説明

画像形成装置

【課題】上位側の装置から画像形成装置側でデータを変換するまでの不具合の再現性を維持しつつ、印刷出力時のセキュリティを保持した画像形成装置を提供する。
【解決手段】UI3により文字データの置換モードが指示されているかを判定し、置換モードに設定されている場合には、乱数発生部10により発生された乱数を用いて文字置換部9によりランダム文字コードを生成し、生成された文字コードに対応する文字フォントデータにて印刷イメージデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位側の装置から受信した印刷データから印刷イメージデータを生成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成システムにおいて、障害が発生した場合、障害解析のために印刷データが必要になる場合がある。
しかし、この様な印刷データには個人情報が含まれているため、印刷データを外部に持ち出せないことが多い。そのため、印刷データ中のアルファベット(大文字、小文字)、数字、漢字、ひらがな、カタカナ等の文字を予め決められた文字コードに置換することで個人情報を非可視化する技術が既に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上位側のシステム装置において、文字の置換を行なう際に、テスト時のセキュリティを保持するために、文字列データが、乱数と文字リストによって、再現不能に且つ同一の文字種の文字に置換されることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術にあっては、上位側のシステム装置において、データの変換を行なうものである。
不具合の再現を行なう際に、上位側のシステム装置のデータが変わることによって文字の置き換えがなされてしまった場合、プリンタ側で受信したデータは既に実データとは異なることになるため、不具合の再現性が低下する可能性があった。
そこで、このような場合でも、不具合の再現性を維持することが切望されている。
【0005】
本発明は、上位側の装置から画像形成装置側でデータを変換するまでの不具合の再現性を維持しつつ、印刷出力時のセキュリティを保持した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、上位側の装置から受信した印刷データを印刷出力する印刷装置において、前記印刷データを印刷イメージデータに変換するイメージデータ変換部を備え、該イメージデータ変換部は文字データ置換部を有し、前記イメージデータ変換部は、文字データの置換モードが指示されているかを判定し、置換モードに設定されている場合には、前記文字データ置換部にて、乱数によってランダム文字コードを生成し、生成された文字コードに対応する文字フォントデータにて前記印刷イメージデータを生成することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記置換モードによって生成される文字コードは、1バイト文字は1バイト、2バイト文字は2バイトの対応する文字に置換することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、使用する幅が文字ごとに決められているプロポーショナルフォントか、同じ幅のフォントの等幅フォントかどうかを判定し、プロポーショナルフォントの場合には、同じ幅の文字データに置換し、該当する同じ幅の文字データが無いときには、前記乱数で生成された文字の一部またはベタ図形でデータ変換することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、文字フォント幅が該当する文字が無い場合には、隣接する文字と、ドット幅を合算した上で、異なる幅となるように分割し、その分割したときのドット幅と同じドット幅の文字と置換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上位側の装置から画像形成装置側でデータを変換するまでの不具合の再現性を維持しつつ、印刷出力時のセキュリティを保持した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置により通常時に(画像置換処理を行なわないで)出力した例(a)、画像置換処理を行って出力した例(b)について説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置のハードウエア構成について説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるデータ置換部について説明するためのブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるデータ置換処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る画像形成装置により通常時に(画像置換処理を行なわないで)出力した例について説明するための図であり、図中では、使用する幅が文字ごとに決められているプロポーショナルフォントと、同じ幅のフォントの等幅フォントが混在(「会社:」の行のみプロポーショナルフォント)となっている。図1(b)は、本発明の実施形態に係る画像形成装置により画像置換処理を行って出力した例について説明するための図である。
