画像形成装置
【課題】表面凹凸に富んだ記録紙表面の凹部上で十分な画像濃度を得つつ、凹部上の画像箇所における白点の発生を抑えることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写ベルト31の周方向における全領域のうち、ニップ形成ローラ36が当接している2次転写ニップに進入する直前の領域であって且つベルト表面移動方向に所定の大きさ(数十画素分)に区切った領域、に対するトナー付着量を画像情報に基づいて制御部60に把握させる。そして、2次転写バイアスの直流成分及び交流成分のうち、少なくとも交流成分を定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記トナー付着量に応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成した。
【解決手段】中間転写ベルト31の周方向における全領域のうち、ニップ形成ローラ36が当接している2次転写ニップに進入する直前の領域であって且つベルト表面移動方向に所定の大きさ(数十画素分)に区切った領域、に対するトナー付着量を画像情報に基づいて制御部60に把握させる。そして、2次転写バイアスの直流成分及び交流成分のうち、少なくとも交流成分を定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記トナー付着量に応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップにおいて、ニップ内に挟み込んだ記録材に対して像担持体の表面上のトナー像を転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより、ドラム状の感光体の表面にトナー像を形成する。感光体には、像担持体としての無端状の中間転写ベルトを当接させて1次転写ニップを形成している。そして、1次転写ニップにおいて、感光体上のトナー像を中間転写ベルトに1次転写する。中間転写ベルトに対しては、ニップ形成部材としての2次転写ローラを当接させて2次転写ニップを形成している。また、中間転写ベルトのループ内には、2次転写対向ローラを配設しており、この2次転写対向ローラと、前述した2次転写ローラとの間に中間転写ベルトを挟み込んでいる。ループ内側の2次転写対向ローラに対してはアースを接続しているのに対し、ループ外の2次転写ローラに対しては2次転写バイアスを印加している。これにより、2次転写対向ローラと2次転写ローラとの間に、トナー像を前者側から後者側に静電移動させる2次転写電界を形成している。そして、中間転写ベルト上のトナー像に同期させるタイミングで2次転写ニップ内に送り込んだ記録紙に対して、2次転写電界やニップ圧の作用により、中間転写ベルト上のトナー像を2次転写する。
【0003】
かかる構成において、記録紙として、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを画像中に発生させ易くなる。この濃淡パターンは、紙表面における凹部に対して十分量のトナーが転写されずに、凹部の画像濃度が凸部よりも薄くなることによって生じるものである。そこで、特許文献1に記載の画像形成装置においては、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものではなく、交流電圧に対して直流電圧を重畳した重畳バイアスを印加するようになっている。特許文献1には、このような2次転写バイアスを印加することで、直流電圧だけからなる2次転写バイアスを印加する場合に比べて、濃淡パターンの発生を抑え得ることを示す実験結果が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らは実験により、2次転写バイアスとして重畳バイアスを印加しても、紙表面の凹部で十分な画像濃度を得ることができない場合があることを見出した。また、凹部で十分な画像濃度を得ることができても、凹部の画像箇所に複数の白点を発生させる場合もあった。
【0005】
そこで、本発明者らは、紙表面の凹部で画像濃度不足や白点を発生させる原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことがわかってきた。図1は、2次転写ニップの一例を示す拡大構成図である。同図において、中間転写ベルト531は、その裏面に当接している2次転写裏面ローラ533により、ニップ形成ローラ536に向けて押圧されている。この押圧により、中間転写ベルト531のおもて面とニップ形成ローラ536とが当接する2次転写ニップが形成されている。この2次転写ニップに送り込まれた記録紙Pには、中間転写ベルト531上のトナー像が2次転写せしめられる。トナー像を2次転写するための2次転写バイアスは、同図に示される2つのローラのうち、何れか一方に印加され、他方のローラは接地されている。どちらのローラに転写バイアスを印加しても、トナー像を記録紙Pに転写することが可能であるが、2次転写裏面ローラ533に2次転写バイアスを印加する場合であって、且つトナーとしてマイナス極性のものを用いる場合を例にして説明する。この場合、2次転写ニップ内のトナーを2次転写裏面ローラ533側からニップ形成ローラ536側に移動させるためには、重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、電位の時間平均値がトナーの極性と同じマイナス極性の電位になるものを印加する。
【0006】
図2は、2次転写裏面ローラ533に印加される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形の一例を示す波形図である。同図において、オフセット電圧Voff[V]は、2次転写バイアスの時間平均値を表している。図示のように、重畳バイアスからなる2次転写バイアスは正弦波状の形状をしており、プラス側のピーク値と、マイナス側のピーク値とを具備している。Vtという符号が付されているのは、それら2つのピーク値のうち、2次転写ニップ内でトナーをベルト側から記録紙側に移動させる方(本例ではマイナス側)のピーク値である(以下、送りピーク値Vtという)。また、Vrという符号が付されているのは、トナーを記録紙側からベルト側に戻す方(本例ではプラス側)のピーク値である(以下、戻しピーク値Vrという)。図示のような重畳バイアスの代わりに、交流成分だけからなる交流バイアスを印加しても、2次転写ニップにおいてトナーをベルトと記録紙との間で往復移動させることは可能である。しかし、交流バイアスでは、トナーを単に往復移動させるだけで、記録紙上に転移させることはできない。直流成分を含む重畳バイアスを印加してその時間平均値であるオフセット電圧Voff[V]をトナーと同じマイナス極性にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録紙側に移動させて記録紙上に転移させることが可能になる。
【0007】
本発明者らは、かかる構成における2次転写ニップ内でのトナーの挙動を観測したところ、次のようなことを見出した。即ち、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの印加を開始すると、まず始めに、中間転写ベルト531上でトナー層の表面に存在しているごく僅かなトナー粒子だけがトナー層から離脱して、記録紙表面の凹部内に向かう。しかし、トナー層中の殆どのトナー粒子は、トナー層中に留まったままである。トナー層から離脱したごく僅かなトナー粒子は、記録紙表面の凹部内に進入した後、電界の向きが逆になると、凹部内からトナー層に逆戻りする。このとき、逆戻りしたトナー粒子は、トナー層中に留まっていたトナー粒子に衝突して、そのトナー粒子のトナー層(あるいは記録紙)に対する付着力を弱める。すると、次に電界が記録紙Pに向かう方向に反転したときには、最初よりも多くのトナー粒子がトナー層中から離脱して、記録紙表面の凹部に向かう。このような一連の挙動を繰り返していくことで、トナー層中から離脱して記録紙表面の凹部内に進入するトナー粒子の数を徐々に増やしていって、凹部内に十分量のトナー粒子を転移させていることがわかった。
【0008】
しかしながら、トナー層中のトナー付着量が比較的多い場合には、図2に示した戻しピーク値Vrでは、記録紙表面の凹部内に転移したトナー粒子をベルト上のトナー層に引き戻すことができなくなって、凹部内の画像濃度を不足させてしまうことがわかった。この一方で、トナー層中のトナー付着量が比較的少ない場合には、2次転写バイアスが送りピーク値Vtになったときに記録紙表面の凹部上の画像箇所に白点を発生させ易くなることもわかった。より詳しくは、図1に示した2次転写裏面ローラ533とニップ形成ローラ536との間の電位差は、2次転写バイアスが送りピーク値Vtになったときに最も大きくなる。このとき、記録紙表面の凹部において2次転写裏面ローラ533側からニップ形成ローラ536側に向けて放電を発生させ易くなる。但し、このとき、トナー層中のトナーの付着量が比較的多い場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ533と記録紙との間に介在することから、前述の放電の発生が抑えられる。しかし、トナー層中のトナーの付着量が比較的少ない場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ533と記録紙との間に少量しか存在しないことから、前述の放電が発生してしまう。すると、その放電によって逆帯電したトナー粒子が記録紙表面の凹部内に全く転移しなくなって、凹部上の画像箇所に多数の白点を発生させてしまうのである。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録材表面の凹部上で十分な画像濃度を得つつ、凹部上の画像箇所における白点の発生を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体のおもて面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体のおもて面に当接して前記像担持体との間で転写ニップを形成するニップ形成部材と、前記転写ニップ内に挟み込んだ記録材に対して前記像担持体上のトナー像を転写するために、直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを出力する転写バイアス出力手段とを有する画像形成装置において、前記像担持体の全領域のうち、前記転写ニップに進入する直前の領域であって且つ前記像担持体の表面移動方向に所定の大きさに区切った領域、に対するトナー付着量を把握する付着量把握手段を設けるとともに、前記直流成分及び交流成分のうち、少なくとも交流成分を定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記付着量把握手段による把握結果に応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記直流成分と前記交流成分とをそれぞれ定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値に加えて、前記直流成分の出力目標値も、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、 前記把握結果が、トナー付着量について大きな値を示す従って、前記直流成分の出力目標値と、前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ大きくする処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3の何れかの画像形成装置において、前記交流成分の出力目標値を変更する処理を、前記直流成分の出力目標値を変更する処理よりも先行して行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、前記2次転写ニップの像担持体移動方向の長さを、前記付着量把握手段によるトナー付着量の把握対象となった領域の像担持体表面移動方向の長さよりも大きくし、且つ、前記領域の後端が前記転写ニップの入口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記交流成分の出力目標値の変更を行う一方で、前記領域の先端が前記転写ニップの出口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記直流成分の出力目標値の変更を行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の画像形成装置において、前記転写バイアスとして、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける像担持体表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]と、前記領域の像担持体表面移動方向の長さLとについて「f≧2/(d−L)/v)」という関係を具備するもの、を出力する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、上記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、ユーザーの命令に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、前記情報取得手段による取得結果に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7又は8の画像形成装置において、前記転写バイアス出力手段として、前記直流成分を発生させる第1電源と、前記交流成分を発生させる第2電源とを個別に有するもの、を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、前記像担持体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に対して前記第1電源からの出力を印加し、且つ他方に対して前記第2電源からの出力を印加したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項8乃至10の何れかの画像形成装置において、前記直流成分だけからなる前記転写バイアスを出力するモードにて、前記直流成分の出力目標値を前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記定電流制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果加えて、前記像担持体の表面移動速度にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項1乃至11の何れかの画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御し、且つ、前記交流成分の周波数を前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項1乃至12の何れかの画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記交流成分の周波数と、前記定電流制御における前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項1乃至14の何れかの画像形成装置において、前記像担持体の表面上のトナー層の電位を検知する電位検知手段を設けるとともに、
前記把握結果に加えて、前記電位検知手段による検知結果にも応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、記録材の電気抵抗又は厚みに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、請求項1乃至11の何れか、又は、請求項13もしくは14、の画像形成装置において、記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記交流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項18の発明は、請求項2、2、3、4、5、6又は16の画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記画像面積率が100[%]を超える場合にのみ、前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項19の発明は、請求項2、2、3、4、5、6、16又は18の画像形成装置において、温度又は湿度を検知する環境検知手段を設けるとともに、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に加えて、前記環境検知手段による検知結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項20の発明は、請求項1乃至19の何れかの画像形成装置であって、潜像を担持する潜像担持体に当接して1次転写ニップを形成する中間転写体を具備しており、前記像担持体が、前記潜像担持体の表面上で現像されたトナー像を前記1次転写ニップで自らのおもて面に1次転写せしめられる前記中間転写体であり、且つ、前記ニップ形成部材が、前記中間転写体のおもて面に当接して2次転写ニップを形成する2次転写ニップ形成部材であることを特徴とするものである。
また、請求項21の発明は、請求項20の画像形成装置において、前記中間転写体として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である無端状の中間転写ベルトを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明においては、付着量把握手段による把握結果に基づいて、像担持体の全領域のうち、転写ニップに進入している領域に対するトナー付着量について比較的多いと判断した場合には、転写バイアスの交流成分の出力値を比較的大きくすることで、転写ニップ内に比較的多量のトナーが存在していてもそれらに対し、転写ニップ内で記録材表面の凹部と像担持体の表面との間を往復移動させるのに十分な電界を作用させて、記録材表面の凹部上で十分な画像濃度を得ることができる。また、転写ニップ内に比較的少量のトナーしか存在していない場合には、転写バイアスの交流成分の出力値を比較的小さくすることで、交流成分の送りピーク値を小さくする。これにより、記録紙表面の凹部内における放電の発生を抑えて、凹部上の画像箇所における白点の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】2次転写ニップの一例を示す拡大構成図。
【図2】重畳バイアスからなる転写バイアスの波形の一例を示す波形図。
【図3】第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図4】同プリンタにおけるK用の画像形成ユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図5】実験に使用された観測実験装置を示す概略構成図。
【図6】2次転写ニップにおける転写初期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図7】2次転写ニップにおける転写中期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図8】2次転写ニップにおける転写後期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図9】同プリンタの電気回路の一部を示すブロック図。
【図10】中間転写ベルトの50ライン区画を説明するための模式図。
【図11】A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第1例とを示す模式図。
【図12】A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第2例とを示す模式図。
【図13】同プリンタの2次転写電源から出力される2次転写バイアスの電流波形を示す波形図。
【図14】2次転写ニップ内において、トナーを記録紙Pの表面上に保持するために必要な電流値であるトナー保持電流Itonerを説明するための模式図。
【図15】2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itが不適切に大きいことに起因して、記録紙表面の凹部上で多数の白点を発生させてしまった画像を拡大して示す写真画像。
【図16】2次転写ニップに進入するトナー量に対して戻しピーク値Irが不適切に小さいことに起因して、記録紙表面の凹部上の画像箇所に画像濃度不足を引き起こしてしまった画像を拡大して示す写真画像。
【図17】2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itも戻しピーク値Irが適切であったために、凹部に対応する画像箇所に白点も画像濃度不足も発生させていない良好な画像を拡大して示す写真画像。
【図18】ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングと、オフセット電流Ioffの目標値を変更するタイミングとを説明するための説明図。
【図19】第1実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電流Ioffとの関係を示すグラフ。
【図20】第1実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電流Ippとの関係の第1例を示すグラフ。
【図21】第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電圧Voffとの関係の第1例を示すグラフ。
【図22】第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電圧Vppとの関係を示すグラフ。
【図23】第1実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電流Ippとの関係の第2例を示すグラフ。
【図24】第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電圧Voffとの関係の第2例を示すグラフ。
【図25】参考形態に係るプリンタにおける画像面積率と2次転写バイアス出力目標値との関係を示すグラフ。
【図26】第1実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図27】第5実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図28】第6実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図29】第7実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図30】第8実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図31】第9実施例に係るプリンタの2次転写バイス電源を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図32】第1変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【図33】第2変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の第1実施形態について説明する。
まず、第1実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図3は、第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、第1実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
【0014】
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図4に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
【0015】
感光体2Kは、ドラム状の基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。その直径は60[mm]であり、静電容量は9.5E−7[F/m2]である。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本プリンタでは、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。より詳しくは、約−650[V]に一様に帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
【0016】
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。K用の静電潜像の電位は約100[V]である。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。なお、全面ベタ画像を現像した場合における全面ベタ画像に対する単位面積当たりのトナー付着量M/Aは、0.55〜0.65[mg/cm2]である。
【0017】
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
【0018】
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0019】
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0020】
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0021】
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0022】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
