を少なくすることができる。そのために、残トナーtの量に関係なく、従来の構成と比較して、弱い転写バイアスを用いて、残トナーtの帯電量を少なくして、中間転写ベルト13との静電付着力を弱めることができるからである。また高いバイアスを使用しても、安定して放電させることができるので、残トナーtを均一に弱い帯電量とすることができて中間転写ベルト13との付着力を弱めることができる訳である。
【0059】
本実施例では、残トナーtが多い場合でも少ない場合でもクリーニング性を十分両立できる+1500Vのバイアスを使用している。本実施例は、よりクリーニングに厳しい条件で、ブレード27をすり抜けたとしても、ブレード27のニップNの下流でもすり抜けた残トナーtを帯電することができるようになっている。その為、もしすり抜けた残トナーtがあったとしても、次にブレード27を通過するときには確実にクリーングできるようになっている。
【0060】
実施例の構成によれば、ブレード27と中間転写ベルト13の当接部であるニップNの外側の表面に導電性を有する凸部27xを配置し、電圧を印加する。ブレード27のバイアスが、残トナーの帯電量を均一に弱くする。従って、残トナーの静電的な付着力が効率的に弱められ、クリーニング性が向上する。その結果、クリーニングに厳しい条件下であっても、クリーニング不良が無い良好な画質が得られる。そして、例えば、低温環境で、ブレード27のゴム特性が低下し、残トナーのクリーニング装置927への回収ができなくなって、“縦スジ”を発生させてしまう現象が抑制される。
【0061】
本実施例では、中間転写ベルト13(中間転写体)が用いられた画像形成装置100の例を説明したが、この構成に限定されなくても良い。すなわち、ブレード27が転写材を搬送する転写材搬送ベルト(転写材搬送体)の表面に残像した残トナーtをクリーニングする構成であっても良い。この場合には、像担持体は、感光体ドラムの表面に対向して配置されて転写材を搬送する転写材搬送ベルトが相当し、転写手段は、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段すなわち1次転写ローラ10が相当する。そして、ゴム部27aは、電圧が印加されると、ゴム部27a及び転写材搬送ベルトが接触するニップNの部位では放電せず、ニップNよりもベルト搬送方向の外側の部位で放電する。こうした構成であっても、同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0062】
または、ブレード27が感光体ドラム1の表面に残留した残トナーtをクリーニングする構成であっても良い。この場合には、像担持体は、感光体ドラム1が相当し、転写手段は、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段すなわち1次転写ローラ10が相当する。そして、ゴム部27aは、電圧が印加されると、ゴム部27a及び感光体ドラム1が接触するニップNの部位では放電せず、ニップNよりも像担持体移動方向である感光体ドラム回転方向の外側の部位で放電する。こうした構成であっても、同様の効果が得られることをいうまでもない。
【0063】
実施例の構成は、パッチトナーをクリーニングする構成に適用しても良い。この場合には、転写手段がトナー像を転写する工程が省略される。
【符号の説明】
【0064】
1 感光体ドラム(第1像担持体)(像担持体)
10 1次転写ローラ(1次転写手段)(転写手段)
13 中間転写ベルト(第2像担持体)(像担持体)
25 2次転写ローラ(2次転写手段)(転写手段)
27 ブレード(クリーニング手段)
27a ゴム部(ゴムブレード)
100 画像形成装置
N ニップ
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を転写する転写手段と、
板状に形成されたゴムブレードを有し、前記ゴムブレードの先端が前記像担持体に当接するように配置され、前記像担持体の表面に残留する残留トナーをクリーニングするクリーニング手段と、を備え、
前記ゴムブレードは、電圧が印加されると、前記ゴムブレード及び前記像担持体が接触するニップの部位では放電せず、像担持体移動方向で前記ニップよりも外側の部位で放電することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体は、感光体ドラムの表面に対向して配置される中間転写ベルトであり、
前記転写手段は、前記中間転写ベルトの表面に転写されたトナー像を転写材に2次転写する2次転写手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体は、感光体ドラムであり、
前記転写手段は、前記感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体は、感光体ドラムの表面に対向して配置され、転写材を搬送する転写材搬送ベルトであり、
前記転写手段は、前記感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ゴムブレードの表面では、前記ニップよりも外側の部位は、前記ニップの部位よりも導電性が高いことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ゴムブレードの表面では、
前記ニップよりも外側の部位には、導電性を有する導電性部材が設けられており、
前記ニップの部位は、導電性を有しないことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ゴムブレードの表面は、前記ニップよりも外側の部位に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242478(P2012−242478A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110241(P2011−110241)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】