【0013】
図2、図3を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
まず、画像形成装置は、主制御部1、上位側通信I/F2、UI3、印刷I/F4、データ置換部5、記憶部6を備える。また、データ置換部5は、受付部7、文字種検出部8、文字置換部9、乱数発生部10、置換データ出力部11により構成されている。
【0014】
次に、図2、図3に示す上記各構成の機能的な役割について説明する。
主制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、メモリなどで構成され、画像形成装置の全体の制御を行なう。上位側通信I/F2は、上位側のコンピュータシステムとの印刷データの通信を行なうものであり、上位側のコンピュータシステムから印刷データを受信する。
UI(User Interface)3は、画像形成装置の操作を行なうOCP(Operator Control Panel)やWebページなどで構成され、ユーザの操作を入力するものである。印刷I/F4は、画像形成装置の印刷を制御するものである。
【0015】
データ置換部5は、印刷データを印刷イメージデータに変換するためのイメージデータ変換部の役割を果たすものであり、文字データの置換モードが指示されているかを判定し、置換モードに設定されている場合には、印刷データ中の文字データを別の文字データに置換するものであり、すなわち、乱数によってランダム文字コードを生成し、生成された文字コードに対応する文字フォントデータにて印刷イメージデータを生成する。
【0016】
詳しくは、データ置換部5は、図3に示すように、受付部7、文字種検出部8、文字置換部9、乱数発生部10、置換データ出力部11により構成されている。
受付部7は、上位側のコンピュータシステムから上位側通信I/F2を介して受信した印刷データを主制御部1から受信する。
文字種検出部8は、受信した印刷データ中の文字が1バイト文字か2バイト文字かどうかを判断し、また、行毎に(若しくは或る範囲で)等幅フォントがあるか、プロポーショナルフォントがあるかを検出する。
乱数発生部10は、乱数を発生する。文字置換部9は、乱数発生部10により発生された乱数を文字コードとして設定し、文字コードを置換する。
置換データ出力部11は、置換後の文字データから印刷データを生成する。なお、生成後の印刷データは置換データ出力部11から主制御部1により読み出され、主制御部1を介して記憶部6に格納される。
記憶部6は、本発明の画像形成装置の制御プログラム、置換した印刷データなどを記憶するものである。
【0017】
次に、図3に示すデータ置換部5について説明する。
印刷データは、上位側のコンピュータシステムから上位側通信I/F2を介して受信される。UI3において印刷データの置換モードが選択された場合、主制御部1は印刷データをデータ置換部5へ送信する。データ置換部5内の受付部7において印刷データは受信され、文字種検出部8へと送られる。
文字種検出部8では、英字(1バイト文字)と日本語(2バイト文字)とが選別される。さらに、文字種検出部8では、行毎に(若しくは或る範囲で)等幅フォントがあるか、プロポーショナルフォントがあるかを検出する。
ここで、1バイト文字を例にとって説明する。
送られてきた印刷データ中の文字列が「ABC11」であった場合、まず始めに文字列から「A」が抽出され、乱数発生部10において乱数を発生させ、任意の1バイトの文字コードを発生させる。例えば、ここで発生させた文字を「z」とする。次に文字列から「B」を抽出し、乱数を発生させることによって発生させた文字を「3」とする。同様に文字列中の「C」は「R」、「1」は「c」、「1」は「U」を乱数によって発生させたとする。この一連の処理により、送られてきた印刷データ中の文字列「ABC11」は「z3RcU」という文字列に置換させることができる。
【0018】
また、データ置換部5では乱数を発生させて文字列の置換を行なうため、同じ文字列でも、2回目の実行と、3回目の実行とでは違った文字列が生じることとなり、置換後の文字列から元の文字列を想像することは困難となる。このため、置換後の印刷データのセキュリティが保たれることになる。また、同様に日本語(2バイト文字)においても文字列を乱数を用いて変換する。そうすることで、ジョブ中の文字データを別の文字データに置換することが可能となる。印刷データを置換する際に1バイト文字は1バイト文字に、2バイト文字は2バイト文字に置換することで、元の印刷データ内の文字種が変わらないため、不具合の再現テストを実施する際には有効となる。