【0023】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0024】
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
【0025】
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
【0026】
先に示した図3において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
【0027】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0028】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット31は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位センサ38などを有している。
【0029】
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは60[μm]である。また、体積抵抗率は1e9[Ωcm]である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT450にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、引っ張り弾性率は、2.6[GPa]である。また、材料はカーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
【0030】
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0031】
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなる。感光体2Y,M,C,Kの軸心に対し、1次転写ローラ35Y,M,C,Kの軸心を約2.5[mm]ずつベルト移動方向下流側にずらした位置にするように、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを配設している。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0032】
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0033】
転写ユニット31の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
【0034】
2次転写裏面ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものであり、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0035】
また、ニップ形成ローラ36は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものであり、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0036】
転写バイアス出力手段としての2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33に印加しつつ、ニップ形成ローラ36を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。なお、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、重畳バイアスに切り替える必要がある。
【0037】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0038】
電位センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ38としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。
【0039】
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
【0040】
本プリンタにおいて、標準モードにおけるプロセス線速(感光体や中間転写ベルトの線速)は、約280[mm/s]である。但し、プリント速度よりも高画質化を優先する高画質モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも遅い値に設定されている。また、画質よりもプリント速度を優先する高速モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも速い値に設定されている。標準モード、高画質モード、高速モードの切り替えは、ユーザーの操作パネルに対するキー操作、あるいはパーソナルコンピュータにおけるプリンタプロパティメニューによって行われる。
【0041】
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
【0042】
2次転写バイアス電源39は、先に図2に示した重畳バイアスからなる2次転写バイアスを出力する。本プリンタにおいて、2次転写バイアスの直流成分は、オフセット電圧Voffと同じ値である。2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33に印加し、且つニップ形成ローラ36を接地した本プリンタでは、2次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、重畳バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。
【0043】
次に、本発明者らが行った観測実験について説明する。
本発明者らは、2次転写ニップ内におけるトナーの挙動を観測するために、特殊な観測実験装置を製造した。図5は、その観測実験装置を示す概略構成図である。この観測実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
【0044】
現像装置231は、第1実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
【0045】
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
【0046】
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録用紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録用紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録用紙214上に転写されている。
【0047】
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
【0048】
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
【0049】
透明基板210上におけるトナーの挙動を、次のようにして撮影した。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影した。
【0050】
図5に示した観測実験装置と、第1実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録紙に転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、観測実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録紙214としては、(株)NBSリコー社製のFC和紙タイプ「さざ波」と呼ばれるものを使用した。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。観測実験装置では、記録紙(さざ波)の裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録紙に転写し得る転写バイアスの極性が、第1実施形態に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを1000[Hz]、直流成分(本例ではオフセット電圧Voffに該当)を200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを1000[V]に設定し、記録紙214に対して0.4〜0.5[mg/cm2]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、「さざ波」の表面の凹部上で十分な画像濃度を得ることができた。
【0051】
そのとき、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加した。具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、図6に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図7に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図8に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(観測実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
【0052】
次に、直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当する)を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを800[V]にした条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録紙Pの凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく、凹部内に留まった。次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録紙Pの凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録紙Pの凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。本発明者らは、更なる実験を行ったところ、始めの一周期で、トナー層216から記録紙Pの凹部内に進入させたトナー粒子を、再びトナー層216に引き戻すことができる戻しピーク値Vrの値は、透明基板210上における単位面積あたりのトナー付着量に左右されることがわかった。透明基板210上におけるトナー付着量が多くなるほど、記録紙Pの凹部内のトナー粒子をトナー層216に引き戻すことが可能な戻しピーク値Vrが大きくなるのである。
【0053】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図9は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、転写バイアス出力手段の一部を構成する制御部60は、演算手段たるCPU60a(Central Processing Unit),不揮発性メモリたるRAM60c(Random Access Memory),一時記憶手段たるROM60b(Read Only Memory)、フラッシュメモリ60d等を有している。装置全体の制御を司る制御部60には、様々な機器やセンサが接続されているが、本プリンタの特徴的な構成に関連する機器やセンサだけを示している。
【0054】
電位センサ38は、中間転写ベルト31上に転写された重ね合わせトナー像のトナー像電位Vtonerを測定することができる。制御部60は、電位センサ38によるトナー像電位Vtonerの測定結果をフラッシュメモリ60dに記憶する。
【0055】
環境検知手段としての温湿度センサ85は、プリンタ筺体内の温度及び湿度を検知してその検知結果を制御部60に出力する。制御部60は、温度検知データや湿度検知データに基づいて、様々な処理を行うが、その処理については後述する。
【0056】
1次転写電源81Y,M,C,Kは、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに印加するための1次転写バイアスを出力するものである。また、2次転写電源39は、2次転写裏面ローラ33に印加するための2次転写バイスを出力するものであり、制御部60とともに転写バイアス出力手段を構成している。また、オペレーションパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーボタンによって操作者による入力操作を受け付けたりする。制御部60から送られてくる制御信号に基づいて、タッチパネルに画像を表示することができる。
【0057】
制御部60は、RAM60cやROM60b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各種の機器の駆動を制御したり、各種のデータ処理を行ったりする。データ処理の1つとして、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像データに基づいて、各色トナー像の画像面積率を演算したり、中間転写ベルト31における2次転写ニップに進入する直前の領域の画像面積率したりする。また、演算した画像面積率に基づいて,1次転写電源81Y,M,C,Kからの目標出力値を演算して1次転写電源81Y,M,C,Kに出力したり、画像面積率に基づいて2次転写電源39からの目標出力値とを演算して2次転写電源39に出力したりする。なお、それらの出力目標値は、PWM信号として出力される。また、制御部60は、光書込ユニット80におけるレーザー書き込み信号に基づいて、画像面積率を演算する。
【0058】
2次転写電源39は、2次転写バイアスを定電流制御で出力するものである。具体的には、制御部60から出力される電流目標値と同じ電流を出力する。制御部60は、中間転写ベルト31における周方向の全領域のうち、2次転写ニップに進入する区画、に付着しているトナー量を把握する付着量把握手段として機能している。具体的には、ニップ進入領域における重ね合わせトナー像の画像面積率は、ニップ進入領域に付着している単位面積あたりのトナー量と相関関係にある。よって、ニップ進入領域における重ね合わせトナー像の画像面積率を演算することで、ニップ進入領域に付着している単位面積あたりのトナー量を把握しているのである。そして、2次転写電源39からの電流目標値を、前記画像面積率に応じて変更する。具体的には、中間転写ベルト31の表面は、副走査方向(感光体やベルトの表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、図10に示すように、50画素分ずつの領域毎に理論上の区分けがなされる。そして、その区分けによる各区画(以下、「50ライン区画」という)には、それぞれ主走査方向に一直線上に並ぶ画素の集合からなる画素ラインが50ラインずつ含まれている。それぞれの画素ラインについては、全画素数に対する画像部(重ね合わせトナー像)の画素数の割合が画像面積率として求められる。そして、50個の画素ラインの画像面積率の平均値が、「50ライン区画」における画像面積率として求められる。2次転写電源39の電流目標値については、複数の「50ライン区画」のうち、2次転写ニップを通過中の「50ライン区画」の画像面積率に応じたものに設定される。
【0059】
より詳しくは、中間転写ベルト31の全領域のうち、2次転写ニップに進入する直前の領域であって、ベルト移動方向に50画素の大きさで区切った領域である「50ライン区画」の先端が、2次転写ニップの入口に所定の距離まで近づいたタイミング(以下、算出基準タイミングという)で、制御部60はその「50ライン区画」の画像面積率を算出する。より詳しくは、前記算出基準タイミングに対し、所定の第1時間だけ遡ったタイミングから所定の第2時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってY用の感光体2Yに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のYの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第3時間だけ遡ったタイミングから所定の第4時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってM用の感光体2Mに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のMの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第5時間だけ遡ったタイミングから所定の第6時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってC用の感光体2Cに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のCの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第7時間だけ遡ったタイミングから所定の第8時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってK用の感光体2Kに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のKの画像面積率を算出する。そして、Y,M,C,Kの4つの画像面積率を累積した値を、その「50ライン区画」の画像面積率とする。このようにして画像面積率が求められた「50ライン区画」のベルト移動方向下流側には、次の「50ライン区画」が隣接している。次の「50ライン区画」の画像面積率については、次の「50ライン区画」の先端が、2次転写ニップの入口に所定の距離まで近づいたタイミング、即ち、次の「50ライン区画」についての算出基準タイミングで、画像面積率の算出を開始する。
【0060】
図11は、A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第1例とを示す模式図である。2次転写ニップにおいて、記録紙Pは、図中の矢印の方向に搬送される。第1実施形態に係るプリンタにおいて、中間転写ベルト31の幅方向のサイズは、A3サイズの記録紙Pの短手方向サイズ(297mm)よりも少し大きい。2次転写ニップは、中間転写ベルト31と、ニップ形成ローラ36とが当接している領域であり、ニップ形成ローラ36のローラ部の長さは、中間転写ベルト31の幅よりも大きくなっている。よって、2次転写ニップのベルト幅方向の長さは、中間転写ベルト31の幅と同じであり、これは上述したようにA3サイズの記録紙Pの短手方向サイズよりも少し大きい。但し、第1実施形態に係るプリンタの制御部50は、便宜的に、2次転写ニップのベルト幅方向の長さを、A3サイズの記録紙Pの短手方向サイズと同じであるとみなして、ベルト上の50ライン区画の画像面積率を演算するようになっている。なお、2次転写ニップのベルト移動方向の長さである2次転写ニップ幅は、3[mm]である。
【0061】
同図の記録紙Pには、記録紙搬送方向に延在する短冊状のトナー像が形成されている。その記録紙搬送方向の長さは、220[mm]程度であり、図示のように、記録紙Pの長手方向の概ね半分くらいの領域に渡って延在している。トナー像は、Y,M,C,Kの4色のうち、何れか1色のトナーだけからなるベタ画像である。このトナー像の短手方向の長さは29.7[mm]であり、これは2次転写ニップのベルト幅方向の長さ(便宜上、297mmとみなしている)の1/10の値である。よって、記録紙搬送方向において、このトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は10[%]である。中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、図示のトナー像を担持している領域が2次転写ニップに進入する際には、50ライン区画の画像面積率が10[%]であると制御部60によって算出され、2次転写電源39からの電流目標値が10[%]の画像面積率に応じた値に設定される。
【0062】
図12は、A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第2例とを示す模式図である。同図の記録紙Pには、記録紙搬送方向に延在する短冊状のトナー像が、搬送方向と直交する方向に所定の距離をおいて2つ形成されている。それらトナー像の記録紙搬送方向の長さは、それぞれ220[mm]程度であり、図示のように、互いに記録紙Pの長手方向の同じ領域内に延在している。2つのトナー像は、互いに異なる1色のトナーだけからなるベタ画像である。また、それらトナー像の短手方向の長さはそれぞれ29.7[mm]である。よって、記録紙搬送方向において、それらトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は20[%]である。中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、図示のトナー像を担持している領域が2次転写ニップに進入する際には、50ライン区画の画像面積率が20[%]であると制御部60によって算出され、2次転写電源39からの電流目標値が20[%]の画像面積率に応じた値に設定される。
【0063】
なお、本プリンタにおいて、50ライン区画の画像面積率は、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ個別に算出したものの合計として求められる。よって、例えば、同図の2つのトナー像が、図示のように互いに独立しているものではなく、完全に重ね合わされた2色重ね合わせトナー像であったとしても、その2色重ね合わせトナー像についての50ライン区画の画像面積率は、10[%]ではなく、20[%]となる。
【0064】
図13は、2次転写電源39から出力される2次転写バイアスの電流波形を示す波形図である。同図において、オフセット電流Ioff[A]は、2次転写バイアスの電流の時間平均値を表している。図示のように、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの電流波形は正弦波状の形状をしており、プラス側のピーク値と、マイナス側のピーク値とを具備している。Ippという符号が付されているのは、ピークツウピーク電流であり、これは交流成分の波高と同じ値である。また、Itという符号が付されているのは、2つのピーク値のうち、2次転写ニップ内でトナーを2次転写裏面ローラ33側(ベルト側)からニップ形成ローラ36側(記録紙側)に移動させる方(本例ではマイナス側)のピーク値である(以下、送りピーク値Itという)。また、Irという符号が付されているのは、記録紙Pに転写したトナーを記録紙側からベルト側に戻す方(本例ではプラス側)のピーク値である(以下、戻しピーク値Vrという)。
【0065】
本プリンタにおいては、既に述べたように、中間転写ベルト31の裏面に当接している2次転写裏面ローラ33と、中間転写ベルト31のおもて面に当接して2次転写ニップを形成しているニップ形成ローラ36とのうち、前者に対して2次転写バイアスを印加している。そして、ニップ形成ローラ36を接地している。かかる構成において、同図に示すオフセット電流Ioffの極性が図示のようにマイナス極性であるということは、2次転写裏面ローラ33の平均電位がマイナス極性になることを意味している。このように2次転写裏面ローラ33の平均電位がマイナス極性になることで、マイナス極性のトナーが2次転写ニップ内で2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に移動して、ベルト上のトナーが記録紙P上に転移する。本第1実施形態では、オフセット電流Ioffは、2次転写バイアス電源39から出力される直流成分の電流値と同じである。
【0066】
なお、第1実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写バイアス電源39として、直流成分や交流成分を定電流制御で出力するものを用いているので、直流成分と交流成分とにおいて、図13に示した波形の電流出力が得られる。これに対し、2次転写バイアス電源39として、直流成分や交流成分を定電圧制御で出力するものを用いる場合には、直流成分と交流成分とにおいて、図2に示したような波形の電圧出力が得られる。
【0067】
図14は、2次転写ニップ内において、トナーを記録紙Pの表面上に保持するために必要な電流値であるトナー保持電流Itonerを説明するための模式図である。同図においては、便宜上、中間転写ベルトの図示を省略している。2次転写ニップにおいて、トナーを記録紙Pの表面上に保持するためのトナー保持電流Itonerは、直流成分によって交流される。第1実施形態に係るプリンタでは、オフセット電流Ioffの一部が、トナー保持電流Itonerとして作用する。2次転写ニップに進入するトナー量が多くなるほど、2次転写ニップに進入するトナーの電荷量も多くなるもで、それらトナーを記録紙Pの表面上で保持させるためには、より大きなトナー保持電流Itonerが必要になる。よって、2次転写ニップに進入するトナー量が多くなるほど、オフセット電流Ioffを大きくする必要がある。
【0068】
多量のトナーを2次転写ニップに進入させたとしても、十分なトナー保持電流Itonerを供給できるように、オフセット電流Ioffを比較的大きな値に設定したとする。すると、2次転写ニップに対して少量のトナーしか進入させないときには、2次転写ニップ内においてトナー像に過剰な電流を流してしまうことから、トナー像の周囲にトナーを飛び散らせてしまうトナー散りという現象を発生させてしまう。
【0069】
そこで、制御部60は、50ライン区画のトナー付着量と相関関係にある50ライン区画の画像面積率に応じて、2次転写バイアス電源39の直流成分であるオフセット電流Ioffの目標値を変更する処理を実施するようになっている。これにより、画像面積率にかかわらず、2次転写ニップの出口で適切なトナー保持電流Itonerをトナー像に供給して、トナー像の転写不良や転写チリの発生を抑えることができる。
【0070】
一方、図13に示した戻しピーク値Irは、2次転写ニップに進入する中間転写ベルト31に対する単位面積あたりのトナー付着量によって適正値が異なってくる。トナー付着量が多くなるほど、それらトナーを記録紙表面の凹部内からベルトに向けて戻すことができる戻しピーク値Ir(の絶対値)が大きくなるからである。トナー付着量にかかわらず、2次転写電源39の交流成分の電流目標値、即ちピークツウピーク電流Ippの目標値を一定にすると、トナー付着量の比較的大きなベルト領域を2次転写ニップに進入させたときに、戻しピーク値Irが適正値よりも小さくなって、記録紙表面の凹部内のトナーを十分にベルトに戻すことができなくなって、記録紙表面の凹部上で画像濃度を不足させるおそれがある。2次転写ニップに進入するトナー量が多くなると、トナー層自身の表面電位(例えば、接地された金属上では、トナー層の体積電荷密度ρ×トナー層の厚さd×厚さd/(2×誘電率ε)で表される電位が大きくなり、その分、トナーを往復移動させるために必要な電圧や電流も大きくなるためだと考えられる。
【0071】
一方、記録紙表面の凹部上での画像濃度不足の発生を回避するために、トナー付着量にかかわらず十分な戻しピーク値Irとなるように、ピークツウピーク電流Ippの値を比較的大きく設定すると、トナー付着量の比較的小さなベルト領域が2次転写ニップに進入したときに白点を引き起こし易くなる。具体的には、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間の電位差は、2次転写バイアスが送りピーク値Itになったときに最も大きくなる。このとき、2次転写ニップ内に挟み込まれた記録紙表面の凹部において2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて放電を発生させ易くなる。但し、このとき、ニップ内のトナー量が比較的多い場合には、送りピーク値Itとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に介在することから、前述の放電の発生が抑えられる。しかし、トナー量が比較的少ない場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に少量しか存在しないことから、前述の放電が発生してしまう。すると、その放電によって逆帯電したトナー粒子が記録紙表面の凹部内に全く転移しなくなって、凹部上の画像箇所に多数の白点を発生させてしまう。特に、本プリンタのように、中間転写ベルト31として、平滑性、耐延び性などの観点から、ポリイミド製のものを用いるものにおいては、ベルト表面を2次転写ニップ内で記録紙の表面の凹凸に追従させて柔軟に変形させることができないことから、ベルト表面と記録紙表面の凹部との間に空隙を形成し易いので、放電(白点)を発生させ易くなる。具体的には、トナー付着量の比較的大きなベルト領域を2次転写ニップに進入させたときに、戻しピーク値Irが適正値よりも小さくなって、記録紙表面の凹部内のトナーを十分にベルトに戻すことができなくなって、記録紙表面の凹部上で画像濃度を不足させるおそれがある。また、かかる画像濃度不足の発生を回避するために、トナー付着量にかかわらず十分な戻しピーク値Irとなるように、ピークツウピーク電流Ippの値を比較的大きく設定すると、トナー付着量の比較的小さなベルト領域が2次転写ニップに進入したときに白点を引き起こし易くなる。具体的には、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間の電位差は、2次転写バイアスが送りピーク値Itになったときに最も大きくなる。このとき、2次転写ニップ内に挟み込まれた記録紙表面の凹部において2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて放電を発生させ易くなる。但し、このとき、ニップ内のトナー量が比較的多い場合には、送りピーク値Itとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に介在することから、前述の放電の発生が抑えられる。しかし、トナー量が比較的少ない場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に少量しか存在しないことから、前述の放電が発生してしまう。すると、その放電によって逆帯電したトナー粒子が記録紙表面の凹部内に全く転移しなくなって、凹部上の画像箇所に複数の白点を発生させてしまうのである。
【0072】
図15は、2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itが不適切に大きいことに起因して、記録紙表面の凹部上で多数の白点を発生させてしまった画像を拡大して示す写真画像である。記録紙表面の凹部上で多数の白点を発生させてしまったことから、記録紙表面の凹部上に位置する画像箇所の大部分が、白く抜けたようになっている。
【0073】
図16は、2次転写ニップに進入するトナー量に対して戻しピーク値Irが不適切に小さいことに起因して、記録紙表面の凹部上の画像箇所に画像濃度不足を引き起こしてしまった画像を拡大して示す写真画像である。記録紙表面の凹部の上に位置する画像箇所の濃度が、凸部の上に位置する画像箇所の濃度よりも薄くなっていることがわかる。
【0074】
図17は、2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itも戻しピーク値Irも適切であったために、凹部に対応する画像箇所に白点も画像濃度不足も発生させていない良好な画像を拡大して示す写真画像である。送りピーク値It、戻しピーク値Irを何れもトナー量に見合った値にすることで、紙表面の凹部上で白点も画像濃度不足も発生させない図示のような良好なベタ画像を得ることができる。なお、図15〜図17に示した画像は、何れも1辺が約2.5cm四方の大きさであり、特殊製紙株式会社製の商品名レザック66(260kg紙)と呼ばれる和紙タイプの紙に出力されたものである。
【0075】
そこで、制御部60は、中間転写ベルト31における2次転写ニップに進入する50ライン区画の画像面積率に応じて、2次転写バイアス電源39の交流成分の電流目標値(Ippの目標値)を変更する処理を実施するようになっている。これにより、画像面積率にかかわらず、適切な値の戻しピーク値Irをトナー像に供給してトナー像中のトナーを確実にベルトと紙表面凹部との間で往復移動させるとともに、適切な値の送りピーク値Itをトナー像に供給して白点の発生を抑えることができる。
【0076】
図18は、2次転写バイアスの交流成分の電流目標値(Ippの目標値)を変更するタイミングと、直流成分の電流目標値(Ioffの目標値)を変更するタイミングとを説明するための説明図である。制御部60は、ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングと、オフセット電流Ioffの目標値を変更するタイミングとを異ならせている。具体的には、ピークツウピーク電流の目標値については、中間転写ベルト31の50ライン区画の先端が2次転写ニップの入口に進入するタイミングで変更する。これに対し、オフセット電流Ioffの目標値については、中間転写ベルト31の50ライン区画の先端が2次転写ニップの出口に進入するタイミングで変更する。
【0077】
本プリンタは、600[dpi]の解像度で画像を形成するようになっているため、1画素の径は約42.3[μm]であり、50ライン区画のベルト移動方向の長さは約2.12[mm]である。また、標準モードのプロセス線速は既に述べたように280[mm/s]である。よって、標準モードでは、ピークツウピーク電流Ippの目標値、オフセット電流Ioffの目標値を、それぞれ、約7.6[ms]の時間間隔で変更している。但し、それぞれの変更のタイミングにはタイムラグがある。中間転写ベルト31におけるある特定の50ライン区画に着目すると、その50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入したときに、ピークツウピーク電流Ippの目標値がその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更される。ニップ幅dは、50ライン区画のベルト移動方向の長さLよりも大きな値に設定されているので、このとき、オフセット電流Ioffの目標値はまだ変更されない。50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入してから、50ライン区画の先端が2次転写ニップの出口を通過するまでの移動距離は、0.88[mm]であり(3−2.12)、その移動に要する時間は3.1[ms]である(0.88/280*1000)。よって、ピークツウピーク電流Ippの目標値が変更された後、約3.1[ms]経過した後に、オフセット電流Ioffの目標値が前述の50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更される。
【0078】
ニップ幅(2次転写ニップのベルト移動方向の長さ)dを50ライン区画の長さLよりも大きくし、且つ、中間転写ベルト31の50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入するタミングで、ピークツウピーク電流Ippの目標値をその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更するのは、次に説明する理由による。即ち、本来であれば、中間転写ベルト31の移動に伴う2次転写ニップ内のトナー量の変化については、できるだけ細かい時間間隔で把握することが望ましい。中間転写ベルト31が僅かに1画素分移動しただけでも、2次転写ニップ内のトナー量が大きく変化することがあるので、理想的には、ベルトが1画素移動する毎に、2次転写ニップ内のトナー量を新たに把握し直すことが望ましいからである。しかしながら、そのようにするためには、制御部60として、CPU速度の極めて速いものを用いる必要があり、一般的な画像形成装置の制御部60としては現実的ではない。そこで、本プリンタにおいては、一般的な画像形成装置に搭載される制御部60の処理速度に鑑みて、中間転写ベルト31が50ライン区画移動する毎に、2次転写ニップ内のトナー量の変化を把握するようにしている。
【0079】
画像面積率の算出対象となった50ライン区画が2次転写ニップ内に存在しているときには、その50ライン区画に応じたIppをかけ続けるのが理想的である。しかし、50ライン区画の長さは約2.12[mm]であるのに対し、ニップ幅は約3[mm]であるので、2次転写ニップ内においては、先行する50ライン区画の後端側と、後続の50ライン区画の先端側とを進入させているときがある。このとき、どちらに対応する目標値にするのかが問題となる。2次転写バイアスの交流成分であるピークツウピーク電流Ippは、上述したように、2次転写ニップ内でトナーをベルトと紙との間で複数回に渡って往復移動させるためのものである。トナーが2次転写ニップ内で1往復する毎に、紙表面の凹部内に転移するトナー量を増加させていくという上述したトナーの挙動から、交流成分の効果を十分に得るためには、2次転写ニップ内において、有効な交流成分(Ipp)を50ライン区画内の全てのトナーに対して2往復以上作用させる必要がある。ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングとして、50ライン区画の先端を2次転写ニップの入口に進入させたタイミングを採用したとする。すると、場合によっては、50ライン区画の後端に対しては、交番電界を1回しか作用させることができず、前述の効果を得ることができなくなるおそれがある。一方、ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングとして、50ライン区画の後端を2次転写ニップの入口に進入させたタイミングを採用したとする。このとき、50ライン区画の先端はまだ2次転写ニップ内に存在している。その先端を2次転写ニップの出口に到達させるまでの間に、その先端のトナーを2往復以上させることができれば、先端のみならず、先端から後端までの全ての領域においてトナーを2往復以上させることになる。そこで、本プリンタにおいては、ニップ幅dを50ライン区画の長さLよりも大きくし、且つ、中間転写ベルト31の50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入するタミングで、ピークツウピーク電流Ippの目標値をその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更するようになっている。
【0080】
一方、中間転写ベルト31の50ライン区画の先端が2次転写ニップの出口に進入するタイミングで、オフセット電流Ioffの目標値をその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更するようにしたのは、次に説明する理由による。即ち、2次転写ニップの入口でトナー像に対して十分なオフセット電流Ioffを供給したとしても、2次転写ニップの出口でオフセット電流Ioffを不足させると、結果として、転写不良を引き起こしてしまう。換言すれば、2次転写ニップの出口で十分なオフセット電流Ioffを供給すれば、トナー像を記録紙Pに良好に転写することができる。よって、前述のタイミングでオフセット電流Ioffの目標値を変更するのである。
【0081】
50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入してIppの目標値が変更されたとき、50ライン区画の先端は、まだ2次転写ニップ内に位置している。2次転写バイアスの周波数をf[Hz]、ニップ幅をd[mm]、プロセス線速をv[mm/s]、50ライン区画のベルト移動方向の長さをL[mm]で示すと、50ライン区画の先端が前記タイミングから2次転写ニップの出口に至るまでに要する時間は「(d−L)/v」で表される。この時間内において、トナーを2往復以上させる必要がある。そのためには、「f×(d−L)/v)≧2」という条件を具備させる必要がある。この式を変形すると、周波数fは、「2/(d−L)/v)」と同等以上である必要があることになる。そこで、本プリンタでは、2次転写バイアスの交流成分として、周波数fが「f≧2/(d−L)/v)」という条件を具備するものを出力するように、2次転写バイアス電源39を構成している。より詳しくは、標準モードでは、交流成分の周波数fを1000[Hz]に設定している。標準モードでは、d=3[mm]、v=280[mm/s]、L=2.12[mm]であるので、(d−L)/v)は、約3.1[ms]であり、この間の交流成分の振動数は、(f×(d−L)/v)より、約3.1回と求めることができる。
【0082】
本発明者らは、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、次のような第1プリントテストを行った。即ち、出力画像としては、記録紙Pの全面において、50ライン区画の画像面積率が50[%]になるもの、100[%]になるもの、及び200[%]になるもの、の3種類を採用した。また、記録紙Pとしては、特殊製紙株式会社製の商品名レザック66(260kg紙)を用いた。2次転写バイアスの条件としては、次の4通りを採用した。
【0083】
即ち、4通りのうちの1つは、第1実施形態に係るプリンタと同様に、オフセット電流Ioffとピークツウピーク電流Ippとをそれぞれ50ライン区画の画像面積率に応じて変更するという条件である。オフセット電流Ioffについては、50ライン区画の画像面積率に応じて図19のグラフに示すような関係で変化させるようにした。また、ピークツウピーク電流Ippについては、50ライン区画の画像面積率に応じて図20のグラフに示すような関係で変化させるようにした。
【0084】
4通りのうちの他の1つ(比較例1)は、オフセット電流Ioffを画像面積率にかかわらず−14[μA]で定電流制御し、且つ、ピークツウピーク電流Ippを画像面積率にかかわらず1.5[mA]で定電流制御する条件である。また、4通りのうちの他の1つ(比較例2)は、オフセット電流Ioffを画像面積率にかかわらず−18[μA]で定電流制御し、且つ、ピークツウピーク電流Ippを画像面積率にかかわらず1.5[mA]で定電流制御する条件である。また、4通りのうちの残りの1つ(比較例3)は、オフセット電流Ioffを画像面積率にかかわらず−36[μA]で定電流制御し、且つ、ピークツウピーク電流Ippを画像面積率にかかわらず2.7[mA]で定電流制御する条件である。
【0085】
それぞれの条件で出力した画像を、肉眼で観察して、紙表面の凹部上の画像箇所における白点や画像濃度不足のランクを評価した。この結果を次の表1に示す。なお、表1において、○という結果は、白点も画像濃度不足も殆ど認められなかったことを示している。また、△という結果は、許容レベルを僅かに超える白点あるいは画像濃度不足が発生したことを示している。また、×という結果は、著しい白点あるいは画像濃度不足が発生したことを示している。
【表1】
【0086】
第1実施形態に係るプリンタでは、画像面積率にかかわらず、白点及び画像濃度不足(凹部上)も何れも良好に抑えていることがわかる。これに対し、比較例1においては、画像面積率50[%]の画像で良好な結果が得られているものの、画像面積率100[%]の画像では紙表面の凹部上で許容レベルを超える画像濃度不足が発生している。しかも、画像面積率200[%]の画像では、著しい画像濃度不足(凹部上)が発生してしまう。また、比較例2においては、画像面積率100[%]の画像で良好な結果が得られているものの、画像面積率50[%]の画像では許容レベルを超える白点が発生する。また、画像面積率200[%]の画像では著しい画像濃度不足(凹部上)が発生してしまう。また、比較例3においては、画像面積率200[%]の画像で良好な結果が得られているものの、画像面積率100[%]の画像や画像面積率200[%]の画像では、著しい白点が発生してしまう。
【0087】
なお、上述したように、本プリンタは、標準モードにおいて280[mm/s]のプロセス線速を採用しているが、高画質モードでは標準モードよりもプロセス線速を遅くする。また、高速モードでは、標準モードよりもプロセス線速を速くする。プロセス線速が変わると、単位時間当たりに2次転写ニップに供給されるトナーの量や、2次転写ニップ内でトナー像に供給される電流量などが変化する。プロセス線速が変化すると、適切な出力目標値(Ioffの目標値)が変化する。プロセス線速が遅くなるほど、オフセット電流Ioffの出力目標値の絶対値を小さくする必要がある。定電圧制御を行う場合も同様に、プロセス線速が遅くなるほど、オフセット電圧Voffの絶対値を小さくする必要があるが、この場合、ピークツウピーク電圧Vppも同様に、線速の低下に応じて絶対値を小さくすることが望ましい。
【0088】
また、単位質量あたりのトナーの帯電量(Q/M)が変化すると、トナー像に対する単位面積当たりのトナー付着量が同じであっても、そのトナー像の帯電量は異なってくる。すると、トナー付着量が同じであっても、2次転写ニップ内におけるトナーの電位が行ってくることから、記録紙表面の凸部における転写チリ及び画像濃度不足の発生を抑え得る適切なオフセット電流Ioffの値や、記録紙表面の凹部における白点及び画像濃度不足の発生を抑え得る適切なピークツウピーク電流Ippの値が異なってくる。トナー像の電位(絶対値)が大きくなるほど、IoffやIppの適正値(絶対値)も大きくなる。このことは、定電圧制御を採用する場合におけるオフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧についても、同様のことが言える。
【0089】
そこで、第1実施形態に係るプリンタの制御部60は、オフセット電流Ioffやピークツウピーク電流の目標値を、50ライン区画の画像面積率(トナー付着量)に応じて変更することに加えて、プロセス線速やトナー像の電位にも応じて変更する処理を実施するようになっている。トナー像の電位については、上述した電位センサ38による検知結果によって把握する。各種のプロセス線速やトナー像の電位についてそれぞれ、図19や図20に示したグラフを表す関数式(あるいはデータテーブル)を専用に記憶させてもよいが、かかる構成ではデータ記憶量が非常に大きくなってしまう。そこで、第1実施形態では、50ライン区画の画像面積率に応じた目標値を関数式によって求めた後、その結果をプロセス線速及びトナー像の電位に基づいて補正するようになっている。補正のための補正式は、予めの実験によって求めておき、制御部60に記憶させておく。
【0090】
なお、第1実施形態では、トナー付着量の把握対象とするベルト領域を、50ライン区画ずつに区切っているが、区切る大きさは50ライオンに限定されるものではない。また、交流成分として、正弦波のものに代えて、矩形波、三角波、台形状波形など、種々の波形のものを採用してもよい。
【0091】
次に、第2実施形態に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、第2実施形態に係るプリンタの構成は、第1実施形態と同様である。
第1実施形態に係るプリンタの制御部60は、2次転写バイアスの直流成分や交流成分をそれぞれ定電圧制御するようになっている。直流成分の電圧目標値(オフセット電圧Voff(図2参照)の目標値)や、交流成分の電圧目標値(ピークツウピーク電圧Vppの目標値)については、第1実施形態と同様に、50ライン区画の画像面積率に応じて変更する。
【0092】
図21は、第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電圧Voffとの関係を示すグラフである。また、図22は、第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電圧Vppとの関係を示すグラフである。本発明者らは、このような関係でオフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを変化させる点の他は、先の第1プリントテストと同様の条件にした第2プリントテストを行った。この結果を次の表2に示す。
【表2】
【0093】
第2実施形態に係るプリンタでは、画像面積率にかかわらず、白点及び画像濃度不足(凹部上)も何れも良好に抑えていることがわかる。つまり、2次転写バイアスの直流成分や交流成分の出力を定電流制御する代わりに、定電圧制御する場合であっても、出力目標値を画像面積率に応じて変更することで、画像面積率にかかわらず、白点及び画像濃度不足(凹部上)も何れも良好に抑え得ること立証された。これに対し、比較例4、5、6に示すように、出力目標値を変更せずに画像面積率にかかわらず一定にすると、白点や画像濃度不足(凹部上)を発生させてしまうことがわかる。
【0094】
しかしながら、直流成分の出力を定電圧制御する構成では、記録紙Pとして、電気抵抗や厚さの異なるものを用いると、直流成分として同じ電圧を出力していても、2次転写電流の値が異なってくることから、良好な結果が得られなくなってしまう。記録紙Pによっては、記録紙表面の凸部で転写チリや画像濃度不足が発生してしまうのである。例えば、記録紙Pたる特殊製紙株式会社製の商品名レザック66として、260kg紙の代わりに、175kg紙を用いて第2プリントテストと同様のテストを行ったところ、画像面積率に応じて直流成分の電圧の出力目標値を変更しても、記録紙表面の凸部上で、転写チリや画像濃度不足(凸部上)を発生させることがあった。一方、175kg紙であっても、直流成分を定電流制御する構成では(紙が異なる点の他は第1テストプリントと同じ)、記録紙表面の凸部上で転写チリや画像濃度不足(凸部上)を発生させることはなかった。よって、直流成分の出力を定電流制御する構成の方が、定電圧制御する構成よりも優れていると言える。
【0095】
また、同じ記録紙Pであっても、その電気抵抗は、温湿度によって変化するため、記録紙Pの種類だけを参照しただけでは、その記録紙Pの電気抵抗を正確に把握することはできない。よって、記録紙Pの種類だけを参照しただけでは、その記録紙Pに適した直流成分の電圧出力(Voff)の適正値を把握することはできない。より詳しくは、記録紙Pの電気抵抗が環境変動に伴って小さくなるほど、直流成分の電圧出力の適正値が小さくなる。なお、交流成分の電圧出力(Vpp)については、特に周波数が数百ヘルツ以上の場合には、時定数の関係上、記録紙Pの電気抵抗や温湿度によらず、適正値はほぼ一定となる。
【0096】
また、第1実施形態で述べたように、オフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧の適正値は、プロセス線速やトナー像の電位によっても変化する。
【0097】
そこで、第2実施形態に係るプリンタにおいては、記録紙Pの電気抵抗及び厚みに関する情報を取得する情報取得手段を設けている。より詳しくは、情報取得手段として、操作パネル50と制御部60との組合せを採用している。制御部50は、予め、複数の紙種の情報を一覧形式で記憶している。そして、ユーザーの操作に基づいて、それらの紙種を操作パネル50に一覧形式で表示させ、ユーザーに対して、どの紙種を使用するのかを選択してもらう処理を実施する。これにより、ユーザーの使用する紙種を特定して、その紙の電気抵抗及び厚みの情報を取得することができる。
【0098】
制御部60は、50ライン区画の画像面積率だけでなく、操作パネル50に対するユーザーの操作によって取得した紙種情報、温湿度センサ85による検知結果、プロセス線速、及びトナー像の電位にも基づいて、オフセット電圧Voffを変更する処理を実施するようになっている。また、50ライン区画の画像面積率だけでなく、プロセス線速、及びトナー像の電位にも基づいて、ピークツウピーク電圧Vppを変更する処理を実施するようになっている。
【0099】
50ライン区画の画像面積率と、オフセット電圧Voffの目標値との関係を示す関数式(又はデータテーブル)については、紙種毎に固有のものをそれぞれ制御部60に記憶させている。例えば、商品名レザック66の175kg紙については、図23や図24に示すような出力目標値と画像面積率との関係式を記憶させている。そして、画像面積率と紙種とに応じて特定させたオフセット電圧Voffの目標値を、温湿度の検知結果、プロセス線速、及びトナー像の電位に応じて補正させるようにしている。
【0100】