また、文字種検出部8では、行毎に(若しくは或る範囲で)等幅フォントがあるか、プロポーショナルフォントがあるかを検出するので、文字置換部9において、等幅フォントがある場合には等幅フォントに置換し、プロポーショナルフォントの場合には、同じ幅の文字データに置換し、該当する同じ幅の文字データが無いときには、乱数で生成された文字の一部またはベタ図形でデータ変換する。
さらに、乱数を用いて文字の置換を行なうため、置換後に特定の文字データに偏ることなく印刷データを置換することが可能となる。また、元の印刷データと近い印刷データを作成する目的で、改行コードやタブ、文字修飾などは置換しないものとする。
【0019】
文字置換部9において置換された印刷データは、置換データ出力部11において印刷データとして生成され、記憶部6へと送信され、記憶部6に保存され、不具合の再現テストを行なう際には記憶部6内の印刷データをパソコンなどにダウンロードして、使用することが可能となる。
【0020】
次に、図4を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置の基本的な動作について説明する。なお、図4に示すフローチャートで表される制御プログラムは記憶部6に記憶されており、この制御プログラムが記憶部6から読み出されて主制御部1内のメモリに書き込まれ、CPUにより実行される。
【0021】
まず、OCP、WebページなどのUI3において、印刷データを置換する置換モードが選択されると、ステップS001では、主制御部1は、UI3からの置換指示信号を受付ける。
次いで、ステップS002では、主制御部1は、上位側のコンピュータシステムから上位側通信I/F2を介して印刷データを受信し、受信した印刷データを受付部7に送信する。
【0022】
次いで、ステップS003では、主制御部1は、文字種検出部8に対して、受信した印刷データ中の文字が1バイト文字か2バイト文字かどうかを判断させ、また、行毎に(若しくは或る範囲で)等幅フォントがあるか、プロポーショナルフォントがあるかを検出させる。
次いで、ステップS004では、主制御部1は、文字置換部9に対して、文字種検出部8から1文字ずつ抽出させる。
【0023】
次いで、ステップS005では、主制御部1は、乱数発生部10に対して、乱数を発生させ、この乱数を置換後の文字データとして設定させる。
次いで、ステップS006では、主制御部1は、文字置換部9に対して、ステップS005において乱数によって発生させた文字コードを設定し、文字を置換させる。
【0024】
なお、主制御部1は、文字置換部9において、等幅フォントがあると検出した場合には文字置換部9において等幅フォントを別の等幅フォントに置換させ、プロポーショナルフォントがあると検出した場合には文字置換部9において、同じ幅の文字データに置換し、該当する同じ幅の文字データが無いときには、乱数で生成された文字の一部またはベタ図形でデータ変換する。
【0025】
ここで、文字種検出部8により検出されたフォントに対応する置換後のフォントが無い場合(例えば、置換するフォントの幅が例えば「I」のように3ドット幅等とすると、変換可能なフォントは限られてしまう)について、
(1)そのフォントの置換とわかるようにベタ画像等とする。
(2)この場合は、例えば、2文字(つまり4バイト)を足して、それぞれの幅に合う文字幅を生成する(例えば、3ドット幅の文字+8ドット幅の文字 ⇒ 5ドット幅の文字+6ドット幅の文字)(このとき、文字間の余白は考慮しない)。これでも難しい場合は、3文字分(6バイト)で生成する。
【0026】
(3)セキュリティのみの考慮で良く、文字数を同一とすることが必須ではないケースの場合は、2文字で1文字(4バイト:3ドット幅の文字+4ドット幅の文字の場合は、7ドット幅の文字)とすることでも良い。
(4)もしくは、乱数発生部10によりランダムに生成された文字の一部(例えば、文字の左から3ドット)等でも良いが、この場合、文字が途中までの印字となることは言うまでもない。
【0027】
次いで、ステップS007では、主制御部1は、置換データ出力部11に対して、置換後の文字データから印刷データを生成させる。
次いで、ステップS008では、主制御部1は、置換されて生成された印刷データを置換データ出力部11から読み出して記憶部6に格納し、処理を終了する。
【0028】
この結果、UI3を介して印刷データの置換モードが選択された場合、入力された文字コードは、1バイト文字は1バイト、2バイト文字は2バイトの対応する文字コードに、等幅フォントは別の等幅フォントに、プロポーショナルフォントの場合には、同じ幅の文字データに置換し、該当する同じ幅の文字データが無いときには、乱数で生成された文字の一部またはベタ図形でデータ変換し、置換された後に印刷データとして記憶部6に格納される。
そして、主制御部1が、記憶部6に格納された印刷データを読み出し、上位側通信I/F2を介して上位側のコンピュータシステムに置換モード時の印刷データを送信することができる。これにより、上位側のコンピュータシステムでは、図1(b)に示すような出力例を視認することができ、さらに、図1(a)に示すような通常時に(画像置換処理を行なわないで)出力した例と対比して視認することができる。