なお、第1実施形態や第2実施形態において、交流成分と直流成分との両方についてそれぞれ出力目標値を50ライン区画の画像面積率に応じて変更する例について説明したが、交流成分だけを変更するようにしてもよい。本発明者らの実験によれば、図25に示すように、直流成分の出力目標値(VoffやIoffの目標値)については、二色からなる全面ベタ画像を転写する際に必要となる値か、それよりもやや低めの値に一律に設定しておき、交流成分の出力目標値(VppやIppの目標値)だけを、画像面積率に応じて変更する構成でも、効果が得られた。
【0101】
次に、第1実施形態あるいは第2実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に説明しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、第1実施形態や第2実施形態と同様である。
[第1実施例]
第1実施例に係るプリンタの構成は、基本的には第1実施形態あるいは第2実施形態と同様である。第1実施形態あるいは第2実施形態と異なる点は、制御部60が、プロセス線速に応じて、2次転写バイアスの交流成分の周波数fを変更するための制御信号を、2次転写バイアス電源39に出力する処理を実施する点である。具体的には、プロセス線速が変更されたことで、上述した「f≧2/(d/v)」という条件を具備しなくなるときには、具備する値に周波数fを補正するための制御信号を出力する。2次転写バイアス電源39は、制御部60からの制御信号に従って、交流成分の周波数fを補正する。
【0102】
かかる構成では、プロセス線速を変更しても、線速にかかわらず、「f≧2/(d/v)」という条件を具備させて、2次転写ニップ内でトナーを確実に所望の回数だけベルトと紙凹部との間で往復移動させることができる。
【0103】
[第2実施例]
第2実施例に係るプリンタは、第2実施形態に係るプリンタと同様に、操作パネル50に対するユーザーの操作により、紙種情報を取得する。また、2次転写バイアスについては、定電流制御あるいは定電圧制御で2次転写バイアス電源39から出力する。
【0104】
第1実施形態あるいは第2実施形態に係るプリンタと異なる点は、取得した紙種情報に基づいて、紙表面の凹凸の度合いを把握し、凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種(例えば普通紙)である場合には、2次転写バイアスとして、重畳バイアスからなるもの出力する代わりに、直流成分だけからなるものを出力する。凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種の場合には、凹部上での白点や画像濃度不足が発生しないからである。かかる構成では、凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種が用いられる場合、即ち、紙表面の凹部上での白点や画像濃度不足を発生させるおそれがない場合には、直流成分だけからなる2次転写バイアスを採用して電力消費を抑えることができる。
【0105】
なお、直流成分については、出力目標値(Ioff又はVoffの目標値)を50ライン区画の画像面積率に応じて変更するようになっている。これにより、画像面積率にかかわらず、転写チリや画像濃度不足の発生を抑えることができる。
【0106】
[第3実施例]
第3実施例に係るプリンタでは、操作パネル50に対する操作によって取得した紙種情報に基づいて、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードにするか否かを決定するのではなく、ユーザーの操作に基づいて決定するようになっている。ユーザーが、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードにするか否かを設定するのである。
【0107】
かかる構成において、ユーザーは、凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種を用いる場合には、操作パネル50に対する操作によって前述のモードに設定することで、直流成分だけからなる2次転写バイアスを採用して電力消費を抑えることができる。
【0108】
[第4実施例]
本発明者らは実験により、紙表面の凹部の深さに応じて、2次転写ニップ内において、ベルトと紙表面の凹部との間でトナーを確実に往復移動させ得るIppやVppの値が、紙表面の凹部の深さに応じて異なってしまうことを見出した。具体的には、凹部の深さが大きくなるほど、トナーを往復移動させるのに必要なIppやVppの値が大きくなるのである。
【0109】
そこで、第4実施例に係るプリンタにおいては、操作パネル50に対するユーザーの操作によって取得した紙種の凹部の深さに応じて、適切なIppやVppを設定することができるように、紙種毎に、画像面積率とIpp又はVppの目標値との関係を示す関数式を変更するようになっている。かかる構成では、記録紙Pの表面の凹部深さにかかわらず、凹部上での白点の発生と画像濃度不足の発生とを抑えることができる。
【0110】
[第5実施例]
図26は、第1実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源39の内部構成を、2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。なお、同図においては、便宜上、記録紙や中間転写ベルトの図示を省略している。第1実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源39においては、交流成分を出力するための交流電源回路と、直流成分を出力するための直流電源回路とが直列に接続され、それらの出力が、負荷となる2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36とに接続されている。2次転写バイアス電源39を駆動する電源24VとGNDが、図示していないインタロックスイッチを介して、制御部60から供給される。さらに起動信号のACおよびDCが接続されている。交流電源回路と直流電源回路とには、異常検知手段が接続され、電源出力の異常検知信号SCを制御部60に出力している。この構成により負荷には、直流重畳された交流電圧が印加される。
【0111】
図27は、第5実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。この図では、2次転写バイアス電源39の動作に使われる電源入力や、異常検知の図示を省略している。交流成分を出力する回路が、交流駆動、交流高圧トランス、交流出力検出、及び交流制御部によって構成されている。また、直流成分を出力する回路が、直流駆動、直流高圧トランス、直流出力検出、及び直流制御部によって構成されている。制御部60から交流電圧の周波数を設定する信号CLKが供給され、交流出力の電流または電圧を設定する信号AC_PWMや、交流出力をモニターする信号AC_FB_Iが制御部60に接続されている。直流成分の回路にも、重畳される直流出力の電流または電圧を設定する信号DC_PWMと、直流出力をモニターする信号DC_FB_Iとが接続されている。交流および直流の制御に関しては、制御部60からの指令に基づき、それぞれの出力検出ブロックからの検出信号が所定値となるように、交流駆動または直流駆動を介して各高圧トランスの駆動を制御する信号を出力している。
【0112】
交流制御では交流出力の電流および電圧を制御しており、定電流制御又は定電圧制御のどちらも可能になるように交流出力検出で出力電流および出力電圧も両方を検出している。これは直流制御でも同様である。交流、直流ともに、通常は定電流制御を行うように電流検出値を優先して制御するようにしている。出力電圧の検出値は上限電圧の抑制のために使っており、無負荷状態などでの最高電圧を制御する構成としている。また、制御部60では交流および直流の各出力検出ブロックからのモニター信号を、負荷状態の監視のための情報として入力している。交流電圧の周波数を制御部60からの信号CLKで設定しているが、交流電圧を出力する回路の内部で固定の周波数を生成してもよい。
【0113】
かかる構成においては、ユーザーの命令により、定電流制御と定電圧制御とを切り替えて実施することができる。また、直流電圧を出力する回路と、交流電圧を出力する回路とのうち、後者の出力を停止することで、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードと、直流成分及び交流成分からなる2次転写バイアスを出力するモードとを切り替えることができる。
【0114】
図28は、第6実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。この例では、直流成分だけを出力する第1電源回路39aと、直流成分及び交流成分を出力する第2電源回路39bとを具備している。これにより、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードと、直流成分及び交流成分からなる2次転写バイアスを出力するモードとを切り替えることができる。第1電源回路39aは、従来のプリンタには必ず備わっているものであるので、従来の第1電源回路39aに、第2電源回路39bを追加するだけで、従来のプリンタの2次転写バイアス出力手段を、本発明に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段に改良することが可能である。
【0115】
[第7実施例]
図29は、第7実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。図27の2次転写バイアス出力手段と同じ機能を実現することができる。更に、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力する場合には、従来の電源だけを利用する一方で、直流成分及び交流成分からなる2次転写バイアスを出力する場合には、新設の電源だけを利用することで、両者のモードを切り替えることができる。2次転写裏面ローラ33に印加する電圧をリレー1およびリレー2を使って切り替える構成である。第1電源39aで交流直流重畳電圧を生成し、第2電源39bで従来の直流成分のみの電圧を生成している。リレーを使った出力電圧の切り替えは、制御部60から出力される制御信号RY_DRIVによって行われる。
【0116】
なお、切り替え手段として、リレー1とリレー2の有接点の切り替え素子を使った例を示しているが、他の例えばFETなどの半導体のスイッチング素子を用いても、同様の機能を提供することができる。図示の例では、第1電源39aと第2電源39bとが独立した回路構成となっているため、第1電源39aだけをオプションとして後付けすることが可能になる。
【0117】
[第8実施例]
図30は、第8実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。この例では、直流成分のみよる2次転写バイアスと、交流直流重畳電圧からなる2次転写バイアスとを、リレー1だけで切り替えるようになっている。リレー1の接点を閉じて第1電源39aから交流直流重畳電圧を出力する場合に、並列に接続された第2電源39bにも電圧が印加される。これにより、第2電源39bが第1電源39aの負荷となるが、第2電源39bへの電流供給による悪影響が少ない場合には、この例を採用することで回路の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0118】
図31は、第9実施例に係るプリンタの2次転写バイス電源を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。上半部の交流電圧回路と、下半部の直流電圧回路とは、ともに定電流制御を行うものである。交流電圧は、高圧トランスの出力に近似した低電圧を巻線N3_ACで取出し電圧制御で基準信号Vref_AC_Vと比較している。交流電流は直流電圧回路の出力と並列に接続した交流成分をバイアスするコンデンサC_AC_BPと、接地間に設けた交流電圧検出器で取出し電流制御で基準信号Vref_AC_Iとを比較している。この基準信号Vref_AC_Iのレベルは、交流出力電流の設定信号AC_PWMに応じて設定される。この電圧制御の出力は、出力電圧が所定以上に上がった時(例えば無負荷など)に有効になるように基準信号Vref_AC_Vのレベルを設定してある。一方、電流制御の出力は、通常の負荷で有効になるように基準信号Vref_AC_Iのレベルが設定してあり、負荷の状態(2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36の材質など)に応じて高圧出力電流を切替えられる構成としている。これら電圧/電流制御の出力は交流駆動部に入力し、そのレベルに応じて高圧トランスをドライブする。直流電圧発生手段でも、同様に出力電圧/電流の両方を検出している。電圧は高圧トランスの出力巻線N2_DCに設けた整流平滑回路と並列接続した直流電圧検出器で取出している。電流は出力巻線と接地間に直流電流検出器を接続し取出している。電圧/電流の各検出信号は交流場合と同じく重み付けされた基準信号Vref_DC_VとVref_DC_Iと比較され、高圧出力の直流成分を制御している。
【0119】
次に、第1実施形態あるいは第2実施形態の各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様である。
[第1変形例]
図32は、第1変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、各色の感光体上のトナー像を直接記録用紙に転写する直接転写タンデム方式のカラープリンタである。この直接転写方式のカラープリンタは、記録用紙が給紙ローラ101により搬送ベルト121へ送られ、各色の感光体ドラムから記録紙へ各色トナー像が順次直接転写された後、各色トナー像が定着装置90によって定着される。各色の1次転写ローラ25Y,M,C,Kに印加する1次転写バイアスとして、交流直流重畳電圧を採用している。これにより、凹凸の大きな和紙タイプの紙であっても、凹部に対してトナーを良好に1次転写することができる。1次転写バイアスの直流成分や交流成分の出力目標値については、感光体上の50ライン区画の画像面積率に応じて変更する。
【0120】
[第2変形例]
図33は、第2変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、ニップ形成部材として、中間転写ベルトの代わりに、無端状の紙搬送ベルト121を各色の感光体2Y,M,C,Bkに当接させている点が、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタと異なっている。紙搬送ベルト121は、その表面に保持した記録紙を、自らの無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の1次転写ニップに順次通していく。この過程で、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が、記録紙の表面に重ね合わせて転写されていく。
【0121】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kの表面において、レーザー光Lの照射によって形成された静電潜像の電位を検知する電位センサ9Y,M,C,Kが設けられている。これら電位センサ9Y,M,C,Kは、TDK株式会社製の表面電位センサ(EFS−22D)からなり、感光体2Y,M,C,Kの表面に対して約4[mm]の間隙をもって対向するように配設されている。
【0122】
紙搬送ベルト121のループ内側では、Y,M,C,K用の1次転写ローラ25Y,M,C,Kが紙搬送ベルト121の裏面に当接して、紙搬送ベルト121を感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧している。第2実施形態に係るプリンタにおいては、Y,M,C,Kの各色において、感光体2Y,M,C,Kを一様帯電せしめる帯電装置(6Y,M,C,K)と、一様帯電後の表面に光書込を行う図示しない光書込ユニットと、1次転写ローラ(25Y,M,C,K)とにより、感光体の静電潜像と、押圧部材たる1次転写ローラの芯金との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を生じせしめる電位差発生手段が構成されている。
【0123】
なお、紙搬送ベルト121を感光体2Y,M,C,Kに当接させる代わりに、1次転写ローラ25Y,M,C,Kを感光体2Y,M,C,Kに直接当接させて、Y,M,C,K用の1次転写ニップを形成してもよい。この場合、1次転写ローラ25Y,M,C,Kをニップ形成部材として機能させることになる。
【0124】
2次転写バイアス電源39や制御部は、第1実施形態や第2実施形態と同様にして、直流成分や交流成分の出力目標値を、中間転写ベルト31の50ライン区画の画像面積率に応じて変更する。
【0125】
これまで、像担持体である中間転写ベルト31とニップ形成部材であるニップ形成ローラ36との当接による2次転写ニップにおいて、本発明を適用した例について説明したが、次のような1次転写ニップにおいて、本発明を適用することも可能である。即ち、像担持体たる無端ベルト状の感光体の裏面に裏面当接部材を当接させて、無端ベルト状の感光体をニップ形成部材に向けて押圧して、感光体とニップ形成部材とを当接させることで形成した1次転写ニップである。
【0126】
本発明を電子写真方式のプリンタに適用した例について説明したが、直接記録方式によってカラー画像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。この直接記録方式とは、潜像担持体によらず、トナー飛翔装置からドット状に飛翔させたトナー群を記録体や中間記録体に直接付着させて画素像を形成することで、記録紙や中間記録体に対してトナー像を直接形成する方式である。特開2002−307737号公報に記載の画像形成装置などに採用されている。像担持体たる中間記録体から記録紙にトナー像を転写するための転写ニップにおいては、本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1Y,M,C,K:画像形成ユニット(トナー像形成手段の一部)
2Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
30:転写ユニット(トナー像形成手段の一部)
31:中間転写ベルト(像担持体)
33:2次転写裏面ローラ(裏面当接部材)
36:ニップ形成ローラ(ニップ形成部材)
38:電位センサ(電位検知手段)
39:2次転写バイアス電源(転写バイアス出力手段の一部)
50:操作パネル(情報取得手段)
60:制御部(転写バイアス出力手段の一部、付着量把握手段)
80:光書込ユニット(トナー像形成手段の一部)
85:温湿度センサ(環境検知手段)
P:記録紙(記録材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】特開2006−267486号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップにおいて、ニップ内に挟み込んだ記録材に対して像担持体の表面上のトナー像を転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより、ドラム状の感光体の表面にトナー像を形成する。感光体には、像担持体としての無端状の中間転写ベルトを当接させて1次転写ニップを形成している。そして、1次転写ニップにおいて、感光体上のトナー像を中間転写ベルトに1次転写する。中間転写ベルトに対しては、ニップ形成部材としての2次転写ローラを当接させて2次転写ニップを形成している。また、中間転写ベルトのループ内には、2次転写対向ローラを配設しており、この2次転写対向ローラと、前述した2次転写ローラとの間に中間転写ベルトを挟み込んでいる。ループ内側の2次転写対向ローラに対してはアースを接続しているのに対し、ループ外の2次転写ローラに対しては2次転写バイアスを印加している。これにより、2次転写対向ローラと2次転写ローラとの間に、トナー像を前者側から後者側に静電移動させる2次転写電界を形成している。そして、中間転写ベルト上のトナー像に同期させるタイミングで2次転写ニップ内に送り込んだ記録紙に対して、2次転写電界やニップ圧の作用により、中間転写ベルト上のトナー像を2次転写する。
【0003】
かかる構成において、記録紙として、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを画像中に発生させ易くなる。この濃淡パターンは、紙表面における凹部に対して十分量のトナーが転写されずに、凹部の画像濃度が凸部よりも薄くなることによって生じるものである。そこで、特許文献1に記載の画像形成装置においては、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものではなく、交流電圧に対して直流電圧を重畳した重畳バイアスを印加するようになっている。特許文献1には、このような2次転写バイアスを印加することで、直流電圧だけからなる2次転写バイアスを印加する場合に比べて、濃淡パターンの発生を抑え得ることを示す実験結果が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らは実験により、2次転写バイアスとして重畳バイアスを印加しても、紙表面の凹部で十分な画像濃度を得ることができない場合があることを見出した。また、凹部で十分な画像濃度を得ることができても、凹部の画像箇所に複数の白点を発生させる場合もあった。
【0005】
そこで、本発明者らは、紙表面の凹部で画像濃度不足や白点を発生させる原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことがわかってきた。図1は、2次転写ニップの一例を示す拡大構成図である。同図において、中間転写ベルト531は、その裏面に当接している2次転写裏面ローラ533により、ニップ形成ローラ536に向けて押圧されている。この押圧により、中間転写ベルト531のおもて面とニップ形成ローラ536とが当接する2次転写ニップが形成されている。この2次転写ニップに送り込まれた記録紙Pには、中間転写ベルト531上のトナー像が2次転写せしめられる。トナー像を2次転写するための2次転写バイアスは、同図に示される2つのローラのうち、何れか一方に印加され、他方のローラは接地されている。どちらのローラに転写バイアスを印加しても、トナー像を記録紙Pに転写することが可能であるが、2次転写裏面ローラ533に2次転写バイアスを印加する場合であって、且つトナーとしてマイナス極性のものを用いる場合を例にして説明する。この場合、2次転写ニップ内のトナーを2次転写裏面ローラ533側からニップ形成ローラ536側に移動させるためには、重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、電位の時間平均値がトナーの極性と同じマイナス極性の電位になるものを印加する。
【0006】
図2は、2次転写裏面ローラ533に印加される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形の一例を示す波形図である。同図において、オフセット電圧Voff[V]は、2次転写バイアスの時間平均値を表している。図示のように、重畳バイアスからなる2次転写バイアスは正弦波状の形状をしており、プラス側のピーク値と、マイナス側のピーク値とを具備している。Vtという符号が付されているのは、それら2つのピーク値のうち、2次転写ニップ内でトナーをベルト側から記録紙側に移動させる方(本例ではマイナス側)のピーク値である(以下、送りピーク値Vtという)。また、Vrという符号が付されているのは、トナーを記録紙側からベルト側に戻す方(本例ではプラス側)のピーク値である(以下、戻しピーク値Vrという)。図示のような重畳バイアスの代わりに、交流成分だけからなる交流バイアスを印加しても、2次転写ニップにおいてトナーをベルトと記録紙との間で往復移動させることは可能である。しかし、交流バイアスでは、トナーを単に往復移動させるだけで、記録紙上に転移させることはできない。直流成分を含む重畳バイアスを印加してその時間平均値であるオフセット電圧Voff[V]をトナーと同じマイナス極性にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録紙側に移動させて記録紙上に転移させることが可能になる。
【0007】
本発明者らは、かかる構成における2次転写ニップ内でのトナーの挙動を観測したところ、次のようなことを見出した。即ち、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの印加を開始すると、まず始めに、中間転写ベルト531上でトナー層の表面に存在しているごく僅かなトナー粒子だけがトナー層から離脱して、記録紙表面の凹部内に向かう。しかし、トナー層中の殆どのトナー粒子は、トナー層中に留まったままである。トナー層から離脱したごく僅かなトナー粒子は、記録紙表面の凹部内に進入した後、電界の向きが逆になると、凹部内からトナー層に逆戻りする。このとき、逆戻りしたトナー粒子は、トナー層中に留まっていたトナー粒子に衝突して、そのトナー粒子のトナー層(あるいは記録紙)に対する付着力を弱める。すると、次に電界が記録紙Pに向かう方向に反転したときには、最初よりも多くのトナー粒子がトナー層中から離脱して、記録紙表面の凹部に向かう。このような一連の挙動を繰り返していくことで、トナー層中から離脱して記録紙表面の凹部内に進入するトナー粒子の数を徐々に増やしていって、凹部内に十分量のトナー粒子を転移させていることがわかった。
【0008】
しかしながら、トナー層中のトナー付着量が比較的多い場合には、図2に示した戻しピーク値Vrでは、記録紙表面の凹部内に転移したトナー粒子をベルト上のトナー層に引き戻すことができなくなって、凹部内の画像濃度を不足させてしまうことがわかった。この一方で、トナー層中のトナー付着量が比較的少ない場合には、2次転写バイアスが送りピーク値Vtになったときに記録紙表面の凹部上の画像箇所に白点を発生させ易くなることもわかった。より詳しくは、図1に示した2次転写裏面ローラ533とニップ形成ローラ536との間の電位差は、2次転写バイアスが送りピーク値Vtになったときに最も大きくなる。このとき、記録紙表面の凹部において2次転写裏面ローラ533側からニップ形成ローラ536側に向けて放電を発生させ易くなる。但し、このとき、トナー層中のトナーの付着量が比較的多い場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ533と記録紙との間に介在することから、前述の放電の発生が抑えられる。しかし、トナー層中のトナーの付着量が比較的少ない場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ533と記録紙との間に少量しか存在しないことから、前述の放電が発生してしまう。すると、その放電によって逆帯電したトナー粒子が記録紙表面の凹部内に全く転移しなくなって、凹部上の画像箇所に多数の白点を発生させてしまうのである。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録材表面の凹部上で十分な画像濃度を得つつ、凹部上の画像箇所における白点の発生を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体のおもて面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体のおもて面に当接して前記像担持体との間で転写ニップを形成するニップ形成部材と、前記転写ニップ内に挟み込んだ記録材に対して前記像担持体上のトナー像を転写するために、直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを出力する転写バイアス出力手段とを有する画像形成装置において、前記像担持体の全領域のうち、前記転写ニップに進入する直前の領域であって且つ前記像担持体の表面移動方向に所定の大きさに区切った領域、に対するトナー付着量を把握する付着量把握手段を設けるとともに、前記直流成分及び交流成分のうち、少なくとも交流成分を定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記付着量把握手段による把握結果に応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記直流成分と前記交流成分とをそれぞれ定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値に加えて、前記直流成分の出力目標値も、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、 前記把握結果が、トナー付着量について大きな値を示す従って、前記直流成分の出力目標値と、前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ大きくする処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3の何れかの画像形成装置において、前記交流成分の出力目標値を変更する処理を、前記直流成分の出力目標値を変更する処理よりも先行して行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、前記2次転写ニップの像担持体移動方向の長さを、前記付着量把握手段によるトナー付着量の把握対象となった領域の像担持体表面移動方向の長さよりも大きくし、且つ、前記領域の後端が前記転写ニップの入口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記交流成分の出力目標値の変更を行う一方で、前記領域の先端が前記転写ニップの出口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記直流成分の出力目標値の変更を行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の画像形成装置において、前記転写バイアスとして、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける像担持体表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]と、前記領域の像担持体表面移動方向の長さLとについて「f≧2/(d−L)/v)」という関係を具備するもの、を出力する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、上記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、ユーザーの命令に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、前記情報取得手段による取得結果に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7又は8の画像形成装置において、前記転写バイアス出力手段として、前記直流成分を発生させる第1電源と、前記交流成分を発生させる第2電源とを個別に有するもの、を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、前記像担持体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に対して前記第1電源からの出力を印加し、且つ他方に対して前記第2電源からの出力を印加したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項8乃至10の何れかの画像形成装置において、前記直流成分だけからなる前記転写バイアスを出力するモードにて、前記直流成分の出力目標値を前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記定電流制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果加えて、前記像担持体の表面移動速度にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項1乃至11の何れかの画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御し、且つ、前記交流成分の周波数を前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項1乃至12の何れかの画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記交流成分の周波数と、前記定電流制御における前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項1乃至14の何れかの画像形成装置において、前記像担持体の表面上のトナー層の電位を検知する電位検知手段を設けるとともに、
前記把握結果に加えて、前記電位検知手段による検知結果にも応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、記録材の電気抵抗又は厚みに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、請求項1乃至11の何れか、又は、請求項13もしくは14、の画像形成装置において、記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記交流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項18の発明は、請求項2、2、3、4、5、6又は16の画像形成装置において、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記画像面積率が100[%]を超える場合にのみ、前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項19の発明は、請求項2、2、3、4、5、6、16又は18の画像形成装置において、温度又は湿度を検知する環境検知手段を設けるとともに、前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に加えて、前記環境検知手段による検知結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項20の発明は、請求項1乃至19の何れかの画像形成装置であって、潜像を担持する潜像担持体に当接して1次転写ニップを形成する中間転写体を具備しており、前記像担持体が、前記潜像担持体の表面上で現像されたトナー像を前記1次転写ニップで自らのおもて面に1次転写せしめられる前記中間転写体であり、且つ、前記ニップ形成部材が、前記中間転写体のおもて面に当接して2次転写ニップを形成する2次転写ニップ形成部材であることを特徴とするものである。
また、請求項21の発明は、請求項20の画像形成装置において、前記中間転写体として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である無端状の中間転写ベルトを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明においては、付着量把握手段による把握結果に基づいて、像担持体の全領域のうち、転写ニップに進入している領域に対するトナー付着量について比較的多いと判断した場合には、転写バイアスの交流成分の出力値を比較的大きくすることで、転写ニップ内に比較的多量のトナーが存在していてもそれらに対し、転写ニップ内で記録材表面の凹部と像担持体の表面との間を往復移動させるのに十分な電界を作用させて、記録材表面の凹部上で十分な画像濃度を得ることができる。また、転写ニップ内に比較的少量のトナーしか存在していない場合には、転写バイアスの交流成分の出力値を比較的小さくすることで、交流成分の送りピーク値を小さくする。これにより、記録紙表面の凹部内における放電の発生を抑えて、凹部上の画像箇所における白点の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】2次転写ニップの一例を示す拡大構成図。
【図2】重畳バイアスからなる転写バイアスの波形の一例を示す波形図。
【図3】第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図4】同プリンタにおけるK用の画像形成ユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図5】実験に使用された観測実験装置を示す概略構成図。
【図6】2次転写ニップにおける転写初期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図7】2次転写ニップにおける転写中期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図8】2次転写ニップにおける転写後期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図9】同プリンタの電気回路の一部を示すブロック図。
【図10】中間転写ベルトの50ライン区画を説明するための模式図。
【図11】A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第1例とを示す模式図。
【図12】A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第2例とを示す模式図。
【図13】同プリンタの2次転写電源から出力される2次転写バイアスの電流波形を示す波形図。
【図14】2次転写ニップ内において、トナーを記録紙Pの表面上に保持するために必要な電流値であるトナー保持電流Itonerを説明するための模式図。
【図15】2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itが不適切に大きいことに起因して、記録紙表面の凹部上で多数の白点を発生させてしまった画像を拡大して示す写真画像。
【図16】2次転写ニップに進入するトナー量に対して戻しピーク値Irが不適切に小さいことに起因して、記録紙表面の凹部上の画像箇所に画像濃度不足を引き起こしてしまった画像を拡大して示す写真画像。
【図17】2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itも戻しピーク値Irが適切であったために、凹部に対応する画像箇所に白点も画像濃度不足も発生させていない良好な画像を拡大して示す写真画像。
【図18】ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングと、オフセット電流Ioffの目標値を変更するタイミングとを説明するための説明図。
【図19】第1実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電流Ioffとの関係を示すグラフ。
【図20】第1実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電流Ippとの関係の第1例を示すグラフ。
【図21】第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電圧Voffとの関係の第1例を示すグラフ。
【図22】第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電圧Vppとの関係を示すグラフ。
【図23】第1実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電流Ippとの関係の第2例を示すグラフ。
【図24】第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電圧Voffとの関係の第2例を示すグラフ。
【図25】参考形態に係るプリンタにおける画像面積率と2次転写バイアス出力目標値との関係を示すグラフ。
【図26】第1実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図27】第5実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図28】第6実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図29】第7実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図30】第8実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図31】第9実施例に係るプリンタの2次転写バイス電源を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図。
【図32】第1変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【図33】第2変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の第1実施形態について説明する。
まず、第1実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図3は、第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、第1実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
【0014】
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図4に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
【0015】
感光体2Kは、ドラム状の基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。その直径は60[mm]であり、静電容量は9.5E−7[F/m2]である。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本プリンタでは、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。より詳しくは、約−650[V]に一様に帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
【0016】
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。K用の静電潜像の電位は約100[V]である。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。なお、全面ベタ画像を現像した場合における全面ベタ画像に対する単位面積当たりのトナー付着量M/Aは、0.55〜0.65[mg/cm2]である。
【0017】
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
【0018】
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0019】
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0020】
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0021】
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0022】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
【0023】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0024】
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
【0025】
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
【0026】
先に示した図3において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
【0027】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0028】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット31は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位センサ38などを有している。
【0029】
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは60[μm]である。また、体積抵抗率は1e9[Ωcm]である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT450にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、引っ張り弾性率は、2.6[GPa]である。また、材料はカーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
【0030】
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0031】
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなる。感光体2Y,M,C,Kの軸心に対し、1次転写ローラ35Y,M,C,Kの軸心を約2.5[mm]ずつベルト移動方向下流側にずらした位置にするように、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを配設している。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0032】
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0033】
転写ユニット31の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
【0034】
2次転写裏面ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものであり、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0035】
また、ニップ形成ローラ36は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものであり、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0036】
転写バイアス出力手段としての2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33に印加しつつ、ニップ形成ローラ36を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。なお、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、重畳バイアスに切り替える必要がある。
【0037】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0038】
電位センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ38としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。
【0039】
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
【0040】
本プリンタにおいて、標準モードにおけるプロセス線速(感光体や中間転写ベルトの線速)は、約280[mm/s]である。但し、プリント速度よりも高画質化を優先する高画質モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも遅い値に設定されている。また、画質よりもプリント速度を優先する高速モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも速い値に設定されている。標準モード、高画質モード、高速モードの切り替えは、ユーザーの操作パネルに対するキー操作、あるいはパーソナルコンピュータにおけるプリンタプロパティメニューによって行われる。
【0041】
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
【0042】
2次転写バイアス電源39は、先に図2に示した重畳バイアスからなる2次転写バイアスを出力する。本プリンタにおいて、2次転写バイアスの直流成分は、オフセット電圧Voffと同じ値である。2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33に印加し、且つニップ形成ローラ36を接地した本プリンタでは、2次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、重畳バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。
【0043】
次に、本発明者らが行った観測実験について説明する。
本発明者らは、2次転写ニップ内におけるトナーの挙動を観測するために、特殊な観測実験装置を製造した。図5は、その観測実験装置を示す概略構成図である。この観測実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
【0044】
現像装置231は、第1実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
【0045】
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
【0046】
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録用紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録用紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録用紙214上に転写されている。
【0047】
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
【0048】
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
【0049】
透明基板210上におけるトナーの挙動を、次のようにして撮影した。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影した。
【0050】
図5に示した観測実験装置と、第1実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録紙に転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、観測実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録紙214としては、(株)NBSリコー社製のFC和紙タイプ「さざ波」と呼ばれるものを使用した。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。観測実験装置では、記録紙(さざ波)の裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録紙に転写し得る転写バイアスの極性が、第1実施形態に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを1000[Hz]、直流成分(本例ではオフセット電圧Voffに該当)を200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを1000[V]に設定し、記録紙214に対して0.4〜0.5[mg/cm2]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、「さざ波」の表面の凹部上で十分な画像濃度を得ることができた。