【0029】
<作用効果>
本実施形態に係る画像形成装置においては、上位側の装置から受信した印刷データを印刷イメージデータに変換するものであり、文字データの置換モードが指示されているかを判定し、置換モードに設定されている場合には、乱数によってランダム文字コードを生成し、生成された文字コードに対応する文字フォントデータにて印刷イメージデータを生成するので、上位側の装置から画像形成装置側でデータを変換するまでの不具合の再現性を維持しつつ、印刷出力時のセキュリティを保持した画像形成装置を提供することができる。
【0030】
本実施形態に係る画像形成装置においては、置換モードによって生成される文字コードは、1バイト文字は1バイト、2バイト文字は2バイトの対応する文字に置換するので、印刷データが例えば日本語の場合でも、印刷データのそれぞれと同じ幅の文字データに置換することができ、上位側の装置から画像形成装置側でデータを変換するまでの不具合の再現性を維持しつつ、印刷出力時のセキュリティを保持した画像形成装置を提供することができる。
【0031】
本実施形態に係る画像形成装置においては、使用する幅が文字ごとに決められているプロポーショナルフォントか、同じ幅のフォントの等幅フォントかどうかを判定し、プロポーショナルフォントの場合には、同じ幅の文字データに置換し、該当する同じ幅の文字データが無いときには、乱数で生成された文字の一部またはベタ図形でデータ変換するので、印刷データが例えば欧文の場合でも、印刷データのそれぞれと同じ幅の文字データに置換することができ、該当する同じ幅の文字データが無いときには、乱数で生成された文字の一部またはベタ図形でデータ変換することができ、上位側の装置から画像形成装置側でデータを変換するまでの不具合の再現性を維持しつつ、印刷出力時のセキュリティを保持した画像形成装置を提供することができる。
【0032】
本実施形態に係る画像形成装置においては、文字フォント幅が該当する文字が無い場合には、隣接する文字と、ドット幅を合算した上で、異なる幅となるように分割し、その分割したときのドット幅と同じドット幅の文字と置換するので、文字フォント幅が該当する文字が無い場合でも、上位側の装置から画像形成装置側でデータを変換するまでの不具合の再現性を維持しつつ、印刷出力時のセキュリティを保持した画像形成装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、プリンタ装置、ファクシミリ装置、複合装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 主制御部
2 上位側通信I/F
3 UI
4 印刷I/F
5 データ置換部
6 記憶部
7 受付部
8 文字種検出部
9 文字置換部
10 乱数発生部
11 置換データ出力部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2006−236220号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位側の装置から受信した印刷データを印刷出力する印刷装置において、
前記印刷データを印刷イメージデータに変換するイメージデータ変換部を備え、
該イメージデータ変換部は文字データ置換部を有し、
前記イメージデー変換部は、文字データの置換モードが指示されているかを判定し、置換モードに設定されている場合には、
前記文字データ置換部にて、乱数によってランダム文字コードを生成し、生成された文字コードに対応する文字フォントデータにて前記印刷イメージデータを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記置換モードによって生成される文字コードは、1バイト文字は1バイト、2バイト文字は2バイトの対応する文字に置換することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
使用する幅が文字ごとに決められているプロポーショナルフォントか、同じ幅のフォントの等幅フォントかどうかを判定し、プロポーショナルフォントの場合には、同じ幅の文字データに置換し、該当する同じ幅の文字データが無いときには、前記乱数で生成された文字の一部またはベタ図形でデータ変換することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
文字フォント幅が該当する文字が無い場合には、隣接する文字と、ドット幅を合算した上で、異なる幅となるように分割し、その分割したときのドット幅と同じドット幅の文字と置換することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51296(P2012−51296A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197068(P2010−197068)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】