【0051】
そのとき、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加した。具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、図6に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図7に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図8に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(観測実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
【0052】
次に、直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当する)を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを800[V]にした条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録紙Pの凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく、凹部内に留まった。次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録紙Pの凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録紙Pの凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。本発明者らは、更なる実験を行ったところ、始めの一周期で、トナー層216から記録紙Pの凹部内に進入させたトナー粒子を、再びトナー層216に引き戻すことができる戻しピーク値Vrの値は、透明基板210上における単位面積あたりのトナー付着量に左右されることがわかった。透明基板210上におけるトナー付着量が多くなるほど、記録紙Pの凹部内のトナー粒子をトナー層216に引き戻すことが可能な戻しピーク値Vrが大きくなるのである。
【0053】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図9は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、転写バイアス出力手段の一部を構成する制御部60は、演算手段たるCPU60a(Central Processing Unit),不揮発性メモリたるRAM60c(Random Access Memory),一時記憶手段たるROM60b(Read Only Memory)、フラッシュメモリ60d等を有している。装置全体の制御を司る制御部60には、様々な機器やセンサが接続されているが、本プリンタの特徴的な構成に関連する機器やセンサだけを示している。
【0054】
電位センサ38は、中間転写ベルト31上に転写された重ね合わせトナー像のトナー像電位Vtonerを測定することができる。制御部60は、電位センサ38によるトナー像電位Vtonerの測定結果をフラッシュメモリ60dに記憶する。
【0055】
環境検知手段としての温湿度センサ85は、プリンタ筺体内の温度及び湿度を検知してその検知結果を制御部60に出力する。制御部60は、温度検知データや湿度検知データに基づいて、様々な処理を行うが、その処理については後述する。
【0056】
1次転写電源81Y,M,C,Kは、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに印加するための1次転写バイアスを出力するものである。また、2次転写電源39は、2次転写裏面ローラ33に印加するための2次転写バイスを出力するものであり、制御部60とともに転写バイアス出力手段を構成している。また、オペレーションパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーボタンによって操作者による入力操作を受け付けたりする。制御部60から送られてくる制御信号に基づいて、タッチパネルに画像を表示することができる。
【0057】
制御部60は、RAM60cやROM60b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各種の機器の駆動を制御したり、各種のデータ処理を行ったりする。データ処理の1つとして、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像データに基づいて、各色トナー像の画像面積率を演算したり、中間転写ベルト31における2次転写ニップに進入する直前の領域の画像面積率したりする。また、演算した画像面積率に基づいて,1次転写電源81Y,M,C,Kからの目標出力値を演算して1次転写電源81Y,M,C,Kに出力したり、画像面積率に基づいて2次転写電源39からの目標出力値とを演算して2次転写電源39に出力したりする。なお、それらの出力目標値は、PWM信号として出力される。また、制御部60は、光書込ユニット80におけるレーザー書き込み信号に基づいて、画像面積率を演算する。
【0058】
2次転写電源39は、2次転写バイアスを定電流制御で出力するものである。具体的には、制御部60から出力される電流目標値と同じ電流を出力する。制御部60は、中間転写ベルト31における周方向の全領域のうち、2次転写ニップに進入する区画、に付着しているトナー量を把握する付着量把握手段として機能している。具体的には、ニップ進入領域における重ね合わせトナー像の画像面積率は、ニップ進入領域に付着している単位面積あたりのトナー量と相関関係にある。よって、ニップ進入領域における重ね合わせトナー像の画像面積率を演算することで、ニップ進入領域に付着している単位面積あたりのトナー量を把握しているのである。そして、2次転写電源39からの電流目標値を、前記画像面積率に応じて変更する。具体的には、中間転写ベルト31の表面は、副走査方向(感光体やベルトの表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、図10に示すように、50画素分ずつの領域毎に理論上の区分けがなされる。そして、その区分けによる各区画(以下、「50ライン区画」という)には、それぞれ主走査方向に一直線上に並ぶ画素の集合からなる画素ラインが50ラインずつ含まれている。それぞれの画素ラインについては、全画素数に対する画像部(重ね合わせトナー像)の画素数の割合が画像面積率として求められる。そして、50個の画素ラインの画像面積率の平均値が、「50ライン区画」における画像面積率として求められる。2次転写電源39の電流目標値については、複数の「50ライン区画」のうち、2次転写ニップを通過中の「50ライン区画」の画像面積率に応じたものに設定される。
【0059】
より詳しくは、中間転写ベルト31の全領域のうち、2次転写ニップに進入する直前の領域であって、ベルト移動方向に50画素の大きさで区切った領域である「50ライン区画」の先端が、2次転写ニップの入口に所定の距離まで近づいたタイミング(以下、算出基準タイミングという)で、制御部60はその「50ライン区画」の画像面積率を算出する。より詳しくは、前記算出基準タイミングに対し、所定の第1時間だけ遡ったタイミングから所定の第2時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってY用の感光体2Yに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のYの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第3時間だけ遡ったタイミングから所定の第4時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってM用の感光体2Mに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のMの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第5時間だけ遡ったタイミングから所定の第6時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってC用の感光体2Cに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のCの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第7時間だけ遡ったタイミングから所定の第8時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってK用の感光体2Kに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のKの画像面積率を算出する。そして、Y,M,C,Kの4つの画像面積率を累積した値を、その「50ライン区画」の画像面積率とする。このようにして画像面積率が求められた「50ライン区画」のベルト移動方向下流側には、次の「50ライン区画」が隣接している。次の「50ライン区画」の画像面積率については、次の「50ライン区画」の先端が、2次転写ニップの入口に所定の距離まで近づいたタイミング、即ち、次の「50ライン区画」についての算出基準タイミングで、画像面積率の算出を開始する。
【0060】
図11は、A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第1例とを示す模式図である。2次転写ニップにおいて、記録紙Pは、図中の矢印の方向に搬送される。第1実施形態に係るプリンタにおいて、中間転写ベルト31の幅方向のサイズは、A3サイズの記録紙Pの短手方向サイズ(297mm)よりも少し大きい。2次転写ニップは、中間転写ベルト31と、ニップ形成ローラ36とが当接している領域であり、ニップ形成ローラ36のローラ部の長さは、中間転写ベルト31の幅よりも大きくなっている。よって、2次転写ニップのベルト幅方向の長さは、中間転写ベルト31の幅と同じであり、これは上述したようにA3サイズの記録紙Pの短手方向サイズよりも少し大きい。但し、第1実施形態に係るプリンタの制御部50は、便宜的に、2次転写ニップのベルト幅方向の長さを、A3サイズの記録紙Pの短手方向サイズと同じであるとみなして、ベルト上の50ライン区画の画像面積率を演算するようになっている。なお、2次転写ニップのベルト移動方向の長さである2次転写ニップ幅は、3[mm]である。
【0061】
同図の記録紙Pには、記録紙搬送方向に延在する短冊状のトナー像が形成されている。その記録紙搬送方向の長さは、220[mm]程度であり、図示のように、記録紙Pの長手方向の概ね半分くらいの領域に渡って延在している。トナー像は、Y,M,C,Kの4色のうち、何れか1色のトナーだけからなるベタ画像である。このトナー像の短手方向の長さは29.7[mm]であり、これは2次転写ニップのベルト幅方向の長さ(便宜上、297mmとみなしている)の1/10の値である。よって、記録紙搬送方向において、このトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は10[%]である。中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、図示のトナー像を担持している領域が2次転写ニップに進入する際には、50ライン区画の画像面積率が10[%]であると制御部60によって算出され、2次転写電源39からの電流目標値が10[%]の画像面積率に応じた値に設定される。
【0062】
図12は、A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第2例とを示す模式図である。同図の記録紙Pには、記録紙搬送方向に延在する短冊状のトナー像が、搬送方向と直交する方向に所定の距離をおいて2つ形成されている。それらトナー像の記録紙搬送方向の長さは、それぞれ220[mm]程度であり、図示のように、互いに記録紙Pの長手方向の同じ領域内に延在している。2つのトナー像は、互いに異なる1色のトナーだけからなるベタ画像である。また、それらトナー像の短手方向の長さはそれぞれ29.7[mm]である。よって、記録紙搬送方向において、それらトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は20[%]である。中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、図示のトナー像を担持している領域が2次転写ニップに進入する際には、50ライン区画の画像面積率が20[%]であると制御部60によって算出され、2次転写電源39からの電流目標値が20[%]の画像面積率に応じた値に設定される。
【0063】
なお、本プリンタにおいて、50ライン区画の画像面積率は、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ個別に算出したものの合計として求められる。よって、例えば、同図の2つのトナー像が、図示のように互いに独立しているものではなく、完全に重ね合わされた2色重ね合わせトナー像であったとしても、その2色重ね合わせトナー像についての50ライン区画の画像面積率は、10[%]ではなく、20[%]となる。
【0064】
図13は、2次転写電源39から出力される2次転写バイアスの電流波形を示す波形図である。同図において、オフセット電流Ioff[A]は、2次転写バイアスの電流の時間平均値を表している。図示のように、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの電流波形は正弦波状の形状をしており、プラス側のピーク値と、マイナス側のピーク値とを具備している。Ippという符号が付されているのは、ピークツウピーク電流であり、これは交流成分の波高と同じ値である。また、Itという符号が付されているのは、2つのピーク値のうち、2次転写ニップ内でトナーを2次転写裏面ローラ33側(ベルト側)からニップ形成ローラ36側(記録紙側)に移動させる方(本例ではマイナス側)のピーク値である(以下、送りピーク値Itという)。また、Irという符号が付されているのは、記録紙Pに転写したトナーを記録紙側からベルト側に戻す方(本例ではプラス側)のピーク値である(以下、戻しピーク値Vrという)。
【0065】
本プリンタにおいては、既に述べたように、中間転写ベルト31の裏面に当接している2次転写裏面ローラ33と、中間転写ベルト31のおもて面に当接して2次転写ニップを形成しているニップ形成ローラ36とのうち、前者に対して2次転写バイアスを印加している。そして、ニップ形成ローラ36を接地している。かかる構成において、同図に示すオフセット電流Ioffの極性が図示のようにマイナス極性であるということは、2次転写裏面ローラ33の平均電位がマイナス極性になることを意味している。このように2次転写裏面ローラ33の平均電位がマイナス極性になることで、マイナス極性のトナーが2次転写ニップ内で2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に移動して、ベルト上のトナーが記録紙P上に転移する。本第1実施形態では、オフセット電流Ioffは、2次転写バイアス電源39から出力される直流成分の電流値と同じである。
【0066】
なお、第1実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写バイアス電源39として、直流成分や交流成分を定電流制御で出力するものを用いているので、直流成分と交流成分とにおいて、図13に示した波形の電流出力が得られる。これに対し、2次転写バイアス電源39として、直流成分や交流成分を定電圧制御で出力するものを用いる場合には、直流成分と交流成分とにおいて、図2に示したような波形の電圧出力が得られる。
【0067】
図14は、2次転写ニップ内において、トナーを記録紙Pの表面上に保持するために必要な電流値であるトナー保持電流Itonerを説明するための模式図である。同図においては、便宜上、中間転写ベルトの図示を省略している。2次転写ニップにおいて、トナーを記録紙Pの表面上に保持するためのトナー保持電流Itonerは、直流成分によって交流される。第1実施形態に係るプリンタでは、オフセット電流Ioffの一部が、トナー保持電流Itonerとして作用する。2次転写ニップに進入するトナー量が多くなるほど、2次転写ニップに進入するトナーの電荷量も多くなるもで、それらトナーを記録紙Pの表面上で保持させるためには、より大きなトナー保持電流Itonerが必要になる。よって、2次転写ニップに進入するトナー量が多くなるほど、オフセット電流Ioffを大きくする必要がある。
【0068】
多量のトナーを2次転写ニップに進入させたとしても、十分なトナー保持電流Itonerを供給できるように、オフセット電流Ioffを比較的大きな値に設定したとする。すると、2次転写ニップに対して少量のトナーしか進入させないときには、2次転写ニップ内においてトナー像に過剰な電流を流してしまうことから、トナー像の周囲にトナーを飛び散らせてしまうトナー散りという現象を発生させてしまう。
【0069】
そこで、制御部60は、50ライン区画のトナー付着量と相関関係にある50ライン区画の画像面積率に応じて、2次転写バイアス電源39の直流成分であるオフセット電流Ioffの目標値を変更する処理を実施するようになっている。これにより、画像面積率にかかわらず、2次転写ニップの出口で適切なトナー保持電流Itonerをトナー像に供給して、トナー像の転写不良や転写チリの発生を抑えることができる。
【0070】
一方、図13に示した戻しピーク値Irは、2次転写ニップに進入する中間転写ベルト31に対する単位面積あたりのトナー付着量によって適正値が異なってくる。トナー付着量が多くなるほど、それらトナーを記録紙表面の凹部内からベルトに向けて戻すことができる戻しピーク値Ir(の絶対値)が大きくなるからである。トナー付着量にかかわらず、2次転写電源39の交流成分の電流目標値、即ちピークツウピーク電流Ippの目標値を一定にすると、トナー付着量の比較的大きなベルト領域を2次転写ニップに進入させたときに、戻しピーク値Irが適正値よりも小さくなって、記録紙表面の凹部内のトナーを十分にベルトに戻すことができなくなって、記録紙表面の凹部上で画像濃度を不足させるおそれがある。2次転写ニップに進入するトナー量が多くなると、トナー層自身の表面電位(例えば、接地された金属上では、トナー層の体積電荷密度ρ×トナー層の厚さd×厚さd/(2×誘電率ε)で表される電位が大きくなり、その分、トナーを往復移動させるために必要な電圧や電流も大きくなるためだと考えられる。
【0071】
一方、記録紙表面の凹部上での画像濃度不足の発生を回避するために、トナー付着量にかかわらず十分な戻しピーク値Irとなるように、ピークツウピーク電流Ippの値を比較的大きく設定すると、トナー付着量の比較的小さなベルト領域が2次転写ニップに進入したときに白点を引き起こし易くなる。具体的には、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間の電位差は、2次転写バイアスが送りピーク値Itになったときに最も大きくなる。このとき、2次転写ニップ内に挟み込まれた記録紙表面の凹部において2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて放電を発生させ易くなる。但し、このとき、ニップ内のトナー量が比較的多い場合には、送りピーク値Itとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に介在することから、前述の放電の発生が抑えられる。しかし、トナー量が比較的少ない場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に少量しか存在しないことから、前述の放電が発生してしまう。すると、その放電によって逆帯電したトナー粒子が記録紙表面の凹部内に全く転移しなくなって、凹部上の画像箇所に多数の白点を発生させてしまう。特に、本プリンタのように、中間転写ベルト31として、平滑性、耐延び性などの観点から、ポリイミド製のものを用いるものにおいては、ベルト表面を2次転写ニップ内で記録紙の表面の凹凸に追従させて柔軟に変形させることができないことから、ベルト表面と記録紙表面の凹部との間に空隙を形成し易いので、放電(白点)を発生させ易くなる。具体的には、トナー付着量の比較的大きなベルト領域を2次転写ニップに進入させたときに、戻しピーク値Irが適正値よりも小さくなって、記録紙表面の凹部内のトナーを十分にベルトに戻すことができなくなって、記録紙表面の凹部上で画像濃度を不足させるおそれがある。また、かかる画像濃度不足の発生を回避するために、トナー付着量にかかわらず十分な戻しピーク値Irとなるように、ピークツウピーク電流Ippの値を比較的大きく設定すると、トナー付着量の比較的小さなベルト領域が2次転写ニップに進入したときに白点を引き起こし易くなる。具体的には、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間の電位差は、2次転写バイアスが送りピーク値Itになったときに最も大きくなる。このとき、2次転写ニップ内に挟み込まれた記録紙表面の凹部において2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて放電を発生させ易くなる。但し、このとき、ニップ内のトナー量が比較的多い場合には、送りピーク値Itとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に介在することから、前述の放電の発生が抑えられる。しかし、トナー量が比較的少ない場合には、送りピーク値Vtとは逆極性のトナー粒子が2次転写裏面ローラ33と記録紙との間に少量しか存在しないことから、前述の放電が発生してしまう。すると、その放電によって逆帯電したトナー粒子が記録紙表面の凹部内に全く転移しなくなって、凹部上の画像箇所に複数の白点を発生させてしまうのである。
【0072】
図15は、2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itが不適切に大きいことに起因して、記録紙表面の凹部上で多数の白点を発生させてしまった画像を拡大して示す写真画像である。記録紙表面の凹部上で多数の白点を発生させてしまったことから、記録紙表面の凹部上に位置する画像箇所の大部分が、白く抜けたようになっている。
【0073】
図16は、2次転写ニップに進入するトナー量に対して戻しピーク値Irが不適切に小さいことに起因して、記録紙表面の凹部上の画像箇所に画像濃度不足を引き起こしてしまった画像を拡大して示す写真画像である。記録紙表面の凹部の上に位置する画像箇所の濃度が、凸部の上に位置する画像箇所の濃度よりも薄くなっていることがわかる。
【0074】
図17は、2次転写ニップに進入するトナー量に対して送りピーク値Itも戻しピーク値Irも適切であったために、凹部に対応する画像箇所に白点も画像濃度不足も発生させていない良好な画像を拡大して示す写真画像である。送りピーク値It、戻しピーク値Irを何れもトナー量に見合った値にすることで、紙表面の凹部上で白点も画像濃度不足も発生させない図示のような良好なベタ画像を得ることができる。なお、図15〜図17に示した画像は、何れも1辺が約2.5cm四方の大きさであり、特殊製紙株式会社製の商品名レザック66(260kg紙)と呼ばれる和紙タイプの紙に出力されたものである。
【0075】
そこで、制御部60は、中間転写ベルト31における2次転写ニップに進入する50ライン区画の画像面積率に応じて、2次転写バイアス電源39の交流成分の電流目標値(Ippの目標値)を変更する処理を実施するようになっている。これにより、画像面積率にかかわらず、適切な値の戻しピーク値Irをトナー像に供給してトナー像中のトナーを確実にベルトと紙表面凹部との間で往復移動させるとともに、適切な値の送りピーク値Itをトナー像に供給して白点の発生を抑えることができる。
【0076】
図18は、2次転写バイアスの交流成分の電流目標値(Ippの目標値)を変更するタイミングと、直流成分の電流目標値(Ioffの目標値)を変更するタイミングとを説明するための説明図である。制御部60は、ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングと、オフセット電流Ioffの目標値を変更するタイミングとを異ならせている。具体的には、ピークツウピーク電流の目標値については、中間転写ベルト31の50ライン区画の先端が2次転写ニップの入口に進入するタイミングで変更する。これに対し、オフセット電流Ioffの目標値については、中間転写ベルト31の50ライン区画の先端が2次転写ニップの出口に進入するタイミングで変更する。
【0077】
本プリンタは、600[dpi]の解像度で画像を形成するようになっているため、1画素の径は約42.3[μm]であり、50ライン区画のベルト移動方向の長さは約2.12[mm]である。また、標準モードのプロセス線速は既に述べたように280[mm/s]である。よって、標準モードでは、ピークツウピーク電流Ippの目標値、オフセット電流Ioffの目標値を、それぞれ、約7.6[ms]の時間間隔で変更している。但し、それぞれの変更のタイミングにはタイムラグがある。中間転写ベルト31におけるある特定の50ライン区画に着目すると、その50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入したときに、ピークツウピーク電流Ippの目標値がその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更される。ニップ幅dは、50ライン区画のベルト移動方向の長さLよりも大きな値に設定されているので、このとき、オフセット電流Ioffの目標値はまだ変更されない。50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入してから、50ライン区画の先端が2次転写ニップの出口を通過するまでの移動距離は、0.88[mm]であり(3−2.12)、その移動に要する時間は3.1[ms]である(0.88/280*1000)。よって、ピークツウピーク電流Ippの目標値が変更された後、約3.1[ms]経過した後に、オフセット電流Ioffの目標値が前述の50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更される。
【0078】
ニップ幅(2次転写ニップのベルト移動方向の長さ)dを50ライン区画の長さLよりも大きくし、且つ、中間転写ベルト31の50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入するタミングで、ピークツウピーク電流Ippの目標値をその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更するのは、次に説明する理由による。即ち、本来であれば、中間転写ベルト31の移動に伴う2次転写ニップ内のトナー量の変化については、できるだけ細かい時間間隔で把握することが望ましい。中間転写ベルト31が僅かに1画素分移動しただけでも、2次転写ニップ内のトナー量が大きく変化することがあるので、理想的には、ベルトが1画素移動する毎に、2次転写ニップ内のトナー量を新たに把握し直すことが望ましいからである。しかしながら、そのようにするためには、制御部60として、CPU速度の極めて速いものを用いる必要があり、一般的な画像形成装置の制御部60としては現実的ではない。そこで、本プリンタにおいては、一般的な画像形成装置に搭載される制御部60の処理速度に鑑みて、中間転写ベルト31が50ライン区画移動する毎に、2次転写ニップ内のトナー量の変化を把握するようにしている。
【0079】
画像面積率の算出対象となった50ライン区画が2次転写ニップ内に存在しているときには、その50ライン区画に応じたIppをかけ続けるのが理想的である。しかし、50ライン区画の長さは約2.12[mm]であるのに対し、ニップ幅は約3[mm]であるので、2次転写ニップ内においては、先行する50ライン区画の後端側と、後続の50ライン区画の先端側とを進入させているときがある。このとき、どちらに対応する目標値にするのかが問題となる。2次転写バイアスの交流成分であるピークツウピーク電流Ippは、上述したように、2次転写ニップ内でトナーをベルトと紙との間で複数回に渡って往復移動させるためのものである。トナーが2次転写ニップ内で1往復する毎に、紙表面の凹部内に転移するトナー量を増加させていくという上述したトナーの挙動から、交流成分の効果を十分に得るためには、2次転写ニップ内において、有効な交流成分(Ipp)を50ライン区画内の全てのトナーに対して2往復以上作用させる必要がある。ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングとして、50ライン区画の先端を2次転写ニップの入口に進入させたタイミングを採用したとする。すると、場合によっては、50ライン区画の後端に対しては、交番電界を1回しか作用させることができず、前述の効果を得ることができなくなるおそれがある。一方、ピークツウピーク電流Ippの目標値を変更するタイミングとして、50ライン区画の後端を2次転写ニップの入口に進入させたタイミングを採用したとする。このとき、50ライン区画の先端はまだ2次転写ニップ内に存在している。その先端を2次転写ニップの出口に到達させるまでの間に、その先端のトナーを2往復以上させることができれば、先端のみならず、先端から後端までの全ての領域においてトナーを2往復以上させることになる。そこで、本プリンタにおいては、ニップ幅dを50ライン区画の長さLよりも大きくし、且つ、中間転写ベルト31の50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入するタミングで、ピークツウピーク電流Ippの目標値をその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更するようになっている。
【0080】
一方、中間転写ベルト31の50ライン区画の先端が2次転写ニップの出口に進入するタイミングで、オフセット電流Ioffの目標値をその50ライン区画の画像面積率に応じた値に変更するようにしたのは、次に説明する理由による。即ち、2次転写ニップの入口でトナー像に対して十分なオフセット電流Ioffを供給したとしても、2次転写ニップの出口でオフセット電流Ioffを不足させると、結果として、転写不良を引き起こしてしまう。換言すれば、2次転写ニップの出口で十分なオフセット電流Ioffを供給すれば、トナー像を記録紙Pに良好に転写することができる。よって、前述のタイミングでオフセット電流Ioffの目標値を変更するのである。
【0081】
50ライン区画の後端が2次転写ニップの入口に進入してIppの目標値が変更されたとき、50ライン区画の先端は、まだ2次転写ニップ内に位置している。2次転写バイアスの周波数をf[Hz]、ニップ幅をd[mm]、プロセス線速をv[mm/s]、50ライン区画のベルト移動方向の長さをL[mm]で示すと、50ライン区画の先端が前記タイミングから2次転写ニップの出口に至るまでに要する時間は「(d−L)/v」で表される。この時間内において、トナーを2往復以上させる必要がある。そのためには、「f×(d−L)/v)≧2」という条件を具備させる必要がある。この式を変形すると、周波数fは、「2/(d−L)/v)」と同等以上である必要があることになる。そこで、本プリンタでは、2次転写バイアスの交流成分として、周波数fが「f≧2/(d−L)/v)」という条件を具備するものを出力するように、2次転写バイアス電源39を構成している。より詳しくは、標準モードでは、交流成分の周波数fを1000[Hz]に設定している。標準モードでは、d=3[mm]、v=280[mm/s]、L=2.12[mm]であるので、(d−L)/v)は、約3.1[ms]であり、この間の交流成分の振動数は、(f×(d−L)/v)より、約3.1回と求めることができる。
【0082】
本発明者らは、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、次のような第1プリントテストを行った。即ち、出力画像としては、記録紙Pの全面において、50ライン区画の画像面積率が50[%]になるもの、100[%]になるもの、及び200[%]になるもの、の3種類を採用した。また、記録紙Pとしては、特殊製紙株式会社製の商品名レザック66(260kg紙)を用いた。2次転写バイアスの条件としては、次の4通りを採用した。
【0083】
即ち、4通りのうちの1つは、第1実施形態に係るプリンタと同様に、オフセット電流Ioffとピークツウピーク電流Ippとをそれぞれ50ライン区画の画像面積率に応じて変更するという条件である。オフセット電流Ioffについては、50ライン区画の画像面積率に応じて図19のグラフに示すような関係で変化させるようにした。また、ピークツウピーク電流Ippについては、50ライン区画の画像面積率に応じて図20のグラフに示すような関係で変化させるようにした。
【0084】
4通りのうちの他の1つ(比較例1)は、オフセット電流Ioffを画像面積率にかかわらず−14[μA]で定電流制御し、且つ、ピークツウピーク電流Ippを画像面積率にかかわらず1.5[mA]で定電流制御する条件である。また、4通りのうちの他の1つ(比較例2)は、オフセット電流Ioffを画像面積率にかかわらず−18[μA]で定電流制御し、且つ、ピークツウピーク電流Ippを画像面積率にかかわらず1.5[mA]で定電流制御する条件である。また、4通りのうちの残りの1つ(比較例3)は、オフセット電流Ioffを画像面積率にかかわらず−36[μA]で定電流制御し、且つ、ピークツウピーク電流Ippを画像面積率にかかわらず2.7[mA]で定電流制御する条件である。
【0085】
それぞれの条件で出力した画像を、肉眼で観察して、紙表面の凹部上の画像箇所における白点や画像濃度不足のランクを評価した。この結果を次の表1に示す。なお、表1において、○という結果は、白点も画像濃度不足も殆ど認められなかったことを示している。また、△という結果は、許容レベルを僅かに超える白点あるいは画像濃度不足が発生したことを示している。また、×という結果は、著しい白点あるいは画像濃度不足が発生したことを示している。
【表1】
【0086】
第1実施形態に係るプリンタでは、画像面積率にかかわらず、白点及び画像濃度不足(凹部上)も何れも良好に抑えていることがわかる。これに対し、比較例1においては、画像面積率50[%]の画像で良好な結果が得られているものの、画像面積率100[%]の画像では紙表面の凹部上で許容レベルを超える画像濃度不足が発生している。しかも、画像面積率200[%]の画像では、著しい画像濃度不足(凹部上)が発生してしまう。また、比較例2においては、画像面積率100[%]の画像で良好な結果が得られているものの、画像面積率50[%]の画像では許容レベルを超える白点が発生する。また、画像面積率200[%]の画像では著しい画像濃度不足(凹部上)が発生してしまう。また、比較例3においては、画像面積率200[%]の画像で良好な結果が得られているものの、画像面積率100[%]の画像や画像面積率200[%]の画像では、著しい白点が発生してしまう。
【0087】
なお、上述したように、本プリンタは、標準モードにおいて280[mm/s]のプロセス線速を採用しているが、高画質モードでは標準モードよりもプロセス線速を遅くする。また、高速モードでは、標準モードよりもプロセス線速を速くする。プロセス線速が変わると、単位時間当たりに2次転写ニップに供給されるトナーの量や、2次転写ニップ内でトナー像に供給される電流量などが変化する。プロセス線速が変化すると、適切な出力目標値(Ioffの目標値)が変化する。プロセス線速が遅くなるほど、オフセット電流Ioffの出力目標値の絶対値を小さくする必要がある。定電圧制御を行う場合も同様に、プロセス線速が遅くなるほど、オフセット電圧Voffの絶対値を小さくする必要があるが、この場合、ピークツウピーク電圧Vppも同様に、線速の低下に応じて絶対値を小さくすることが望ましい。
【0088】
また、単位質量あたりのトナーの帯電量(Q/M)が変化すると、トナー像に対する単位面積当たりのトナー付着量が同じであっても、そのトナー像の帯電量は異なってくる。すると、トナー付着量が同じであっても、2次転写ニップ内におけるトナーの電位が行ってくることから、記録紙表面の凸部における転写チリ及び画像濃度不足の発生を抑え得る適切なオフセット電流Ioffの値や、記録紙表面の凹部における白点及び画像濃度不足の発生を抑え得る適切なピークツウピーク電流Ippの値が異なってくる。トナー像の電位(絶対値)が大きくなるほど、IoffやIppの適正値(絶対値)も大きくなる。このことは、定電圧制御を採用する場合におけるオフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧についても、同様のことが言える。
【0089】
そこで、第1実施形態に係るプリンタの制御部60は、オフセット電流Ioffやピークツウピーク電流の目標値を、50ライン区画の画像面積率(トナー付着量)に応じて変更することに加えて、プロセス線速やトナー像の電位にも応じて変更する処理を実施するようになっている。トナー像の電位については、上述した電位センサ38による検知結果によって把握する。各種のプロセス線速やトナー像の電位についてそれぞれ、図19や図20に示したグラフを表す関数式(あるいはデータテーブル)を専用に記憶させてもよいが、かかる構成ではデータ記憶量が非常に大きくなってしまう。そこで、第1実施形態では、50ライン区画の画像面積率に応じた目標値を関数式によって求めた後、その結果をプロセス線速及びトナー像の電位に基づいて補正するようになっている。補正のための補正式は、予めの実験によって求めておき、制御部60に記憶させておく。
【0090】
なお、第1実施形態では、トナー付着量の把握対象とするベルト領域を、50ライン区画ずつに区切っているが、区切る大きさは50ライオンに限定されるものではない。また、交流成分として、正弦波のものに代えて、矩形波、三角波、台形状波形など、種々の波形のものを採用してもよい。
【0091】
次に、第2実施形態に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、第2実施形態に係るプリンタの構成は、第1実施形態と同様である。
第1実施形態に係るプリンタの制御部60は、2次転写バイアスの直流成分や交流成分をそれぞれ定電圧制御するようになっている。直流成分の電圧目標値(オフセット電圧Voff(図2参照)の目標値)や、交流成分の電圧目標値(ピークツウピーク電圧Vppの目標値)については、第1実施形態と同様に、50ライン区画の画像面積率に応じて変更する。
【0092】
図21は、第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とオフセット電圧Voffとの関係を示すグラフである。また、図22は、第2実施形態に係るプリンタにおける画像面積率とピークツウピーク電圧Vppとの関係を示すグラフである。本発明者らは、このような関係でオフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを変化させる点の他は、先の第1プリントテストと同様の条件にした第2プリントテストを行った。この結果を次の表2に示す。
【表2】
【0093】
第2実施形態に係るプリンタでは、画像面積率にかかわらず、白点及び画像濃度不足(凹部上)も何れも良好に抑えていることがわかる。つまり、2次転写バイアスの直流成分や交流成分の出力を定電流制御する代わりに、定電圧制御する場合であっても、出力目標値を画像面積率に応じて変更することで、画像面積率にかかわらず、白点及び画像濃度不足(凹部上)も何れも良好に抑え得ること立証された。これに対し、比較例4、5、6に示すように、出力目標値を変更せずに画像面積率にかかわらず一定にすると、白点や画像濃度不足(凹部上)を発生させてしまうことがわかる。
【0094】
しかしながら、直流成分の出力を定電圧制御する構成では、記録紙Pとして、電気抵抗や厚さの異なるものを用いると、直流成分として同じ電圧を出力していても、2次転写電流の値が異なってくることから、良好な結果が得られなくなってしまう。記録紙Pによっては、記録紙表面の凸部で転写チリや画像濃度不足が発生してしまうのである。例えば、記録紙Pたる特殊製紙株式会社製の商品名レザック66として、260kg紙の代わりに、175kg紙を用いて第2プリントテストと同様のテストを行ったところ、画像面積率に応じて直流成分の電圧の出力目標値を変更しても、記録紙表面の凸部上で、転写チリや画像濃度不足(凸部上)を発生させることがあった。一方、175kg紙であっても、直流成分を定電流制御する構成では(紙が異なる点の他は第1テストプリントと同じ)、記録紙表面の凸部上で転写チリや画像濃度不足(凸部上)を発生させることはなかった。よって、直流成分の出力を定電流制御する構成の方が、定電圧制御する構成よりも優れていると言える。
【0095】
また、同じ記録紙Pであっても、その電気抵抗は、温湿度によって変化するため、記録紙Pの種類だけを参照しただけでは、その記録紙Pの電気抵抗を正確に把握することはできない。よって、記録紙Pの種類だけを参照しただけでは、その記録紙Pに適した直流成分の電圧出力(Voff)の適正値を把握することはできない。より詳しくは、記録紙Pの電気抵抗が環境変動に伴って小さくなるほど、直流成分の電圧出力の適正値が小さくなる。なお、交流成分の電圧出力(Vpp)については、特に周波数が数百ヘルツ以上の場合には、時定数の関係上、記録紙Pの電気抵抗や温湿度によらず、適正値はほぼ一定となる。
【0096】
また、第1実施形態で述べたように、オフセット電圧Voffやピークツウピーク電圧の適正値は、プロセス線速やトナー像の電位によっても変化する。
【0097】
そこで、第2実施形態に係るプリンタにおいては、記録紙Pの電気抵抗及び厚みに関する情報を取得する情報取得手段を設けている。より詳しくは、情報取得手段として、操作パネル50と制御部60との組合せを採用している。制御部50は、予め、複数の紙種の情報を一覧形式で記憶している。そして、ユーザーの操作に基づいて、それらの紙種を操作パネル50に一覧形式で表示させ、ユーザーに対して、どの紙種を使用するのかを選択してもらう処理を実施する。これにより、ユーザーの使用する紙種を特定して、その紙の電気抵抗及び厚みの情報を取得することができる。
【0098】
制御部60は、50ライン区画の画像面積率だけでなく、操作パネル50に対するユーザーの操作によって取得した紙種情報、温湿度センサ85による検知結果、プロセス線速、及びトナー像の電位にも基づいて、オフセット電圧Voffを変更する処理を実施するようになっている。また、50ライン区画の画像面積率だけでなく、プロセス線速、及びトナー像の電位にも基づいて、ピークツウピーク電圧Vppを変更する処理を実施するようになっている。
【0099】
50ライン区画の画像面積率と、オフセット電圧Voffの目標値との関係を示す関数式(又はデータテーブル)については、紙種毎に固有のものをそれぞれ制御部60に記憶させている。例えば、商品名レザック66の175kg紙については、図23や図24に示すような出力目標値と画像面積率との関係式を記憶させている。そして、画像面積率と紙種とに応じて特定させたオフセット電圧Voffの目標値を、温湿度の検知結果、プロセス線速、及びトナー像の電位に応じて補正させるようにしている。
【0100】
なお、第1実施形態や第2実施形態において、交流成分と直流成分との両方についてそれぞれ出力目標値を50ライン区画の画像面積率に応じて変更する例について説明したが、交流成分だけを変更するようにしてもよい。本発明者らの実験によれば、図25に示すように、直流成分の出力目標値(VoffやIoffの目標値)については、二色からなる全面ベタ画像を転写する際に必要となる値か、それよりもやや低めの値に一律に設定しておき、交流成分の出力目標値(VppやIppの目標値)だけを、画像面積率に応じて変更する構成でも、効果が得られた。
【0101】
次に、第1実施形態あるいは第2実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に説明しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、第1実施形態や第2実施形態と同様である。
[第1実施例]
第1実施例に係るプリンタの構成は、基本的には第1実施形態あるいは第2実施形態と同様である。第1実施形態あるいは第2実施形態と異なる点は、制御部60が、プロセス線速に応じて、2次転写バイアスの交流成分の周波数fを変更するための制御信号を、2次転写バイアス電源39に出力する処理を実施する点である。具体的には、プロセス線速が変更されたことで、上述した「f≧2/(d/v)」という条件を具備しなくなるときには、具備する値に周波数fを補正するための制御信号を出力する。2次転写バイアス電源39は、制御部60からの制御信号に従って、交流成分の周波数fを補正する。
【0102】
かかる構成では、プロセス線速を変更しても、線速にかかわらず、「f≧2/(d/v)」という条件を具備させて、2次転写ニップ内でトナーを確実に所望の回数だけベルトと紙凹部との間で往復移動させることができる。
【0103】
[第2実施例]
第2実施例に係るプリンタは、第2実施形態に係るプリンタと同様に、操作パネル50に対するユーザーの操作により、紙種情報を取得する。また、2次転写バイアスについては、定電流制御あるいは定電圧制御で2次転写バイアス電源39から出力する。
【0104】
第1実施形態あるいは第2実施形態に係るプリンタと異なる点は、取得した紙種情報に基づいて、紙表面の凹凸の度合いを把握し、凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種(例えば普通紙)である場合には、2次転写バイアスとして、重畳バイアスからなるもの出力する代わりに、直流成分だけからなるものを出力する。凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種の場合には、凹部上での白点や画像濃度不足が発生しないからである。かかる構成では、凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種が用いられる場合、即ち、紙表面の凹部上での白点や画像濃度不足を発生させるおそれがない場合には、直流成分だけからなる2次転写バイアスを採用して電力消費を抑えることができる。
【0105】
なお、直流成分については、出力目標値(Ioff又はVoffの目標値)を50ライン区画の画像面積率に応じて変更するようになっている。これにより、画像面積率にかかわらず、転写チリや画像濃度不足の発生を抑えることができる。
【0106】
[第3実施例]
第3実施例に係るプリンタでは、操作パネル50に対する操作によって取得した紙種情報に基づいて、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードにするか否かを決定するのではなく、ユーザーの操作に基づいて決定するようになっている。ユーザーが、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードにするか否かを設定するのである。
【0107】
かかる構成において、ユーザーは、凹凸の度合いがそれほど大きくない紙種を用いる場合には、操作パネル50に対する操作によって前述のモードに設定することで、直流成分だけからなる2次転写バイアスを採用して電力消費を抑えることができる。
【0108】
[第4実施例]
本発明者らは実験により、紙表面の凹部の深さに応じて、2次転写ニップ内において、ベルトと紙表面の凹部との間でトナーを確実に往復移動させ得るIppやVppの値が、紙表面の凹部の深さに応じて異なってしまうことを見出した。具体的には、凹部の深さが大きくなるほど、トナーを往復移動させるのに必要なIppやVppの値が大きくなるのである。
【0109】
そこで、第4実施例に係るプリンタにおいては、操作パネル50に対するユーザーの操作によって取得した紙種の凹部の深さに応じて、適切なIppやVppを設定することができるように、紙種毎に、画像面積率とIpp又はVppの目標値との関係を示す関数式を変更するようになっている。かかる構成では、記録紙Pの表面の凹部深さにかかわらず、凹部上での白点の発生と画像濃度不足の発生とを抑えることができる。
【0110】
[第5実施例]
図26は、第1実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源39の内部構成を、2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。なお、同図においては、便宜上、記録紙や中間転写ベルトの図示を省略している。第1実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源39においては、交流成分を出力するための交流電源回路と、直流成分を出力するための直流電源回路とが直列に接続され、それらの出力が、負荷となる2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36とに接続されている。2次転写バイアス電源39を駆動する電源24VとGNDが、図示していないインタロックスイッチを介して、制御部60から供給される。さらに起動信号のACおよびDCが接続されている。交流電源回路と直流電源回路とには、異常検知手段が接続され、電源出力の異常検知信号SCを制御部60に出力している。この構成により負荷には、直流重畳された交流電圧が印加される。
【0111】
図27は、第5実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。この図では、2次転写バイアス電源39の動作に使われる電源入力や、異常検知の図示を省略している。交流成分を出力する回路が、交流駆動、交流高圧トランス、交流出力検出、及び交流制御部によって構成されている。また、直流成分を出力する回路が、直流駆動、直流高圧トランス、直流出力検出、及び直流制御部によって構成されている。制御部60から交流電圧の周波数を設定する信号CLKが供給され、交流出力の電流または電圧を設定する信号AC_PWMや、交流出力をモニターする信号AC_FB_Iが制御部60に接続されている。直流成分の回路にも、重畳される直流出力の電流または電圧を設定する信号DC_PWMと、直流出力をモニターする信号DC_FB_Iとが接続されている。交流および直流の制御に関しては、制御部60からの指令に基づき、それぞれの出力検出ブロックからの検出信号が所定値となるように、交流駆動または直流駆動を介して各高圧トランスの駆動を制御する信号を出力している。
【0112】
交流制御では交流出力の電流および電圧を制御しており、定電流制御又は定電圧制御のどちらも可能になるように交流出力検出で出力電流および出力電圧も両方を検出している。これは直流制御でも同様である。交流、直流ともに、通常は定電流制御を行うように電流検出値を優先して制御するようにしている。出力電圧の検出値は上限電圧の抑制のために使っており、無負荷状態などでの最高電圧を制御する構成としている。また、制御部60では交流および直流の各出力検出ブロックからのモニター信号を、負荷状態の監視のための情報として入力している。交流電圧の周波数を制御部60からの信号CLKで設定しているが、交流電圧を出力する回路の内部で固定の周波数を生成してもよい。
【0113】
かかる構成においては、ユーザーの命令により、定電流制御と定電圧制御とを切り替えて実施することができる。また、直流電圧を出力する回路と、交流電圧を出力する回路とのうち、後者の出力を停止することで、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードと、直流成分及び交流成分からなる2次転写バイアスを出力するモードとを切り替えることができる。
【0114】
図28は、第6実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。この例では、直流成分だけを出力する第1電源回路39aと、直流成分及び交流成分を出力する第2電源回路39bとを具備している。これにより、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力するモードと、直流成分及び交流成分からなる2次転写バイアスを出力するモードとを切り替えることができる。第1電源回路39aは、従来のプリンタには必ず備わっているものであるので、従来の第1電源回路39aに、第2電源回路39bを追加するだけで、従来のプリンタの2次転写バイアス出力手段を、本発明に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段に改良することが可能である。
【0115】
[第7実施例]
図29は、第7実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。図27の2次転写バイアス出力手段と同じ機能を実現することができる。更に、直流成分だけからなる2次転写バイアスを出力する場合には、従来の電源だけを利用する一方で、直流成分及び交流成分からなる2次転写バイアスを出力する場合には、新設の電源だけを利用することで、両者のモードを切り替えることができる。2次転写裏面ローラ33に印加する電圧をリレー1およびリレー2を使って切り替える構成である。第1電源39aで交流直流重畳電圧を生成し、第2電源39bで従来の直流成分のみの電圧を生成している。リレーを使った出力電圧の切り替えは、制御部60から出力される制御信号RY_DRIVによって行われる。
【0116】
なお、切り替え手段として、リレー1とリレー2の有接点の切り替え素子を使った例を示しているが、他の例えばFETなどの半導体のスイッチング素子を用いても、同様の機能を提供することができる。図示の例では、第1電源39aと第2電源39bとが独立した回路構成となっているため、第1電源39aだけをオプションとして後付けすることが可能になる。
【0117】
[第8実施例]
図30は、第8実施例に係るプリンタの2次転写バイアス出力手段を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。この例では、直流成分のみよる2次転写バイアスと、交流直流重畳電圧からなる2次転写バイアスとを、リレー1だけで切り替えるようになっている。リレー1の接点を閉じて第1電源39aから交流直流重畳電圧を出力する場合に、並列に接続された第2電源39bにも電圧が印加される。これにより、第2電源39bが第1電源39aの負荷となるが、第2電源39bへの電流供給による悪影響が少ない場合には、この例を採用することで回路の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0118】
図31は、第9実施例に係るプリンタの2次転写バイス電源を2次転写ニップのローラとともに示すブロック図である。上半部の交流電圧回路と、下半部の直流電圧回路とは、ともに定電流制御を行うものである。交流電圧は、高圧トランスの出力に近似した低電圧を巻線N3_ACで取出し電圧制御で基準信号Vref_AC_Vと比較している。交流電流は直流電圧回路の出力と並列に接続した交流成分をバイアスするコンデンサC_AC_BPと、接地間に設けた交流電圧検出器で取出し電流制御で基準信号Vref_AC_Iとを比較している。この基準信号Vref_AC_Iのレベルは、交流出力電流の設定信号AC_PWMに応じて設定される。この電圧制御の出力は、出力電圧が所定以上に上がった時(例えば無負荷など)に有効になるように基準信号Vref_AC_Vのレベルを設定してある。一方、電流制御の出力は、通常の負荷で有効になるように基準信号Vref_AC_Iのレベルが設定してあり、負荷の状態(2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36の材質など)に応じて高圧出力電流を切替えられる構成としている。これら電圧/電流制御の出力は交流駆動部に入力し、そのレベルに応じて高圧トランスをドライブする。直流電圧発生手段でも、同様に出力電圧/電流の両方を検出している。電圧は高圧トランスの出力巻線N2_DCに設けた整流平滑回路と並列接続した直流電圧検出器で取出している。電流は出力巻線と接地間に直流電流検出器を接続し取出している。電圧/電流の各検出信号は交流場合と同じく重み付けされた基準信号Vref_DC_VとVref_DC_Iと比較され、高圧出力の直流成分を制御している。
【0119】
次に、第1実施形態あるいは第2実施形態の各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様である。
[第1変形例]
図32は、第1変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、各色の感光体上のトナー像を直接記録用紙に転写する直接転写タンデム方式のカラープリンタである。この直接転写方式のカラープリンタは、記録用紙が給紙ローラ101により搬送ベルト121へ送られ、各色の感光体ドラムから記録紙へ各色トナー像が順次直接転写された後、各色トナー像が定着装置90によって定着される。各色の1次転写ローラ25Y,M,C,Kに印加する1次転写バイアスとして、交流直流重畳電圧を採用している。これにより、凹凸の大きな和紙タイプの紙であっても、凹部に対してトナーを良好に1次転写することができる。1次転写バイアスの直流成分や交流成分の出力目標値については、感光体上の50ライン区画の画像面積率に応じて変更する。
【0120】
[第2変形例]
図33は、第2変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、ニップ形成部材として、中間転写ベルトの代わりに、無端状の紙搬送ベルト121を各色の感光体2Y,M,C,Bkに当接させている点が、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタと異なっている。紙搬送ベルト121は、その表面に保持した記録紙を、自らの無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の1次転写ニップに順次通していく。この過程で、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が、記録紙の表面に重ね合わせて転写されていく。
【0121】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kの表面において、レーザー光Lの照射によって形成された静電潜像の電位を検知する電位センサ9Y,M,C,Kが設けられている。これら電位センサ9Y,M,C,Kは、TDK株式会社製の表面電位センサ(EFS−22D)からなり、感光体2Y,M,C,Kの表面に対して約4[mm]の間隙をもって対向するように配設されている。
【0122】
紙搬送ベルト121のループ内側では、Y,M,C,K用の1次転写ローラ25Y,M,C,Kが紙搬送ベルト121の裏面に当接して、紙搬送ベルト121を感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧している。第2実施形態に係るプリンタにおいては、Y,M,C,Kの各色において、感光体2Y,M,C,Kを一様帯電せしめる帯電装置(6Y,M,C,K)と、一様帯電後の表面に光書込を行う図示しない光書込ユニットと、1次転写ローラ(25Y,M,C,K)とにより、感光体の静電潜像と、押圧部材たる1次転写ローラの芯金との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を生じせしめる電位差発生手段が構成されている。
【0123】
なお、紙搬送ベルト121を感光体2Y,M,C,Kに当接させる代わりに、1次転写ローラ25Y,M,C,Kを感光体2Y,M,C,Kに直接当接させて、Y,M,C,K用の1次転写ニップを形成してもよい。この場合、1次転写ローラ25Y,M,C,Kをニップ形成部材として機能させることになる。
【0124】
2次転写バイアス電源39や制御部は、第1実施形態や第2実施形態と同様にして、直流成分や交流成分の出力目標値を、中間転写ベルト31の50ライン区画の画像面積率に応じて変更する。
【0125】
これまで、像担持体である中間転写ベルト31とニップ形成部材であるニップ形成ローラ36との当接による2次転写ニップにおいて、本発明を適用した例について説明したが、次のような1次転写ニップにおいて、本発明を適用することも可能である。即ち、像担持体たる無端ベルト状の感光体の裏面に裏面当接部材を当接させて、無端ベルト状の感光体をニップ形成部材に向けて押圧して、感光体とニップ形成部材とを当接させることで形成した1次転写ニップである。
【0126】
本発明を電子写真方式のプリンタに適用した例について説明したが、直接記録方式によってカラー画像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。この直接記録方式とは、潜像担持体によらず、トナー飛翔装置からドット状に飛翔させたトナー群を記録体や中間記録体に直接付着させて画素像を形成することで、記録紙や中間記録体に対してトナー像を直接形成する方式である。特開2002−307737号公報に記載の画像形成装置などに採用されている。像担持体たる中間記録体から記録紙にトナー像を転写するための転写ニップにおいては、本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1Y,M,C,K:画像形成ユニット(トナー像形成手段の一部)
2Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
30:転写ユニット(トナー像形成手段の一部)
31:中間転写ベルト(像担持体)
33:2次転写裏面ローラ(裏面当接部材)
36:ニップ形成ローラ(ニップ形成部材)
38:電位センサ(電位検知手段)
39:2次転写バイアス電源(転写バイアス出力手段の一部)
50:操作パネル(情報取得手段)
60:制御部(転写バイアス出力手段の一部、付着量把握手段)
80:光書込ユニット(トナー像形成手段の一部)
85:温湿度センサ(環境検知手段)
P:記録紙(記録材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】特開2006−267486号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体のおもて面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記像担持体のおもて面に当接して前記像担持体との間で転写ニップを形成するニップ形成部材と、
前記転写ニップ内に挟み込んだ記録材に対して前記像担持体上のトナー像を転写するために、直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを出力する転写バイアス出力手段とを有する画像形成装置において、
前記像担持体の全領域のうち、前記転写ニップに進入する直前の領域であって且つ前記像担持体の表面移動方向に所定の大きさに区切った領域、に対するトナー付着量を把握する付着量把握手段を設けるとともに、
前記直流成分及び交流成分のうち、少なくとも交流成分を定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記付着量把握手段による把握結果に応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記直流成分と前記交流成分とをそれぞれ定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値に加えて、前記直流成分の出力目標値も、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記把握結果が、トナー付着量について大きな値を示す従って、前記直流成分の出力目標値と、前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ大きくする処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分の出力目標値を変更する処理を、前記直流成分の出力目標値を変更する処理よりも先行して行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
前記2次転写ニップの像担持体移動方向の長さを、前記付着量把握手段によるトナー付着量の把握対象となった領域の像担持体表面移動方向の長さよりも大きくし、
且つ、前記領域の後端が前記転写ニップの入口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記交流成分の出力目標値の変更を行う一方で、前記領域の先端が前記転写ニップの出口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記直流成分の出力目標値の変更を行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記転写バイアスとして、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける像担持体表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]と、前記領域の像担持体表面移動方向の長さLとについて「f≧2/(d−L)/v)」という関係を具備するもの、を出力する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
上記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、ユーザーの命令に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、前記情報取得手段による取得結果に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8の画像形成装置において、
前記転写バイアス出力手段として、前記直流成分を発生させる第1電源と、前記交流成分を発生させる第2電源とを個別に有するもの、を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
前記像担持体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に対して前記第1電源からの出力を印加し、且つ他方に対して前記第2電源からの出力を印加したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れかの画像形成装置において、
前記直流成分だけからなる前記転写バイアスを出力するモードにて、前記直流成分の出力目標値を前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記定電流制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果加えて、前記像担持体の表面移動速度にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御し、且つ、前記交流成分の周波数を前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記交流成分の周波数と、前記定電流制御における前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れかの画像形成装置において、
前記像担持体の表面上のトナー層の電位を検知する電位検知手段を設けるとともに、
前記把握結果に加えて、前記電位検知手段による検知結果にも応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、
記録材の電気抵抗又は厚みに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項1乃至11の何れか、又は、請求項13もしくは14、の画像形成装置において、
記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記交流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
請求項2、2、3、4、5、6又は16の画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記画像面積率が100[%]を超える場合にのみ、前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
請求項2、2、3、4、5、6、16又は18の画像形成装置において、
温度又は湿度を検知する環境検知手段を設けるとともに、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に加えて、前記環境検知手段による検知結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れかの画像形成装置であって、
潜像を担持する潜像担持体に当接して1次転写ニップを形成する中間転写体を具備しており、
前記像担持体が、前記潜像担持体の表面上で現像されたトナー像を前記1次転写ニップで自らのおもて面に1次転写せしめられる前記中間転写体であり、
且つ、前記ニップ形成部材が、前記中間転写体のおもて面に当接して2次転写ニップを形成する2次転写ニップ形成部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
請求項20の画像形成装置において、
前記中間転写体として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である無端状の中間転写ベルトを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体のおもて面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記像担持体のおもて面に当接して前記像担持体との間で転写ニップを形成するニップ形成部材と、
前記転写ニップ内に挟み込んだ記録材に対して前記像担持体上のトナー像を転写するために、直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを出力する転写バイアス出力手段とを有する画像形成装置において、
前記像担持体の全領域のうち、前記転写ニップに進入する直前の領域であって且つ前記像担持体の表面移動方向に所定の大きさに区切った領域、に対するトナー付着量を把握する付着量把握手段を設けるとともに、
前記直流成分及び交流成分のうち、少なくとも交流成分を定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記付着量把握手段による把握結果に応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記直流成分と前記交流成分とをそれぞれ定電圧制御又は定電流制御で出力し、且つ、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値に加えて、前記直流成分の出力目標値も、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記把握結果が、トナー付着量について大きな値を示す従って、前記直流成分の出力目標値と、前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ大きくする処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分の出力目標値を変更する処理を、前記直流成分の出力目標値を変更する処理よりも先行して行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
前記2次転写ニップの像担持体移動方向の長さを、前記付着量把握手段によるトナー付着量の把握対象となった領域の像担持体表面移動方向の長さよりも大きくし、
且つ、前記領域の後端が前記転写ニップの入口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記交流成分の出力目標値の変更を行う一方で、前記領域の先端が前記転写ニップの出口付近に進入するタイミングで前記領域についての前記把握結果に応じた前記直流成分の出力目標値の変更を行う処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記転写バイアスとして、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける像担持体表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]と、前記領域の像担持体表面移動方向の長さLとについて「f≧2/(d−L)/v)」という関係を具備するもの、を出力する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
上記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、ユーザーの命令に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、前記転写バイアスとして、前記直流成分だけからなるものを出力するモードと、前記交流成分及び直流成分を含むものを出力するモードとを、前記情報取得手段による取得結果に基づいて切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8の画像形成装置において、
前記転写バイアス出力手段として、前記直流成分を発生させる第1電源と、前記交流成分を発生させる第2電源とを個別に有するもの、を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
前記像担持体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に対して前記第1電源からの出力を印加し、且つ他方に対して前記第2電源からの出力を印加したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れかの画像形成装置において、
前記直流成分だけからなる前記転写バイアスを出力するモードにて、前記直流成分の出力目標値を前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記定電流制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果加えて、前記像担持体の表面移動速度にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御し、且つ、前記交流成分の周波数を前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れかの画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電流制御し、且つ、前記交流成分の周波数と、前記定電流制御における前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ前記像担持体の表面移動速度に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れかの画像形成装置において、
前記像担持体の表面上のトナー層の電位を検知する電位検知手段を設けるとともに、
前記把握結果に加えて、前記電位検知手段による検知結果にも応じて、前記定電圧制御又は定電流制御における前記交流成分の出力目標値を変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項2乃至6の何れかの画像形成装置において、
記録材の電気抵抗又は厚みに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項1乃至11の何れか、又は、請求項13もしくは14、の画像形成装置において、
記録材表面の凹凸の度合いに関する情報を取得する情報取得手段を設けるとともに、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記交流成分の出力目標値を、前記把握結果に加えて、前記情報取得手段による取得結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
請求項2、2、3、4、5、6又は16の画像形成装置において、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記画像面積率が100[%]を超える場合にのみ、前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
請求項2、2、3、4、5、6、16又は18の画像形成装置において、
温度又は湿度を検知する環境検知手段を設けるとともに、
前記交流成分及び直流成分をそれぞれ定電圧制御で出力し、且つ前記定電圧制御における前記直流成分の出力目標値と前記交流成分の出力目標値とをそれぞれ、前記把握結果に加えて、前記環境検知手段による検知結果にも応じて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス出力手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れかの画像形成装置であって、
潜像を担持する潜像担持体に当接して1次転写ニップを形成する中間転写体を具備しており、
前記像担持体が、前記潜像担持体の表面上で現像されたトナー像を前記1次転写ニップで自らのおもて面に1次転写せしめられる前記中間転写体であり、
且つ、前記ニップ形成部材が、前記中間転写体のおもて面に当接して2次転写ニップを形成する2次転写ニップ形成部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
請求項20の画像形成装置において、
前記中間転写体として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である無端状の中間転写ベルトを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−42835(P2012−42835A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185592(P2010−185592)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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